2025年4月19日土曜日

桜紀行 黒田杏子&儲船②&ヒルマ・アフ・クリント&浜村淳

目的なき幸せもまた花時
風光る削ぎ落された音と肉
春かなし本物真似た偽物よ
年重ね肉下りけり花曇
西福寺牡丹桜の咲き誇る

■時をかけるテレビ 池上彰 桜紀行~名金線・もう一つの旅~
1984 桜に魅せられて 桜に生かされて
北陸東海 桜紀行~名金線・もう一つの旅~ 1984年放送

佐藤良二さんの日記より
一人で穴を掘り そして美しい花を咲かせ
そして死んでゆくのが オレの人生だ

人のためにやる仕事ではない
自分の好きなことをして 人々が喜んでくれ
美しい花が咲き それをみて死んでいきたい

「おとうちゃん 日本ばっかかまわずに まず 自分のとこをかまいなさい」
オレが桜のことばかりで 家のことなどかまわぬので

カカ「有名にならんでよい 家にさえいてくれれば!」と泣けり

佐藤良二さんの妻の言葉
「お父ちゃんが花になって帰ってきよった」

荘川桜は高知県にも届けられました。
愛媛県県境 仁淀川別枝 
「荘川桜 三十郎」の碑が建てられています。
佐藤良二さんが手塩にかけた苗木は立派に根付いています。
ダム建設のため、立ち退きを迫られていた吉岡重忠さん。
消えてゆく故郷の忘れ形見にしたかったのだそうです。
故郷の風景は大きく変わりました。
水の底に沈んだ故郷を今も荘川桜三十郎はじっと見続けています。

花とは…。
花盛り 落花 花筏 余花(夏に咲いた花 よか) 
桜紅葉(秋) 帰り花(冬) 冬木の桜
日本人が桜を愛する理由の一つになっているのでは…❓

花を待つひとのひとりとなりて冷ゆ   黒田杏子
身の奥の鈴鳴りいづるさくらかな   黒田杏子
いつせいに残花といへどふぶきけり   黒田杏子
花巡るいつぽんの杖ある限り   黒田杏子

良二さんが旅立った9年後に花が咲きました…。

■夏井いつき俳句チャンネル
【第5回】楽しい日本語【儲船・後編】

儲船(もうけぶね)
あらかじめ用意しておく船。予備として準備しておく船。
平家物語/坂落より「汀にはまうけ船いくらもありけど」。
源平盛衰記/屋嶋合戦より「城内の軍兵は、儲舟に争ひ乗る」。

花ちるや折矢こぼれ刃儲船   ローゼン千津
孔明の怯懦黄砂の儲船   家藤正人
儲船には当日客と花吹雪   夏井いつき

■日曜美術館 見えない彼方へ ヒルマ・アフ・クリント

もし私の使命が成就するなら 
人類にとって大きな意味がある

私には人生の最初から最後まで 
魂の道のりを描くことができるから

ヒルマ・シュ・クリント

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん
【浜村淳登場!大阪・天満からお届け!】

昭和の大先輩 浜村淳の言葉
「愛とは けっして后悔しないこと…
 浜村淳」
でした。



2025年4月18日金曜日

キーホルダーで一句&角幡唯介

生きざまに刺激求めん雀の子
若鮎やDNAに導かれ
閉じた目を襲う睡魔や春深し
菜種梅雨解読できぬ文字連ね
鳥帰る黙ってそっと寄り添わん

■プレバト纏め 2025年4月17日
キーホルダーで一句

特別永世名人 締めのお手本 梅沢富美男
山笑う湯宿のルームキーでかし
(楽しい一句 実感が一句に入っている ユーモラスな実感)

俳句史に残る句集作り 横尾渉
春月や鞄の中に鍵がない
添削(もう一工夫できる の中はなくてもよい 3文字で情景を詠む)
春月にひとり鞄に鍵がない

俳句史に残る句集作り 千原ジュニア
ぶらんこはよやくだれかのぬいぐるみ
(子どもの目線の面白さ 心情が奥に描かれている
「は」ぶらんこはよやくされているの意味)

■心おどる あの人の本棚③角幡唯介(かくはたゆうすけ)(探検家・作家)

インパクトが強くて心に食い込んだ
理屈っぽいのが好き
行間を読み解くことで見えてくる世界がある
でかい本が好き
停滞中は読書のチャンス
一緒に旅をしていた山口君にも勧めた
後にアメリカ隊が滝を発見(1998) 
2002~03年/2009年ツアンポー渓谷を単独で探検

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー渓谷に挑む 角幡唯介
気を紛らわすため、一冊だけ持ってきていた本を
また読み返した。もうセリフも覚えていた。

「月と六ペンス」ポール・ゴーギャン 家族に未練たらたら

探検家とペネロペちゃん
お父さんはどんな人?ペネロペちゃん「やさしいし…」。
「お父さんがやめてって言ったんでしょ」。

刺激を受ける本たち 辺見庸 梅原猛 辻邦生 カポーティ
辻邦生の「西行花伝」とか 凄い傑作
開高健「夏の闇」文章力 言葉の力が半端じゃない
開闢(かいびゃく)する感じ 見えてなかった世界が開けてくる

探検の概念を変えた哲学書 マルティン・ハイデガー
ドイツの哲学者「存在」の哲学を展開 「存在と時間」
対話 存在の中に自分が組み込まれて
その関係性の中で行動が変わっていく
この考えはグリーンランドで接した
イヌイットの人々の考えに似ている
イヌイットの人は「ナルホイヤ」という言葉をよく使う
(わからないという意味)
明日の予定は解からない それは自然は決めることだ
自然の中で生きることはさまざまな関係性の中で動かないと
正しい行動にたどり着かない 不確実性の中で生きる
地球の中に自分がいる 自然や地球と繋がっている感覚
本とはどのような存在?
自分は何のために生まれ生きるのか 
自分が変わっていく過程が面白い
大切な要素として読書がある
先人たちの知恵に触発されたい

2025年4月17日木曜日

日曜美術館 Joan Miró&笹野高史

木蓮や陽光浴びてきらめかん
伸びやかに鮮やか纏う白木蓮
木蓮や母の最期を連れ添わん
脳裏で生きる笑顔の母よ紫木蓮
今もなお母への思い紫木蓮

■日曜美術館 ジュアン・ミロ 自由を求める魂の音色
「私の作品は、画家によって音楽がつけられた詩のようであってほしい」
リズミカルな線と色彩による独奏的なモチーフへ
晩年、表現はより自由により大胆に
尽きることのない情熱を支えたのは自由を求める心と故郷への愛でした
絵画の詩人ジュアン・ミロ その創作の軌跡辿ります

ジュアン・ミロ 自由を求める魂の音色

Joan Miróより12歳年上のピカソ。
パリに出る以前バルセロナの美術学校に通っていた。
同じ学校に通ったミロにとっては地元の憧れの大先輩。
二人は生涯にわたって特別な友情を育んでいきます。
二人はスペイン人ですが、スペイン語ではなくカタルーニャ語で会話した。
二人を結び付けていたのはカタルーニャ。
1921年 パリにアトリエを構える。Joan Miró28歳
3年後 シュルレアリスム宣言 発表 新しい芸術運動が始まる

「私は絵画と詩を全く区別していない 
時にはカンヴァスに 詩的なフレーズを加え またその逆もある」

想像の力でより抽象的で象徴的な表現へと突き進んでいく

1931年スペイン共和国政府誕生
パリ万博ではピカソと同じカタルーニャ人として壁画を出展

私の中で20年代に詩が担っていた役割を音楽が担っている」
詩と音楽と絵画が融合

パブロ・カザルス(1876~1973)
カタルーニャ出身のチェロ奏者
生涯フランコ独裁体制に抗議し続けた

1966年 日本を訪問 
日本の伝統的な思想や芸術に自分との親和性を見いだします
75歳 代表作 太陽の前の人物 1968年
大きな丸は太陽 隣には力強く立つ人物が△で現わされています
大胆かつ緻密ね計算で作られた絵画
○△▢ 仙厓の影響を受けている
心を整えてはじめて引くことのできる迷いのない線 
にJoan Miróは憧れた

無意識のうちに手を動かす 自分の中から出てくるもの
芯が強くて人に迎合しない ピカソと真逆だけれど同じように
火が燃えている 火の色が違う ピカソは派手で赤い炎が燃えている感じ
Joan Miróは青い炎。青い炎の方が温度が高い。目立たないけど
内面で寡黙で言葉は語らないけど信念とかエネルギーを出してきて
大きな画面が破綻していない。強さを秘めた人。

絵画を投機の対象とする人への反発
Joan Miróは燃やしたキャンパスに新しい美を見いだします
大胆にぶちまけられたような色と線
そしてコントロールできない偶然を孕んだ炎の力
晩年、高まる名声によって投機の対象となってしまった自らの絵画を
Joan Miróはその手で再び自由にしたのです

進化し続けたJoan Miróに乾杯!

音符が踊る星座シリーズ 命の輝き 
その輝きは晩年は自分自身に向かって行った
命に溢れていた Joan Miró!

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん
【笹野高史が「男はつらいよ」の裏側エピソード披露】

昭和の大先輩 笹野高史の言葉
「こうきしん これをね、いつまでも もっていたい
ささのたかし」
でした。



2025年4月16日水曜日

100分de名著 村上春樹 ねじまき鳥クロニクル①

早春を早緑纏い歩く母
山肌を走る炎や春の山
塩塚の炎の帯の暴走よ
迫り来る野焼きの熱よ春の風
頑なな思いと共に朧月

■100分de名著 村上春樹 ねじまき鳥クロニクル①
日常のすぐ隣にある闇
沼野充義(ロシア・東欧文学研究者) 伊集院光 阿部みちこ

アメリカ ヨーロッパ 中国 韓国 ロシアでも大人気
世界的現象 日本らしいファンタスティックなフレーバー
ブレンドが絶妙の作家 

村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」
8作目の長編小説 1991年~95年アメリカ滞在中に執筆
短編から大長編へ「ねじまき鳥と火曜日の女たち」(1986年)発展
構成
1994年4月刊行 第Ⅰ部 泥棒かささぎ編 ロッシーニの歌劇
         第2部 予言する鳥編 シューマンのピアノ曲
1995年8月刊行 第3部 鳥刺し男編 モーツァルト「魔笛」に登場

主人公岡田亨(トオル) 妻クミコ 綿矢昇(妻の兄) ワタヤ・ノボル(猫)

台所でスパゲティーをゆでているときに、電話がかかってきた。
僕はFM放送にあわせてロッシーニの
「泥棒かささぎ」の序曲を口笛で吹いていた。
スパゲティーをゆでるにはまずうってつけの音楽だった。
「十分間、時間が欲しいの」、唐突に女が言った。
僕は人の音声(こわいろ)の記憶にはかなり自信を持っている。
それは知らない声だった。「失礼ですが、どちらにおかけですか❓」
と僕は礼儀正しく尋ねてみた。「あなたにかけているのよ。
十分だけでいいから時間をほしいの。そうすればお互いよくわかりあう
ことができるわ」と女は言った。「わかりあえる?」
私は青いティッシュペーパーと、柄のついたトイレットペーパーが
嫌いなの。知らなかった?「それからもうひとつ 
ついでに言わせてもらえるなら」と彼女は言った。
「私は牛肉とピーマンんを一緒に炒めるのが大嫌いなの。
それは知ってた?」「知らなかった」あなたは私と一緒に
暮していても、本当は私のことなんか ほとんど気にとめても
いなかったんじゃないの?やれやれ、と僕は思った。
いったいどうなっているんだ。たかがティッシュペーパーと
トイレットペーパーとピーマンじゃないか。

日本の小説を変えた!村上春樹の文体 ポップな感覚
アメリカ現代小説の影響 カート・ヴォネガット
リチャード・ブローティガン 軽快 理知的 ユーモア アイロニー
当時は革命的だった 村上春樹の文体を追いかけて世の中が動いてきた
「やれやれ」村上文学の決まり文句
ものごとに直接向かっていくのではなく ちょっと引いて見る構え
デタッチメント(超然とした態度 無関心)

16歳の少女 笠原メイ
「人が死ぬのって、素敵よね」
「そういうのをメスで切り開いてみたいって思うの」
「あなたの名前はなんていうの。名前がわかんないと、呼びにくいから」
「オカダ・トオル」と僕は言った。
「あまりぱっとしない名前じゃない、それ?」(中略)
「ない」と僕は答えた。
「たとえばクマさんとか、蛙くんとか?」「ない」
「やれやれ」と彼女は言った。「何かひとつ考えてよ」
「ねじまき鳥」と僕は言った。「なあに、それ?」
「ねじを巻く鳥だよ」と僕は言った。
「毎朝木の上で世界のねじを巻くんだ。ギイイイイイって」
「ねじまき鳥さん」と呼ぶようになります。
こんなところに、こんな昼間に、こんな深い暗闇がある、と僕は思った。(中略)
咳払いは暗闇の中で、誰かべつの人間の咳払いのように響いた。

トオルを井戸に導く笠原メイ

「風の歌を聴け」(1979年デビュー作)
「昼の光に、夜の闇の深さがわかるものか。」
「ねじまき鳥クロニクル」は井戸のモチーフが大きく発展
非常に大きな役割を果たす

ねじまき鳥はその辺の木の枝にとまって 
ちょっとずつ世界のねじを巻くんだ。
ぎりぎりという音を立ててねじを巻くんだよ。
ねじまき鳥がねじを巻かないと、世界が動かないんだ。
「ねじまき鳥クリニクル」第2部

世界が回っているのは不思議な力を持つねじまき鳥のおかげかもしれない
鳥の鳴き声が予言的な意味を持つ という神話が世界にある
神話的イメージ あだ名として「ねじまき鳥」を自分につける
小説の中で象徴的なこと

加納クレタ(妹) 加納マルタ(姉) 笠原メイ 
岡田トオル クミコ 綿矢ノボル 間宮中尉 本田さん(占い師)

兵隊たちは手と膝で山本の体を押さえつけ、将校がナイフを使って
皮を丁寧に剥いでいきました。本当に、彼は桃の皮でも剥ぐように、
山本の皮を剥いでいきました。彼は両方の脚の皮を剥ぎ、
性器と睾丸を切り取り、耳を削ぎ落としました。
それから頭の皮を剥ぎ、顔を剥ぎ、やがて全部削いでしまいました。
あとには、皮をすっかりはぎ取られ、赤い血だらけの肉のかたまりに
なってしまった山本の死体が、ころんと転がっているだけでした。

間宮中尉
私はその光の中でぼろぼろ涙を流しました。
この見事な光の至福の中でなら死んでもいいと思いました。
いや、死にたいとさえ私は思いました。
そこにあるのは、今何かが ここで見事にひとつになったという感覚でした。
そうだ、人生の真の意義とはこの数十秒かだけ続く光の中に存在するのだ、
ここで自分はこのまま死んでしまうべきなのだと私は思いました。(中略)
そのようにして私の恩寵(おんちょう)は失われてしまったのです

「井戸」がつなぐ現代の東京と戦中のノモンハン

村上春樹氏は客員研究員として招かれた
プリンストン大学でノモンハン事件の資料と出会う

それらのことは、ずっと昔に遠くで起こった我々とは無関係な出来事じゃない
「メイキング・オブ・『ねじまき鳥クロニクル』」より

主人公の岡田トオルが東京の井戸で特別な体験をしていくことにつながる

日常的なもの
ホラー・オカルト・ファンタジー
「羊をめぐる冒険」(1982年)3作目の長編小説
歴史的なもの

総合小説
「カラマーゾフの兄弟」も念頭に置いていた
村上の書いた作品の中では「ねじまき鳥クロニクル」は一番凄い作品である

2025年4月15日火曜日

儲船①&「種痘」&「花」&池澤春奈&マイケル・ジャクソン&石川雲蝶

絶筆の笑みなき画像春の風
不器用上等それが何か日永
不器用を味方につけて土匂ふ
東祖谷おこしなしてと福寿草
竜天に知力体力時の運

■夏井いつき俳句チャンネル
【第5回】楽しい日本語【儲船・前編】
今回の楽しい日本語 儲船(もうけぶね)
「来る・来ない」と言った動詞は使わない

儲船けふも見えたる蜃気楼   ローゼン千津
質草の集ひて花の儲船   ローゼン千津
儲船朧に踊念仏は   家藤正人
儲船と呼ぶ托鉢の鉢に花   夏井いつき

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「種痘」

実はこの「種痘」という季語は もう季語としては
絶滅した季語 と言えると思います
何ものかと言いますと 天然痘の予防接種
それが「種痘」になるんですね かつては定期接種が
生後1年以内と小学校の入学前 さらに小学校卒業前に
行われたことから 春の季語とされています
天然痘という病気自体は紀元前から存在しまして
世界中で猛威を振るった恐ろしい病気だったんですね
WHOによって1980年には世界に根絶宣言が出されまして
そのことからもこの「種痘」という季語も
今ではもう見られなくなった風物という事におります

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「花」

一般的に俳句においてこの「花」とだけ使った場合には
桜のこととして理解する そういう季語になっております
かつてずーっと昔万葉集の時代などには この「花」といったら
梅の花であったらしいのですが 近世の俳句においては
もう全て「花」の一文字で桜ということになります
日本の中でも最も美しい三大美として雪花月せつげつかと
いう言われ方もしておりますが そのうちの見事な桜
「花」なわけです 非常にたくさんの傍題
別の言い方も存在している季語であります

■心おどるあの人の本棚②池澤春菜(声優・作家)
「ムギと王さま」作者まえがき 
エリーナ・ファージョン著 石井桃子訳より
わたくしが子どものころ住んでいた家には、
わたくしたちが「本の小部屋」とよんでいた部屋がありました。
本なしで生活するよりも、着るものなしでいるほうが、
自然にさえ思われました。
そして、また、本を読まないでいることは
たべないでいるのと おなじくらい不自然に。

幼い頃やタイ留学での苛めを伺ったのですが
自己防衛のための「ぶりっこ」が露骨すぎたのではと…。
芯の強さを全面に出して戦って欲しかったです。
頭脳明晰な頭脳をお持ちのあなたに被害者は似合わな過ぎたのでは❓

■偉人の年収 How much?エンターテイナー マイケル・ジャクソン(後編)
トラビスへの言葉
可能性は無限だ
あらゆる山を登るんだ
開拓すること 革新すること
自分の理想を信じて

スピリットと輝きは永遠に消えない

■新美の巨人たち【春を感じてアート旅②石川雲蝶の天上彫刻×シシド・カフカ】
山下裕二氏
天保の改革っていうのは大変厳しいものでね
建物の装飾とかも厳しく規制されたし
ですから雲蝶のような職人にとっては冬の時代なんですね

江戸で仕事を失った雲蝶は
新潟県 本成寺(ほんじょうじ)へ32歳の時にやってきた
檀家総代内山又造に頼まれ本堂の彫刻を依頼された 残念ながら
明治26(1893)年 石川雲蝶の作品・記録などが消失
たった一つ石川雲蝶作「赤牛」が遺された
本成寺 塔頭 本照院 石川雲蝶作「獅子」
ここで妻を娶り子どもも生まれ越後の国に腰を落ち着けた

魚沼市 西福寺 開山堂

山下裕二氏
常軌を逸したとでも言っていいような凄まじい装飾ですね
縄文土器に見られるような過剰な装飾への意思みたいなのを
感じさせる造形だったですね

透かし彫り 
「道元禅師と白山犬権現」の欄間が凄い」横谷昭則氏
基本的に欄間は下から見上げることを想定して彫り上げる物なので
人物や机など斜めに角度をつけて彫られています

書院彰子 

そのすべてが越後の宝物です
この里に心のよりどころを創りたい
江戸からやってきた男は一世一代の大仕事をやり遂げたのです
「越後のミケランジェロ」と呼ばれることとなる知られざる
幕末のアーティストは石川雲蝶作西福寺開山堂の天上彫刻
豪雪の里の極彩色の超絶技巧

2025年4月14日月曜日

兼題「海」&テーマ「四月」

桜どきボルドーでゴヤ逝去せり(4月16日)
幽玄(ゆうげん)を包み込む春堂ヶ島(温泉)
優しさも毒となりけり孕猫
優しさに向かう攻撃花の冷え
大切な人を邪険に鳥曇(とりぐもり)

■NHK俳句 兼題「海」
選者:岸本尚毅 レギュラー:内田紅甘(ぐあま) 司会:柴田英嗣
年間テーマは「描写の工夫」

ものを見る

・俳句のタネ育てましょう!
目を瞑れば海 ぐあま
⇩添削
目瞑れば海あり月に暗く照り

引用句
眼(め)つむれば泉の誘ひひたすらなる   橋本多佳子

海の家で夜まで熟睡 柴田英嗣
⇩添削
寝ていればいつしか夜に海の家

描写のポイント
① 自分ならではの体験を書く
② 読者が想像できるキーワードを入れる

・名句の描写
春の海終日(ひねもす)のたり〱哉   蕪村
「ひねもす」とは「一日中」という意味
のたり〱は波の動き 音 時間

・今週の特選句 兼題「海」
海あがる海女すんなりと強き脚   武田ラーラ
受験生らしき四人の海辺ゆく   相澤貴之
ギター背にクラブ合宿春の海   渡部法子
ともしびの明石の海の春惜しむ   浜口芙蓉
(掛け言葉みたいな入り方 行春を近江の人とおしみける 芭蕉)
によつきりと春の波より薩摩富士   田尻武雄
(によつぽりと秋の空なる富士の山 鬼貫 本歌取り的な作品)
遠浅にカラスほどなり春の人   米森光義

・「見どころあり!」の一句
海苔粗朶(そだ)の一湾波のゆきわたり   Aさん
ポイント①
切字「や」を使う
海苔粗朶(そだ)や一湾に波ゆきわたり
ポイント②
語順を入れ替える
一湾や海苔粗朶に波ゆきわたり

・特選三席発表
一席 ベランダに海より高きチューリップ   小笠原保之
二席 竹ひびにフジツボ見えて揺るる海苔   金子仙二
三席 春の海すくへば透(す)けし指白き   松井ゆう子

・はみだせ!教室俳句
愛媛県東温市立川上小学校 岸恭子先生
季語と感情を結び付ける

はるの花おやつのたこやきひとりじめ
子供時代独特の感性というのがあるのでその大事な期間に
子供らしい俳句をたくさん残してもらいたい

テーマ「ぼくも わたしも はいく名人」
誰でも俳句で輝ける

・ぐあまのつぶやき
春にはもっとのたりのたりしてほしい

■NHK短歌 テーマ「四月」
選者:荻原裕幸 ゲスト:向坂(さきさか)くじら 司会:ヒコロヒー
年間テーマ「短歌は時代の波に乗って」

端午そのなかぞらに口ひらくものなくてひろがる青をかなしむ
荻原裕幸

”時代の移ろい“を短歌にするためのポイントは?
子どもの頃からの体験みたいなものをベースにしている
あまり気負わずに自分の体験をもとに自然な感じで書くのが
時代の流れ・波みたいなものを見せるには一番いい
(すでに)体験の中にそういう背景が含まれている

・入選九首 テーマ「四月」
戒名に桜を含み祖母は発つ光あふれる四月の空へ
麻倉遥
「会いたい」と言える強さが欲しいですあと可愛い顔と細い脚と
ゆき
一席 私 「アンタって四月生れみたいな顔ね」生んだの七月でしょう母さん
しみず
三席 生―きとーるかー今年も新入生たちが始めた久保先生の口真似
前川泰信
岡山・浪速・仙台のナンバーが滋賀・富山・多摩にアパートの四月
植田和子
四月には誰かの物になっている机や椅子に体温残す
仲川暁美
二席 シュークリーム齧れば四月がこぼれだすような恋愛をあなたとしたい
青木菓子(かこ)
新卒の歓迎会も業務ならリモート花火でよくないですか?
立田渓(けい)
四月はまだ知らぬ赤子が母親にしがみつきをり木枯らしのなか
野田孝夫

・荻原流 詠み方指南
日記や記録を書くように短歌を詠む
体験した事 見た事 聞いた事(から短歌を作る)

ヒコロヒー女史のある日の出来事を荻原裕幸先生が短歌に
普通の自分をどこかで客観視している感じ 向坂くじら

育てれば家でモヒート(そこなのか❓)水やり楽しイエルバエブナ
荻原裕幸
日記内にある心の動きみたいなものを拾い出した

・”日常”を短歌にしていくコツは?
いたる所でメモを取る

そらいろの紙をいくひら使用してゐるのか春の静岡のそら
荻原裕幸

文字で書いている内に思いつく
ものすごく難しいことを考えようと思って発想するとか
そういうことはない むしろ単純なこと

楽しみながら思いついた言葉があったらそこから膨らませていく

・向坂さんの短歌「四月」
厚すぎる服と薄すぎる服しかなくてわたしのさびしい裸
向坂くじら
全然ベストじゃない服しかないなっていう瞬間があって
その寄る辺ない感じが4月っぽいなと
(裸ではなく身体でも意味として同じかもしれないが
やっぱり何か訴え方が全然違ってくる
身体があって服を着るのではなくて裸の状態があって服を着る
日常生活の中で過ごしづらいということだけでなく
もう少し心情的なところに繋がっていく)

・私たちが日常で使っている言葉を詩の言葉にするには❓
まるっきり別のものでないと思っている
自分にコントロールできないような相手のことを想定してみる
コントロールしない言葉というものが
どこから出てくるのかということから
考え始めてみると詩に近づきやすい

詩や短歌の世界は伝えようと
思っていることがあらかじめ決まっていない 荻原裕幸

・ことばのバトン
ごみ箱のサイズに茎を折り曲げて   
木下龍也(歌人)

お辞儀みたいと黄泉(よみ)に来た人
石黒謙吾(著述家 編集者)(ご本人曰く ダージャリスト)

「盲導犬クイールの一生」「ダジャレヌーヴォー」の著者
「捨てる神あれば拾う亀有」「買うてきチキン」
「少年老いやすくGackt成りがたし」「月とスリッポン」
石黒的ダジャレ美学 ウケる目的で言うべからず
自分がこれは快作だなって思うことが大事で
石黒的ダジャレ美学 タイミングを計るべし
石黒的ダジャレ美学 粋の精神を持つべし

おじぎみたいと よみにきたひと
OJIGIMITAITO 
よみにきたひと
YOMINIKITAHITO

2025年4月13日日曜日

最高の人生の見つけ方

春泥や不誠実と詭弁持ち
蓬積む安堵感なき母許(ははがり)よ
刻み込まれた痛みとともに遅日
石鹸玉(しゃぼんだま)心の中の不安定
夢にみる目覚まし時計春の朝








■最高の人生の見つけ方
ジャック・ニコルソン&モーガン・フリーマン 共演
かなり前に拝見して感動したことだけは記憶していたのですが、
もう一度、TVでやっていたので拝見したら…。
良かった…。感動の涙をいっぱい流させて貰えました。
最高の映画でした。

エドワード・コールは5月に死んだ 雲一つない日曜の午後だった
人生の価値とはなんで決まるのだろう 残された家族や友人だ
という者もいる 信仰で決まるという者も 愛だという者も
人生に意味などないという者も… 私はこう思う どれだけ周囲に
影響を与えられたかだと ただ これだけははっきり言える
エドワードは 最期の日々で一生分の事を成し遂げた 
彼は目を閉じ 心を開いて死んで行った

自殺を考えたことが❓自殺だって❓
“第一段階”だ ”死への5段階“さ
否認 怒り 取り引き 絶望 受容
自殺を考えないという事は 第1段階”否認“だ 君は❓
否認 自殺を考えていない❓ 

読んで見ろ 「コピ・ルアクは最高級の豆である」
しかし 出来過ぎた話には裏があるものだ」
「原産地のスマトラにはジャコウネコが生息する」
「彼らは コーヒーの実を食べ消化すると」「排泄する」
「村人は そこから豆を拾い始める」「つまりジャコウネコの
腸内の消化液が」「コピ・ルアクの あの独特の風味と」
「香りを与える」冗談だろ 猫のふんだ 爆 爆 爆

こんにちは エドワード・コールです こういった場で
何を話すべきなのか 見当もつきません 
ずっと避けてきたからです とにかく私は彼が好きでした
会えなくなって寂しい 私たちは世界を旅して回りました
不思議な話です ほんの3か月前は赤の他人だったのですから
メモの“赤の他人を救う”に線を引く
こんな事を言えば 聞こえが悪いですが 彼にとっての
最後の数か月は 私には最高の数か月でした 気づかぬうちに
彼に救われたのです 彼が 残された時間を 
私と過ごしてくれたことを 心から誇りに思います
私たちは 互いの人生に 喜びをもたらし合いました
だから いつの日か 私が人生に終わりを告げ ある門に
たどり着いたとしたら カーターにいて欲しい
証人となって 私を向かい入れて欲しい
エドワード・コールは5月に死んだ 
雲一つない日曜の午後だった 81歳だった 
”荘厳な景色を見る“線引きする
人生の価値を決めるのはやはり難しい だがこれだけは言える
エドワードは最期の時 目を閉じ 心を開いて死んでいった
彼は 最後まで 満足だっただろう なぜなら 山頂に埋葬され
それは違法だったからだ

心が傷ついたなら 何かに失望したなら 
大きな壁にぶつかったなら
言葉にしてしまおう 悩まないで声に出してごらん
何もかも さらけ出せばいい 悩まないで声に出してごらん
何もかも さらけ出せばいい たった一人の軍隊のように
頭の中の影と 必死で闘ってる 過去にとらわれないで
すべてを忘れて 前に進むんだ 悩まないで声に出してごらん
何もかも さらけ出せばいい 悩まないで声に出してごらん
何もかも さらけ出せばいい 屈することを恐れないで
委ねることを 恐れないで 何も言わずに終わってしまうなら
言い過ぎた方が よっぽどいい たとえ手が震えても
信じる心を失っても 目を閉じたくなっても
心だけは大きく開いていよう 悩まないで声に出してごらん
何もかも さらけ出せばいい 悩まないで声に出してごらん
何もかも さらけ出せばいい

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%80%E9%AB%98%E3%81%AE%E4%BA%BA%E7%94%9F%E3%81%AE%E8%A6%8B%E3%81%A4%E3%81%91%E6%96%B9

キャッチコピーは、“We live, we die. Wheels on the bus go round, and round.”
(人は生き、人は死ぬ ― 世の中はその繰り返しだ)。

2025年4月12日土曜日

あの人に会いたい 楳図かずお

ビジョンなき人生を生く朧月
涅槃雪棘ある言葉浴びせられ
木蓮や日本語通じぬ美容院
スクリューフレーション深刻な春
襲い来るインフレーション春の街

■あの人に会いたい 楳図かずお(漫画家)
楳図かずお1936(昭和11)-2024(令和6)年 88歳没

マンガが動いているのは僕の大きな拘り 
マンガって動かないじゃないですか
動くようにどうやったら描けるだろうかというのが
いつも頭の中の問題

1936(昭和11)年 和歌山県高野山生まれ
生れて7~8か月くらいに母親がふと こういう子どもに
絵を描かせると描くかなといって 鉛筆を持たせて 丸はこうだよ
とかいって そうしたら描いたものだから 

「新寳島」手塚治虫著
パッと見ると おもしろそうだったから 買って読むと
おもしろくて それが手塚治虫のマンガだった 
読んだ瞬間に「プロになろう」と思った 

「森の兄弟」で1955(昭和30)年にデビュー
まだストーリーが作れなかった
グリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」から(ストーリー)を
起こさせて貰った だけど僕のマンガの出発点
高校を出てプロでやっていく時にまわりを見渡すと
もうSFは手塚治虫さんがやっているのでだめ
「恐怖」というジャンルがなかった スリラーと怪奇は
あったが「恐怖」というのはなかった

子どものころはそれ(民話)が怖い話だと思っていない
単純におもしろい話だなと思って聞いていた
自分が嫌なものほど人はおもしろいだろうなと思って
僕も実際は嫌なんだけど マンガの中に出てくるのは
すごくおもしろい 実際に嫌だなと思うのは話の中に入ると
いちばん興味の持てるおもしろいものに変化する

恐怖というのは自分の頭の中の創造性 新しいものや
知らないもの 未知のものに対する興味が怖いという事だと思う

1975(昭和50)年 小学館漫画賞を受賞
1976(昭和51)年 「まことちゃん」連載開始
恐怖と笑いは表裏一体

追っかける側と追いかけられる側 それぞれの立場によって
ギャグになるか恐怖になるか それだけの違いだと思っている
追いかけられる側はやっぱり怖い もう恐怖そのもの
相手が転んだりしたらおかしいだろうなと 

1982(昭和57)年「わたしは真悟」連載開始
仏アングレーム国際映画祭で「遺産賞」を受賞
「14歳」連載終了後 休筆

もう怖いマンガは(必要)ないと思うと言われたり
それだったら具合悪いなと思って たっていても
おもしろくも何ともないので 

2022(令和4)年「連作絵画」の展覧会を開催
目指すところはマンガではなく絵画 両方のいいところを足せば
こんなふうになる そういう目標 今回描いたものには
つなぎがない やにわにクライマックスが来ちゃう
最初から(クライマックスが)来て 次もクライマックス
みんなクライマックス 

生物は最初の無機物から有機物になった瞬間に
食う食われるの状態の怖さはそこから始まっていると思う
食われるところから どうやって 逃れようというので
生物は進化していって 食われる恐怖のない生物は
進化していない そこの部分が ちょっと緩んでいる
ところがあると思うから 少し鍛えていったほうがいい
怖さに対する防御力ですよね

2025年4月11日金曜日

EIGHT-JAM サザンオールスターズ

労わりが喜びとなる春の風
春怒涛自分は自分他人は他人
図々しく生きる人よ半仙戯
たこ焼きや米を席巻春景色
春の闇追い込まれたるエンジニア(魔改造)

■EIGHT-JAM【サザンオールスターズ特集 完結編!プロ厳選の名曲も紹介】

長年やってきて思うのは…。重みがない。カリスマ性…無縁な所にある。
主流 本流 王堂になり得ない。感じてやっていた。我々にできることは何か…。
辿り着いたのはなるべくVariationを増やす。新曲なのかなと。

Mrs.GREEN APPLE 緑黄色社会と並んだら ダメだったと思う。
他人様が与えてくれるイメージは意外に大事で 
大衆の皆さんが与えてくれたイメージは そこが本質だったりする。
「別のやり方で音楽楽しもう」と思えた。運が良かった。

曽我淳一氏(サザンオールスターズ)
桑田さんの知識量、和音のこともそうだし
歌詞の文学的な内容、言葉のチョイス…インプットが凄い
知識の量が半端ない だから幅広さが保てる。

プロが選ぶ サザンの幅広さを感じる曲 
TSUNAMI(‘00) イエローマン~星の王子様~(’99)

ポイント
KAMAKURA(‘85)アルバム2枚組
一つの辿り着いた点 ポイントかもしれない。
自分達の得意な事手癖にたよった音楽はやめよう」
「メンバー達がせめぎ合い飛び散る火花のようなものを作品に」
年齢、時代に応じて吸収したものを作って吐き出す。
モチベーションも高かった。時代的な背景もあったりして
一つのピーク…。重要なアルバム。

プロが選ぶサザンオールスターズの名曲
HOTEL PACIFIC 神様からの贈り物 みの
ミス・ブランニュー・デイ 片山敦夫
HEIR NAOKI
BOHBO No.5 斎藤誠
いとしのエリー 家入レオ Awich 本間昭光
マンピーのG★SPOT Awich 家入レオ
エロティカ・セブン Awich

荒唐無稽じゃないけど「エロスをやろう‼」ではなく
我々の世代は春歌(「下ネタ」の内容の歌詞を含む歌。)
ちょっと不謹慎な替え歌、鼻歌が…。「マンピー」って言葉が
出てきた時に「Gスポット」って言っちゃう?」遊び心で…。

桑田佳祐が好きなサザンの曲は❓
女神たちへの情歌(報道されないY型の彼方へ)
ゆけ‼力道山

作り続けるMotivationは❓
自分たちはどんどん歳を取る。世の中は新しくなる。
物事は更新されていくから我々が古くなっていくことは間違いない
音楽のタイムマシーンに乗っていくと青春の時期に飛べるんじゃ…。
行き着く先は自己愛。

「THANK YOU SO MUCH」10年ぶり‼16作目のオリジナルアルバム
タイトルの温度感が変わってきた。これは軽い話じゃないぞ。
長きにわたり新作を作り続け多くの後輩からリスペクトを集める桑田佳祐

原動力は❓
原由子の存在は大きい。要因の一つとして女性がいる…。
マイルドになる。この雰囲気大事にしよう。
「解散したい」…何度もある。
それを覆すようなみんなの気持ちの持っていき方が…。
ライブをしたり新曲を作ったりしたことがサザンのメンバーの絆を
更新していく…良かったと思う。後は一人一人の性格と努力が
みんなも苦労している。その辺が顔に出ないから…
人間性が大きいと思います。

サザンオールスターズの軌跡を綴った本『いわゆる「サザン」について』
桑田佳祐が帯に寄せた言葉は…。

昔々、“軽薄なノリ”がめいよであり、
やんちゃなものに対して
やや寛容な時代があった。
ついつい、調子に乗って
それをやめそびれた我々は、
未だに「まともな音楽人」として
衆人に認知されていない。
サザンオールスターズ・桑田佳祐

ちょっと自虐的に書きましたけど 
重みやカリスマ性を維持するのも大変…
我々はそういう足枷がなかったのも良かった。
古希にならんとしてる我々。
「学生バンドっぽい」と未だに言われる。
サザンのイメージの中にそれがある…
ありがたいこと。
40代、50代の時に「学生バンドっぽい」
嫌だった時もある。
乗り越えて…歳を取ってここにいられることで
楽になったことは結構ある。
サザンオールスターズって長くやれたから良かった。
途中で終わっていたら 悲しかった…
ここまでやれたのが いろんな意味で全て。

水野良樹氏(いきものがたり)
「音楽」として見られて来なくて大衆に楽しまれていた。
一番音楽的な部分。
音楽が音楽として評価されることはつまらないこと。
その先のものに目的があるべき。
サザンはずっとそこにいた。
もっとも音楽的、最も素晴らしい音楽人。

2025年4月10日木曜日

あの本、読みました? 背筋

イメージが創る人生長閑なり
黙っていればいい気になって雪崩
春の陽や殻を破って突っ走れ
消え失せるオリジナル蛇穴を出づ
襲い来る苦しみありて春の月

■あの本、読みました?単行本売上ランキング!
朝井リョウ・背筋・「このミス」大賞

背筋(せすじ) 鈴木保奈美 角谷暁子 

第16位 「近畿地方のある場所について」背筋著
第18位 「僕には鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴著/小学館  鈴木保奈美推し

第11位 「地雷グリコ」青崎有吾著/KADOKAWA  背筋推し
十五段目に地雷があることははっきりした。真兎(まと)の位置はいま、九段目。
なら次のジャンケンではグーを出し、十二段目に移動すればー
「あっ」チョキかパーを出して六段進めば地雷に〈被弾〉してしまう。
だから真兎はグーしか出せない。そして、
そのことは椚(くぬぎ)先輩にもばれている。
つまり椚先輩は、パーを出せば必ず真兎に勝てるわけだ。
しかも一度では終わらない。次のターンも、その次のターンも
九段目から動けない限り真兎にはグーの選択肢しかない。
だがグーを出し続ければ差はどんどん広がっていく。

第6位「生殖器」朝井リョウ著/小学館 背筋・林P推し
❝多様性❞ってそれこそ四十億年以上前に生命体が発生した時から
存在する現象なわけで、どの生命体も発生したその瞬間から
多様な種の中の一個体として生きるしかないんですから。
そもそもヒトは❝多様性❞の歴史に超最近現れた超超超新入りです。
認める認めないの立場を選ぶなんてそもそも不可能で、ただただ
❝多様性❞の真っ只中にいることしかできません。というような文章にも、
尚成はこの一年間、買ったり借りたりした本の中で沢山出会いました。

朝井リョウの魅力

「業界地図」ってどんな本?松浦大
会社四季報(4000近い企業の業績や営業利益の予想など最新情報を
提供している株式投資のバイブル)の兄弟誌/東洋経済新報社
シェア75%(日経も出版している)
大雨の業界 書店・取次 地方銀行 造船

「このミス」大賞「謎の香りはパンやから」著者テレビ初出演
作家 土屋うさぎ
人が死なないクールなミステリー
実際に経験したことをミステリーに

「謎の香りはパンやから」の一文 土屋うさぎ著/宝島社
由貴子が練乳サンド用のパンを切り始めたので、
私はたまごサンドを作ることにした。(中略)
続けて冷蔵庫から、サンドイッチの具材となる、
たまごフィリングを取り出す。
たまごフィリングは、バイトが前日にみじん切りにした
卵とマヨネーズを混ぜて仕込む決まりだ。
しかしノスティモには、ゆで卵をみじん切りにするための
専用のスライサーやマッシャーがない。そのため、包丁で卵を
一つ一つ細かく切る必要があり、意外と手間のかかる作業だった。
ずっしりと重みのあるタッパーを開けて、中身を確かめる。
その時、あれ、と思わず声が漏れた。卵の切られた断面が、粗い。
細切れになったゆで卵が金平糖のようにギザギザとしている。
包丁で切ったとして、こんな切り口になるのだろうか。

第1章 焦げたクロワッサン
第2章 夢見るフランスパン
第3章 恋するシナモンロール
第4章 さよならチョココロネ
第5章 思い出のカレーパン

「謎の香りはパンやから」の一文 土屋うさぎ著/宝島社
チョココロネは、西洋発祥だと思われがちだが、
実は日本で生まれたパンである。
名前の由来は、フランス語で角(つの)を意味する「コルネ」から
取ったという説と、金管楽器の「コルネット」が
変化したという説の、二つがある。
金管楽器を演奏する姿を重ねると、チョココロネの
細いほうを「頭」と認識するのも頷ける。
先入観から、太いほうから食べがちだが、どちらが頭で
どちらがお尻なのか、明解な答えはない。中には、細い部分を
ちぎって、チョコクリームをディップしながら食べる人もいるという。

マンガからの影響「キャラ立ち」

「謎の香りはパンやから」の一文 土屋うさぎ著/宝島社
「おはようございまーす」と元気な声が聞こえてきた。
遅れて出勤してきたレナ先輩だ。「いやぁ、寝坊しちゃった」
レナ先輩が両手を背中の後ろで組み、肩を伸ばす。彼女は、
私とは違う大学に通う四年生で、豪快かつ派手な人だ。
少しつり目の瞼には、どんなに朝早いシフトの日でも、
大粒のラメ入りアイシャドーが光っている。
それは遅刻してきた今日も例外ではない。
今は帽子で隠れている長い髪は、派手な赤色に染められており、
色白の肌と相まって異国のお姫様のようだった。
「あれ、音楽かけてないじゃん。無音で仕事するのしんどくない?」
そう言うと、レナ先輩はキッチンにあるスピーカーにスマホを繋いだ。
長閑な店内に、いかついヒップホップが流れ出す。
扉を閉めていればお客さんにキッチン内の音が届かないので、
ノスティモでは、自由に音楽を流ことが許されていた。それにしたって、
もう少しお店の雰囲気とマッチした曲がありそうなものだが。
さらに、彼女は続けて画面をタップした。「この前さぁ、天王寺動物園
行ってきたんだ。その時の動画、送ったから見てよ」「え、今ですか?」
「うん、お裾分け。めちゃ癒されるよ」ちらりと自分のスマホ画面を
確認すると、動画は四分と地味に長尺だった。

登場人物は実在の人

愛読書は辻村深月 「鍵のない夢を見る」辻村深月著/文春文庫

第3位 「口に関するアンケート」背筋著/ポプラ社・刊
伝播していく恐怖がテーマ
大学生の肝試しに恐怖の仕掛けが…

「口に関するアンケート」の一文 背筋著/ポプラ社・刊
はじめまして。村井翔太といいます。よろしくお願いします。
とりあえずあの日のこと、全部話しますね。
正直、気は進まないですけど。肝試しになんて行かなければ、
杏は死ななかった思いますから。言い出しっぺは、誰だったかな。
覚えてないです。とにかく、僕たちのグループの誰かが、言ったんです。
「ここ、知ってる?けっこうヤバいらしいよ」って。

テーマにしたかった作品
「藪の中」芥川龍之介著/講談社文庫
馬の通う路から隔たった藪の中 胸もとを刺された男の死骸が見つかった
殺したのは誰なのか 芥川龍之介の名作

「杏」ちゃん=木に口
文字の色が変わっていく…
アンケートに答えると…
裏表紙にも仕掛けが…昆虫がびっしり止まっている
スマホのライトで照らすと確り見える

背筋の次回作は❓土屋うさぎの次回作は❓

2025年4月9日水曜日

10min.ボックス 曽根崎心中&たけくらべ

春の雲勝つて欲しがること勿れ(坂の上の雲最終回)
横たわる潰(つい)えた牛や春の空
牛飼いの向き合う矛盾土匂ふ
朧月市井の女手紙読む
物思う年増の女春の月

■10min.ボックス古文・漢文 曽根崎心中(近松門左衛門)
一七〇三年(元禄十六年)心中事件「曽根崎心中」
夢の夢こそあはれなれ 
悲しい愛の物語 徳兵衛と遊女のお初の物語

やあら聞えぬ旦那殿。私合点いたさぬを、
老母をたらし、叩き付け、あんまりななされやう。

口借しや、無念やな。このごとく踏み叩かれ、
男も立たず、身も立たず。エ、最前につかみつき、
食ひついてなりとも死なんものを

町人が共感した物語

頼もしだてが身のひしで、欺(だま)されさんしたものなれども、
証拠なければ、理も立たず、この上は徳様も
死なねばならぬしななるが、死ぬる覚悟が聞きたい 
徳様に離れて、片時も生きてゐようか。
わしも一所に死ぬるぞやいの

道行

この世のなごり、夜もなごり、
死に行く身をたとふれば、
あだしが原の道の霜、
一足づゝに消えて行く、
夢の夢こそあはれなれ。
あれ数ふれば、暁の、
七つの時が六つ鳴りて、
残る一つが今生の、
鐘の響きの聞き納め、

■10min.ボックス現代文 たけくらべ(樋口一葉)
主人公の名前は美登利

大黒屋の美登利とて、生国(せうこく)は紀州、
言葉のいさゝか訛れるも可愛(かわゆ)く、
第一は切れ離れよき 気象を喜ばぬ人なし。
子供に似合(にあは)ぬ銀貨入れの重きも道理、
姉なる人が全盛の余波(なごり)、
同級の女生徒二十人に揃ひのごむ鞠(まり)を
与へしはおろかの事、馴染の筆やに店(たな)ざらしの
手遊(てあそび)を買(かひ)しめて、喜ばせし事もあり。

吉原 遊郭
樋口一葉(一八七二―一八九六)

美登利の恋心 相手は一歳年上の藤本信如

「これにてお拭きなされ」と介抱をなしけるに、
友達の中なる嫉妬(やきもち)や見つけて、
「藤本は坊主のくせに女と話をして、
嬉しさうに礼を言ったは可笑しいでは無いか、
大方(おほかた)、美登利さんは藤本の女房(かみさん)に
なるのであらう」などゝ取沙汰(とりざた)しける。

「ゑゝ例(いつも)の通りの心根」
「何を憎んでそのやうに無情(つれなき)そぶりはみせらるゝ。
言ひたい事は此方(こなた)にあるを、余りな人」

信如は今ぞ淋(さび)しう見かへれば、
紅入り友仙(ゆうぜん)の雨にぬれて、紅葉の形(かた)の
うるはしきが我が足ちかく散(ちり)ぼひたる、

子どもから大人へ

次第〱に心細き思ひ、すべて昨日の美登利の身に覚えなかりし
思ひをまうけて、物の恥ずかしさ言ふばかりなく
「ゑゝ厭や〱、大人に成るは厭やな事。
なぜこのやうに年をば取る、
もう七月十月(なゝつきとつき)、一年も以前(もと)へ帰りたいに」

誰れの仕業と知るよしなけれど、
美登利は何ゆゑとなく 懐かしき思ひにて、
違ひ棚の一輪ざしに入れて、淋しく清き姿をめでけるが、
聞くともなしに伝え聞く、その明けの日は、信如が
何がしの学林に袖の色かへぬべき当日なりしとぞ。

2025年4月8日火曜日

知恵泉 やなせたかし

色変えて匂いを変えて春の雲
風のごと時には主張春の空
春心ふくよかさんがほっそりと
シイラカンスふれあい求め深海へ(無季句)
シイラカンス仲間とともに横たわる(無季句)

■先人たちの底力 知恵泉 やなせたかし
~「遠回り」に込められた生き方~
藤田和日朗 中沢元紀 梯久美子

「困った時のやなせさん」と呼ばれていた

晩成とか遅咲きという言葉があるが
友はみんなひと花咲かせてはるかに遠くを走っていた
「アンパンマンの遺書 文庫版」より (やなせたかし 岩波書店)

漫画家としては絶望だと思った

柳瀬嵩(やなせたかし)1919(大正8)年 2月6日生まれ
当時のぼくには かんたんに 描かれているように見えて
これで生活ができて 人気者になれるならば 
漫画家になりたいと思った
(やなせたかし みんなの夢まもるため)より

徴兵では特技を生かしてある任務を
中国の人に向けた紙芝居を製作 
飢えが人間にとって一番惨めであることを認識
終戦後知ったこと 
僕らが兵隊になって向うへ送られた時
これは正義の戦いで中国の民衆を
救わなくちゃいけないと言われたんです
ところが戦争が終わってみればこっちが非常に悪い奴で
侵略をしていったということになる
戦争には真の正義というものはないんです しかも逆転する
「何のために生まれてきたの?希望のありか」より

「ぼくはもうすぐ死んでしまうが兄貴は生きて絵をかいてくれ」
「やなせたかし おとうとものがたり」(フレーベル刊)©やなせたかし
(やなせたかしが弟・千尋との思い出を綴った詩画集)

知恵その一
楽しみながら人を助けていこう

34歳の時(給与より漫画収入が上回ったので)独立
どんな仕事でもとにかく引き受ける
豪華客船で講師も務めた
そんな時につけられた渾名が「困った時のやなせさん」
新しいことをやったらきっと楽しいだろう 発見があるだろう
ものすごく楽しそうにするから周りも幸せになる
知り合った宮城まり子や永六輔らから頼まれ
舞台美術や映画のシナリオ、構成作家、テレビ出演
畑違いのオファーまで熟すように…。

仲間は先輩も後輩も大活躍なのに自分だけが冬の谷間で
ひとりぼっちみたいな気分でやるせなかった
「人生なんて夢だけど」より

「手のひらを太陽に」を作詞 作曲はいずみたく
歌ったのは宮城まり子 NHK「みんなのうた」で歌われ
小学校の音楽の教科書にも採用された

藤田和日朗氏が番組中ご紹介くださいました↓
【おとうとものがたり】
シーソー
シーソーというかなしいあそびがある
一方があがれば
一方がさがる
水平になることは一度もない
ぼくと弟は
シーソーのことを
ギッコンバッタンといっていた
ギッコンバッタン
ぼくらはあそんだが
ちいさい時
弟は病気がち
学校の成績もわるかった
ぼくは
あくまで健康で
成績はとびきり上等だった
薬ばかりのんでいた弟は
いつもみんなになぐさめられ
お菓子と玩具に埋もれていた
ぼくもぜひ肺病になりたくて
わざと雨にびしょぬれになったりしたが
残念ながら平気だった
しかし
中学に入ってから
たちまち立場が逆転する
弟はすっかり頑丈になり
柔道二段で優等生
ぼくは無段で劣等生
数字なんか0点だった
ギッコンバッタン
ぼくたちは
一方あがれば
一方がさがり
いつも水平になれなかった
それでもぼくらは仲良しだった
シーソーをもういちどしたいとおもっても
ああ 人生のギッコンバッタン
ひとりぼっちではできないんだ
参照:https://miya-chu.jp/mizutani/?itemid=4264

やなせたかしさんが弟に抱いた感情
君がやりたいことは いったい何だったんだろう
君の代わりにやるとすれば 僕はどうしたらいいんだろう 
これは亡くなるまで抱き続けたテーマだった 梯久美子

千尋さんがたぶん いちばん兄貴の絵が好きだったんだなぁ 中沢元紀
(助けていく過程で)楽しませたいという形に変わった 藤田和日朗
人を助けるには心に余裕がないと難しいし 
見返りを求めてしまう 中沢元紀

❝天才であるより いい人である方がずっといい❞
やなせたかし氏が言った言葉の中で梯久美子さんの好きな言葉

弱い人困っている人を助ける 空腹 正義は逆転する
「キンダーおはなしえほん」1973年10月号
「あんぱんまん」(フレーベル館 刊)©やなせたかし

知恵その二 しなやかに信念を持っていよう
たとえ幼児向けであっても「伝えるべきメッセージはちゃんと伝える」

ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし
そして、そのためにかならず自分も深く傷つくものです。
そういう捨身、献身の心なくしては正義は行えません。
「あんぱんまん」あとがきより

最弱のヒーロー

だれも君の悪口ばっかりいっているのに
だれひとりとして君の名前も知らないのに
君はいうだろう「だれもしらなくていい 
おれは好きでやっているんだ
おれがやらなくて 誰がやるのかね」と
しかし おぼえておいてほしいんだ 世界中でたったひとり
ぼくだけは 熱烈な君のファンだよ
たとえ誰もよろこばなくても 編集者は反対しても
ぼくは君の物語をかきつづけるよ
「飛べ!アンパンマン」より

他の人と同意見じゃないと堂々と言えない人がいる
SNSの時代だからこそ自分の信念を持って
生きていくことが大事 中沢元紀

自分はこう思っているけどその意見もありだねが
❝しなやか❞ということ 2番・3番に回せるものは
回すというのが❝しなやか❞ 藤田和日朗

簡単に分るようにはしたくないと思う気持ちが柳瀬さんにはあった
梯久美子

生きることを肯定する

究極の残酷・不幸せなものを経験しながら
なお光を向いていることが一番難しい

歴史居酒屋「知恵泉」ついに女将誕生!?
初回は「曲亭馬琴」ゲストは祖父江慎さま!
楽しみでなりませぬ…。

2025年4月7日月曜日

兼題「アスパラガス」&テーマ「花」

大石静女史へ
真実は常識超えて襲い来る(無季句)
春愁う直感信じ生きゆかん
どう生きていけばよいのか春の空
春の潮吾の内側と向き合わん
多面的立体的に存えん(無季句)
春月夜ドラマに込める夢あらん

■NHK俳句 兼題「アスパラガス」
選者:堀田季何 レギュラー:庄司浩平 司会:柴田英嗣
年間テーマ「俳句のコリをほぐします」

・意気込みの一句
春風や十七音を探す旅   柴田英嗣
地球は青かった12の苗木植う   庄司浩平
(二物衝撃 破調に挑戦)

季重なり 良い季重なりとよくない季重なりがある
一句の中に2つ以上の季語が入ること

・コリポイント
① 四五人に落かかるをどり哉   蕪村
月 をどり:秋の季語 強い季語「主季語」弱い季語を「従季語」
② 夕月に大根洗ふ流れかな   正岡子規
夕月:秋 従季語 大根洗ふ:冬の季語 主季語 
木移り:一句の中に異なる季節の季語が同時に入ること
③ 日焼顔見合ひてうまし氷水   水原秋櫻子
日焼:夏 氷水:夏 季語の強弱がついていない
④ 障子しめて四方の紅葉を感じをり   星野立子
障子:冬 紅葉:秋

堀田季何
歴史的に俳句は元々挨拶のためにできたもの
「季の詞(ことば)」季語の前身 挨拶は重要 季語も大切
俳句は季語のためにあるという考えは私自身はない

ツボポイント 季重なりを恐れない 必然性があればよい 意味かぶり
消せるか❓消せないか❓で考えると良い
季語はいろんな情報を含んだキーワード 季語を信頼する
意味が被る季語を複数入れない

汗かけば氷菓に涼み暑き夏
氷菓以外は不要な言葉 氷菓以外無駄
鶯のいまだ鳴きをり春の雨
鶯の中に春の要素が含まれているので春は含まなくて良い 

季重なりの目利きに挑戦!
A 菜の花や月は東に日は西に   蕪村 名句
  春   秋
B あたたかな夕ぐれにこそ花見酒
  春          春(意味かぶり)
C 炎天の巌の裸子やはらかし   飯田龍太 名句
  夏    夏
D 霧に白鳥白鳥に霧というべきか   金子兜太 名句
  秋 冬 冬  秋(強弱がない)
E 淡雪の村訪ねゆく寒さかな
  春       冬

季重なりのポイント:かぶせず重ねる

・特選六句発表 今週の兼題「アスパラガス」
クーデター前夜アスパラガス尖る(とがる)   石井一草(いっそう)
アスパラガス晴れは夜まで続くでせう   山口晴輝
文節のやうに/アスパラガスを/切る   葉村直
アスパラガス曲がつたもののない世界   三好泥子(でいし)
爆心にアスパラガスの横たわる   貴田雄介
店主は移民白アスパラは8€(ユーロ)   平野光音座(こうおんざ)

■NHK短歌 テーマ「花」
選者:横山未来子 ゲスト:菊池銀河・横田真子 司会:ヒコロヒー
年間テーマ「三十一音で扉が開く」

短歌のルール
五・七・五・七・七   三十一音を定型という
上の句   下の句

リズムに乗せることで自分でも気づかなかった心や言葉が引き出される

・五・七・五・七・七を楽しもう
夕焼け
ひとりみた夕焼けきれいすぎたから今日はメールを見ないで眠る
小島なお「乱反射」

削ぎ落して読む人に想像させる 余白を作る
言葉を凝縮したり厳選することで
普段の言葉では表せない豊かな世界が描ける

・入選六首 テーマ「花」
荷造りのガムテープ尽き花冷のフローリングに体育座りす
吉行直人
紫陽花の小径を歩く愛犬の鼻てらてらと黒く潤ふ
藤雪陽
乗り換えの合間に買った花束を大事に抱いて吾の誕生日
滝川陽子
信号が赤ならひと息つけるかと思ふ歳なり山茶花の路
加藤重男
一席 私 はじめてのことばは「はな」と卒寿なる母がまた言う古希のわたしに
小川洋子(母にとって大事な存在である事が解かる歌)
自動ドアに挟まりていし花びらのひとつを拾う開店時間
大津穂波(いしは口語 いたの意味)

・歌人への道 短歌で心を詠むとは❓
雪の中とりのこされた靴がある子どものための青いながぐつ
安田茜「結晶質」

同じものを見ても人によって見方が違ってそれが短歌に表れている

高きにて小鳥らのこゑ瞬けり君と逢ふたび君を確かむ
横山未来子「水をひらく手」

短歌を詠むという事は五七五七七の狭い中に言葉を押し込めるのではなく
普段の言葉では表せないようなより大きな新しい世界を詠むことができる

次回の宿題「たからもの」

・ことばのバトン
木下龍也
私は犬をすごく愛していますが、別れを思うと
恐ろしくて仕方がないです。お守りになる短歌をください。

愛された犬は来世で風となりあなたの日々を何度でも撫でる
木下龍也「あなたのための短歌集」ナナロク社

委ねるなら自分の日々の生活の中で 
ずーっと心に引っかかっているものを上の句に…。

ごみ箱のサイズに茎を折り曲げて   木下龍也

2025年4月6日日曜日

100分de名著 ヘーゲル❝精神現象学❞④

春日和裏カウントを刻みつつ
心を込めた声受けとめてぬくし
春望や胸を開きて尻閉めて
一音を繋げる作業春陽かな
柔らかな音に声載せ春日向

■100分de名著 
ヘーゲル❝精神現象学❞(4)それでも共に生きていくー「告白」と「赦し」
ヘーゲル(1770-1831)G.W.F.Hegel
自由と共同性を両立する世界を築くにはどうしたらよいのか❓
キーワードは「然(しか)り」
対立するAとBが互いの矛盾を考え抜き両者を統合する「アウフヘーベン」
この「然り!」こそが ヘーゲルの示す弁証法的展開なのです

斎藤幸平 八嶋智人 伊集院光 阿部みちこ

良心
「相互承認」に現代社会の分断を乗り越えるヒントがある
道徳的社会観
カント(1724-1804) 定言命法
嘘をついてはいけない 嘘をつくな
自己が正しいと考えた判断が普遍的な意味を持つためには
「なぜ正しいのか」を皆に説明しその判断に従って果たすべき行為-
“純粋義務”を自ら皆に実践して見せ賛同してもらう過程が必要になる
「良心」の意識とは?
「良心」も伝統や宗教などに従うのではなく 自分が正しいと思うことを
自らの判断で行うという点においてはカント的な共通点がある
しかし何が正しいかは見方や立場によっても変化する
だとすれば良心は単に自分が「正しい」と思うからやるだけでは不十分
他の人たちにも善であることを承認して貰って普遍性が獲得される
対話型の道徳論

行為する意識 評価する意識 偽善と偽善

よく知り、より知っていると うぬぼれているにすぎないのに、
現になされたことを散々こき下ろし、じぶん自身をその所業の
上に置いて、みずからのなにもなさない語りが、卓越した
現実と受け取られることを要求しているわけである。

先に動くのが「行為する意識」⇨「悪である」と自己批判する
告白
告白は教養や啓蒙の意識にはなかった新たな行為
然り
相互承認が生まれる
赦さない人を「かたくなな心情」と呼ぶ
相互承認は強制できるものではない
赦してもらうことも相手に強制できないので
むしろ(相手が)逃げ出してしまう可能性もある
しかしヘーゲルは私たちの中には他の人たちと社会の中で
生きていきたいという欲求があるのでそこに「告白」と
「赦し」を通じた相互承認が成立する可能性を見いだしていた

この赦しとは自身を断念し、みずからの非現実的な本質を
捨てさることであって、この本質のかたわらに、後者の意識は
問題の他者をーこちらが現実的に行為することであったのだー
同等のものとして定立し、思想にあって行為することがまとう
規定からすれば、悪と名ざされていたものを、「善」として承認する。

弁証法に似ている 伊集院

最初はお互いが「自分が善」「相手が悪」固定化して非難しあっていたが
「自分の善は悪」「相手の悪は善」と
弁証法的に転倒させることで両者が統合される
これがヘーゲルのアウフヘーベン

相手が譲歩してきたから自分が悪だったことを
認めてやろうという横暴な行為―
これはつまりヘーゲルのいう相互承認ではありません
相互承認に必要なのは「自己批判して双方が対照的に
変わっていく」という過程 「進撃の巨人」が紹介されました

「進撃の巨人」にみる相互承認
ガビ 告白 
ニコロ 告白 
カヤ 赦し
三者の間で相互承認 憎しみ合う関係から助け合う関係へ
「森から出られなくても出ようとし続けるんだ」
ヘーゲルも相互承認で万事解決とは言っていない
有限で様々な判断をする個人が集まる現代社会で
必ず対立そのものはなくならない
だからこそ森から出続けようとする
ともに変わっていこうとする姿勢こそが欠かすことができない
批判とそれに対する応答を歴史的に繰り返す
それがなぜ起きるかというと私たちは社会の根底に
相互承認関係をひいているから
新しい知に開かれた始まりの状態 
絶対知
私たちは有限性を受け入れたうえで
それぞれが普遍的に正しいと思うことを主張していく
でもそれが完全に普遍でない以上相手の反論を踏まえながら
修正しつつ自分の正しいと思うことを打ち出していく
このプロセス自体はずっとなくならない
人間が本来持っている反省という力を手放して
動物に戻ろうとする事態になってしまう
社会の共同性を壊して自由を手放すことになる
ヘーゲルは自由を実現しようとする人間の力を信じていたと思う
どうするかは生きている私たち自身の選択にかかっている

18世紀に始まった人権問題 最初は白人男性の問題だった
それが広がり女性、有色人種、黒人、LGBTひいてはITへ

2025年4月5日土曜日

回転寿司で一句&「PHシリーズ」ポール・ヘニングセン

石鹸玉所詮ドラマは作り物
春かなし打たれて強く生き抜かん
人はみな多面的なり春の草
人生の九割苦労春の月
星朧表二割のお付き合い

■プレバト纏め 2025年4月3日
回転寿司で一句 2時間スペシャル

特別永世名人のお手本 梅沢富美男
亀鳴くや光封じる寿司カバー
(亀鳴く:春の季語 亀の鳴き声が聞こえるかのように静かなこと
 空想的な季語 季語がそぐわない) 
寿司カバーに針魚(さより)のひかり封じたり

永世名人を目指す昇格試験 中田喜子
白きねたはんなり握り桜どき
(白きねたが何なのかが気になる 
 花鳥賊(はないか):春の季語桜が咲く頃にとれるイカ)
花鳥賊のし寿司飯はんなりと

一位 大西流星
祝日の回転寿司や夏近し
(ストレートに詠嘆しただけで描きたい映像が描けている
 夏近しは映像を持たない季語 全部を包んでくれる
 季語の選び方で成功した)

二位 AYANE
念願の当たりの文字ぞ初桜
添削(回転寿司と分からない 当たりを「」囲む 初桜では野外を想像する)
ビッくらぽん!「当たりの文字ぞ桜咲く

三位 高島礼子
〆の皿名脇役やわらび餅
添削(回転寿司だと分からない)
回転寿司は人気のわらび餅

四位 知花くらら
額(ぬか)寄せて蛤の沁む卒園日
添削(季重なり蛤と卒園 潮汁:魚介類のだしに塩で味付けた汁物)
額寄せて卒園の潮汁

五位 稲田美紀
それ取って!くらでもおかんはいなり寿司
添削(全体が散文 詩情に乏しい)
稲荷寿司ばかり回転寿司の母

■新美の巨人たち【北欧生まれの心地よい灯り「PHシリーズ」】
技術者たちは昔から夜を昼に変えてしまいたいという
夢を抱いているが、それは間違いで創造性を欠いている。
私は夜が昼になってしまうのはイヤだ
眩しすぎる 眩しさは敵だ! ヘニングセン

建築家 映画製作 デザイン批評家
多彩な分野で才能を発揮 中でも証明のデザインに最も力を注ぎました
ポール・ヘニングセンは
「彼女(母)がきれいに見えるような照明を作ってあげたかった」
1925年パリ万博で「パリランプ」を発表
1926年フォーラムランプを作製 3枚のシェードで眩しさを排除
対数螺旋(らせん)を用いた
光をコントロールして下に光を形づくる
同時に形づくられたランプ自体も照らす

今日の電球工場はバルブの内側をフロスト加工して
不正確極まりない光線を発する電球ばかりを生産している。
だから電球丸ごと包み込んでやるのだ。ヘニングセン

そして「PH5」が作られた
PHアーティチョーク(1958) 72枚のシェードで光を隠した
憤りから生まれたランプ

照明器具として必要な機能を達成するためにデザインされた結果できた形

人間は爽やかな昼の光から暖かみのある夕暮れの光の移ろいに、
ゆっくりと順応するようにできている。ヘニングセン

俵屋旅館 およそ300年前 江戸中期1704年頃に創業
スティーブ・ジョブズの定宿 錦市場から徒歩8分
PH2/1ステム・フィッティング(2004)
アーネスト・スタディー
場所がものを引き寄せる -俵屋旅館11代目当主 佐藤年-

谷崎潤一郎「陰翳礼讃」(1933)中央公論新社
美というものは 常に生活の実際から発達するもので
暗い部屋に住むことを餘儀なくされた われ〱の先祖は
いつしか陰翳のうちに美を発見し、やがては美の目的に
添うように 陰翳を利用するに至った

Hygge ヒュッゲ デンマーク語で「居心地がいい空間」
「楽しい時間」「幸せを感じること」などを意味する言葉

北欧全般ですけど夜をしっかり受け入れて特に
冬は長い時期がありますので その中でどう灯りを
うまくやっていくか そんなあたりは日本の昔と
かなり似ているやり方だと思いますし グラデーションを
もって闇に消えていくのを好んでいるところがあります 小泉隆

新しいPH5は光源を作るメーカーへ追随ともいえる
これは以前と同じシェードでできている
それぞれ上中下のシェードがあるが追加部分がある

1967年 ポール・ヘニングセン 没72歳

影があるからこそ灯りというものに価値があって
人間がそこでくつろいだり 安らいだりするっていうことに
光というのが大きな影響を与えている実感した 田辺誠一

2025年4月4日金曜日

南総里見八犬伝 祖父江慎&山を音訓で詠む

陽春や肌が喜ぶ歌声を
春昼へ包み込むよに歌い出す
風光るコーラス圧倒指揮の声
春の風団員威圧指揮の声
春鳥よスタッカートよ軽やかに

■夏井いつき俳句チャンネル
【一句一遊】お便り紹介13【「山」にまつわる話・山の季語と音訓】

山四大季語
山笑ふ 
山滴る(夏山の形容を山滴るという。水の滴りとは関係なく、
青葉の蒼翠滂沱たる姿を讃える言葉である。)
山粧う(秋の山の姿を「秋山明浄にして粧うが如し」と比喩したものが出典。
    晩秋の紅葉に彩られた美しさ。)
山眠る(落葉し尽くした山々が冬の日を受けて静かに眠っているように見える)

山をやまとさんで詠んでみる
カメアシと石鎚山(さん)の山(やま)開き   家藤正人
山(やま)滴る山(さん)岳隊のお弁当   夏井いつき
富士山(さん)を見上げているのは山(やま)本君   夏井いつき
父さんが月(つき)から帰る月(げつ)曜日   家藤正人
月(げつ)桂樹匂やかにして春の月(つき)   夏井いつき
月(がつ)山に満月(げつ)月(つき)野博士の死   家藤正人

■知恵泉 べらぼう時代のソフトパワー「南総里見八犬伝」曲亭馬琴
祖父江慎 品川祐 板坂則子

絵の大切さに気づいた馬琴は葛飾北斎と組む
最初の頃は北斎も二流 馬琴も二流
10年間一緒に仕事したことで二人とも見事の花開き超一流に
「椿節弓張月」曲亭馬琴 文 葛飾北斎 絵 文章と絵が超一流
二人は10年間一緒に仕事をして成功を収めたが
以後2度と協力することはなかった

不得意を克服せず 得意技で勝負しろ!

祖父江慎
不得意なものに対して得意になるのは無理
苦手なまま突き進めば苦手な人の賛同が得られる
時代は動くから追いつくのか追いつかないのかたまたま乗るか分からない
いいとされているものに“乗っかる”のは良くない

馬琴は読本に辿り着くまでが大事だった
自分の得意技が何なのか見つけるのは難しい

品川祐
馬琴は自分が読みたいものを書き それが時代に刺さったのでは

祖父江慎
発見が次の発見を生む そのものと向き合った時 
今まで思ってなかった大切なことが見える

48歳で「南総里見八犬伝」に取り掛かる
水滸伝にアイデアを借りながら日本の歴史や伝承をかりファンタジーを記した
1973-1975連続人形劇 新八犬伝 脚本:石山透

妥協せず理想を追えば大業につながる!
武士から町人になった
武士の身分を捨てたことを後悔していた
名誉・勇気・忠義を持つより道徳・正義を持ち
社会のお手本となるそういうものに私はなりたい
武士の身分に戻る事が大きな目的となっていく
息子宗伯に期待をかける 医師として松前藩から扶持
しかし病死 そこで孫に託す 
御家人株 生活に困った御家人が身分や役職を株化して売れるようにした
そこで130両を工面しようとした
八犬伝の世界の中へ理想を映し出そうとした
天保11年(1840)74歳 目が見えなくなる
八犬伝を諦めるわけにはいかないので アルバイトを雇って
口述筆記させたがすぐに辞められてしまう
困り果てた馬琴を助けたのは息子宗伯の妻お路でした
水戯自得(すいれんじとく)の老婦(おうな)にあれば
一字一句教え膨大な時間をかけて八犬伝を書き上げました
天保13年(1842)完成

祖父江慎
話の作り方の巧さ 書きっぷり 原文は怖い 

お路がお路らしく生き出したのは夫が死んだあと
生きていく目的を見出した
戯作の地位が上がっていく
鴎外や漱石のような立派な地位の人が小説を書いても恥ずかしくない
馬琴が小説家の地位を上げた
自分の本が世の中を変えていく 人間を高みに連れて行く
稗史七則 馬琴がまとめた小説の創作技法
隠微(いんび) 作者が書いた文章に隠されている本当に伝えたいメッセージ
百年後も読まれ続けその時代の読者にも自分の真意を届けたい

祖父江慎
ほどほどに妥協は必要 妥協しつつもそれに伴う残念と向き合い続ける

馬琴の周りは大変だった

板坂則子
馬琴の一生は挫折の連続 本当に自分がダメになってしまいそうな
挫折にあった時 どうやって自分を信じるか 自分の力を信じて立ち上げるか❓
大業を成し遂げる人との違い

祖父江慎
うまくいかないことが多い程、わくわくしてしまうのでは❓
思った通りのものが出てくると楽しくない 
馬琴もうまくいかないことを楽しんでいたかも❓
上手にいくと退屈 

品川祐
馬琴は48歳から書き始めたんだから
52歳だから書ける事ってあるよなあ

2025年4月3日木曜日

こころの時代 西田幾太郎

仲春や背を伸ばしたる高き声
春日和臍から胸が声ださん
背中から遠くへ声を風光る
春の空抑揚揃え歌い出す
芳春や字面を肌で感じきる

■こころの時代 西田幾太郎 悲しみの❝底❞をみつめて
西田幾太郎(明治三年~昭和二十年)

我々の現実の世界 日常の世界が何であるかを 
よく摑(つか)んで見なめればならない。
そして其処から学問、道徳、宗教などの
立場を考へていかなくてはならない。
我々の最も平凡な日常の生活が何であるかを
もっとも深く摑むことに依つて最も深い哲学が
生まれるのである。(歴史的身体)

純粋経験
経験するといふのは事実其儘に知るの意である。
全く自己の細工を棄て、事実に従うて知るのである。
例えば、色を見、音を聞く刹那、未だ之が外物の作用であるとか、
我が之を感じて居るとかいふやうな考のないのみならず、
此色、此音は何であるといふ判断すら加はらない前をいふのである。
(善の研究 第一編 純粋経験)

主体 客体 主客未分 純粋経験 

平常無事の時には何事も分つた様で容易なる様であるが、
一旦不慮の不幸に際会し実地に此身此心を苦しめる時には
心底に潜伏せる疑問は蜂の如くに起りて忽(たちま)ち暗澹たる
疑惑の深抗に陥らぬ者はないのである、(略)
生は何処より来り死は何処へ去るのであるか、人は
何の為に生き何の為に働き何の為に死するのであるか、
これが最大最深なる人心の疑惑である。(人心の疑惑)

哲学の動機は「驚き」ではなくして
深い人生の悲哀でなければならない

理性の上よりして云へは軍人の本懐と申すへく当世の流行語にては
名誉の戦死とか申すへく女々しく繰言をいふへきにあらぬかも知らねと
幼時よりの愛情は忘れんと欲して忘れ難く思ひ出つるにつれて
堪え難き心地致し候 昨日満身元気 意気揚々として分れし者か
今は異郷の土となりて屍たに収むるを得す(略)
人生はいかに悲惨なるものに候はすや(明治三十七年山本良吉宛て書簡)

今まで愛らしく話したり、歌つたり、遊んだりして居た者が、
忽ち消えて壷中の白骨となると云ふのは、如何なる訳であらうか。
若し人生はこれまでのものであるといふならば、人生ほど
つまらぬものはない、此処には深き意味がなくてはならぬ、
人間の霊的生命はかくも無意義のものではない。死の問題を
解決するといふのが人生の一大事である、死の事実の前には
生は泡沫のごとくである、死の問題を解決し得て、
始めて真に生の意義を悟ることができる。(「国文学史講和」の序)

西田さんはボクもよみ出した えらい人がえらい事を
し出したもんだと思つて驚嘆しながらよんでゐる
実際こつちの不真面目な所へ棒喝を食つてゐるやうな気がするね
(大正六年 松岡譲宛て書簡)

死にし子の夢よりさめし東雲の窓ほの暗くみぞれするらし
(大正九年の初夏の頃 長男謙の死にあひて 自撰詩歌集)

運命の銕(てつ)につなかれてふみにしられて立つすべもない
(大正十一年十二月 自撰詩歌集)

悲しみ×運命
人間の存在自体が持つ悲しみ

わが心 深き底あり よろこびも 憂の波も とゝかじと思ふ
(大正十二年二月二十日 自撰詩歌集)

わからない=「無」 絶対無

世界と云ふものは絶対無い、無である。併し無であると云ふこと
それが即ち 我々の個物を成立たしめるところの意味を
有つて居る本当の世界である。かう云ふ風に見える。
(現実の世界の論理的構造 第二講)

戸坂潤 三木清 田邊元

無の論理は論理ではない、なぜなら、それは存在そのものを
考えることは出来ないのであって、ただ存在の「論理的意義」だけを
しか考え得ないのだから(「無の論理」は論理であるか)

我々の自己は此の世界から生れ、此の世界に於て働き、
此の世界へ死に行くのである。(略)此故に我々の自己は、
創造的世界の創造的要素として歴史的世界を形成し行くのである。
(哲学論文集第四補遺)

  限定
世界 ⇨ 個人
  相互限定

人間は新しい世界・歴史的世界を創造していく

世界=自己を殺すもの 生むもの

矛盾的自己同一的現在として、自己自身を形成する世界は、
多と一との矛盾的自己同一世界であり、かゝる世界の個物として、
何処までも自己自身を限定する我々は、無限なる欲求で
なければならない、生への意思でなければならない。
而して世界は我々を生むと共に我々を殺すものでなければならない。
世界は無限ある圧力に似て我々に臨み来るものである、何処までも
我々に迫る来るものである。我々は之と戦ふことによつて生きるのである。
(絶対矛盾的自己同一)

人間の尊厳
ブリーフケア 深い悲しみを抱えた人に寄り添う

我々の自己は物となつて見、物となつて働くと云ふ、
物来つて我を照らすと云ふ。
此処では、我々は物を自己から離して、対象的に見て居るのではない、
身心一如的である。(知識の客観性について)

無心に 物来つて我を照らす しないわからないまま聞く

エンドオブライフケア

自己の永遠の死を知ることが、自己存在の根本的理由であるのである。
何となれば、自己の永遠の死を知るもののみが、真に自己の個たることを
知るものなるが故である。それのみが真の個である、
真の人格であるのである。死せざるものは、一度的なものではない。
繰り返されるもの、一度的ならざるものは、個ではない。
永遠の否定に面することによって、我々の自己は、真に
自己の一度的なることを知るのである。故に我々は自己の永遠の
死を知る時、始めて真に自覚するのである。
(場所的論理と宗教的世界観)

日常の底を生きる

昭和20年6月7日没 享年75

神は美しき詩の如くに 対立を以て世界を飾った、
影が画の美を増すが如く、若し達観する時は
世界は罪を持ちながらに美である。
(善の研究 第三編 善)

2025年4月2日水曜日

松平定信&無季の話&明月余情

幸せに気付かぬ人よ春の雲
幸せな心描きて長閑なり
芳草や市井の女を演じ切る
春潮や全ての女(ひと)をリスペクト
眼力と画力を持ちて春の浪

■偉人・敗北からの教訓 第85回「松平定信・度が過ぎた寛政の改革」

定信「ならば幕府を支える立場で
権現様や吉宗公のように歴史に名を残そう」

門閥「我々の抹持米まで減らすなど聞いておりませんぞ!」
定信「領民の為だ 倹約質素は我を手本にせよ」
「宇下人言」より意訳

定信「仙台では40万人が亡くなったと聞くが
   我が領国では餓死者は出なかった」
「宇下人言」より意訳

定信「女を増やし結婚を推奨しなければ
   人口も年貢も増えない」

定信「金銭 穀物が滞りなく流通し世が平穏になるよう
   自分の一命のみならず 妻子の命もかけて乞い願う」

「御年若し 末頼もしく思ふものは松平中守(定信)」

定信「これまでは橋に無宿人たちが連なっていたが
   今はいない 盗賊なども減ったと聞く」

松平定信 敗北の伏線
改革を進めるには強い使命感と有力者への根回しが重要!

定信「皆 大飢饉の時の混乱を忘れてしまったのか❓」
幕府重鎮「あと10年はお勤め頂きたい」
「宇下人言」より意訳

定信「ならば引き続き緊縮を進め 歴史書に倣い
   9年の凶作にも耐えうる国を目指しましょう」
「政語」より意訳

定信「中国の為政者はまず飢えと冷えから民を守り
   その上で道徳を説き国を豊かにした」
「政語」より意訳

定信「そもそも酒というものは高ければ飲むことが少なく
   安ければ飲むことが多くなるものだ」
「宇下人言」より意訳

白河の清きに魚も棲みかねてもとの濁りの田沼恋しき

幕府重鎮「定信の老中首座 将軍補佐の職を解く」

松平定信 敗北の瞬間
命を大切にした政策はお見事 しかし過信し やり過ぎてしまった

未だ欲を無くすことが出来ない
ことに名誉欲は金欲や色欲よりも強いものだ
「修業録」より意訳

「世の中に蚊ほどうるさきものはなし
ぶんぶ(文武)というて寝てもいられず」
狂歌師 太田南畝

松平定信の敗北から学ぶ教訓
時代の流れを見極める

■夏井いつき俳句チャンネル
【一句一遊】お便り12【無季の話「季語ってなくていいの?」】
「季感がある」
明確な季語は無いけれど、季節の気分は十二分に感じられる、
というのは一つのジャンルとして俳句では認められている

季語有グループ 季語がある
季語無グループ 季感はあるけど季語はない
        季語や季感はないけど詩になっている

「無季」
しんしんと肺碧きまで海の旅   篠原鳳作

有季定型で詠んで欲しい 夏井いつき先生 家藤正人先生

■べらぼう~蔦重永華乃夢噺~(12)俄なる「明月余情」
鳥が啼く東の華街(いろざと)に
速戯(にわか)をもてあそぶこと
明月の余情(よせい)を儲(もう)けて
紅葉葉の先駆けとせんと
ある風流の客人(まれびと)の
仰(おう)せを秋の花とす
我と人と譲りなく
他(ひと)と我との隔てなく
俄(にわか)の文字が調(ととの)いはべり
朋誠(ほうせい)しるす

「べらぼう」一話より拝見していますが初めて
胸が熱くなり涙が零れ落ちました…。感動致しました…。

2025年4月1日火曜日

あの人に会いたい やなせたかし&スプリングパーティー

亀鳴くや西行のごと逝けたなら
地蔵院五色の八重よ散椿(ちりつばき)
蜆花(しじみばな)ちらちら揺らす春の風
信長や三月に切る蘭奢待(らんじゃたい)(天正2年正倉院収蔵香木)
(武相荘)木瓜(ぼけ)、椿、梅に桜に李(すもも)咲く

■あの人に会いたい やなせたかし(漫画家)
漫画家 やなせたかし 2013(平成25)年 94歳没

正義の味方なら そこにひもじい子どもがいれば
食べる物をあげるのがいちばん正しいと思った
怪獣をやっつけるというより おなかがすかないように
してあげるのが正しいと思った

正義っていうのは逆転する 僕らは兵隊にいって
向こうにやられたときに 「これは正義の戦いで
中国の民衆を救わなきゃいけない」と言われた
ところが終わってみれば 俺たちが非常に悪いやつで
侵略をしていたってなる だから要するに
戦争には真の正義というものはない

アンパンマン「さあおれのほっぺたをすこしかじれよ
えんりょするな ガブリといけ 

正義を行なう人は自分が傷つくことを覚悟しなくちゃいけない
だからアンパンマンは自分の顔をあげる自分のエネルギーは
落ちるんだけど それはそうせざるをえない そうしなくては
しかたがないという そういう正義には一種の悲しみというか
傷つくところがある そんなに格好いいものじゃない

そうだ おそれないで みんなのために 
愛と 勇気だけが ともだちさ
69歳でつかんだ代表作でした

なんのために生れて なにをして生きるのか
こたえられないなんて そんなのは いやだ!
今を生きることで 熱いこころ 燃える
だから君はいくんだ ほほえんで

「詩とメルヘン」30年以上無報酬でイラストレーターや詩人を
目指す人たちが作品を発表する雑誌の編集長です。

世の中に出ていくときに何もないんですよね
何もないところに僕らは売りだしていくから
どこかに手がかりが欲しいんだけどなかなかない
だから僕の場合はそういう手がかりを いくらかでも
チャンスをあげられるようにしたい

2011年3月11日東日本大震災
当時、やなせさんは90歳を迎え引退を決意していました
ラジオ番組に多数のアンパンマンの反響が寄せられていた

現地の子どもから手紙が来る「私は少しも怖くない」
「いざというときはアンパンマンが助けに来てくれるから」と
書いてある そう信じているなら やっぱりなんか
それに値することをしなくちゃいけない
「ぼくが 空を とんでいくから きっと 君を たすけるから」
と、記しました

アンパンマンそのものはどうも生きるんじゃないかと思う
晩年に このヒーローにめぐりあったので もう夕日なんです
その中で 君にあえてよかったと 思っています

漫画家 やなせたかし 1919-2013

■2025年3月30日 
内海ダンススクールスプリングパーティーへ

ゲストは福田裕一&エリザベス・グレイ組(Segue「鶴の恩返し」)、
立石勝也&裕美組(PasoDoble&Samba&Rumba)、
青木康典&知子組(Quickstep&Waltz&Tango)でした。
感動のダンスをご披露くださいました。
また、最高のTalkを楽しませて貰いました。
立石勝也先生の紀代先生へのお心遣いにも胸が熱くなりました。

今回の収穫は赤堀恵佑&山岡千恵組!
キレ&安定感を備えた素晴らしいCoupleでした。
頑張ってくださいね。

食事の時にはミニライブがありました。
Nuages BleuヌアージブルーVi:谷崎雅之 Gu:西平元気
「愛の賛歌」に始まり「Libertango」で盛り上げて下さり
最後は「My Way」で閉めて下さいました。素晴らしかった…。

お隣の席にいらした赤池唯人先生(医療法人赤池循環器消化器内科院長)、
仲良くして頂きありがとうございました。
嬉しかったです。

杉本順子先生のダンスを見逃したのは不覚でした。
次回は何が何でも拝見いたします。

内海紀代先生!来年(2026年3月26日)も期待しています。
感謝を込めて…。




2025年3月31日月曜日

教室俳句&46人のことばのバトン

欲もなく生き存えて春疾風
春の泥疑え規範、価値観を
常識の向う側こそ春時雨
春の暮多面性もつ人生よ
春潮や苦しきことの多かりき

■NHK俳句 スペシャル はみだせ!教室俳句
出演 夏井いつき

第1回全国教室俳句コンテスト
夏のベンチあついさくらんぼたねでかい
どこに行く山に湖冬の雨
長縄の八四回冬の朝

・山本巧先生
Step1 思い出表でオリジナリティ
Step2 思い出表から五・七・五

パンケーキ積んで積んだら青嵐
月見草ゴルフで飛んだ一〇〇yd(ヤード)
春寒しテレビが来たから真面目にね

ころがって大人になるぞ雪だるま
雪つもり溶けるか監視地面見る

風光る心のことば手渡せば   山本巧(先生)
学級経営の柱に俳句を据えれば言葉が育つ心が育つ

・山本純心(すみと)先生
助詞の表現
(手話は)一つの動作で「雨が降る」という事を意味して
(手話は)助詞を使わなくても豊かな表現方法がある
俳句の場合はどうしても助詞を使わないといけない部分があるので
ある意味困りだった
「の」なのか「は」なのか「が」なのか
迷ったら(俳句が)嫌になっちゃうので
困ったら「の」「の」から入ろうよって
助詞「の」にこだわった俳句づくり

聞こえずに目合図して秋の風

国語の毎時間メイクの勉強
モデルがない状態でやれって言っても難しいので
こんなことも あれもいいんだ ということを
知る装置でもあるのかなと

春の風邪声(かざごえ)を飾りてゐるやうな   髙橋順子
  かざ       かざ
似ている音を入れてくっていうことで
音の調節してるって意味がある
「へぇ」とか「なるほど」率が高い 授業はやりたいなと
知る・わかる・できるっていう順番で「知る」がないと
「わかる」も「できる」も繋がらない 聴覚に障害を
持っている子供たちだけれども気づきとして同じ「音」を使う
韻を踏むという事を圧倒的に教えている
知っておくという事は(表現の)幅を広げるためにも
必要じゃないかなと

名句を味わうという事はテクニックとか言葉 季語とか
そういうもの全部 一緒に学べる 名句を自分の創作の
糧にしていく とても大事 芭蕉あたりから若い人まで
ランダムに名句として教えている 先生が目的を持って
選んでいるような気もする 隙間時間で応募作品作りをしている
いつき先生

賞に入る事はゴールでは全く無いけれど自分を全く知らない人が
選んでくれるっていう経験は意味があるのかなとは思っていて
ある時を境に言う事を聞かなくなる時がある 俳句の“第二次反抗期”
大人に言われた事に「違うんだよ」って言える その時に
私の一つの役目が終わる 自分の力でやっていくことが
出来るようになったら それは生きていく中でも決して損ではない

俳句を作り終わった後 気持ちがいい感覚があります 
(俳句で)自分の考えを表現したい 生徒

後れ毛をさわる年頃夏はじめ   高3女子
鳥のため扉を開く春の空   高2女子
十五夜のうさぎの声は静かかな   高1男子

青空の嘘ばかり言うトマトかな   高3女子
「の」は曲者 先生の指導が実っている
青空嘘ばかり言うトマトかな

生徒から先生へ
冬風やともに歩んでありがとう
あなたから教わり忘れずに葉月
(葉月は山本先生の誕生月です)
冬日和恩師に感謝告げる猫
教壇に立つ担任の目の合図
(ろう学校は”目”がとても大事なので見ること=信頼)

知る事が彼らの世界を広げる基礎なのでいろんな事を
伝える事は彼らの生きる事には繋がると思っています
最初から「はみ出す」事が意図じゃなくて 後々結果として
はみ出ちゃった 結果として「はみ出ちゃう」事が
ゴールなのかな

あの子たち一人一人が先生の事を心の中に置いて
どんなふうに歩み出していくのか 
追跡ビデオが見たいです いつき先生

■NHK短歌 スペシャル「46人のことばのバトン」
枡野浩一 青松輝(あきら) 宮田愛萌(まなも) 司会 尾崎世界観

つなぐときバトンはしっぽだったから   岡野大詞(歌人)
つかみそこねて仰ぐ青空   岩下尚史(作家)
神様の盃にぬる燗注ぎ足して   金井真紀(文筆家)
会議室との通信を切る   桜井あらん(会社員)
ひび割れたメガネで明日をのぞいてる   藤井渚央(高校三年生)
春夏秋冬咲け山桜   池野弘葉(高校二年生)
あの歌も羽根もいっしょに埋めました   梅﨑実奈(書店員)
「希望」と名付けた木の根本へと   小坂井大輔(中華料理店店主)
ブランコをこいで足から陽を受ける   上本彩加(会社員)
苦しくても今ぼくらは始まる   高山邦男(タクシー運転手)
区役所で出生届型破り   FUNI(ラッパー)
過去退(の)けたるは春筍か   井口五郎(音楽書籍編集者)
竹の秋触れては破れ土筆水母   ドゥーグル・リンズィー(海洋生物学者)
午後のおやつはいちご大福   矢沢𠮷見
もちもちで包んだ幸せほおばって   小宮山碧生(中学三年生)
盤駒がある生まれたる家   先崎学(棋士)
上の空グラスホッパーならばただ   短歌AI&浦川通(開発者)
触角で穴をあければ雷雨   涌田悠(ダンサー・振付家)
闇のなかただとんでみるとんでみる   初瀬勇輔(視覚障害者柔道家)
鼓動のリズム「此処にいるよ」と   真山りか(私立恵比寿中学)
目を閉じて戦いに揺れる無窮の野   ガリーナ・シェフツォバ
(キーウ国立建設・建築大学教授)
誰のバトンも落とさず走れ   久永草太(獣医師)

打ち水に一瞬架かる虹だった   岡本真帆(歌人)
朝目が覚めてもそこにいるサボ   岩手県立盛岡第一高校文学研究部
ぷるぷるぷるつれない君の河鹿鳴く   尚学館高等部
ぼくらの隙間を抜けてゆく風   高田高等学校
君の目が掃いたところはより緑   筑波大学付属高等学校
仰いだ空に光彩の舞う   富山県立伏木高等学校如意ヶ丘
黒板に「・」だけ残る昼休み   岐阜県立飛騨神岡高校文芸部
ざわめきながらしんとしている   池松舞(作家・野球短歌)
貨物列車聴く僕たちのアナキズム   工藤ひすい(高校一年生)
車道爆走津軽のかっちゃ   斉藤新吾
あおられてよろめくはずみ第一歩   寺嶋由美(アイドル)
⑩分前にここに来てくれ   吉田尚記(ニッポン放送アナウンサー)
幕上がり扇子を置けば別世界   桂蝶の治(落語家)
我らは創る夢の架け橋   内堀克利(俳優・殺陣師)
アレの日玉子を割れば黄身ふたつ   かまちよしろう(漫画家)
ひとしずくの夢足音ははずむ   篠原香代
(みなかみまるごと短歌プロジェクト実行委員)
勢車付きの玩具のあった頃   田村吉廣(みなかわ町牧水会会長)
仮面の男の返信を待つ   村井光男(ナナロク社代表)
雪の夜踊る男と飲む麦酒   宮城マリオ(エアギタリスト)
とける陽を呼ぶまばたきの人   南阿沙美(写真家)
声が射す鋼宿せし心根に   天中軒すみれ(浪曲師)
真に活きるは闘うことだ   ビナ(ラッパー)

何度でも「はじめまして」を言いたくて   枡野浩一(歌人)発句
しばし眠って春を待ちます   竹田紗紀子(日本女子大短歌会)
暖かな風とスカートたわむれて   高橋花歩(日本女子大短歌会)
エグい花粉も聴こえない庭   ほきゅみ(東京農工大短歌会)
ほこり立つ突風に散る梅の花   枯芝(東京農工大短歌会)
毒をはぐくむ桜木の陰   三々凪四葩(同志社大短歌会)
舌のうえ炭酸の味うすれつつ   不凍港(同志社大短歌会)
胸が背中がどこまでも向く   府田確(神戸大短歌会)青松推します
工場の煙が遠く立ち上る   奥村鼓太郎(神戸大短歌会)
空のあなたはどうしてますか   本間大智(妙円寺住職)
愛しぬく想いを継いで歌詞にする   ガールズトーク(ラッパー)
野原が花で満ちてくように   コールレイ(ラップ歴3年)
青々と匂う木々たちリズム風   長沼七海(書店員)
バンドをやろうか還暦だもの   國兼秀二(短歌研究編集長)枡野推します
ブラボーが降りそそぐようなステージに   ファブリ(イタリアン歌人)
今日はじめての私がいます   藤田衣里子(東洋大学コンクールスタッフ)
初夏に聞く蝉の歌声初々しい   神田日陽里(高校三年生)
命の限り歌えよ恋を   田村裕(高等学校教諭)
制服の内ポケットが光りだす   伊藤敏恵(NHKJアナウンサー)
岸に寄すさざ波のように幾たびも娘をなでる我海になる   伊藤敏恵
乱反射せよ呪(まじな)いのペン   ニコ・ニコルソン(漫画家)
まっさらな白紙を前に全能感   金子崇(漫画編集者)
きみの香りが残る窓際   文月悠光(詩人)

〈アリア〉というハンドルネームの友だちは   青松輝(歌人)
大気の奏でる曲のような娘   青森県立八戸西高校文芸部
詩奏行く先々に幸せを   秋田県立大曲農業高校太田分校
風船葛の中に込めて   星野高校文芸部
Twilightよい子は家へ帰りましょう   興南高校俳句部
ママのカレーの香りにつられ   富山県立伏木高校
母さんがいるからここは故郷で   気仙沼高校文芸部
真っ白な帆が風に広がる   杜崎ひらく(歌人)
はじめての海にほほえむ君の頬   中前安弘(スムージー・サラダ店店主)⇩青松流れ推し
脊柱起立筋のサメを見ろ   上野俊彦(日本ボディビル・フィットネス連盟)
赤胴の漁師の顔と瓶ビール   肥沼和之(ジャーナリスト・バー店主)
燃える夕日に連なるカワウ   田向健一(獣医師)
鵜のいろの空に朝日をのぼらせる   谷口奈月(フリーアナウンサー)
生きる輝き背中を押され   松田茂(コピーライター)
走りたい足がはいてたハイヒール   宮田愛萌(作家・タレント)⇩枡野流れ推し
プライド脱ぐから置いてかないで   律月ひかる(いぎなり東北産)
見た目より脱ぐとすごいゼメンチカツ  那波秀和(スーパーマーケット社長)尾崎推します 私 
八ツのフモトでげん氣売るかナ   まつむらまさこ(絵本作家)
志望校俺だけ落ちて歯を見せる   麻布競馬場(小説家)宮田推します 私
あらたな道へ心機一転   八木冨美子(江北氷川神社名誉宮司)
掛けなおすボタン緋色の春が立つ   小川優子(歌人)
墓石がにやり「あんじょうやりや」   大西里枝(扇子店四代目)
「あい、わかりました」と払う大きな手   池上規公子(葉ね文庫)
あるけば花びらも踏むだろう   ねべとびすこ(歌人)

2025年3月30日日曜日

あの本、読みました?2025年本屋大賞ノミネート作品徹底解剖

空き缶がからんころんと春の街
地蔵寺やお遍路癒す梅の香
耕した地面ほっこり春畑
春の陽や猫のあくびの移りけり
風を読んだか抗ったのか遅日

■あの本、読みました?
2025年【本屋大賞】ノミネート10作品すべて徹底解剖
鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔P
青山美智子 内田剛 間室道子 河北壮平
早見和真 庄野樹 金子玲介 奥村元春

「アルプス席の母」早見和真
「カフネ」阿部暁子
「禁忌の子」山口未桜
「恋とか愛とかやさしさなら」一穂ミチ
「小説」野﨑まど
「死んだ山田と教室」金子玲介
「spring」恩田陸
「成瀬は信じた道をいく」宮島未奈
「人魚が逃げた」青山美智子

「本屋大賞」ノミネート作品 今年の傾向は❓
傾向がないのが今年の傾向 まさに多様性

・作家・青山美智子
2017年「木曜日にはココアを」でデビュー
【本屋大賞5年連続ノミネート】
2021年「お探し物は図書室まで」
2022年「赤と青とエスキース」
2023年「月の立つ林で」
2024年「リカバリー・カバヒコ」
2025年「人魚が逃げた」

「人魚が逃げた」
銀座を舞台に選んだ理由
人魚を描いたきっかけはニシキヘビ? 思ったことはその人の真実になる

「夢は静か」の一文 青山美智子著/PHP研究所
4章 夢は静かより
「原稿、書いてたの?苦戦中?」
その吞気さにちょっとイラついて、おれはつっけんどんに答えた。
「うん。まあ、読めば三分で終わるような短い話だけど」
「そうなんだ」多恵はいつものように「よくわからないけど」
と前置きし、こう続けた。「だけどその三分の間に、あなたが
書いた一行で人生が変わる人がいるかもしれないんでしょう?」

文学に興味のない妻の一言

「遊園地ぐるぐるめ」青山美智子・田中達也/ポプラ社

早見和真 金子玲介
「本屋大賞」ノミネートの心境は❓

・「ひゃくはち」早見和真著/集英社文庫
元高校球児の著者が自身の経験をもとに描いた
名門校補欠球児たちの物語 2008年発売のデビュー作
母親視点で高校野球を描こうと思ったきっかけ
「アルプス席の母」早見和真著/小学館
亡くなった母親と対話をしながら執筆

「アルプス席の母」の一文 早見和真著/小学館
「ちょっともう勘弁してくれよ。いくらなんでも泣きすぎだって」
いよいよ入寮を翌日に控えた夕食時、
しびれを切らしたように航太郎が眉をひそめた。
せめて航太郎には悟られないようにと気を張っていたつもりだったが、
あまりに狭い家の中で隠し通すことなんて不可能だ。
「いや、ごめん。わかってるんだけど。本当にごめん」
食卓には航太郎の好物をこれでもかと並べた。
お寿司に、ステーキに、カルボナーラのスパゲティ、
なぜか昔から大好きだったほうれん草のおひたしと、
明日からしばらくは作ることのなさそうな豚汁、
炭水化物ばかりとわかっていたが白いお米もいっぱい炊いた。
航太郎と共にする最後の夕飯。
本当は焼き肉を食べに行くつもりでいた。
そのために本城先生からおいしいお店の情報を仕入れ、
航太郎も楽しみにしていたはずだったのに、
昼頃になって突然恥ずかしそうに言ってきた。「あのさ、
やっぱり最後はお母さんのご飯が食べたいんだけど、ダメ?」
今日一日はなんとか笑顔でやり過ごそうと思っていたのに、
その言葉が引き金となった。
「ダメじゃない。実は私もそう思ってた。
ちょっと買い物いってくる。航太郎の食べそうなもの全部つくる」
一人でハンドルを握っている間も、商店街で買い物をしている間も、
アパートに戻ってキッチンに立っている間も泣いていた。

大阪を舞台に選んだ理由
驚きのエピローグ創作秘話

・「死んだ山田と教室」金子玲介
作家 金子玲介
1993年 神奈川県生まれの元会計士
2023年「死んだ山田と教室」でデビュー
「第65回メフィスト賞」を受賞

声だけ蘇る設定 なぜ思いついた❓

「死んだ山田と教室」の一文 金子玲介著/講談社
第二話 死んだ山田と夕焼けより
「実わさ、このあと人とまちあわせてて、
それまで時間潰さなきゃいけねぇんだよなぁ」〈へぇ〉
「六時から映画見ることになっててさ」〈ふぅん〉
「…え?誰と待ち合わせしてるかって?」〈だから聞いてねぇって〉
「いやぁ、実は女の子と待ち合わせしててさ~」
〈あーうるせぇうるせぇ。そんなつまんめぇ話しかしないなら帰れ〉
「リアルで会うの初めてなんだけど、
写真見る限りではけっこうかわいいんだよなぁ」
〈うるせぇうるせぇうるせぇ死ね〉
「あー人に死ねとか言っちゃダメなんだぞ!」
〈いいんだよ、俺死んでんだから〉「…そういう問題か?」
「でもさ、相手社会人なのに、」別府があくびを噛み殺し
「こんな夕方にデートとかできるの?」久保に顔を向ける。
「はぁ?」「いや、仕事とかあるだろうしさ。
普通もっと遅い時間に待ち合わせじゃない?」
「いや相手も学生だけど」久保が眉をひそめる。
「えっ?」別府が寝そべったまま、身体を転がして久保を凝視する。
「水泳部なのに?」久保は少し考えた後「山田、助けてくれ。
別府が不思議ちゃんすぎて会話になんねぇ」
〈藁科が熟女好きだからじゃん?〉「…ん?」
〈ほら藁科、望月先生のことめっちゃ好きじゃん。
だから同じ水泳部の久保も、熟女好きなはずってことだろ?〉
「そういうこと」
別府が右腕をぐっと伸ばし、天に指を突き立てる。

クラスメイトたちの描き方

SNSを出さない理由
読者の反響は❓

「2025年本屋大賞」4月9日発表

2025年3月29日土曜日

方丈記&サーカス&「竜天に登る」

霾(つちふる)や陽射しは弱く風はなく
春風や祖母の形見で街闊歩
ビスケット口いっぱいに春の色
ほろ苦きチョコまたひとつ春日向
歯ごたえのある硬きせんべい日永

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「竜天に登る」

長い季語です この「竜天に登る」とはどういうものかというと 
もちろん 空想上の生物であります竜 それが本当にそのまま
天に昇るわけではないわけですね この季語は時候の季語になります
一年の間のこの位の時期 そういうものになってきます
ではどの辺りの時期なのかといいますと これは仲春の季語になります
春分の前後といいますか 中国の説文解字という文章の中で
秋分、秋の頃になると竜は淵へと沈み 春、春分の頃になると
沈んだ竜が天へと昇っていく そういうふうに語られています
時候の季語というのは明確な映像を持たないのが
特徴ではあるのですが この季語は「竜天に登る」という
いかにも本当に生物がいるかのようなこの言い回しから
独特な描かれ方をする事も多い季語になっています
俳人好みの季語でございます

■10min.ボックス古文・漢文 方丈記(鴨長明)
行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。
よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまることなし。
世の中にある人と栖(すみか)と、またかくのごとし。

知らず、生れ死ぬる人 いづかたより来りて、いづかたへか去る。
また知らず、仮の宿り、誰がためにか心を悩まし、
何によりてか目を喜ばしむる。
その主と栖と無常を争ふさま、いはばあさがほの露に異ならず。

鴨長明の人生と「方丈記」
後鳥羽上皇に認められ四十代の時新古今和歌集の編纂の職に就く。
五十歳で出家。その八年後、書き上げたのが「方丈記」

火(大火) 辻風(竜巻) 都遷り(ミヤコウツリ) 飢渇(飢饉) 大地震

空には灰を吹き立てたれば、火の光に映じて、あまねく紅なる中に、
風に堪へず、吹き切られたる焔飛ぶがごとくして、
一二町を超えつつ移りゆく。その中の人現し心あらむや。

人のいとなみ 皆愚かなるなかに、さしも危ふき 京中の家を作るとて、
宝を費やし、心を悩ます事は、すぐれてあぢきなくぞ侍る。

すなはちは 人みなあぢきなき事を述べて、
いささか心の濁りも うすらぐと見えしかど、
月日かさなり、年経にし後は、ことばにかけて言ひ出づる人だになし。

語り継がれる「方丈記」
芥川龍之介「本所両国」を発表
その最終章は「方丈記」
知らず、生れ死ぬる人、何方より来りて、何方へか去る」…

方丈の庵 終の棲家とした この庵で人生を振り返り記した
ゆく川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。

■10min.ボックス現代文 サーカス(中原中也)
「山羊の歌」
幾時代かがありまして
  茶色い戦争ありました

幾時代かがありまして
  冬は疾風吹きました

幾時代かがありまして
  今夜此処での一と殷盛り(ひとさかり)
    今夜此処での一と殷盛り

サーカス小屋は高い梁(はり)
  そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ

頭倒(さか)さに手を垂れて
  汚れ木綿の屋蓋(やね)のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

それの近くの白い灯が
  安値(やす)いリボンと息を吐き

観客様はみな鰯
  咽喉(のんど)が鳴ります牡蠣殻(かきがら)と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

屋外は真ッ闇 闇の闇
夜は劫々(こうこう)と更けまする
落下傘奴のノスタルヂアと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

葛藤を生きた詩人

「汚れっちまった悲しみに…」より
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

「少年時」より
私は希望を唇に噛みつぶして
私はギロギロする目で諦(あきら)めていた…
噫(ああ)、生きていた、私は生きていた!

音の響き オノマトペ
「一つのメルヘン」
秋の夜は、はるかの彼方(かなた)に、
小石ばかりの、河原があつて、
それに陽は、さらさら
さらさらと射してゐるのでありました。

「サーカス」
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
七五調で書かれている
同じ言い回しやくりかえしが使われている
それが歌うようなリズムを生み出している
心の奥底の風景を描き出している

2025年3月28日金曜日

春の上野で一句&「雁風呂」&なべおさみ

春の空思いは深く増えにけり
人生を変えるきっかけ春の風
亡き人へ思いを寄せん春の霜
ほころんだ蜂須賀桜春の鳥
鳥雲にいる権力は嘘をつく

■プレバト纏め 2025年3月27日
春の上野で一句

特別永世名人締めの一句 梅沢富美男
六(りく)合を花に埋もるる上野山
(六合:上下四方という意味 この句には風格がある)

俳句史に残る句集作り 永世名人 横尾渉
通過待ちのA寝台や雪のひま
(A寝台:寝台列車の個室 手堅い一句 作者の感動が詠まれている
季語:雪のひま 雪が解きだし所々に地面が現れること)

一位 みりちゃむ
夜桜の帰路Ado歌う呑んだくれ

二位 伊原六花
上野にて春の雨まで美術かな
添削(美術では範囲が広すぎる 絵画めくとは絵画であるかのよう)
絵画めく上野春の雨もまた

三位 二階堂高嗣
春の霧待ち焦がれた父の車
添削(言いたいこと字づらに隙間 季語が生きる心配する気持ち)
春霧や迎えの父の車待

四位 八嶋智人
場所取りの恩賜の桜花ふるさとぞ
添削(恩賜とは上野恩賜公園)
ふるさとの苗木とおもふかな

五位 青山フォール勝ち
高架下揺れる酎ハイ春怒涛
添削(季語:春怒涛 うねり岩に砕ける春の波
   季語を比喩に使うと鮮度が落ちる 春も一気に押し寄せる)
高架下轟く酎ハイ

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「雁風呂(がんぶろ)」
雁とは渡り鳥の雁です 雁が日本にやってくるにあたって
木の枝を咥えて飛んでくるとされています その木の枝を
道中海に落として休んだりするんだけれども その木の枝が
日本の砂浜に落ちていると それがいつまでも残っている
ということは 本当はその枝を咥えて元の土地に帰るはずの
雁が そこに残している きっと日本で死んでしまったに
違いないと その供養の意味を込めてその拾い集めた木で
お風呂を炊く そういう季語になるんですね
実際には雁が木の枝を咥えて飛ぶといったこともないそうですし
かなりこの季語は空想的な趣の強い季語なんだそうです
でもその趣き深さを古来から俳人は愛したということですね

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん
【なべおさみ登場!ビートたけしから感動の手紙】
昭和の大先輩なべおさみの言葉
「ともかくも ひはめぐりたり ありがとう なべおさみ」

あまりにお若いお姿に驚きました。
丁寧な咀嚼を心掛けておられるそうです。
肌の色つやが素晴らしかったです。
ビートたけしさんは見えないところで
多くの人を力づけておられるのですね…。
さすがだと思いました。



2025年3月27日木曜日

100分de名著 ヘーゲル❝精神現象学❞③

意味深の知らぬ素振りや風光る
春日向若き男に導かれ
春陽や若き男の笑い顔
風光る若き男の腕の中
無抵抗ぎゅっと抱かれ春の風

■100分de名著 ヘーゲル❝精神現象学❞③
理性は薔薇で踊り出すー「啓蒙」と「信仰」
斎藤幸平 伊集院光 阿部みちこ 八嶋智人

ヘーゲル(1770~1831)G.W.F.Hegel
青年ヘーゲルは当初フランス革命に傾倒
その出来事は彼は思想形成に大きな影響を与えた
社会が変われば意識が変わりー
意識が変われば社会が変わる

自らの判断を普遍的なものにしたいという欲求が芽生えてくる
啓蒙の意識
貴方が信じているものは すべて迷信で客観的根拠はない
啓蒙と信仰の戦い

自然科学の急速な発展による実証主義的な世界把握と
経済の発展により市民階級が力をつけた その結果
宗教や王権・貴族が批判される その上で人々が自分たちで
合理的に判断しながら社会や文化も合理化していこう

信仰とは純粋な洞察にとって一般に、   啓蒙
迷信と先入見と誤謬とによって
織りあげられたものである。(中略)あやまった洞察は、
背後にじぶんだけで留まている洞察であって、
そこには悪しき意図がある。   僧侶・専制君主
この背後の洞察と悪しき意図とによって、
大衆の意識は欺かれているのである。

悪しき意図が「悪」であることを啓蒙は科学の立場から批判
自分たちの主張が普遍的に正しいことを
示そうとするのが啓蒙の意識の特徴

意識 自己意識 理性 精神 宗教 絶対知
恣意的な結合
科学主義を論じた「理性章」
「啓蒙」の背景にあるのは急速な自然科学の発展
外面を分析さえすれば相手の内面が全部わかる
と言ってしまうと明らかな飛躍がある
私が例えば今感じている「美しさ」自体は
伊集院さんは感じることもできない
自然科学・脳内物質・神経反応に還元できない次元が存在する
思いなし 一方で信仰の側も「この聖書の奇跡はどこのことか❓」
など啓蒙側が「証拠を出せ」と圧力をかけるために
彼らの土俵に乗せられていく 啓蒙側が勝利を修めたのでした
「パンに過ぎないんじゃないか」という方が
漠然と幼稚なことを言っている
私たちは宗教を信じて「人間とは何か」「人生の意味とは何か」
を考えてそれによって自己理解を深めてきた
自然科学が客観的だという考えに固執すると文学・宗教・哲学
等は理解できない 「説明できないならば迷信だ」とすれば
世の中の意味はほとんど失われていく 幼稚な世界になっていく
啓蒙の「すべては物質的・実証的・データで説明
されなければならない」という考え自体が1つの❝信仰❞になっている
啓蒙は信仰 信仰は啓蒙 
他者を信じるという点では信仰の方が優れていた

信頼するとはしかし信じることである ヘーゲル
信頼できる人が信じるものは信じようと思う
信頼なき相手との対話はすれ違いに終わる
お互いに信頼するものがあるからそこを考えないと会話ができない

エビデンスは信頼を築けるのではなく
信頼があってエビデンスが価値を持つ

自分たちの知こそが絶対であり
理性的に証明できないものは偽物である
このような考え方に固執する啓蒙は
他者との違いを許容できず暴走し始める
そして勃発したのがフランス革命でした
その死はしたがってひどく冷酷で、まるで平板な死なのであって、
そこにわずかに存在する意義といえば、キャベツの玉を切りさく
[ようにギロチンであたまを飛ばす]とか、あるいは
水をひと飲みするとか以上のものではないのである。

啓蒙の帰結とは?
啓蒙⇨有用性⇨絶対的自由⇨テロル 
近代というのが自分たちの好きなものを信じるしかない
善悪の基準は自分にとって役に立つかどうか
「力こそが正義」という社会 無秩序状態
道徳や約束の言葉などあらゆる規範が
意味を失った状態が「絶対的自由」

啓蒙に足りない「薔薇」?!
「法の哲学」(1821年刊行)
🔶ここにローズ(薔薇)がある、ここで踊れ
🔶理性を現在の十字架における薔薇として認識し、
それによって現在をよろこぶこと。
この理性的な洞察こそ、哲学が人々に得させる
現実との和解である。

薔薇は豊かさや幸せの象徴だがそれをヘーゲルは理性と重ねている
現実の私たちの人生は幸せや苦しみなどにあふれていて
必ずしもデータや数値化によって説明できるものではない
そういう次元を大切に理性の姿を「薔薇としての理性」と呼んでいる
私たちの人生の意味は必ずしも数値やデータに還元されない
そういう次元が存在するからこそ芸術や宗教を使って表現したり
他者と分かち合ったり説明しようとしてきた
しかし そういうものを取っ払ってエビデンスや自然科学的な
知を特権視して「世界を説明できるんだ」
という在り方が今広がっている

2025年3月26日水曜日

兼題「萵苣」&中村正義&河内國平

チーターの雨を追う旅春の草
狩りの経験積ますチーターはるぬ(晴野)
春の野や気迫で勝り撃退す
ハイエナへ食らわすパンチ春の空
春泥や命を懸けて子を守る

■ギュッと四国!家藤正人の俳句道場
兼題「萵苣(ちしゃ)」春の季語 傍題(レタス、サラダ菜など)

・ギュッと!特選
萵苣の葉の凸凹(おうとつ)は波かぜを待つ   細川鮪目
(焦点の絞り方が見事)

難しや萵苣とは何ぞ妻に聞き   ひさくん
西讃に海光る数のチシャ御殿   酩綴
秀作 ばかでかい萵苣は龍神さまの萵苣   みづちみわ
佳作 お嫁さんと呼ばれるのは嫌萵苣をもむ   砂山恵子
秀作 萵苣しゃくしゃく仕事に正解が欲しい   かねつき走流
秀作 ああ萵苣の水に戻ってゆく刹那   里山子
母とつみ萵苣を洗いし感謝する   高松ひろこ
(添削 母とつむ萵苣を感謝の丸洗い 萵苣が主役に立つ)
佳作 ちしゃ揉みの味よ遠き日帰らざる   シクラメン
「お一人様一個限り」のレタスかな   わおち
(時事句)
萵苣や今工場育ち時知らず   北美三風
(時事句 嘆きの句)
佳作 萵苣青し列車が通り過ぎて風   光矢
秀作 萵苣裂いて子の目の奥にものごころ   イサク

・正人のもったいない
韻律を大切に 中七下五は音数を整えよう
ベランダの朝取ちしやサラダ美味   大西綾子
(推敲 ベランダの朝取ちしやのサラダ美味)

BLT唇纏ふ萵苣(レタス)かな   橘えいみ
(「BLT(びーえるてぃー)」で六音、「唇纏ふ」で七音、「萵苣かな」で四音
リズムがぎくしゃくしている レタスと読ませたい時はレタスと書いた方が良い)

募集中の兼題「田植(たうえ)夏の季語」

■日曜美術館 破壊と創造 中村正義・異端の素顔

無垢なものと成熟したもの聖と俗を併せ持つ

新しい思想のもとに生れた絵は誰の目にも
醜いものであったはずで醜く見えるものの中にこそ芸術がある
中村正義

私は私を破壊することに成功した
このことは私に取って新しい世界への赤い道のようでもある
中村正義

長くて3年ということ 死という恐怖から何かに集中することで
立ち向かうと言ったらよいだろうか 私はものを創ることに熱中した
中村正義


絵を描いていると ふわっと 恐怖は 私を無限の底なし沼に
引き込んでいくかのように思われた 絵を描くという行為は
行為自体 無意識の彼方に移行し… 意識は内向的に
潜在していくように思われた
中村正義

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん【刀鍛冶・河内國平登場/奈良ロケ編】
昭和の大先輩 川内國平(かわちくにひら)の言葉
「出来る
  出来る
   出来る
 出来る
  出来る
 出来る
   出来る
 必ず出来る」
物凄い迫力でした。素晴らしい生きざまを見せていただきました。

野村万蔵 狂言方和泉流能楽師六世
「仕事は下手がいいなぁ」

平櫛田中(ひらくしでんちゅう)
「長生きの秘伝
 今日もお仕事 おまんまうまいよ
 貧乏極楽 気長にゆっくり」
手を合わせ『守ってやってください』

人間国宝のお言葉もご紹介くださいました。
河内國平氏の人生に乾杯❣



2025年3月25日火曜日

兼題「スリッパ」&テーマ「さようなら/おげんきで」

東風受けてふてぶてしさを全面に
生きる牛啄む烏春の空
東祖谷おいでなしてと福寿草
颯爽と最先端を創造す(小池一子 無季句)
鮮やかに生き行く女(ひと)よ山笑う

■NHK俳句 兼題「スリッパ」
選者:高野ムツオ レギュラー:中西アルノ 司会:柴田英嗣
ゲスト:庄司浩平 今井肖子 今西亮太 
年間テーマ「語ろう!俳句」

今回の兼題「スリッパ」春の季語・雰囲気と合わせる

もふもふのスリッパ脱いで野に遊ぶ   今井肖子
(荒るゝ海来しこと忘れ野に遊ぶ 稲畑汀子)
涅槃西風(ねはんにし)スリッパ齧(かじ)る赤子かな   庄司浩平
スリッパに鶯餅の風が吹く   中西アルノ
(鶯餅の風 作者なりの発見・物の見方がある
鶯餅はやわらかい半円 春の山に似ている 
春の山を越えて吹いてきた風とも想像できる)
足振ってスリッパ脱ぎし涅槃かな   今西亮太
(「涅槃」が「涅槃会」「涅槃図」あるいは
「入滅を心に思っていたのか」あいまい 仏の力に肖ろうとはご本人)
スリッパは羽のない鳥牡丹雪   高野ムツオ
(上五、中七は比喩 スリッパは歩かない 羽のない鳥を連想した
牡丹雪はふわふわ降ってくる この三つはぴったりし過ぎた)

涅槃(春の季語)
釈迦が入滅した日(旧暦2月15日)悟りの境地に入ること

・特選三席発表 兼題「スリッパ」
一席 弟のスリッパ正す雛の客   小栗しずゑ
二席 スリッパの夢はげんげの野を駈くる   𠮷川せい子
三席 スリッパを齧る音する春の闇   冬野(とうの)志奈

・特選六句発表
龍天に昇る我らはスリッパ脱ぐ   乃咲カヌレ
スリッパの値札をはづす春夕焼   尾﨑光洋
下駄唄いスリッパ踊り亀鳴けり   高野光司
スリッパの母の手を取り窓の梅   市川卯月
スリッパにしばしとどまる石鹸玉   西村小市
スリッパで霞む巷を高みより   川口泰英

参照:https://www.nhk.jp/p/ts/6Q6J1ZGX37/blog/bl/pLvva3ZRZL/bp/pRYqvY56AR/

■NHK短歌 テーマ「さようなら/おげんきで」
選者:枡野浩一 ゲスト/松尾スズキ 司会/尾崎世界観
年間テーマ「あなたへの手紙/かなたへの手紙」

さようならさようならまた会いましょうまた別れたらまた会いましょう
枡野浩一

松尾スズキ 談
「許す」という人間の持っている機能が働いている
未練がここまでエンタメに昇華できる 未練職人

・31音の手紙
入選九首 テーマ「さようなら/おげんきで」
二席 元気でね、ときみに言われるきみがいてくれたら元気になれるんだけど
奥村真帆
健康を祈っています。その上で僕の中では死んでください。
松下怜平
一席 空を拭くように手を振るさよならの向うが晴れでありますように
桃園ユキチ
おはようの力強さで玄関に響き渡っているさようなら
浅寝むい
もう一生会いたくないし会わないし勝手に食べてよく眠ってね
江藤芳恵
さようならでっかい犬を見るたびに連絡してくるとこが好きだった
つきこ
三席 私 生きているきみと別れることになりほんとよかった死別じゃなくて
なかた浜(半ぐれの純愛 脅し文句)
 本文に書かれていないさよならを読み取れるくらい国語が得意
野田鮎子
 さよならを言わないうちに死んだから縁側はまだじっちゃんの場所
水須ゆき子(墓は気持ちを修める場所)

・改悪添削
もう一生会いたくないし会わないし勝手に食べてよく眠ってね
江藤芳恵
前半では決別を伝えていて後編で相手を慮っている
矛盾した気持ちが両方描かれている

もう一生会いたくないし会わないし食欲なくせ眠れなくなれ
キレイに別れられそう 松尾
短歌はスッパリしないでモヤモヤしている状態がいい 枡野
自分という人間から相手に向けての手紙を
書くことで距離を測って橋を架ける 
第三者の目を意識することが大事
橋が他人から見た時に面白くあるように
という意識を持たないと良い短歌にならない 枡野

・松尾スズキさんの短歌「さようなら/おげんきで」
ばいばいの倍のばいばいその倍ばい母にばいばい果てしなき倍
松尾スズキ
ばいばいとばいばいが つなばって「果てしなき倍」
この短歌には方言のばいも含まれている 松尾

枡野
沢山の言葉で作られた戯曲だけれど
キーワードとして心に残る言葉がいっぱいある
いろんなジャンルを横断して活動する喜びと苦しみとは❓
どれも均等にふざけている
松尾
芥川賞落ちているのも絶対そこだと思っている
枡野
松尾さんの作品を絶賛している人がいます。
でもその人が表で褒めているのを聞いたことがありません。
嫉妬心かもしれません。
松尾
後でこっそり教えて下さい

私感
松尾スズキ氏の解釈!最高でした。的外れだなんてとんでもないです。
あらゆる角度からの視点を教えていただいたように感じました。

枡野
もう一度短歌入門の本が書きたくなった

・言葉のバトン
「あい、わかりました」と払う大きな手
池上規公子(葉ね文庫)

あるけばはなびらも踏むだろう
なべとびすこ(歌人)
咲く前もさくらだったよ背景になって暮らせる才能もある
(クランクアップ なべとびすこ歌集)

2025年3月24日月曜日

こころの時代 宮沢賢治(6)

堤防を土筆ぐんぐん太陽へ
存えて悩み転がす春の月
星朧遠く離れてこそ繋ぐ
春愁う解かり合えない母息子
心閉じ先逝く息子朧月

■こころの時代 宮沢賢治 
久遠の宇宙に生きる⑥「デクノボーとして生きる」
方十里 稗貫(ひえぬき)のみかも 稲熟れて 
み祭り三日 そらはれわたる
病のゆゑにも朽ちん いのちなり
みのりに棄てば うれしからまし

慾ハナク決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

賢治が心配したのは、
肥料の注文が無くなる冬の間の工場経営のことであった。
そこでその年の九月には、石灰岩とセメントで
大理石のような感じのタイルを花巻でつくらせて、
その見本をトランクにつめて上京した。
病後でもあり、あまり重いものを持って上京するのはあぶないと、
家中で心配して引きとめたが、工場としてもどうしても
上京しなければならないと言って出かけたのであった。そして
東京の駿河台の八幡館という宿で高熱を出して臥床してしまった。
そこでもう死ぬ覚悟をきめて、
両親と私共に宛てて遺言状を書いたのであったが、
奇しくもそれは二年後に死んだ月日と同じ九月二十一日であった。
宮沢清六「兄のトランク」

遺言状
父上様(政次郎) 母上様(イチ)
この一生の間 どこのどんな子供も受けないやうな
厚いご恩をいただきながら、いつも我儘でお心に背き、
たうたうこんなことになりました。
今生で万分の一でもついにお返しできませんでした。
ご恩はきっと次の生 又 その次の生でご報じいたしたいと
それのみを念願いたします。
どうか信仰といふのではなくてもお題目で私を呼びだしてください。 
そのお題目で 絶えずお詫び申し上げお答えいたします。
清六様
たうたう一生何ひとつお役に立てず ご心配ご迷惑ばかり
掛けてしまひました。どうかこの我儘者をお赦しください。

カノ肺炎ノ虫ノ息ヲオモヘ 汝ニ恰モ相当スルハ タダ
カノ状態ノミ 他ハミナ過分ノ恩恵ト知レ

快楽もほしからず 名もほしからず いまはただ
下賤の廃躯を法華経に捧げ奉りて 一塵をも点じ 
許されては父母の下僕となりて その億千の恩にも酬へ得ん
病苦必死のねがひ この外になし
凡ソ 榮譽ノアルトコロ 必ズ 苦禍ノ 因アリト 知レ
窮すれば通ず 窮すれば通ず さりながら
こころひとつぞ 頼みなりけり

筆ヲトルヤ マヅ道場観奉請を行ヒ 
所縁仏意ニ契フヲ念ジ
然ル後ニ全力之ニ従フベシ
断ジテ教化ノ考タルベカラズ!タゞ純真ニ法楽スベシ。
タノム所オノレガ小才ニ非レ。タゞ諸仏菩薩ノ冥助ニヨレ。

當に知るべし 是の處は即ち是道場なり
諸仏 此に於いて 三苦提を得
諸仏 此に於いて 法輪を轉じ
諸仏 此に於いて 般涅槃したまふ

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ陰ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

南無無辺行菩薩
南無上行菩薩
南無多宝如来
南無妙法蓮華経
南無釈迦牟尼仏
南無浄行菩薩
南無安立行菩薩

参照:https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/45630_23908.html

あるひは瓦石 さてはまた 刀杖もって追れども
見よ その四衆に具はれる 佛性なべて 排をなす
不軽菩薩

我深敬汝等、不敢軽慢。所以者何、汝等皆行菩薩道、当得作仏

而是比丘 不専読誦経典 但行礼拝 
乃至遠見四衆 亦復故住 礼拝賛歌 亦作是言
四衆之中 心不浄者 悪口罵詈言 我等不用
如是虚妄授記 常被罵詈 不生瞋恚 常作是言
衆人或以 杖木瓦右 而打擲之 避走遠住 
猶高唱言 我不敢軽於汝等 汝等皆嘗作仏

あまり苦しそうなので、私はその晩二階の兄のそばで
寝むことにしたのだが、「今夜の電灯は暗いなあ。」と言ったり、
「この原稿はみなおまえにやるから、若し小さな本屋からでも
出し度いところがあったら発表してもいい。」
と言ったり、悲しいことを話したのであった。
翌日の二十一日の昼ちかく、二階で「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」
という高い兄の声がするので、家中の人たちが驚いて二階に集まると、
喀血して顔は青ざめていたが合掌して御題目をとなえていた。
父は「遺言することはないか。」と言い、賢治は方言で
「国訳妙法蓮華経を一千部おつくり下さい。表紙は朱色、
お経のうしろには「私の生涯の仕事はこのお経をあなたのお手もとに届け、
そして其中にある仏意に触れて、あなたが無上道に入られますことを。」
ということを書いて知己の方々にあげて下さい。」と言った。
父はその通りに紙に書いてそれを読んで聞かせてから、「お前も大した
偉いものだ。後は何も言うことはないか。」と聞き、兄は「後は
また起きてから書きます。」といってから、私どもの方を向いて
「おれもとうとうお父さんにほめえられた。」と
うれしそうに笑ったのだった。

以上は全生涯中最大の希望であり又私共に依託せられた最重要の任務でも
ありますので今刊行に當りて謹んで兄の意思によりて尊下に呈上いたします
宮澤清六

私がいまも目に見えるようなのは、八月になると
「困ったなあ。日が出ないかなあ。暑くならないかなあ。」
といっていた兄の顔である。
開花期に寒かったり雨ばかり続けば、必ず不作となるので、
「サムサノ夏ハオロオロアルキ」という言葉そのままのように
兄は見えたのであった。
私は永い間兄の側にいて、ある人には立派な資格だと言われ、
或る人々にはどうしても理解されないで、この世では、
まことに不幸でもあったこの持って生まれた性格を弟として
何とも出来ず全く気の毒でしかたなかったのである。
しかし賢治の性格も生涯も、他からの批判や同情などと全然無縁の、
そうしか出来得ない必然的な事実であり、結果でもあったと思う。
私の気がかりになるのは、
兄が遺言した後で父の問いに答えた言葉である。
「それはいずれ後でまた起きて詳しく書きます。」といった
そのことばについてである。私にはあのときの兄の目の色などから
考えあわせると、あの言葉にはもっと深い意味が
籠められていたように思われ、賢治の将来への悲願とか誓願が
籠められていると考えていいと思うのである。
「また起きて」という言葉の奥には「また生まれ変わって」
という意味があるように私には思われ、もう案外賢治は
あこがれの土地に生まれ変わって、「また起きて詳しく書きます。」
ということばを実行に移しているのではないかと、
子供の考えるようなことを思うのである。
宮沢清六「兄のトランク」

2025年3月23日日曜日

あの人の会いたい 梅原猛

春袷言葉交わさず目で会話
ペンタゴン大量解雇春曙(しゅんしょ)かな
春の米バイオベンチャー身売りせり
米企業イーロン嫌い中国へ
春はやち関税上げて作る敵

■あの人に会いたい 梅原猛(哲学者)
2019(平成31)年 93歳没
日本人が哲学するには西洋と東洋を勉強してそして一つの体系を作る
「こういうふうに人生 生きるべきだ」というふうな そういうことを
語るべきだと思うんです

新しい真実を言うことはある意味では世界全体を敵にすることです
今までそういう常識で みなさん やってたわけでしょう 学会も
それを「その常識が間違っている」って「俺の今 言っていることが
正しいんだ」というのは世界全体を敵にすることです

1999年 文化勲章受章

周りの人は全部 もらいっ子だと知っているんだけど
私一人に知らされていない 私のものを書いてゆく姿勢の中に
「この世の中は虚偽だ」という意識があって 自分の
書くものだけが真実なんだ という考え方がどっかに
心の中にあるような気がします まあひと口で言えば
「戦争でどうせ死ぬんだ」だから死ぬ前に「人生とは何か」
ということを僕なりに突き詰めて死にたい 

日本はどうして出来たのか これ本当に研究されていないんです
それは人類学から考古学 それから宗教学 言語学 そういう人が
寄ってたかってやっぱり日本は「どうしてこの国は出来たのか」
「この国の特徴は何なんだろうか」西洋人が知りたがっていることは
能やお茶のような文化を持ってる日本人がなぜこんな近代社会を
こしらえたか そこに近代社会を出来たのと日本文化はどこかで
深いところでつながっているに違いない

縄文土器というのは世界最古の土器です 縄文時代というのは
1万2000年前から始まるんです それから約2000年前まで
続くんです 1万年続いているんです 日本では農耕が
入ってくるのは比較的遅くてわずか2000年の伝統しかない
私は日本は今までずっと農耕文化として見てきた
これは間違いではないかと思う だから私は日本文化を
楕円状に考えて一つが縄文文化 もう一つは弥生文化
この楕円状に考える森の文化と田の文化 そして田の文化は
森の文化を多分に残していると思う 

人間中心主義だな デカルトは「我思う故に我あり」って
「我」が大切なんだ 「我」が世界の中心なんですよ
数学的法則によって自然の法則を明らかにすることによって
「人間は自然を支配出来る」と自然支配の倫理だと思うんですね
科学技術文明を作って自然支配 
人間支配の”意志の文明“をつくった
そういう”意志の文明“の権化が原子力じゃないか
西洋哲学の原理を超える現代文明を超えるような
新しい文明の原理が日本の思想の中に潜在しているのではないかと

2011年「東日本大震災復興構想会議」発足
特別顧問として持論を展開
私はこの災害は天災であります 同時に人災という面もあります
けれどそうじゃなく私は文明災です 文明が災害を起した

基本的に「自然を征服していく」という考え方でなくて
やっぱり自然と調和していく自然と仲良くしていく
動植物と仲良くする そういう文明に変わらないと
人類の文明の持続的発展はあり得ないんじゃないか
日本の文化というのは中心は「草木国土悉皆(しっかい)成仏」
草や木は全部命があってそれが仏になる 仏性があって
仏になるそういう思想です 草木と人間とが共存していく思想です
自然の中で生きてきた狩猟社会の人間たち やっぱり
自然の中 至る所に神様がいる そういう考え方になるんじゃないか
それはやっぱり 木を一本切るとまた必ず接ぎ木をして そして
木の神様に「どうかまたお願いします」って循環これが日本思想の
根柢でやっぱり共生と循環 これからは共生と循環という
考え方が人類の思想にならなくちゃならない 
そこが日本人の救いです 東北の人でああいう災害を受けながら
やっぱり 助け合ったです あれは外国の人にとっては驚異だった
ああいうことが起こると略奪行為やいろいろなことが起こるのが
普通なんです ところが みんなひどい被害を受けても助け合った
というところに なにかそこに 日本の故郷があるような気がする
日本人は 私は大いに希望があるというふうに思います

梅原猛さん 人はいかに生きるべきか?問い続けた93年の生涯でした

自然と調和していく 自然と仲良くしていく 動植物と仲良くする
そういう文明に変わらないと人類の文明の持続的発展はありえない

2025年3月22日土曜日

あの本、読みました? 哲学の本

しなやかな風よ陽射しよ春の情
耳澄ませやぶの求愛春の鵙(もず)
夕陽背に新芽啄む百千鳥
ひらりひら顔に着陸春の雪
今生きているということ月朧

■あの本、読みました?人生が楽になる【哲学の本】オススメ入門書10選!
しんめいP 千葉雅也 
鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔P 

「花は泡、そこにいたって会いたいよ」の一文 初谷むい著/書肆侃侃房
イルカがとぶ イルカがおちる 
なにもいってないのに きみが「ん?」と振り向く
ふるえれば 夜の裂けめのような月 あなたが特別に したんだぜんぶ

「東大理三の悪魔」の一文 幸村百理男/宝島社
「僕はいつも不思議に思う。なんで人間が頭の中で考えて数学が、
この世界を支配する物理法則と繋がるのか。
ニュートンの時もそうだったけど…」
(中略)
僕は少し後退し、彼女に質問した。「ねえ、ところで君の名前は?」
「ボクは間宮。よろしくね。君と同じ理三の一年生」「え『ボク』?」
「何か?」「いや、全然」慌てて首を振った。
「個性的で良いと思う…」彼女は肩をすくめた。

まずはここから!哲学の本 
「センスの哲学」千葉雅也著/文藝春秋
「自分とか、教養としての東洋哲学」しんめいP著/サンクチュアリ出版

いま哲学本が求められている理由は?

●初心者におすすめの哲学の本 10選
・「禅とジブリ」鈴木敏夫著/淡交社
・哲学史入門 古代ギリシャからルネサンスまで 
千葉雅也, 納富信留, 山内志朗, 伊藤博明, 斎藤哲也著/NHK出版新書
・「ゼロから始めるジャック・ラカン」片岡一竹著/ちくま文庫
・反応しない練習あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」
 草薙龍瞬著/KADOKAWA

「禅とジブリ」の一文 鈴木敏夫著/淡交社
細川 ジブリ作品には、禅僧としても学べることがたくさん詰まっています。
禅で、梁の武帝が「お前は何者だ」と達磨さんに訊くと、達磨さんは
   「不識(わからない)」と答える、という問答があるんです。
   「もののけ姫」を観ていて、ハッとしたんですね。「もののけ姫」に、
   モロというヤマイヌのキャラクターが出てくるのですが…。
   あ、鈴木さんに言うのもおかしいですね。
鈴木 ははは。ちょっと知っています
細川 モロが主人公の少年アシタカに「お前にサンを救えるか」と
   訊く場面がありますよね。ヒロインが救えるか、と。
   アシタカは「わからぬ」と答えるんです。このセリフに
   禅問答のような深いものを感じたんです。
鈴木 へえー。なるほど

「反応しない練習」の一文 草薙龍瞬著/KADOKAWA
悩みの始まりには、きまって”心の反応“があるのです。
心がつい動いてしまうことーそれが悩みを作り出している
“たった一つのこと”なのです。だとすれば、すべての悩みを
根本的に解決できる方法があります。それはー
”ムダな反応をしない“ことです。

「自分とか、教養としての東洋哲学」しんめいP著/サンクチュアリ出版
東洋哲学に魅力を感じた理由
ブッダ 王子時代なら、教室のはしで窓の外を眺めているタイプ。
龍樹 クラスメートはおろか先生まで論破する、超面倒なタイプ。
老子 そもそも教室にいない。校庭で草と同化している。
荘子 一度たりとも学校に来たことがない。
達磨大師 無言。教室の後ろの壁に向かってずっと座っている。
親鸞 テストでわざわざ0点をとりつづけて退学になった。
空海 クラスの中心にいる人気者だっただろう人。

達磨大師 伝説のセッション

皇帝(イメージ)
「自分とか、教養としての東洋哲学」の一文
しんめいP著/サンクチュアリ出版
皇帝はといかけた。
「わし、寺を1000個たてたんだよね」
「これ、めちゃくちゃご利益あるよね?」すごい。寺、つくりすぎ。
ご利益あるでしょ。「ある」っていえば、皇帝よろこぶよ。
禅を広げる大チャンスだよ!しかし、達磨大師は、こう答えた。
「ない」(中略)
でも、皇帝はオトナだった。たしかに「ご利益があるよね?」は
ちょっと「浅い」質問だったわ。
きりかえて、もっと賢い感じの質問にした。
「仏教で一番大事なことって何だと思う?」
ナイス質問。達磨大師は、仏教を伝えにきたのだ。
「さっきの無礼は許すから、すきなだけ仏教かたりなはれ」という、
大者の余裕。皇帝からの、最高のパスが、達磨大師に通った。
あとは、ゴールを決めるだけ。「仏教で一番大事なこと」
それは一体、なんなんだ。達磨大師の答えはこうだった。
「そんなものは無い」

「荘子 内篇」荘子著福永光司 興膳宏訳/ちくま学芸文庫
「反哲学入門」木田元著/新潮文庫
「現代思想入門」千葉雅也著/講談社現代新書

「現代思想入門」の一文 千葉雅也著/講談社現代新書
現代思想は、秩序を強化する動きへの警戒心を持ち、
秩序からズレるもの、すなわち「差異」に注目する
それが今、人生の多様性を守るために必要だと思うのです。

有名な「盗んだバイクが走り出す」という歌詞がありますが、
あれはかつて、がんじが搦めの社会秩序の「外」に出ていくという
開放的なイメージで捉えられていました。ところが今日では、
「他人に迷惑をかけるなんてありえない」という捉え方が
けっこう本気で言われているようです。
そういう解釈は当初は冗談だったのですが。

現代思想を学ぶと、複雑なことを単純化しないで
考えられるようになります。
単純化できない現実の難しさを、以前より「高い解像度」で
捉えられるようになるでしょう。

「大河の一滴」五木寛之著/幻冬舎文庫

「大河の一滴」の一文 五木寛之著/幻冬舎文庫
最近の免疫学のいちばん興味ぶかい点は、生物の免疫系に
〈寛容〉という活動を発見したことでしょう。自己と非自己が、
お互いに拒絶せずに、なんとか折りあって生きていこうとする
動きを、免疫学で〈寛容=トレランス〉という。
(中略)
〈寛容〉とは許すこと、欠点を認めることであり、そして、
激励ではなく、慰めであるとぼくは考えます。つまり、
がんばらなくてもいい、がんばれないひとにがんばれなんて
言うことはないよ、ということです。
深刻に落ち込むこともまた、人には大事なのです。

「ソフィーの世界」ヨースタイン・ゴルデル著 
須田明監修 池田香代子訳/NHK出版
「あなたはだれ?」ソフィーはたずねた。やっぱり返事はない。
けれどもソフィーは、今たずねたのは自分なのか、それとも
鏡の女の子なのか、一瞬わからなくなってしまった。
ソフィーは鏡の顔のまんなかを指さして、言った。
「あなたはわたし」返事がないので、今言ったことを
ひっくり返して言ってみた。「わたしはあなた」

「超訳 ニーチェの言葉 エッセルシャル版」
フリードリヒ・ニーチェ著 白取春彦訳 ディスカバー・トゥエンティワン刊
116 人をはずかしめることは悪だ
誰かを恥じ入らせることは、明白な悪の一つだ。
悪人は人をはずかしめる。盗みも殺しも、人をはずかしめことだ。
暴力はもちろん、小さな喧嘩においてさえ、
相手をはずかしめる言葉を使うものだ。
自分が悪を行なえば、それは自分をはずかしめるばかりでなく、
恋人を、親を、友人をもはずかしめることになる。
さらに、人間存在そのものをはずかしめている。
だから、本当に自由に生きている人間とは、どんな
ふるまいをしても恥じ入らない境地に達した人間のことだ。
彼はもちろん他の誰をもはずかしめることもない。
「悦ばしき知識」

ニーチェは哲学における太宰治


「歌集 ゆふすげ」の一文 美智子著/岩波書店
昭和四十四年 少年
さわやかに緑萌えたつ林にて少年はうなじ見せて物読む

平成二十九年 卒業
思はざる鶯の声も聞こえ来て今日晴れやかにうまご卒業す

「ゲーテはすべてを言った」の一文 鈴木結生著/朝日新聞出版
ああなるほど、愛に関する名言を集めたティー・バッグなんだ、
と統一がすっかり酔いの回った頭でぼんやり思いながら、
特段自分のものを確認しようとすることもない。
そんな統一に、娘は当然、「パパのは?」と尋ねてくる。
「ん…」父親は娘に若干のコンプレックスを抱きながら、
ドイツ訛りの(と彼は主張するが、実は単に学生時代から
不得意なだけの)英語で読み上げた。
「『Love dose not confuse everything but mixes』」
「誰の言葉ですか?」義子が尋ねる。
統一はそれには答えず、ただ、タグを示すに留める。
件の文章の下には「Goethe」の字。
「わ!」妻と娘が顔を見合わせて驚いた。
それから、「やっぱすごいねえ」と二人して散々統一を
ほめそやす。徳歌など調子よく、「パパ、ゲーテと赤い糸で
結ばれているんだ」と持ち上げた。42:48

千葉雅也が語る「センス」の本質とは❓
センスは良くできるもの?

「センスの哲学」の一文 千葉雅也著/文春文庫
センスという曖昧な言葉で言われているのはどういうことなのか?

服のセンスが良くても音楽選びのセンスはいまいちだ、
などと言われることがあります。
これまた、センスのトゲの話ですね。「あの人、服はカッコいいのに
音楽のセンスはなあ」とか。「あるものについてセンスが良ければ、
他のことでもセンスが、良くてもいいはずなのに…」
という期待があるかもしれません。なにか「すべてに共通するような
判断力」を持っている人、というふうに、総合的に褒めるときに
センスがいいと言われることがあります。すなわち、
センス:直感的で総合的な判断力、というわけです。

「センス」とは何か❓

「センスの哲学」の一文 千葉雅也著/文春文庫
まず、餃子を口に入れたときに熱の感じがある。熱い。
表面のパリっとした感じ。嚙むと、皮が割れて中の柔らかい部分へと
進むわけですね。まず最初に強い熱と、カリカリ感という刺激があって、
そのあと柔らかさに向かって緩和し、次の肉の味、ニンニクの味と
いくつかの味が同時に入ってくる。タレのことも忘れてはいけませんね。
醤油の味がメインなんだけれども、酢の酸味と鼻にツンとする
感じがあり、ラー油の辛みもある…。
というように、大きく言えば、強い刺激と穏やかな刺激とに二分できますが、
それがさまざまに交代し合って強い「バンッ」と弾ける刺激と
より穏やかな「ツー」とでも言える持続的な刺激がリズムになる。
「バンッ、ツー、バンッ、ツー…」みたいな感じですね。
餃子のリズムは複雑で、多層的に絡み合って展開していきます。
音楽ですね。餃子は音楽なんですよ。

センスをよ良くする「リズム」とは❓

千葉雅也三部作読む順は❓
『勉強の哲学』『現代思想入門』『センスの哲学』
キーワードは「差異(70~80年代」
私小説の脱構築三部作
『デッドライン』『オーバーヒート』『エレクトリック』


2025年3月21日金曜日

新古今和歌集&初恋&血流低下を招く生活習慣

一国巡袈裟を託さん知らぬ子に
遍路宿重い想いを受け取りて
島四国思考回路は輪っかなり
遍路傘無駄なルートで出会う人
遍路道やりたいことが見つからず

■10min.ボックス古文・漢文 新古今和歌集
全20巻 約1980首 後鳥羽上皇
八代集
古今和歌集
後撰和歌集
拾遺和歌集
後遺和歌集
金葉和歌集
詞花和歌集
千載和歌集
新古今和歌集

見わたせば山もとかすむ水無瀬川夕べは秋となに思ひけん
後鳥羽院

3夕(さんせき)の歌
見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮
藤原定家

和歌の世界の発展
本歌取り

花さそふ比良の山風吹きにけり漕ぎゆく舟の跡見ゆるまで
宮内卿(くないきょう)
本歌
世の中を何にたとへむ朝ぼらけ漕ぐゆく船の跡のしら波
「拾遺和歌集」哀傷 沙弥満誓

見わたせば山もとかすむ水無瀬川夕べは秋となに思ひけん
後鳥羽院
「枕草子」
秋は夕暮れ。夕日のさして山の端 いと近うなりたるに
鳥のねどころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど
飛びいそぐさへあはれなり。

春の夜の夢の浮橋とだえして峰に別るる横雲の空
藤原定家
源氏物語 最終巻「夢浮橋」(悲しい恋が描かれている)
横雲の空と終わることを体言止めといい余韻を感じさせる
峰に別るるは本歌取り
本歌 風吹けば峰にわかるる白雲の絶えてつれなき君が心か
「古今和歌集」恋二 壬生忠岑
このような深い味わいを「余情(よじょう)」という

女性歌人 恋の歌
式子(しょくし)内親王 40首が集められている
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
式子内親王

旅の歌
年たけてまた越ゆべしと思ひきや命なりけりさやの中山
西行法師

編さんに込められた思い
貴族の時代から武士の時代へ
承久の乱

■10min.ボックス現代文 初恋(島崎藤村) 明治29年発表
まだあげ初めし前髪の林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に人こひ初めしはじめなり

わがこころなきためいきのその髪の毛にかかるとき
たのしき恋の盃を君が情に酌みしかな

林檎畠の樹(こ)の下におのづからなる細道は
誰たが踏ふみそめしかたみぞと問とひたまふこそこひしけれ

島崎藤村(1872-1943)「若菜集」に掲載
ついに新しき詩歌の時は来たりぬ。(「藤村詩集」序)

近づく二人の距離
「恋愛」が新しかった時代

坪内逍遥「当世書生気質」(明治18~19年)

■「元気の時間」より
血流力低下を招く生活習慣
食物繊維が足りない
肉、魚をあまり食べない(蛋白質不足)
甘いものをよく食べる(間食が多い)
運動不足・筋力不足
座っている時間が長い
塩分が多い
睡眠不足
ストレスの多い生活

ストレス
自律神経の乱れやストレスホルモンや
血管内皮細胞の機能を低下させる

① 朝の蛋白質の目安
卵(1個)   6g
納豆(1パック)8g
豆腐(100g) 7g
青魚(100g) 21g

血管内皮細胞機能を改善させる食品
胡桃(オメガ3脂肪酸がコレステロール値を正常に保ち血流をスムーズにする)
トウモロコシ(全粒穀物 玄米と同じ)

② 足の筋力を上げる
スクワットで足の筋力を上げる(足元の血液を心臓に押し上げる)

2025年3月20日木曜日

100分de名著 ヘーゲル❝精神現象論❞②

また一人脱落者出づ遍路宿
花遍路希望を見つけ離れゆく
青き空悩みと共に遍路傘
笑みと笑み見返りのないお接待
遍路杖四国で心救われて

■100分de名著 選 ヘーゲル❝精神現象論❞②
論破がもたらすものー「疎外」と「教養」
斎藤幸平 伊集院光 阿部みちこ

今回のテーマはずばり「なんでも論破したがる人」
世の中の矛盾を鋭く突いて痛烈に批判する実にスカッとしますよね
でもヘーゲルは「精神現象学」で このような
「ああ言えばこう言う意識」を持つことをこう批判しています

自己自身をも他者たちをも欺くものとなるのである

❝精神現象論❞目次 意識 自己意識 理性 精神 宗教 絶対知

精神とは?
人々の意識はどのように精神として統一され発展していったのか

こうしてすでに精神の概念が、
私たちに対しては目の前に存在している。
これからさき意識に対して生成してくるものは、
「精神とはなんであるか」をめぐる経験である。
つまり精神とは絶対的な実体であって(中略)それぞれに存在する
自己意識という対立が存在し、おのおのがかんぜんな自由と
自立性をもちながらも、その対立が統一されている。
絶対的な実体である精神とはすなわち、
「私たちである〈私〉であり、〈私〉である私たち」なのである。

私の判断は精神に反映される様々な価値観や世界観に規定されている
同時に私たちの世界観や価値観を生み出しているのは誰かといえば
「日々の私」なのである

私たちの日々の判断や行為を通じて実態も変わっていく
精神が歴史的に発展していく その歴史を描いたのが「精神章」

一番近いのは「空気」ではないか 伊集院光氏

空気は自分たちが生み出しているから
私たちは意識的に変えていくこともできる

精神の変容 伝統的規範 教養

私たちの意識は2つの矛盾する選択肢に直面する
それが国権と財富です 
国権はいわば国家のことで社会の秩序を保つことを重視する
財富は資本主義に基づく経済活動を重視し
「個」の自由を尊重する 
対立しあうようにみえて相手なしには成立しない
経済の繁栄なくして安定した国家は築けない
国家の保障なくして自由な経済活動はできない
見方や立場によって善悪の評価が変わる

近代社会の特徴
伝統的な地位や規範が崩れていく時代
自分で善悪を判断できるようになった

規範と一心同体の状態から離れていくこと
ヘーゲルは「疎外」と呼んだ

絶対的に善いことや絶対的に悪いことはない
教養の意識とは?
陶冶(とうや)・形成 
自然的な欲望を捨ててよりよい姿を目指していく
伝統的な価値は近代社会において崩れ去っているので「人それぞれ」
それが社会を不安定化させる要因にもなる
              国権  財富
秩序の維持こそ善とする立場 善   悪
経済成長こそ善とする立場  悪   善

(どちらの意識も)よりよい社会を目指すが
判断基準が異なると真逆からぶつかってしまう

多角的に見て行くことができるようにならないといけない

物事の善悪は見方ひとつで変わるので視点論点を次々と変え
相手を論破するための主張を延々と繰り出す

それはつまり一般的な欺罔(ぎもう)であって、自己自身をも
他者たちをも欺くものとなるのである。このような欺瞞(ぎまん)を
口にするとは恥知らずなことであるが、その無知こそが
まさにそれゆえに最大の心理なのだ。

ラモーの甥 哲学者(私) 
徳や哲学は万人のために作られたものでしょうかね❓
そんなものは、もてる奴がもち、保存できる奴だけが
保存するもんです。(中略)いい酒を飲み、うまい料理を
たらふく食い、きれいな女どもの上を転がりまわり、
やんわりした蒲団に休む!それ以外、すべては空(くう)の空ですよ。

論破とは❓「エスプリに富んだ会話」
論破の先にあるもの
実体(規範・ルール)
固定されているもののいっさいが解体し、すべての契機をつうじて、
その契機が世界が現に存在していることにかかわるかぎりで引き裂かれ、
骨という骨にいたるまで打ち砕かれているという感情である。

私たちは他者の意見も踏まえながら新しい価値観を
作らなければいけないが教養の意識には価値観を
固定化するための姿勢が欠如している

論破合戦から何も生まれない 伊集院光氏

論破は相手を黙らせることはできるかもしれないが
相手が納得し説得されているかというと否定的な
感情だけが残る 社会は分断されていく 教養の意識の限界

今回のポイント
近代がもたらした疎外はポジティブなこと
私たちは社会で前提と自明視されているものを
反省的に捉え自由な価値観を表明できるようになった
ただし自由な価値観は人によって様々なので
ぶつかり合ったり善悪が容易に反転してしまい
行き過ぎるとなんでも疑うようになり
社会の常識・規範・ルールが崩れてしまう

どうやって疑うと同時に新しいルールや価値観を
固定化していくことができるのか❓が問題になってくる

2025年3月19日水曜日

「垣繕う」&「蛙」&火恋し&黒田官兵衛&田沼意次

春の月心開いたこともなく
朧月前だけ見つめ歩き出す
ひきこもる四人の遍路焼山寺
吾を探す二百万歩や遍路道
青き空染みる優しさ島四国

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「垣繕(かきつくろ)う」

垣とは垣根とかの垣になるわけです
北国で見られる季語のようです
特に雪深い地域ですと冬の間に沢山雪が降るものですから
その重みにやられたりそして風の勢いによって家の間の
仕切っている垣が崩れることがあるそうなんです
それを春になって雪も少なくなり繕っていくという
そういう季語なわけです 南国に住んでいる人間からすると
壊れたものを補修する作業というのはマイナスイメージで
見がちな季語なんですけれども 歳時記の解説によりますと
春が訪れた喜び これからその気持ちのいい季節に向かって
進んでいくための前向きなものとして捉えられている側面が
大きいようです。日本列島も細長いですからね
所変われば言葉の捉え方も違う そんな実感を与えてくれます

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「蛙」

「蛙」この漢字一文字で
「かわず」とも「かえる」とも読めます
どちらの読み方も正解ではあるのですが 
春の季語としては「かわず」として扱うことが多いようです
結構この「蛙(かわず)」という季語は歴史がありまして
万葉集の時代には河鹿(かじか)のことを「かはづ」と
言っていたのではないかというような説もあります
そうするとこの「蛙(かわず)」といった場合には
鳴き声そういう音の要素も多く含むのではないか
という考え方もあるようです この「蛙」に付随する季語は
様々ありまして中には夏の季語になっている蛙の仲間と
いうのもあるのですね 例えば「雨蛙」「青蛙」などは
夏の季語として分類されています 単純に「蛙(かわず)」
とだけいった場合は春の季語になること覚えておきましょう

■夏井いつき俳句チャンネル
【一句一遊】お便り紹介11【「火恋し」の音数の話】

火恋し(ひこいし)
「晩秋、秋冷えの日が続く頃、日が恋しくなってくること」(秋、人事)
俳句は韻文

火恋し祖母が歩きし遍路道   古賀まり子
1拍分は空ける、または、助詞を補って5音を整えている
散らばれるものをまたぎて日短か   冨安風生
(日短し、温かしが終止形)

■偉人・敗北からの教訓 
第83回「黒田官兵衛・名軍師の糧となった若き日の失敗」
官兵衛が大出世できた理由
一優秀 二先見の明 三判断力 信の置ける人物であった

黒田官兵衛 敗北の伏線
主君を超え独自の人脈を築いた
自信を持ちすぎるのは要注意

認められなかった
信長に嫌気がさした
将軍・足利義昭による調略
大阪本願寺との密約など

一織田政権と接近し過ぎ 二過度な自負心 三人間洞察の甘さ

黒田官兵衛 敗北の瞬間
「当たって砕けろ」の考え方は危険
あらゆる可能性を考える

黒田官兵衛の敗北から学ぶ教訓
人間洞察力を磨く

■偉人・敗北からの教訓
第84回「田沼意次・商業重視の経済政策の果て」

田沼意次の敗北の伏線
物事がうまくいっている時は自制心や警戒心を緩めることのないように

田沼意次 敗北の瞬間
周囲の笑顔の裏には成功を妬む思いがあることも忘れぬよう

江戸の狂歌で歌われた
白河の清きに魚も棲みかねてもとの濁りの田沼恋しき

田沼意次の敗北から学ぶ教訓
行き過ぎは禁物

2025年3月18日火曜日

あの本、読みました? 祝!直木賞・伊与原新氏

宮脇綾子女史へ
陽炎や想い集めてアプリケへ
一針に祈りを込めて風光る
亀鳴くや嫌な思いはさせませぬ
うららけし優しさくれた母でした
春の月された意地悪許すまじ

■あの本、読みました?
祝!直木賞・伊与原新をたっぷり1時間「宙わたる教室」秘話
伊与原新 鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔P

科学と人間ドラマの織りなす物語
5つの話をおさめた短編集
日本各地を舞台にその土地特有の歴史や自然に科学を融合させた作品
第172回直木賞「藍を継ぐ海」で受賞
「八月の銀の雪」伊与原新著/新潮文庫 
2020年第164回直木賞候補作に選ばれる
直木賞を受賞した気持ちは❓
家族はどんな反応だった❓

鈴木保奈美女史が好きだった作品
山口県の島で萩焼に絶妙な色味を出す伝説の土を探す元カメラマンの物語

林祐輔Pが好きだった作品
星隕つ駅逓
北海道の小さな町が舞台 年老いた父親のために隕石を拾った場所を偽る女性の物語

「いや、だからって」慌てて首を横に振る。
「そんな大それた嘘、ついていいわけない」
「見つけた場所をそのとおりに伝えたら、この隕石は
「白滝隕石」になっちゃう。そんなこと、させない」
目を見開いた涼子が、喉を絞るようにして言う。
「これは私が『野(や)知内隕石』にする」「――だめだ、絶対」
「あたしやる。信吾が何と言おうと。あそこにお父さんの郵便局が、
野知内郵便局があったってことを、この隕石に残す」「無茶言うな!」
「怖いのよ!」涼子は小さく叫び、椅子にへたり込んだ。
「お父さん、掃除してないだけじゃなくて、洗い物も、洗濯物も
たくさん溜めてた。汚れた下着を何日も着たりして、だんだん
身の回りのことに構わなくなってる。気力がなくなっているんだと思う」
(中略)
「せめてそれぐらい、いいじゃない。ずっと頑張ってきた
お父さんから、全部取り上げてしまわなくたって、いいじゃない。
野地内の名前ぐらいどうにかして残してあげないと、
お父さんまで消えちゃう気がして、怖いのよ」

「藍を継ぐ海」はなぜ直木賞を受賞できた❓

加藤彩子 川上祥子 宮本貴史 長尾洋一郎(講談社)

「十角館の殺人」綾辻行人著 
ミステリーではこの作品が最高峰だと伊与原新氏
「お台場アイランドベイビー」で作家デビュー 
(その時に尊敬する綾辻行人にかけられた言葉に支えられた)

「お台場アイランドベイビー」伊与原新著/角川文庫
椚(くぬぎ)のそばに、二階から黒い物体が降ってきた。
それは黒装束に身を包んだ男で、柔らかく膝を折って着地すると、
その反動を利用するようにして、左端にいた協力隊員に向かって
伸び上がる。フックのような軌道を描いてしなやかに伸びた
黒い男の右手でナイフが一閃(いっせん)したかと思うと、次の瞬間、
兵士はくぐもった呻き声を上げ、
頸の右側を手で押さえながら片膝をついた。
隣りの隊員が慌てて機関銃を男に向けたが、男の右腕は返す刀で
さっきと逆方向にしなり、刃渡り二十センチほどのナイフが
兵士の頸を右から左にかき切る。

細かい描写が多い理由は❓

「東大に名探偵はいない」の一文 
伊与原新・市川憂人・新川帆立・辻堂ゆめ・結城真一郎・
浅野皓生/KADOKAWA・イッセー尾形・小林虎之介

「アスアサ5ジ ジシンアル」より
地震というのは、地下の震源断層の破壊すべりが引き起こす現象だ。
そのすべり始めからすべり終わりまでの地表の揺れを、
地震計は地震波形として克明に記録している。地震波の研究が
進んだ現在、ある考え方が広く受け入れられつつある。
地震の大きさは、破壊すべりの開始時点では“まだ決まっていない”
可能性が高いのではないか、というものだ。事実、M9の
巨大地震の地震波形とほぼ同じ場所で起きたM5の波形を比べても、
最初のコンマ数秒だけを見れば両者に明確な違いはない。

専門的な表現を使うこだわりは❓

「ブルーネス」43歳で出版 
津波についてのメカニズムとか対応策が詳細が記されている 必読本

「月まで3キロ」の一文 伊与原新著/新潮文庫
「知ってました?」運転手が三たび言った。ハンドルをきちんと
両手で握り、視線は正面を向けている。「月ってね、だんだん地球から
遠ざかってるんですよ。」月が遠ざかる。ぼんやりした頭で
うそみたいな話だと思った。「びっくりでしょ。でも本当なんです。
月は一年に三・八センチずつ、地球から離れていってるんですよ。」
(中略)
「ですから、太古の月は、もっと大きく見えたんです。やっぱり、
人間なんてまだいない時代の話ですけどね。今、月までの距離は
だいたい三十八万キロです。それが、四十億年前より昔、
つまり地球と月が生まれて間もないころは、その距離は今の半分以下
でした。地球から見える月の大きさは、なんと今の六倍以上」

登場する音楽はイメージしている❓
「オオルリ流星群」大人の青春物語
ジャコビニ彗星が鍵 ジャコビニ彗星の日/松任谷由実

「宙わたる教室」伊与原新著/文藝春秋
ドラマは科学だ!イッセー・尾形
科学から照射された人間関係
科学好きの心を消さずにくすぶり続けさせてくれます

「宙わたる教室」の一文 伊与原新著/文藝春秋
悪いけど、今日は帰ってくれ。俺たちこれから、実験やるんだよ」
「あ?」さすがに三浦の目つきも険しくなる。「何なのガッくんまで」
すると後ろの朴が、「いいよ、もう行こう」と言った。
三浦は舌打ちして藤竹をひとにらみし、勢いよく原付を発進させる。
去り際にまた朴が振り返り、真顔で「ヒムネ、ガッくん」と言った。
その後ろ姿を見送りながら、藤竹が訊く。「『ヒムネ』というのは、
どういう意味ですか」「『頑張れ』だよ、確か」

2025年3月17日月曜日

兼題「田楽」&テーマ「書く」

青き空めじろきょろきょろ寒桜
鴬や藪に隠れて声ばかり
春鳥や雨に向かって飛行せり
残る鴨家族とともに田宮川
春まけて穴あく前の手ぬぐいよ

■NHK俳句 兼題「田楽」
選者:木暮陶句郎 ゲスト:柳原尚之 司会:柴田英嗣
年間テーマ「季語を器に盛る」

「楽しくなければ俳句じゃない」
をモットーに33年間俳句を続けてきました 
NHK俳句の選者になっていました 俳句との出会いに感謝
木暮陶句郎

「田楽」は春の季語 木の芽田楽 「木の芽」は山椒の若い葉のこと
それを練り込んだ味噌 春の香り 
田楽の名句
田楽のみそにくつゝく桜かな   小林一茶
(落花 色彩が豊か映像も見えてくる 江戸時代の花見の風景が広がる
200年前の現実が目の前にあるように見える

花見しながら田楽を焼いている浮世絵がある
花見ではよく田楽を食べていた 柳原

「田楽」には五穀豊穣の願いが込められている
籾殻(もみがら)と一緒に燻(いぶし)焼にする陶芸手法
備前焼 田んぼの底の土を使っている 日本の米文化にリスペクト

江戸料理で「桜」と付く料理は「タコ料理」
タコで「桜」を表現し句に合わせた 柳原

・特選六句発表 兼題「田楽」
田楽の店のテレビの古いこと   伊部一郎
田楽を縦に出されて横に食ふ   大岩真理
(田楽箱)
でこぼこのすりこぎ長し田楽屋   須加信子
(山椒には殺菌作用がある すりこぎはちびるので長いのを調達する)
田楽や母子ぐらしの子に白髪   橋田敬子
(ドラマが想像できる一句)
田楽のまづ湯気を食ふ朝市場   中山真希
田楽の味噌に火の香の残りたる   すずきなずな

・特選三席
一席 還暦の看板むすめ田楽屋   蜘蛛野澄香
二席 田楽のただただ黒き秘伝味噌   堀邦翔
(歴史の美味しさ)
三席 母許(ははがり)のピリリと辛し味噌田楽   守口幸子

・俳句やろうぜ 若手俳人探査隊長 黒岩徳将
塩谷人秀(29) 俳句歴10年 水産庁勤務
俳句同人誌「KENOBI」クロイワとはじめる
「KENOBI」とは蹴伸び 手足をまっすぐ伸ばして進む水泳方法
メンバーは小川楓子 寺沢かの 塩谷人秀 黒岩徳将
「紙冊子」&「Webサイト」で活動
同人誌の内容
小田原漁港 句を詠む
散財や魳(かます)一本刺しヒヒヒ   塩谷人秀

クロイワ推しの一句
考へろ繋がりさうな蔦と蔦   塩谷人秀

・味噌焼けてけむり舞うなり田楽火   柳原尚之
添削(焦点がずれていっている 映像が見えてくるようにする)
味噌田楽炙(あぶ)ればけむり舞ひにけり

・木暮陶句郎 返句ではなく挨拶句
水温む美味研鑽の包丁に   陶句郎
けんさん焼き おにぎりの上にしょうが味噌や甘味噌などを
ぬって焼いた新潟県の郷土料理

・柴田の学び
3月 食べたら歳時記みてみよう

■NHK短歌 テーマ「書く」
選者:大森静佳 ゲスト:小川洋子 司会:尾崎世界観
年間テーマ「❝ものがたり❞の深みへ」

歌に❝ものがたり❞あり

・入選九首 テーマ「書く」
一席 惑星って「或る日心が生まれる」と書くんじゃないかなまたまごとく
亀田巧
筆圧を知りたい きみが金曜の夜にいきなりくれたメールの
伊藤すみこ
二席 一生にいくつ君の名書けるだろう花のおはじきいっぱいに咲く
小林ほなみ
三席 本心が書けなくなった「し」と打てばだいたい予測されるおかげで
宮本魁(かい)
ライオンの筆圧だった友だちが世界を巡る医師になるまで
鳥原さみ
 風のやうに時間がわれを追ひ越して「敬老の日」に図書券届く
中門和子
何回も消すたび霧は濃くなって飛び立つことのできない手紙
広木登一(とういち)
書けなかったものがふうわり糸くずとなりて浮遊す朝日の部屋に
小野寺寿子(ひさこ)
読めるけれど書けない文字のようだったきみと見ていた夕焼けの色
真島朱火(しゅか)

・ものがたりの深みへ
アンネの日記
戦時下の不安や家族との関係 成長する少女の心情

わたしは書きたいんです。いいえ、それだけじゃなく、
心の底に埋もれているものを、洗いざらいさらけだしたいんです。

小川洋子
物を書き始める原点 言葉で何か書くと
いうことは人間を自由にしてくれる

アンネ・フランクの記憶 小川洋子著
戦争・歴史の「記録」としてではなく「文学」の作品として読む
アンネ自身が戦後に発表することを念頭において推敲していた
文学として読まれることはアンネ自身の希望でもあった

小川洋子女史の思い出のエピソード
ユーモアたっぷりの日記
1942年11月9日 豆事件
その音のすさまじさたるや 死人も生きかえるほど。
(中略)
とりわけ滑稽だったのは、階段の下にいたわたしが、
豆の海の中の小島のように見えたことですって。
(中略)
あいにく豆は小さいうえに、つるつるしているので、あっちの隅、
こっちのくぼみにころげこんで、なかなか拾いきれません。
いまでも、だれかが階上へ行くたびに、一度か二度は腰をかがめ、
拾い残した豆を手のひらに集めていっては、ファン・ダーンの
おばさんに渡します。
深町眞理子訳

根本的には悲劇のものを可愛らしい喜劇に変換している
自分を肯定する力があるからこそ ユーモアを持って描ける 小川
悲劇を喜劇にするときに一切自虐がないところが強い 尾崎
客観的に観察する力は作家にとって大事 特別な能力の持ち主 
父親と娘を結ぶ絆となった日記 小川

ひとつぶの豆が言葉がこの星にアンネの瞳に巻きもどします
大森静佳
言葉は何かを巻き戻せる 大森
死者たちが未来と結びつく 小川

小川さんにとって「書く」とは
その人の生きた証を物語として残せるのではないか
化石になるまで残って欲しいと願いながら文字として刻む
書くことでしか表現できなかった人がいた 尾崎

菜の花の地上歩めり書くことはわたしがわたしに身を投げること
大森静佳
書くことは自分が自分の中に身を投げていくようなこと
エネルギーの噴出を感じました 小川

・言葉のバトン
墓石がにやり「あんじょうやりや」
大西里枝(扇子店四代目)

「あい、わかりました」と払う大きな手
池上規公子(きくこ 葉ね文庫)
終わったとみんな言うけどおしまいがあるってことは素敵なことだ
枡野浩一
譜面と音僕はゆっくり理解してそのあとひとことも話さない
青松輝