2024年2月5日月曜日

兼題「入学試験」

古希迎へ同床異夢の冬日向
月氷る吾の美意識を押し通す
寒きびし茶人の意地を最期とす
風花や質素な美へと誘われ
保つべき相手との距離冬の月

■NHK俳句 兼題「入学試験」
選者 夏井いつき レギュラー 家藤正人 中西アルノ 司会 柴田英嗣
年間テーマ「凡人からの脱出」

入学試験(春の季語)
季語「大試験」の傍題(関連季語)のひとつ
ほかに「受験生」「受験子(し)」などもある

凡人からの脱出 兼題「入学試験」
ボンの段
お守りをにぎりしめつつ受験生   沢田美紀
大丈夫お守り胸にいざ入試   中村みまこ
受験生忘れずに持つ御守りを   高橋幸
御守りを鞄に付けて受験生   毘舎利愛子
筆箱に御守りもいれ入試の日   是空
筆箱に御守りふたつ入学試験   塚田見太
受験子のお守り三つ入れて発つ   大澤桃空
入学試験お守り三つぽっけ中   福井七夫
持てるだけ守り身につけ受験生   柴土一廣

半ボンの段 
(主役である季語をちょっとだけ押し出す
 ささやかな工夫があると脱ボンできる)
お守りを首に鞄に入試の子   中島紀生
鞄には御守り七つ入学試験   瀬川令子
入学試験忘れて行った守り札   山本真一

脱ボンの段
受験子の御守り三つ梅模様   山本政尋(ひろ)
(季重なり 主役が受験子 「梅」は季語の鮮度はぐっと下がる)

▪季重なり
季語は俳句の主役
17音の小さな舞台に主役が二つ入ると
感動の焦点がぶれるので嫌われている
しかしタブーではない 主役2つのどっちも
生き生きと機能させるのは高度な技
俳句作りの技術がない時には高い確率で失敗する
季重なりの句を作る時は主役と脇役を
はっきりさせる技術を理解する必要がある

A降るや入学試験の遠き日よ   押領司雅俊
B雪道に砂広く撒く受験の日   礼斗健鈴
C春雪のたつぷりと降る受験かな   込宮正一
D入試の夜雪舞う宿で雑魚寝せり   昭
 (雪の宿に雑魚寝す入試前夜かな 
  とすることで主役と脇役が解るようになる)

▪夏井家伝授!家藤正人と中西アルノ
0から俳句
俳都・松山を吟行しよう!

松山城POINT
狭間(さま)…小さい穴は銃、大きい穴は弓を射っていた

戦国のままの狭間を通る春一番   青山ネモフィラ
春暖にふわりクレープの焼きあがる   青山ネモフィラ

道後温泉POINT
夏目漱石の小説「坊っちゃん」で道後温泉のことを褒めている

寒明けや旅路の素足をいやす道後   青山ネモフィラ
「裸足」「素足」は夏の季語
上五の「や」を詠嘆してあり主役を立てる工夫がされている

▪特選六句発表 兼題「入学試験」
受験子をスーツケースと待つ図書室   千歳みち乃
 二日目は居(お)らず隣の受験生   ハードエッジ
 入学試験果(は)つや起立も礼もなく   葉村直(なお)
入学試験消しゴム着火しさう   彼方(かなた)ひらく
入学試験済んだ晴天だつたのか   白神公
野球部は雪かき入学試験の日   GONZA

▪柴田の歩み
あえない(あえてはやめよう)
季重なりはあえてしない

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