2024年2月29日木曜日

100分de名著 ローティ❝偶然性アイロニー連帯❞4我々を拡張せよ

美郷より漂ふ梅の甘き香
ベクトルは内なるエネルギー春意
たえがたき孤独はチャンス春の星
内面的孤独と向き合う日永
春の陽や背中ぽかぽかいびき立て

■100分de名著 ローティ❝偶然性アイロニー連帯❞4我々を拡張せよ
リチャード・ローティ 朱喜哲(ちゅ・ひちょる)

どうしたら私たちは連帯が可能なのか
どうしたら残酷さを減らすことができるか
テーマ
「異なった人たちと、どうやって共存し、会話を続けていくことができるか❓」

苦痛は非言語的である。(中略)
残酷な行為の犠牲者、苦しみを受けている人びとには、
言語によって語りうるものはほとんどない。
だから「被抑圧者の声」なるものや
「犠牲者の言語」なるものは存在しない。
犠牲者がかつて使用した言語はもたやはたらいていないし、
新たに言葉で語るには、犠牲者は
あまりにも大きな苦しみをこうむっている。
そうであれば、彼らの状況を言語に表現する作業が
誰か他の者によって彼らのために
なしとげられなくてはならないだろう。
リベラルな小説家、詩人、ジャーナリストは
そのような作業にたけている。
リベラルな理想家は通例、そうではない。
斎藤純一・山岡龍一・大川正彦 訳

ローティはそれを「感情教育」と呼んだ。
「人間は他の動物より(知性や尊厳を持つというのではなく)
 はるかによく感情を理解しあうことができる。」
というべきです。(中略)
そうすれば、自分たちの持てる力を感情のコントロールに
つまり感情教育に注ぐことができるからです。(中略)
この感情教育の目標は、「私たちの同類」とか
「私たちのような人たち」という言葉の
支持対象を広げることにあります。
「人権について オックスフォード・アムネスティ・レクチャーズ」より

文学による「感情教育」
小説など誰かを再記述する営み自体が
公共的な目標のためにはより役に立つ
文学が社会や世界を動かした事例
(「アンクル・トムの小屋」1852年ハリエット・ビーチャー・ストウ作)
感情を動かしたり他人の苦痛や残酷さに対してのシンパシーが何よりも大事
感情がついてこなければそもそも理論が機能しない

「われわれ」を拡張せよ!
他者の残酷さに対しての感覚を高めていく
「やつらと名指しされた人たちが私たちかもしれない」と
自分たちのように感じられる
理論的な分析は現状の構造を分析するのである意味では凄く残酷

自分の内側にある残酷さ
「ロリータ」(1955年)ウラジーミル・ナバコフ作
主人公の一人称によって語られていく
カスビームでは、ひどく年配の床屋が
ひどくへたくそな散髪をしてくれた。
この床屋は野球選手の息子がどうのこうのとわめきちらし、
破裂音を口にするたびに私の首筋に唾を飛ばし、
ときおり私の掛布で眼鏡を拭いたり、震える手で鋏を動かす
作業を中断して、変色した新聞の切り抜きを取り出したりして、
こちらもまったく話を聞き流していたので、
古くさい灰色のローションの壜(びん)が並んでいる中に
立てかけてある写真を床屋が指さしたとき、
その口ひげを生やした若い野球選手の息子が実はもう死んでから
三十年になるのを知って愕然としたのであった。
私は熱くて味気のないコーヒーを一杯のみ、うちのお猿さんに
バナナを買い、食料品店でもう十分ほど過ごした。
「ロリータ」床屋のシーンより 若鳥正 訳

落差

人は無関心なものに対してこれほど冷淡になれてしまう
読者も読み飛ばしていたことで
「自分のハンバードのように思っていたかもしれない」と気付く

読者は、突然、自分が偽善的でないとしても、
残酷なまでに無関心であることを明らかにされる。
自分の同類を、自分の兄弟をハンバート(中略)の内に認める。
(中略)しかし、ここでの道徳的なものとは、
少女に手を出すな、ということではなく、
自分が行っていることに気を留め、とりわけ人々が
言っていることに気を留めよ、ということである。
斎藤純一・山岡龍一・大川正彦 訳

正しくなさがあるから人はそこに気付けたり
そういう正しくなさの力という意味合いを文学に託している
文学が「わたしたち」の幅を広げていく鍵になる
われわれの拡張こそ現代に生きる私たちにヒントを与えてくれる

AchievingOurCountry われわれの国を成しとげる

われわれの中に自分たちは含まれていない

その時点において何かが決壊する。(中略)
一連の制度が破綻したと判断し、投票すべき
「強い男」を探し始めることを決断するだろう。
「AchievingOurCountry」より

私たちの連帯の感覚が最も強くなるのは連帯がその人たちに向けて
表明される人びとが「われわれの一員」と考えられるときである。(中略)
その連帯は、あらゆる人間存在のうちにある自己の核心、
人間の本質を承認することではない。
むしろ連帯とは、伝統的な差異(種族、宗教、人種、習慣、その他の違い)を、
苦痛や辱めという点での類似性と比較するならば
さほど重要ではないとしだいに考えていく能力、
私たちとはかなり違った人びとを「われわれ」の範囲の
なかに包含されるものと考えてゆく能力である。
斎藤純一・山岡龍一・大川正彦 訳

トランプ現象を予言したローティ

会話をどうしたら続けられるかという時に相手を黙らせたり
やりこめるための言葉づかいが一番問題
「お前たちわからないだろう」というのは
ある意味では会話を止めること「ずっと話し合って行け」
私たちはもっと感情的な紐帯(ちゅたい)からスタートできないのか
それこそが連帯のよすがになるのではないか
キエフではなく「キーウ」と言うことは
私たちがウクライナの人たちに連帯をするという表明でもある
「あなたたちが大事に使っている言葉を『私たち』も使いますよ」
キーウという言葉を大事にしている人たちも
「われわれ」の一員として考えることができる
まず犠牲者の側のほうにどれだけ感情移入をして
そこに対していま起きている残酷さを少しでも取り去ろうと思えるか
というのが連帯の優先順位

100%の言葉はない
臨機応変にやりながらなるべく苦しい局面を少なくしていく

バランスをとり続けるしかない
絶対主義 客観主義⇔相対主義
反逆者と言われたローティですが哲学感を変えていっている

2024年2月28日水曜日

源氏物語の女君たち(3) 葵の上

樒(しきみ)の花葉隠れにみる武士道
春愁う花山(かざん)天皇母と娘に
春の空蜜柑届ける支援終え
それぞれの病気のライン余寒かな
春の夜や品なき人の吐く源氏

■源氏物語の女君たち(3) 葵の上
藤井由紀子先生

光源氏は12歳の時に結婚
今日の女君 葵の上 光源氏の正妻
葵の上の父は左大臣 母は桐壺亭の妹
光源氏の父は桐壺亭 母は藤壺の宮
二人はいとこ同士 光源氏より4歳年上
大臣家の後ろ盾を得るための政略結婚

元服 成人になったことを示す儀式
愛人 六条御息所(みやすどころ) と正妻 葵の上が
牛車(ぎっしゃ)をとめる場所をめぐって互いの従者が争う
左大臣家にて六条御息所の生霊が葵の上に取り付いていた
私はなんでこんな美しい人を今まで不満にばかり思っていたのだろうか
じっと見つめておりました
今度は葵の上がじっと光源氏を見つめ…見送った
葵の上は息を引き取った
悲劇的な結末を迎える葵の上
2人がなぜうまくいかなかったのか
親が決めた結婚で初めて会った2人

いときびはにて おはしたるを、
たいそう幼い様子で (左大臣家に)いらっしゃったのを きびは幼い
ゆゆしゅううつくしと 思ひきこえたまへり。
不吉なくらいかわいらしいと (大臣家の人々は)お思いである ゆゆしは不吉
女君は、
葵の上は
すこし過ぐしたまへるほどに、いと若うおはすれば、
すこし年齢が上で光源氏が本当に若くていらっしゃるので
似げなく恥づかしと思いたり。
似つかわしくなく恥ずかしいとお思いであった

葵の上は最初の印象を引きずる
光源氏に甘えたりできない

光源氏⇨葵の上
心の中には、
心の中では
ただ、藤壺の御ありさまをたぐひなしと思ひきこえて、
ただ、藤壺の宮を理想の女性だと思っていて
さやうならむ人をこそ見め、似る人なくもおはしけるかな、
藤壺の宮みたいな人と結婚したい似る人はいないものだな
大殿の君、いとおかしげにかしづかれたる人とは見ゆれど、
(おおいとの 大臣の屋敷)
大臣家の娘(葵の上)はとても大切に育てられた人とは見えるけれど
心にもつかずおぼえたまひて、
しっくりこないとお感じになって

光源氏も葵の上を見ていない
葵の上も優しさは持っているけれど優しさをどう出していいかわからない

紫の上 幼い頃光源氏に見初められ引き取られる女君

葵の上は光源氏と一緒に住んでいない
紫の上が一緒に住んでいる
左大臣の家に住む葵の上を光源氏が通っている
葵の上は不器用な女性
光源氏は義理で通う状態が10年間続いた
結婚10年で懐妊
賀茂祭(かものまつり) 現在は「葵祭」と呼ばれる由緒ある祭礼
光源氏が賀茂祭の儀式の行列に仕える
車争い 牛車(ぎっしゃ)をとめる場所をめぐって従者が争い
    愛人の六条御息所が恥をかく
車争い以来葵の上にもののけが取りつく
葵の上は男子(夕霧)を産む
いつもは隙がない冷たい感じのする女性なのに
出産の後で横になって弱っている
なぜこんな素敵な人を放っていたのだろう
葵の上から目が離せない

いときよげにうち装束きて出でたまふを、
きれいに身なりを整えて出かけていく光源氏の後ろ姿を
常よりは目とどめて見出して臥(ふ)したまへり。
いつも以上に目をとどめて見送りながら伏せっていらっしゃる

葵の上の発言はない心情はこの一文のみ
光源氏は弱っている葵の上から目が離せない
葵の上はその愛情を受け止めて視線で送る
わかり合えた直後に葵の上の死が描かれている
女性の暇を慰めるために物語が作られていた
登場人物の心情を推測し共感する
源氏物語のすごいところ
葵の上は六条御息所の生霊(いきりょう)に取り殺された

次回の女君 六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)
物語を六条御息所から照らし出す 藤井由紀子先生の最推し

2024年2月27日火曜日

兼題「バス」&テーマ「コンビニ」

根源の美描き続けん春の風
瞬間に触れる芸術風光る
春の陽や美しくなる種育て
曼荼羅や悟りの宇宙のどやかに
立ち止まる次なる動き帰る鳥

■NHK俳句 兼題「バス」
選者 高野ムツオ ゲスト 如月真菜 五十嵐秀彦 能町みね子
レギュラー 中西アルノ 司会 柴田英嗣
年間テーマ 語ろう!俳句

① 淡雪や一斤ほどのバスが来る   高野ムツオ
② バス錆びぬたんぽぽぶちまけられし野に   能町みね子
③ 春風やバスを追い越す自転車(は)   中西アルノ 
④ けふ登校できなくていい春のバス   如月真菜
⑤ 始発バスあちこち錆びてあちこち春   五十嵐秀彦

③「春風」を擬人法・比喩的にやるのは面白い
バスを追い越すあの自転車は春風だ

高野ムツオ先生
「俳句は隙がある方が好き」欠点があってよく分からない
でも捨てられない「そこが私は大好きだ」という俳句
実は俳句の一番大きなポイント 魅力を醸し出すもとになる

▪特選三席発表 兼題「バス」
一席 私 陽炎(かげろう)に浮いたバス来るそれに乗る   持塚(もちづか)悦夫
二席 話しかけ話しかけられ帰省バス   覚正一徳(かくしょういっとく)
三席 人はみな誰かの遺族春のバス   蒼空蒼子

手を上げるここがバス停蕗の薹   北山てるみ
終バスを降り恋猫の路地に入る   大和田博道
春光や強豪校のバス来たる   穴山ゆう
初夏や水をぶつけてバス磨く   小林陸人
友垣は凍星一人バスを待つ   大川美代子
春の夢キリコの街をバスに乗り   星野曉
参照:
https://www.nhk.jp/p/ts/6Q6J1ZGX37/blog/bl/pLvva3ZRZL/bp/pnka82PKWX/

高野ムツオ先生
ちょっと直せばこんな世界が広がる
五七五の世界なのだけどちょっとはみ出した為に面白くなる
大胆に冒険したために良い俳句になった
そういう様々な魅力が今回も展開されました
そこがとても楽しい句会だったと思います

■NHK短歌 テーマ「コンビニ」
選者 岡野大嗣 ゲスト 副島淳 司会 尾崎世界観
第4週の年間テーマ「グッとくる瞬間」

暗い顔してどうしたんアメリカンドッグをたいまつみたいに渡す
岡野大嗣
(どうしたん アメリカン 韻を踏んである)

▪入選九首 てーま「コンビニ」
よがとけてコンビニだけがとけのこりかわらずにうるばくだんおにぎり
三須絵美
コンビニの匂いにくじけそうだから35分ぶるぶる歩く
ひろせきょう
三席 私 コンビニに和菓子あるとう立ち寄れば店長丸き椅子抱いてくる
掘あき代
コンビニのコーヒー買って丸と丸をぴったり合わすときかなしいね
へそごま
レジ横のホットスナック知った日のスカートの下ジャージのわたし
吉野夏海
歯ブラシも歯磨き粉もあるコンビニで歯間のネギを舌で撫ぜ取る
雨坂円
一席 私 初対面の人と並びてコンビニで同じ鳥山明を見ていた
磯谷祐三
二席 真夜中にいないはずのきみがいたコンビニみたいに白くて眩しい
加藤祐
金髪にしたって僕は箸の無いうどんを抱いて帰るんだろう
つきこ

▪表現者の原点
それぞれのコンビニそれぞれの表現
扉開き視界鮮やか胸躍り空間全てが僕のもの
副島淳

コンビニは短歌的空間

コンビニを二十四億円で買うぼくを眩しく匿(かくま)えるよう
岡野大嗣

▪ことばのバトン
仮面の男の返信を待つ   
ナナロク社 代表 村井光男

雪の夜踊る男と飲む麦酒
エアギアリスト 宮城マリオ

2024年2月26日月曜日

100分de名著ローティ❝偶然性アイロニー連帯❞3言語は虐殺さえ引き起こす

春遅し煩悩による四苦八苦
偏りのない正しさ持ちて春疾風
中道の精神で生く春の霜
近づくな遠ざけよ釈迦の言の葉(無季句)
寒き春苦しみ背負い生きたとて

■100分de名著❝ローティ偶然性アイロニー連帯❞3言語は虐殺さえ引き起こす
リチャード・ローティ
解説は哲学者 朱喜哲(チュ・ヒチョル)
虐殺器官
語り直すことにはダークサイドもある
どんな危険から避けるために言葉づかいを考えるべきなのか
文化政治という言葉を用いています
「文化政治」とは、どのような言葉を使うべきかをめぐって
なされる議論を典型とする。
フランス人はドイツ人を「ボッシュ」と呼ぶのをやめるべきだととか、
白人は黒人を「ニグロ」と呼ぶのをやめるべきとか言うとき、
われわれは文化政治を実践している。
というのも、そうした言語実践を放棄することによって
われわれの社会的・政治的目標―
ある人間集団どうしが互いに対して持っている寛容の度合いを
増大させることーが、促進されるからである。
「文化的政治としての哲学」より

どの言葉を選ぶことによって会話の帰結が変わってくる
モヤモヤを言葉にすることが哲学に残された唯一の使命
家の女と書いて「嫁」ケア労働というか「女性はそれやるべき」
という考えに乗っかっている
呼ばれ方そのものより呼ばれ方で体現されている社会的規範
それに反発を覚えた
言葉には1個1個歴史があってそれに対する帰結があったりする
どんな言葉づかいを選ぶかが「文化政治」哲学なんだ

ボッシュという言葉を使うと
「残酷」「野蛮」という意味合いが出てくる
偏見やステレオタイプを作ってしまう
呼び方が暗黙に前提とする社会的規範や
「こうあるべき」を問題にしていくとローティは考えている

こちら「千の丘ラジオ」君のそして俺たちのラジオだ
マリフアナ吸って盛り上がろう
ゴキブリどもを血祭りの上げよう
(ルワンダで流された放送)
ルワンダではこの年ジェノサイドが起こります

哲学者 リン・ティレル
第一段階:ことばを与える
第二段階:言語内での推論/「言い換え」
第三段階:行動を呼びかけ正当化する
フツによってツチがゴキブリのごとく虐殺されるようになった

ジェノサイドに至る言葉づかいの特徴
① 「われわれ/やつら」の線引きを行う
② 本質主義
③ 社会的に定着している
④ 行動を喚起する

何か私たちは本質的なものを共有しているはずだ②
「本質的に違う」ということになる①②
「我々」と「やつら」の間の線は揺るがない

推論的なものの怖さ
他の人種は違うかもしれない
俺たち日本人は特別にできると思ったら
本質主義我々/やつらの線引きが加わって排他的なものが生まれる

1992年ボスニア紛争勃発
セルビアの殺人者たちや強姦者たちには、
自分たちが人権を侵しているという意識がないのです。
かれらはそれを自分たちと同じ人間にではなく
「ムスリム人」に対して行っているのですから。
彼らは非人間的なことをしているわけではなく、
ただ本当の人間とにせの人間とを区別しているだけなのです。
「人権についてオックスフォード・アムネスティ・レクチャーズ」より
中島吉弘・松田真由美訳

人権は役に立たない

トマス・ジェファソン
基本的人権などをうたった独立宣言を起草
1801年にアメリカ第3代大統領に就任

人間に対しての温かさや基本的な思いやり
非人間とされた者に対しての冷淡な残酷さ
矛盾なく同居してしまう
「人権はどうやって基礎づけるのか」
という哲学的探究も役に立っていない
本質主義が問題
何かしら本質的な違いによっ
「私たちは人間だけどあっちは違う」と言えてしまう
これがローティが最初から最後まで一貫して言っていた批判

「なぜその言葉を使うんだ」を知れ学べ考えろ

2024年2月25日日曜日

源氏物語の女君たち(2)紫の上(前編)&「春三日月」&「蕗の薹」

瞑想し真理悟らん山笑う
春塵や迷い悟りの四諦(したい)あり
春の月一切皆苦重き日々
水温む諸行無常を生き抜かん
春まけてあらゆるものは諸法無我

■趣味どきっ!源氏物語の女君たち(2)紫の上(前編)
藤井由紀子教授

藤壺の宮 光源氏の子を帝の子として産む
北山 光源氏が病気療養をしてもらう寺がある
小柴垣(こしばがき)
紫の上(後に光源氏の妻となる)は藤壺の宮にそっくりだった
紫の上の父 兵部卿宮 (ひょうぶきょうのみや)は藤壺の宮の兄
紫の上は藤壺の宮の姪 叔母と姪に当たる関係

平安一口メモ
編つぎ 編から漢字を考える遊び

光源氏が早く起きてきて
紫の上が一向に起きてこない朝があったんです
光源氏にとって理想の女性は藤壺の宮

さるは、

限りなう心を尽くしきこゆる人に
限りなく心をつくしている人に
いとよう似たてまつれるが
本当によく似ているので
まもらるるなりけり、(気づきの「けり」)
じつと見つめてしまったんだなあ
と、思ふにも涙ぞ落つる。
涙が落ちてしまう

正妻 葵の上が亡くなると いよいよ二人は結ばれる

思し放ちたる年月こそ
(対象と)思っていなかった年月は
たださる方のらうたさのみはありつれ、
娘や妹のようなかわいらしさだけはあったのだけれども
忍びがたくなりて、
こらえきれなくなる
心苦しけれど、いかがありけむ、
かわいそうだけれど どのようなことがあったのだろうか
人のけぢめ見たてまつり
分くべき御仲にもあらぬに、
周りの人たちが見てもはっきりわかる関係性ではない
男君はとく起きたなひて、
女君はさらに起きたまはぬ朝あり。
光源氏は早く起きてきて 紫の上は起きてこない朝があった

これは文学なんです
紫の上は素直に感情を表現する女性
結婚の順番がおかしい
通い婚 男性が女性の元に三日(三夜)連続で通うと結婚成立
三日夜餅(みかよのもち) 二人で餅を食べる
裳着 女子の成人式 
三日夜餅の前に裳着をしなくてはいけなかった

光源氏は自分勝手
第3回は葵の上(光源氏の正妻)

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク 春三日月

勿論「月」といえば秋の堂々たる季語です
その「月」を秋を軸としてそれぞれの季節
「冬の月」「春の月」「夏の月」ともある訳です
「春の月」は秋の「月」に比べて
より大気が潤んで朧な風情がある
それが「春の月」という季語の
微妙なニュアンスになってくる訳です
それが更に「春三日月」となった場合
その三日月の鋭いシルエットその輪郭の朧に滲んでいる感じ
そのシャープさと朧とがより際立って比較されてくると
そんなところに「春三日月」という季語の本意が
あるのかもしれませんね

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク 蕗の薹

天婦羅などにして食べたことが
あるという方も多いかもしれません
その他、蕗味噌なんていう食べ方もあるようですね
早春にまだ雪の残っているような
土の合間からその姿を見せる
黄色い花をつけてというあの「蕗の薹」ですね
小学校の国語の時間に「ふきのとう」という作品を読んで
記憶している方もいらっしゃるかもしれません
苦味と香りを楽しむある意味大人な食べ物でもありますね
実は春闌(た)けたかなり育ち過ぎたものを
「蕗のじい」とか「蕗のしゅうとめ」
なんて言う傍題もあるそうです

2024年2月24日土曜日

カラオケで一句&第8回三角パス②

無為自然(むいしぜん)水の如(ごと)亀の看経(かんきん)
辿り着く場所を探して春の月
春陰や徳を備えぬ人のをり
春寒や思わせぶりな薄笑い
冴返る量と価格の反比例

■ プレバト纏め 2024年2月22日
カラオケで一句 

▪特別永世名人 締めのお手本 梅沢富美男
らうらうと僧侶の美声花まつり
(カラオケ⇨僧侶のお経の声へ発想を飛ばした
 花まつりはお釈迦様の祭り4月4日
 らうらう よく声の通ること 語順もよく考えてある
 美声の僧侶だと人物に軸足 僧侶の美声だと声に軸足が乗る)

▪特待生昇級試験 武田鉄矢
「なごり雪」君を見ないで歌い出し
(この挑戦が1つの解答 ほのかな恋の物語がある
 「君」は詩歌の世界では恋愛の対象
 曲名に季語の力を託す 鍵カッコを外した方が良い
 歌い出すなら2ランクアップ 止めた方が余韻余剰が深い)
なごり雪君を見ないで歌い出

1位 HISASHI
親友のしゃがれたエール忘れ雪
(季語は忘れ雪 親友の思いは伝わる
 しゃがれたがよい 大人になっての友人
 季語があることによって友情は忘れないで続く)

2位 関口メンディー
デンモクがふたりを隔てる春休み
添削(デンモクとは曲を選ぶタッチパネル式のリンコン 
   言葉の経済効率がとてもいい 
   春休みも意図通り学生同士じゃないか❓
   中七は極力7音にする 俳句の定石 
   「隔てる」に軸足がのっかる
   語順を変えることで人物に軸足がかかる
   季語春休みがはっきり機能する)
デンモクが隔てるふたり春休み

3位 小林幸子
春の夜のカラオケ締めは「雪椿」
添削(鍵カッコで曲名 季語の力は弱くなる
   季語が美し過ぎてお互いを殺し合っている
   季語春の夜が主役になっていない 雪椿を季語にする)
雪椿咲きカラオケ締めはさて

4位 田中あいみ
カラコロンマイクとお酒沁みる春
添削(春という季語があまやかに響く)
ドアベルとマイクとお酒沁みる春

5位 レイザーラモン
朧月負けたらあかんで東京に
添削(季語は朧月 春の夜のぼんやりかすんだ月
   本歌取り 元の句の語句や趣向をとり入れて新しい句を詠むこと
   作詞家に途轍もなく失礼 弟子じゃないけど破門)

次回のお題「回転寿司」

■夏井いつき俳句チャンネル
第8回尻二字三角パス②次のお題は?「作句編」

リンボーでくぐり抜けたる虹の下

したがって失当ごまめでもくらへ   家藤正人

「ら」へ続く歌詞を探してゐて初夢   夏井いつき

ゆめゆめ口出す勿れ吾子初湯    郎善(ローゼン千津)

つゆほどの反省水祝が鼻   家藤正人

花まるのこどものための初みくじ   夏井いつき

九時投句〆切でせうか初句会   郎善

貝柱猛(たけ)き雑煮のうすにごり   家藤正人

ごり押しといはれて初荷送る送る   夏井いつき

くるくると目のまはりたる福笑ひ   郎善

2024年2月23日金曜日

知恵泉 伊丹十三 人を魅了するには

下萌や小さきものこそ美しき
仏教経済学鳥雲に入る
亀鳴くや保有所有独占欲
智慧つくし正命(しょうみょう)を生く春まけて
簡素と非暴力持ちて朧月

■先人たちの底力 知恵泉 伊丹十三 人を魅了するには
俳優 妻 宮本信子女史の言葉
新しいヒロイン像を伊丹さんが作った
今もそれは脈々とつながっている

4年の交際を経て結婚
あの人がプロポーズしてきたのに
「君の持っている物すべて捨ててください」って
「いやいいです」って
お蕎麦ゆでても食べてくれない
トイレで泣いてましたよ 最初のころ
12歳違いますから何でも知ってますから
「先生!」って感じで「これをしなさい」って言われたら
「はい」って言うしかない
映画1本でいいから作ってもらいたいと思っていた
でも伊丹さんに聞くと「いや映画なんかそんなとんでもない
そんな興味ないね」って「
1本でいいんだけどなぁ」なんて言うんですけど

伊丹十三氏の言葉
伊丹51歳 結婚から15年余り経って映画を撮ることに…。
「映画監督はある程度大人にならないとできない仕事ですよ。」

知恵その一 大人になってからこそ勝負しろ!
父 伊丹万作への反発心があった
その父を十三 13歳の時に亡くします。
その頃っていうのは息子がいちばん父親に反抗する時期
父親に対して非常に反抗したままの時にいなくなっちゃったから
反抗がずっと続いてきて父親に対して憎しみを持ち続けてきた

父親の影響 名監督 名脚本家のそれはあったと思います
無法松の一生を撮っていた時、すでに不治の病を患っていました。
エッセイ「父と子」
突然私は悟ったのである。
「この映画は父の私に宛てた手紙であったのだ!」
「ああ、私もそろそろ、父が「無法松の一生」を
書いた年齢に差し掛かっている。

父の死から31年 ようやく伊丹十三は映画監督に向き合い始めます。
運命を変えた出来事 妻宮本信子の父の葬式でした。
「映画がまるごと天から降ってきた」
「お葬式」日記

父親ふたりのプレゼントだったと思います。

この映画の救世主となったのは玉置泰さん
資金援助を約束
あの時代は映画を作っても配給先が見つからなかったら
お蔵になるそんな時代だったんで(製作費は)ドブに捨てる覚悟
「公開されなかった場合は僕は一生かかってもお返しします」って
伊丹の拘り①「映画はスクリーンに絵をかくようなもの」
伊丹の拘り②「役とは外側から作られていなければならない」
伊丹の拘り③「言葉にこそ人格が表れる」

お客様がいっぱい始まる前感動してね
外の扉見るとまだ開いてていっぱいの人なんですよ
「映画は僕の全人生の煮こごりのようなもの」
「お葬式」日記

人生の真実があらわれる
作家・編集者 松屋仁之さん

題材と闘う女 女シリーズ マルサの女

ほんとに実も心もすりへらして、自分で金出して、自分でリスクしょって、
大勢の人に有形無形の借りを作って、およそ筆舌に絶する苦労をして、
やっとこさお客さんに見てもらって、そうやって稼いだ金をですね、
まるで自分のものでもあるかのように六十五パーセント出しなさい、
といって平然と持っていってしまう。
「マルサの女」日記

「お葬式」とは全く傾向が違う映画でしょ?
前作よりは面白い映画ができると思いますよ。
キネマ旬報85年12月上旬号

監督って脚本も書いているからアイデンティティーが
全部そこに詰まっていて受け入れなかったら
ズバッと切られるような感覚あるんじゃないか❓
見ていただけなければこんな悲しいことはないと思う

知恵その二
身近なところに本質はある

120点まで要求される私の場合凄い厳しかった
それでダメなら2度とキャスティングされない
そういう厳しさを伊丹監督は持っている
女房だからじゃない私の必死ですよ
「主役はいちばんひどい目にあうんだよ」って

「チビでタフで、積極的で、ユーモラスで、
敢然(かんぜん)と悪と立ち向かう」
「マルサの女」日記

「今回の役は宮本信子じゃなきゃ」
婦人と生活87年3月号

未来を予見する伊丹映画
玉置泰さん
先見性よりも本質を突く
未来を予見って結果的にそうなったかも分かりませんが
伊丹さんは常に本質を突いてど真ん中という感じでやっていたんで
結果的に何年たっても色褪せない映画が残った

自分の作りたいものを作るしかない
お客に受けるためにこういうものを
入れておこうって気持ちは全然なくて
どうしたって大衆ってのは鼻づら引き回せるものじゃなく
結局正直なところ自分で満足するもの
納得いくものを作るってことに尽きる

本質へのまなざし
伊丹さんは日本人とか日本社会とか日本人論とか
そういうものが伊丹映画は面白い中にがっちりある
自分の姿を鏡で照らし出すように映画は出来ている
日本人と宗教とか日本人と何とかとか今だったら
どんなふうになるんでしょう

玉置泰さん
日本人に鏡をあてがって「自分をよく見てごらん」という仕事
自分の中でぐるぐる回すエネルギーを持っていた人

前編
知恵①「徹底的に形から入れ!」
知恵②「形を壊して想定外を楽しめ!」

だんだん認めてくれるようになったんじゃないですか
一緒に映画作るようになってパートナーみたいになって
「伊丹さんいいお嫁さんもらったわね」
今私自分で言ってます
今だったら言っていいじゃありませんか
今だったら言えます

2024年2月22日木曜日

100分de名著 ローティ❝偶然性アイロニー連帯❞2「公私混同」はなぜ悪い?

自然を愛し恵みに感謝日永
春の潮長き暮らしをふり返る
風光るゴールではない音楽と
感じるものを言の葉とせり春の色
終わりなき欲望抑え春時雨

■100分de名著 ローティ❝偶然性アイロニー連帯❞2「公私混同」はなぜ悪い?
哲学者 朱喜哲(ちゅ ひちょる)

第一部 偶然性 第二部 アイロニズムと理論 第三部 残酷さと連帯
テーマ
異なった人たちと、どうやって共存し、会話を続けていくことができるか❓

人間や社会は具体的な姿形をとったボキャブラリーである

言葉づかいを身につけるということが1つの人格を作る

人間はだれしも、自らの行為、信念、生活を
正当化するために使用する一連の言葉をたずさえている。(中略)
このような言葉を、その人の終極の語彙(ファイナル・ボキャブラリー)」
と呼んでおくことにしよう。

譲れないプライド=ファイナル・ボキャブラリー
自らの行為・信念・生活を正当化するために最終的に使用する言葉

自分のファイナル・ボキャブラリーを
(他者)に開いて歩み寄ることができるか

自分はこういう信念を持っていた
でもいろいろな育ちの人もいて俺の言うことを
理解できないのも当然だ
確かに彼の考えにも一理ある

ファイナル・ボキャブラリーが登場する場面には
会話が打ち切られることがある
自分がこだわっていることだが影響を受けてみたり
それを否定せずに済むようなことができる

個人・公共的な社会 両方考えることができるようになる
一見矛盾するがどうしたら同居できるか❓

なぜ正しいことが個人の利害に合致するのか❓
公共的な正義を追求することと
私的な関心を追求すること
この2つはどうしたら統一できるのだろうか❓

公共的なものと私的なものとを
統一する理論への要求を棄(す)て去り、
自己創造の要求と人間の連帯の要求とを、
互いに同等ではあるが永遠に共約不可能なものと
みなすことに満足すれば、いったいどういうことになるのかを
明らかにすることが、本書の試みである。

公と私 建前と本音
「バザールとクラブ」
公共的な空間としてのバザール⇨市場
私的な空間としてのクラブ⇨いつもの店

親密な場所だからこそお互いのファイナル・ボキャブラリーを
さらけ出して本音でしゃべれるかもしれない
本音でしゃべって自分を変更に開ける
自己創造の可能性がある場所でもある
両方に価値がある
混ぜるな危険がローティのポイントかもしれない

「それはどういう場所なんだろうか❓」
私的空間と公共空間の場所を考えるのが大事

問題は本音ではない
オフィシャルな場所で言ったことが問題
「心の底から考え方を変えさせねばならない」
と批判をすること自体が窮屈さを生む

建て前(公共的なボキャブラリー)
本音(私的なボキャブラリー)
どちらが正しくてどちらが嘘というわけではない
1人の人間の中に共存していてもよい

十二歳にしてわたしは、人として重要なことは、
社会的不正義との闘いに人生を捧げることなのだと悟った。
「トロツキーと野生の蘭」より

本質が1つならばどちらかが正しくて
どちらかが間違っているということになるが
別々のままでいいのではないか❓
どうやって社会や個人の中で同居し得えるのかを
考えるべきだと変わった

リベラル・アイロニスト
公共的にはリベラルであるべき
リベラル⇨私たちの社会の「残酷さ」を減らしていくことが
     最も重要だと考える人
力づくでいうことを聞かせたり
考え方を変えさせるのは自由ではない
その状態のことを「残酷さ」と呼ぶ
アイロニスト⇨自己の偶然性を認識し、
       自分が正しいと信じていることも、
       いつか改訂されうると考える人
これこそが理想的な人間社会図

私的な趣味の追及や相手が大事にしていることは
一歩一線を引きながらも
残酷な状況に対しては一緒に手を携えて
介入をして残酷な状況を解消しようとする
これが「リベラル・アイロニスト」に託された構想

ドメスティック・バイオレンス(DV)
私的な空間とされた家庭内の暴力でも
社会が介入するんだというように
我々の社会が公共性と私性の境目を変えている

2024年2月21日水曜日

本の道しるべ(2)&(3)福岡伸一&ヤマザキマリ・色紙の言葉#9&#10 松岡きっこと谷隼人&瀬川瑛子

木毛(もくめん)で包む心や春日和
蠟梅や池に映った月静か
春早し二度と会えない今日の月
春まけて歌わざるをえなくなり
暮らしの中の音と芸術長閑

■趣味どきっ!選 読書の森へ 本の道しるべ(2)
生物学者 福岡伸一

ドリトル先生航海記 
ヒュー・ロフティング著 福岡伸一訳
「航海に持っていったのはその鞄だけですか❓」
「そうだよ」
ドリトル先生が紐をほどきながら言いました
「旅にたくさんの荷物などほんとうは必要ない。
 そんなものはかえって邪魔になるだけだよ。
 人の一生は短い。
 荷物なんかにわずらわされているひまなどない」
「いや、実際、人生に荷物など必要ないんだよ、スタビンズくん」

失望の中からどうやって希望を見つけるか 福岡伸一
答えを小説の中に求める
失望の中で導いてくれた本
特に惹かれたのは松本清張著「石の骨」(短編全集「張込み」所集)
勝者の物語ではなく敗者の物語

敗者の悲哀を共有するというのは
世界に対して「謙虚」になること
「謙虚さ」とは「自己懐疑」
「謙虚さ」と「自己懐疑」は「知的」であること
自分が疑えないものは最も知的でない
自分が無謬(むびゅう)であると考えるのは最も知的でない

新しい読書の楽しみ方
かつて素晴らしいと思った本を再読すると豊かな読書になる

読み直したのは
丸谷才一著「笹まくら」
緻密な構造をもって作られた構築的な小説
「笹まくら」年表を作った
作家の創作を追体験
緻密さを再発見した

これからの読書
現代社会ではファストを求められている
私は(読書の)ファストに反対したい
読書はゆっくり読まなきゃいけない
じっくり味わうべきもの

ご紹介くださったほ本
レーベンフックの手紙 原色圖鑑「世界の蝶」
ドリトル先生航海記 SF宇宙人デカ 松本清張短編全集張込み

■趣味どきっ!選 読書の森へ 本の道しるべ(3)
ヤマザキマリ(漫画家・文筆家・画家)
代表作 「テルマエ・ロマエ」「プリニウス」

私の栄養素は書物 給油タンク 生き延びるための
本はイタリアとポルトガルとの家にも同じ本を並べている
他人様には優しくない本棚

好きな本「藤子・F・不二雄大全集21エモン」1巻(小学館刊)
この本を読むとどんな異質な環境にも慣れていける
究極のグローバリゼーション漫画

夫に薦められて読んだのは
「SF作家オラフ・ステープルドン」(1886~1950)

夫ベッピーノさんは比較文学研究者

子ども時代の大切な本
「昆虫の図鑑」(小学館刊)
虫は意思の疎通ができない
価値観の共有ができないと一緒に
いられないという概念から逸脱する
虫から学んだ人間との付き合い方

人生を決定づけた本たち
大人になったら絵描きになると話したら
絵描きになりたかった男の子の話「フランダースの犬」を
お母さまからプレゼントされた
「タイヘンでしょう 絵描きで食べていくって」とお母さん…。
「容量悪すぎない❓」とマリさんは思ったとか…。
行動力がないがゆえにああいう顛末になった
その点、「アラビアン・ナイト」はずる賢く
生き抜くための駆け引きが描かれている
「フランダースの犬」大作戦失敗!
「ずるい」というのは美徳 信じたお前が悪い
疑う気持ちを端折ってはいけない
信仰とか信じることを安直なこととされていて
疑念や疑う気持ちの方がよっぽどエネルギーを使う

何度の繰り返し読む本
失われた範列 群衆と権力 砂の女
出会ったのは17歳の頃
画家を目指して高校を中退しイタリアへ留学
惨憺たるものですけどね

絵を描くためには様々なコンテンツが自分の中になければならない
「まず本を読め」と言われた
「砂の女」阿部公房
逃げられなかったから、逃げなかった…
おそらく、それだけのことなのだ。
夢も、絶望も、恥も、外聞も、その砂に埋もれて、消えてしまった。
その後本を読み倒しました
百年の孤独 豊饒の海春の雪 
本を読むことで満たされ支えられ次への持続力になっていた

読書の森の歩き方
読書は朝食の時
読書のオトモは 紅茶

お気に入りのマグカップたち
① 九谷焼のマグカップ イタリアにいる夫からのプレゼント
② 古代の絵のマグカップ 自分で購入
③ 猫のマグカップ マネージャーからのプレゼント

愛猫ベレン

世界の在り方を感じた本
「祖国地球」「百歳の哲学者が語る人生のこと」エドガール・モラン

世界が西洋文明至上主義的な広がり方を
していることに反発心を持っている

地球人としていかに生きるかを問うています

これから私たちが学ぶべきなのは、
地球という惑星の人間として、
存在し、生き、分かち、伝え、交感することだ。
「祖国地球」エドガール・モラン

モランは常に何かに対して疑念と疑問 問いかけている
それが知性
今の世の中は知性や教養に対して省エネ
失敗するのがイヤだ間違えたらイヤだ精神性に対して非常に省エネ

本を読むこととは 活字でないとトレーニングされない筋肉がある
活字で精神力の筋肉を鍛える
些末(さまつ)なことで悩まなくてすむ 本をいっぱい読んでいれば

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん 昭和の大先輩とおかしな2人#9
松岡きっこ
思いやり

谷隼人
感謝の気持を忘れずに!

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん 昭和の大先輩とおかしな2人#10
瀬川瑛子
捨てる神あれば拾う神あり   

2024年2月20日火曜日

ロッチと子羊(68)&(69)

半端ない練習量春三日月
設計図通りに運ぶ春月夜
丁寧にPAINT重ぬ日永かな
太陽の祝福を受く春の鵙
いつか見たファッションがまた春の街

■ロッチと子羊(68)「医療看護学校編(2)」
▪悩める子羊 児玉龍哉
お悩み 失敗が怖くて挑戦できない
    挑戦する勇気が欲しい

本当の勇気を得るためには
恐れなくてはなりません
アリストテレス哲学の要約

勇気を持つには本当の恐れを知る必要がある
恐れがないのは向こう見ず 恐れすぎると臆病
向こう見ずと臆病の真ん中は「本当の勇気」
そこそこの恐れがなければ本当の勇気を持つことができない

本当の勇気は苦痛ではなく快楽を齎す
快楽とは喜び

▪悩める子羊 細沼果鈴
お悩み 病院では常に笑顔で人に接したい
    でも苦手なタイプの人がいたら…。

笑顔にこだわる必要はありません
なぜなら感情は人生のエンジンだからです
デカルト哲学の要約

ハッピーな感情⇨エンジン
全ての感情は必要だから備わっている

デカルトの言う6つの感情 
欲望 驚き 喜び 藍 悲しみ 憎しみ
これらを組み合わされると 不安 怒り 苦しみに変わり
全ての感情が人生のエンジンになっている

重病患者さんに寄り添う時ニコニコしているわけにはいかない
苦しみを分かち合うためには真剣な表情が有効

悲しみがエンジンになる

病院でイケイケタイプ⇨我儘な人
そのような人には凛とした厳しい態度をとったり
怒りの感情をエンジンにすることで逆に患者さん自身のためになる

感情がコントロールできない時どうするか❓
感情は人生のBGM
あなたの正体は感情ではなく理性だ
感情を理性でコントロールする
感情のON OFF ボリュームUP DOWN⇨自分(理性)

感情をコントロールするのは自分自身
患者さん一人一人に寄り添うために
いろんなBGMを自分自身が奏でる コントロールできる
名曲となって患者さんの心に響く

■ロッチと子羊(69) ろっちセレクション編(1)
▪迷える子羊 堀内健
お悩み ひとつのことをずっと気にしてしまう
ペシミズム=悲観主義 悲観主義⇔楽観主義 楽観主義=オプティミズム

幸福だから笑うのではない
笑うから幸福なのだ
フランス哲学者 アラン
1925年「幸福論」出版

悲観主義は気分に属し 楽観主義は意思に属する
成り行きにまかせる人間は気がめいるのだ
アランのプロポより

アランの楽観主義は強い意志で貫くもの
本当の楽観主義とは意思に基づくもの

「悲しみなんて病気にすぎない!
心の悲しみをおなかの痛みのように考えるのだ」
強引にでも前向きに捉える
不撓不屈(ふとうふくつ)の楽観主義を貫こう!

楽観主義は社会のための義務

2024年2月19日月曜日

兼題「海苔」&題「助詞『さえ』」

片隅に八正道(はっしょうどう)を春の潮
春の雨佇む鳥の視線をや
風光る理解のひだがまたひとつ
哲学に真理はあらず山笑ふ
苦しみの輪廻転生余寒かな

■NHK短歌 題「助詞『さえ』」
選者 𠮷川宏志 ゲスト いしいしんじ 司会 尾崎世界観
年間テーマ「助詞が生み出す効果」
助詞に感情が表れる

▪さえ(助詞)
雪さえも埃を芯に生まるるをよろめくように不信に向かう
吉川宏志

▪入選九首「さえ(助詞)」
二席 親友にさえさん付けで呼ばれてた音楽室の真昼のひかり
鈴木そよか
明日さえも分からぬカザの人らいて書店に並ぶ十年日記
青木一夫
夫(つま)逝きて十年過ぎし今でさえ靴箱に靴ひっそりと在り
及川香代子
母はもう私の顔さえ忘れたのつぶやいた友の白きこめかみ
市川義子
袖まわり赤い点々滲(にじ)ませてパーカーさえも受験生だっ
今村きき
三席 受験さへ終はれば実家出でゆかむかつて想った君のゐる県
北里有李
こんな日は蒲団カバーのファスナーでさえ牙を剥(む)く夕ぐれの部屋
古橋紗弓
一席 私 猫の毛は掃除機かけるたびに減り死んだことさえ吸い込まれてゆく
古城(こじょう)えつ
 果(は)つる日は知らず洗濯ばさみさへある日突然パチンと砕ける
小竹哲(私だったら助詞を「は」は「を」にする)

入選あと一歩
命さえ…続かぬ言葉聞き取りて黙して俯(うつむ)く珠洲(すず)のインタビュアー
川口知子
命さえ…続かぬ言葉聞き取りて俯(うつむ)く珠洲(すず)のインタビュアーは
(「黙して」がない方が無音を聞き取った感じが伝わってくる)
沈黙は実は雄弁

▪表現の最前線 岡井隆の歌
あたたかき雨は真冬と思われず彼女に雨を彼女は雨だ
(助詞だけの瞬間移動
助詞だけじゃないと速さが出ない 言葉が重くて)
助詞の速さ 尾崎世界観さんの歌でも
「本当なんてぶっ飛ばしてよ」の中でも効果的に使われています

言葉が重すぎると間に合わない
軽い言葉を使いたい
軽い言葉を使うことによって間に合う
その点助詞は相性がいい
助詞はリズムを作る
助詞は言葉を歌にする
リズムとメロディーのきっかけを与える
一番大事なのは助詞

▪いしいしんじの表現の最前線

▪ことばのバトン
勢(はずみ)車付きの玩具のあった頃
みなかみ町牧水会 会長 田村吉廣

仮面の男の返信を待つ
ナナロク社 村井光男

ちいさいことはいいことだ
ナナロクと仕事していると
そう思う。
谷川俊太郎

■NHK俳句 兼題「海苔」
選者 村上鞆彦 ゲスト テリー伊藤 レギュラー 家藤正人 中西アルノ
司会 柴田英嗣
年間テーマ「人生を詠う」今月のテーマ「老い」

「ままならないこと」って若さへの挑戦

蛍の夜老い放題に老いんとす   飯島晴子
(情景は切ないのに凛と生きている 
「蛍の夜」静かな季語なので格調だでている)

衰(おとろい)や歯に喰(くい)あてし海苔の砂   松尾芭蕉

磯辺巻き母に内緒で海苔二枚   テリー伊藤

▪特選六句発表 兼題「海苔」春の季語
一駅を海苔棚の海見て歩く   赤間学
(早春の明るい日差しを想像すると広がりのある句)
海もまた痩せてゆくなりながれ海苔   佐藤強
(「流れ海苔」は採取する時にこぼれて波に漂っている海苔)
板海苔の黒曜石のひかりかな   菫久(きんきゅう)
岩海苔を千歳搔(千歳か)きをる丹後かな   高橋智子
透かし見る海苔のみどりや朝ご飯   一瀬正秋
海苔の端(は)をちりつと火の粉浮かびけり   深町明

▪特選三席発表
三席 海苔汁をふはりふはりと飲みにけり   源早苗
二席 海苔干すや海を嫌いになどなれぬ   勝本さとみ
一席 有明の海苔ぞ厚かぞ濃ゆかぞと   犬山裕之

▪夏井家伝授!家藤正人と中西アルノ
0から俳句
俳都・松山を吟行しよう!

愛媛県立松山東高等学校
文芸俳句部と俳句を詠み合う

副部長 山本恭児
初凪やAM07.05発

坂上昊翼(そら)
着ぶくれて大街道を駆けにけり

青山ネモフィラ
漱石を読む春愁や五限の数学

▪今日マチ子、今日の一句
老眼でたぬきに見える春も来る   テリー伊藤

▪柴田の歩み
老い放題に老いる

2024年2月18日日曜日

源氏物語の女君たち(1)藤壺の宮

春めくや秤目(はかりめ)減る減る風呂掃除
キバナアマ和田屋の庭で偲び咲く
モラエスの気持ちはつづくキバナアマ
立春や亡き犬に似た犬見っけ
春寒し銀行がまた消えていく

■趣味どきっ!源氏物語の女君たち(1)藤壺の宮
古典ロマンの最高傑作「源氏物語」
光源氏が愛した8人の女君
教えてくれるのは清泉女子大学文学部教授 藤井由紀子

源氏物語は今から1000年前平安時代に書かれた作品
女性や子どもたちに読まれていた
現代で言うとサブカル
平安時代中期に紫式部によって創作された長編物語(全54帖)
第一部 光源氏誕生から英華を極めるまで
第二部 光源氏の晩年
第一部と第二部を合わせて正編と呼んでいる
第三部 光源氏の子供や孫の物語 続編

今回の女君は藤壺の宮

母・桐壺更衣(こうい) 父・桐壺亭(天皇)の間に生まれたのが 光源氏
父・桐壺亭の後妻となったのが 藤壺の宮

弘徽殿の女御(こきでんのにょうご)
桐壺亭の最初の妃で桐壺更衣をねたみ つらく当たった

母(桐壺更衣)は光源氏3歳の時に死亡
父は光源氏を政権争いから守るため皇族から外す
臣下 君主に仕える家来に下ろした
帝から「源」姓を賜る
光源氏はニックネーム
本名は作中に明かされていない
光源氏が8歳か9歳の時 新しい妃を貰うそれが藤壺の宮
入内(じゅだい) 女御などが内裏に参入すること
この時光源氏10歳 
藤壺の宮15歳(厳密な時代考証に基づいてはいない)

光源氏18歳 藤壺の宮23歳体調を壊し実家へ
藤壺の宮の女房(宮中や貴族の家などに仕える女性)に
強引に手引きをさせて藤壺の宮の部屋に忍び込んだ
「かつてのあの出来事を思い出しただけでも
 あれきりにしようと思っていたのに」項垂れる藤壺の宮。
この密会で藤壺の宮は身籠ってしまった。
男の子を出産。帝は気が付かず大喜び。

平安一口メモ ~内裏(だいり)~
帝や女君たちが住んでいる御殿
後宮 妃などが住むエリア
桐壺更衣には大納言の娘 親が死亡し後ろ盾なしだったので遠い場所でした
弘徽殿(こきでん)女御は右大臣の娘なので帝の傍を確保していました
光源氏は皇族ではないので内裏の外 二条に居を構えていました
光源氏は藤壺の宮に母親を重ねたのではなく彼女の人間性にひかれた
光源氏の正妻は葵の上 理想の女性は藤壺の宮

原文で読み解く 藤壺の宮
宮もあさましかりしを思い出づるだに、
(「あさまし」驚き・あきれる 予想外のことに呆然としてしまう
「し」は過去の助動詞 
藤壺の宮も予想外で呆然としてしまったあの時のことを思い出すだけで)
世とともの御もの思ひなるを、
(ずっと物思いの種だったから)
さてだにやみなむと深う思したるに
(せめて一度だけで終わりにしようと深く思いであったのに…。)

この密通は2回目 1回目のことは記されていない
源氏物語の文学としての深さ

藤壺の宮の性格 原文より
なつかしうらうたげに、さりとてうちとけず
(「なつかし」親しみがある「らうたげ」いじらしくてかわいらしい
 けれど光源氏に心を許さず)
心深う恥づかしげなる御もてなしなどの
(思慮深くものすごく立派な振る舞いを崩さない)
なほ人に似させたまはぬを、
(この人は普通の人とは違う)
などかなのめなることだに うちまじりたまはざりけむ
(どうしていい加減なところが混じっていないのだろう
少しでも欠点があれば嫌いになれるのに)

藤壺の宮は先帝の娘(内親王)
中宮 帝の妃の中でも一番高い位 に就き栄華を極めた

光源氏はなびかない女性が好み
女は沼る

光源氏の求愛を反対勢力(弘徽殿女御など)に知られると
子どもの将来を潰されるので、
ことあるごとに芯のある決断力を示した

罪の意識をベースに源氏物語は進む
華やかな恋愛物語の根底には罪の意識がある

次回は紫の上

2024年2月17日土曜日

100分de名著 ローティ❝偶然性アイロニー連帯❞(1)近代哲学を葬り去った男

短日や広がる琵琶湖月見亭
琵琶湖と月と紫式部霜夜
痛みとの闘い続く雪時雨
真実は人の数だけ波の花
尻拭きで鼻をかむなり寒の水

■100分de名著 
ローティ❝偶然性アイロニー連帯❞(1)近代哲学を葬り去った男

20年前に予言した哲学者
その時点において何かが決壊する。(中略)
一連の制度が破綻したと判断し、
投票すべき「強い男」を
探し始めることを決断するだろう。
「アメリカ 未完のプロジェクト」より
その哲学者の名はリチャード・ローティ(1931-2007)
「偶然性・アイロニー・連帯」
これ迄の伝統的哲学を否定し
葬り去ろうとした反逆者でもありました。

著書「アメリカ 未完のプロジェクト」(1998)が
トランプ現象を予言したことで再注目された

哲学者 朱喜哲(チュヒチョル)

隠れた鉱脈と言えるかもしれないと…。
「哲学は何をするのか❓」という疑問に対して
答えを自ら示したのが「偶然性・アイロニー・連帯」
哲学者の使命は永遠不変の真理を見つけ出すこと

哲学者は、知識について(中略)
他の誰もが良く知らないことを知っているのだと
考えるのを辞めるべきだ。
それは、哲学者の声が、いついかなるときも
会話の他の参加者たちの耳目を疑う価値をもつ
特権的なものだと考えるのをやめることである。
「哲学と自然の鏡」より

ローティの哲学批判

人間に何か本質があるという考え方自体が
百害あって一利なしだと切り捨てた

感心事 哲学的問いの例
古代 自然  万物の起源は何か❓ 
       目に見える世界を超えて存在する何かはありか❓(物理学や天文化学)
中世 神   神は同夜て理解するか❓
       信仰と理性はどういう関係にあるのか❓
近代 人間  人間は真なる知識を獲得できるか❓(脳科学や認知科学)

今では違うジャンルの学問がある
これらを貫いて哲学が同じ問題を扱ってきた
というのは思い込みではないか と提起したのがローティ

ルネ・デカルト 近代哲学の祖 
「我思う、故に我在り」という言葉を残した

心などの疑い得ない何かがまずあって
この確実なものの上に知識を積み上げていけば
確かな知識というものを考えることができる
「デカルトの心は真理に至っていない」と証明するため
「対蹠(たいせき)人」という思考実験を論じた

心にまつわる言葉?心という概念?がありません
変わりに脳の状態について語るのだと言います。
相容れない2つの主張が生まれるのだと言います

一方では「地球人は自分には感覚がある
と思っているが、実はないのだ」
という対蹠人(中略)であり、他方では
「対蹠人には感覚があるのに、その事に彼らは
気づいていない」という地球人の哲学者。(中略)
この袋小路を抜け出る道はあるのだろうか。
「哲学と自然の鏡」より

これは原理的に調停ができない
「心は何か❓」という問いを立てれば問題事が発生する
何も困っていないんじゃないですか❓

必要ないものをわざわざ
「ある」という証明をしようとしたり
「ある」という共有をしようとしているから
ややこしくなっているだけというのはかなり大胆な否定

デカルトが自分の問題に即して
心という言葉づかいや概念を発明したんじゃないか❓
誰もが元々あるものを発見したわけではない

伝統的哲学を解体したローティー新たに捧げた使命は
「人類の会話」を守ることでした

言葉は私たちを形作り力があります

「どちらの言葉がより正しいんだ」
というやり方をやめないと
私たちの日常の豊かな言葉づかいは守れない
並列的に言い換えを増やして理解のひだを増やす
異なる価値観や言葉が違う人もひだを経ながら
様々な言葉が一緒に共存している状況を守ろう
というのが新しい哲学だとローティは言っている

言葉は社会や人間を変える力を持つ
これがローティが一番こだわっているポイント

偶然性・アイロニー・連帯
第一部 偶然性
第二部 アイロニズムと理論
第三部 残酷さと連帯

テーマ
「異なった人たちと、
 どうやって連帯し、会話を続けていくことができるか❓」

「私たちは偶然で今の社会のあり方も偶然」
という認識を持つべきだと
一番正しいものということはあり得ないし
これからも変わっていくことがあり得る
絶対に正しい原理を持ち出したり
「それがわかっている私」と線を引いていく
それは人の分断を作り出す
本質を探そうとする発想から
縁を切らなくてはいけないというのはローティの考えのポイント

2024年2月16日金曜日

刑事ドラマで一句&兼題「牡蠣」&稚児「たんま」

(糸井重里氏へ)寒日和優しく強く面白く
隙間からじわり冷気が襟もとへ
青き空雪中四友咲き誇る
眉山町モラエス偲びキバナアマ
今見ごろ和田屋の庭をキバナアマ

■ギュッと!四国 夏井いつきの俳句道場
兼題「牡蠣」

「牡蠣」冬の季語。
傍題「牡蠣田・真牡蠣・牡蠣打・牡蠣割る・牡蠣むく・牡蠣飯・酢牡蠣」

▪ギュッと!特選
牡蠣の山大焼き網へ撒かれたり   春那ぬくみ
(選句ポイント 牡蠣小屋の臨場感 描写が巧い)

▪放送された俳句
生牡蠣もフライもホット酒の友   こま子
展望台キッチンカーの牡蠣5つ   里の秋
(意図がない限り漢数字で表記 五つ)
薄れゆく友の笑顔か牡蠣の香か   清水刺繍子
(薄れゆく友の笑顔か牡蠣の香 にすれば良かった)
牡蠣打や鳴り響く音リズム良く   しまおか実由季
(中七でもっと映像化できた)
秀作 AMのざらつく音よ牡蠣を剥く   しばのおはる
(ざらつくという表現が良い)
佳作 肉厚の殻付き牡蠣焼く小屋の卓   オムライス
(情報が全て詠み込まれている)
牡蠣小屋の争奪激し殻山盛り   森本モコチャン
(中七が説明になっている 映像化する)
焼き牡蠣の殻と格闘覚める酔い   バトラーM
(中七 何をやっているのか書かないと)
秀作 網焼きやバケツに放る牡蠣の殻   ルアン
(これこそが中七の映像)
牡蠣鍋や故郷の香よ母の顔   みーこ39
(「や」「よ」三段切れ 牡蠣鍋は故郷の香よ母の顔)
ゆうどきの志度湾岸は牡蠣焼きの香   佐々木のっこ
(ゆうどきの志度湾牡蠣焼きの香り とすることで調べが整う)
秀作 愛南の海のふくよか牡蠣の腹   マレット
(ふくよかの位置が良い ことばが上下に影響を及ぼしている)

▪比喩を成功させるコツ
(意外性があるけど真実味がある 
言われて見たら納得するのがポイント)

比喩を成功させた秀作の句 放送された句▪
ヴィーナスの厚き耳たぶめく真牡蠣   くま鶉
▪網上の牡蠣や阿弥陀の耳朶のごと   はなぶさあきら
(耳朶じだとは耳たぶのこと)
ベルーガのおでこのやうな牡蠣あまし   天雅
岩のかたち波のかたちに牡蠣の殻   宮武美香
▪ミステリの館のやうな牡蠣の殻   ギル
▪法悦に似て牡蠣の味丸呑みす   亀山酔田
(法悦とは仏の教えを聞き、それを信じることによって心にわく喜び
うっとりとするような喜び エクスタシーのこと)
▪たましひのやうにのまれてゆくかきは   卓鐘
たましいの濁りのような牡蠣の白   平良嘉列乙
参照:
https://www.nhk.jp/p/gyuttoshikoku/ts/7MXVZZ52K3/blog/bl/pKyjJXApJB/bp/pM6ovY2YPz/

次回の兼題 雛祭(ひなまつり) 春の季語

■ワルイコあつまれ(77)
稚語俳句 辻内京子 髙柳克弘 松尾葉翔
今回の稚語 たんま
「ちょっと待って」の意味 「タイム」が語源とされる*諸説あり

じゃんけんにたんま連発水温(ぬる)む   辻内京子
(水温む 春の季語 春に池や川の水が温かくなること
 水草が成長し生物も活発に動き始める様子)

雪解風(ゆきげかぜ)たんまたんまとバスを追う   髙柳克弘
(雪解風 春の季語 春先に吹く暖かい風)

花あっちたんまさすなよみつばっち   松尾葉翔
(俳句って意味ではなくリズムだと言われる
 それに適ったリズムを大切にした句を作られている
 中七の表現があいまいで意味が伝わらない)
添削
花そこと指さし蜜蜂のたんま   辻内京子
(句またがりによる違和感 リズムの悪さが恐怖感につながる)

うなりくる羽音にたんま花なずな   髙柳克弘
(みつばちをあえて言わずに表現 
 花なずな(はるのきご)春の七草のひとつ「ぺんぺん草」ともよばれる)

たんまとて待てないときもあるのだよ   松尾葉翔

■プレバト纏め 2024年2月15日
刑事ドラマで一句 

▪特別永世名人の〆の一句
梅沢富美男
張り込みのあんぱん香る桜漬け
添削(お手本には物足りない 語順が悪い 季語は桜漬け
   季語も生かしつつギャップも生きてくる)
桜漬けほんのり張り込みのあんぱん

▪名人10段を目指す試験
森口瑤子
ロケバスに積む犯人の春日傘
(犯人像が浮き上がってくる この語順大事
 このドラマの中の大事な要素 
 最も少ない言葉で最も大きな世界・効果を作る これが名人)

1位 内藤剛志
本職に黙礼される今年も春
添削(字余りが少し損 どっしりとかっこよくなる)
本職に黙礼さるる春やまた

2位 矢柴俊博
春の雲血のり右目に染みており
添削(血のり①地に見せた小道具②ねばねばする血
   血のりをさらにアップする 驚きの効果が少なくなる)
春の雲右目に染めてくる血のり
撮影のどか右目に染めてくる血のり

3位 紺野まひる
春夕焼台本ト書き「ここで泣く」
添削(テーマ性という上で損)
春夕焼ト書き犯人「ここで泣く」

4位 大友花恋
初刑事手錠震わす余寒かな
添削(季語を際立たせていない)
余寒な手錠をかけるシーン

5位 斎藤司
冴えかえる帰宅後妻の取り調べ
添削(季語は冴えかえる 寒さが戻ってくること 
   内容が貧しい 底が浅い句)
返る深夜の帰宅妻や待つ

次回のお題「カラオケ」

2024年2月15日木曜日

読書の森へ 本の道しるべ(1)角田光代

厳冬や輸入で凌ぐフェンタニル
オピオイドクライシスへと冬の雷
存在の承認要求冬ざれ
影は存在証明冬の夕焼
厳寒や瀬田川望む石山寺

■読書の森へ 本の道しるべ(1)角田光代
「対岸の彼女」で第132回直木賞受賞
読書は一番古い習慣
愛猫の名はトト
何となくジャンル分けにしておかないと探す時に苦労する
ざっくり探しやすいように決めている
本棚は夫婦で共有している

「黒猫」エドガー・アラン・ポー著1843年発表の恐怖小説
打ちのめされ方が強烈だった
その感情を忘れたくなくて今もこの本を持っている
恐ろしさが忘れられない 凄い感動だった
(絵本に)引き込まれてすごく面白い世界だと思った

小学校一年生の時の作文
のはらににじがみえました。
もっとちかくにいってみました。
とうとううみにつきました。
もっとちかくにいきました。
だけどにじはむこうにみえました。
(この作文は)ウソなんですよね

初めて自分で作文を書いた
書いたら伝わった
書けば伝わるということが
すごくうれしかった

異世界を教えてくれた本
「ちいさいモモちゃん」シリーズ 松谷みよ子(講談社刊)

コツ、コツ、コツ。
ママにはパパのあるきかたが、
すぐわかります。
ピンポーン、ピンポーン。
チャイムがなります。
ママはとんでいって
ドアをあけます。
けれども、
そこにパパは立っていません。
ただ、パパのくつだけがありました。

別の世界がもしかしてあるのかな
この世界と地続きになっているけど
目に見えない異世界の存在を感じた

「ガラスの仮面」美内すずえ(白泉社刊)
「ガラスの仮面」は世界の常識だからと言って
ご主人様にプレゼントされたとか…。
マヤ派か亜弓派か 才能の話をする時に必要
マヤは演技の天才 亜弓は努力型の俳優
角田光代女史は物凄く努力するので亜弓派だそうです。
桜小路君のタイプかな 才能もバックボーンもないが
一生懸命がんばるタイプだと…。

中学時代の愛読書 太宰治
自分のことを書いてくれていると錯覚を抱いた作品
私のために書いてくれていると思ったくらい好きだった
「人間失格」太宰治(新潮社刊)
20代太宰が好きだった自分が恥ずかしい
30代半ば太宰の本当の面白さに気づく
年齢によって付き合い方が変わる作家

作家を目指す中で出会った本 内田百閒
サラサーテの盤(六興出版刊) 間抜けの実在に関する文献
現実と現実でないものの「間(あわい)」を行ったり来たりする
現実を抜け出してしまう感じがお好きだとか…。
現実が一枚ではない 裏にも何かあるかもしれない

読書の森の歩き方
角田流読書術 忙しくても本を読む方法
ポイント 隙間時間を活用する
電車 風呂場 トイレ 食事中 長いエスカレーター
ATMの順番待ちでも読んでいる

至る所に本が…。リビング 洗面所 お風呂に入る時に読む本
本棚部屋の机 これから読む本 これらは棚に入れません。

なぜそんなにたくさん本を読むの?
本を読むことは単純に喜び
ここではないところに行けた喜び

1990年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞受賞
作家としての天気となった本 輝ける闇 開高健(新潮社刊)
われわれは討たれるのを待ちうけつつ進んでいる。
ときに探検家のあしどり、ときに散歩者、
そしてしじゅう迷い子の足どりで、隊は進んでいく。

徹底的に正真正銘のものに向けて
私は体をたてたい。私はたたかわない。
誰の味方もしない。ただ見るだけだ。
わなわなふるえ、目を輝かせ、犬のように死ぬ。
(「輝ける闇」開高健)

30年ぐらい前のことなのに地続きだということが肌でわかる
「匂いを書きたい」
その「匂い」が錯覚でもわかる
自分自身の体を使って体験し本当に伝わる言葉で書く
という姿勢の感銘を受けた

目指しているものがすごく遠くなった
どこを目指すかわからない
書くことでしか行けないところ

絶望的になる 無尽蔵に本が読めるわけではない
表裏一体というかどれだけ年をとろうと
読みたい本がずっとこの先ある

読書は旅に出るようなものという角田さん
ここではないどこかへ向かう旅
先ずは本の表紙をめくって読書の森に続く
旅の一歩踏み出して

2024年2月14日水曜日

長谷川時夫 心の時代

智慧つけるカラスの奇襲冬の朝
一輪の蠟梅生けた厨かな
蠟梅の香る床の間夜明け前
冬の夜願いはひとつ眠りたい
エフィカシー自信を持って春まぢか

■こころの時代 月がささやき 石が吠える 音楽家 長谷川時夫
自分が何を本来欲しているのか
自分の本質に歩んで行くことなんだと思う
月を見ていて邪魔にならない音楽
あるいは風を感じながら弾けるような
音楽みたいなものを増やしていったらいいと思っている
ゆったりとした自然とのコミュニケーションが生かせる音楽

存在の重さと重さがバカンっと
音を作るわけでその音はすごい音がする
自分たちは宇宙に暮らしているんだという
実感を持つことはとても大事だと思う

ちょっと東洋的な要素があったっていうか
天界の音楽のような雰囲気

しゃべることのできない日々に、考えることも減少した。
そうしてできた心の隙間にふえていったのは
見ること、感じることだった。
そして出会ったのが風だった。
風がこんなにいつも自分の友として存在していたと、
なぜ今まで知らなかったのだろうか。
北欧の青い芝生に座って風を見ていると、
木が風に踊っているのがわかる。
風は地球を楽器として遊ぶ。
自分を閉じ込める部屋の壁をじっと見ていると、
壁を通り抜けられるような意識がわいた。
自分を隔てるものは、部屋の壁、空の壁、
その向こうに見えない星の壁がある。
それらをパタパタと将棋倒しのように倒していくと、
宇宙に自分という星があることを思った。
長谷川時夫「宇宙の森へようこそ」より

この地は、世界で最も雪の多い所である。
経済的効率を考えるならば、多大な悪条件を、
この雪によって被るといえる。
しかし、この雪が恵みもまた多大なのである。
雪が降ると大池の音世界は一変する。
雪は音を消すだけでなく、
音を出すものを、草木を埋めていく。
山向こうの鳥の羽音も聞こえる。
景色の変化は移ろい易く、
常なき世界を、自然界の持つ真理を教える。
雪が降れば降る程、心は澄みあらわれよう。
それは「参禅」にも等しいものである。
雪掘りの生活そのものが禅である。
この大池の恐ろしい程の、世界で最も深い雪が教えてくれよう。

ジョン・H・ボウルズの言葉
長い間複製でしか見られなかった絵の実物を見ることができて
興奮していますし感謝しています
これらの絵の描き手は社会的地位がとても低く
あまり文化を持っていないと考えられていました
しかし今では
豊かな文化だと理解されています
長谷川さんの努力の結果
多くの素晴らしい作品がここで生み出されました
いまでは絵画の制作者たちが訪れるだけでなく
インドやヨーロッパから
私はアメリカからですが
高名な学者たちもここを訪れています
ここは聖地になっているんです
ミティラー美術を学びたければ十日町に来なければいけません
この美術館は人々を結ぶ
文化の架け橋になっているのです

「STONE MUSIC」長谷川時夫の初めての個人アルバムとなりました

限りない星を見る時、
人々は自分が砂粒のように小さなものであるということを知る。
そして宇宙の中にある一個の
小さな生き物としての自覚に目覚めよう。
それは自ずから、広大な宇宙にあって、
人も虫もあらゆる生き物も等しいことが知れよう。
森の一番鳥の音は朝を告げ、
蝉の音は命の短さをも知らせる。
中空に舞う枯葉の音は「流転」を知らしめ、
森の音は「無常」をうたう。
枯葉一枚にしても、心を澄ませるなら、
世界の深さを知ることができよう。

2024年2月13日火曜日

題「傷ついたこと」&北政所

寒稽古原点回帰水を浴ぶ
寒稽古言葉も水も受けて発つ
めくりめく虚構の世界雪遊び
良くも悪しくも使える虚構寒の入り
それぞれの一瞬を生く冬の月

■NHK短歌 題「傷ついたこと」
選者 山崎聡子 ゲスト 松井玲奈 司会 ヒコロヒー
年間テーマ「伝えられなかった思い」

いちまいのガーゼのごとき風立ちてつつまれやすし傷待つ胸は
小池光

▪つぶやきを短歌に
溶けきった氷で濡れた口のなか言葉はかたちを持たず流れる
山崎聡子

上の句で情景の描写をして下の句で心理描写する

▪てれび歌会
入選九首 テーマ「傷ついたこと」
三席 きみ去りて蛾の銀粉に塗(まみ)れつつわれ半身で生きねばならぬ
伊藤一夫
傷つけるよりは傷付けられたがる君を何度も立たせる花野
小林菫子(すみれこ)
一席 消えそうな声で嫌だと言えたこと火炎のような今日の夕焼け
紙村えい
 文字にして記せば傷は薄れゆく終止符をうつ夜の日記に
青木良子
二席 傷ついたことなんてない凍てる夜の窓に吊りたい貝殻と羽根
北入はるか
 つかまれて傷つけられてつぶされてガザの白桃生卵たち
兼松正直
 終電の足もとだけの暖かさ中途半端に優しくするな
くらたか湖春
リビングで寂しげな目をする父に渡したはずの鹿のブローチ
菊池茎
母を追い出し父を追い出し四方より壁迫るくるごときこの部屋
大津穂波

▪松井さんの「傷ついたこと」
噛みつかれ傷ついた腕すでに癒えいま傍にあるねこの温もり
松井玲奈

▪ことばのバトン
ひとしずくの夢足音(あおと)ははずむ
みなかみまるごと短歌プロジェクト 実行委員 篠原香代

勢(はずみ)車付きの玩具(おもちゃ)のあった頃
田村吉廣
みなかみ町牧水会 会長

落葉山ならび合ふ間の遠空の藍の深みに雪の峯見ゆ
行き行くと冬日の原にたちとまり耳をすませば日の光きこゆ
若山牧水の歌碑

■偉人・敗北からの教訓 
第31回「北政所・悲しき豊臣家臣団の分裂」

北政所おねの敗北から学ぶ教訓
一、ここぞという時に演説で指針を示すべし
二、相手の懐に飛び込み顔を突き合わせ関係を築くべし

2024年2月12日月曜日

兼題「針供養」&ザ・プロファイラー バッハ “音楽の父”の壮絶人生

(山本七平)雪兎感情移入の絶対化
冬の夕焼命題の絶対化
空気的判断あらん四温晴
村社会という構造鎌鼬
思考なき状況倫理冴える星

■NHK俳句 兼題「針供養」
選者 山田佳乃 ゲスト 小島慶子 
レギュラー 家藤正人 中西アルノ 司会 柴田英嗣
年間テーマは「俳句とエコロジー」

長年使用してきたものには魂が宿ると言われている
感謝を表すためにいろんなものを供養する

▪名句de穴埋めクイズ
古妻(ふるづま)や針の供養の沢山   飯田蛇笏

▪特選六句発表 兼題「針供養」
空襲で移りし御堂針供養   西川由野(よしの)
着流しの男ぶりなり針供養   南タミ子
裁縫の授業繰り上げ針供養   中尾文貞
がやがやと来て神妙に針供養   布野寿(ぬののひさし)
私 針納(おさめ)紀淡海峡波高し   春名勲
病室に置けぬ針ばこ針供養   馬場崎智美

▪特選三句発表 兼題「針供養」
三席 針供養女ひとりの老いゆきぬ   山本美奈友(みなとも)
二席 まち針の影のはなびら針供養   北清水麻衣子
一席 私 空を縫ふ雨音ゆかし針供養   井上勝博
(「ゆかし」とは心が惹かれるという古語)

▪夏井家伝授!家藤正人と中西アルノ
0から俳句
俳都・松山を吟行しよう!

明教館POINT
1828年松山藩の藩校として設立 
その後旧制松山中学校となる
正岡子規、高浜虚子、川東碧梧桐も学ぶ
夏目漱石は明治28年旧制松山中学校の英語教師として教えた
旧制松山中学校での体験が小説「坊っちゃん」の題材となった

愛媛県立松山東高等学校 文芸俳句部
文芸俳句部と俳句を詠み合う
「松山」をテーマに一句!
くわいをる坊ちゃん団子冬木立   部長 篠原康太

▪小島さんの一句
針供養数え四十の乙女らの   小島慶子
添削
針供養数え四十の乙女たち

▪柴田の歩み
俺はまだまだだなぁ~

■ザ・プロファイラー バッハ❝音楽の父❞の壮絶人生
 
ヨハン・セバスチャン・バッハ
私と同じくらい努力をすれば誰でも私と同じようになれる…。

私の心はこの和声の父(バッハ)の
高く偉大な芸術にすっかり傾倒しております
(ベートーベンが書いた 友人への手紙)

私が常に目指していたのは
神の栄光のためによく整った教会音楽を演奏することです
しかしここでは誰かの反対なしに
それを実行することができず
事態が好転するきざしさえ見えません

私と同じくらい努力をすれば
誰でも私と同じようになれるでしょう
(19世紀のバッハの評伝より)

ケーテンには音楽を愛し
音楽を理解してくれる領主がおり
その方のもとで私は生涯を過ごすつもりでした
(友人への手紙)

最初は宮廷学長にまでなった私が
単なるカントールになることに気が進まず
3か月も決心がつかなかった
しかしこの地位は条件が大変よいと聞き
また息子たちが大学教育を望んでいたため
神の御名によって心を決めて
ライプチヒで試験を受けて転任しました
(友人への手紙)

① 宮廷学長
② カントール(教会の音楽指導者)
③ 宮廷楽師長
④ 宮廷オルガニスト
⑤ 教会オルガニスト
⑥ 宮廷楽師
⑦ 町楽師⇦父

1730年(45歳)市参事会に上申書を提出
能力が乏しい そして音楽の才能が
全くない生徒の入学を許可したため
音楽の質が必然的に低下し衰退をきたした
現在使用に耐える者17人
いまだ使用に耐えざる者20人
そして絶望的なものが17人いる

当局者の態度は不可解で
しかも音楽を大切にしない
不愉快さと妬みと迫害の中で
生活しなければならないのです

作曲家としての評価は高くない

1737年(52歳)音楽雑誌で批判される
バッハは複雑すぎて時代遅れ
仰々しく混乱した音楽が作品から自然な感じを奪い
過度な技巧を凝らして
音楽の美しさを曇らせている
(雑誌「批判的音楽家」)

1750年7月28日
ヨハン・セバスティアン・バッハ永眠(65歳)

バッハの曲はほとんど忘れられた
約80年後メンデルスゾーンが「マタイ受難曲」を再演。
これが大成功をおさめて世界各地で再評価された。
近代音楽の礎を築いたバッハはこう呼ばれた
「音楽の父」と…。

2024年2月11日日曜日

100分de名著 選 独裁体制から民主主義へ(4) 新たな独裁者を生まないために

冬空へ霧笛届けん尻屋崎 
目を見張る古豪(こごう)の成長冬銀河
冬の月重ねた進化受け継がれ
(坂倉準三氏)人間のための建築冬日向
冬の月都市がリズムを刻みをり

■100分de名著 選 独裁体制から民主主義へ(4) 
新たな独裁者を生まないために
著:ジーン・シャープ 解説:中見真理先生

成功の後にすべきこと
独裁体制が崩壊した直後が一番危ない時期だと指摘
政治的空白を作らないことが重要
軍部によるクーデターにも注意

古い政府組織の中でどの部分が(秘密警察のように)
その反民主的性質により完全に撲滅されるべきか、
どの部分が残されて後に民主化されるべきかを
判断する必要がある。

シャープが重視した問題の一つは旧体制の高官たちの処遇

自由はただではない Freedom is Not Free.

自由を維持するためのコスト
コスタリカは軍隊を持たない非武装中立国
1948年コスタリカは軍隊廃止を宣言

独裁体制からの解放は可能である
それを達成するには非常に慎重な考えと戦力計画が求められる
警戒心と努力、鍛錬された闘争、時には大きな犠牲が必要である

シャープ理論と問題点とアメリカ型民主主義

アメリカには民主主義を掲げて侵略行為を行ってきた過去がある
シャープなそうしたことにはほとんど触れていない

2017年ドナルド・トランプ大統領就任
2018年ジーン・シャープ死去(90歳)

「独裁体制から民主主義へ」の記述には
見過ごすことのできない重大な問題がある
部分的に暴力を行使することを認めている

なぜ暴力を認めてしまったのか?
この本はミャンマーの民主化運動を訴える雑誌のために書かれた

ボーミャ
ミャンマーの反政府運動のリーダー
文中の「非暴力」と言う言葉に強い抵抗を示した人物

軍事政権が少数民族の大虐殺を計画している現状では
非暴力だけで闘うことはできないと主張

手引書として武力行使を厳しく禁じるべきだった

イラン大統領選挙結果への抗議デモ(2009)
選挙結果を巡る対立が続くイランで治安部隊が女子学生を射殺
映像が世界中に拡散され国内外から強い抗議の声が上がる

政治的柔術が働くかに見えましたが政権崩壊には至りませんでした

体制側も研究するシャープ理論

ロシア政府の反革命組織
「NASH(ナーシ)セルビア民主化運動組織「オトポール!がモデル

非暴力闘争の側も進化しなければならない

エリカ・チェノウェス/マリア・ステファン著
「なぜ市民的抵抗は機能するのかー
非暴力闘争の戦略的マジック」(アメリカ2011年)

データが示す非暴力闘争の「勝率」

2012年に「もっとも優れた政治学・国際関係論の書物」として
米国政治学会から表彰された

非暴力闘争では軍事闘争とは異なって女性が参加しやすい
女性が参加すると大規模動員につながる
ジェンダーの観点が導入されている

独裁体制は根絶できない
民主主義を守りながら様々な決断をするには
強力なリーダーシップが求められる

誰かが強力なリーダーシップを発揮する方が
効率よく物事が運んでいく

他者に決定を委ねる方が楽だと思う人が
増えているのではないか

NOと言う力を身につけることが大切

専守防衛
他国に不安を与えるならば必ず日本の不安となって跳ね返ってくる

抵抗運動を広めるために
「個人では政府や独裁政権に対して全く無力」
個人として立ちながら結束して大きな勢力を形成
非暴力はそんな単純なものではない

おそらく世界中の強権的な政府の関係者はシャープを読んでいる

もし、人々が自らの自由のために
何が必要かを把握できれば、
苦痛は伴うが、いずれその自由をもたらす
行動の流れを描きだすことができる。
そうすれば、不断の努力の下に
新しい民主主義的規律を構築し、
その防衛に備えることができる。
このタイプの闘争で得られた
自由は永続する。
自由を護り、豊かなものにすることに
打ち込む粘り強い人々によって、
それは保持されていくのだ。
From DICTATORSHIP TO DEMOCRACY
Gene Sharp

2024年2月10日土曜日

河井寛次郎 美は喜び 住める哲学

挑戦を心に秘めて冬鴎(かもめ)
波と波重なり合いて冬の潮
伝統へ変化求めて寒の雨
若き感性新しき美へ雪見
朝靄の中すんくと立ちた白鳥よ

■日曜美術館 美は喜び 河井寛次郎 住める哲学
暮らしが仕事仕事が暮し 河井寛次郎
暮らしから生まれる美を追求し続けた河井寛次郎
今もなお家族によって守られる住める哲学を見つめます

昭和32年のニュースより
生涯一陶工を信条とした寛次郎
「これは持っておられたのを
 友人がわしに黙って出品された
 私は国際場裏にね モノを競うってなことに
 興味を持たないんですよ
 賞与ってなもんが仮に貰えるとしたら
 それはモノが貰うんでね
 私個人がとやかく言って貰って
 どうとかこうとか言うもんじゃないと思うんですよ」

日本各地の伝統的な暮らしにも向けられました 民藝運動

もう少し手のはぶいた箕でもよいから私のためにひとつ
作ってもらえないかと頼みましたよ
そしたらねその人はきょとんとしているのですよ
わしゃそんな手をはぶいたものなんか
作るすべ知らんといったです
これにはまいりましたね
作る術知らんといったですよ
ああ考えやなんかでものを作るなんて浅いことだと
それからですよ お前たちは少なくとも
確かなものを作りたいのなら確かな暮らしをせよと
こういうことなんですよ

すべてのものは自分の表現

美の正体 
ありとあらゆる 
物と事との中から
見付けだした喜び

助からないと思っても
助かって吾る

一人の仕事でありながら
一人の仕事でない仕事

自分は過去を無限の過去を生きて来た
自分は未来を無限の未来を見るものだ
自分は祖父だ 自分は孫だ

これから始まる未知の世界
何が起こるかまさに生き甲斐あるなり

私は木のなかにゐる石の中にゐる
鉄や真鍮の中にもゐる
人の中にもゐる 
一度も見たことのない私が沢山ゐる
始終こんな私は出してくれとせがむ
私はそれを掘り出し度い
出してやり度い
私は今自分で作らうが人が作らうが
そんなことはどうでもよい
新しかろうが古かろうが西で出来たものでも
東で出来たものでも
そんなことはどうでもよい
好きなものの中には必ず私がゐる
私は習慣から身をねじる
木だ見ぬ私が見度いから
「千考足思」より

76歳で亡くなるまでの39年間この家で暮らした寛次郎
多くの作品がここで生まれ 飾られ 
そこに人々が集いました

家は住める哲学
仕事は大事ですが暮しはもっと大事と言っていた
美しい仕事正しい仕事と言うのは
美しい暮らし正しい暮らしから生まれる

寛次郎を支え続けたのはつねでした
食籠(じきろう)を出していた 茶碗蒸し
発想がユニークだったのでお客様は喜んでいた
寛次郎の幸せは家内(つね)を得た事
内助の功が素晴らしかった
作品の背後には暮らしがある
見えないようでそれが含まれている

2024年2月9日金曜日

焼肉で一句&柄本明の色紙

小椋鳥一丸となり旋回す
電線で羽を休めん小椋鳥
(阿波研造)寒月や弓の極意は呼吸なり
悴(かじか)むや師弟関係守破離なり
(オイゲン・ヘリゲル)弓と禅、身体と思考冬の空

■最後の講義 俳優 柄本明
色紙 下らないのが一番! 柄本明

■プレバト纏め 2024年2月8日
焼肉で一句

特別永世名人の〆の一句
梅沢富美男
春愁の一人焼肉持て余す
添削(説明臭い 一句の中に結果と原因 因果関係が生まれている
   季語と中七・下五を切り離せば良い句だった)
春愁一人焼肉持て余す

永世名人村上の傑作50選
村上健志
スッカラの窪(くぼ)みは浅し春の宵
(春の宵「春の季語」春の夕ぐれ後間もない頃のこと
 春宵一刻値千金 春の夜は趣が深くそのひと時は
 千金にもかえがたい価値がある
 スッカラに掬ったスープに春の宵の陰影が映るかのような
 豊かな時間を物によって季語を表現している 
 これこそが俳句の目的でもある)

1位 渡辺満里奈
タン塩を頬張る視線春愁の吾子
添削(春愁「春の季語」そこはかとない春の憂いやもの思いのこと
   音数が溢れすぎている 優先順位をつける 季語が1位)
タン塩を頬張る春愁の吾子

2位 笠原秀幸
ハラミ食む君の笑顔や春の恋
添削(「君」詩歌の世界では恋愛の対象 無駄な詠嘆)
ハラミ食む君と春待つ恋ひとつ

3位 市川紗椰
目を背(そむ)く燃えるパプリカ彼我の春
添削(材料が多過ぎ 言葉の優先順位を決める 季語が優先順位の1
   最後の「春」が彼と私の関係に色を添える)
と吾と網にパプリカ焦がす

4位 水田信二
先輩をいや肉待ち詫びる二月の夜
添削(余寒「春の季語」立春を過ぎてもまだ残る寒さのこと)
焼肉屋の前に先輩待つ余寒

5位 棚橋弘至
焼肉で筋肉付けて春肥大
添削(全体が散文 詩的な情景に乏しい)
筋肉の映えるなりを食う

次回のお題「刑事ドラマ」

2024年2月8日木曜日

夭折の天才詩人立原道造「ヒアシンスハウス」

蠟梅の香に誘われて阿波史跡(公園)
蠟梅の香りほのかな阿波史跡(公園)
SORA-Qの月面探査息白し
彫漆の断層にある冬の波
冬の彫漆空気に触れて鮮明に

■新美の巨人たち
【夭折の天才詩人立原道造「ヒアシンスハウス」×内田有紀】
わずか五坪ほどの土地にみた家の夢
いくつものスケッチを残しました
溢れるような湧き上がるような思いをのせて
その人の名は立原道造
彗星の如く現れた天才詩人であり
東京帝国大学卒の若き建築家
恋をしていました 結核を患っていました
24歳で風が持ち去るように亡くなりました
五坪の家を果たせぬまま

僕は、窓がひとつ欲しい
あまり大きくてはいけない
そして外に鎧戸、内にレースのカーテンを
持ってゐなくてはいけない
ガラスは美し磨きで外の景色が
すこしでも歪んではいけない
随想「鉛筆・ネクタイ・窓」

埼玉浦和 別所沼公園

しずかな歌よゆるやかに
おまえはどこから来て
どこへ私を過ぎて消えていく?
それをどうしておまえのうつに
私はかへさう夜ふかく
明るい闇の満ちる時に?

立原道造詩集
1967年初版以来 永遠のロングセラー
短い人生の履歴書です

1914年 東京日本橋の生まれ
中学では芥川龍之介以来の秀才の誉れ高く
1934年 東京帝国大学 工学部 建築学科 入学
同じ学部の一級下には丹下健三
大学時代「辰野賞」3年連続受賞
卒業後 石本建築事務所 入社
恋に落ちました 事務を担当していた 水戸部アサイさん
詩集も出版しました 詩集「萱草に寄す」「暁と夕の詩」
洋々たる未来のはずが結核に…。
心も体も蝕まれていく中で夢見たものは五坪の家でした
ヒアシンスハウスを建てたいと…。

夢みたものはひとつの幸福
ねがつたものはひとつの愛
山なみのあちらにもしづかな村がある
明るい日曜日の青い空がある
日傘をさした田舎の娘らが
着かざって唄をうたつてゐる
大きなまるい輪をかいて
田舎の娘らが踊ををどつてゐる
告げてうたってゐるのは
青い翼の一羽の小鳥
低い枝でうたつてゐる
夢みたものはひとつの愛
ねがつたものはひとつの幸福
それはすべてここにあると
「優しき歌」より〈夢みたものは…〉
1939年第1回 中原中也賞 受賞

其の翌月 立原道造 永眠 享年24

別所沼のほとりで5坪の夢の継承

浦和には多くの知人がいました
詩人 神保光太郎 画家 須田剋太
小説家の卵と友好を深めていく中で
ある構想がもたげてきた
浦和に芸術家たちのコロニーを作りたい

僕は室内にゐて、栗の木でつくつた
凭れの高い椅子に坐つてうつらうつらと眠つてゐる
夕ぐれがくるまで、夜がくるまで、
一日、何もしないで僕は、窓が欲しい たつたひとつ
随想「鉛筆・ネクタイ・窓」

白い三角の旗があがった時は自由に見学ができます。
Infoemation 見学開室日 水・土・日・祝日 10時-15時
ボランティアガイドがいます。

そこには詩人の心が暮らしていますから…。
片流れの屋根が優しい
おおらかな窓がそこに
夢みたものはたった五坪のユートピア

2024年2月7日水曜日

偉人・敗北からの教訓第29回・30回&大黒屋光太夫&春の急ぎ&名言

寒雀今の子ロコモまっしぐら
幾何学模様のごと枯蓮の影
組む櫓(やぐら)炎は宙へどんと焼 
左義長(さぎちょう)へ願いを込めん一宇町
横瀬町氷の世界創り上ぐ

■偉人・敗北からの教訓 
第29回「織田信長と浅井長政・義兄弟の悲しき戦い」

人間五十年 下天の内をくらぶれば
夢幻のごとくなり ひとたび生を得て
滅せぬ者のあるべきか

「敦盛」の舞 自分しか愛せない
信長の孤独な心が隠れていたのかもしれません

信長からの教訓
Communication不足
密な連絡を取らずに相手に疑心暗鬼を抱かせる
周囲に配慮すべきだった

長政からの教訓
信長包囲網のチカラを過信した
連合は結束が弱い

長政と市の末娘「江」は2代将軍・徳川秀忠に輿入れした
将軍家の血は深く深く食い込んでいくことになった
織田・浅井・徳川の三家の血が天下を担っていく

人生の教訓
一、 相手に配慮し協力を得る努力を怠るべからず
一、 協力関係を過信して油断するなかれ

■偉人・敗北からの教訓 
第30回「小早川秀秋・想定外の『裏切り』の功名」
秀秋の敗北から学ぶ教訓
一、 年長者の忠告はよく聞くべし
一、 健康維持も重要な仕事と心掛けるべし

■先人たちの底力 知恵泉 
大黒屋光太夫 皇帝を動かした 諦めない心

うどんげの花
仏教の言葉で三千年に一度咲く花

両の耳皮まくれ ふくれ上がり
たわしる多く出て痛むことたえがたく候
「寛政五年神昌丸二漂民両日付吟味録」

手足凍る時は馬を下りて歩行し
身躰あたたまりたる時又馬に乗たる
「北槎聞略」

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「春の急ぎ」

あまり普段は使わない言い回しかもしれません
歳時記を見ると「春近し」をメインの季語として
その傍題に「春の急ぎ」が収録されている場合もあります
「春近し」という季語 いろんな言い方がありまして
「春隣」とか「春遠し」とか
どんな言葉が付属してくるかによって表情が変わってくる
「春の急ぎ」といった場合 もう冬がパタパタっと終わって
急に春めいてくる そんなニュアンスが出てきますね
「春近し」の色んな傍題 全部作り分けてみたくなりますね

■名言
ピーター・ドラッカー 曰く
「変化はコントロールできない。
 できるのは、その先頭にたつことだけである。」

ラルフ・ワルド・エマーソン 曰く
「人間の幸福は、神や仏が握っているのではない。
 自分自身の中にそれを左右するカギがある。」

荀子 曰く
「人の本性は不定なり。
 一つところを渦まく水のごとし。
 東の方へ切り開けば水は東方に流れ、
 西方に切り開けば西方に流る。」

2024年2月6日火曜日

題「顔」

冬の月じたばたするな落ち着いて
それぞれの居場所を持ちて日向ぼこ
初釜や心汲み取る二畳かな
寒の水吾の存在が認められ
舞い上がる燃やせないゴミ冬空へ

■NHK短歌 題「顔」
年間テーマ「私に出会おう」
選者 川野里子 レギュラー 内藤秀一郎 深尾あむ 司会 ヒコロヒー

▪三十一音の物語
繰り返しの魔力
母の母その母の母あつまりてさやさやと愛(め)づ老衰の母
川野里子
繰り返して「映像を作る」

ブランコを全力で漕ぐたのしさは漕げばこぐたびはなひらきゆく
内山晶太「窓、その他」
繰り返しで「リズムを生み出す」

わが一生(ひとよ)想ふに何ぞひらめける竹の一生、馬の一生
伊東一彦「青の風土記」
繰り返しで「思いを深める」

▪入選六首 題「顔」
午前二時睡(ねむ)るあなたの横顔が森の決壊のごとき色褪せ
加藤水玉(みずたま)
 歴代の藩主の墓所で飛び跳ねる我が物顔のトノサマバッタ
飯田英範
一席 職場、家、習い事でも素を出せず全部笑顔の阿修羅像です
高原すいか
そんな顔しないでなどと君は言う私の薔薇を崩しておいて
高橋久美枝
仕事行く事は辛いか悲しいか鏡の中の自分の睫毛
岩崎純史(じゅんし)
うぶ声は暴言に似て顔(かんばせ)を紫に染め吾子登場す
秋山哲(さとし)

▪秀一郎あむのココカラ短歌
言葉を繰り返した作品で遊んでみてください

君の顔理解してよと言っている僕は逃げたい君の顔から
添削 内藤秀一郎(必要な字余りはOK)
君の顔理解してよと言っている僕は逃げたい君の顔から

ミルフィーユ綺麗に食べてねミルフィーユ叶わぬ願いかただ凛と立つ
添削 深尾あむ(繰り返しが生きている)
ミルフィーユ綺麗に食べてねミルフィーユ叶わぬ願い凛と立ってる

▪ことばのバトン
アレの日玉子を割れば黄身ふたつ   かまちよしろう(漫画家)

ひとしずくの夢足音(あおと)ははずむ
みなかみまるごと短歌プロジェクト 実行委員 篠原香代

群馬県みなかわ町ではQRコードをスマートフォンなどで読み取ると
その場所で詠まれた短歌が表示される
2023年7月開催 みなかみまるごと短歌
16カ所風景と短歌を楽しめる

私たちの夢はみなかみ町を短歌(の町)にしたい
その思いが雫のように垂れてこの町の中で広がっていく

見る人の心の縁(ふち)を光らせてたくみの里に水車は回る
まなざしを火の見櫓(やぐら)に預けたり歩きたしこの道のつづきを
杉の影伸びたるここに踏み入れば遠き約束のようにすずしい
大森静佳(歌人)
来年からNHK短歌の選者!

2024年2月5日月曜日

兼題「入学試験」

古希迎へ同床異夢の冬日向
月氷る吾の美意識を押し通す
寒きびし茶人の意地を最期とす
風花や質素な美へと誘われ
保つべき相手との距離冬の月

■NHK俳句 兼題「入学試験」
選者 夏井いつき レギュラー 家藤正人 中西アルノ 司会 柴田英嗣
年間テーマ「凡人からの脱出」

入学試験(春の季語)
季語「大試験」の傍題(関連季語)のひとつ
ほかに「受験生」「受験子(し)」などもある

凡人からの脱出 兼題「入学試験」
ボンの段
お守りをにぎりしめつつ受験生   沢田美紀
大丈夫お守り胸にいざ入試   中村みまこ
受験生忘れずに持つ御守りを   高橋幸
御守りを鞄に付けて受験生   毘舎利愛子
筆箱に御守りもいれ入試の日   是空
筆箱に御守りふたつ入学試験   塚田見太
受験子のお守り三つ入れて発つ   大澤桃空
入学試験お守り三つぽっけ中   福井七夫
持てるだけ守り身につけ受験生   柴土一廣

半ボンの段 
(主役である季語をちょっとだけ押し出す
 ささやかな工夫があると脱ボンできる)
お守りを首に鞄に入試の子   中島紀生
鞄には御守り七つ入学試験   瀬川令子
入学試験忘れて行った守り札   山本真一

脱ボンの段
受験子の御守り三つ梅模様   山本政尋(ひろ)
(季重なり 主役が受験子 「梅」は季語の鮮度はぐっと下がる)

▪季重なり
季語は俳句の主役
17音の小さな舞台に主役が二つ入ると
感動の焦点がぶれるので嫌われている
しかしタブーではない 主役2つのどっちも
生き生きと機能させるのは高度な技
俳句作りの技術がない時には高い確率で失敗する
季重なりの句を作る時は主役と脇役を
はっきりさせる技術を理解する必要がある

A降るや入学試験の遠き日よ   押領司雅俊
B雪道に砂広く撒く受験の日   礼斗健鈴
C春雪のたつぷりと降る受験かな   込宮正一
D入試の夜雪舞う宿で雑魚寝せり   昭
 (雪の宿に雑魚寝す入試前夜かな 
  とすることで主役と脇役が解るようになる)

▪夏井家伝授!家藤正人と中西アルノ
0から俳句
俳都・松山を吟行しよう!

松山城POINT
狭間(さま)…小さい穴は銃、大きい穴は弓を射っていた

戦国のままの狭間を通る春一番   青山ネモフィラ
春暖にふわりクレープの焼きあがる   青山ネモフィラ

道後温泉POINT
夏目漱石の小説「坊っちゃん」で道後温泉のことを褒めている

寒明けや旅路の素足をいやす道後   青山ネモフィラ
「裸足」「素足」は夏の季語
上五の「や」を詠嘆してあり主役を立てる工夫がされている

▪特選六句発表 兼題「入学試験」
受験子をスーツケースと待つ図書室   千歳みち乃
 二日目は居(お)らず隣の受験生   ハードエッジ
 入学試験果(は)つや起立も礼もなく   葉村直(なお)
入学試験消しゴム着火しさう   彼方(かなた)ひらく
入学試験済んだ晴天だつたのか   白神公
野球部は雪かき入学試験の日   GONZA

▪柴田の歩み
あえない(あえてはやめよう)
季重なりはあえてしない

2024年2月4日日曜日

ロッチと子羊(67)「医療看護学校編(1)」

冬の空子の見る親の余裕かな
訝(いぶか)しき常識を問う寒昴
深部体温急降下冬に逝く
スローライフ イズ ロングライフ 小春
智恵と徳、富と権力 冬の月

■ロッチと子羊(67)「医療看護学校編(1)」
▪中村心美 看護学科1年
お悩み 時間にルーズで将来看護師として
テキパキ動けるか不安

看護師を目指した理由
医者は病気をみるけど看護師は人をみる
人を支えて助けたいという気持ちがあったから

ルーズを治そうとしても不可能です
時間そのものを捉え直すことで
自然とうまくいくでしょう
アウグスティヌス哲学からの応用

時間は絶対的なものではなく
主観的なもの

3つの時間
過去=記憶 
現在=直観

未来=期待 食べるのが先の話だから待っている時間は長く感じる
人は主観的な時間で生きている
うまく動ける看護師さんは時間が主観的であることを知っている
それぞれの音の違いを聞き分けることこそが
看護師さんがやっていることではないでしょうか
患者さんの意識を組んであげないといけない
希望を持てる言葉を一緒に頑張ろうと言ってあげる
患者さんの3つの時間を意識するだけでも
さらに親身な看護ができる気がしてきませんか❓
様々な時間に耳を傾けることで
臨機応変に動けているのではないでしょうか
自分の時間軸から他者の時間軸にシフトチェンジすることで
時間が合わせられるようになるのではないでしょうか
人を見るということはその人の時間を見ること
相手の時間に寄り添える人

▪清水映見 クスリ総合学科2年
お悩み 命に関わる仕事につくため
プレッシャーで押しつぶされそう

プレッシャーは乗り越えるものではない

プレッシャーはあなたの敵ではありません
理想と情熱が唯一の力となります
ウナムーノ哲学からの応用

ドン・キホーテ プレッシャーを乗り越えて生きる方法
憂い顔の騎士 無謀と憂いが大事
無謀の中には騎士道と言う理想 勇敢さへの強い憧れと言う情熱
憂いの中には騎士になれない不安というプレッシャー

ウナムーノ自身にも経験がありました
最愛の友人と息子の死がありました
絶望の中彼を救ったのは執筆活動でした

いままでこれほど仕事にのめりこんだことはありませんでしたし、
これほどまでの情熱、これほどまでの熱誠、
これほどまでの胸のうちをぶちまけたこともないと思います
出典:「情熱の哲学 ウナムーノと「生」の闘い」著:佐々木孝

認めてらえるだろうか
プレッシャーをバネにして集中
後にウナムーノはスペインで
もっとも偉大なの哲学者と評されるようになりました。
彼を救った理想、情熱、プレッシャーは全て一体となった
人生の力だったのです
無謀と憂いの2つの顔が大事と言った

理想は人を笑顔にする胚培養士
情熱は不妊で悩む方を助けたい
完全な準備が事前にできない
全く同じことの作業の練習はできない

理想と情熱がなければプレッシャーは感じない
プレッシャーも大事なんだなと思いました
プレッシャーがあることによって理想も情熱も高く持って
頑張っていけるんだということがわかった
プレッシャーを持っていこうというふうに思いました

2024年2月3日土曜日

❝記憶❞未来を切り拓く源泉&名言

寒きびし目的なしの今を寛(くつろ)ぐ
寒波来る能動的を楽しまん 
榾(ほた)割らん修行の果てに会う無心
炉炭点前(ろのすみてまえ)広がる知的好奇心
近視感的思考する人霜柱

■ヒューマニエンス「❝記憶❞未来を切り拓く源泉」
安田涼平氏
記憶はたんぱく質でつくられる
たんぱく質がその記憶のよしあしを
ある程度決めているのは間違いない

澤田誠氏
注目しているのは脳の免疫細胞ミクログリア細胞
これはシナプスを食べてしまう
ミクログリアは細胞や異物を食べて排除する
機能しないシナプスを食べて
情報を通らないようにする働きがある
(シナプスが)記憶にいい状態なのか
変なノイズを伝えていないかを見分けて
配線がいつもいい状態をつくっていくのが
グリア細胞の役割

井ノ口馨氏
記憶を思い出したときに記憶は1回弱くなる
記憶は思い出すたびに強化される
強化される前に一時的に弱くなる

忘れることで身につける
積極的に忘れてそして新しいものを入れる
忘却はネガティブなことではなく
ポジティブなプロセスだと捉えることもできる

運動学習の特徴
失敗が大切エラーが出たシナプスは全部食べられてしまう
エラーのないシナプスだけが生き残る

清塚信也説
過去に聞いたことない音楽をつくることはできない
バッハの時代の和音 ショパンの時代の和音
100年ほど経て和音が複雑になる
ドミソにこの和音をのせるのはあり得なかったみたいな音が
100年するとその和音が当たり前になってきて
突拍子もない和音は音楽だと受け取れない
それはそこに音楽と言う記憶がないから
(上記に関しては坂本龍一氏も同じことを言っておられました。)

「緊張とは記憶だ」
技術はあるのに本番になると飛ぶ
それが怖くて緊張がある
緊張は記憶が本番通りに出るかどうかという人がいる

■名言
井深大 曰く
「本当の経営者は、
 来年、再来年に何をやるかというときに、
 だんだん広げていくのじゃなしに、
 だんだん狭めていく。
 そこに集中するために、いらんことはやめていく。
 そうでなければ集中できない。」

石坂泰三 曰く
「人生はマラソンなんだから、
 百メートルで一等をもらったってしょうがない。」

有島武郎 曰く
「僕は一生が大事だと思いますよ。
 来世があろうが、過去世があろうが、
 この一生が大事だと思いますよ。」

2024年2月2日金曜日

鍋つゆ売り場で一句&春日局の辞世の句

冬銀河都市を命の動脈が
息白し今朝は何を重ねましょう 
夫(つま)残し息子と阿波へ冬の空
冬の空顔よりでかきまんばの葉
飯進むまんばのけんちゃん冬ぬくし

■プレバト纏め 2024年2月1日 
鍋つゆ売り場で一句
  
▪特別永世名人富美男の締めのお手本
梅沢富美男
ちゃぶ台に干支の過ぎたる祝箸
添削(季語は祝箸 おせち料理などを食べるときに使う箸
   先が両方削られているのは片方を自分が
   もう片方を神様が使って共に食事をするが意)
かしましや干支の過ぎたる祝箸

▪特待生昇格試験
森迫永依
商談の中華テーブル窓凍てる
添削(季語は真正面から使って欲しい 
   時候の季語を心情として託す使い方はするが
   「窓」と言う映像がはっきりあるのでしっかり表現する 
   中で韻も踏める)
窓凍つや商談の中華

1位 高橋真麻
片言の子の猫舌と鱈の鍋
(シンプルな書き方だけど必要なことは全て言えている
 動きがあった方が良い とを入れることでこの後の動きが想像できる
 鍋に焦点を当てる)
片言の子の猫舌と鱈鍋

2位 勝俣州和
無事願いかかあと待ってる三平汁
添削(三平汁 冬の季語 塩鮭の頭やあらを野菜と煮込んだ北海道の郷土料理)
無事帰港かかあ三平汁

3位 宮田俊哉
牛鍋の〆のおうどん捜索隊
添削(牛鍋の季語が捜索隊によって弱められた
   最後の擬人化の表現が肝心の季語「牛鍋」よりも悪目立ちしている
   感触まで読み手は頭の中で再生してくれる)
牛鍋の〆のうどんをさぐる箸

4位 ナダル
鍋囲う笑顔思いて出汁選び
添削
鍋の出汁選ぶ売り場や冬の夕

5位 加藤ローサ
よーいどんおしくらまんじゅう鍋の夜
添削(鍋にまつわる冬の季語 寄せ鍋・牛鍋・おでん・牡丹鍋・石狩鍋など
   おしくらまんじゅうは冬として使われているので季語としても鮮度は低くなる)
おしくらまんじゅうみたいに寄せを囲む

次回のお題は「焼き肉」

■お墓から見たニッポン7 
「春日局」険悪な関係のお江の墓を建てたのは実は…

西に入る月を誘い法をえて今日ぞ火宅を逃れけるかな
春日局の辞世の句
(西に沈む美しい月を心にとどめ仏の教えに従い
悩みの多いこの世から逃れられる)

2024年2月1日木曜日

100分de名著 選 独裁体制から民主主義へ(3)非暴力ゆえの勝利

深刻な亀裂と共に冬を生く
冬の空来世のための現世あり
冬茜内部なくして外部なし
山眠る破片のような言葉持ち
離散者の問いは続けど冬の浜

■100分de名著 選 独裁体制から民主主義へ(3)非暴力ゆえの勝利
政治学者 ジーン・シャープ
リトアニア独立回復運動
ソ連クーデター未遂事件

非暴力の市民を攻撃したゴルバチョフは
非暴力によって窮地を救われる
中見真理

すごい不思議!図に描かないと分かんない
伊集院光

まずは小さな行動から身近で具体的な問題を取り上げることも重要
運動・抵抗のシンボル
雨傘運動(香港2014) 
オレンジ革命(ウクライナ2004) 
ひまわり学生運動(台湾2014)

中国「白紙デモ」
「何かを書くと消される」ということを示す白紙を掲げた抗議デモ

政治的麻痺状態を作り出すことも重要。
独裁者の力を奪う「隠れた不服従」(静かな抵抗)
秘かに巧みにということ

非政府組織
芸術家団体 文筆家協会 労働者組織 商工会組織 
各種の愛好家団体など
並行政府
既存の政府と競合する二重政府

サユディス
リトアニアがソ連から独立する際中心的な役割を果たした組織
1988年サユディス(運動)結成
1988年夏 エストニアを中心に「歌う革命」が起きる
1989年8月23日バルティック・チェーン(三国の首都を結ぶ「人間の鎖」)
参加者200万人/全長600km)
1990年2月 リトアニアの総選挙でサユディス圧勝
ジーン・シャープの理論を齎したのはグラツィナ・ミニオタイテ(哲学者)
「市民力による防衛」の原稿を読み確信へ
グラツィナ・ミニオタイテは急いでリトアニア語に翻訳して
サユディスのメンバーに配布した

親ソ派に働きかけ文壇を煽るソ連
1968年チェコスロバキアへのソ連の軍事介入
2021年ロシアのウクライナ侵攻
並行政府の国防大臣は国内の団結のために働きかけた
ソ連からの攻撃には非暴力で抵抗すること
新政府が発した法律のみに従うようにメッセージを出した
通信システムでプロパガンダを防ぐ
新政府は議会庁舎の中にラジオ局を開設
ソ連が武力行使に及ぶ事態を想定して
独自のテレビ放送も開始
技術者が零下25度という極寒の中で
働いたおかげで独自の放送体制を整えられた

1991年1月11日 ソ連軍がリトアニアに侵攻
血の日曜日 13人死亡/500~700人負傷
世界に向けたラジオ放送
私たちは持ちこたえています 聞こえているでしょうか
愛、信念、正義によってリトアニアは生まれ変わるでしょう

ソ連の人気者ゴルバチョフとの闘い
(放送がなければ)欧米がリトアニアを
支持することは難しかったかもしれない

武力行使の口実を与えるな!
リトアニア市民が非暴力を徹底すれば
ソ連は武力行使に踏み切ることが難しくなる
もっともらしい攻撃理由を与えないことが大事

ソ連クーデター未遂事件(1991)

モスクワの若者が「非暴力行動198の方法」を
数百枚コピーして広めただけではなく
非暴力闘争の小冊子を2000部近く配布

対ゴルバチョフにも非暴力・不服従
ゴルバチョフを助ける方も非暴力・不服従

クーデターの首謀者が側近だったことから
ゴルバチョフとソ連共産党の権威は失墜
クーデターから半月後の1991年9月に
ソ連はバルト3国の独立を承認

勝利を信じぬ者に勝利なし
半信半疑で始めた運動は実を結ばない

ある政権の崩壊が、
すぐさまユートピアにつながるわけではない
その代わりに、公正な社会的、経済的、
政治的な関係性を築き、他のかたちをとった
不正行為や抑圧を撲滅するための
重い仕事と長い努力がこれから始まるのだ。

闘争で得た民主主義体制を維持し
より公正なるものにするためには
さらなる努力が求められる

永久革命