2023年12月21日木曜日

中江兆民「三粋人経綸問答」(2)

死に勝る勝利あり柊の花
霜柱思想化される記憶かな
記憶とは死への挑戦鎌鼬(かまいたち)
為替相場や新陳代謝神楽(かぐら)
冬の海過去の奴隷となりにけり

■100分de名著 中江兆民「三粋人経綸問答」(2) 洋学紳士と豪傑君
平田オリザ先生(劇作家・演出家)

洋学紳士(理想主義者)
「頭をあげてアジアの片隅に
すっくと立ちあがり
一躍、自由、友愛の境地に
飛び込むのです」

豪傑君(侵略主義者)
「争うことのできない者は
意気地なしです。
戦うことのできない国は弱い国です。」

友愛か侵略か
じっと南海先生(現実主義者)は聞いています。
不平等条約改正は見通しがつかない状態

洋学紳士
「十九世紀のこんにち
武力で威嚇することを国の栄誉とし
侵略を国の方針とし、他国の領土を奪い
他国の民を殺して
どうしても地球の所有者になろうと
考える国は、まさに狂気の国です。
もう一言申し上げると
地球上の大国は
多くはみなバカであります。
地球上の強国の多くはみな臆病で
たがいに恐れると同時に強がって
兵隊を集め、軍艦をつらねて
かえって身を危険にさらしている。
弱小の諸国は
なぜ自発的に兵隊を撤廃し
軍艦を手放して
安全をはからないのでしょうか」

豪傑
「紳士君の言うことは
いかにも学者らしい。
学者の言うことは本には著(あら)わせるが
とても実行はできません。
それならば、もし凶暴なくにがあって、
乗じて、軍隊を送って来襲してきたら
どうしますか」

洋学紳士
「ぼくはそのような凶暴な国は
けっしてないことを知っています。
願わくば、一ふりの剣も一発の弾丸も
たずさえず、われわれはしずかに
こう言いましょう。
あなた方がやって来て
われわれの国を乱すことは望まない。
一刻も早く立ち去って
国に帰りなさい、と」

豪傑
「まさか
これほどとは思いませんでした、
哲学が人の心をおおいつくして
ものを見えなくしてしまうことが。
紳士君が数時間にわたって
熱弁をふるい、世界の情勢を論じ
政治の歴史を語ったあげく
最後の一手とは結局
全国民が手をこまねいて
敵の弾丸に倒れて
有終の美を飾るというのですからね」

洋学紳士は最先端の平和主義を唱えていた

南海先生
「さすがに、紳士君のご高説
じっくりうかがいました。
今度は豪傑君
あなたの立派な説をうかがって
参考にさせていただきましょう」

豪傑君
「だいたい戦争というのものは
学者の説によれば
どれほど忌まわしいものだとしても
実際上どうしても
避けることのできない勢いなのです。
また勝つことを好み
負けることを嫌うのが動物の本性です。
争うは人の怒りです。
戦いは国の怒りです。
争うことのできない者は
意気地なしです。
争うことのできない国は弱い国です。」

「国権主義」「軍備増強」「対外強硬策を掲げ侵略もいとわない」
が豪傑君の主張

豪傑君
「アジアなのかアフリカなのか
忘れてしまったが、一大国がある。
名も忘れたが、その国は極めて広く
資源も豊かだが、脆(ぜい)弱だ。
聞くところによると、兵力は百余万だが
規律もなく統制も聞かず
いざというときまるで役に立たないという。
この国には制度などないも同然といわれる。
まるでよく肥えたいけにえの牛なのだ。
これは多くの小国のために
その腹を満たすにちょうどよい餌食として
与えられた天の配剤なのです。
なぜすぐに行って、その半分を
また三分の一でも
取ろうとしないのか。
その国の半分、または三分の一を
取ってわが国とすれば
われわれは大国となるだろう。」
(欄外にいわく。豪傑君は生まれてくるのが少し遅かった)

豪傑君というキャラクター
中江兆民が少し入っている

豪傑君
「紳士君、紳士君。
君は著述を楽しみとしたまえ。
ぼくは戦争を楽しみとしよう」

南海先生
「諸君は若い盛りで
気力もみなぎっている。
それぞれに自分の楽しみたいことを
楽しむのだね」

洋学紳士君
「豪傑君、きみとはまさに国家の政策を
論じているのであって
一個人の楽しみを論じているのでは
ありませんよ。きみもまた少し
本論をはずれたようですね」

豪傑君
「失礼しました。
すぐ本論に入りましょう」

古いもの好きと新しがりやという二種類の人間に分かれる

洋学紳士君
「二つの元素のどちらかを
取り除くとなれば
古いもの好きを除くべきか
新しがりやを除くべきでしょうか」

豪傑君
「古いもの好きでしょうね。
新しがりやを人体の肉にたとえるなら
古いもの好きは
癌ということになります」

豪傑君
「彼らを集めて、せんそうにかりだすのです。
彼ら古いもの好きは
政府につらなる者も民間に暮らす者も
誰もが平和に嫌気がさし
何ごとも起こらない時代に
自分をもてあまし、手足がうずうず
しているという状態なのです。
国家がもし宣戦布告をして
戦争に突入するとなれば
二、三十万の人々がたちどころに
集結すること受けあいです。
ぼくのような者も、また社会の癌です。
自分を切除して、末ながく祖国の害を
及ぼさないことを願うだけです」

軍人の楽しみは戦争
論破しない
シンパシー(同情)⇨エンパシー(共感する力)
同意はしないが理解する
一回立ち止まって見る
相手の立場も考えてみる

南海先生の登場が楽しみになってきました。

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