のどかなり笑顔の二度見にゃんこばん
春の陽や野掛(のがけ)一服ごゆるりと
捨てられた閉所恐怖症の子猫
月朧返信のなきラブレター
花曇隣の人は寝て食べて
■「星野立子賞の十年」より
病む人の枕を正す遅日かな 津川絵里子「はじまりの樹」
生ぜしも死するもひとり柚子湯かな 瀬戸内寂聴「ひとり」
「ひとり」より
柚子湯して逝きたるひとのみなやさし
生ぜしも死するもひとり柚子湯かな
仮の世の修羅書きすすむ霜夜かな
ひとり居の尼のうなじや虫しぐれ
春逝きてさてもひとりとなりにけり
独りとはかくもすがしき雪こんこん
御山(おんやま)のひとりに深き花の闇
子を捨てしわれに母の日喪のごとく
もろ乳にほたる放たれし夜も杳く
おもひ出せぬ夢もどかしく蕗の薹
生かされて今あふ幸(さち)や石蕗の花
ほたる抱くほたるぶくろのその薄さ
落飾ののち茫茫と雛飾る
はるさめかなみだかあてなにじみをり
釈迦の腑の極彩色に時雨けり
天地にいのちはひとつ灌仏会
仮の世の修羅書きすすむ霜夜かな
おもひ出せぬ夢もどかしく蕗の薹
落飾ののち茫茫と雛飾る
人に逢ひ人と別れて九十五歳
花おぼろ第二の性を遺し逝く
初恋も海ほほづきの音も幽か
ぼうたんのうたげはをんなばかりなり
むかしむかしみそかごとありさくらもち
たどりきて終の栖や嵯峨の春
小さき破戒ゆるされてゐる柚子湯かな
寂庵の男雛は黒き袍を召し
氷柱燦爛(さんらん)訪ふ人もなき草の庵
二河白道(にがびやくどう)駈け抜け往けば彼岸なり
秋時雨烏帽子に似たる墓幽か
ひと言に傷つけられしからすうり
雪清浄奥嵯峨の山眠りけり
小春なり廓は黄泉の町にして
雛の間に集ひし人のみな逝ける
独りとはかくもすがしき雪こんこん
骨片を盗みし夢やもがり笛
句集題名の「ひとり」は
一遍上人の好きな言葉からつけたそうです。
生ぜしもひとりなり
死するもひとりなり
されば人とともに住すれども
ひとりなり
添いはつべき人
なきゆえなり
エッセイには交遊のあった作家のその人となりを描き、
その作家の句も添えられています。
露の身とすずしき言葉身にはしむ 高岡智照尼
門下にも門下のありし日永かな 久保田万太郎
初暦知らぬ月日は美しく 吉屋信子
舞初や心にしかと念じつつ 武原はん
羅(うすもの)や人悲します恋をして 鈴木まさ女
参照
大井恒行の日日彼是
http://ooikomon.blogspot.com/2018/02/blog-post_28.html
すえよしの俳句ブログ
https://ameblo.jp/kawaokaameba/entry-12478849537.html
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