別れても別れてもなお春時雨
陽を隠し視界なくされ春霞
春風を全身で受く街闊歩
ピンヒール膝折り曲げて春の街
円高や配当金が朧月
■心おどる あの人の本棚④クリス智子(ラジオパーソナリティー)
空の下 長田弘
黙る。そして、静けさを集める。
こころの籠を、静けさで一杯にする。
そうやって、時間をきれいにする。
独りでいることができなくてはできない。
静けさのなかには、ひとの
語ることのできない意味がある。
言葉をもたないものらが語る言葉がある。
独りでいることができなくてはいけない。
草の実が語る。樫の木の幹が語る。
曲がってゆく小道が語る。
真昼の影が語る。ジョウビタキが語る。
独りでいることができなくてはいけない。
時間の速度をゆっくりにするのだ。
考えるとは、ゆっくりした時間を
いま、ここにつくりだすということ。
独りでいることができなくてはできない。
空の青さが語る。賢いクモが語る。
記憶が語る。懐かしい死者たちが語る。
何物もけっして無くなってしまわない。
独りでいることができなくてはいけない。
この世はうつくしいと言えないかもしれない。
幼いときは、しかしわからなかった。
この世には、独りでいることができて、
初めてできることがある。ひとは
祈ることができるのだ。
クリス智子女史のことば
私が何を言うかというよりも 私は比較的通過点で
透明というのは難しいけれど そういう存在であればいい
何をどう差し出すかっていう その差し出し方に気を遣うのですが
聞いている方が クリス智子が言っていたなぁという
答え合わせのために 見に行ったり 本を読んでいただきたいとは
一切思っていなくて 何か言っていたけど分かんなかったけど
面白そうだなぁのほうが良いなと…。
自分で咀嚼したり 自分らしいエネルギーに変えていくには
ある程度時間がかかると思う 自分の中に植えていく作業
在りし日の歌 中原中也
春宵感懐(しゅんしょうかんかい)
雨が、あがつて、風が吹く。
雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵(よひ)。
なまあつたかい、風が吹く。
なんだか、深い、溜息が、
なんだかはるかな、幻想が、
湧くけど、それは、掴(つか)めない。
誰にも、それは、語れない。
誰にも、それは、語れない
ことだけれども、それこそが、
いのちだらうぢやないですか、
けれども、それは、示(あ)かせない……
かくて、人間、ひとりびとり、
こころで感じて、顔見合せれば
につこり笑ふといふほどの
ことして、一生、過ぎるんですねえ
雨が、あがつて、風が吹く。
雲が、流れる、月かくす。
みなさん、今夜は、春の宵。
なまあつたかい、風が吹く。
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