2025年5月15日木曜日

100分de名著❝谷川俊太郎詩集❞①詩人の誕生

河川敷風と戯るカモミール
二千本躑躅一気に椎宮(しいのみや)
変わりゆく躑躅色へと山の色
神山の里山染める躑躅かな
石楠花に負けじと咲けリおおでまり

■100分de名著❝谷川俊太郎詩集❞①詩人の誕生
若松英輔 伊集院光 阿部みちこ

「鉄腕アトム」作詞:谷川俊太郎/作曲:高井達雄
https://www.uta-net.com/song/7373/

私たちが日ごろ話している言葉も 詩の言葉に用いることができる
あなたが出会った言葉を用いてみる 

二十億光年の孤独
人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする
火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或いは ネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ
万有引力とは
ひき合う孤独の力である
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う
宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である
二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした

詩を楽しむポイント
ポイント①急いで読まない 余白 言葉でないものが物語るところ
詩は言葉の芸術 味わう 響きを感じたり 沈黙を感じたり
「確実に読み取らなくてはならない」という詩のあり方は違う 伊集院
正解めいた解答はいらない
ポイント②全部わからなくてよい 
ひとりが心地よい人と心地よくない人で解釈は真逆になってよい 伊集院
遠い遠いところにいる孤独な得体の知れないあいつも俺と同じ感情 伊集院
「詩と自由に向き合ってほしい」ということが谷川さんの願い
孤独だけど同じことを考えている人がいる

谷川俊太郎
自我に目覚める時期に「自分がどういう場所にいるか」
座標を決めたいという気持ちが強かった 
自分は日本に住んでいて日本はアジアにあって
自分の座標の周囲を広げていくと宇宙に行き着いた
社会の中での自分よりも先に宇宙の中の自分を意識した

父 谷川徹三のもとに生まれる

僕の場合 自分がいてその先は宇宙 ほとんど回りが暗くて
向こうの方に少し光がある感じ 

父 谷川徹三の友人だった三好達治に俊太郎の詩を見せた
それが「二十億光年の孤独」処女出版となった

あの青い空の波の音が聞こえるあたりに何かとんでもない
おとし物を僕はしてきてしまったらしい
透明な過去の駅で遺失物係の前に立ったら
僕は余計に悲しくなってしまった

思春期の谷川
宇宙を見上げて「俺はこの宇宙の中で何なんだ」 伊集院
自分が何者なのかわからない 
詩を書いて表現することで本当に自分を深く探していた

かなしみ
あの青い空の波の音が聞えるあたりに
何かとんでもないおとし物を
僕はしてきてしまったらしい
透明な過去の駅で
遺失物係の前に立ったら
僕は余計に悲しくなってしまった

微(かす)かにしか持っていた記憶がない 伊集院
戻ってこないとわかるから悲しいのか(何を落した)言えないから悲しいのか
我々が悲しむのは愛するものを失ったとき
そのものへの愛を含んでいる 
私たちはいつも同じように感じなくてよい

悲しみは
悲しみは
むきかけのりんご
比喩ではなく
詩ではなく
ただそこに在る
むきかけのりんご
悲しみは
ただそこに在る
昨日の夕刊
ただそこに在る
ただそこに在る
熱い乳房
ただそこに在る
夕暮れ
悲しみは言葉を離れ
心を離れ
ただここに在る
今日のものたち

「どこを見ても悲しみはある」かなしみは我々の根本感情
愛(かな)しみ 美(かな)しみ 
(かなしみは)人間が持ちうる感情の中で最も美しいもの
この世にはどこを見ても愛(かな)しみが在る

(その悲しみは)過去のもの 伊集院

この詩は一行空いていない なので個人がどこで切ってもよい

愛 Paul Kleeに
いつまでも
そんなにいつまでも
むすばれているのだどこまでも
そんなにどこまでもむすばれているのだ
弱いもののために
愛し合いながらもたちきられているもの
ひとりで生きているもののために
いつまでも
そんなにいつまでも終わらない歌が要るのだ
天と地をあらそわせぬために
たちきられたものをもとのつながりに戻すため
ひとりの心をひとびとの心に
塹壕(ざんごう)を古い村々に
空を無知な鳥たちに
お伽話を小さな子らに
蜜を勤勉な蜂たちに
世界を名づけられぬものにかえすため
どこまでも
そんなにどこまでもむすばれている
まるで自ら終ろうとしているように
まるで自ら全いものになろうとするように
神の設計図のようにどこまでも
そんなにいつまでも完成しようとしている
すべてをむすぶために
たちきられているものはひとつもないように
すべてがひとつの名のもとに生き続けられるように
樹がきこりと
少女が血と
窓が恋と
歌がもうひとつの歌と
あらそうことのないように
生きるのに不要なもののひとつもないように
そんなに豊かに
そんなにいつまでもひろがってゆくイマージュがある
世界に自らを真似させようと
やさしい目差でさし招くイマージュがある

パウル・クレー スイス出身の画家(1879-1940)
晩年の天使シリーズが有名

「愛とは何か?」を問うた作品
何かと何かを見えない形で結ぶ それが愛
人と人をつなぐ何かが必要なのに世界が分断されている
イマージュとはその人の中から湧き上がってくる何か
その人だけが想像できるもの 阿部みちこ
イマージュは人と共有しづらい だから人は詩を書く 若松
「詩」は言葉足りえないものを言葉にしようとする営み
同じ詩を読んでも違った絵になる

若松
言葉で言えるものだけが本当のことだ
と断定してしまうのは危険を孕んでいるのではないか❓
谷川さんの詩を読みながら言葉との関係を広く豊かに
持っていくということができるんじゃないか❓

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