2025年5月2日金曜日

100分de名著 村上春樹 ❝ねじまき鳥クロニクル❞③

蝶たちのユニークな舞い羽ばたきよ
ネモフィラや風車囲まんキビガ谷
密厳寺八百株の牡丹咲く
園児笑む稚鮎放流鮎喰川
四百株の牡丹出迎え香しく

■100分de名著 村上春樹❝ねじまき鳥クロニクル❞③根源的な悪と対峙する
沼野充義 伊集院光 阿部みちこ

何があってもあの井戸を手に入れなくてはならない。
赤坂ナツメグ 赤坂シナモン(息子)
この僕が娼婦になるなんてな、と僕は手のひらを見ながら思った。
僕が金のために身体を売るなんて、いったい誰に想像できただろう?
何はともあれものごとは動きだしたのだ
それは一年近く不明になっていたワタヤ・ノボルだった。
僕は買い物の紙袋を置き、猫を抱き上げた。

猫の名前を「サワラ」に変える

ナツメグは街で見かけたトオルのあざに
ヒーリング能力があると見抜きスカウト
あざを舐めると癒される?最初にトオルのあざを舐めたのは笠原メイ

赤坂シナモンはある夜不思議な光景を目撃以来 一切言葉を話さなくなる
そのときにねじまき鳥が鳴いていた

壁に取り付けた鉄の梯子をつたって真っ黒な井戸の底に下りると、
僕はいつものように手探りで、
壁に立てかけておいた野球のバットを探し求める。
僕はまじり合っていく違った種類の暗闇の中であざに意識を集中し、
あの部屋のことを考える。
続き部屋の奥のベッドにはひとりの女が横になっている。
僕はその衣擦れ(きぬずれ)の音を耳にする。
彼女には何か僕に言うことがある。僕は呼吸の音も立てず
それを待っている。彼女の言葉を待っている。もう少しなのだ、
と僕は思う。少しずつそこに近づいている。それは間違いない。
いつか僕はこの隔たりを通過してそこに「入る」だろう。
でも同時に、僕は、それが実現することが怖かった。
そこにいるはずのものと向かい合うことが怖かった。

トオルのアイテム バットの暴力性

これ以上はやりすぎになる。
(略)
でもやめられなかった。自分がふたつに分裂してしまって
いることがわかった。こっちの僕にはもうあっちの僕を
止めることはできなくなってしまっているのだ。
「ねじまき鳥クロニクル」第2部 17 いちばん簡単なこと、
洗練された形で復讐、ギターケースの中にあったもの

呪われた道具という側面 トオルの武器にもなるが暴力性も呼び出す

「ねじまき鳥クロニクル」第3部 さまざまな要素
笠原メイの視点(トオルに書いた手紙) 一人称「私」
首吊り屋敷の謎(週刊誌の記事) 三人称
真夜中の出来事(少年と男たちの物語)  三人称
赤坂ナツメグの父親の話 三人称
「ねじまき鳥クロニクル」(シナモンが書いた物語) 三人称 他

世の中の普通のレールからは外れてしまった少女の魂の揺れが語られる
語りの方法が非常に多彩になる 
基本は岡田トオルの一人称単数「僕」で語られる
「僕」は村上春樹のトレードマーク 

獣医(ナツメグの父) 岡田トオルと同じ所にあざがある

彼はしばらくのあいだ、そこの座って煙草をくゆらせながら、
自分の気持ちをなんとか整理しようと試みた。
彼の目に映る世界は、外見的にはいつもどおりの世界だった。
そこにはこれといった変化は見受けられなかった。
でもそれはこれまでの世界とは確実に違った世界であるはずだった。
その動物たちは今朝まではちゃんと存在していたのだが、
今では、午後4時には、もうまったく存在していない。
とすれば、その二つの異なった世界のあいだには何か大きな、
決定的なずれのようなものがあるはずなのだ。
なくてはならないのだ。でも彼にはどうしてもその違いを
見つけることができなかった。

「ねじまき鳥クロニクル#8」の中に続きを見つける

若い兵隊はバッドを握りしめたまま放心状態でそこに立っていた。
(略)彼はただねじまき鳥の声に耳を澄ましていた。
鳥は昨日の午後と同じように木立のどこかから、やはり
ねじを巻くようにギイイ、ギイイイイと鳴いていた。

あざ バット ねじまき鳥 重なり合うモチーフ
共通するモチーフが呼びかけあうように小説が織りなされている
世界がズレているという感覚
ねじを巻くことによって世界が正されるのか
怖ろしいことの連鎖を助長しているのか
ねじまき鳥の鳴き声が不吉な怖いものに思えてくる

牛河 ワタヤノボルの使い

僕は書く。(略)君は今どこにいるのだろう。
そこでいったい何をしているのだろう。
あなたに最終的にわかってもらいたいのは、今の私はいろんな意味で
あなたの知っている私ではないという事実です。人間というのは
いろんな理由で変わるものだし、
ある場合には変形して駄目になってしまうものです。
カーソルは一点にじっと留まって、点滅しながら言葉を探している。
わかって欲しいのですが、こうしてあなたと通信していることすら、
私には身を切られるように辛いのです。
君は僕にすべてを忘れてほしいと言う。
自分のことはもう放っておいてもらいたいと言う。
でも、それと同時に、君はこの世界のどこかから
僕に向かって助けを求めている。
それはとても小さな遠い声だけど、静かな夜には僕はその声を
はっきりと聞き取ることができる。それは間違いなく君の声だ。
私にはわからない↲
僕にはわかる。僕はなんとか君がいる場所に、<助けを求めている>方の
君がいる場所に辿り着きたいと思っている。
(略)僕はそのことをどうしても君に伝えたかったんだ。
私にはほんとうにわからないの。
クミコはタイプする。そして会話は終わる。
さよなら↲↲↲

パソコン通信 クミコとの会話

たとえば最近、あなたは嫌な夢を見ませんか❓
(略)
いいですか、僕にはその夢からあなたを解放してあげることができます。
「ねじまき鳥クリニクル」第3部 26損なうもの、熟れた果実

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