2025年5月17日土曜日

あの本、読みました?三島由紀夫

朝陽受け白さ際立つはなみずき
川を聞く山と対峙し夏浅し
夏の空瘦せた砂地を生く小麦
想像のエネルギー燃ゆ短夜よ
磯釣りや置き去りにされ日焼け止め

■あの本、読みました?ことし生誕100周年【三島由紀夫】作品売上ランキング!
昭和を代表する作家 三島由紀夫 生誕100周年三島由紀夫スペシャル
平野啓一郎 九段理江 鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔P

平野啓一郎 きっかけは「金閣寺」
九段理江 恋に落ちそこから10年くらい三島由紀夫以外興味がなかった
     三島に恋した少女時代 

三島由紀夫売上ランキング
三島のデビュー作 第8位「花ざかりの森・憂国」
「花ざかりの森・憂国」の一文 三島由紀夫著/新潮文庫
花ざかりの森
いくたびもわたしは、追憶などはつまらぬものだとおもいかえしていた。
それはほんの一、二年まえまでのことである。
(中略)
けれどもしばらくたつうちに、わたしはそれとは別なかんがえのほうへ、
楽にうつっていった。
追憶は「現在」のもっとも清純な証なのだ。
愛だとかそれから献身だとか、そんな現実におくためには
あまりに清純すぎるような感情は、追憶なしにはそれを占ったり、
それに正しい意味を策めたりすることはできはしないのだ。

デビュー作は三島の晩年を予言
大江健三郎・石原慎太郎との関係

「三島由紀夫の日蝕 完全版」の一文 石原慎太郎著/実業之日本社
お手紙及び小包落掌いたしました。
二種どちらも非常にゴキゲンなもので、
こんな貴重なものを洵(まこと)に有難うございました。
但し夏のあひだはシャツで通してゐますので、
これを身につけるのは秋までお預けです。
(中略)
海へ行くのも面倒なので毎日二時間庭で日光浴をしてゐます。
その間は退屈だから、なるたけむずかしい本を読むのです。
おかげで色だけはベラフオンテ並みになりました。
仕事をするには平静な狂人である必要があります。
このごろ小生は、少々、平静な狂人に
なりかかってきたと己惚(うぬぼ)れてゐます。

三島にとっての石原慎太郎とは?
三島に関わると面倒?

第7位「春の雪-豊饒の海・第一巻-」

三島の遺作「天人五衰-豊饒の海・第四巻-」の一文三島由紀夫著/新潮文庫
これと云つて奇巧のない、閑雅(かんが)な、明るくひらいた御庭である。
数珠を操(あやつ)るような蝉の声がここを領している。
そのほかには何一つ音とてなく、寂寞(じゃくまく)を極めている。
この庭には何もない。記憶のなければ何もないところへ、
自分は来てしまつたと本多は思った。
庭は夏の日ざかりの日を浴びてしんとしている…

第3位「仮面の告白」の一文 三島由紀夫著/新潮文庫
園子は私の腕の中にいた。息を弾ませ、火のように顔を赤らめて、
睫をふかぶかと閉ざしていた。その唇は稚(おさ)なげで美しかったが、
以前私の欲望には愬(うった)えなかった。しかし私は刻々に
期待をかけていた。接吻の中に私の正常さが、私の偽りのない愛が
出現するかもしれない。機械は驀進(ばくしん)していた。
誰もそれを止めることはできない。私は彼女の唇を唇で覆った。
一秒経った。何の快感もない。二秒経った。同じである。
三秒経った。―私には凡(すべ)てがわかった。

三島と太平洋戦争 戦後社会に抱いた違和感

第2位「潮騒」の一文 三島由紀夫著/新潮文庫
少女は胸の下から下半身を覆うていた白い肌着を背後にかなぐり捨てた。
若者はそれを見ると、雄々しく彫像のように立ったまま、
少女の炎にきらめいている目を見つめながら、下帯の紐を解いた。
(中略)
少女は二三歩退いた。出口はなかった。コンクリートの煤(すす)けた壁が
少女の背中にさわった。「初江!」と若者が叫んだ。
「その日を飛び越して来い。その火を飛び越してきたら」
少女は息せいてはいるが、清らかな弾んだ声で言った。
裸の若者は躊躇しなかった。爪先に弾みをつけて、彼の炎に映えた体は、
火のなかへまっしぐらに飛び込んだ。
次の刹那にその体は少女のすぐ前にあった。
彼の胸は乳房に軽く触れた。「この弾力だ。」前に赤いセエタアの下に
俺が想像してのはこの弾力だ」と若者は感動して思った。
二人は抱き合った。少女が先に柔らかく倒れた。「松葉が痛うて」
と少女が言った。手を伸ばして白い肌着をとった若者はそれを
少女の背に敷こうとしたが、少女は拒んだ。
初江の両手はもはや若者を抱こうとはしなかった。
(中略)
そうして初江が言ったのは、道徳的な言葉である。「いらん、いらん。…
嫁入り前の娘がそんなことしたらいかんのや」ひるんだ若者は力なく言った。
「どうしてもいかんのか」「いかん」―少女は目をつぶっていたので、
訓誡するような、なだめるような調子ですらすらと出た。
「今はいかん。私(わし)あんたの嫁さんになることに
決めたもの。嫁さんになるまで、どうしてもいかんなア」

「潮騒」の一文 三島由紀夫著/新潮文庫
「おれはいつか、働いて貯めた金で機帆船買うて、弟と二人で、紀州の木材や
九州の石炭を輸送しようと思っとるがな。そいでお母さんに楽させてやり、
年をとったらおれも島にかえって、楽をするんや。どこを航海していても
島のことを忘れず、島の景色が日本で一番美(ええ)えように、(歌島の人は
みんなそう信じていた)、またア、島の暮らしはどこよりも平和で、
どこよりも仕合せになることに、力を協(あ)せるつもりでいるんや。
(中略)
そいで泥棒一人もねえこの島には、いつまでも、まごころや、
まじめに働いて耐える心掛や、裏腹のない愛や、勇気や、
卑怯なとこはちっともない男らしい人が生きとるんや」

なぜ純愛を描いた?

第1位「金閣寺」の一文 三島由紀夫著/新潮文庫
「金閣寺」平野啓一郎が好きな場面
私は今まで、あれほど拒否にあふれた顔を見たことがない。
私は自分の顔を、世界から拒まれた顔だと思っている。
しかるに有為子(ういこ)の顔は世界を拒んでいた。
(中略)
私は息を詰めてそれを見入った。歴史はそこで中断され、未来へ向かっても
過去へ向かっても、何一つ語りかけない顔。そういう不思議な顔を、
われわれは、今伐(き)り倒されたばかりの切株の上に見ることがある。
新鮮で、みずみずしい色を帯びていても、成長はそこで途絶え、
浴びるべき筈のなかった風と日光を浴び、本来自分のものではない
世界に突如として曝されたその断面に、美しい木目が描いた不思議な顔。
ただ拒むために、こちらの世界へさし出されている顔。…
私は有為子の顔がこんなに美しかった瞬間は、彼女の生涯にも、
それを見ている私の生涯にも、二度とあるまいと思わずにはいられなかった。

衝撃を受けた比喩表現

「金閣寺」の一文 三島由紀夫著/新潮文庫
肉体上の不具者は美貌の女と同じ不敵な美しさを持っている。
不具者も、美貌の女も、見られることに疲れて、
見られる存在であることに飽き果てて、追いつめられて、
存在そのもので見返している。見たほうが勝なのだ。

「金閣寺」の一文 三島由紀夫著/新潮文庫
美というものは、そうだ、何と云ったらいいか、虫歯のようなものなんだ。
それは舌にさわり、引っかかり、痛み、自分の存在を主張する。
とうとう痛みにたえられなくなって、歯医者に抜いてもらう。
血まみれの小さな茶いろの汚れた歯を自分の掌にのせてみて、
人はこう言わないだろうか。「これか?こんなものだったのか。
俺に痛みを与え、俺にたえずその存在を思いわずらわせ、そうして
俺の内部に頑固に根を張っていたものは、今では死んだ物質にすぎぬ。

美=絶対的象徴
もし三島がランキングを見たら?
三島が最も愛した作品「鏡子の家」
世間からも認められず、フランスでも出版されず
この番組でも取り上げられなかった。三島の運命?無念…。

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