夏夕べお腹空かせてお買い物
夏日向我が道を行く救急車
藤の花日々変わりゆく山の色
日の夏や快音立てて振るクラブ
青き空ビルの谷間の鯉のぼり
■100分de名著❝谷川俊太郎詩集❞②「生活」と「人生」のはざまで
若松英輔 伊集院光 阿部みちこ
みんなが、一ぴきの おおきな さかなみたいに
およげるように なった とき、
スイミーはいった。「ぼくが、めになろう。」
あさの つめたい みずの なかを、ひるの
かがやく ひかりの なかを、みんなは およぎ、
おおきな さかなを おいだした。
「スイミーちいさなかしこいさかなのはなし」
作:レオ=レオニ/訳:谷川俊太郎
主に1960~70年代 20代後半から40代
生活の中にも詩があるのではないか?
まず くつろいで 靴ぬいで 手も足も のばせるだけのばして
ここはどこ? ここはここさ 空のした 星のうえ 人々のあいだ
きみたちふたりの いまいるところ(中略)
くつろいで ツバメが飛びかう ハトが鳴く
くつろいで シカが走り ヒョウが吠え
くつろいで イルカが泳ぎ ペンギンが歩く
くつろいで バラは咲き くつろいで クルミは実る
ここは そういうところなんだ
だからね なにはともあれ くつろいで
好きな人には 手紙を書いて きらいな人にも葉書は書いて
それから あたり前なことを ひとつする
のどがかわいて 水を飲むとか
ついでに あたり前でないことも ひとつする
頭に野菜の 帽子をかぶる など
つまり やっぱり きわめて くつろいで
おそろいで くつしたなんか つくろって
谷川30歳代の頃
たぶん一番安定して幸せな時期だったと思う
「自分の実生活と詩は別物だ」と分けたかった
でも実際には色濃く私生活的な要素が入っている
ひとりのときは生活経験がないから
宇宙を相手にしていればよかったが
恋愛をして結婚をして実生活の経験を積んでいくと
それを生の形で持ち込まないにしても
詩が実生活の経験に影響を受けていると意識するようになった
「ここ」を読む ここ=今 は深く繋がってそう
場所としての「ここ」 時間の流れとしての「ここ」
くつろぐ:本当の意味で安堵する
「自分はここにいる」「ここは安心な場所」
と思ったときに本当にくつろげる それが「ここ」ということ
「ここでいいんだよね」という確認
詩は問いかけ こういう詩が生まれたときはくつろぎが足りない
「ほほえみ」
ほほえむことができぬから
青空は雲を浮かべる
ほほえむことができぬから
木は風にそよぐ
ほほえむことができぬから
犬は尾をふり─だが人は
ほほえむことがーできるのに
時としてほほえみを忘れ
ほほえむことができるから
ほほえみで人をあざむく
私たちにほほえみを届けてくれると感じることはある
(自分を祝福してくれるほほえみを)日ごろ見過ごしている
こういうふうに考えたことないですよね?
ということはあなたも楽しくないはずだ
詩を書くためには難しい言葉や技法はいらない 谷川
「anonym 1」
黙っているのなら
黙っていると言わねばならない
書けないのなら
書けないと書かねばならない
そこにしか精神はない
たとえどんなに疲れていようと
一本の樹によらず 一羽の鳥によらず
一語によって私は人
君に答えて貰おうとは思わない
君はただ椅子に凭(よ)れ
君はただ衆を侍(たの)め
けれど私は答えるだろう
いま雑木林に消えてゆく光に
聞き得ぬ悲鳴 その静けさに
詩には「真実味」がないとだめ
「真実味」とは「自分にとってかけがえのないものだ」
「自分にとっては簡単に見過ごすことのできないものだ」
という実感があるということ
詩に必要なものは真実味 特別なことは書かない
「ぼくは言う」
大げさなことは言いたくない
ぼくはただ水はすき透っていて冷いと言う
のどがかわいた時に水を飲むことは
人間のいちばんの幸せのひとつだ
確信をもって言えることは多くない
ぼくはただ空気はおいしくていい匂いだと言う
生きていて息をするだけで
人間はほほえみたくなるものだ
あたり前なことは何度でも言っていい
ぼくはただ鯨は大きくてすばらしいと言う
鯨の歌うのを聞いたことがあるかい
何故か人間であることが恥ずかしくなる
そして人間についてはどう言えばいいのか
朝の道を子どもたちが駆けてゆく
ぼくはただ黙っている
ほとんどひとつの傷のように
その姿を心に刻みつけるために
詩で問われているのは言葉の出どころ
圧倒的な凄み 本当に思ったことを書く
ひとりでも多くの人に詩を書いてほしい
というのが谷川さんのメッセージ
詩を書くにあたり大切なのは「モチーフ」
「木」
1
木がそこに立っていることができるのは
木が木であってしかも
何であるかよく分からないためだ
2
木を木と呼ばないと
私は木すら書けない
木を木と呼んでしまうと
私は木しか書けない
3
でも木は
いつも木という言葉以上のものだ
或る朝私がほんとうに木に触れたことは
永遠の謎なのだ
4
木を見ると
木はその梢で私に空をさし示す
木を見ると
木はその落葉で私に大地を教える
木を見ると
木から世界がほぐれてくる
5
木は伐(き)られる
木は削られる
木は刻まれる
木は塗られる
人間の手が触れれば触れるほど
木はかたくなに木になってゆく
6
人々はいくつものちがった名を木に与え
それなのに
木はひとつも言葉をもっていない
けれど木が微風にさやぐ時
国々で
人々はただひとつの音に耳をすます
ただひとつの世界に耳をすます
モチーフとは?モチベーション 動機 語源は一緒
モチーフとは我々の内にあって我々を表現に向かって突き動かすもの
無視できないテーマ
自分が何を探していたのかを理解するための扉(きっかけ)となるもの
「存在するとは不思議なことだな」
「ものが在るということは色々な働きやつながりを生むな」
木(モチーフ)によって谷川さんに目覚めた
心を揺り動かされて作品を作る動機となる
赤字はモチーフのことを言っている
表現しきれないものと出会えたならもう一段深いステージの詩を書く事となる
6はモチーフ性の強さが出ている
ただ1本の木をみんなの富に変えるのが芸術
日常生活や身の回りにモチーフがありそう 阿部
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