2025年5月28日水曜日

兼題「自転車」&テーマ「最初の記憶」

夜明け前マウスの下の汗水よ

目指すべき景色歩まん熱き日よ

耳澄ませ香る潮風青岬

夏山路勝手めくらののさばらん

あるがまま今を生き抜く夏の月

 

NHK俳句 兼題「自転車」

選者:高野ムツオ ゲスト:小坂大魔王 宮下咲 司会:柴田英嗣

ゲスト:若杉朋哉 森賀まり

年間テーマ「語ろう!俳句」

 

自転車は普段は季語を出すわけですけど 

今日は季語でない題ということになります

特に自転車は難しいかもしれません じてんしゃと四文字です

自転車と漢字三つ並ぶ これを一句十七音の中に入れるって

なかなか大変です NHK俳句の句会の場合は「自転車」という

(兼題の)言葉を入れることが原則

普段違った環境に入る人たちが俳句という価値観だけで集まって

選んで言いたい放題に言うわけです ガッカリしたり飛び上がって

喜んだり 悔しがったりと喜怒哀楽を味わう場でもあります

 

   若葉風盗らるるキスと自転車と 小坂大魔王

(「自転車に盗らるるキスや若葉風」にすると

自転車を漕いでいる場面でキスをとられたと解釈できた

若葉風「に」って一ついれればよかった

「若葉風盗らるるキスと自転車と」)

   おーいと雲はいと自転車夏に入る   高野ムツオ

(夏に入る=立夏 「おうい雲よ」山村暮鳥の詩を思い出した

 おういを現代風におーいという長音を使って表現 インスパイアした)

   向かい風立ち漕ぐ影がふふと笑ふ 宮下咲

(季語:青嵐 南風 薫風 とか雲の峰を入れるべきだった)

   自転車の両腕長し樟(くす)若葉 森賀まり

(「の」を「に」にしていやら誰の両腕かが明確になっていた)

   自転車を止めて見てゐる夕焼(ゆやけ)かな 若杉朋哉

(夕焼:夏の季語 見てゐる:複数形 

俳句に一枚目がある二枚目がある この比喩的ないい方は魅力的)

 

・特選三席発表 兼題「自転車」

一席 自転車の出前日焼の笑顔付き   多数野麻仁男(たすのまにお)

二席 自転車押し東京暑し坂多し   内山三時(さんじ)

三席 自転車の前と後ろに水着の子   千歳みち乃

 

特選

卒業や自転車のベル鳴らし合ひ   梅田康恵

自転車に乗れた春の風になつた   城内幸江

自転車とともに嫁ぎて青嵐   籠谷ひろこ

もう誰も乗らぬ自転車夏霞   おかだ卯月

自転車に筍を載せ村の医者   中島紀生

「祝入学」と自転車の鍵封筒に   福田英子

参照:https://www.nhk.jp/p/ts/6Q6J1ZGX37/blog/bl/pLvva3ZRZL/bp/pa6mMK3yQd/

 

今って短い文の文化じゃないですか SNS140文字で収めたりとか

ああいう文って意外と発した人よりも聞いた人のものになっちゃう

でも句会って意外とそんな感じでやっぱ言葉って曖昧なものなので

この曖昧なものを極めていくとすると集中してセレクトして

ちゃんといろんな四方から見てこうやってやらなきゃいけないんだろう

なっていう 小坂大魔王

やっぱり俳句は作者だけのものじゃないんです

作者が作ってそれを読者が鑑賞して初めて作品が成立する 高野ムツオ

インタラクティブ(対話式)なんですね 小坂大魔王

 

NHK短歌 テーマ「最初の記憶」 

選者:木下龍也 ゲスト:永井怜衣 司会:尾崎世界観

年間テーマ「“伝える”短歌 “伝わる”短歌」

 

・入選九首 テーマ「最初の記憶」
テーブルのへりを掴(つか)めば歩けるという歩けるが長く続いた

岩倉曰(いわく)

だれも来ない空き地でひろった指だった遠いだれかが見てる気がした

水鳥

明るい月が真上にあった寒い夜手ひかれ行けばみんな泣いていた

遠藤初惠

えびせんの赤いふくろを抱いたまま兄になったがわからない雪

CALO(かろ)

 我を見て駆けだす君の一生を受け止めてやる山は緑に

赤見晃

三席 私 グラウンドの隅で半身浴をするタイヤはハイウェイに想いを馳せて

田島史都(ふみと)

一席 新居にはカーテンだけが揺れていて風にすらまだ慣れていなくて

()田儀一(よしかず)

初めてのちゅうの残滓(ざんし)を初めてのキスで平らにしてしまおうよ

中原紘

二席 ベビーバスの中から見上げる父の顔はすこし硬くてでもしあわせで

佐竹紫円(しえん)

 

・木下流 短歌の育て方

永井玲衣さん「最初の記憶」

子どもの頃は世界と自分が密着 わたしが世界と離れて分化

わたしって わたしじゃないといけないんだ 

 

皮膚は檻その内側で窮屈に(何の罰だよ)わたしとなった 木下

世界と分化するというのは さみしさでもあるが 

わたしがわたしになるという経験 永井

怒りが込み上げる前は自分と他者に境界がなかった

その境界に気づいた瞬間を書いた やや観念的

頭の中で考えている感じがあるので 変えてみようと推敲した 木下

 

何の罰文字は枡目に分けられてわはたになれずたはしになれず 木下

「わたし」を構成する「わ」と「た」と「し」は

それぞれの文字にはなれない 枡目で分けられることによって

(他の文字への)なれなさが明確になる 文字の話をしている

ちょっと最初の歌より遠くなった印象があるため推敲した

 

何の罰製氷皿に区切られてまた水になるまでの百年 木下

未分化だった頃を水 分化後の「わたし」を氷と捉えて作った

これまでの流動性が失われたことへの怒り 分化の明確さを際立たせる

隣りの人からは世界を眺めることはできない というじれったさ 木下

「何の罰」という憤りや怒りを捕まえてくださっている 

詩が乗っかることでより普遍性を獲得していく 

短歌や詩は終わりと決め難い 

対話の場も同じ いつまでも話せてしまう 永井

どうやって終わらせる? 尾崎

時間だけ 永井

対話や言葉に対する誠実さであるような気もする 

複雑なことが起こるのが対話 永井

 

・ことばのバトン

落ち着けよ鼓動は速い4ビート

田中亮(指揮者)

夏を見つける潰すイチゴに

二方久文(ふたかたひさふみ)

大学受験塾講師

イチゴをゆっくり潰して香りを楽しもうと という意味

きっといまの風にうたれたからだろうおもわず両手でおさえているのは

その時の空気感は自分しかわかりませんけど

読者と共有できれば幸せなことですよね 

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