2026年2月28日土曜日

あの本、読みました? 村山由佳

冴返る腹冷やすもの避けていた❓

春まけてまぶた閉じれば気絶せり

春兆す浮かぶ映像音創り

骨法を知る人の俳句や風光る

春の闇あるべき姿追いかけて

 

■あの本、読みました?

動物が登場する小説~村山由佳・馳星周・早見和真・伊与原新

村山由佳 田畑博文 鈴木保奈美 山本倖千恵 林祐輔P

 

「藍を継ぐ海」伊与原新著/新潮社

63回直木賞受賞作 「少年と犬」馳星周著/文春文庫

2025年ドラマ化され話題「ザ・ロイヤルファミリー」早見和真著/新潮文庫

「ともぐい」河﨑秋子著/新潮社

小説×動物 魅力がより深まる

 

「しっぽのカルテ」村山由香著/集英社

森の中の動物病院が舞台

2026年本屋大賞ノミネート 「PRIZE-プライズ-」村山由香著/文藝春秋

 

小説から生物学の本まで《動物の本》特集

動物が出てくる小説

馬 「ザ・ロイヤルファミリー」早見和真著/新潮文庫

山本周五郎賞 受賞作 2025年ドラマ化され話題

 

ウミガメ 「藍を継ぐ海」伊与原新著/新潮社

172回直木賞受賞作

 

犬 「少年と犬」馳星周著/文春文庫

63回直木賞受賞作

 

熊 「ともぐい」河﨑秋子著/新潮社

170回直木賞受賞作

 

「しっぽのカルテ」村山由香著/集英社

第一話 猫 第二話 高齢犬 第三話 インコ 第四話 ウサギ 第五話 馬

物語は思い入れのある猫から

 

「しっぽのカルテ」の一文 村山由香著/集英社

「あの、」思わず呼び止めた。「い…いかがされましたか?」

再びこちらを向いた彼は、わずかに迷ったのち、上着のジッパーを

チリリと下した。お腹のあたりまで下ろしたところで、

白っぽい綿毛のようなものが覗いて見えた。さらに注意深く、

綿毛をはさまないようにして下ろしてゆく。「やっ…ちっちゃ!」

深雪は目を瞠(みは)った。子猫だとわかったとたん、

男に対して身構える気持ちが薄れた。

節の高い指が、冗談のように小さなその体をそっとつかみ出す。

全身真っ白だが、片方のまぶたは黒っぽい目やにでくっつき、

開いている側も瞳に幕がかかっていて薄青い。生まれてまだ一週間

たつかどうか。それにしても動きが緩慢だ。「さっき、

ほんの一時間ばかり前に見つけたんです」言いながら、土屋は

ジャンパーのポケットから缶コーヒーを取り出し、子猫の身体に

くっつけた。「え、それ」「〈あったか~い〉やつ」

ここまでのカイロ代わりにしてきたようだ。

「母親はたぶん野良だと思うんスけど、自分が見つけた時には

もう冷たくなってて、他のきょうだい四匹も駄目で、なんとか

息をしてたのはこいつだけで」矢継ぎ早な説明を、

「ちょっといいですか」と遮り、カウンターの外へ出ると、

深雪は彼の差し出してよこす猫に触った。

 

思いを込めて書いた❝土屋高志❞

第五話はモンゴルの馬が描かれ院長のバックボーンが明らかに

 

「しっぽのカルテ」の一文 村山由香著/集英社

「こんな話を知っているかな」いきなり言われて、高志は目を上げた。

「このあいだ、うちで最期まで面倒を見た犬の飼い主さんが教えて

くれたんだが-」院長がなぜか壁のほうを向いて続ける。

「亡くなった犬や猫やその他のペットが、彼らの天国へ行く。

そこには門番がいて、台帳みたいなものに記録するために、

それぞれ自分の名前を申告しなきゃならない。

その時、皆が同じような名前を名乗るんだと。

「僕の名前は〈カワイイ〉です」。

「わたしの名前は〈カシコイ〉です」。

生きてる間じゅう、可愛いね、かしこいねえ、と飼い主から

さんざん褒められ続けてきて、それが自分の名前だと思い込んでるから

…というわけさ。天国の名前。よくでくた話だろ」いい話だろ、

と言わないところが院長だ。

非常に分かりにくいけれども、慰めているつもりなのかもしれない。

 

性格が正反対の主人公を書く苦労

PRIZE-プライズ-」の一文 村山由香著/文藝春秋

出せば売れる、というだけではもう足りないのだった。

身体じゅうの全細胞が、正当に評価される栄誉に飢えて餓(かつ)えている。

世間や書店のお墨付きは得た、あとは文壇から、同業者から、

作家としての実力を認められたい。いや、認めさせたい。これ以上

〈天羽カイン〉を軽んじることは許さない。夫にも誰にもだ。

方法はきっと何かあるはずだった。自分だけがその方法を知らず、

誰かが、陰でうまいことやっているに違いないのだ。

(中略)

ぬるくなってきた湯に肩まで浸かる。これまでに何度も飲まされてきた

煮え湯、味わってきた悔しさのすべてが、身体の中でぐるぐると

渦を巻いて鎮まらない。足をはね上げて後ろへ倒れると、湯が勢いよく

溢れた。大の字に浮かんで天井を睨みつける。

―直木賞が欲しい。他のどの賞でもなく、直木が。

 

直木賞が欲しい…葛藤を反映

■一番恥ずかしいことは、村山にとっては自分への承認欲求だった

承認欲求と折り合いをつけた

まっとうな承認欲求は自分の中に飼っておこうと考えられるようになった

 

PRIZE-プライズ-」の一文 村山由香著/文藝春秋

「南方先生は、前回の選考を最後に直木賞の選考委員を

勇退されましたよね。その先生に伺います。直木賞って、

いったいなん何でしょう」千紘は息を呑んだ。

すぐ隣のカインは微動だにしない。

(中略)

「俺はさ、二十数年前に直木賞の選考委員になった。

じつのところ俺自身は、三回候補になっているがもらってないんです。

それなのに選考委員を頼まれて、別に恩も義理もないから

断ることだってできたんだけれども、結局引受けた。どうしてか。

〈第二の南方権三を出さないようにする〉

という使命があると思ったからです」

聴衆の間に、声にならないざわめきが広がる。「直木賞を受賞していない

俺は、自分の力だけで名前を大きくしなきゃいけなかった。

それがどれだけ大変なことか、骨身に染みているからね。

(中略)

直木賞というのは作家にとって、特大のエンジンであり、翼であり、

武器にも盾にもなるものです。受賞した後、あなたがたの本屋大賞を含め、

大きな文学賞をどれほどたくさん積み重ねたとしても、

死んだらニュースで「直木賞作家の誰々さんが」と読み上げられる。

例外はノーベル文学賞ぐらいかな。

直木賞というのはつまりそういう賞なのです。

望むと望まざるとにかかわらず作家の看板になる」

 

若手作家への北方謙三の想い

後進の作家たちへの愛がある 深い 保奈美

 

人物の細部にこだわるワケは?

担当編集が作品を読んで… 

作家×編集者の関係性

 

物語では狐の鳴き声が登場

2度現れる狐の意味は?

千紘のことは信じられなくなったという一文を入れたら

そこまでなのですが、それを書かずに読者に感じて貰いたかった。

何を書くかより何を書かないかを意識した。

 

今売れている

「動物のひみつ」アシュリー・ウォード著 夏目大訳/ダイヤモンド社 を深堀り

田畑博文 ダイヤモンド社

編集者買いがブーム?

全ての動物にある社会性

 

「動物のひみつ」の一文 アシュリー・ウォード著 夏目大訳/ダイヤモンド社

現代の人間社会は、人間関係からできている。家族、コミュニティ、

都市、国家といった規模の違う人間関係が組み合わさっている。

その中に、法律があり、文化がある。また、様々な軋轢も存在している。

その点をもって、人間は他の動物とは違う、と考える人もいるかもしれない。

たしかに人間の社会には人間だけの特徴があるが、他の動物たちが

同じような社会をまったく持たないわけではない。

社会的な動物の多くは、人間と同じように社会を作っている。

しかも、動物たちは、人間が地球上に現れる何百万年も前から

そうして生きてきたのだ。社会を作ろうとする人間の本能は、

遠い祖先から受け継いだものであり、

他の社会的な動物との共通点を多く持っている。

 

近年、隣り合う空間に棲む二匹のネズミを使った実験が行われている。

一方の空間は乾いており、居心地が良いが、

もう一方の空間は湿っていて、居心地が良くない。

(中略)

果たして、前者のネズミはドアを開けて、

後者のネズミを招き入れるだろうか。

実験では、招き入れる、ということがわかった。

また、湿った、居心地の悪い空間に棲んだことのあるネズミは、

そうでないネズミよりも早くドアを開けることもわかった。

つまり、自分の経験を基に他者の境遇を慮り、救いの手を

差し伸べる能力を持っているということだろう。

隣の空間が湿っていない場合には、ネズミはドアを開けようとしない。

隣のネズミが困っているからドアを開けただけで、

仲良くなりたくてドアを開けたわけではないということだ。

 

危険を察知してから豆腐反応を始めるまでに要する時間は

わずか五十~六十ミリ秒である。

(中略)

オリンピックの短距離走者がピストルの音を聞いてから走りだすまでの

時間の半分ほどだと言えば、この素早さをわかってもらえるだろうか。

 

厚い本だからこその価値 

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