梔子(くちなし)や母が愛した香りきく
裏庭を独り遊びの桔梗かな
向日葵や風を受けども陽へ向かい
主なき月下美人や今朝を咲く
一家揃ってよそゆきの顔茅の輪かな
■NHK俳句 兼題「プール」
選者 堀田季何 レギュラー 庄司浩平 司会 柴田英嗣
年間テーマ「俳句の凝りをほぐします」
今日のテーマは「比喩」
一つの物事について共通点のある別の物事を借りて表現する技法
名句の半分ぐらいが比喩が使われている
最大の効果はイメージが広がる
ひとつのものを別のもので例える
別のもののイメージを持ってくることができる
より鮮明に読者に伝わる
比喩 基本の3つ
直喩 一枚の餅のごとくに雪残る 川端茅舎
「ごとく」や「ように」「まるで」などを使って
ひとつの物事を他の物事に直接例えること
隠喩 水打てば夏蝶そこに生まれけり 高浜虚子
水を打ったところに蝶がそこに生まれてきたかのように出現した
「ごとく」を使わないで隠している
「ような」「みたいな」等を用いず
ほかの類似した物事を借りて表現すること
文字数がカットできる 詩的な飛躍 幻想を見ているような感じ
擬人法 海に出て木枯帰るところなし 山口誓子
人間でないものを人間に見立てて表現する技法
人間っぽく見立てる 場合によっては直喩や隠喩の中に入る
木枯 冬の季語 冬の季語 木も枯らすかのような冷たい風
風に対して言わない 人間の思考 擬人法的な表現
あえて人間的な言い方をすると見方が違う
作者の思い 鮮明なイメージ より伝わりやすい
しかし 毒にも薬にもなる ダメな比喩一発アウト
毒と薬の違いは❓
✖炎天を雪のごとくに涼気すぐ 陳腐
✖炎天を犬のごとくに涼気すぐ 解り辛い
○炎天を槍のごとくに涼気すぐ 薬 成功している 風も感じる 飯田蛇笏
ツボポイント
新鮮でありながら説得力がある例え
雪の中膏(あぶら)の如き泉かな 川端茅舎
質感も水とは違う 柴田英嗣さんの出したゼリーは非常に良い
比喩使いやすく効果的ですが陳腐な例え
意味不明な例えにならないよう
絶妙な比喩を探してみましょう
▪今週の兼題「プール」
晩夏 夏の終わりの季語
水が溜まっているプールそのもの 容器としてのプールを詠む
「泳ぎ」や「飛び込み」も別の季語
特選六句発表 兼題「プール」
白杖を月に預けてプールかな 対馬清波
見学のプールやノアの心地して 髙田祥聖(しょうせい)
定年のごとプールから出る重さ 小林飄(ひょう)
島のごと親の肩あるプールかな 姫野理凡(りぼん)
私 悲しみがプールを少し海にした 澁戸(しぶと)なずむ
(さまざまな比喩が複雑重なっている)
プール今洗い終わって空の底 蓬(よもぎ)詩のぶ
▪柴田の歩み
新鮮であり説得力がある
庄司の歩み
スポンジのごと学びを得る
■NHK俳句 題「氷」
選者 川野里子 レギュラー 内藤秀一郎 深尾あむ 司会 ヒコロヒー
年間テーマ「“私”に出会おう~2年目の飛躍~」
▪飛躍の扉 リアルをつかんで心を表現しよう!
「究極のかにかま」なれど蟹にあらずかかる接近に君と過ごしつ
山下翔「meal」
玄米のごはんの弁当おとたてずはみていしひと解雇せしわれ
大井学「サンクチュアリ」
(川野里子先生に異議申し立てです。時代背景にも左右されますが
玄米食をしている人は自己主張の強い人だと思います。)
(なにも心は表現されていないけれど それ以前の表現によって
こんな人を解雇した自分というので心の痛みを表現できる)
生きようとする人ベッドにゐる昼を蛇口に水はゆれながら立つ
川野里子「歓待」
(リアルに描くということは読者に伝わるだけではなく
うれしい悲しいという簡単な言葉より
深く奥行きのある複雑な心を表現してくれる)
▪入選六首 題「氷」
私 朝2時に起きたら製氷機のガコンやましいことでもあったんやろか
岡本龍太郎
私 十社からお祈りされてわたくしの感情すべてが氷山になる
つきひざ
一席 僕たちは恐竜よりも強かった就職氷河期超えて生きてる
竹内一二
瞬間でも永遠でもなくて今ここに私と並ぶ氷の鶴は
吉村享子(きょうこ)
フィヨルドを流れる氷河のスピードのだるまさんがころんだ夕暮れ
里見修一
氷嚢(ひょうのう)のような満月そこならばどんな怒りも鎮(しず)まりますか
ナカムラロボ
▪みつけたキラリポイント
氷嚢(ひょうのう)のような満月 内藤秀一郎
ガコン 深尾あむ
▪短歌添削
かき氷一人で食べたそんな夜心がズキン氷のせいだ
内藤秀一郎 添削
かき氷一人で崩したべる夜心がズキン氷のせいだ
かき氷一人で崩したべる夜心がズキン氷のせいか
線香の香り残して燃え尽きた氷の結晶みたいな花火
深尾あむ 添削
線香の香り残して燃え尽きる氷の結晶みたいな花火
(現在進行形にすることでリアルになる)
▪秀一郎 あむの飛躍のカギ
自己紹介うまくできない六月の排水口に毛は絡まって
上坂あゆ美「老人ホームで死ぬほどモテたい」
(描写に心を託す リアルを表現する)
▪ことばのバトン
ブラボーが降りそそぐようなステージに
ファブリ イタリアン歌人
⇩
今日はじめての私がいます
藤田衣里子(現代学生百人一首コンクール 東洋大学スタッフ)
心に残っている作品
いまわたし泣きたい気分なんだからてるてる坊主は逆さにつるして
千葉県十五歳(当時)第三十四回入選作
短い言葉だからこそのリアル感 日記的な感じもあって
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