2024年8月12日月曜日

兼題「天の川」&題「色」

青き空吹き出す汗と対峙せり
(ベネズエラ)道を転がる札踏みつけて夏の果
(香月泰男氏)風死すやタラップ下りて立つ日本
(香月泰男氏)シベリアの記憶とどめん油照り
夏呻(うめ)く孔雀咀嚼し解毒せり

■NHK俳句 兼題「天の川」
選者 西川睦 ゲスト 木内縉太(しんた)(俳人・書体デザイナー) 司会 柴田英嗣
年間テーマ「やさしい手」

太陽の匂ひの青年さはやかに   西山睦

▪俳句三選
鬱 鬱の字の中の林や熱帯夜   木内縉太
P ジャンパーの背中のPOLICE蛍光(けいこう)す   木内縉太
ふ 天の川ふみ読めば汝がこゑ聞こゆ   木内縉太

タイポグラフィ
文字の視覚的効果に関する技術
書体のデザインや文字のレイアウトをすることで
読みやすくしたりメッセージを伝えやすくする手法
書体のデザインは文字の声を聞く 手書きは声が聞こえる
「声」漢字だと輪郭がはっきりしていて音声としてもしっかりする
「こえ」ひらがなにすることで思い出が立ち上がってくる
記憶の底の声を感じられる

俳句には五七五の定型があって季語という柱がある
書体デザインも(定型の)四角の中にデザインする
「あ」として読めなければ「あ」じゃない
既存の数千書体の「あ」とどう違うのか
今作っている「あ」がどう違うのか
類想から脱しなきゃいけない 同じ楽しさと苦しさがある
書体は美しさも必要だけれど読者に意識されないことが大切
俳句は五七五の定型の中で作る謙虚な詩
共通の魅力を感じている

▪今週の兼題「天の川」天の川の叙情性と詠み込む
銀漢や十勝平野の地平線   中野富子
島医者としての生涯天の川   清水呑舟(どんしゅう)
 名を忘れ母は軽やか天の川   水須ゆき子
天文部のラーメン係天の川   清正風葉(せいしょうかぜは)
天の川跨(また)ぎ切つたる成田発   杉山滿(みつる)
九合目ひとつの伸びして天の川   近藤由香子

▪特選三席
三席 息づかひ隣に聞いて天の川   小林文隆
二席 三線(しん)に酔うて大の字天の川   花瀬玲
一席 真珠貝眠る入江(いりえ)よ銀河濃し   島田順子

▪俳句やろうぜ
若手俳人探査隊長 黒岩徳将
今回紹介するのは ユーモアとわかりやすさの俳句 
筑波大学3年生 西野結子

顧問からアロハの柄の葉書くる   西野結子
俳句甲子園出場の時は審査員から笑い声が聞こえたとか…。

▪柴田の歩み
たいぽぐらふぃ~使おう‼

■NHK短歌 題「色」
選者 俵万智 ゲスト 諌(いさ)山恵実(日本画家) 司会 ヒコロヒー
年間テーマ「光る愛の歌」

現代短歌を作るうえで「色」はすごく大切
物事を具体的にイメージする喚起する意味でとても大事

▪入選九首 テーマ「色」
コピー機のインクのシアンが手についてからっぽの手を少しそらにする
中戸えさう
週末のブラインド下ろす会議室筆を洗ったバケツの水色
沖野充
一席 赤い字の消えた看板たいせつなものが何だか思い出せない
豆打(ずんだ)だんす
二席 戦争の名がさくらんぼ色となる「テストに出す」と言われたのちに
髙原希美(のぞみ)
三席 はみ出してしまわぬように面接は黒いスーツで縁取りをする
くらたか湖春(こはる)
オレンジのオレンジ色を描き出す絵具はオレンジ色を使わず
澄田修一
朝の卓(たく)に小さきジャム壜(びん)ならびおりカンバスの如きパンを選びぬ
富見井(とみい)高志
あなたから貰った金のスプーンがプリンの底の苦みに届く
武智しのぶ(全体が恋愛の比喩)
赤信号の寿命が残り1となり自転車たちは姿勢を正す
麻倉遥

▪「光る君へ」で短歌を10倍楽しもう!
短歌づくりのポイントは❓
○色そのものの持つイメージの喚起力を短歌に応用
「黄色い声」「ブルーな気分」「バラ色の人生」など
物でないものをたとえに色を使うことも可能
物でないものに色を使う手法を自分で作ってみるのも楽しい
○慣用句は安易に使わず新たに生み出すくらいの気持ちで

よもすがら契りしことを忘れずば恋ふむ涙の色ぞゆかしき
万智訳
私との夜を忘れずにいたならば君の涙の色は何色
「紅涙(こうるい)」本当に悲しいときは赤い涙・血の涙という
慣用的な言い方があるが この歌は「紅涙」を超えて
「どんな色の涙をあなたは流してくれるかしら」という絶唱
「ゆかしき」というのは知りたいという意

諌山恵実
日本画を描く時「色」の使い方のこだわりは❓
紙・絹・木などに主に描くがそのものの質感が一番きれい
紙などの風合いをできるだけ邪魔したくない
極力 紙を汚さずに表現が成立しますようにと思っている
(日本画)ひき算が試される

俵万智
(ひき算は)あらゆる表現に通じることかもしれない
引く勇気を持つ

▪ことばのバトン
今日はじめての私がいます
藤田衣里子(現代学生百人一首コンクール 東洋大学スタッフ)

初夏に聞く蝉の歌声初々しい
神田日陽里(ひより)(東京学館新潟高等学校)
「それいいね」付和雷同の私でもこの恋だけは自己主張する
2024年の歌会始で詠まれた

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