2023年6月20日火曜日

題「峠」

白鷺や目指す水縹(みはなだ)悠々と
通し鴨お尻ふりふり子を連れて
梅雨曇り思いのたけを揮毫(きごう)せり
梅雨の星化学反応続けをり
梅雨晴間日常こそがマーベラス

■NHK短歌 題「峠」
選者 吉川宏志 ゲスト 伊藤比呂美 司会 尾崎世界観

「実感的 表現力アップ」をめざす第3週 
 今月のテーマは「地名を活かす‐固有名詞‐」(引用)

▪夜泣峠超えて来たりぬ谷に散る紅葉は谷を出ることのなし
吉川宏志

▪入選九首 題「峠」
霧深きオロフレ峠の記念写真たしか真ん中が私のはず
後藤明美
💮アカシアの香る笹谷(ささや)の峠へと蜂は光の直線をひく
鈴木仁
峠では凶器となりぬ濡れ落ち葉バイクをおりて踏めば柔らか
小鳥遊湖々(たかなしここ)
校歌にある峠はどこか知らぬまま窓につらなる山を見ていた
久藤さえ
飛騨を知らぬひとを乗せゆく連休の安房(あぼう)峠にひと群の雪
ともえ夕夏
支える手振り払いつつ吾子はゆく滑り台とう高き峠を
小松百合華
私も核なくせぬ人類のひとりだ峠三吉を読む
小林孝恵
学級復帰支援員として吾(われ)幾度愛発(あらち)の峠下り行きしか
藤田桂子
今際(わ)なる母の元へと急ぎゆく峠を走る「豆太」になれず
東真理子

▪入選あと一歩
月面の峠にかつて居た地球(ほし)の影見る桜蘂ふるらんを
玄兔(くろうさぎ)
添削(短歌はポイントを絞る)
月面の峠にのぼりかつて居た地球見ている桜の頃か

▪表現の最前線
真夜中の俱知安驛(えき)に下りゆきし女の鬢(びん)の古き痍(きず)あと
石川啄木
(森鴎外の翻訳した詩人リルケの「白」に似ている。)

▪伊藤比呂美 表現の最前線
どこに行くにも坂をのぼる。
どの坂もお城に向かう。
小学校の南側の、バスの通う幅広の坂が新坂。
新坂の途中から真っすぐに上がる中坂。
中坂の途中から右に折れる春木坂。
新坂に平行して、裁判所の南側に出る坂が観音坂。
春木坂から牛縊(くびり)坂。
河原端から一気に上がる瀬戸坂。
瀬戸坂の途中から三年坂。
どの坂も、上がり切った先は旧三号線である。
上がり切ると、後は下りの雁木(がんぎ)坂、榎(えのき)坂、
西方寺坂、龍迫谷(りゅうさこだに)坂、向台寺(こうだいじ)坂、
釈将寺(くしょうじ)坂、小さい坂の群れを飲み込んで、
新坂が上(かみ)熊本の交差点に向かって一気に下る。
「切腹考」より
お城からどうやって坂が下りていくか
坂からどうやってお城に登っていくか
その熊本の描写
文化や言葉と同じ
この文章の拘ったところは❓坂の連呼。
シャーマンのように連呼して向こうに持っていく。
短歌には連呼する字数がない
短歌は五七五七七でリズムを作っている

地名を自分が生きることによって
歌として立ち上がってくる   吉川宏志

▪ことばのバトン
ブランコをこいで足から陽を受ける 上本彩加

苦しくても今ぼくらは始まる 高山邦男
(わが仕事この酔いし人を安全に送り届けて忘れられること)

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