2024年6月30日日曜日

100分de名著 宮本常一「忘れられた日本人」(4)「世間師」の思想

やんわりとシアートップス夏闊歩
(セザンヌ)質感と遠近法の夏休み
(セザンヌ)茂る草自己肯定の強き圧
セザンヌを認めたピカソ青林檎
身体からジョワイユもれん夏の空

■100分de名著 宮本常一「忘れられた日本人」(4)「世間師」の思想
畑中章宏(民俗学者) 伊集院光 阿部みちこ

世間とは人々の行動を束縛する「しがらみ」として捉えられている
宮本自身は共同体自体が1つの世間
その外側にも別の世界がありそこを渡り歩くという開かれたイメージ
世間師とは
自分が生まれた故郷から移動して外の世間を渡り歩いてきた人

「梶田富五郎翁」
浅藻 梶田富五郎
「たいがいのことはきいてああげられるが、あそこは
シゲ地じゃからたたりがあるといけん」というから
「たたりがあってもええ、それに生き神さまの天子様が
日本をおさめる時代になったんじゃから、
天道法師もわしらにわるさはすまい」ということになって、
浅藻へ納屋をたてることをゆるしてもろうて久賀へ戻って来やした。

港をひらくちうのは、港の中にごろごろしちょる石を
のけることでごいす。人間ちうものは知恵のあるもんで、
思案の末に大けえ石をのけることを考えついたわいの。
潮がひいて海の浅うなったとき、石のそばへ船を二はいつける。
船と船との間へ丸太をわたして 元気のええものが、
藤蔓(ふじづる)でつくった 大けな縄を持ってもぐって石へかける。
そしてその縄を船にわたした丸太にくくる。
潮がみちてくると船が浮かんでくるから、
石もひとりで海の中へ宙に浮きやしょう。
そうすると船と沖へ漕ぎ出して石を深いところへおとす。(中略)
根気ようやっていると、どうやら船の
つくるところくらいはできあがりやしてのう。

やっぱり世の中で一番えらいのが人間のようでごいす。

パイオニアのライフストーリーを通して
「ある港や集落がなぜそこにできたか」
「産業が発展していったか」に着目した
技術を伝えて歩く 意味合いもあった
漁民は魚を追って移住
農民は新田開発や大災害によって共同体単位で他の土地に移住
自分たちが豊かになるためには
新しい土地を切り拓いて故郷から移動した
周防大島出身ということが複数の世間を行き来することに
抵抗がなく 肯定的に受け入れるという宮本常一の素地になっている

女の世間 生活誌
昔にゃァ世間を知らん娘は嫁にもらいてがのうての、(中略)
世間をしておらんとどうしても考えが狭まうなりますけにのう
昔は、若い娘たちはよくにげ出した。父親が何にも
知らない間に たいていは母親としめしあわせて、
すでに旅へ出ている朋輩(ほうばい)をたよって出ていくのである。
娘たちは盆、正月になると戻って来る者が多い。
その時しめしあわせておく。
そこで伊予方言をほんの少々おぼえて来て、「伊予に三十日おったら、
島(故里)のことばをとんとわすれた」と伊予方言のアクセントで言って
皆をわらわせた。しかしそれからさきができない。
近所の女のところへやっていって、「伊予に三十日おったら、
島のことばをとんとわすれた、おかい(おばさん)かい(粥)を炊いて
下れえ(下さい)」とあと半分は島の言葉で言ったという笑い話がある。

娘たちにとって旅はそうした見習いの場であったのだが、それは
島の者の持っていない知識をもっている事をほこりにしたのである。
女性は家や共同体に縛りつけられて 生まれ故郷から出ないで
一生を終えるイメージが強いが子育てや生業(なりわい)を
進める上で島の中の常識だけではなく 外の世界では
どうしているのかを知っておかなければならない
共同体の外側にある色々な世間の価値観を学ぶことは
家族や共同体にとっても意味のあることだった

言葉すら違う人たちがいることを「知る」「知らない」では全然違う

「世間師(二)」
左近熊太翁
地租改正 1873-81年に明治政府が行った土地と租税の改革
「やっと世間のことがわかるようになったときには、
もう七十になっていましてな。
わしも一生何をしたことやらわかりまへん」

世間師の人々から見えること
それにしてもこの人の一生を見ていると、(中略)
その努力の大半が大した効果もあげず埋没していくのである。
明治から大正、昭和の前半にいたる間、
どこの村にも世間師が少なからずいた。
それが、村をあたらしくしていくための 
ささやかな方向づけをしたことはみのがせない。
どこの村にもこのような世間師がいた
名士として記念碑に名を刻むのは成功を遂げた一部の人だけ
村の歴史は一方向的に進歩するのではなく
成功と失敗の繰り返しで漸進(ぜんしん)的なもの
停滞の歴史というものがあまり伝わっていない
停滞は「何も起こらなかった」記録にも残らない

新潟県佐渡

1980(昭和55)年 周防大島にて郷土大学発足

私は長いあいだ歩きつづけてきた。
そして多くの人にあい、多くのものを見てきた。
それがまだ続いているのであるが、その長い道程の中で
考えつづけた一つは、いったい進歩というのは
何であろうか、(注略)ということであった。
(中略)失われるものがすべて不要であり、
時代おくれのもので、あったのだろうか。(中略)これから
さきも人間は長い道を歩いてゆかなければならないが
何が進歩であるのか ということへの反省は たえず
なされなければ ならないのではないかと思っている。
「民俗学の旅」より

何が進歩なのかということを考えないとだめ 
民俗学の枠を超えた活動

離島振興法
離島の自立的発展と定住を促進させるため 1953年に施行された法律

自分の経験をもとにリアルに世の中を変えるにはどうすればいいのか
それぞれの地域が経済的・文化的にいかに豊かになるか 
が宮本の生涯のテーマとも言える
民俗学者の仕事の範疇(はんちゅう)を超えていると思われるが
宮本は政治を動かすような生臭いこともいとわなかった
徹底したリアリストだった

地域ごとに様々な事情があり個別の歴史があり
そこに住んでいる人のライフストーリーも様々
ということにも目を向けていかなくてはならない
画一的なマニュアルはないと宮本は実践的に言っているのではないか

2024年6月29日土曜日

戦争が迫ってきた時に読む本&俳句道場&マーケット・アナライズより&三島喜美代女史

(レアの雄)子育て中牛の頭突きも受ける夏
(レアの子)ぎこちなく父追いかけん青野かな
夏の空いつも一緒のレア親子
いち早く子を隠す夏鷹見つけ
レアの子や父追いかけん夏の雲

■理想的本箱 君だけのブックガイド
選「戦争が迫ってきた時に読む本」
吉岡里帆 太田緑ロランス 幅允孝(はばよしたか)

▪戦争は女の顔をしていない
著者 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 三浦みどり訳
戦場で確かに存在した名もなき女性たちの感情
彼らが語るとき、わたしは耳を傾けている…
彼らが沈黙しているとき、わたしは耳を傾けている…

▪短くて恐ろしいフィルの時代
著者 ジュージ・ソーンダーズ 岸本佐和子訳
独裁者になるきっかけは失恋だった
《他者》とみなしたものを根絶やしにしたがる
人間のエゴにまつわる物語
私たちの中に必ずフィルはいる

▪ひろしま 著者 石内都
写真集 写真だからこそ伝わる戦争
身に着けていた人たちの日常と生を静かによみがえらせる
今、私に出来ることは、眼の前にあるモノ達と
共有している空気にピントを合わせ、その場の時間を
たぐり寄せながらシャッターを押すだけだ。
石内都「在りつづけるモノ達へ」より

■ぎゅっと!四国

初蛍やさしき水と指をもて   家藤正人(小野小学校にて)
杉岡を鵜呑みにせずに大洲まで   すぎう(鵜)か

家藤正人の俳句道場 兼題「紫陽花」(夏の季語)
紫陽花の傍題 四葩(よひら)・七変化・濃(こ)紫陽花など

佳作 弾む足取り紫陽花のお出迎え   すそのあや
紫陽花の青濃し苦土石灰(せっかい)畑に撒く   山根円壱
佳作 見下ろせば紫陽花青きロープウェイ   トーマス阿波
花嫁の髪にあぢさゐ二つ三つ   KAZUピー
添削 花嫁の髪にあぢさゐニ三片(にさんぺん)
秀作 あじさいの影あじさいの葉に落ちて   沢唯果
(一物仕立て)
佳作 過疎なれど通学路には紫陽花を   西之もりはん
義娘(むすめ)よりアジサイコットンキャンディ   松山のおじさん
(季語ではなくなている)
参観日紫陽花柄のスカートで   中井ゆそし
(季語ではなくなっている)
鉢小(ち)さし紫陽花は頭五人分   松井くろ
中七「は」は要らない 七音にした方が良い
走馬灯うすれゆくかな紫陽花忌   マドンナ
(「走馬灯」と「紫陽花忌(俳人、水原秋桜子の忌日。 7月17日」季重なり)
佳作 紫陽花の雨滴くるくる万華鏡   美雨
秀作 紫陽花とカウンセラーの相槌と   坂本梨帆

正人のもったいない
咲き誇る庭燦燦と紫陽花や   松花遊子
詠嘆の「や」を下五に持っていくのは難しい
「敷地内禁煙」の緋と濃紫陽花   ひでやん
傍題を使うと良い 「緋」と「濃」で色の対比もよい

▪ギュッと!特選
接岸は未定紫陽花ぼよんぼよん   板柿せっか
選句ポイントは躍動する季語 接岸は効率効果が良い想像が膨らませ易い

次回の兼題「夏の海」(夏の季語)

■マーケット・アナライズCONNECT より
実質賃金が上がったのは群馬と大分。
賃上げに必要なのは「賃上げ補助金」と
外圧に伴う労働市場の流動化。
群馬の高崎ではコストコが参入時に
自給を1,500円にした事で
周辺企業の時給に変化があったそうです。
同じ事が熊本でも起こっているそうです。

■三島喜美代女史のことを2024年6月23日の
「日曜美術館 アートシーン」で初めて知りました。
6月26日 新聞で彼女が6月19日亡くなられたことを知りました。
6月27日「ねこのめ美じゅつかん」で紹介されていました。
東京の美術館で開催される初の三島の個展開催中だったのに…。
(三島喜美代―未来への記憶 | 展覧会 | 練馬区立美術館)
言葉の化石を造り続けた三島喜美代女史…。
残念でなりません。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

2024年6月28日金曜日

なりそめ 夏井いつきが語る「大人の恋」

石立山をツキノワグマの夏闊歩
見る人の記憶に記録油虫
夏の原子煩悩なるレアの父
夏の雲卵産むだけレアの雌
夏の雨卵育むレアの雄

■超多様性トークショー!なりそめ 夏井いつきが語る「大人の恋」
夏井いつき先生は元々は中学校の国語教師
30代で俳句の世界へ
お相手は8歳年上の兼光さん
長年、CMプロデューサーとして数々のCMを手掛け
でんぷん麺のCMの製作も…。
現在はマネージャーとしてテレビ出演のサポートも熟している。

夏井いつき
たった17音を通してお互いに理解し合おう認め合おう
俳句っていうのは多様性の最先端を100年前からやってきている

兼光さん
夏井は1から100まで俳句 それ以外のことは僕がやりましょう

出会った当時、兼光さんは二度の離婚を経験
夏井さんも離婚後二人の子供を育てていました。

いつき先生
離婚って物凄くエネルギーを必要とする
あんな無駄な負のエネルギーを使うのは二度とやりたくないと思っていた

どうしてCoupleに?
出会い ひとめぼれ 兼光さんが夏井いつき先生の俳句にひとめぼれした
「つながれぬ手は垂れ末黒野(すぐろの)の太陽   夏井いつき」
2004年BS俳句王国

俳句は17音の言葉がすべて 一人一人が違う受け止め方は全部正解
俳句はや陽性が詰まっている感じ 田村淳

兼光さんは月1回(愛媛県)松山でやっている句会に大阪から通った
深入りしたくなかった いつき先生…。

「ある日、出雲からどうやって帰るんですか❓
空いてるから車で迎えに行きましょうか❓」と、兼光さん
「ラッキー、旅費は浮くし時短にもなった。
その時、紳士的でもあった。男の人にドアを開けてもらう
生活していなかったので、一歩進んだ。
ボーイフレンドと会っている空気感?」と、いつき先生

「部屋空いてるけど来る?」いつき先生
御幸ハウスと呼んでいた一軒家があった
酒飲んで句会していた空間があった
そこには私の子ども2人とよそ様の子どもを3人預かっていた
俳句つながりでいろんな子どもたちにも出会う
登校拒否の子たちとがっつり関わっていた
親とちょっと離してあげるだけで冷却期間が生まれる
「部屋空いてるけど来る?」と言ったら来た子が3人いた。
10代後半の子たちだった。

兼光さんは目の前にある現実を受け入れるタイプ。
違和感とか無理をしているということはなかった。
「俳人夏井いつき」と「人間夏井いつき」では
後者と付き合いたくなった
「嫌がってるかもしれないけど、籍入れて結婚しません❓」と兼光さん
「結婚は二度としません」といつき先生
結婚したら何が面倒くさいかをいつき先生が言うと…。
「あなたのために料理はやりたくない」
「あなたのために洗濯時間がもったいない」と言われる度に兼光さんは…。
一つ一つ潰していった。
次、言う事がなくなってくだらないことになっていった。
最後に兼光さん「それ理由になりますか❓」と言われ
「確かに…。」と思ったいつき先生
「100%俳人をやってくれ」「100%肯定する」と言われ…。
めっちゃラッキーと思った。

俳句を作る人に惚れているんだなと言うことが解って来て
「俳人夏井いつき」と「人間夏井いつき」
両方をちゃんとサポートして
能力のある人は100%生かすべき
それ以外のことをする人に僕がなっていいと思うようになった

2006年結婚
大坂と松山という別居婚開始 その期間8年
兼光さんの定年退職をきっかけに松山で新婚生活をスタート
夏井いつきのマネージャーをスタート
その頃からテレビ出演が増えた
いつきさんの負担も極力減らしてくれている
兼光さんなしでは今の状況は考えられない

思わぬ出来事が…。
兼光さんに肺癌が見つかった
しかし、兼光さんが淡々と段どって
自分がいない間のことを全部決めていく

「全てのことは必ずなるようになる それを受け入れるしかない」兼光さん
いつきさんのお子様も淡々と日常を熟していく姿に物凄く救われた
みんなで日常をやろう

「摘出せる肺は蛍の匂ひして   夏井いつき」
さみしい匂いがする 肺のかけらが 蛍の匂いと一緒やな

負の感情の時も俳句は出てくる
負の感情を言葉にすることで客観的に見ることができる
うつの渦の中に入らず自分を保つことができる

人生の杖 俳句が人生の杖になると言っているのだけれど
負の感情に自分を落とさないために俳句が人生の杖になる
そして兼光さんがもう1本の杖になってくれている
結婚を拒んでいた人とは思えない。と田村淳さん

俳句は夏井いつき先生にとっては人生の杖
現在、兼光さんは俳句と同じ位置にいるのは感慨深いと田村淳さん
それを聞いたいつきさん「感動しちゃった」

6年前松山に二人の新居を建てました
料理担当は兼光さん 晩酌は二人にとって大切な時間

意外な一面 勝村政信さん
「先生はお酒大好きなだけで、そんなに強くない
『気持ち良くなってきた』みたいになって
ご飯を食べていると赤ちゃんみたいにこぼす
『どうしてそんなに落ちているんですか』と兼光さん
保護者の兼光さんが『じゃあそろそろ帰りましょうか❓』
子どもですね。」

あまりいつき先生がお皿を割るので、
昔の趣味の「金継ぎ」を始めたとか…。
一生かかってもしきれないくらいの食器があるとか…。

いつき先生の苦手なところを兼光さんが粘土で補強してくれている
どんな形でも成型できるしどんな形とも寄り添えるという意味では
兼光さんは粘土なのかなと…。

多様性とは?
兼光「今ここにいることを大事に 自然に大事にし合う関係が…。」
夏井「認め合うこと 好き嫌いはあるけど オリジナリティを認め合う
   俳句は地球を救う」

2024年6月27日木曜日

あの本、読みました?~今村翔吾が語る司馬遼太郎、池波正太郎、藤沢周平の魅力

知恵島の色とりどりの百合の花
江川沿い百合の花の香惜しげなく
百合の花水辺の香り聞きたくて
五月闇高所得者となりにけり
薄味を病疑う夏の朝

■あの本、読みました?~今村翔吾が語る司馬遼太郎、池波正太郎、藤沢周平の魅力
本と歴史 今村翔吾
今年4月に77歳で亡くなったアメリカの作家 ポール・オースターを追悼
翻訳家・柴田元幸と魅力を語り合う

▪歴史小説は人生のカンニングペーパー
「教養としての歴史小説」今村翔吾 ダイヤモンド社
歴史小説:史実をもとに書かれた小説
時代小説:古い時代の事件や人物を素材とした小説
水戸黄門は時代小説
幕末はわかりにくい
おススメの歴史小説作家は今村翔吾
火喰鳥 羽州ぼろ鳶組 今村翔吾 祥伝社文庫
イクサガミ天 今村翔吾著 講談社文庫
「まずはお配りした木札を首のお掛け下さい。
これを外せば金を得る資格は失します。お気をつけ下さい」
皆が言われたように首に木札を掛ける。
「本日、総勢二百九十二人の方々にお集り頂きました。
皆様にはこれから東京へと向かって頂きます」
槐(えんじ)が諸手を開いて言うと、またどよめきが巻き起こった。
腕の立つものを集め、武器を手に東京へ向かう。
真っ先に頭を過ぎさったのは、愁二郎と同じことを考えて
動揺を露わにする者もいるが、槐は心を見抜くように首を横に振る。
「政府に弓引くという訳ではございません。一つ皆様に
心技体の全てを競うという「遊び」をして頂きたい」

歴史小説家になったきっかけは❓
小学五年生の時、「真田太平記(一)天魔の夏」池波正太郎著 新潮文庫
Debutのきっかけは北方謙三

竜馬がゆく 司馬遼太郎著 文春文庫
燃えよ剣 司馬遼太郎著 新潮文庫
翔ぶが如く 司馬遼太郎 文春文庫

真田太平記 池波正太郎 新潮文庫
鬼平犯科帳 池波正太郎 文春文庫
殺しの四人 池波正太郎 講談社文庫

用心棒日月抄 藤沢周平 新潮文庫
たそがれ清兵衛 藤沢周平 新潮文庫
蝉しぐれ 藤沢周平 文春文庫

伊賀忍法帖 山田風太郎 講談社文庫
それでも、だれひとり、目がはなせなかった。
五メートルばかりはなれてむかいあった
二人の男のあいだに交流するすさまじい殺気の波が、
すべての人びとの視覚中枢に灼きつけられていたからだ。
(注略)
忍法の争いに、実のところ、卑怯という言葉はない。
いかなるハンディキャップもみとめられず、
いかなるトリックも容認される。
忍者の世界に、武門の法は適用できぬ。
そこには、奇襲、暗殺、だまし討ち、それだけに
手段をえらばぬ苛烈無慈悲のたたかいがあがあるのみだ。

マジ ヤバイ ビビる 江戸時代から使われていた
マジ 江戸時代に芸人の楽屋言葉から生まれた「まじめ」の略
ヤバい 江戸時代の射撃場を「矢場」と呼んでおり
    そこで悪事が行われていたことが語源 ヤバい人たちの隠語
ビビる 平安時代(紫式部)から使われていた
    鎧がこすれる音が「ビンビン響く」ことから生まれた言葉

人生の悩みは歴史小説が解決する

林祐輔 番組プロデューサー

楽毅(がっき) 宮城谷昌光 新潮文庫
いまの君主は、人を求めず、利を求め、地を求めている。
武力で奪いとったものを、武力で守ろうとしている。
だが、一城の守将の心をつかめば、やすやすとその城はてにはいり、
一国の君主の心をとれば、おのずとその国はころがりこんでくる。
人心を得るほうが利は大きいのである。

価値観の違いを学べる 歴史小説「楽毅」
中間管理職は読むべし
ある時突然人生を変えてくれるのが「教養」

「海を破る者」今村翔吾著 文藝春秋 最新作

▪追悼 ポール・オースターの人生と魅力
鈴木保奈美×翻訳家 柴田元幸
保奈美さんがド緊張 憧れの人と対面
ポール・オースター 2024年4月 77歳で亡くなられました
九段理江(芥川賞作家)さんも大ファン
「闇の中の男」は芥川賞作品「東京都同情塔」のヒントになった作品

「闇の中の男」ポール・オースター著 柴田元幸訳 新潮社刊
伍長、と男は言って、ブリックの手をがっちり熱っぽく握る。
俺はトーバック軍曹、あんたの上司だ。
みんなサージ軍曹って呼ぶがね。
(中略)
私、ここで何してるんですか❓
とブリックは、募ってくる苦悶を抑えながら訊く。
おいおい、しっかりしろよ。お前戦争やってんだぞ。
なんだと思ったんだ。
(中略)
アメリカはイラクで戦争してるじゃないですか。
誰だって知ってます。
イラクなんかどうだってんだ。
ここはアメリカさ、アメリカがアメリカと戦争してるんだ。
なんの話ですか❓
内戦だよ、フリック。お前、なんにも知らんのか❓もう四年目だぞ。

運命を変えた偶然の出会い
「ガラスの街」ポール・オースター著 柴田元幸著 新潮文庫刊
ほんの何か月かで、自分は別人になってしまったのだ。
かつて自分を思い出そうとしてみたが、うまく行かなかった。
この新しいクインを見て、クインは肩をすくめた。
どうでもいいことだ。かつてはある人物で、
いまは別の人物になった、それだけのことだ。
よくも悪くもなっていない。違っているというだけの話なのだ。

1990年オースターと初対面
普段の生活は❓食べ物に興味がない
オースターの描きたかったもの
物語の中の映画 小説に映画が描かれる「幻影の書」

「幻影の書」ポール・オースター著 柴田元幸著 新潮文庫刊
ある午後、マーティンとクレアは台所で昼食を食べている。
(中略)
電話が鳴る。マーティンが立ち上がって、フレームの外に出たとたん、
カメラはアングルを反転させ、ドリーでクレアに近づいていく。
彼女の表情が、悦びあふれる友愛から心配に変わるのを、
恐怖さえそこに混じっているのを我々は見る。
(中略)
わからないの、マーティン❓と彼女は言う。
一週間一緒にいて、あなたはまだわからないって言うの?
彼がわかってないことは一目瞭然である。
そして見ている我々もやはりわかっていない。
明るく美しいクレアは、いまや一個の謎と化した。

未訳「4321」タイトルが意味するものは❓

2024年6月26日水曜日

あいことば&「楊梅(やまもも)」&前田美波里の言葉

水苔の深まる緑山犬嶽(やまいぬだけ)
苔むさん牙むいたよな巨石群
純白のアナベル凛と熊谷寺(くまだにじ)
髪洗ふ向き合えたなら悩みなし
頁から聞こえくる音夏の夜

■あいことば
オードリー・ヘップバーン女史が、亡くなる数日前に
息子たちに読んで聞かせたという詩です。

『時を越えた美しさの秘密』
"Time Tested Beauty Tips" ―Sam Leveson
魅力的な唇であるためには、美しい言葉を使いなさい。
For attractive lips, speak words of kindness.
愛らしい瞳であるためには、他人の美点を探しなさい。
For lovely eyes, seek out the good in people.
スリムな体であるためには、飢えた人々と食べ物を分かち合いなさい。
For a slim figure, share your food with the hungry.
豊かな髪であるためには、一日に一度子供の指で梳いてもらいなさい。
For beautiful hair, let a child run his fingers through it once a day.
美しい身のこなしのためには、決してひとりで歩むことがないと知ることです。
For poise, walk with the knowledge you'll never walk alone ...
物は壊れれば復元できませんが、人は転べば立ち上がり、失敗すればやり直し、挫折すれば再起し、間違えれば矯正し、
People, even more than things, have to be restored, renewed, revived,
何度でも再出発することができます。
reclaimed and redeemed and redeemed ...
誰も決して見捨ててはいけません。
Never throw out anybody.
人生に迷い、助けて欲しいとき、いつもあなたの手のちょっと先に助けてくれる手がさしのべられていることを、忘れないで下さい。
Remember, if you ever need a helping hand,
you'll find one at the end of your arm.
年をとると、人は自分にふたつの手があることに気づきます。
As you grow older you will discover that you have two hands.
ひとつの手は、自分自身を助けるため、
もうひとつの手は他者を助けるために。
One for helping yourself, the other for helping others.
女性の美しさは 身にまとう服にあるのではなく、
The beauty of a woman is not in the clothes she wears,
その容姿でもなく、髪を梳くしぐさにあるのでもありません。
the figure that she carries, or the way she combs her hair.
女性の美しさは、その人の瞳の奥にあるはずです。
The beauty of a woman must be seen from in her eyes,
そこは心の入り口であり、愛情のやどる場所でもあるからです。
because that is the doorway to her heart,
女性の美しさは、顔のほくろなどに影響されるものではなく、
The beauty of a woman is not in a facial mole,
その本当の美しさは その人の精神に反映されるものなのです。
but true beauty in a woman is reflected in her soul.
それは心のこもった思いやりの気持ちであり、時として見せる情熱であり、
It is the caring that she lovingly gives, the passion that she shows,
その美しさは、年を追うごとに磨かれていくものなのです。
and the beauty of a woman with passing years only grows!

参照:https://www.facebook.com/profile.php?id=100064438849199

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「楊梅(やまもも)」

「楊梅」この漢字を書いて「やまもも」と読みます
勿論この漢字の通り「ようばい」という読み方もあります
かなり背丈の高い木になりましてものによっては
15m以上にも成長するそうです
季節が来ると赤い実を山ほど実を付けて
それがどんどん地面に降ってきてその「楊梅」を拾っては
食べたという記憶のある方も多いのではないでしょうか
かなり黒くなるぐらいまで熟れたものの方が
美味しいらしいですね
生食する以外にもジャムにしたり「楊梅」をお酒に漬けて
「楊梅酒」を作ったりとか色んな利用法があるようです
大人になっても不意に食べたくなるそんな「楊梅」ですね

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん~昭和の大先輩とおかしな2人~#17
昭和の大先輩 前田美波里の言葉
「ポジティブに生きよう」前田美波里



2024年6月25日火曜日

兼題「密豆」&テーマ「いってらっしゃい/いってきます」

線状降水帯を鳴く老鴬
雨音に負けぬ鴬ホーホケキョ
どしゃ降りを嘆く鴬ファルセット
救護法渋沢逝去二カ月後(無季句)
じゃがいもの茎からとまと海陽町

■NHK俳句 兼題「密豆」
選者 高野ムツオ ゲスト 神野紗希 筑紫磐井(つくしばんせい) 
能町(のうまち)みね子 レギュラー 中西アルノ 司会 柴田英嗣
年間テーマ「語ろう!俳句」

「密豆」夏に食べることで涼しさを呼ぶもの

①密豆は儲けうすしや日影町   筑紫磐井
②トラックに密豆が踏みつぶされた   能町みね子
③密豆にマンゴー信教の自由   神野紗希
④密豆やあずま屋に蟻ぞろぞろ   中西アルノ
⑤密豆やまもなく線状降水帯   高野ムツオ

私は⑤が好きでした。

▪特選3席発表 兼題「密豆」
一席 密豆や老母恋しているらしい   橋本美重子(みえこ)
二席 密豆も商店街も消えてゐた   山川公司(こうじ)
三席 冥王星のごとき密豆の黒   入口弘德(ひろのり)

特選
蜜豆や乗るべきだつたあの誘い   田口健
蜜豆の光を崩す笑ひ声   佐藤英子
蜜豆を出してきたって許さない   湯屋ゆうや
蜜豆や都電に揺るる喫茶店   藤雪陽
蜜豆や祖母は記憶の友と食べ   月夜田しー太
凸凹とみつ豆を蜜ゆきわたり   神野志季三江
参照:https://www.nhk.jp/p/ts/6Q6J1ZGX37/blog/bl/pLvva3ZRZL/bp/p0yq3d5eQ0/

高野ムツオ先生の言葉
ひとつの言葉がどれだけ「世界」を持っているか
目の前にあるいろんな言葉でも
その言葉にはルーツや歴史があって
目方によって別物になることが
「密豆」という題材で知ることができた

■NHK短歌 テーマ「いってらっしゃい/いってきます」
選者 枡野浩一 ゲスト 片桐はいり 司会 尾崎世界観
年間テーマ「あなたへの手紙 かなたへの手紙」

気をつけていってらっしゃい行きよりも明るい帰路になりますように
枡野浩一

▪31音の手紙
入選九首 テーマ「いってらっしゃい/いってきます」
二席 「いってきます」「いってらっしゃい」住むことは毎朝別れをくりかえすこと
奥村真帆
「行ってきます」と言いつつゆっくり靴を履く俺も行くよと早く言ってよ
葉月ままこ
保育所を急いで出ようとする私に行ってらっしゃい娘の声が
松浦知惠子
一席 ありがとうわたしの親でいてくれていってらっしゃいまた会いましょう
中森菜穂子
玄関を開けて光を浴びるたび主人公だけ夢とかはない
髙原希美(のぞみ)
三席 喧嘩して「いってきます」が無かった日「無事ついたよ」は知らせてほしい
小田槙哉
あっちにもあるものばかり詰められた母の手提げが腕に食い込む
中山あゆみ
いってらっしゃい言われた頃は言う人の気も知らないで振り向きもせず
田中京子
おめでとういってらっしゃいもう二度と戻って来るな、来てもいいけど
檜澤(ひざわ)さくら

▪改悪添削
その短歌の魅力的なところをわざとダメにすることで
やっぱり元が良かったとみんなに味わって欲しい

玄関を開けて光を浴びるだけ主人公だが夢とかはない
髙原希美
添削(明るいだけの短歌はつまらない暗いだけでもつまらない
   前半は明るいけど後半は冷静さがでるみたいなバランスが大切
   短歌は二面性が描ける アンビバランス両面性みたいな
   いい方をします 矛盾を抱えている表現が魅力的)
玄関を開けて光を浴びるだけ主人公だし夢がいっぱい

▪片桐はいりさんの短歌
この先はどこへも行けるくらがりですいつでもどうぞどこまでもどうぞ
片桐はいり
映画館を表現するとき「暗闇」と言っていたが
「くらがり」とも言えることを知った
違和感は嫌なことではなく希望の光とも言える
「ばかばかしい」「間抜け」は大切。バランスを取りたい。
真面目なんだけど笑みがこぼれるって良い。
枡野違和感 存在感 世界観 いいですね…。
カントリオ!

▪言葉のバトン
愛しぬく想いを継いで歌詞にする
ガールズトーク

野原が花で満ちてくように
コールレイ
凄い言葉がたまってきちゃって それを吐き出さなくちゃならなくなる
自分には言葉しかない そういう人生だったと思います
いまが一番楽しい 子どもも独立して髪も白くなって全てから解放された

2024年6月24日月曜日

100分de名著 宮本常一「忘れられた日本人」(3)無名の人が語りだす

夏の原強き陽射しと対峙せり
サンバイザー日除けとならずうつむかん
夏座敷足投げだして深呼吸
山笑うルソーも笑う緑かな
夏の鉢消えてしまったミニトマト

■100分de名著 宮本常一「忘れられた日本人」(3)無名の人が語りだす
畑中章宏 民族学者
土佐源氏 宮本常一の代表作

私たちが教科書で習う歴史は貴族や武士が文字で記録した話
その一方で庶民が歴史の中に記録されるのは
災害や飢饉の時に死んだ人の数で語られるだけ
小さな歴史

あんたなどこかな?はァ長州か、(中略)
あんたもよっぽど酔狂者じゃ。
乞食の話を聞きに来るとはのう…。(中略)
しかし、わしはあんたのような物好きにあうのははじめてじゃ、
八十にもなってのう、八十じじいの話をききたいというて
やって来る人にあうとは思わだった。
しかしのう、わしは八十年何もしておらん。
人をだますこととおなご(おんな)をかまう事ですぎてしもうた。
わるい、しようもない牛を追うていって、
「この牛はええ牛じゃ」いうておいて来る。
そうしてものの半年もたっていって見ると、
百姓というものはそのわるい牛をちゃんとええ牛にしておる。
そりゃええ百姓ちうもんは神さまのようなもんで、
石ころでも自分の力で金にかえよる。
そういうものから見れば、わしら人間のかすじゃ。
ただ人のものをだまってとらんのがとりえじゃった。
「おかたさまおかたさま、あんたのように牛を大事にする人は
見たことがありません。どだい尻をなめてもええほど
きれいにしておられる」というたら、それこそおかしそうに、
「あんなこといいなさる。どんなにきれいにしても
尻がなめられようか」といいなさる。
「なめますで、なめますで、牛どうしでもなめますで。
すきな女のお尻ならわたしでもなめますで」いうたら
おかたさまはまっかになってあんた向こうをむきなさった。(中略)
牡牛は澄ました後牡牛の尻をなめるので
「それ見なされ…」というと「牛のほうが愛情が深いのか知ら」
といいなさった。
わしはなァ その時はっと気がついた。
「この方はあんまりしあわせではないのだなァ」とのう。
わしはなァ、人はずいぶんだましたが、牛はだまさだった。(中略)
女もおなじで、かまいはしたがだましはしなかった。(中略)
ああ、目の見えぬ三十年は長うもあり、みじこうもあった。
かまうた女のことを思い出してのう。
どの女もみなやさしいええ女じゃった。
土佐源氏

立川志らく師匠の朗読を聞いて感想
(宮本に)心を開いて話し始めてエンジンがかかっていく感じ
落語に通じるものがある(伊集院光氏)
はみ出した人間の語りを生かそうとしている
こういうことはこれまでの民俗学にも歴史書にもなかった(畑中章宏氏)

「土佐源氏」は存在したのか?
「土佐源氏」は実際に検証が行われていて
モデルの人物はいたが一部創作が指摘されている
科学的に検証できないが庶民がそういう体験をしたという
言い伝え自体が重要
ばくろうの人から各地で話を聞いて「
土佐源氏」という1つのキャラクターにした
民俗学の聞き書きの場合脚色して虚構化する語りが認められている
わざわざ訪ねて来てくれた宮本に対してサービスをして
話を盛ったり仲間の体験した話を
自分のことのように話したのかもしれない

伊集院光氏
宮本を前に喋ることがうれしくなったおじいさんが
自分の思い出とごっちゃになっている
色々なものをどんどん提供している
聞く側が奥行きをどう感じるかが大切でそれが全くないと「報告」

なぜ「土佐源氏」を書いた?
ばくろう(移動しながら牛馬を扱う仕事を生業としていた人
不定期にやって来て物を売り芸を披露して
去っていく人々が見過ごされてきた
宮本常一は社会の周縁にいる人々にも社会の構成に含まれている
私たちの一部であることを示そうとした

伊集院光氏
世の中のメインから外れた暮らしをしている人の集合体
「小さな歴史を忘れてもらっちゃ困るんですけど」
「おまえこれを『いない』とは言わせないぞ」

間もなくこの人々の代筆を私がするようになる。
手紙も読んであげねばならぬ。
三十代の人でも字を知らない人がある。(中略)
長屋の人たちは悪い人はいなかった。
しかしみな気が弱く小さかった。
人の邪魔にならぬように精一ぱい生きているのだが、
みな袋小路へ追いつめられて生きているようで
新しい世界をきり拓くことを知らなかった。
私はそうした現実に義憤をおぼえるよりも、ここにまた一つ
世界があり秩序があり、それなりに生きている姿に
いろいろのことを考えさせられたのである。(中略)
そういう人たちを内包して生活している社会が、
政治社会の外側に存在していた。
その人たちの生活を向上させる方法はないものであろうか。
慈善事業としてでなく、自分たちで起(た)ち上って
いくような道はないものかと考えた。
「民俗学の旅」より

周防大島の場合には島民の間で
大きな経済格差や貧富の差はなかった

伊集院光氏
「ただそこで隠れているか」というとそういうこともなくて
一方的に「かわいそうだ 気の毒だ」と思ったわけでもない
慈善事業としてこの人たちを助けるのも違う

攻撃しあったりするのではなく調和や助け合いで維持されている
階層構造を革命的にひっくり返すのではなく相互扶助によって
それぞれの階層が全体に豊かになればいい

小笠原(中略)あんたが、下の田ではたらいているときに、(中略)
今夜は戸をたててはいけんぞ(中略)、というて、表のあかりが
見えるようにしておいた。
金田金 へえ、そうじゃったのかのう。わしはまた、あの家は
いつでも夜おそうまで表にあかりをつけてくれているで、
鍬先が見えるもんだから夜おそうまで仕事ができてありがたかった。
宮本 この座談会でそれが語られるまで、一方はその好意を相手に
つたえておらず、相手の方は夜のおそいうちだと
思いこんでいたという事実である。
村共同体にはこうした目に見えないたすけあいがあるものだと思った。

「名倉談義」の意図
「民衆は常に搾取されて虐げられてきた」
という歴史観が学問の世界を覆っていた
貧しい村でも相互扶助で飢餓のような事態も乗り越えて
今日まで生きながらえてきたという無名の人々の歴史があった

伊集院光氏
貧しい農民は搾取され続けるか
談判や反乱を起こして権利を勝ち取るか
二択ではないという提案を宮本はしている
緩やかな助け合い

ある朝のことでありました。
目がさめて何気なく見ると、
あの家に後光がさしているではありませんか。
わたしはおどろきましてな。それも実は何でもない事で。(中略)
朝日が出て、その光が水のたまった田にあたって、
和さんの家へあたります。あさひが直接にもあたります。(中略)
それがあの家をかがやくように明るうして、中二階のガラス障子が
それこそ金が光るように光ります。(中略)
まァとにかくおどろきましね。
この家はこれからきっとよい事があると思いました。
ここでこうして見ておりますと、言葉一つかわさなくても、
どの家がどういう風か手にとるようにわかります。
そしてみんなの家によい事があると、ほっとするのであります。
何と申しましても村の内が栄えるのが一ばんよい事であります。