フクラガエル泳ぎは苦手土匂ふ
フクラガエル短き足よ土恋し
フクラガエルからだ真ん丸土の春
フクラガエル棲み家水なき土の中
フクラガエルお尻もぞもぞ帰宅せり
■プレバト纏め 2025年1月30日
マックフライポテトで一句
・永世名人富美男のお手本 梅沢富美男
キーを打つ炬燵ポテトは箸で食ぶ
添削(語順が逆 具材におかしみがあるさすが!
炬燵は実感として読み手に伝える ひっくり返した方が得
最後に季語である炬燵を残すことでぬくぬくした所に読者も)
箸で食ぶポテトやキーを打つ炬燵
・特待生昇格試験 蓮見翔
カフェラテとポテトで粘る冬の夜
添削(ささやかな臨場感が欲しい 「で粘る」散文的
ファミレスと書かなくてもファミレスに違いない
短い音数の季語にし臨場感を加える 時間経過とか臨場感が盛れる)
カフェラテとポテトで粘りゐる寒夜
1位 かたせ梨乃
元彼からLINE小春の朝マック
(軽やかに描いた 内容と調べが連動している)
2位 HAN-KUN
口元に君からポテト春隣
添削(季語 春隣:冬も終わりに近づき春の気配がただよう
詩歌で「君」は恋愛の対象 季語が人間関係を匂わす
「に」に動きをつける「へ」にする 曖昧にして恋の気分を高める)
口元へポテト春隣の君と
3位 南條庄助
君待ちてポテトしなしな息白く
添削(俳句は映像 語順が悪く理解できない)
息白く君待つポテトしなしなに
4位 山崎玲奈
塾帰りかじかむ指に油染む
添削(指の油染みは詠まなくても想像できる)
塾帰りのポテト悴みつつつまむ
5位 秋元真夏
母が練る遠足風の冬休み
添削(具体的な映像が浮かんでこない 遠足は春の季語
俳句としての違和感 中七と下五で取り戻す
居間にレジャーシートポテト気分の冬休み
・次回のお題「冬の銀座」
■ギュッと!四国 家藤正人の俳句道場
兼題「寒雀」冬の季語 傍題 「ふくら雀」「冬雀」
ギュッと!特選
落ちるのか飛ぶのか光寒雀 風早杏
特選のポイント ❝躍動❞を切り取る
寒雀丸くふくれて風しのぎ 池田midori
生垣をぴょんぴょこするり寒雀 藤田雅士
秀作 冬すずめ胸に窪めるひとところ 綾竹あんどれ
佳作 寒雀丸し天気予報あたる いち・にっ
寒雀凌ぐ陽だまり土俵入り 河国老末廣
佳作 電線のミとミとファとソ寒雀 ちょうさん
佳作 土佐漆喰酒蔵長き寒雀 十亀
秀作 風のみが巡る野原や寒雀 海神 瑠珂
寒雀筋肉のごと割れた腹 のりのつばさ
雪降りし朝のコーラス寒雀 昇椿
佳作 枯葉散るやうに寒雀は庭へ 柚木 みゆき
秀作 笑えない日の帰り道寒雀 そまり
・正人のもったいない
風と行く 吉野川には 寒雀 天満哲人
五七五の間を空けない
風と行く吉野川には寒雀 天満哲人
秀作 離婚歴二回寒雀も逃げる 伊予吟会 宵嵐
次回の兼題「萵苣(ちしゃ)」春の季語
2025年1月31日金曜日
2025年1月30日木曜日
こころの時代 宮沢賢治 久遠の宇宙に生きる(4)
冬落暉度量の広き人となれ
冬の暮ステッパー音高らかに
為人(ひととなり)知ったところで冬の空
露凍るいつになったら水となる
被布羽織り闊歩する母背を伸ばし
■こころの時代 宮沢賢治
久遠の宇宙に生きる(4)あまねく「いのち」を見つめて
ああとし子
死ぬといふおまごろになつて
わたくしをいつしやうあかるくするために
こんなさつぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
ありがたうわたくしのけなげないもうとよ
わたくしもまつすぐにすすんでいくから
(あめゆじゆとてちてけんじや)
はげしいはげしい熱やあえぎのあひだから
おまへはわたくしにたのんだのだ
銀河や太陽、気圏などとよばれたせかいの
そらからおちた雪のさいごのひとわんを
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが天上のアイスクリームになつて
おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ
宮沢賢治「永訣の朝」
私もあと一年になりましたので
益々心をしめて勉強したいと思ひます。
あたりの人たちを見るといろいろ自分で
新しがったり、利己主義を構へたり
さまざまで御座います。
私は人の真似ハせず、出来る丈け
大きい強い正しい者になりたいと思ひます。
御父様や兄様のなさる事に
何かお役に立つやうに、
そして生まれた甲斐の一番あるやうに
もとめて行きたいと存じて居ります。
宮沢トシ「母への手紙」1918年
化他行 他のためにすること 利他
賢さんについて、私も下駄をはいて
台所口から庭に出ました。
ビチョビチョと降る雨雪にぬれる兄に
傘をさしかけながら、そこに並べてある
みかげの土台石にのって緑の松の葉に
積もった雨雪を両手で大事にとるのを
茶碗に受けて、そして松の小枝を折って、
病室に入りました。
賢治兄さんは何か言いながら
採ってきた松を枕元に飾り、
お茶碗の雪を少しづつさじですくって
食べさせてあげていましたっけ。
父がお医者さまとお話しして来られたのか、
静かにかやの中へ入ってから
脈を調べながら泣きたいのをこらえた顔で、
「病気ばかりしてずい分苦しかったナ。
人だなんてこんなに苦しいことばかり
いっぱいでひどい所だ。
今度は人になんか生まれないで、
いいところに生まれてくれよナ」
と言いました。
としさんは少しほほえんで、
「生まれてくるっ立って、こったに
自分のことばかり苦しまないように
生まれてくる」と
甘えたように言いました。
宮沢シゲ「姉の死」
蒼鉛(さうえん)いろの暗い雲から
みぞれはびちよびちよ沈んでくる
ああとし子
死ぬといふいまごろになつて
わたくしをいつしやうあかるくするために
こんなさつぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
ありがたうわたくしのけなげないもうとよ
わたくしもまつすぐにすすんでいくから
(あめゆじゆとてちてけんじや)
はげしいはげしい熱やあえぎのあひだから
おまへはわたくしにたのんだのだ
銀河や太陽、気圏などとよばれたせかいの
そらからおちた雪のさいごのひとわんを…
…ふたきれのみかげせきざいに
みぞれはさびしくたまつてゐる
わたくしはそのうへにあぶなくたち
雪と水とのまつしろな二相系(にさうけい)をたもち
すきとほるつめたい雫にみちた
このつややかな松のえだから
わたくしのやさしいいもうとの
さいごのたべものをもらつていかう
わたしたちがいつしよにそだつてきたあひだ
みなれたちやわんのこの藍のもやうにも
もうけふおまへはわかれてしまふ
(Ora Orade Shitori egumo)
ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ
あぁあのとざされた病室の
くらいびやうぶやかやのなかに
やさしくあをじろく燃えてゐる
わたくしのけなげないもうとよ
この雪はどこをえらばうにも
あんまりどこもまつしろなのだ
あんなおそろしいみだれたそらから
このうつくしい雪がきたのだ
うまれでくるたて
こんどはこたにわりやのごとばかりで
くるしまなあよにうまれてくる)
おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが天上のアイスクリームになつて
おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ
宮沢賢治「永訣の朝」
さつきみぞれをとってきた
あのきれいな松のえだだよ
おお おまえはまるでとびつくやうに
そのみどりの葉にあつい頬をあてる
そんな植物性の青い針のなかに
はげしく頬を刺させることは
むさぼるやうにさへすることは
どんなにわたくしたちをおどろかすことか
そんなにまでもおまへは林へ行きたかつたのだ
おまへがあんなにねつに燃され
あせやいたみでもだえてゐるとき
わたくしは日のてるとこでたのしくはたらいたり
ほかのひとのことをかんがへながら森をあるいてゐた
《ああいい さつぱりした
まるで林のながさ来たよだ》
鳥のやうに栗鼠(りす)のやうに
おまへは林をしたつてゐた
どんなにわたくしがうらやましかつたらう
ああけふのうちにとほくへさらうとするいもうとよ
ほんたうにおまへはひとりでいかうとするか
わたくしにいつしよに行けとたのんでくれ
泣いてわたくしにさう言つてくれ
おまへの頬の けれども
なんといふけふのうつくしさよ
わたくしは緑のかやのうへにも
この新鮮な松のえだをおかう
いまに雫もおちるだらうし
そら
さわやかな
terpentine(ターペンテイン)の匂もするだらう
宮沢賢治「松の針」
人は生まれて死するならいとは
智者も上下一同に知りて候へば
始めてなげくべしをどろくべしとわ
をぼへぬよし
我も存じ人にもをしへ候へども
時にあたりて ゆめかまぼろしか
いまだわきまえがたく候
日蓮聖人御遺文 「上野殿御家尼御前御書」
つぼめる花の風にしぼみ
滿つる月のにわかに失たるがごとくこそ
をぼすらめ まこととともをぼへ候はねば
かきつくるそらもをぼへ候はず
若有聞法者無一不成佛と申して
大地はささば はづるとも
日月は地に堕ち給うとも
しをはみちひぬ世はありとも
花は夏にならずとも
南無幇蓮華経と申す女人のをもう子を
あわずという事はなしととかれて候ぞ
わたくしが樺太のひとのない海岸を
ひとり歩いたり疲れて睡つたりしてゐるとき
とし子はあの青いところのはてにゐて
なにをしてゐるのかわからない
(ナモサダルマプフンダリカサスートラ)
五匹のちいさないそしぎが
海の巻いてくるときは
よちよちとはせて遁げ
(ナモサダルマプフンダリカサスートラ)
浪がたひらにひくときは
その砂の鏡のうへを
よちよちとはせてでる
宮沢賢治「オホーツク挽歌」
かんがへださなければならないことは
どうしてもかんがへださなければならない
とし子はみんなが死ぬとなづける
そのやりかたを通つて行き
それからさきどこへ行つたかわからない
それはおれたちの空間の方向ではかられない
感ぜられない方向を感じやうとするときは
たれだつてみんなぐるぐるする
にはかに呼吸がとまり脈がうたなくなり
それからわたくしがはしつて行つたとき
あのきれいな眼が
なにかを索めるやうに空しくうごいてゐた
それはもうわたくしたちの空間を二度と見なかつた
それからあとであいつはなにを感じたらう
それはまだおれたちの世界の幻視をみ
おれたちのせかいの幻聴をきいたらう
わたくしがその耳もとで
遠いところから声をとつてきて
そらや愛やりんごや風 すべての勢力のたのしい根源
万象同帰のそのいみじい生物の名を
ちからいつぱいちからいつぱい叫んだとき
あいつは二へんうなづくやうに息をした
白い尖つたあごや頬がゆすれて
ちひさいときよくおどけたときにしたやうな
あんな偶然な顔つきにみえた
けれどもたしかにうなづいた
夜があけて海岸へかかるなら
そして波がきらきら光るなら
なにもかもみんないいかもしれない
けれどもとし子の死んだことならば
いまわたくしがそれを夢でないと考へて
あたらしくぎくつとしなければならないほどの
あんまりひどいげんじつなのだ
あいつはどこへ堕ちやうと
もう無上道に属してゐる
力にみちてそこを進むものは
どの空間にでも勇んでとびこんで行くのだ
もうぢきよるはあけるのに
すべてあるがごとくにあり
かゞやくごとくにかがやくもの
おまへの武器やあらゆるものは
おまへにくらくおそろしく
まことはたのしくあかるいのだ
《みんなむかしからのきやうだいなのだがら
けつしてひとりをいのつてはいけない》
ああ わたくしはけつしてさうしませんでした
あいつがなくなつてからあとのよるひる
わたくしはただの一どたりと
あいつだけがいいとこに行けばいいと
さういのりはしなかつたとおもひます
宮沢賢治「青森挽歌」
親鸞は父母の孝養のためとて
一辺にても念仏まうしたること
いまださふらはず
そのゆえは 一切の有情はみなもて
世々生々の父母兄弟なり
いづれいづれも
この順次生に仏になりて
たすけさふらふべきなり
兜率の天の食に変わって
兜率天曼陀羅図(とそつてんまんだらず)
おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが兜率の天の食に変わって
やがては おまえとみんなとに
聖い資糧をもたらすことを
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ
宮沢賢治「永訣の朝」
来春はわたくしも教師をやめて
本統の百姓になって働らきます
苗代や草の生ゐた堰の
うすら濁つたあたたかな
たくさんの微生物の楽しく流れる
そんな水に足をひたしたり
腕をひたして水口を繕ったりすることを
ねがひます
花巻というところに 安らけき仏の世界
浄土というものが考えられないだろうかと
自分の行動を通して
こころと体をそこへ投げ出して
賢治の模索が
また新たな形で出発をしていく
激しい激しい 文筆活動は
激しい激しい 彼の身を粉にした働きへと
展開していくような そんな気が…。
北川前肇先生
冬の暮ステッパー音高らかに
為人(ひととなり)知ったところで冬の空
露凍るいつになったら水となる
被布羽織り闊歩する母背を伸ばし
■こころの時代 宮沢賢治
久遠の宇宙に生きる(4)あまねく「いのち」を見つめて
ああとし子
死ぬといふおまごろになつて
わたくしをいつしやうあかるくするために
こんなさつぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
ありがたうわたくしのけなげないもうとよ
わたくしもまつすぐにすすんでいくから
(あめゆじゆとてちてけんじや)
はげしいはげしい熱やあえぎのあひだから
おまへはわたくしにたのんだのだ
銀河や太陽、気圏などとよばれたせかいの
そらからおちた雪のさいごのひとわんを
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが天上のアイスクリームになつて
おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ
宮沢賢治「永訣の朝」
私もあと一年になりましたので
益々心をしめて勉強したいと思ひます。
あたりの人たちを見るといろいろ自分で
新しがったり、利己主義を構へたり
さまざまで御座います。
私は人の真似ハせず、出来る丈け
大きい強い正しい者になりたいと思ひます。
御父様や兄様のなさる事に
何かお役に立つやうに、
そして生まれた甲斐の一番あるやうに
もとめて行きたいと存じて居ります。
宮沢トシ「母への手紙」1918年
化他行 他のためにすること 利他
賢さんについて、私も下駄をはいて
台所口から庭に出ました。
ビチョビチョと降る雨雪にぬれる兄に
傘をさしかけながら、そこに並べてある
みかげの土台石にのって緑の松の葉に
積もった雨雪を両手で大事にとるのを
茶碗に受けて、そして松の小枝を折って、
病室に入りました。
賢治兄さんは何か言いながら
採ってきた松を枕元に飾り、
お茶碗の雪を少しづつさじですくって
食べさせてあげていましたっけ。
父がお医者さまとお話しして来られたのか、
静かにかやの中へ入ってから
脈を調べながら泣きたいのをこらえた顔で、
「病気ばかりしてずい分苦しかったナ。
人だなんてこんなに苦しいことばかり
いっぱいでひどい所だ。
今度は人になんか生まれないで、
いいところに生まれてくれよナ」
と言いました。
としさんは少しほほえんで、
「生まれてくるっ立って、こったに
自分のことばかり苦しまないように
生まれてくる」と
甘えたように言いました。
宮沢シゲ「姉の死」
蒼鉛(さうえん)いろの暗い雲から
みぞれはびちよびちよ沈んでくる
ああとし子
死ぬといふいまごろになつて
わたくしをいつしやうあかるくするために
こんなさつぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
ありがたうわたくしのけなげないもうとよ
わたくしもまつすぐにすすんでいくから
(あめゆじゆとてちてけんじや)
はげしいはげしい熱やあえぎのあひだから
おまへはわたくしにたのんだのだ
銀河や太陽、気圏などとよばれたせかいの
そらからおちた雪のさいごのひとわんを…
…ふたきれのみかげせきざいに
みぞれはさびしくたまつてゐる
わたくしはそのうへにあぶなくたち
雪と水とのまつしろな二相系(にさうけい)をたもち
すきとほるつめたい雫にみちた
このつややかな松のえだから
わたくしのやさしいいもうとの
さいごのたべものをもらつていかう
わたしたちがいつしよにそだつてきたあひだ
みなれたちやわんのこの藍のもやうにも
もうけふおまへはわかれてしまふ
(Ora Orade Shitori egumo)
ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ
あぁあのとざされた病室の
くらいびやうぶやかやのなかに
やさしくあをじろく燃えてゐる
わたくしのけなげないもうとよ
この雪はどこをえらばうにも
あんまりどこもまつしろなのだ
あんなおそろしいみだれたそらから
このうつくしい雪がきたのだ
うまれでくるたて
こんどはこたにわりやのごとばかりで
くるしまなあよにうまれてくる)
おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが天上のアイスクリームになつて
おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ
宮沢賢治「永訣の朝」
さつきみぞれをとってきた
あのきれいな松のえだだよ
おお おまえはまるでとびつくやうに
そのみどりの葉にあつい頬をあてる
そんな植物性の青い針のなかに
はげしく頬を刺させることは
むさぼるやうにさへすることは
どんなにわたくしたちをおどろかすことか
そんなにまでもおまへは林へ行きたかつたのだ
おまへがあんなにねつに燃され
あせやいたみでもだえてゐるとき
わたくしは日のてるとこでたのしくはたらいたり
ほかのひとのことをかんがへながら森をあるいてゐた
《ああいい さつぱりした
まるで林のながさ来たよだ》
鳥のやうに栗鼠(りす)のやうに
おまへは林をしたつてゐた
どんなにわたくしがうらやましかつたらう
ああけふのうちにとほくへさらうとするいもうとよ
ほんたうにおまへはひとりでいかうとするか
わたくしにいつしよに行けとたのんでくれ
泣いてわたくしにさう言つてくれ
おまへの頬の けれども
なんといふけふのうつくしさよ
わたくしは緑のかやのうへにも
この新鮮な松のえだをおかう
いまに雫もおちるだらうし
そら
さわやかな
terpentine(ターペンテイン)の匂もするだらう
宮沢賢治「松の針」
人は生まれて死するならいとは
智者も上下一同に知りて候へば
始めてなげくべしをどろくべしとわ
をぼへぬよし
我も存じ人にもをしへ候へども
時にあたりて ゆめかまぼろしか
いまだわきまえがたく候
日蓮聖人御遺文 「上野殿御家尼御前御書」
つぼめる花の風にしぼみ
滿つる月のにわかに失たるがごとくこそ
をぼすらめ まこととともをぼへ候はねば
かきつくるそらもをぼへ候はず
若有聞法者無一不成佛と申して
大地はささば はづるとも
日月は地に堕ち給うとも
しをはみちひぬ世はありとも
花は夏にならずとも
南無幇蓮華経と申す女人のをもう子を
あわずという事はなしととかれて候ぞ
わたくしが樺太のひとのない海岸を
ひとり歩いたり疲れて睡つたりしてゐるとき
とし子はあの青いところのはてにゐて
なにをしてゐるのかわからない
(ナモサダルマプフンダリカサスートラ)
五匹のちいさないそしぎが
海の巻いてくるときは
よちよちとはせて遁げ
(ナモサダルマプフンダリカサスートラ)
浪がたひらにひくときは
その砂の鏡のうへを
よちよちとはせてでる
宮沢賢治「オホーツク挽歌」
かんがへださなければならないことは
どうしてもかんがへださなければならない
とし子はみんなが死ぬとなづける
そのやりかたを通つて行き
それからさきどこへ行つたかわからない
それはおれたちの空間の方向ではかられない
感ぜられない方向を感じやうとするときは
たれだつてみんなぐるぐるする
にはかに呼吸がとまり脈がうたなくなり
それからわたくしがはしつて行つたとき
あのきれいな眼が
なにかを索めるやうに空しくうごいてゐた
それはもうわたくしたちの空間を二度と見なかつた
それからあとであいつはなにを感じたらう
それはまだおれたちの世界の幻視をみ
おれたちのせかいの幻聴をきいたらう
わたくしがその耳もとで
遠いところから声をとつてきて
そらや愛やりんごや風 すべての勢力のたのしい根源
万象同帰のそのいみじい生物の名を
ちからいつぱいちからいつぱい叫んだとき
あいつは二へんうなづくやうに息をした
白い尖つたあごや頬がゆすれて
ちひさいときよくおどけたときにしたやうな
あんな偶然な顔つきにみえた
けれどもたしかにうなづいた
夜があけて海岸へかかるなら
そして波がきらきら光るなら
なにもかもみんないいかもしれない
けれどもとし子の死んだことならば
いまわたくしがそれを夢でないと考へて
あたらしくぎくつとしなければならないほどの
あんまりひどいげんじつなのだ
あいつはどこへ堕ちやうと
もう無上道に属してゐる
力にみちてそこを進むものは
どの空間にでも勇んでとびこんで行くのだ
もうぢきよるはあけるのに
すべてあるがごとくにあり
かゞやくごとくにかがやくもの
おまへの武器やあらゆるものは
おまへにくらくおそろしく
まことはたのしくあかるいのだ
《みんなむかしからのきやうだいなのだがら
けつしてひとりをいのつてはいけない》
ああ わたくしはけつしてさうしませんでした
あいつがなくなつてからあとのよるひる
わたくしはただの一どたりと
あいつだけがいいとこに行けばいいと
さういのりはしなかつたとおもひます
宮沢賢治「青森挽歌」
親鸞は父母の孝養のためとて
一辺にても念仏まうしたること
いまださふらはず
そのゆえは 一切の有情はみなもて
世々生々の父母兄弟なり
いづれいづれも
この順次生に仏になりて
たすけさふらふべきなり
兜率の天の食に変わって
兜率天曼陀羅図(とそつてんまんだらず)
おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが兜率の天の食に変わって
やがては おまえとみんなとに
聖い資糧をもたらすことを
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ
宮沢賢治「永訣の朝」
来春はわたくしも教師をやめて
本統の百姓になって働らきます
苗代や草の生ゐた堰の
うすら濁つたあたたかな
たくさんの微生物の楽しく流れる
そんな水に足をひたしたり
腕をひたして水口を繕ったりすることを
ねがひます
花巻というところに 安らけき仏の世界
浄土というものが考えられないだろうかと
自分の行動を通して
こころと体をそこへ投げ出して
賢治の模索が
また新たな形で出発をしていく
激しい激しい 文筆活動は
激しい激しい 彼の身を粉にした働きへと
展開していくような そんな気が…。
北川前肇先生
2025年1月29日水曜日
あの本、読みました?辻村深月スペシャル
違和感を譜面に残す冬の靄(もや)
冬霞(かすみ)記憶辿りて音刻む
冬の月人には見せぬ柔と剛
(フォリント・コルナ)寒昴小さき元本高金利
中国(経済)が解かる搾菜(ざーさい)冬ざるる
■あの本、読みました?
「傲慢と善良」「かがみの孤城」…今夜は辻村深月スペシャル
冬の月人には見せぬ柔と剛
(フォリント・コルナ)寒昴小さき元本高金利
中国(経済)が解かる搾菜(ざーさい)冬ざるる
■あの本、読みました?
「傲慢と善良」「かがみの孤城」…今夜は辻村深月スペシャル
鈴木保奈美 山本倖千恵 林祐輔P
幅広いジャンルを描く発想とは?
ポジショニングマップ 辻村深月と一緒に改訂!
ドラえもんは私の独断で闇には落とせない
「青い壷」の一文 有吉佐和子著/文春文庫
釜の中にはデパートの注文を受けて作った型物の壷八十点がある。
だが、この日、省造がいつもより緊張しているのは
久しぶりに精力をこめて製作した一点物の壷が、
同じ釜の中に三個入っているからである。
(中略)
省三は、まっ先に中央の円筒型の壷を抱き上げた。
胸がすぐ温かくなった。釜から一番遠い机の上に運んだ。
釉の色が青く透き通っている。省三は、釉変が出ていないか、
一個所でも色に濃淡が現れていないか、息を止めて探した。
辻村深月の描く 青春と不思議な力
あの本、読みました?出演のきっかけは…
名作の特徴がわかる 辻村作品ポジショニングマップ
ホラー作家・背筋が凍る「傲慢と善良」
未公開映像
「傲慢と善良」の一文 辻村深月著/朝日文庫
畳みかけるようにして、美奈子が言う。「じゃあさ、今、何パーセントくらい
結婚したいの❓架(かける)」「え?」
「あの子と結婚したい気持ち、今、何パーセント?」
「―七十パーセントくらいかな」架がそう答えた瞬間だった。
美奈子の顔に意地の悪い笑みは浮かぶ。「ひどいなぁ」と彼女が言った。
婚活の闇「傲慢と善良」
「高慢と偏見」ジェイソン・オースティン著 大島一彦訳/中公文庫
1800年代イギリスの片田舎が舞台 女性の結婚事情と
誤解と偏見から起こる恋のすれ違いを描いた恋愛小説
「冷たい校舎の時は止まる」辻村深月著/講談社文庫
ある雪の日 校舎に閉じ込められた8人の高校生
誰も登校しない時が止まった校舎の中で不可解な謎を追う青春小説
青春を舞台に描く理由
忘れ物をした気持ちを確かめに行くような気分
今年映画化「この夏の星を見る」感動の青春小説
「この夏の星を見る」の一文 辻村深月著/KADOKAWA
「来週、よろしくお願いします。」綿引が言った。改めて、画面に向き直る。
「十二月九日、大きいズレなく、十八時前―予定だと、
十七時五十二分頃からISSが観測できそうです。
市野先生、参加校、結局どのくらいになりましたか」
「五十二校です。沖縄から北海道まで、全都道府県というわけにはいきませんが、
日本の南から北まで、参加してくれる学校があります」
森村と才津が息を吞むのが聞こえた。「すごいな…」「おっ、そんなにか」
その声を満足そうに聞いて、市野が笑う。
(中略)
皆が頷き合う。それを見て、綿引が言う。
「―失われたって言葉を遣うのがね、私はずっと抵抗があったんです。
特に、子どもたちに対して」
(中略)
実際に失われたものはあったろうし、奪われたものもある。それはわかる。
だけど、彼らの時間がまるごと何もなかったかのように言われるのは心外です。
子どもだって大人だって、この一年は一度しかない。
きちんと、そこに時間も経験もありました」
(中略)
「見せてやりましょう」森村の声がした。
「きちんと、君らが考えたおかげで出来たんだってとこを、
あの子たちに、僕も見せてやりたいです」
「ええ、お願いします」綿引の声に、皆が頷く。
できたばかりのナスミス式望遠鏡を、視界に捉える。
その途端、ありがとう、という強い思いがこみ上げた。
本屋大賞「かがみの孤城」執筆秘話
「かがみの孤城」の一文 辻村深月著/ポプラ文庫
一瞬のうちに頭の中でいろんなことを考えて、言葉の先を失っても、
もうひと押し喜多嶋先生に尋ねられたら、こころは言ってしまったかもしれない。
「学校で何かあったの?行けない理由があるんじゃないの?」と、
喜多嶋先生から次の一言で聞いてもらえることを、
こころはきっと心の中で期待していた。それこそ、待ちわびるように。
しかし、喜多嶋先生が口にしたのは全然、違うことだった。
「だって、こころちゃんは毎日闘ってるでしょう?」
こころは声もなく、息を吸い込んだ。
喜多嶋先生の顔は、何か特別に微笑んでいたり、同情を浮かべていたり、というー
こころが思う、“いい大人”の大袈裟な感じがまるでなかった。
闘ってるー、という言葉を、どういう意味で喜多嶋先生がつかったのか、
わからなかった。けれど、聞いた瞬間に、胸の一番柔らかい部分が熱く、
締め付けられるようになる。苦しいからじゃない。嬉しいからだ。
死者と一度だけ会える「ツナグ」
「ツナグ」親友の心得の一文 辻村深月著/新潮文庫
「―『道は凍ってなかったよ』って伝えて欲しいって」
「ぼくのメジャースプーン」の一文 辻村深月著/講談社文庫
「それでも、ぼくには力があって、何かができるんです。
できるのに、それをしなかったら、絶対に後悔する」
「なるほど。そこにせっかく銃があるのに、
撃たなければ勿体ないというわけですね。
(中略)
「嫌いな考え方ではありません。では実際、彼に対してどんな罰を
与えることがふさわしいと思いますか。さっき、執行猶予だけでは
不満だという話が出ましたが、刑務所で過ごす刑期を設定するのがいいですか。
あなたが何年か期間を決めて、その間の自由を彼から奪う」先生が静かに微笑む。
「うさぎの命を人間と同じように数えるなら、大量虐殺だから無期懲役ですか。
それともうさぎ何匹分を一人、というように単位の決まりを作って
考えるのがいいですか。実際には、うさぎは何匹殺されようと
人間一人分の命には及ばない。そこを考え直しますか」
「―先生は、無期懲役にして自由を奪ったら、あの犯人が反省すると思いますか」
「反省させたいんですか」
「二度と同じことをして欲しくないし、自分がやったことが
どれだけひどいことだったのかを、しっかりわかって欲しいんです」
倫理と罰「ぼくのメジャースプーン」
「イノセント・デイズ」の一文 早見和真著/新潮文庫
「あの先生。私は先に失礼しますね」丹下健生の目の前にようやく色が伴った。
見上げた先に、長年勤めてもらっている助産婦師が立っている。
(中略)
頼りなさそうに微笑んだ彼女にうなずきかけて、
丹下は読んでいた新聞に視線を戻した。
瞬きすることも忘れ、視界がかすむのを自覚しても、
〈田中幸乃〉という文字から目が離せない。
春先からしきりに報じられていた放火殺人事件の被告人だ。
小説家・辻村深月 誕生秘話
「ドラえもん」の大ファン 知られざる絆
辻村深月女史の大ファンになってしまいました。
凄過ぎます。言葉の選び方、思考経路に魅了されてしまいました。
読みたい本が次々紹介されるので、遅読な自分自身が情けなくて…。
もっともっと読みたいのに…。
幅広いジャンルを描く発想とは?
ポジショニングマップ 辻村深月と一緒に改訂!
ドラえもんは私の独断で闇には落とせない
「青い壷」の一文 有吉佐和子著/文春文庫
釜の中にはデパートの注文を受けて作った型物の壷八十点がある。
だが、この日、省造がいつもより緊張しているのは
久しぶりに精力をこめて製作した一点物の壷が、
同じ釜の中に三個入っているからである。
(中略)
省三は、まっ先に中央の円筒型の壷を抱き上げた。
胸がすぐ温かくなった。釜から一番遠い机の上に運んだ。
釉の色が青く透き通っている。省三は、釉変が出ていないか、
一個所でも色に濃淡が現れていないか、息を止めて探した。
辻村深月の描く 青春と不思議な力
あの本、読みました?出演のきっかけは…
名作の特徴がわかる 辻村作品ポジショニングマップ
ホラー作家・背筋が凍る「傲慢と善良」
未公開映像
「傲慢と善良」の一文 辻村深月著/朝日文庫
畳みかけるようにして、美奈子が言う。「じゃあさ、今、何パーセントくらい
結婚したいの❓架(かける)」「え?」
「あの子と結婚したい気持ち、今、何パーセント?」
「―七十パーセントくらいかな」架がそう答えた瞬間だった。
美奈子の顔に意地の悪い笑みは浮かぶ。「ひどいなぁ」と彼女が言った。
婚活の闇「傲慢と善良」
「高慢と偏見」ジェイソン・オースティン著 大島一彦訳/中公文庫
1800年代イギリスの片田舎が舞台 女性の結婚事情と
誤解と偏見から起こる恋のすれ違いを描いた恋愛小説
「冷たい校舎の時は止まる」辻村深月著/講談社文庫
ある雪の日 校舎に閉じ込められた8人の高校生
誰も登校しない時が止まった校舎の中で不可解な謎を追う青春小説
青春を舞台に描く理由
忘れ物をした気持ちを確かめに行くような気分
今年映画化「この夏の星を見る」感動の青春小説
「この夏の星を見る」の一文 辻村深月著/KADOKAWA
「来週、よろしくお願いします。」綿引が言った。改めて、画面に向き直る。
「十二月九日、大きいズレなく、十八時前―予定だと、
十七時五十二分頃からISSが観測できそうです。
市野先生、参加校、結局どのくらいになりましたか」
「五十二校です。沖縄から北海道まで、全都道府県というわけにはいきませんが、
日本の南から北まで、参加してくれる学校があります」
森村と才津が息を吞むのが聞こえた。「すごいな…」「おっ、そんなにか」
その声を満足そうに聞いて、市野が笑う。
(中略)
皆が頷き合う。それを見て、綿引が言う。
「―失われたって言葉を遣うのがね、私はずっと抵抗があったんです。
特に、子どもたちに対して」
(中略)
実際に失われたものはあったろうし、奪われたものもある。それはわかる。
だけど、彼らの時間がまるごと何もなかったかのように言われるのは心外です。
子どもだって大人だって、この一年は一度しかない。
きちんと、そこに時間も経験もありました」
(中略)
「見せてやりましょう」森村の声がした。
「きちんと、君らが考えたおかげで出来たんだってとこを、
あの子たちに、僕も見せてやりたいです」
「ええ、お願いします」綿引の声に、皆が頷く。
できたばかりのナスミス式望遠鏡を、視界に捉える。
その途端、ありがとう、という強い思いがこみ上げた。
本屋大賞「かがみの孤城」執筆秘話
「かがみの孤城」の一文 辻村深月著/ポプラ文庫
一瞬のうちに頭の中でいろんなことを考えて、言葉の先を失っても、
もうひと押し喜多嶋先生に尋ねられたら、こころは言ってしまったかもしれない。
「学校で何かあったの?行けない理由があるんじゃないの?」と、
喜多嶋先生から次の一言で聞いてもらえることを、
こころはきっと心の中で期待していた。それこそ、待ちわびるように。
しかし、喜多嶋先生が口にしたのは全然、違うことだった。
「だって、こころちゃんは毎日闘ってるでしょう?」
こころは声もなく、息を吸い込んだ。
喜多嶋先生の顔は、何か特別に微笑んでいたり、同情を浮かべていたり、というー
こころが思う、“いい大人”の大袈裟な感じがまるでなかった。
闘ってるー、という言葉を、どういう意味で喜多嶋先生がつかったのか、
わからなかった。けれど、聞いた瞬間に、胸の一番柔らかい部分が熱く、
締め付けられるようになる。苦しいからじゃない。嬉しいからだ。
死者と一度だけ会える「ツナグ」
「ツナグ」親友の心得の一文 辻村深月著/新潮文庫
「―『道は凍ってなかったよ』って伝えて欲しいって」
「ぼくのメジャースプーン」の一文 辻村深月著/講談社文庫
「それでも、ぼくには力があって、何かができるんです。
できるのに、それをしなかったら、絶対に後悔する」
「なるほど。そこにせっかく銃があるのに、
撃たなければ勿体ないというわけですね。
(中略)
「嫌いな考え方ではありません。では実際、彼に対してどんな罰を
与えることがふさわしいと思いますか。さっき、執行猶予だけでは
不満だという話が出ましたが、刑務所で過ごす刑期を設定するのがいいですか。
あなたが何年か期間を決めて、その間の自由を彼から奪う」先生が静かに微笑む。
「うさぎの命を人間と同じように数えるなら、大量虐殺だから無期懲役ですか。
それともうさぎ何匹分を一人、というように単位の決まりを作って
考えるのがいいですか。実際には、うさぎは何匹殺されようと
人間一人分の命には及ばない。そこを考え直しますか」
「―先生は、無期懲役にして自由を奪ったら、あの犯人が反省すると思いますか」
「反省させたいんですか」
「二度と同じことをして欲しくないし、自分がやったことが
どれだけひどいことだったのかを、しっかりわかって欲しいんです」
倫理と罰「ぼくのメジャースプーン」
「イノセント・デイズ」の一文 早見和真著/新潮文庫
「あの先生。私は先に失礼しますね」丹下健生の目の前にようやく色が伴った。
見上げた先に、長年勤めてもらっている助産婦師が立っている。
(中略)
頼りなさそうに微笑んだ彼女にうなずきかけて、
丹下は読んでいた新聞に視線を戻した。
瞬きすることも忘れ、視界がかすむのを自覚しても、
〈田中幸乃〉という文字から目が離せない。
春先からしきりに報じられていた放火殺人事件の被告人だ。
小説家・辻村深月 誕生秘話
「ドラえもん」の大ファン 知られざる絆
辻村深月女史の大ファンになってしまいました。
凄過ぎます。言葉の選び方、思考経路に魅了されてしまいました。
読みたい本が次々紹介されるので、遅読な自分自身が情けなくて…。
もっともっと読みたいのに…。
2025年1月28日火曜日
兼題「コーヒー」&テーマ「おはよう/おやすみ」
冬ざるる官能的な肌晒し
ヒマラヤザクラをメジロ戯むる渋野町(無季句)
切なさと狂気の狭間冬の鳥
数千年を生くるバオバブ冬銀河
要塞の立ち並ぶ街冬の夜
■NHK俳句 兼題「コーヒー」
選者 高野ムツオ ゲスト 小坂大魔王 若林哲哉 土肥あき子
レギュラー 中西アルノ 司会 柴田英嗣
年間テーマ「語ろう!俳句」
1 雪原のコーヒーに立つ太き湯気 土肥あき子
2 恋コーヒー苦み多きや年忘れ 小坂大魔王
3 珈琲やなんにもうまくいかない日 中西アルノ
4 缶コーヒーごくごく冬銀河がぶがぶ 高野ムツオ
5 吾に珈琲君に煙草があり霧氷 若林哲哉
・特選三席発表 兼題「コーヒー」
一席 コーヒーや大根提(さ)げて来た友と 礒村万波(いそむらまなみ)
二席 防護服脱いでコーヒー秋夕焼 渡邉憲史(けんじ)
三席 コーヒーと日付の変はるころの雪 諏訪一郎
特選
珈琲に浮かぶ油膜や冬銀河 霜川このみ
赤本と缶コーヒーと冬銀河 無花果
片耳に残すマスクと缶コーヒー 猪倉さえこ
セーターの教授を囲むコーヒー屋 蒼空蒼子
缶コーヒーをつぎつぎ配る冬帽子 丹下京子
手袋を腰にねじ込み缶コーヒー 豊泉繁雄
参照:https://www.nhk.jp/p/ts/6Q6J1ZGX37/blog/bl/pLvva3ZRZL/bp/p2aOwLDPP9/
■NHK短歌 テーマ「おはよう/おやすみ」
選者 枡野浩一 ゲスト 阿部大樹(だいじゅ) 司会 尾崎世界観
年間テーマ「あなたへの手紙 かなたへの手紙」
眠れない私もいつか永遠に眠るからいいおやすみなさい
枡野浩一
何かを諦めた時に人間は風邪をひく
安西水丸さんが小説に書いていた
「人が風邪をひくのは何かを放棄した時だ」
眠りも同じなのではないかと…。阿部大樹氏
・31音の手紙
入選九首 テーマ「おはよう/おやすみ」
私 死に際にきっと笑って言うからねおやすみなさいおこさないでね
橋本康彦
二席 おはようを言えるあなたが居ることで新しくなるわたしの朝は
花林(かりん)なずな
三席 悩むのはここまでにして栞でも挟んで今日はおやすみなさい
辻永とも
「おやすみ」と「おはよう」の間真っすぐに結んで明日は休んでやるぞ
北村保
一席 「おはよう」とあなたがいってくれたから円周率が割り切れそうだ
蒔田理
君からのメールを開く夜勤明け最終行は「おやすみなさい」
和泉明宏
もう寝てる君に明日も会いたくて言葉にすればおやすみなさい
村川愉季(ゆき)
誰もいない部屋でおやすみ言うことは世界に向けて言うのと同じ
八号坂唯一
えんえんとつらいノルマにあえぐ子をねんねんころりと寝かしつけたい
村上加代子
・改悪添削
「おはよう」とあなたがいってくれたから円周率が割り切れそうだ
添削
「おはよう」とあなたがいってくれたから世界すべてがきらきらしてる
(漫画の1コマ2コマだったらとても収まりがいい
活字にする必要がないから平凡というか何も効果が得られていない
円周率が割り切れそうな感覚というのは
グラフィカル(絵画的)には表現できないので
短歌にしたことで一番効果があるものを短歌にすべき
短歌だからぴったりくる表現であるかを意識するといい)
・阿部大樹さんの短歌「おはよう/おやすみ」
雪みたいですねミルクはつめたくて紅茶にさわると溶けてしまって
阿部大樹
(初めて何かを知った人の感覚)
ことばで伝える時にどんなことが必要か?
聞く側としては一言目で話を受けてしまわない
最初に出てくる言葉は言いたいことや
真実を適切に表していることは少ないと思う
じゅうぶん間を取って二言目三言目を促す
次の話を始めない 出てきた次の言葉が
より確信をついていることが多い
解かり易い伝え方になってくると
表現自体も軽いものになってきてしまう
・言葉のバトン
走りたい足がはいてたハイヒール
宮田愛萌(まなも)(作家・タレント)
⇩
プライド脱ぐから置いてかないで
律月(りつき)ひかる(いぎなり東北産)うさぎ天使魔法少女
カレンダーのあたしと会う日にハートマーク
あたし以外は星にしといて
ヒマラヤザクラをメジロ戯むる渋野町(無季句)
切なさと狂気の狭間冬の鳥
数千年を生くるバオバブ冬銀河
要塞の立ち並ぶ街冬の夜
■NHK俳句 兼題「コーヒー」
選者 高野ムツオ ゲスト 小坂大魔王 若林哲哉 土肥あき子
レギュラー 中西アルノ 司会 柴田英嗣
年間テーマ「語ろう!俳句」
1 雪原のコーヒーに立つ太き湯気 土肥あき子
2 恋コーヒー苦み多きや年忘れ 小坂大魔王
3 珈琲やなんにもうまくいかない日 中西アルノ
4 缶コーヒーごくごく冬銀河がぶがぶ 高野ムツオ
5 吾に珈琲君に煙草があり霧氷 若林哲哉
・特選三席発表 兼題「コーヒー」
一席 コーヒーや大根提(さ)げて来た友と 礒村万波(いそむらまなみ)
二席 防護服脱いでコーヒー秋夕焼 渡邉憲史(けんじ)
三席 コーヒーと日付の変はるころの雪 諏訪一郎
特選
珈琲に浮かぶ油膜や冬銀河 霜川このみ
赤本と缶コーヒーと冬銀河 無花果
片耳に残すマスクと缶コーヒー 猪倉さえこ
セーターの教授を囲むコーヒー屋 蒼空蒼子
缶コーヒーをつぎつぎ配る冬帽子 丹下京子
手袋を腰にねじ込み缶コーヒー 豊泉繁雄
参照:https://www.nhk.jp/p/ts/6Q6J1ZGX37/blog/bl/pLvva3ZRZL/bp/p2aOwLDPP9/
■NHK短歌 テーマ「おはよう/おやすみ」
選者 枡野浩一 ゲスト 阿部大樹(だいじゅ) 司会 尾崎世界観
年間テーマ「あなたへの手紙 かなたへの手紙」
眠れない私もいつか永遠に眠るからいいおやすみなさい
枡野浩一
何かを諦めた時に人間は風邪をひく
安西水丸さんが小説に書いていた
「人が風邪をひくのは何かを放棄した時だ」
眠りも同じなのではないかと…。阿部大樹氏
・31音の手紙
入選九首 テーマ「おはよう/おやすみ」
私 死に際にきっと笑って言うからねおやすみなさいおこさないでね
橋本康彦
二席 おはようを言えるあなたが居ることで新しくなるわたしの朝は
花林(かりん)なずな
三席 悩むのはここまでにして栞でも挟んで今日はおやすみなさい
辻永とも
「おやすみ」と「おはよう」の間真っすぐに結んで明日は休んでやるぞ
北村保
一席 「おはよう」とあなたがいってくれたから円周率が割り切れそうだ
蒔田理
君からのメールを開く夜勤明け最終行は「おやすみなさい」
和泉明宏
もう寝てる君に明日も会いたくて言葉にすればおやすみなさい
村川愉季(ゆき)
誰もいない部屋でおやすみ言うことは世界に向けて言うのと同じ
八号坂唯一
えんえんとつらいノルマにあえぐ子をねんねんころりと寝かしつけたい
村上加代子
・改悪添削
「おはよう」とあなたがいってくれたから円周率が割り切れそうだ
添削
「おはよう」とあなたがいってくれたから世界すべてがきらきらしてる
(漫画の1コマ2コマだったらとても収まりがいい
活字にする必要がないから平凡というか何も効果が得られていない
円周率が割り切れそうな感覚というのは
グラフィカル(絵画的)には表現できないので
短歌にしたことで一番効果があるものを短歌にすべき
短歌だからぴったりくる表現であるかを意識するといい)
・阿部大樹さんの短歌「おはよう/おやすみ」
雪みたいですねミルクはつめたくて紅茶にさわると溶けてしまって
阿部大樹
(初めて何かを知った人の感覚)
ことばで伝える時にどんなことが必要か?
聞く側としては一言目で話を受けてしまわない
最初に出てくる言葉は言いたいことや
真実を適切に表していることは少ないと思う
じゅうぶん間を取って二言目三言目を促す
次の話を始めない 出てきた次の言葉が
より確信をついていることが多い
解かり易い伝え方になってくると
表現自体も軽いものになってきてしまう
・言葉のバトン
走りたい足がはいてたハイヒール
宮田愛萌(まなも)(作家・タレント)
⇩
プライド脱ぐから置いてかないで
律月(りつき)ひかる(いぎなり東北産)うさぎ天使魔法少女
カレンダーのあたしと会う日にハートマーク
あたし以外は星にしといて
2025年1月27日月曜日
古今和歌集&走れメロス&田名網敬一
寒紅をさして夢見る舞踏会
寒菫差し伸べられて手を取られ
大木と対等に立ち冬を舞う
舞踏会胸の目意識堂々と
寒雀独りぼっちを舞い踊る
■10min.ボックス古文・漢文 古今和歌集
久方の光のどけき春の日に静心(しずこころ)なく花の散るらむ 紀友則
月見ればちぢに物こそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど 大江千里
花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに 小野小町
古今和歌集の選者
紀友則 紀貫之 凡河内躬恒(おおしこうちのみつね) 壬生忠岑(みぶのただみね)
やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける。
世の中にある人、ことわざ繁きものなれば、心に思ふことを、
見るもの聞くものにつけて、言ひ出せるなり。
日本人の季節感
春の詩 342首
やどりして春の山辺に寝たる夜は夢のうちにも花ぞ散りける 紀貫之
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行
平安時代の恋と歌 360首
見ずもあらずも見もせぬ人の恋しくはあやなく今日やながめ暮らさむ 在原業平
知り知らぬなにかあやなくわきて言はむ思ひのみこそしるべなりけれ 読み人しらず
思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを 小野小町
■10min.ボックス現代文 走れメロス(太宰治)
メロスは激怒した。必ず、
かの邪知暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。
笛を吹き、羊と遊んで暮らしてきた。
けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
暴君が治める町
友の名はセリヌンティウス
老爺は、辺りをはばかる低声で、わずか答えた。
「王様は、人を殺します。」「なぜ殺すのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、だれもそんな、
悪心をもってはおりませぬ。」「たくさんの人を殺したのか。」
「はい、初めは王様の妹婿様を。それから、ご自身のお世継ぎを。
それから妹様を。それから、妹様のお子様を。…」
聞いて、メロスは激怒した。「あきれた王だ。生かしておけぬ。」
待つ者、待たせる者
暴君ディオニスの面前で、よき友とよき友は、二年ぶりで相会うた。
メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言でうなずき、
メロスをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。
セリヌンティウス、わたしは走ったのだ。
君を欺くつもりは、みじんもなかった。
信じてくれ!わたしは急ぎに急いでここまで来たのだ。
濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に
峠を駆け降りてきたのだ。わたしだから、できたのだよ。
ああ、このうえ、わたしに望みたもうな。ほうっておいてくれ。
どうでもいいのだ。わたしは負けたのだ。
桜桃忌(太宰治をしのぶ日)
セリヌンティウスは、すべてを察した様子でうなずき、刑場いっぱいに鳴り響くほど
音高くメロスの右ほおを殴った。殴ってから優しくほほ笑み、
「メロス、わたしを殴れ、同じくらい音高くわたしのほおを殴れ。
わたしはこの三日間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。
生まれて、初めて君を疑った。君がわたしを殴ってくれなければ、
わたしは君と抱擁できない。」メロスは腕にうなりをつけて
セリヌンティウスのほおを殴った。「ありがとう、友よ。」
二人同時に言い、ひしと抱き合い、それからうれし泣きにおいおい声を放って泣いた。
■あの人に会いたい 田名網敬一(アーティスト)
1936-2024(令和6)年 88歳没
ポップアートを牽引
これ全部切り抜かれて使えるようになっている
自身の作品を編集的絵画と呼びます
人間って新幹線に乗っていてもほら窓の外を見ていると
無意識のうちに編集しているわけよね
ここは面白い ここは面白くないとか取捨選択しているでしょう
最終的に到着したときに その風景全体の中から
印象的なものが残るわけじゃない だから編集しているのよ 目で
おおきな水槽があって その中に非常に高額な金魚がいたんですよ
防空壕があって そこからこう見ていると スクリーンみたいに見えて
それで戦争が始まって 焼夷弾とか やたら落っこってきますよね
金魚鉢の向うに その…恐怖が その戦争があって それを…
金魚鉢を透かして僕はそれを見ていたんですね
アンディ・ウォーホルに衝撃を受ける
今までの画家の場合というのは 大体 原画一点主義だったのが
プリントの作品を まあ彼の場合には重要な武器にしているわけですよ
それがまあ全世界にばらまかれるわけですね 同じ絵がね
それが結局(アンディー・ウォーホルを)
スーパースターにしたんじゃないですか
いろんなものがね こう融合して 一つのものを作っていこうという
そういう大きなムーブメントが60年代にあったんですよ
それが70年代になって解体されて
個々にやるようになってしまったんだけれど
そのときにいろんな面白いものが生まれてきたんですよね
僕はね もう要するに好きなことしかしない
というのがね 僕の人生観なんですよ
幼少期の記憶
まあ大体 出かけない日は描いているんですよ
四畳半ぐらいのちっちゃな部屋があって
そこに…結局それが装置になっているわけですよ
その中に自分が入ることによって
その記憶とこう交信できるっていうの
全部同じサイズなんですよ
描くとまあ 貼りつけて そのときの 気分というかね
そういうものをここに メモしておくんですかね
そうすると これをこう並べていくと
ぼく自身の記憶のまんだらができるんですよ これずっと繋げていくとね
まんだらって要するに修行僧がどう修業していくか
というための図でもあるわけじゃないですか
それと同じように自分の過去の記憶っていうのは
まあ僕が今 実人生であるとすれば 夢もそうだけど
もうひとつの全然違う人生ですよね 記憶の中にある人生って
これが例えば3年前でこっちは今とか だから時間のあれを
めちゃくちゃにしているんですよ 絵もスタイルも もう全然違っていて
それをこう組み合わせることで 時間差で 何か別の見え方が
できるのかなっていうのと
こういうリアルな感じにしたくないわけね もうちょっと おもちゃのような
だからもっとずんぐりした形に形にしたいわけよね
今の大人の僕じゃなくて 子どもの目に映った飛行機なんですよ
こういうだから形に見えたのね
結局 僕の記憶の中でやっぱり 最も僕の心を長い間占めて
苦しめたっていうか 僕自身がもうずっと自覚せざるを得ないような人生を
送ってきたものの象徴なのよ B29というものは
それはアメリカでもあるし 戦争でもあるわけでしょう
それがだから 僕は長い人生を生きてきたけどさ
最後に見るのはやっぱりその景色なんだよね
僕は五感で作品を作っている 僕の場合 耳で聞いたり 触角であったり
匂いだったりっていうものを作品化していく
寒菫差し伸べられて手を取られ
大木と対等に立ち冬を舞う
舞踏会胸の目意識堂々と
寒雀独りぼっちを舞い踊る
■10min.ボックス古文・漢文 古今和歌集
久方の光のどけき春の日に静心(しずこころ)なく花の散るらむ 紀友則
月見ればちぢに物こそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど 大江千里
花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに 小野小町
古今和歌集の選者
紀友則 紀貫之 凡河内躬恒(おおしこうちのみつね) 壬生忠岑(みぶのただみね)
やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける。
世の中にある人、ことわざ繁きものなれば、心に思ふことを、
見るもの聞くものにつけて、言ひ出せるなり。
日本人の季節感
春の詩 342首
やどりして春の山辺に寝たる夜は夢のうちにも花ぞ散りける 紀貫之
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行
平安時代の恋と歌 360首
見ずもあらずも見もせぬ人の恋しくはあやなく今日やながめ暮らさむ 在原業平
知り知らぬなにかあやなくわきて言はむ思ひのみこそしるべなりけれ 読み人しらず
思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを 小野小町
■10min.ボックス現代文 走れメロス(太宰治)
メロスは激怒した。必ず、
かの邪知暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。
笛を吹き、羊と遊んで暮らしてきた。
けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
暴君が治める町
友の名はセリヌンティウス
老爺は、辺りをはばかる低声で、わずか答えた。
「王様は、人を殺します。」「なぜ殺すのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、だれもそんな、
悪心をもってはおりませぬ。」「たくさんの人を殺したのか。」
「はい、初めは王様の妹婿様を。それから、ご自身のお世継ぎを。
それから妹様を。それから、妹様のお子様を。…」
聞いて、メロスは激怒した。「あきれた王だ。生かしておけぬ。」
待つ者、待たせる者
暴君ディオニスの面前で、よき友とよき友は、二年ぶりで相会うた。
メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言でうなずき、
メロスをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。
セリヌンティウス、わたしは走ったのだ。
君を欺くつもりは、みじんもなかった。
信じてくれ!わたしは急ぎに急いでここまで来たのだ。
濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に
峠を駆け降りてきたのだ。わたしだから、できたのだよ。
ああ、このうえ、わたしに望みたもうな。ほうっておいてくれ。
どうでもいいのだ。わたしは負けたのだ。
桜桃忌(太宰治をしのぶ日)
セリヌンティウスは、すべてを察した様子でうなずき、刑場いっぱいに鳴り響くほど
音高くメロスの右ほおを殴った。殴ってから優しくほほ笑み、
「メロス、わたしを殴れ、同じくらい音高くわたしのほおを殴れ。
わたしはこの三日間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。
生まれて、初めて君を疑った。君がわたしを殴ってくれなければ、
わたしは君と抱擁できない。」メロスは腕にうなりをつけて
セリヌンティウスのほおを殴った。「ありがとう、友よ。」
二人同時に言い、ひしと抱き合い、それからうれし泣きにおいおい声を放って泣いた。
■あの人に会いたい 田名網敬一(アーティスト)
1936-2024(令和6)年 88歳没
ポップアートを牽引
これ全部切り抜かれて使えるようになっている
自身の作品を編集的絵画と呼びます
人間って新幹線に乗っていてもほら窓の外を見ていると
無意識のうちに編集しているわけよね
ここは面白い ここは面白くないとか取捨選択しているでしょう
最終的に到着したときに その風景全体の中から
印象的なものが残るわけじゃない だから編集しているのよ 目で
おおきな水槽があって その中に非常に高額な金魚がいたんですよ
防空壕があって そこからこう見ていると スクリーンみたいに見えて
それで戦争が始まって 焼夷弾とか やたら落っこってきますよね
金魚鉢の向うに その…恐怖が その戦争があって それを…
金魚鉢を透かして僕はそれを見ていたんですね
アンディ・ウォーホルに衝撃を受ける
今までの画家の場合というのは 大体 原画一点主義だったのが
プリントの作品を まあ彼の場合には重要な武器にしているわけですよ
それがまあ全世界にばらまかれるわけですね 同じ絵がね
それが結局(アンディー・ウォーホルを)
スーパースターにしたんじゃないですか
いろんなものがね こう融合して 一つのものを作っていこうという
そういう大きなムーブメントが60年代にあったんですよ
それが70年代になって解体されて
個々にやるようになってしまったんだけれど
そのときにいろんな面白いものが生まれてきたんですよね
僕はね もう要するに好きなことしかしない
というのがね 僕の人生観なんですよ
幼少期の記憶
まあ大体 出かけない日は描いているんですよ
四畳半ぐらいのちっちゃな部屋があって
そこに…結局それが装置になっているわけですよ
その中に自分が入ることによって
その記憶とこう交信できるっていうの
全部同じサイズなんですよ
描くとまあ 貼りつけて そのときの 気分というかね
そういうものをここに メモしておくんですかね
そうすると これをこう並べていくと
ぼく自身の記憶のまんだらができるんですよ これずっと繋げていくとね
まんだらって要するに修行僧がどう修業していくか
というための図でもあるわけじゃないですか
それと同じように自分の過去の記憶っていうのは
まあ僕が今 実人生であるとすれば 夢もそうだけど
もうひとつの全然違う人生ですよね 記憶の中にある人生って
これが例えば3年前でこっちは今とか だから時間のあれを
めちゃくちゃにしているんですよ 絵もスタイルも もう全然違っていて
それをこう組み合わせることで 時間差で 何か別の見え方が
できるのかなっていうのと
こういうリアルな感じにしたくないわけね もうちょっと おもちゃのような
だからもっとずんぐりした形に形にしたいわけよね
今の大人の僕じゃなくて 子どもの目に映った飛行機なんですよ
こういうだから形に見えたのね
結局 僕の記憶の中でやっぱり 最も僕の心を長い間占めて
苦しめたっていうか 僕自身がもうずっと自覚せざるを得ないような人生を
送ってきたものの象徴なのよ B29というものは
それはアメリカでもあるし 戦争でもあるわけでしょう
それがだから 僕は長い人生を生きてきたけどさ
最後に見るのはやっぱりその景色なんだよね
僕は五感で作品を作っている 僕の場合 耳で聞いたり 触角であったり
匂いだったりっていうものを作品化していく
2025年1月26日日曜日
モーリー・ロバートソン&「可愛い」&「麒麟」&円山応挙
香り立つイースト菌や冬の朝
冬の道ペダル確かめいざ行かん
冬深む間違ったこと堂々と
真冬日を自由気ままに楽しまん
空腹を充たす黒豆雪催(もよい)
■ワルイコあつまれ(112)
ゲスト モーリー・ロバートソン(国際ジャーナリスト)
元々はミュージシャン 電子音楽の専門家
主な専門分野(国際政治 国際社会 メディア AI・デジタル LGBTQ)
東京大学 スタンフォード大学 マサチューセッツ工科大学
カリフォルニア大学バークレー校 プリンストン大学 イェール大学
世界の名だたる大学7校に合格
今回のテーマ「日本と世界の勉強」
ポール・ニューマンはイェール大学出身
日本は国ぐるみの強いプッシュがあって そこで育つエリートはまず最初に
日本の”お金を稼げる人”“指導者になれる人”に
昔は”頭がいい人“は国の発展のために職業についていた
今の日本の教育では才能のある人の将来が開かない
アメリカンドリーム=努力すれば成功する
トップに立つためには”個性を伸ばす“
東京大学とハーバード大学に入学
日本とアメリカのトップレベルの大学の違いは❓
東京大学では同じ価値観の人と巡り合えず4カ月で中退しハーバード大学へ
ハーバード大学は自分の考えや意見をしっかり持って議論しなければならない
東京大学への合格方法は質問と答えを覚えると結果が出る
アメリカの勉強方法は質問の意味を考える アメリカは話し合い重視
歴史も重要だが今起きていることに目を向ける
子どもが全然違う意見を戦わせて最後は”相手の意見にも耳を傾けよう“
というのが美しい形
世界情勢で日本国内に伝わらないニュースはたくさんある
発言するときは日本にお伺いを立てている
世界で活躍するためにやっておいた方がいいことは❓
苦手な事でも苦手でないと思える余裕を持つことが大切 物事を狭く見ない
自分が好きなものと好きじゃないって思ったものに少しチャンスを与えてあげる
物凄く勉強になりました。
柔軟な心でこの先、立ち向かって行けたらなぁと…。
モーリーさん❣ありがとうございました❣
もっとお聞きしていたかった。
■漢字ふうむふむ 可愛(わい)い
中国では可愛い=自分より目下の弱いものに対して愛しい気持ちを表した言葉
日本では日本独自の言葉だった 平安時代「かはゆし」と言われていた
顔映ゆしと書かれていた 気恥ずかしい状況を現した言葉だった
江戸時代になると意味が変わった 中国からの書物に記されていた「可愛」を
当て字にした それから可愛い=弱いものを愛おしく思う気持ち となった
今と同じ意味になったのは80年代から90年代にかけてだった
バブル期の時に、男性が絶対的優位の時代は終わって
女性が相対的に発言権を持つようになった そういう時代になると
女性はおじさんに対して可愛いと言えるようになった
可愛いは弱みを握った時に使える 弱みが親近感へ
可愛いとは親密さの表現
その後、急速に変化してブサ可愛い ゆる可愛い キモ可愛い グロ可愛い
が出現していった
■漢字ふうむふむ 麒麟(きりん)が来る!
中国では龍・鳳凰・麒麟は伝説上の動物だった
18世紀 蘭学者 桂川甫周がある動物図鑑を目にする
中国の歴史書に描かれている動物なる生き物が(動物図鑑の生き物に)
似ているということから同じだと気がついて麒麟の漢字を
あてはめたのではないかと考えられている
伝説上の麒麟の名前を使った理由 壮大な歴史ドラマが隠されていた
1400年頃首都:南京でクーデターが勃発
首謀者は明 第3代皇帝 永楽帝(1360~1424)
永楽帝は建文帝から力づくで皇位を奪い取り権力を誇示しようと考えた
見たことのないある生き物に目をつけた それがいまでいうキリンだった
キリンに伝説上の麒麟と名付けた
中国では優れた王様が世の中を統治している時に
麒麟はその姿を現すと伝えられていました
永楽帝は自分の権威を高めるために動物のキリンを利用し
この動物を麒麟という名にしたと考えられます 当時の書物には
「ベンガル国から麒麟が出た 臣民は集って観賞し大喜びした」
と書かれている
■若冲と応挙 金刀比羅宮 障壁画の世界(4)
円山応挙 曰く
万物正写 先づ形を写し得て 気を写す可し
冬の道ペダル確かめいざ行かん
冬深む間違ったこと堂々と
真冬日を自由気ままに楽しまん
空腹を充たす黒豆雪催(もよい)
■ワルイコあつまれ(112)
ゲスト モーリー・ロバートソン(国際ジャーナリスト)
元々はミュージシャン 電子音楽の専門家
主な専門分野(国際政治 国際社会 メディア AI・デジタル LGBTQ)
東京大学 スタンフォード大学 マサチューセッツ工科大学
カリフォルニア大学バークレー校 プリンストン大学 イェール大学
世界の名だたる大学7校に合格
今回のテーマ「日本と世界の勉強」
ポール・ニューマンはイェール大学出身
日本は国ぐるみの強いプッシュがあって そこで育つエリートはまず最初に
日本の”お金を稼げる人”“指導者になれる人”に
昔は”頭がいい人“は国の発展のために職業についていた
今の日本の教育では才能のある人の将来が開かない
アメリカンドリーム=努力すれば成功する
トップに立つためには”個性を伸ばす“
東京大学とハーバード大学に入学
日本とアメリカのトップレベルの大学の違いは❓
東京大学では同じ価値観の人と巡り合えず4カ月で中退しハーバード大学へ
ハーバード大学は自分の考えや意見をしっかり持って議論しなければならない
東京大学への合格方法は質問と答えを覚えると結果が出る
アメリカの勉強方法は質問の意味を考える アメリカは話し合い重視
歴史も重要だが今起きていることに目を向ける
子どもが全然違う意見を戦わせて最後は”相手の意見にも耳を傾けよう“
というのが美しい形
世界情勢で日本国内に伝わらないニュースはたくさんある
発言するときは日本にお伺いを立てている
世界で活躍するためにやっておいた方がいいことは❓
苦手な事でも苦手でないと思える余裕を持つことが大切 物事を狭く見ない
自分が好きなものと好きじゃないって思ったものに少しチャンスを与えてあげる
物凄く勉強になりました。
柔軟な心でこの先、立ち向かって行けたらなぁと…。
モーリーさん❣ありがとうございました❣
もっとお聞きしていたかった。
■漢字ふうむふむ 可愛(わい)い
中国では可愛い=自分より目下の弱いものに対して愛しい気持ちを表した言葉
日本では日本独自の言葉だった 平安時代「かはゆし」と言われていた
顔映ゆしと書かれていた 気恥ずかしい状況を現した言葉だった
江戸時代になると意味が変わった 中国からの書物に記されていた「可愛」を
当て字にした それから可愛い=弱いものを愛おしく思う気持ち となった
今と同じ意味になったのは80年代から90年代にかけてだった
バブル期の時に、男性が絶対的優位の時代は終わって
女性が相対的に発言権を持つようになった そういう時代になると
女性はおじさんに対して可愛いと言えるようになった
可愛いは弱みを握った時に使える 弱みが親近感へ
可愛いとは親密さの表現
その後、急速に変化してブサ可愛い ゆる可愛い キモ可愛い グロ可愛い
が出現していった
■漢字ふうむふむ 麒麟(きりん)が来る!
中国では龍・鳳凰・麒麟は伝説上の動物だった
18世紀 蘭学者 桂川甫周がある動物図鑑を目にする
中国の歴史書に描かれている動物なる生き物が(動物図鑑の生き物に)
似ているということから同じだと気がついて麒麟の漢字を
あてはめたのではないかと考えられている
伝説上の麒麟の名前を使った理由 壮大な歴史ドラマが隠されていた
1400年頃首都:南京でクーデターが勃発
首謀者は明 第3代皇帝 永楽帝(1360~1424)
永楽帝は建文帝から力づくで皇位を奪い取り権力を誇示しようと考えた
見たことのないある生き物に目をつけた それがいまでいうキリンだった
キリンに伝説上の麒麟と名付けた
中国では優れた王様が世の中を統治している時に
麒麟はその姿を現すと伝えられていました
永楽帝は自分の権威を高めるために動物のキリンを利用し
この動物を麒麟という名にしたと考えられます 当時の書物には
「ベンガル国から麒麟が出た 臣民は集って観賞し大喜びした」
と書かれている
■若冲と応挙 金刀比羅宮 障壁画の世界(4)
円山応挙 曰く
万物正写 先づ形を写し得て 気を写す可し
2025年1月25日土曜日
100分de名著 安克昌②
寒月や睡眠負債ずっしりと
冬深し日々濃くなってゆくお薄
信じ切る危うさあらん寒の雨
晩冬やいたる所へ痙攣が
冬の朝伸ばした箇所が攣りゆかん
■100分de名著 安克昌
心の傷を癒すということ2さまざまな心の傷を見つめる
宮地尚子 伊集院光 阿部みちこ
PTSD トラウマ体験から約1カ月経ても社会生活に
支障をきたすほどの苦痛が残る場合に診断される病名
阪神・淡路大震災までは専門家の中でさえあまり知られてなくて
1995年阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件が起きて一気に広まった
1過覚醒 2再体験 3回避 4否定的認知・気分
1圧倒的なストレスを被ると、心のシステムが次のストレスに備えて警戒態勢に入る。
ある種の感覚が鋭敏になり緊張した状態になる。この状態を「過覚醒」という。(中略)
このような状態になると、ちょっとした刺激だけで飛び上がるほど反応してしまう。
もちろん眠ることさえ難しくなる。
2たとえば、家屋が倒壊した私の知人は、壊れる前の自分の家を
よく夢に見てうなされると言った。
また、なにかに追いかけられているような怖い夢をよく見るという人もいた。
友人の医師の勤める病院には、激しい反応を起こし錯乱状態になって
入院した人もあったそうである。
Jさんはその後も避難所から病院に通院してきていた。
食欲もなく、冷たいお握りを見ただけで身震いした。
ボランティアや他の被災者の笑い声を聞くと
不謹慎な気がして、無性に腹が立った。
夜になると、とくにいろいろな光景が頭に浮かび、
ほとんど熟睡できなかった。(中略)
やっぱり家が怖いんです。壁が崩れているし、壊れたドアがガタガタいうし
なにか物音がするとビクッとします。どの部屋の電気も一晩中点けっぱなしです。
いつでも出られるように服のまま寝ています。
部屋を閉め切るのが怖いんで、おふろやトイレのドアも
ちゃんと閉めないんです。どこにも居場所がなくて
あっちこっちうろうろしていると悲しくなって…」
PTSDの症状
1極度の緊張や警戒状態が続いているので
少しのことで怒鳴ったり暴力につながることも
23似たような経験や場所で再体験が起きやすいので
思い出させるものは避ける
刺激をシャットアウト交流が狭まっていく
(意識的な整理もできないまま体が先に反応するのは恐怖)
自分がなぜそこを避けているのか
避けている事すら気付かなかったり理由が分からなかったりする)
4社会への見方もネガティブになっていると
冬深し日々濃くなってゆくお薄
信じ切る危うさあらん寒の雨
晩冬やいたる所へ痙攣が
冬の朝伸ばした箇所が攣りゆかん
■100分de名著 安克昌
心の傷を癒すということ2さまざまな心の傷を見つめる
宮地尚子 伊集院光 阿部みちこ
PTSD トラウマ体験から約1カ月経ても社会生活に
支障をきたすほどの苦痛が残る場合に診断される病名
阪神・淡路大震災までは専門家の中でさえあまり知られてなくて
1995年阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件が起きて一気に広まった
1過覚醒 2再体験 3回避 4否定的認知・気分
1圧倒的なストレスを被ると、心のシステムが次のストレスに備えて警戒態勢に入る。
ある種の感覚が鋭敏になり緊張した状態になる。この状態を「過覚醒」という。(中略)
このような状態になると、ちょっとした刺激だけで飛び上がるほど反応してしまう。
もちろん眠ることさえ難しくなる。
2たとえば、家屋が倒壊した私の知人は、壊れる前の自分の家を
よく夢に見てうなされると言った。
また、なにかに追いかけられているような怖い夢をよく見るという人もいた。
友人の医師の勤める病院には、激しい反応を起こし錯乱状態になって
入院した人もあったそうである。
Jさんはその後も避難所から病院に通院してきていた。
食欲もなく、冷たいお握りを見ただけで身震いした。
ボランティアや他の被災者の笑い声を聞くと
不謹慎な気がして、無性に腹が立った。
夜になると、とくにいろいろな光景が頭に浮かび、
ほとんど熟睡できなかった。(中略)
やっぱり家が怖いんです。壁が崩れているし、壊れたドアがガタガタいうし
なにか物音がするとビクッとします。どの部屋の電気も一晩中点けっぱなしです。
いつでも出られるように服のまま寝ています。
部屋を閉め切るのが怖いんで、おふろやトイレのドアも
ちゃんと閉めないんです。どこにも居場所がなくて
あっちこっちうろうろしていると悲しくなって…」
PTSDの症状
1極度の緊張や警戒状態が続いているので
少しのことで怒鳴ったり暴力につながることも
23似たような経験や場所で再体験が起きやすいので
思い出させるものは避ける
刺激をシャットアウト交流が狭まっていく
(意識的な整理もできないまま体が先に反応するのは恐怖)
自分がなぜそこを避けているのか
避けている事すら気付かなかったり理由が分からなかったりする)
4社会への見方もネガティブになっていると
「分かってもらえるもんか」という気持ちもあるかもしれない
東日本大震災の「遺構を残すかどうか」でも議論になったように
「記憶として大事だから残そう」
「それ自体が再体験のトリガーになるから見る度に辛くなるからやめてほしい」
経験している人としていない人 PTSD症状を持っている人と
持っていない人では落差が激しい
「別に生きていてもしようがないんです。娘の思い出にひたって生きていたいんです。
娘のことを忘れたくないんです。お酒を飲むと、娘がいたときの記憶に
もっとひたれるようになるんです。こうやって落ち込んでいる方が
娘がそばにいる気がする。私が元気になったら娘が遠ざかってしまう」(中略)
亡くなった人は二度と帰ってこない。これは厳粛な事実である。
だから、死別体験者の苦しみとは、この動かしようのない事実を
いかにして受け入れるかという葛藤であろう。
もし死んでもべつにくいはないから、しにたかったな。
そうしたら、そのかわりにお父さんもお母さんも助かったかもしれないのに…。
ごめんなさい。(中学一年、T・Mさん)
サバイバーズ・ギルト
悲嘆 喪失感 という心の傷を訴えている
じっと静かに堪えるのが日本の文化だという意見もあるが、
それは嘘だと私は思った。文化は静かに堪えることを
遺族に強いてるかもしれない。
死別による悲嘆と喪失感
喪失体験はなくなったものに対してどんどん引き込まれていく
方向性としては逆
10年20年という時を経ても悲嘆や喪失感を
感じ続けている人もたくさんいる
泣き叫んだり取り乱したりすることが許されてもいい
「早く立ち直って元気になりなさい」という暗黙のうちに押し付けている
「喪の期間」「弔いの時間」を社会全体が尊重するのは大事なこと
個々人のタイミングをもう少し尊重したほうがよい
地震を体験し、今なお解体の進む被災地に住んでいるうちに
私は自分の価値観や感じ方が知らず知らず変化しているのに気づいた。
ここではそれを仮に「リアル病」と呼ぼう。
私の場合、リアルな事態にとらわれる一方で
口先だけのこと、やたらに理屈っぽいことに対して拒否反応が起きる
そんなことばだけのこと、ひとたび地震が来れば崩れさってしまう」。
そう思えてしかたがないのである。表玄関の復興を歓迎する反面、
それがどうしたという気持ちもそのあらわれであろう。
リアル病 安さんが自分の心の変化を言語化した
「どうせ死ぬのになぜ頑張って生き続けなくてはいけないのか」
虚無感や無常観につながる捉え方
何に価値を求めたらいいのか分からない
「あらゆるものは作られても壊されるのでものをため込んでも仕方がない」
誰かが語る言葉に対しても非常に空々しく思えて
「そんなこと行って何になるの?」「そんなことして何の役に立つの❓」
苦しみを癒すことよりも、それを理解することよりも前に、
苦しみがそこにある、ということに、
われわれは気づかなくてはならない。(中略)
それは隣人としてその人の傍らに佇んだとき、
はじめて感じられるもんなのだ。
「何をすればよいか」よりも「苦しみがそこにあることに気付く」
寄り添ってその人のタイミングを待つ
相手が話し始めたら相手のペースに委ねる
アドバイスを与えたり問題解決の方法を教えたりすることではない
精神的なテクニックで出来ることは本当にささやかなものでしかない
専門家だけではなく誰もが「この人辛そうだな」と思ったら
少し寄り添うただ一緒にいる 社会全体で担うことが重要
東日本大震災の「遺構を残すかどうか」でも議論になったように
「記憶として大事だから残そう」
「それ自体が再体験のトリガーになるから見る度に辛くなるからやめてほしい」
経験している人としていない人 PTSD症状を持っている人と
持っていない人では落差が激しい
「別に生きていてもしようがないんです。娘の思い出にひたって生きていたいんです。
娘のことを忘れたくないんです。お酒を飲むと、娘がいたときの記憶に
もっとひたれるようになるんです。こうやって落ち込んでいる方が
娘がそばにいる気がする。私が元気になったら娘が遠ざかってしまう」(中略)
亡くなった人は二度と帰ってこない。これは厳粛な事実である。
だから、死別体験者の苦しみとは、この動かしようのない事実を
いかにして受け入れるかという葛藤であろう。
もし死んでもべつにくいはないから、しにたかったな。
そうしたら、そのかわりにお父さんもお母さんも助かったかもしれないのに…。
ごめんなさい。(中学一年、T・Mさん)
サバイバーズ・ギルト
悲嘆 喪失感 という心の傷を訴えている
じっと静かに堪えるのが日本の文化だという意見もあるが、
それは嘘だと私は思った。文化は静かに堪えることを
遺族に強いてるかもしれない。
死別による悲嘆と喪失感
喪失体験はなくなったものに対してどんどん引き込まれていく
方向性としては逆
10年20年という時を経ても悲嘆や喪失感を
感じ続けている人もたくさんいる
泣き叫んだり取り乱したりすることが許されてもいい
「早く立ち直って元気になりなさい」という暗黙のうちに押し付けている
「喪の期間」「弔いの時間」を社会全体が尊重するのは大事なこと
個々人のタイミングをもう少し尊重したほうがよい
地震を体験し、今なお解体の進む被災地に住んでいるうちに
私は自分の価値観や感じ方が知らず知らず変化しているのに気づいた。
ここではそれを仮に「リアル病」と呼ぼう。
私の場合、リアルな事態にとらわれる一方で
口先だけのこと、やたらに理屈っぽいことに対して拒否反応が起きる
そんなことばだけのこと、ひとたび地震が来れば崩れさってしまう」。
そう思えてしかたがないのである。表玄関の復興を歓迎する反面、
それがどうしたという気持ちもそのあらわれであろう。
リアル病 安さんが自分の心の変化を言語化した
「どうせ死ぬのになぜ頑張って生き続けなくてはいけないのか」
虚無感や無常観につながる捉え方
何に価値を求めたらいいのか分からない
「あらゆるものは作られても壊されるのでものをため込んでも仕方がない」
誰かが語る言葉に対しても非常に空々しく思えて
「そんなこと行って何になるの?」「そんなことして何の役に立つの❓」
苦しみを癒すことよりも、それを理解することよりも前に、
苦しみがそこにある、ということに、
われわれは気づかなくてはならない。(中略)
それは隣人としてその人の傍らに佇んだとき、
はじめて感じられるもんなのだ。
「何をすればよいか」よりも「苦しみがそこにあることに気付く」
寄り添ってその人のタイミングを待つ
相手が話し始めたら相手のペースに委ねる
アドバイスを与えたり問題解決の方法を教えたりすることではない
精神的なテクニックで出来ることは本当にささやかなものでしかない
専門家だけではなく誰もが「この人辛そうだな」と思ったら
少し寄り添うただ一緒にいる 社会全体で担うことが重要
2025年1月24日金曜日
NGシーンで一句&偉人・敗北からの教訓「蔦屋重三郎」
冬椿朽ちた花びら掃き集む
(那波多目功一) 朝陽浴び翔(かけ)る冬鳥宙返り
人真似が楽しいですか❓冬の空
想像の繰り返し北窓塞ぐ
冬の月手長猿の佇まい
■プレバト纏め 2025年1月23日
NG シーンで一句
永世名人富美男の締めのお手本
カチンコは四度目太秦の寒夜
(数字のリアリティー 五七五を全部足して17音
俳句の型の1つ 数字でNGが出ていることが想像できる
四が時間経過もちゃんと表現
包み込むような寒夜 どんどん画面が大きくなる)
昇格試験 森口瑤子
撮影所の門扉冷たし吾は未熟
添削(上五・中七の描写はしっかりしている
皮膚感に訴える季語:冷たし 門扉が拒むかのよう)
撮影所の門扉冷たし吾に硬し
撮影所の門扉冷たし吾に重し
1位 おいでやす小田
NG出しストーブの輪から遠ざかる
添削(孤独が見えてくる 心情がよく出ている 中七は7音に)
NG出しストーブの輪に遠く居る
2位 篠原ゆき子
熱燗やさっきの長台詞ここでなら
添削(中七は極力7音にする 場所情報を季語で表現)
台本の台詞いまならおでん酒
3位 本多力
アドリブが出ずに下向くふきのとう
添削(下向くは説明になっている
冬草:季語 冬でも枯れずに青く残っている草)
アドリブが出ず冬草に目を落とす
4位 関水渚
苦手な音寒さで嚙んだということに
添削(要らない言葉がある 自己模倣は表現者としてはいけない)
サ行また寒さで噛んだことにする
5位 藤岡真威人(まいと)
失敗に頬染めるさま寒椿
添削(季語を例えに使うと季語の力は落ちる
必要な情報が書かれていない 寒椿は映像になり
失敗した人は頬を染めていたかもと想像して貰える)
台詞まちがえて寒椿のシーン
次回のお題「フライドポテト」
■偉人・敗北からの教訓 第76回「蔦屋重三郎・寛政の改革に抗ったメディア王」
蔦屋重三郎 敗北の伏線
情報の収集と分析は成功の鉄則
ただし「出る杭は打たれる」という事に十分配慮すること
蔦屋重三郎 敗北の瞬間
巨大権力に抗う度胸と覚悟は見事
とはいえ 勝負抜負ければ周囲を巻き込むことを忘れずに
重三郎は豪胆な男であるからさほど恐れいったようには見えなかった
「伊波伝毛之記」より意訳
おれは今日の昼時に死ぬよ
拍子木はまだ鳴らねえのか
「喜多川柯理墓碣銘」より意訳
寛政九年(1797)永眠 享年48
蔦屋重三郎の敗北から学ぶ教訓
塩梅を知る
人真似が楽しいですか❓冬の空
想像の繰り返し北窓塞ぐ
冬の月手長猿の佇まい
■プレバト纏め 2025年1月23日
NG シーンで一句
永世名人富美男の締めのお手本
カチンコは四度目太秦の寒夜
(数字のリアリティー 五七五を全部足して17音
俳句の型の1つ 数字でNGが出ていることが想像できる
四が時間経過もちゃんと表現
包み込むような寒夜 どんどん画面が大きくなる)
昇格試験 森口瑤子
撮影所の門扉冷たし吾は未熟
添削(上五・中七の描写はしっかりしている
皮膚感に訴える季語:冷たし 門扉が拒むかのよう)
撮影所の門扉冷たし吾に硬し
撮影所の門扉冷たし吾に重し
1位 おいでやす小田
NG出しストーブの輪から遠ざかる
添削(孤独が見えてくる 心情がよく出ている 中七は7音に)
NG出しストーブの輪に遠く居る
2位 篠原ゆき子
熱燗やさっきの長台詞ここでなら
添削(中七は極力7音にする 場所情報を季語で表現)
台本の台詞いまならおでん酒
3位 本多力
アドリブが出ずに下向くふきのとう
添削(下向くは説明になっている
冬草:季語 冬でも枯れずに青く残っている草)
アドリブが出ず冬草に目を落とす
4位 関水渚
苦手な音寒さで嚙んだということに
添削(要らない言葉がある 自己模倣は表現者としてはいけない)
サ行また寒さで噛んだことにする
5位 藤岡真威人(まいと)
失敗に頬染めるさま寒椿
添削(季語を例えに使うと季語の力は落ちる
必要な情報が書かれていない 寒椿は映像になり
失敗した人は頬を染めていたかもと想像して貰える)
台詞まちがえて寒椿のシーン
次回のお題「フライドポテト」
■偉人・敗北からの教訓 第76回「蔦屋重三郎・寛政の改革に抗ったメディア王」
蔦屋重三郎 敗北の伏線
情報の収集と分析は成功の鉄則
ただし「出る杭は打たれる」という事に十分配慮すること
蔦屋重三郎 敗北の瞬間
巨大権力に抗う度胸と覚悟は見事
とはいえ 勝負抜負ければ周囲を巻き込むことを忘れずに
重三郎は豪胆な男であるからさほど恐れいったようには見えなかった
「伊波伝毛之記」より意訳
おれは今日の昼時に死ぬよ
拍子木はまだ鳴らねえのか
「喜多川柯理墓碣銘」より意訳
寛政九年(1797)永眠 享年48
蔦屋重三郎の敗北から学ぶ教訓
塩梅を知る
2025年1月23日木曜日
ヤン・ソギル&斎藤道山
枯蓮の幾何学模様冬茜
寒落暉蓮根畑や茜色
冬雀老いに憧れ愛しみ
赤松に守られ生きる日脚伸ぶ
寒の雨音外してもそのままに
■あの人に会いたい ヤン・ソギル(作家) 梁石日
2024(令和6)年 87歳没
それまでの在日に対する小説の書き方と言うかな
視点というかな そういうものをやっぱり変えたかったわけ
まあ日本の社会というものを同時に描くと なぜなら
在日コリアンというのは まさに日本の社会の中で生きていてね
そして日本の社会のいろんなものから影響を受けているしね
俺は包丁を持ったまま金縛り状態だ
知るを楽しむ 人生の歩き方「梁石日❝血❞の咆哮(ほうこう)」(2008年)
今度はおやじがその僕の握っている包丁をね
腕を取って自分でこう刺すわけ 本当に刺すのよ 少しずつ
そういうふうにして 強迫観念を植え付けるわけよ
ふるさとの仲間たち「コリアンタウン 生きる力をくれた町」(1997年)
鶴橋 この辺で俺がタバコを売っていたわけ アメリカの
おふくろは だから こういう所でりんご箱を置いてやな
どぶろく売っとったわけや
文学 あるいは詩によって 私のその ものの見方というかな
世界観みたいなもの あるいは思想性みたいなものが
培われてきたことは 間違いないわけだからね
土曜俱楽部「都会の風を切って走れ タクシードライバーに挑戦」(1987年)
僕はあの新宿中央公園で3日ぐらいですね そこでベンチで寝ていました
何気なく横にスポーツ新聞があったんですよ 取って見ましたら
「タクシー運転手募集意」という求人欄がね 目に入ったわけです
いろんな客がいたよ タクシーにはあれが付いているわけじゃない
運転手の写真とか名前が載ってわけじゃん サラリーマンがさ
酔っぱらったサラリーマン 「何 朝鮮籍?朝鮮籍か」とか言ってね
態度ね ゴロッと違うんだよね それであの 金を払わずにそのままね
バッと降りて行こうとするからね それでもう走って行って
取っ捕まえたわけや
初めは僕はね あんまり乗り気じゃなかったのね というのは
小説なんか 書いたことがないしね その後ね その店で度々会うわけよね
会う度に「書け 書け 書け 書け」言われて それで
「じゃあ書いてみようかな」と思って
1981(昭和56)年デビュー作「狂躁曲」を発表。
夕方5時です 千客万来「梁石日」(1999年)
本当にすぐね 3つ4つ映画の話が来たんですよ
びっくりしたんですけどね そうするとその 最後に崔洋一監督が
自分がぜひやりたいということで彼が作ったのが
「月はどっちに出ている」ですね 岸谷五朗主演で大ヒット
数々の映画賞を受賞 あの映画のいいところはね
原作 それから映画の制作 監督 こういうのが全部 在日だったわけ
在日もやればできるんだ というメッセージ
非常に強いメッセージを与えたと思う
1995年「夜を賭けて」で直木賞候補に
本格的に原稿で 飯を食えるようになったのは60(歳)ぐらいかな
だから俺は言うのよ 「俺は60ぐらいから 飯を食えるようになったんだから」
「お前 今何歳やねん」「40です」「まだお前 20年あるじゃんか」言うて
「何を今頃から うだうだ言ってんねん」「20年もあれば何でもできる」言うて
1998(平成10)年「血と骨」で山本周五郎賞 受賞
いつまでたってもね おやじとの確執というかな
私の中の おやじというものを ちゃんと処理できないわけよね
だから やっぱりちゃんとね まとめて おやじと向き合って書くと
人間の業や社会の矛盾を描き続けた87年の生涯でした。
世界のどこかで起こっている問題が 自分とは無縁ではあり得ないわけですよ
しかも その矛盾の中でもね 最もその 貧しい国の弱者やね
そういうところへ しわ寄せが来るのよ 必ず そういう所での
一番弱い存在を 描く必要があるんじゃないか 作家にはそういう
責任の一端があるんじゃないかと 思って書いているわけ
■先人たちの底力 知恵泉 斎藤道山 成り上がり者の❝人心掌握術❞
下克上 美濃の支配者 暗殺 裏切り 悪者のイメージが定着
悪いだけの人間では人の上に立てるはずがない
ゲスト 加来耕三 森保一 三村里江
油売りから国主になった男 油売りをしていたのは道山の父親
父親は僧侶から商人になり美濃の国の武士そして重臣になった
道山が国主になった
知恵その一 不平不満の中に新たな進路を見いだせ!
楽市楽座は道山が織田信長より先にやっていた
ボトムアップ型でいろんな人の思いを束ねながら上がってきた
領民たちの不平不満を救い上げることで国盗りを成功させた
竹中半兵衛(秀吉》稲葉一鉄(信長)
知恵その二 大きな敵を見つけて見方を固めろ!
調略の才能
サッカーと同じような戦術・戦略がある
弱いということは❝悪❞
より強いところと戦いほうが全体は一致団結
みんなが「挑んでやろう」という気持ちがあった
「俺たちやれるんじゃないのか」結束した力になった
相手を引き込んでカウンター攻撃を仕掛ける
自分たちが戦術・戦略として考えていた流れから
「俺たちは元々やれるんだ」というのをぶつけた
同点になった瞬間 相手の心理状態が変わった
道三は❝譲り状❞に美濃を信長に譲ると書いた
道山がいなければ信長はいなかった
戦国時代偉大なものを残した
利己よりも利他を実践した
冬雀老いに憧れ愛しみ
赤松に守られ生きる日脚伸ぶ
寒の雨音外してもそのままに
■あの人に会いたい ヤン・ソギル(作家) 梁石日
2024(令和6)年 87歳没
それまでの在日に対する小説の書き方と言うかな
視点というかな そういうものをやっぱり変えたかったわけ
まあ日本の社会というものを同時に描くと なぜなら
在日コリアンというのは まさに日本の社会の中で生きていてね
そして日本の社会のいろんなものから影響を受けているしね
俺は包丁を持ったまま金縛り状態だ
知るを楽しむ 人生の歩き方「梁石日❝血❞の咆哮(ほうこう)」(2008年)
今度はおやじがその僕の握っている包丁をね
腕を取って自分でこう刺すわけ 本当に刺すのよ 少しずつ
そういうふうにして 強迫観念を植え付けるわけよ
ふるさとの仲間たち「コリアンタウン 生きる力をくれた町」(1997年)
鶴橋 この辺で俺がタバコを売っていたわけ アメリカの
おふくろは だから こういう所でりんご箱を置いてやな
どぶろく売っとったわけや
文学 あるいは詩によって 私のその ものの見方というかな
世界観みたいなもの あるいは思想性みたいなものが
培われてきたことは 間違いないわけだからね
土曜俱楽部「都会の風を切って走れ タクシードライバーに挑戦」(1987年)
僕はあの新宿中央公園で3日ぐらいですね そこでベンチで寝ていました
何気なく横にスポーツ新聞があったんですよ 取って見ましたら
「タクシー運転手募集意」という求人欄がね 目に入ったわけです
いろんな客がいたよ タクシーにはあれが付いているわけじゃない
運転手の写真とか名前が載ってわけじゃん サラリーマンがさ
酔っぱらったサラリーマン 「何 朝鮮籍?朝鮮籍か」とか言ってね
態度ね ゴロッと違うんだよね それであの 金を払わずにそのままね
バッと降りて行こうとするからね それでもう走って行って
取っ捕まえたわけや
初めは僕はね あんまり乗り気じゃなかったのね というのは
小説なんか 書いたことがないしね その後ね その店で度々会うわけよね
会う度に「書け 書け 書け 書け」言われて それで
「じゃあ書いてみようかな」と思って
1981(昭和56)年デビュー作「狂躁曲」を発表。
夕方5時です 千客万来「梁石日」(1999年)
本当にすぐね 3つ4つ映画の話が来たんですよ
びっくりしたんですけどね そうするとその 最後に崔洋一監督が
自分がぜひやりたいということで彼が作ったのが
「月はどっちに出ている」ですね 岸谷五朗主演で大ヒット
数々の映画賞を受賞 あの映画のいいところはね
原作 それから映画の制作 監督 こういうのが全部 在日だったわけ
在日もやればできるんだ というメッセージ
非常に強いメッセージを与えたと思う
1995年「夜を賭けて」で直木賞候補に
本格的に原稿で 飯を食えるようになったのは60(歳)ぐらいかな
だから俺は言うのよ 「俺は60ぐらいから 飯を食えるようになったんだから」
「お前 今何歳やねん」「40です」「まだお前 20年あるじゃんか」言うて
「何を今頃から うだうだ言ってんねん」「20年もあれば何でもできる」言うて
1998(平成10)年「血と骨」で山本周五郎賞 受賞
いつまでたってもね おやじとの確執というかな
私の中の おやじというものを ちゃんと処理できないわけよね
だから やっぱりちゃんとね まとめて おやじと向き合って書くと
人間の業や社会の矛盾を描き続けた87年の生涯でした。
世界のどこかで起こっている問題が 自分とは無縁ではあり得ないわけですよ
しかも その矛盾の中でもね 最もその 貧しい国の弱者やね
そういうところへ しわ寄せが来るのよ 必ず そういう所での
一番弱い存在を 描く必要があるんじゃないか 作家にはそういう
責任の一端があるんじゃないかと 思って書いているわけ
■先人たちの底力 知恵泉 斎藤道山 成り上がり者の❝人心掌握術❞
下克上 美濃の支配者 暗殺 裏切り 悪者のイメージが定着
悪いだけの人間では人の上に立てるはずがない
ゲスト 加来耕三 森保一 三村里江
油売りから国主になった男 油売りをしていたのは道山の父親
父親は僧侶から商人になり美濃の国の武士そして重臣になった
道山が国主になった
知恵その一 不平不満の中に新たな進路を見いだせ!
楽市楽座は道山が織田信長より先にやっていた
ボトムアップ型でいろんな人の思いを束ねながら上がってきた
領民たちの不平不満を救い上げることで国盗りを成功させた
竹中半兵衛(秀吉》稲葉一鉄(信長)
知恵その二 大きな敵を見つけて見方を固めろ!
調略の才能
サッカーと同じような戦術・戦略がある
弱いということは❝悪❞
より強いところと戦いほうが全体は一致団結
みんなが「挑んでやろう」という気持ちがあった
「俺たちやれるんじゃないのか」結束した力になった
相手を引き込んでカウンター攻撃を仕掛ける
自分たちが戦術・戦略として考えていた流れから
「俺たちは元々やれるんだ」というのをぶつけた
同点になった瞬間 相手の心理状態が変わった
道三は❝譲り状❞に美濃を信長に譲ると書いた
道山がいなければ信長はいなかった
戦国時代偉大なものを残した
利己よりも利他を実践した
2025年1月22日水曜日
舟越保武&楽しい日本語&「餅間」&木暮陶句郎自薦十句
冬の空惚れる惚れない意のままに
手足荒る最後は彫りしものへ色
パキスタンとインド映画や冬ぬくし
冬銀河美しきもの追いかけん
月氷る無駄に時間を重ねをり
■日曜美術館 人生で美しいとは何か 彫刻家 舟越保武と子どもたち
彫刻家 舟越保武 (1912~2002.2.5 享年91) カトリック教徒
奇しくも「長崎26殉教者」と同じ日に亡くなられています
次男 舟越桂(彫刻家)(1951~2024)
一馬(長男)昇天 棺には貰って来た水仙の花 小さな手には十字架
変わることのない人間の美しさを表現
美しい人を作るのではなく
人間の存在が美しく思える
ありえない姿を現出させる。
カンナ(末娘 現在アーティストとして活動)
留学先のイギリスで鬱病となる
セラピーを通じて芸術の道へ
父 保武 母 道子 長女 千枝子 次女 苗子
三女 茉莉 次男 桂 三男 直木 四女 カンナ
保武の代表作
長崎26殉教者記念像 1962
聖歌を合唱しながら昇天する清らかな姿
昇天する晴れ着姿を作りたかったという気持ちで作りました
一人一人の人生を丹念に読み込み作りました
大切な家族への思いも込められていました
■夏井いつき俳句チャンネル
【第4回】楽しい日本語【ようしにもらうなら・前編】
へそで茶を沸かす養子や吊し柿 夏井いつき
夕顔の実のごと抱きて臍の緒を切る ローゼン千津
世嗣をもらう奈良臍ノ上青田波 家藤正人
■夏井いつき俳句チャンネル
一分季語ウンチク「餅間(もちあい)」
この「餅間」は新年の時候の季語になります
時候というこの期間であることがポイントになります
お餅をついたりとかそういった人の行動のことは
人事あるいは生活というジャンルに括られるのですが
この時候は期間 じゃあどういう期間なのかというと
年末についたお正月用の餅が無くなって
次14日の小正月に次の餅をつくまでの間ということだそうです
明確に何日から何日までという決まりがない季語でもあるのです
幕末の時代には8日から13日迄を「餅間」とするという
そういう記述もあるらしいのですが
現代の感覚としてはお餅が無くなったら
すぐ買いに行ってしまうみたいなこともあるので
古来からのこの「餅間」どういうニュアンスだったか
現代に生まれ直らせたい季語でもあるかもしれません
■木暮陶句郎 俳句の百科事典 ハイクロペディア
梅くぐる君は光となりながら 陶句郎
1 「ろくろはじめ 」木暮陶句郎自選十句 4K
水と土ぶつけて轆轤(ろくろ)始かな 陶句郎
2 「ジャズ」木暮陶句郎自選十句 4K
沈黙にジャズ滑り込む秋の宵 陶句郎
3 「恋占」木暮陶句郎自選十句 4K
春宵(しゅんしょう)の灯へ恋占の手を開く 陶句郎
4 「榛名の土」木暮陶句郎自選十句 4K
毬栗の落ちて春なの土を噛む 陶句郎
5 「茄子の花」木暮陶句郎自選十句 4K
茄子の花茄子に映ってをりにけり 陶句郎
6 「陶土練る」木暮陶句郎自選十句 4K
陶土練る野分の音を聞きながら 陶句郎
7 「桜の夜」木暮陶句郎自選十句 4K
心とはすぐ染まるもの桜の夜 陶句郎
8 「見合い」木暮陶句郎自選十句 4K
見合してボートに乗ってもうあわず 陶句郎
9 「木のやうな音」木暮陶句郎自選十句 4K
木のやうな音してラガーぶつかりぬ 陶句郎
10 「薫風」木暮陶句郎自選十句 4K
薫風の触れ合ふやうに出逢ひけり 陶句郎
パキスタンとインド映画や冬ぬくし
冬銀河美しきもの追いかけん
月氷る無駄に時間を重ねをり
■日曜美術館 人生で美しいとは何か 彫刻家 舟越保武と子どもたち
彫刻家 舟越保武 (1912~2002.2.5 享年91) カトリック教徒
奇しくも「長崎26殉教者」と同じ日に亡くなられています
次男 舟越桂(彫刻家)(1951~2024)
一馬(長男)昇天 棺には貰って来た水仙の花 小さな手には十字架
変わることのない人間の美しさを表現
美しい人を作るのではなく
人間の存在が美しく思える
ありえない姿を現出させる。
カンナ(末娘 現在アーティストとして活動)
留学先のイギリスで鬱病となる
セラピーを通じて芸術の道へ
父 保武 母 道子 長女 千枝子 次女 苗子
三女 茉莉 次男 桂 三男 直木 四女 カンナ
保武の代表作
長崎26殉教者記念像 1962
聖歌を合唱しながら昇天する清らかな姿
昇天する晴れ着姿を作りたかったという気持ちで作りました
一人一人の人生を丹念に読み込み作りました
大切な家族への思いも込められていました
■夏井いつき俳句チャンネル
【第4回】楽しい日本語【ようしにもらうなら・前編】
へそで茶を沸かす養子や吊し柿 夏井いつき
夕顔の実のごと抱きて臍の緒を切る ローゼン千津
世嗣をもらう奈良臍ノ上青田波 家藤正人
■夏井いつき俳句チャンネル
一分季語ウンチク「餅間(もちあい)」
この「餅間」は新年の時候の季語になります
時候というこの期間であることがポイントになります
お餅をついたりとかそういった人の行動のことは
人事あるいは生活というジャンルに括られるのですが
この時候は期間 じゃあどういう期間なのかというと
年末についたお正月用の餅が無くなって
次14日の小正月に次の餅をつくまでの間ということだそうです
明確に何日から何日までという決まりがない季語でもあるのです
幕末の時代には8日から13日迄を「餅間」とするという
そういう記述もあるらしいのですが
現代の感覚としてはお餅が無くなったら
すぐ買いに行ってしまうみたいなこともあるので
古来からのこの「餅間」どういうニュアンスだったか
現代に生まれ直らせたい季語でもあるかもしれません
■木暮陶句郎 俳句の百科事典 ハイクロペディア
梅くぐる君は光となりながら 陶句郎
1 「ろくろはじめ 」木暮陶句郎自選十句 4K
水と土ぶつけて轆轤(ろくろ)始かな 陶句郎
2 「ジャズ」木暮陶句郎自選十句 4K
沈黙にジャズ滑り込む秋の宵 陶句郎
3 「恋占」木暮陶句郎自選十句 4K
春宵(しゅんしょう)の灯へ恋占の手を開く 陶句郎
4 「榛名の土」木暮陶句郎自選十句 4K
毬栗の落ちて春なの土を噛む 陶句郎
5 「茄子の花」木暮陶句郎自選十句 4K
茄子の花茄子に映ってをりにけり 陶句郎
6 「陶土練る」木暮陶句郎自選十句 4K
陶土練る野分の音を聞きながら 陶句郎
7 「桜の夜」木暮陶句郎自選十句 4K
心とはすぐ染まるもの桜の夜 陶句郎
8 「見合い」木暮陶句郎自選十句 4K
見合してボートに乗ってもうあわず 陶句郎
9 「木のやうな音」木暮陶句郎自選十句 4K
木のやうな音してラガーぶつかりぬ 陶句郎
10 「薫風」木暮陶句郎自選十句 4K
薫風の触れ合ふやうに出逢ひけり 陶句郎
2025年1月21日火曜日
あの本、読みました? あの本大賞
大寒を岩肌覆うつららかな
雪催(もよい)凍えて揺れるかずら橋
宇治川へ誘う小話雪合羽
冬の靄(もや)どうでも良いの良くないの
冬の月インとアウトの繰り返し
■あの本、読みました?今夜決定!番組を見て読みたくなった本No.1あの本大賞
石原正康 河北壮平 西山奈々子 間室道子 内田剛
ノミネート作品
「板上に咲く」原田マハ/幻冬舎
「宙わたる教室」伊与原新/文藝春秋
ジョンキーツ「美しいものはとこしえに歓びである」
という言葉で知られるイギリス・ロマン派詩人
リチャード・ドーキンス「原因が分かるからこそ楽しめる理系小説」
「地図と拳」小川哲/集英社
「スピノザの診察室」夏川草介/水鈴社
「近畿地方のある場所について」背筋/KADOKAWA
「スモールワールド」一穂ミチ/講談社
「spring」恩田陸/筑摩書房
「百年の孤独」ガブリエル・ガリシア=マルケス著/鼓直訳/新潮社
「カフネ」阿部暁子/講談社
「小鳥とリムジン」小川糸/ポプラ社
あの本、読みました?大賞
1位 「カフネ」阿部暁子/講談社
2位 「スモールワールド」一穂ミチ/講談社
3位 「百年の孤独」ガブリエル・ガリシア=マルケス著/鼓直訳/新潮社
4位 「宙わたる教室」伊与原新/文藝春秋
5位 「spring」恩田陸/筑摩書房
★「カフネ」の一文 阿部暁子/講談社
せつなが恋人の実家に挨拶に行ったシーン
(薫子の父)
「小野寺さんの手料理を食べてみたいな。春彦にも作ってやっているんだろう?」
(薫子の母)
「そうね。私もプロの方のお料理、ぜひ食べてみたいわ」
(中略)
(せつな)
「かまいませんが、三千円いただきますよ」
(中略)
「それが私の時給なので。本当は交通費もいただくんですけど、
ご挨拶にうかがった身ですから、今回はおまけしておきます」
父も母も絶句していたが、母のほうが立ち直りは早かった。
鉄壁の笑顔を忘れ、噛みつかんばかりの形相になった。
(薫子の母)
「あなた、私たちからお金を取る気なの?」
(せつな)
「プロの料理が食べたいと、今お母さんがおっしゃったのでは」
(中略)
「それなら、私とお母さんの常識は違いますね。わたしはそもそも、
プロの料理人を休日にタダ働きさせようとは思わないので」
平然と言ってのけた小野寺せつなは作法の行き届いた手つきで
母が出したお茶を飲み、「玉露ですね、おいしい」
と何事もなかったかのように感想を述べた
★「宙わたる教室」の一文 伊与原新/文藝春秋
江美子が就職したのは、蒲田にあるタイル工場だった。
(中略)
勤務は二交代制。早番の日は朝五時に起床し、
五分で身支度をして正座で点呼を待つ。
先輩からの指導も厳しく、作業着の着方から部屋の整理整頓まで、
すべて規則通りでないと何度もやり直しをさせられた。
(中略)
「妻は勉強が好きで、高校へ行きたいという気持ちも人一倍強かった。
当時私も蒲田で働いていましたが、あの辺の行員の中には、
定時制高校に行っているものも結構いたんです。
だが妻の職場では、遅番の仕事が夜にかかるので通えない。
昼休みなんかに街角のベンチで教科書を開いている作業着姿の若者を
見かけると、うらやましくて仕方がなかったと言っていました。」
・特別賞
★第1回あの本、読みました?大賞
「名著に名酒」賞 偽電気ブラン
夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦/角川文庫
「夜は短し歩けよ乙女」の一文 森見登美彦/角川文庫
偽電気ブランは甘くもなく辛くもありません。
想像していたような、舌の上に稲妻が走るようなものでもありません。
口に含むたびに花が咲き、それを何ら余計な味を残さずに
お腹の中へ滑ってゆき、小さな温かみに変わります。
それがじつに可愛らしく、まるで
お腹の中が花畑になっていくようなのです。
飲んでいるうちにお腹の底から幸せになってくるのです。
★第1回あの本、読みました?大賞
鈴木保奈美イッキ読み賞
「なれのはて」加藤シゲアキ/講談社
★第1回あの本、読みました?大賞
文庫解説賞 朝井リョウ
雪催(もよい)凍えて揺れるかずら橋
宇治川へ誘う小話雪合羽
冬の靄(もや)どうでも良いの良くないの
冬の月インとアウトの繰り返し
■あの本、読みました?今夜決定!番組を見て読みたくなった本No.1あの本大賞
石原正康 河北壮平 西山奈々子 間室道子 内田剛
ノミネート作品
「板上に咲く」原田マハ/幻冬舎
「宙わたる教室」伊与原新/文藝春秋
ジョンキーツ「美しいものはとこしえに歓びである」
という言葉で知られるイギリス・ロマン派詩人
リチャード・ドーキンス「原因が分かるからこそ楽しめる理系小説」
「地図と拳」小川哲/集英社
「スピノザの診察室」夏川草介/水鈴社
「近畿地方のある場所について」背筋/KADOKAWA
「スモールワールド」一穂ミチ/講談社
「spring」恩田陸/筑摩書房
「百年の孤独」ガブリエル・ガリシア=マルケス著/鼓直訳/新潮社
「カフネ」阿部暁子/講談社
「小鳥とリムジン」小川糸/ポプラ社
あの本、読みました?大賞
1位 「カフネ」阿部暁子/講談社
2位 「スモールワールド」一穂ミチ/講談社
3位 「百年の孤独」ガブリエル・ガリシア=マルケス著/鼓直訳/新潮社
4位 「宙わたる教室」伊与原新/文藝春秋
5位 「spring」恩田陸/筑摩書房
★「カフネ」の一文 阿部暁子/講談社
せつなが恋人の実家に挨拶に行ったシーン
(薫子の父)
「小野寺さんの手料理を食べてみたいな。春彦にも作ってやっているんだろう?」
(薫子の母)
「そうね。私もプロの方のお料理、ぜひ食べてみたいわ」
(中略)
(せつな)
「かまいませんが、三千円いただきますよ」
(中略)
「それが私の時給なので。本当は交通費もいただくんですけど、
ご挨拶にうかがった身ですから、今回はおまけしておきます」
父も母も絶句していたが、母のほうが立ち直りは早かった。
鉄壁の笑顔を忘れ、噛みつかんばかりの形相になった。
(薫子の母)
「あなた、私たちからお金を取る気なの?」
(せつな)
「プロの料理が食べたいと、今お母さんがおっしゃったのでは」
(中略)
「それなら、私とお母さんの常識は違いますね。わたしはそもそも、
プロの料理人を休日にタダ働きさせようとは思わないので」
平然と言ってのけた小野寺せつなは作法の行き届いた手つきで
母が出したお茶を飲み、「玉露ですね、おいしい」
と何事もなかったかのように感想を述べた
★「宙わたる教室」の一文 伊与原新/文藝春秋
江美子が就職したのは、蒲田にあるタイル工場だった。
(中略)
勤務は二交代制。早番の日は朝五時に起床し、
五分で身支度をして正座で点呼を待つ。
先輩からの指導も厳しく、作業着の着方から部屋の整理整頓まで、
すべて規則通りでないと何度もやり直しをさせられた。
(中略)
「妻は勉強が好きで、高校へ行きたいという気持ちも人一倍強かった。
当時私も蒲田で働いていましたが、あの辺の行員の中には、
定時制高校に行っているものも結構いたんです。
だが妻の職場では、遅番の仕事が夜にかかるので通えない。
昼休みなんかに街角のベンチで教科書を開いている作業着姿の若者を
見かけると、うらやましくて仕方がなかったと言っていました。」
・特別賞
★第1回あの本、読みました?大賞
「名著に名酒」賞 偽電気ブラン
夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦/角川文庫
「夜は短し歩けよ乙女」の一文 森見登美彦/角川文庫
偽電気ブランは甘くもなく辛くもありません。
想像していたような、舌の上に稲妻が走るようなものでもありません。
口に含むたびに花が咲き、それを何ら余計な味を残さずに
お腹の中へ滑ってゆき、小さな温かみに変わります。
それがじつに可愛らしく、まるで
お腹の中が花畑になっていくようなのです。
飲んでいるうちにお腹の底から幸せになってくるのです。
★第1回あの本、読みました?大賞
鈴木保奈美イッキ読み賞
「なれのはて」加藤シゲアキ/講談社
★第1回あの本、読みました?大賞
文庫解説賞 朝井リョウ
2025年1月20日月曜日
兼題「寒椿(侘助)」&テーマ「踊る」
冬の陽や背から受け取り心をも
暮早し道案内に導かれ
雪催(もよい)居間をストーブフル稼働
寒昴無いものねだりしてみても
吾に還る独りの時間冬陽射し
■NHK俳句 兼題「寒椿(侘助)」
選者 木暮陶句郎 ゲスト 篠井(ささい)英介 司会 柴田英嗣
年間テーマ「器に季語を盛る」
「選は創作なり」と高浜虚子が言っている
10か月で選句で6万数千句選んだ 毎月9句特選を選ぶ
一句一句に(作者の)人生がある それがとても面白い
選句大好き 木暮陶句郎です。先生最高!私は先生が大好きです!
俳句は時間が止まって自分の気持ちと向き合える
俳句には立ち止まるという意味合いがある
(寒椿・侘助)どちらもツバキ属の仲間 でも少しずつ違う
侘助は花びらが開ききらない筒咲き
寒椿は花びらが開ききる
植物にとって厳しい時期がやってくる
寒い中でなかなか花が見られない
「寒椿」や「侘助」が一生懸命咲いている
凛とした寒椿の姿を見ると温かい椿の力を感じる
侘助には赤・白・斑(ふ)入りもある
寒椿・侘助の名句
侘助のひとつの花の日数(ひかず)かな 阿波野青畝(せいほ)
(侘助を)茶花として一輪選ぶ 茶室の床の間に生ける
その茶花がいつ開くのか この侘助の命がいつ尽きるのだろうか
器に季語を盛る
「寒椿」「侘助」って「和」じゃないですか フレンチの風が吹いている
寒卵(冬の季語)
寒中(小寒~立春)
1月から2月にかけての寒い時期に鶏が生んだ卵 滋養が豊富
・兼題「寒椿・侘助」特選六句発表
侘助や師匠のこゑはよく通り 砂山恵子
陶工の頬につちくれ寒椿 柚木(ゆうき)みゆき
侘助や曖昧母音ひとつ吐く 吉川佳生(よしお)
(侘助は筒咲き もし侘助がしゃべるとしたら訳がわからない
母音を発するんじゃないかと作者は発想を飛ばした)
乳房失ひ白の眩しき寒椿 伏見昌子
(定型では治まりきらない思いが込められている 白に限定しているということは
自分のまだ真っ白の未来 これからどうなるんだろうという思い
それが「白の眩しき」これは未来が眩しい
そんな思いが「寒椿」という季語に託されている)
寒椿時に聞こゆる鈴祓(すずはらい) 長谷川淑子(よしこ)
留石(とめいし)の向かう侘助らしき花 中田白甫(はくほ)
(留石とは「ここから向うへ行ってはいけないよ」と石に縄をかけたもの 篠井英介氏
季語が「寒椿」だったらズカズカ行って近くで見るのではと木暮陶句郎先生)
・篠井(ささい)英介の一句
床柱夕日影さす寒椿 篠井英介
添削(「夕日影さす」が「床柱」と「寒椿」にかかっている
俳句は省略の文学 「夕日影」は「夕影」と言い換えられる
「夕影」は「さす」という言葉は省略できる
「夕日影さす」に「倒す」という他動詞が入れられる
凛として咲いているという気持ちも入れられる
「床柱」がメインになる「寒椿」を奥ゆかしく添え物に
「寒椿」の白も陰って「床柱」の影が畳にうつっている)
寒椿夕影倒す床柱
・特選三席
一席 片口に白洲正子の寒椿 三船悦子
(白洲正子14歳で女性として能舞台に立つ アメリカに留学
海外から日本文化を見た 古美術や骨董を勉強
片口とは液体を他の容器に移す道具 そんな片口を花器として花を生けた
これこそが「見立ての美」
女流であり文化人としての最先端 奥深い日本の文化を愛された
骨董にも造詣が深い 「白洲正子と片口が出てくると日本の文化を象徴する
そこに寒椿 満点 日本の伝統のすごみを感じる句
すべては人名が効いている)
二席 侘助や父の句帳のみみず文字 西田尚子
(俳句に向き合ったお父さんの気持ちを受けて作者も俳句を作っている
「みみず文字」を想像しながら読んでいる娘の姿も見えてくる)
三席 寒椿徳利に挿して酒やめむ 民興次
(徳利に寒椿を生けてお酒を入れないようにしようと作者の気持ちを詠んだ)
・柴田の歩み
俳句で歴史や文化を学ぶ
(歴史や文化を学べるのははいくのいいところ)
■NHK短歌 テーマ「踊る」
選者 大森静佳 ゲスト 町田康(こう) 司会 尾崎世界観
年間テーマ「“ものがたり”の深みへ」
作るなよ自在自由に作られろ豚に生まれろそれが歌やぞ
町田康
意味が先に来るのではなく音が先に来るのでもなく同時に来る
自然と直感的に生まれてくる
日常の中で小さい踊りを見つけ出す
歌に❝ものがたり❞あり
・入選九首 てーま「踊る」
三席 揺れながら鍋かきまわす祖母のあの地球をあやすような足どり
舟樢(ふなと)いま
二席 北風に踊る落葉を追いかけて君の一日(ひとひ)へ映り込みたい
山口詢子(あやこ)
手は祈り胸は生き物足は風よろしく今日も驚かせてね
橋本南美(みなみ) 町田康氏は手は殴り足は蹴りだとか…。
バス停で踊る少女を軸にして午前八時の世界が回る
有賀(あるが)拓郎
早春の窓の光にゆつくりと手のみで踊る明日は退院
鈴木正芳
一席 私 湯の中でパスタが踊る愛憎と言うけれどほぼ憎なんでしょう?
砂崎柊(すなさきしゅう)
仕事場のゴミ出すわたし裏口でほんの一秒踊って戻る
青野朔(さく)
革命のなき国にゐて盆踊りの輪とふ輪廻に身を預けたり
吉行直人 歴史的仮名遣いは人が使うと腹が立つと町田康氏
かろやかに口開け腕上げ踊ってる埴輪のように信じてみたい
小野寺寿子
・ものがたりの深みへ
宇治拾遺物語 町田康訳
「鬼にこぶとらるゝ事」を現代語訳した
人間の細かい心の動きが描かれてある
どう現実を見るかによって 同じ景色を見てても
人によって歌が変わってくるのと一緒 どう読むかという話
大森静佳
優しいおじいさんと欲張りなおじいさんの対比をきつくして教訓を提示する
表現する時の態度の話として読める
善/悪や優しい/欲張りの話ではなく町田さんの表現論・文学論として読める
町田康
歌や踊りには目的がないはず
実際どういう気持ちでその人は踊っているのか 表現したい
原文
翁伸び上がり屈まりて舞ふべき限りすぢり
もぢりえい声を出して一庭を走り廻り舞ふ
現代語訳
おじいさんは、身体を伸ばしたり縮めたりしながら、
舞える限りに体をくねらせ、かけ声を出して、そこら中を駆け回って踊った。
町田康氏訳
うんと身体を縮めたかと思うと、気合いとともにビヨヨンと伸びたり、
身体を海老のように曲げたり、ときに娘のように腰をくねらせ、
指先の表現にも細心の注意を払い、ときにロックスターのように
律動的な文言で観客を煽りながらステージ狭しと駆け回ったり、と、
伸縮自在、緩急自在、技、神に入って、お爺さん、一世一代の名演であった。
大森静佳女史の気に入った「こぶとりじいさん」のしゃべり言葉
「なるほどね。でも、それって極悪じゃね?」
「ここまで言うんだからマジじゃね?やっぱ、瘤、いこうよ、瘤」
町田康氏
ある種ルールに従っていない人たちのような軽さ
人生を楽しんでいる感じも出したかった
踊りたい気持ちが夜空に穴をあけ雀わんさか降ってきたっけ
大森静佳
町田康さんの感想
時間がたってもその時の感情が生々しく表れている
大森静佳
自分が内側にいてしゃべっている感じを出そうと思うと
自然にしゃべり言葉も出てくる
町田康氏
大森さんが踊りたかったんじゃないですか
・言葉のバトン
生きる輝き背中を押され
松田茂 コピーライター
⇩
走りたい足がはいてたハイヒール
宮田愛萌(まなも)(作家・タレント)
小説「春・出逢い」を発表
短歌の魅力は瞬間を共有できること
雪催(もよい)居間をストーブフル稼働
寒昴無いものねだりしてみても
吾に還る独りの時間冬陽射し
■NHK俳句 兼題「寒椿(侘助)」
選者 木暮陶句郎 ゲスト 篠井(ささい)英介 司会 柴田英嗣
年間テーマ「器に季語を盛る」
「選は創作なり」と高浜虚子が言っている
10か月で選句で6万数千句選んだ 毎月9句特選を選ぶ
一句一句に(作者の)人生がある それがとても面白い
選句大好き 木暮陶句郎です。先生最高!私は先生が大好きです!
俳句は時間が止まって自分の気持ちと向き合える
俳句には立ち止まるという意味合いがある
(寒椿・侘助)どちらもツバキ属の仲間 でも少しずつ違う
侘助は花びらが開ききらない筒咲き
寒椿は花びらが開ききる
植物にとって厳しい時期がやってくる
寒い中でなかなか花が見られない
「寒椿」や「侘助」が一生懸命咲いている
凛とした寒椿の姿を見ると温かい椿の力を感じる
侘助には赤・白・斑(ふ)入りもある
寒椿・侘助の名句
侘助のひとつの花の日数(ひかず)かな 阿波野青畝(せいほ)
(侘助を)茶花として一輪選ぶ 茶室の床の間に生ける
その茶花がいつ開くのか この侘助の命がいつ尽きるのだろうか
器に季語を盛る
「寒椿」「侘助」って「和」じゃないですか フレンチの風が吹いている
寒卵(冬の季語)
寒中(小寒~立春)
1月から2月にかけての寒い時期に鶏が生んだ卵 滋養が豊富
・兼題「寒椿・侘助」特選六句発表
侘助や師匠のこゑはよく通り 砂山恵子
陶工の頬につちくれ寒椿 柚木(ゆうき)みゆき
侘助や曖昧母音ひとつ吐く 吉川佳生(よしお)
(侘助は筒咲き もし侘助がしゃべるとしたら訳がわからない
母音を発するんじゃないかと作者は発想を飛ばした)
乳房失ひ白の眩しき寒椿 伏見昌子
(定型では治まりきらない思いが込められている 白に限定しているということは
自分のまだ真っ白の未来 これからどうなるんだろうという思い
それが「白の眩しき」これは未来が眩しい
そんな思いが「寒椿」という季語に託されている)
寒椿時に聞こゆる鈴祓(すずはらい) 長谷川淑子(よしこ)
留石(とめいし)の向かう侘助らしき花 中田白甫(はくほ)
(留石とは「ここから向うへ行ってはいけないよ」と石に縄をかけたもの 篠井英介氏
季語が「寒椿」だったらズカズカ行って近くで見るのではと木暮陶句郎先生)
・篠井(ささい)英介の一句
床柱夕日影さす寒椿 篠井英介
添削(「夕日影さす」が「床柱」と「寒椿」にかかっている
俳句は省略の文学 「夕日影」は「夕影」と言い換えられる
「夕影」は「さす」という言葉は省略できる
「夕日影さす」に「倒す」という他動詞が入れられる
凛として咲いているという気持ちも入れられる
「床柱」がメインになる「寒椿」を奥ゆかしく添え物に
「寒椿」の白も陰って「床柱」の影が畳にうつっている)
寒椿夕影倒す床柱
・特選三席
一席 片口に白洲正子の寒椿 三船悦子
(白洲正子14歳で女性として能舞台に立つ アメリカに留学
海外から日本文化を見た 古美術や骨董を勉強
片口とは液体を他の容器に移す道具 そんな片口を花器として花を生けた
これこそが「見立ての美」
女流であり文化人としての最先端 奥深い日本の文化を愛された
骨董にも造詣が深い 「白洲正子と片口が出てくると日本の文化を象徴する
そこに寒椿 満点 日本の伝統のすごみを感じる句
すべては人名が効いている)
二席 侘助や父の句帳のみみず文字 西田尚子
(俳句に向き合ったお父さんの気持ちを受けて作者も俳句を作っている
「みみず文字」を想像しながら読んでいる娘の姿も見えてくる)
三席 寒椿徳利に挿して酒やめむ 民興次
(徳利に寒椿を生けてお酒を入れないようにしようと作者の気持ちを詠んだ)
・柴田の歩み
俳句で歴史や文化を学ぶ
(歴史や文化を学べるのははいくのいいところ)
■NHK短歌 テーマ「踊る」
選者 大森静佳 ゲスト 町田康(こう) 司会 尾崎世界観
年間テーマ「“ものがたり”の深みへ」
作るなよ自在自由に作られろ豚に生まれろそれが歌やぞ
町田康
意味が先に来るのではなく音が先に来るのでもなく同時に来る
自然と直感的に生まれてくる
日常の中で小さい踊りを見つけ出す
歌に❝ものがたり❞あり
・入選九首 てーま「踊る」
三席 揺れながら鍋かきまわす祖母のあの地球をあやすような足どり
舟樢(ふなと)いま
二席 北風に踊る落葉を追いかけて君の一日(ひとひ)へ映り込みたい
山口詢子(あやこ)
手は祈り胸は生き物足は風よろしく今日も驚かせてね
橋本南美(みなみ) 町田康氏は手は殴り足は蹴りだとか…。
バス停で踊る少女を軸にして午前八時の世界が回る
有賀(あるが)拓郎
早春の窓の光にゆつくりと手のみで踊る明日は退院
鈴木正芳
一席 私 湯の中でパスタが踊る愛憎と言うけれどほぼ憎なんでしょう?
砂崎柊(すなさきしゅう)
仕事場のゴミ出すわたし裏口でほんの一秒踊って戻る
青野朔(さく)
革命のなき国にゐて盆踊りの輪とふ輪廻に身を預けたり
吉行直人 歴史的仮名遣いは人が使うと腹が立つと町田康氏
かろやかに口開け腕上げ踊ってる埴輪のように信じてみたい
小野寺寿子
・ものがたりの深みへ
宇治拾遺物語 町田康訳
「鬼にこぶとらるゝ事」を現代語訳した
人間の細かい心の動きが描かれてある
どう現実を見るかによって 同じ景色を見てても
人によって歌が変わってくるのと一緒 どう読むかという話
大森静佳
優しいおじいさんと欲張りなおじいさんの対比をきつくして教訓を提示する
表現する時の態度の話として読める
善/悪や優しい/欲張りの話ではなく町田さんの表現論・文学論として読める
町田康
歌や踊りには目的がないはず
実際どういう気持ちでその人は踊っているのか 表現したい
原文
翁伸び上がり屈まりて舞ふべき限りすぢり
もぢりえい声を出して一庭を走り廻り舞ふ
現代語訳
おじいさんは、身体を伸ばしたり縮めたりしながら、
舞える限りに体をくねらせ、かけ声を出して、そこら中を駆け回って踊った。
町田康氏訳
うんと身体を縮めたかと思うと、気合いとともにビヨヨンと伸びたり、
身体を海老のように曲げたり、ときに娘のように腰をくねらせ、
指先の表現にも細心の注意を払い、ときにロックスターのように
律動的な文言で観客を煽りながらステージ狭しと駆け回ったり、と、
伸縮自在、緩急自在、技、神に入って、お爺さん、一世一代の名演であった。
大森静佳女史の気に入った「こぶとりじいさん」のしゃべり言葉
「なるほどね。でも、それって極悪じゃね?」
「ここまで言うんだからマジじゃね?やっぱ、瘤、いこうよ、瘤」
町田康氏
ある種ルールに従っていない人たちのような軽さ
人生を楽しんでいる感じも出したかった
踊りたい気持ちが夜空に穴をあけ雀わんさか降ってきたっけ
大森静佳
町田康さんの感想
時間がたってもその時の感情が生々しく表れている
大森静佳
自分が内側にいてしゃべっている感じを出そうと思うと
自然にしゃべり言葉も出てくる
町田康氏
大森さんが踊りたかったんじゃないですか
・言葉のバトン
生きる輝き背中を押され
松田茂 コピーライター
⇩
走りたい足がはいてたハイヒール
宮田愛萌(まなも)(作家・タレント)
小説「春・出逢い」を発表
短歌の魅力は瞬間を共有できること
2025年1月19日日曜日
ライジング若冲&剣持勇「ラタンチェア」
虫が食うレースの如き白菜よ
御年始の休み激減過疎の街
やわやわの甘き干し柿届きをり
陽射し浴び石啄ばまん冬雀
寒の雨車飛ばしてお買い物
■ライジング若冲「天才かく覚醒せり 完全版」
若冲
大盈(たいえい)ハ冲(なむ)シキガ若(ごと)キモ其(そ)ノ用ハ窮(きわ)マラズ
心の中に吹く風、雲を割って射す陽、稲妻の光みたいなものを絵に込めようと思う
水 器に盈(みち)る
虚心坦懐(きょしんたんかい)ナレバ心眼(しんがん)自(おの)ズカラ開ク
洛陽(らくよう)ノ画壇(がだん)ニ三傑有リ
巷(こう)人未(じんいま)ダ其(そ)ノ名ヲ不知(しらず)
古(いにしえ)ノ伏龍(ふくりょう)鳳雛(ほうすう)ニ比ス可(べ)シ
大雅(たいが)ハ雌伏(しふく)スル虎ニ似タリ
一度(ひとたび)咆哮(ほうこう)スレバ山国(さんごく)震撼(しんかん)ス
岩子(がんし)ハ巣ヲ出ル鳳(おおとり)ノ雛ノ如シ
他日(たじつ)飛翔スレバ万里ヲ往(ゆ)かん
若冲ハ深淵ノ龍ニ例フ可(べ)シ
時ヲ得テ天ニ昇レバ雷鳴轟カン
売茶翁 生前葬
皆絵を絵にする者なり
未だよく物を絵にせし者を見ず
技をもって売らんとするも
未だよく技より勝る者あらず
伊藤若冲 是れ人より奇(こと)なる所
「動植綵絵」三十幅の制作を開始
理解してくれる者を千年待つ 千載 具眼徒ヲ俟ツ
絵を描く技はもはや神の領域にある 丹青活手ノ妙神ニ通ズ
売茶翁 死す 享年八十九
俗世に生きたが上手くいかず 処世不知世
禅僧になってみたが悟れず 学禅不会禅
しかたなく茶道具を担ぎ 但将一担具
いたる所で茶を売った 茶茗致処煎
いたる所で茶を売ってみたが 致処煎兮(けい)
たいして客も来ず 無人買
むなしく道具を抱えて川辺に座っている 空擁提籃座渓辺
笑うなら笑え! 咦(わらう)
世の評価を受け入れる者こそ潔い 一任天下人粲(かがやく)然
圓山應舉
相国寺
伊藤若冲 大典顕常 円山応挙 池大雅 売茶翁
遊び心で伊藤若冲と大典顕常を同性愛者にしたのでしょうか❓(謎!)
■新美の巨人たち【椅子の名作!剣持勇「ラタンチェア」×シシド・カフカ】
剣持勇1912~1971
「デザイナーは技術に精通した芸術家である」
「剣持勇の世界」より
デザインにおける美とはあとからつけたすものではなく
内部から表われてくるものである
今も剣持勇の椅子は連綿と作り続けられています。
新潟県長岡市の郊外「ワイ・エム・ケー長岡」で…。
ラタン(藤)
熱帯や亜熱帯に自生するヤシ科のつる性植物
主にフィリピンから品質の良いものを輸入している
現地で皮を落とした状態で輸入され使用される
1964年(昭和39年)ラタンチェアは
ニューヨーク近代美術館(MOMA)に永久コレクションとして収蔵される
無名を望んで土着とモダン
「椅子は家具の中でも最も設計製作の難しいものの一つに数えられる
何故かと云えば椅子は人体に接触して用いられる点では
家具中髄一であるからだ
つまり快適 良否の判断が直接人体の感覚によって決定される」
「僕の栄養剤 名づけて無名文化財」より
つまり「いい」ものには昔も今も変わりないからである
松本哲夫「剣持勇ジャパニーズ・モダンの提唱者」より
やはり強力な個性というか 好みというか
それが土着的な泥くささであれ日本的な破調であれ
そういう謎を秘めたデザインの人間的なユニークさが確かにありました
気になるラタンチェアのお値段は…。
ラタンチェア(C-3160タイプ)¥319,000(税込)
上野樹里女史のナレーション アートトラベラー シシド・カフカ女史
最高でした。
作り物に辟易していました。
やはり自然体でなくっちゃぁ~です。
御年始の休み激減過疎の街
やわやわの甘き干し柿届きをり
陽射し浴び石啄ばまん冬雀
寒の雨車飛ばしてお買い物
■ライジング若冲「天才かく覚醒せり 完全版」
若冲
大盈(たいえい)ハ冲(なむ)シキガ若(ごと)キモ其(そ)ノ用ハ窮(きわ)マラズ
心の中に吹く風、雲を割って射す陽、稲妻の光みたいなものを絵に込めようと思う
水 器に盈(みち)る
虚心坦懐(きょしんたんかい)ナレバ心眼(しんがん)自(おの)ズカラ開ク
洛陽(らくよう)ノ画壇(がだん)ニ三傑有リ
巷(こう)人未(じんいま)ダ其(そ)ノ名ヲ不知(しらず)
古(いにしえ)ノ伏龍(ふくりょう)鳳雛(ほうすう)ニ比ス可(べ)シ
大雅(たいが)ハ雌伏(しふく)スル虎ニ似タリ
一度(ひとたび)咆哮(ほうこう)スレバ山国(さんごく)震撼(しんかん)ス
岩子(がんし)ハ巣ヲ出ル鳳(おおとり)ノ雛ノ如シ
他日(たじつ)飛翔スレバ万里ヲ往(ゆ)かん
若冲ハ深淵ノ龍ニ例フ可(べ)シ
時ヲ得テ天ニ昇レバ雷鳴轟カン
売茶翁 生前葬
皆絵を絵にする者なり
未だよく物を絵にせし者を見ず
技をもって売らんとするも
未だよく技より勝る者あらず
伊藤若冲 是れ人より奇(こと)なる所
「動植綵絵」三十幅の制作を開始
理解してくれる者を千年待つ 千載 具眼徒ヲ俟ツ
絵を描く技はもはや神の領域にある 丹青活手ノ妙神ニ通ズ
売茶翁 死す 享年八十九
俗世に生きたが上手くいかず 処世不知世
禅僧になってみたが悟れず 学禅不会禅
しかたなく茶道具を担ぎ 但将一担具
いたる所で茶を売った 茶茗致処煎
いたる所で茶を売ってみたが 致処煎兮(けい)
たいして客も来ず 無人買
むなしく道具を抱えて川辺に座っている 空擁提籃座渓辺
笑うなら笑え! 咦(わらう)
世の評価を受け入れる者こそ潔い 一任天下人粲(かがやく)然
圓山應舉
相国寺
伊藤若冲 大典顕常 円山応挙 池大雅 売茶翁
遊び心で伊藤若冲と大典顕常を同性愛者にしたのでしょうか❓(謎!)
■新美の巨人たち【椅子の名作!剣持勇「ラタンチェア」×シシド・カフカ】
剣持勇1912~1971
「デザイナーは技術に精通した芸術家である」
「剣持勇の世界」より
デザインにおける美とはあとからつけたすものではなく
内部から表われてくるものである
今も剣持勇の椅子は連綿と作り続けられています。
新潟県長岡市の郊外「ワイ・エム・ケー長岡」で…。
ラタン(藤)
熱帯や亜熱帯に自生するヤシ科のつる性植物
主にフィリピンから品質の良いものを輸入している
現地で皮を落とした状態で輸入され使用される
1964年(昭和39年)ラタンチェアは
ニューヨーク近代美術館(MOMA)に永久コレクションとして収蔵される
無名を望んで土着とモダン
「椅子は家具の中でも最も設計製作の難しいものの一つに数えられる
何故かと云えば椅子は人体に接触して用いられる点では
家具中髄一であるからだ
つまり快適 良否の判断が直接人体の感覚によって決定される」
「僕の栄養剤 名づけて無名文化財」より
つまり「いい」ものには昔も今も変わりないからである
松本哲夫「剣持勇ジャパニーズ・モダンの提唱者」より
やはり強力な個性というか 好みというか
それが土着的な泥くささであれ日本的な破調であれ
そういう謎を秘めたデザインの人間的なユニークさが確かにありました
気になるラタンチェアのお値段は…。
ラタンチェア(C-3160タイプ)¥319,000(税込)
上野樹里女史のナレーション アートトラベラー シシド・カフカ女史
最高でした。
作り物に辟易していました。
やはり自然体でなくっちゃぁ~です。
2025年1月18日土曜日
大鏡&手紙&ショーペンハウアーの名言
寒日和指紋横割れ縦に裂け
包丁を持つ手変色柿すだれ
渋柿を剥く手真っ黒蒼き空
吊し柿軒下ずしり堂々と
駐車場一人指折り冬の鳥
■10min.ボックス古文・漢文 大鏡
平安時代を舞台にした歴史物語「大鏡(おおかがみ)」
宮廷での権力争い 万寿二年(一〇二五年)
先(さい)つ頃、雲林院(うりんゐん)の菩薩講に詣でてはべりしかば、
例人よりはこよなう年老い、うたてげなる翁二人、
嫗(おうな)といきあひて、同じ所に居ぬめり。
大宅世継(おおやけのよつぎ)
「年頃、昔の人に対面(たいめ)して、いかで世の中の見聞くことをも
聞こえあはせむ、このただ今の入道殿下の御有様をも申しあはせばやと
思ふに、あはれにうれしくも会ひ申したるかな」
道長の魅力 伊周(これちか)との弓争い
「道長が家より帝・后立ちたまふべきものならば、この矢あたれ」
同じものを中心(なから)にはあたるものかは。
「摂政・関白すべきものならば、この矢あたれ」
栓子(せんし)道長の姉
御顔は赤み 濡れつやめかせ たかひながら、御口はこころよく 笑ませたまひて、
「あわや、宣旨(せんじ)下りぬ」とこそ申させたまひけれ。
違う視点からの語り
敦明(あつあきら)親王(東宮)
(侍さむらひ)
「このほどの御ことどもこそ、ことのほかに変はりてはべれ。
なにがしは、いとくはしく うけたまはること はべるものを」
(世継)
「さもはべるらむ。伝はりぬることは、いでいで うけたまはらばや」
「あはれにも、またをかしうも」
■10min.ボックス現代文 手紙
手紙
夏目漱石(一八七六-一九一六)の手紙
(大正二年七月二十一日 寺田寅彦 宛)
きのうは留守に来て菓子を沢山置いて行って下さいまして
まことに難有(ありがと)う存じます
あの菓子は暑中見舞なんだろうと想像しましたがそうなんですか
夫(それ)とも不図(ふと)した出来心から拙宅へ来て
寝転んで食う積(つもり)で買って来たんですか
そうすると大いにあてが外れた訳で恐縮の度を一層強く
することになります 兎に角(とにかく)菓子は食いましたよ
(明治三十四年二月二十日 鏡子宛)
お前でも子供でも死んだら電報くらいは来るだろうと
思って居る夫(それ)だから便りのないのは左程(さほど)
心配にはならない然(しか)し甚(はなは)だ寂(さびし)い
おれの様な不人情なものでも頻(しさ)りに御前が恋しい
是丈(これだけ)は奇特(きとく)と云って褒めて貰わなければならぬ
(明治四十三年九月十一日 筆子、恒子、榮子 宛)
此頃は大分よくなりました。
今に東京へ帰ったらみんなであそびましょう。
三人とも学校がはじまったらべんきょうするんですよ。
御父さまは此手紙あおむけにねていて万年ふででかきました。
からだがつかれて長い御返事が書けません
芥川龍之介(一八九二-一九二七)の手紙
(大正五年八月二十五日 塚本文宛)
貰いたい理由はたった一つあるきりです。
そうして その理由は 僕は 文ちゃんが好きだと 云う事です。
勿論昔から 好きでした。今でも 好きです。
僕のやっている商売は 今の日本で 一番金に ならない商売です。
その上 僕自身も 碌(ろく)に金はありません。ですから
生活の程度から 云えば 何時までたっても 知れたものです。
それでよければ 来て下さい。
僕には 文ちゃん自身の 口から かざり気のない 返事を聞きたいと
思って居ます。繰返して書きますが、理由は 一つしかありません。
僕は文ちゃんが好きです。それだけでよければ来て下さい。
宮沢賢治(一八六九-一九三三)の手紙
(昭和八年九月十一日 柳原昌悦 宛)
風のなかを 自由に歩けるとか、はっきりした声で
何時間も話ができるとか、じぶんの兄弟のために
何円かを手伝えるとか いうようなことは
できないものから見れば 神の技にも均しいものです。
どうか今のご生活を大切に お護(まも)り下さい。
上のそらでなしに、しっかり落ちついて、
一時の感激や興奮を避け、楽しめるものは楽しみ、
苦しまなければ ならないものは苦しんで 生きて行きましょう。
■名言アドバイザー
ショーペンハウアーの名言一覧
https://meigen-adviser.com/person/schopenhauer/
名誉は、外に現れた良心であり、良心は、内に潜む名誉である。
孤独は優れた精神の持ち主の運命である。
虚栄心は人を饒舌にし、自尊心は沈黙にする。
富は海水のようなものだ。飲めば飲むほどに渇きをおぼえる。
渋柿を剥く手真っ黒蒼き空
吊し柿軒下ずしり堂々と
駐車場一人指折り冬の鳥
■10min.ボックス古文・漢文 大鏡
平安時代を舞台にした歴史物語「大鏡(おおかがみ)」
宮廷での権力争い 万寿二年(一〇二五年)
先(さい)つ頃、雲林院(うりんゐん)の菩薩講に詣でてはべりしかば、
例人よりはこよなう年老い、うたてげなる翁二人、
嫗(おうな)といきあひて、同じ所に居ぬめり。
大宅世継(おおやけのよつぎ)
「年頃、昔の人に対面(たいめ)して、いかで世の中の見聞くことをも
聞こえあはせむ、このただ今の入道殿下の御有様をも申しあはせばやと
思ふに、あはれにうれしくも会ひ申したるかな」
道長の魅力 伊周(これちか)との弓争い
「道長が家より帝・后立ちたまふべきものならば、この矢あたれ」
同じものを中心(なから)にはあたるものかは。
「摂政・関白すべきものならば、この矢あたれ」
栓子(せんし)道長の姉
御顔は赤み 濡れつやめかせ たかひながら、御口はこころよく 笑ませたまひて、
「あわや、宣旨(せんじ)下りぬ」とこそ申させたまひけれ。
違う視点からの語り
敦明(あつあきら)親王(東宮)
(侍さむらひ)
「このほどの御ことどもこそ、ことのほかに変はりてはべれ。
なにがしは、いとくはしく うけたまはること はべるものを」
(世継)
「さもはべるらむ。伝はりぬることは、いでいで うけたまはらばや」
「あはれにも、またをかしうも」
■10min.ボックス現代文 手紙
手紙
夏目漱石(一八七六-一九一六)の手紙
(大正二年七月二十一日 寺田寅彦 宛)
きのうは留守に来て菓子を沢山置いて行って下さいまして
まことに難有(ありがと)う存じます
あの菓子は暑中見舞なんだろうと想像しましたがそうなんですか
夫(それ)とも不図(ふと)した出来心から拙宅へ来て
寝転んで食う積(つもり)で買って来たんですか
そうすると大いにあてが外れた訳で恐縮の度を一層強く
することになります 兎に角(とにかく)菓子は食いましたよ
(明治三十四年二月二十日 鏡子宛)
お前でも子供でも死んだら電報くらいは来るだろうと
思って居る夫(それ)だから便りのないのは左程(さほど)
心配にはならない然(しか)し甚(はなは)だ寂(さびし)い
おれの様な不人情なものでも頻(しさ)りに御前が恋しい
是丈(これだけ)は奇特(きとく)と云って褒めて貰わなければならぬ
(明治四十三年九月十一日 筆子、恒子、榮子 宛)
此頃は大分よくなりました。
今に東京へ帰ったらみんなであそびましょう。
三人とも学校がはじまったらべんきょうするんですよ。
御父さまは此手紙あおむけにねていて万年ふででかきました。
からだがつかれて長い御返事が書けません
芥川龍之介(一八九二-一九二七)の手紙
(大正五年八月二十五日 塚本文宛)
貰いたい理由はたった一つあるきりです。
そうして その理由は 僕は 文ちゃんが好きだと 云う事です。
勿論昔から 好きでした。今でも 好きです。
僕のやっている商売は 今の日本で 一番金に ならない商売です。
その上 僕自身も 碌(ろく)に金はありません。ですから
生活の程度から 云えば 何時までたっても 知れたものです。
それでよければ 来て下さい。
僕には 文ちゃん自身の 口から かざり気のない 返事を聞きたいと
思って居ます。繰返して書きますが、理由は 一つしかありません。
僕は文ちゃんが好きです。それだけでよければ来て下さい。
宮沢賢治(一八六九-一九三三)の手紙
(昭和八年九月十一日 柳原昌悦 宛)
風のなかを 自由に歩けるとか、はっきりした声で
何時間も話ができるとか、じぶんの兄弟のために
何円かを手伝えるとか いうようなことは
できないものから見れば 神の技にも均しいものです。
どうか今のご生活を大切に お護(まも)り下さい。
上のそらでなしに、しっかり落ちついて、
一時の感激や興奮を避け、楽しめるものは楽しみ、
苦しまなければ ならないものは苦しんで 生きて行きましょう。
■名言アドバイザー
ショーペンハウアーの名言一覧
https://meigen-adviser.com/person/schopenhauer/
名誉は、外に現れた良心であり、良心は、内に潜む名誉である。
孤独は優れた精神の持ち主の運命である。
虚栄心は人を饒舌にし、自尊心は沈黙にする。
富は海水のようなものだ。飲めば飲むほどに渇きをおぼえる。
名声についても同じである。
孤独を愛さない人間は、自由を愛さない人間にほかならない。
なぜなら、孤独でいるときにのみ人間は自由なのだから。
永遠は一瞬の中にある。
孤独を愛さない人間は、自由を愛さない人間にほかならない。
なぜなら、孤独でいるときにのみ人間は自由なのだから。
永遠は一瞬の中にある。
2025年1月17日金曜日
冬麗戦 大ピンチで一句
寒波来る金持たねども自信持ち
陽を浴びんふくら雀や庭に来し
お使いのできぬ漢の冬夕焼
冬の月足許照らす光より
冬北斗聖書は生きた道標
■プレバト纏め 2025年1月16日
冬麗戦 大ピンチで一句
決勝
👑千原ジュニア 2025冬麗戦優勝
病窓は暗闇慣れぬ尿瓶凍つ
(尿瓶の感触 暗闇の冷気 凍つに凝縮していく
季語を主役に立てている 3拍子揃った大ピンチの句)
森口瑤子
開演ブザーチケットは着膨れのどこ
横尾渉
終電の聖菓保冷剤は温し
1位 森口瑤子 ふわっとふらここ水平になる手前
本番は明日風邪蔓延の稽古場
2位 横尾渉 雪渓のピザ屋 品川ナンバー来
新札は不可凍星のパーキング
3位 千原ジュニア 故郷の苜蓿(もくしゅく)の香は濃かりけり
難病や膝の外套握り締む
4位 清春 良夜なりフロアを包むアルペジオ
冬帝のライブ血指のストローク
5位 矢柴俊博 網棚に置きし卒論冬の朝
千五百グラムや春を待つ嬰児
6位 森迫永依 薄めたシャンプー朝冷ワンルーム
冴ゆる夜のロストバゲージ星条旗
7位 藤本敏史 弟に 秘密の秘密基地 真夏
トランジット失敗寒影ノモーテル
8位 水田信二 夕虹の前の男の傘当たる
ビストロは師走ソムリエ鼻詰まり
9位 犬山紙子 生家のこでまり甘やかな退屈
再検査告知さらりとクリスマス
添削(聖樹=クリスマスツリー)
デスクに聖樹さらりと再検査告知
10位 梅沢富美男 苗代の桜や鬼の住まいする
朽野(くだらの)や我が病の名ひとづてに
添削(朽野=あらゆる草木が枯れ切った野原のこと)
朽野や我が病名をひとづてに
Tverより
11位 蓮見翔 夏焼の納沙布FMのノイズ
締め切りは昨日冬暁の部屋
添削
締め切りは昨日冬暁が痛い
12位 的場浩司 三日月や真朱の隠岐に藍の波
冬麗や鈍色(にびいろ)の影父は逝く
添削
父逝くや冬麗を鈍色の影
13位 村上健志 星明かりほどの重さの子に汗疹
子の薬手帳は厚く春を待つ
14位 中田喜子 ケーナの音麦の風吹く秘密基地
すりの標的きび返す赤コート
15位 大友花恋 風爽か豚骨臭のシーン8
凍つ夜や涙が出ずにテイク10
添削
凍つる夜や涙の出ないテイク10
16位 野村麻純 まどろみの友は臨月夏氷
蒲団剥ぎ青息こむら返りかな
添削
こむら返りの青息蒲団剥ぎ捨てる
陽を浴びんふくら雀や庭に来し
お使いのできぬ漢の冬夕焼
冬の月足許照らす光より
冬北斗聖書は生きた道標
■プレバト纏め 2025年1月16日
冬麗戦 大ピンチで一句
決勝
👑千原ジュニア 2025冬麗戦優勝
病窓は暗闇慣れぬ尿瓶凍つ
(尿瓶の感触 暗闇の冷気 凍つに凝縮していく
季語を主役に立てている 3拍子揃った大ピンチの句)
森口瑤子
開演ブザーチケットは着膨れのどこ
横尾渉
終電の聖菓保冷剤は温し
1位 森口瑤子 ふわっとふらここ水平になる手前
本番は明日風邪蔓延の稽古場
2位 横尾渉 雪渓のピザ屋 品川ナンバー来
新札は不可凍星のパーキング
3位 千原ジュニア 故郷の苜蓿(もくしゅく)の香は濃かりけり
難病や膝の外套握り締む
4位 清春 良夜なりフロアを包むアルペジオ
冬帝のライブ血指のストローク
5位 矢柴俊博 網棚に置きし卒論冬の朝
千五百グラムや春を待つ嬰児
6位 森迫永依 薄めたシャンプー朝冷ワンルーム
冴ゆる夜のロストバゲージ星条旗
7位 藤本敏史 弟に 秘密の秘密基地 真夏
トランジット失敗寒影ノモーテル
8位 水田信二 夕虹の前の男の傘当たる
ビストロは師走ソムリエ鼻詰まり
9位 犬山紙子 生家のこでまり甘やかな退屈
再検査告知さらりとクリスマス
添削(聖樹=クリスマスツリー)
デスクに聖樹さらりと再検査告知
10位 梅沢富美男 苗代の桜や鬼の住まいする
朽野(くだらの)や我が病の名ひとづてに
添削(朽野=あらゆる草木が枯れ切った野原のこと)
朽野や我が病名をひとづてに
Tverより
11位 蓮見翔 夏焼の納沙布FMのノイズ
締め切りは昨日冬暁の部屋
添削
締め切りは昨日冬暁が痛い
12位 的場浩司 三日月や真朱の隠岐に藍の波
冬麗や鈍色(にびいろ)の影父は逝く
添削
父逝くや冬麗を鈍色の影
13位 村上健志 星明かりほどの重さの子に汗疹
子の薬手帳は厚く春を待つ
14位 中田喜子 ケーナの音麦の風吹く秘密基地
すりの標的きび返す赤コート
15位 大友花恋 風爽か豚骨臭のシーン8
凍つ夜や涙が出ずにテイク10
添削
凍つる夜や涙の出ないテイク10
16位 野村麻純 まどろみの友は臨月夏氷
蒲団剥ぎ青息こむら返りかな
添削
こむら返りの青息蒲団剥ぎ捨てる
2025年1月16日木曜日
100分de名著 安克昌①
蒼き空悴(かじか)む手足時間待ち
降り注ぐ冬の陽射しは誰のため?
冬の風信号待ちをする烏
手足にはワセリン湿布春を待つ
キャベジンが効かなくなった冬の夜
■100分de名著 安克昌(あんかつまさ)
”心の傷を癒すということ“1 そのとき何が起こったか
宮地尚子(精神科医・一橋大学大学院教授) 伊集院光 阿部みちこ
安は震災から5年後に病気により他界
命を削ってこの本を書いていたと思うと宮地尚子女史
一九九五年一月十七日未明、
どーんと部屋が揺さぶられる衝撃に、私は目を覚ました。
ぱしんと激しい音がして、常夜灯が消えた。
二歳になる娘が「ママ!ママ!」と叫び声をあげた。
妻は「きょうこちゃん、だいじょうぶよ」と言って娘を抱き寄せる。
その後、地鳴りとともに身体が床の上を踊った。
いろいろなものが倒れ壊れる音が、
めちゃくちゃな勢いで耳に飛び込んできた。(中略)
私の、阪神大震災の体験はこうしてはじまった。
見慣れたビルが倒れて道路をふさいでいた。
路地では木造住宅が倒壊していた。
倒れた建物の土ぼこりと漏れたガスの臭いが町中に漂っている。
救急車や消防車が道路を駆け抜けていく。
空は火災による煙で薄暗かった。(中略)
悪夢のようだった。
同じように”信じられない“といった顔つきの人たちが、
路上を行き交っていた。
救急外来の廊下でぼう然とたたずみ、
あるいは悲しみをこらえきれない遺族の姿を見て、
私は被災者の心の傷の深さを思った。
私の同僚の看護婦、医師たちは被災の大きさにもかかわらず、
意外に冷静だった。
むしろ、いつも以上に仕事に打ち込んでいるようだった。(中略)
「たいへんでしょう」と声を掛けても、「命が助かっただけよかったです」、
「だいじょうぶです」、「地震なんだからしかたがないです」、
と自分の被害を控えめに話すのだった。
だが、やはり表情が固く、どこか話し方が抑揚がなく
一本調子であるように私は感じた。
けっして「だいじょうぶ」のはずはない。
頭の中はさまざまな感情でいっぱいなのだろう。
震災から2週間後に新聞掲載を依頼されて執筆開始
それを元に1996年「心の傷を癒すということ」を刊行
自らの体験を被災地の内側から届けなければいけないという使命感で記した
当時「心のケア」という言葉もほとんど知られていない状態だった
震災報道はセンセーショナルなものが多く安さんは違和感を感じていて
「誰かが書く必要がある」と思い書いた
阪神・淡路大震災以降「人によって傷のつき方も千差万別」
「関わり方も人によって合うものが違う」という認識が深まった
表面上見えない心の傷
衝撃的な体験をしたとき
その衝撃から心を守ろうとすることを防衛機制という
否認 「自分は大丈夫」と言い聞かせ
傷ついたことを否定しようとする心の働き
乖離 現実離れした感覚や衝撃的過ぎて
実感が伴わないという無意識の心の働き
平気そうに見えてる中で「無理してるんじゃないか」と
気付くことが周りの人にとってはとても大事なこと
トラウマ(心的外傷)になる出来事
1 凄まじい恐怖
Jさんの住む地域は大規模な火災で焼け野原になった。(中略)
彼女は夫とともに、迫る火の中を逃げまどった。
通り抜けようとした路地が倒壊した民家で塞がれていて
何度も引き返さなくてはならなかった。
路上には「助けて!誰か助けて!」と叫ぶ人たちがいた。
おそらくその人の家族が建物の下敷きになっていたー。
彼女は、そのときの光景を思い出して苦しんでいた。
「しかたなかったんです。私も逃げるのが精一杯だったんです。
助けてあげられなかった。…それで自分を責めてしまうんです。
今も耳元で”助けて、助けて“という声がするんです。
…私も死んでしまえばよかった」
今まで、どのような災害に出会っても、仲間とともに救出、救助、
消火活動をし、この仕事に誇りを持っていた。が、今回は違った。
助けを求めてきている人々に応えることのできない自分の力なさを嘆き、
自然の恐ろしさに驚異を感じた。
「ほんまに消えるんやろか…」あまりにも消防が無力に思えた。
2 無力感にさいなまれる体験
3 戦慄するようなグロテスクな光景
私は倒壊したたくさんの建物を見た。それは家の「死体」だった。
崩れた屋根から、カレンダーや人形や刺繍した敷物や
子どものランドセルなどが散乱している。
見てはならないものを見た、と私は思った。
そこに住んでいた人の生活を想像させる品々に、
私はどうしても「内臓」を連想してしまった。
トラウマとは❓
あまりに衝撃的で言葉にしづらいような
破局的な体験によって引き起こされる心の傷
何ヶ月か経っても記憶が色濃く残り自然に解決できない
また思い出すと同じ位の恐怖を感じる
そういう場合に「トラウマ」という
1 日常生活の「怖い」というレベルではない
自分だけが生き延びてしまった罪悪感
サバイバーズ・ギルト
2 もう何の手のつくしようもない手が出せない辛さ
「何もできない自分」という状況にずっとさらされている
3 無残な姿をずっと見なくてはいけない それもトラウマ体験になる
人と人とのつながり
私は学生時代から神戸に住み、もう十五年以上になる。
しかし、ただ住んでいるだけで、地元のコミュニティ(地域社会)に
属しているという実感はなかった。(中略)
だが、地震が起きてから同じマンションの住人が私の部屋を訪ねてくれた。
救援物資をおすそ分けしてくれ、近くで炊き出しがあると妻を誘ってくれた。
すぐ近くに住む友人が、そのまた友人の家に風呂を借りに行くとき、
私の家族に声を掛けてくれた。(中略)
災害の後、生き残った住民はある種の共同体感情の下で身を寄せあう。
これを災害心理学では「ハネムーン現象」「ハネムーン期」という。
しかし、私にとって、それは文献上の知識ではない。
思いがけないやさしさや思いやりを肌で感じ、
人間とはすばらしい存在であると私は思った。
これは真にかけがえのない思い出として、今も胸の内にある。
つながりの再発見
最後「俺たちはピンチだ」というときに
「社会的にみんなで生き残ろう」みたいなものが発動する
基本的に無力じゃないですか 人間なんて大災害の前で
だからこそお互いに助け合うことがどこかで希望であり救いになっている
「どのような社会の繋がりによって生かされてきたのか」を実感する
新たなつながりもたくさん起きる
ハネムーン現象が思いやりのあるコミュニティを育む土壌になる
冬の風信号待ちをする烏
手足にはワセリン湿布春を待つ
キャベジンが効かなくなった冬の夜
■100分de名著 安克昌(あんかつまさ)
”心の傷を癒すということ“1 そのとき何が起こったか
宮地尚子(精神科医・一橋大学大学院教授) 伊集院光 阿部みちこ
安は震災から5年後に病気により他界
命を削ってこの本を書いていたと思うと宮地尚子女史
一九九五年一月十七日未明、
どーんと部屋が揺さぶられる衝撃に、私は目を覚ました。
ぱしんと激しい音がして、常夜灯が消えた。
二歳になる娘が「ママ!ママ!」と叫び声をあげた。
妻は「きょうこちゃん、だいじょうぶよ」と言って娘を抱き寄せる。
その後、地鳴りとともに身体が床の上を踊った。
いろいろなものが倒れ壊れる音が、
めちゃくちゃな勢いで耳に飛び込んできた。(中略)
私の、阪神大震災の体験はこうしてはじまった。
見慣れたビルが倒れて道路をふさいでいた。
路地では木造住宅が倒壊していた。
倒れた建物の土ぼこりと漏れたガスの臭いが町中に漂っている。
救急車や消防車が道路を駆け抜けていく。
空は火災による煙で薄暗かった。(中略)
悪夢のようだった。
同じように”信じられない“といった顔つきの人たちが、
路上を行き交っていた。
救急外来の廊下でぼう然とたたずみ、
あるいは悲しみをこらえきれない遺族の姿を見て、
私は被災者の心の傷の深さを思った。
私の同僚の看護婦、医師たちは被災の大きさにもかかわらず、
意外に冷静だった。
むしろ、いつも以上に仕事に打ち込んでいるようだった。(中略)
「たいへんでしょう」と声を掛けても、「命が助かっただけよかったです」、
「だいじょうぶです」、「地震なんだからしかたがないです」、
と自分の被害を控えめに話すのだった。
だが、やはり表情が固く、どこか話し方が抑揚がなく
一本調子であるように私は感じた。
けっして「だいじょうぶ」のはずはない。
頭の中はさまざまな感情でいっぱいなのだろう。
震災から2週間後に新聞掲載を依頼されて執筆開始
それを元に1996年「心の傷を癒すということ」を刊行
自らの体験を被災地の内側から届けなければいけないという使命感で記した
当時「心のケア」という言葉もほとんど知られていない状態だった
震災報道はセンセーショナルなものが多く安さんは違和感を感じていて
「誰かが書く必要がある」と思い書いた
阪神・淡路大震災以降「人によって傷のつき方も千差万別」
「関わり方も人によって合うものが違う」という認識が深まった
表面上見えない心の傷
衝撃的な体験をしたとき
その衝撃から心を守ろうとすることを防衛機制という
否認 「自分は大丈夫」と言い聞かせ
傷ついたことを否定しようとする心の働き
乖離 現実離れした感覚や衝撃的過ぎて
実感が伴わないという無意識の心の働き
平気そうに見えてる中で「無理してるんじゃないか」と
気付くことが周りの人にとってはとても大事なこと
トラウマ(心的外傷)になる出来事
1 凄まじい恐怖
Jさんの住む地域は大規模な火災で焼け野原になった。(中略)
彼女は夫とともに、迫る火の中を逃げまどった。
通り抜けようとした路地が倒壊した民家で塞がれていて
何度も引き返さなくてはならなかった。
路上には「助けて!誰か助けて!」と叫ぶ人たちがいた。
おそらくその人の家族が建物の下敷きになっていたー。
彼女は、そのときの光景を思い出して苦しんでいた。
「しかたなかったんです。私も逃げるのが精一杯だったんです。
助けてあげられなかった。…それで自分を責めてしまうんです。
今も耳元で”助けて、助けて“という声がするんです。
…私も死んでしまえばよかった」
今まで、どのような災害に出会っても、仲間とともに救出、救助、
消火活動をし、この仕事に誇りを持っていた。が、今回は違った。
助けを求めてきている人々に応えることのできない自分の力なさを嘆き、
自然の恐ろしさに驚異を感じた。
「ほんまに消えるんやろか…」あまりにも消防が無力に思えた。
2 無力感にさいなまれる体験
3 戦慄するようなグロテスクな光景
私は倒壊したたくさんの建物を見た。それは家の「死体」だった。
崩れた屋根から、カレンダーや人形や刺繍した敷物や
子どものランドセルなどが散乱している。
見てはならないものを見た、と私は思った。
そこに住んでいた人の生活を想像させる品々に、
私はどうしても「内臓」を連想してしまった。
トラウマとは❓
あまりに衝撃的で言葉にしづらいような
破局的な体験によって引き起こされる心の傷
何ヶ月か経っても記憶が色濃く残り自然に解決できない
また思い出すと同じ位の恐怖を感じる
そういう場合に「トラウマ」という
1 日常生活の「怖い」というレベルではない
自分だけが生き延びてしまった罪悪感
サバイバーズ・ギルト
2 もう何の手のつくしようもない手が出せない辛さ
「何もできない自分」という状況にずっとさらされている
3 無残な姿をずっと見なくてはいけない それもトラウマ体験になる
人と人とのつながり
私は学生時代から神戸に住み、もう十五年以上になる。
しかし、ただ住んでいるだけで、地元のコミュニティ(地域社会)に
属しているという実感はなかった。(中略)
だが、地震が起きてから同じマンションの住人が私の部屋を訪ねてくれた。
救援物資をおすそ分けしてくれ、近くで炊き出しがあると妻を誘ってくれた。
すぐ近くに住む友人が、そのまた友人の家に風呂を借りに行くとき、
私の家族に声を掛けてくれた。(中略)
災害の後、生き残った住民はある種の共同体感情の下で身を寄せあう。
これを災害心理学では「ハネムーン現象」「ハネムーン期」という。
しかし、私にとって、それは文献上の知識ではない。
思いがけないやさしさや思いやりを肌で感じ、
人間とはすばらしい存在であると私は思った。
これは真にかけがえのない思い出として、今も胸の内にある。
つながりの再発見
最後「俺たちはピンチだ」というときに
「社会的にみんなで生き残ろう」みたいなものが発動する
基本的に無力じゃないですか 人間なんて大災害の前で
だからこそお互いに助け合うことがどこかで希望であり救いになっている
「どのような社会の繋がりによって生かされてきたのか」を実感する
新たなつながりもたくさん起きる
ハネムーン現象が思いやりのあるコミュニティを育む土壌になる
2025年1月15日水曜日
迎賓館&「ちちんぱいぱい」&太宰治&島津義弘
冬の径一朶の花をにぎりしめ
今日も今日とて冬夏青青(とうかせいせい)しづり
せいろ蒸し香り立つ湯気冬野菜
冬銀河心は何処墨の花
釣り合わぬ品なき衣装鐘氷る
■新美の巨人たち【華麗!❝迎賓館赤坂離宮❞の数奇な歴史】
日本美術とヨーロッパ美術とアメリカ美術の
最高のものを組み見合わせなければならないと考えている
片山東熊
(建築は)話し合いが99%できるけど
それから先 1%は必ず残るでしょう
中略
その1%が時として全体を支配する影響力を持つこともあるんです
「建築家という生き方」より 村野藤吾
■夏井いつき俳句チャンネル
【第3回】ちちんぱいぱい・後編【楽しい日本語】
地鎮拝々かわうそだって魚まつる 家藤正人
遅々牌々さっさと切れよみかん投ぐ 夏井いつき
極月やちちんぱいぱい地面消ゆ ローゼン千津
栗むくやちちんぱいぱいなる人と 夏井いつき
柿古るちちんぱいぱいされし裔(えい) 家藤正人
■偉人の年収Hou much?作家 太宰治
離れまいとつないだ手を苦しまぎれに 俺が故意(わざ)と振り切ったとき
女は忽(たちま)ち浪に呑まれて たかく名を呼んだ。
俺の名ではなかった。
「葉」1934年
僕はなぜ小説を書くんだろう。新進作家としての栄光がほしいのか。
もしくは金がほしいのか。(中略)答えろ。どっちもほしいと。
「道化の華」1935年
拝啓
生涯いちどの、生命がけのおねがひ申しあげます。
(中略)
貴兄に五十円ことわられたら、私、死にます。それより他ないのです。
(中略)
治 拝
画家 鰭崎(ひれさき)潤への手紙(1936年)より
私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。
走れメロス
僕は自分がなぜ生きていなければならないのか、
それが全然わからないのです。
道徳の過渡期の犠牲者。
あなたも、私も、きっとそれなのでございましょう。
けれども私たちは、古い道徳とどこまでも争い、
太陽のように生きるつもりです。
今の世の中で、一ばん美しいのは犠牲者です。
「斜陽」
敗戦後の混乱の中で強く生きる女性の姿を描く
坂口安吾 無頼派作家として戦後 人気に 代表作「堕落論」「白痴」など
人間は堕落する
酔いつぶれる前に「彼はいつもくしゃみをする」
山崎富栄「太宰治との愛と死のノート」より
優=人+憂
“ひとの淋しさ侘しさ、つらさに敏感な事、これが優しさであり、
また人間として一番優れている事ぢゃないかしら“
文学者 河盛好蔵への手紙(1946年)より
人間失格
自らの人生を振り返る自伝的小説
恥の多い生涯を送って来ました。
自分の弱さを執拗に描く
人間、失格。もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。
「人間失格」を書き上げてわずか3カ月後、自ら命を絶ちました。
1年前に知り合った女性との心中でした。
1948年(昭和23年)没38歳
消息を絶った葉蔵についてバーのマダムが語る
「神様みたいないい子でした。」
どういうつもりで書いたのでしょうか❓
■偉人・敗北からの教訓
第75回「シリーズ東軍・西軍それぞれの関ケ原②島津義弘」
島津義弘 敗北の伏線
兄・義久と豊臣政権の板挟みとなった
内乱で国本が混乱をしていた
島津義弘 敗北の瞬間
東西どちらにつくか優柔不断だった
国元から援軍が送られなかった
島津義弘の敗北から学ぶ教訓
優柔不断は命取りとなる
せいろ蒸し香り立つ湯気冬野菜
冬銀河心は何処墨の花
釣り合わぬ品なき衣装鐘氷る
■新美の巨人たち【華麗!❝迎賓館赤坂離宮❞の数奇な歴史】
日本美術とヨーロッパ美術とアメリカ美術の
最高のものを組み見合わせなければならないと考えている
片山東熊
(建築は)話し合いが99%できるけど
それから先 1%は必ず残るでしょう
中略
その1%が時として全体を支配する影響力を持つこともあるんです
「建築家という生き方」より 村野藤吾
■夏井いつき俳句チャンネル
【第3回】ちちんぱいぱい・後編【楽しい日本語】
地鎮拝々かわうそだって魚まつる 家藤正人
遅々牌々さっさと切れよみかん投ぐ 夏井いつき
極月やちちんぱいぱい地面消ゆ ローゼン千津
栗むくやちちんぱいぱいなる人と 夏井いつき
柿古るちちんぱいぱいされし裔(えい) 家藤正人
■偉人の年収Hou much?作家 太宰治
離れまいとつないだ手を苦しまぎれに 俺が故意(わざ)と振り切ったとき
女は忽(たちま)ち浪に呑まれて たかく名を呼んだ。
俺の名ではなかった。
「葉」1934年
僕はなぜ小説を書くんだろう。新進作家としての栄光がほしいのか。
もしくは金がほしいのか。(中略)答えろ。どっちもほしいと。
「道化の華」1935年
拝啓
生涯いちどの、生命がけのおねがひ申しあげます。
(中略)
貴兄に五十円ことわられたら、私、死にます。それより他ないのです。
(中略)
治 拝
画家 鰭崎(ひれさき)潤への手紙(1936年)より
私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。
走れメロス
僕は自分がなぜ生きていなければならないのか、
それが全然わからないのです。
道徳の過渡期の犠牲者。
あなたも、私も、きっとそれなのでございましょう。
けれども私たちは、古い道徳とどこまでも争い、
太陽のように生きるつもりです。
今の世の中で、一ばん美しいのは犠牲者です。
「斜陽」
敗戦後の混乱の中で強く生きる女性の姿を描く
坂口安吾 無頼派作家として戦後 人気に 代表作「堕落論」「白痴」など
人間は堕落する
酔いつぶれる前に「彼はいつもくしゃみをする」
山崎富栄「太宰治との愛と死のノート」より
優=人+憂
“ひとの淋しさ侘しさ、つらさに敏感な事、これが優しさであり、
また人間として一番優れている事ぢゃないかしら“
文学者 河盛好蔵への手紙(1946年)より
人間失格
自らの人生を振り返る自伝的小説
恥の多い生涯を送って来ました。
自分の弱さを執拗に描く
人間、失格。もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました。
「人間失格」を書き上げてわずか3カ月後、自ら命を絶ちました。
1年前に知り合った女性との心中でした。
1948年(昭和23年)没38歳
消息を絶った葉蔵についてバーのマダムが語る
「神様みたいないい子でした。」
どういうつもりで書いたのでしょうか❓
■偉人・敗北からの教訓
第75回「シリーズ東軍・西軍それぞれの関ケ原②島津義弘」
島津義弘 敗北の伏線
兄・義久と豊臣政権の板挟みとなった
内乱で国本が混乱をしていた
島津義弘 敗北の瞬間
東西どちらにつくか優柔不断だった
国元から援軍が送られなかった
島津義弘の敗北から学ぶ教訓
優柔不断は命取りとなる
2025年1月14日火曜日
100分de名著 筒井康隆
冬陽背にバゲットにかぶりつく朝
冬の空映えて輝くスピリッツ
くだら野や神は自然と共にあり
冬の雨独りの時間暖かく
窮地をも機知と遭遇冬日かな
■100分de名著 100分de筒井康隆
カズレーサー 中条省平 大森望 菊池成孔 池澤春奈 阿部みちこ
第1章 この世界からの脱走
中条省平選「脱走と追跡のサンバ」(1971)37歳
カスタネットによるプロローグ
疲れている。一晩中 自分のいびきで眠れなかった。
自由でないのは金だけで、他はすべて自由だった あの時代の「あそこ」にいたおれ。
他はすべて自由だっても、金だけは不自由だったために、金の自由のためには
他の自由を犠牲にしてもいいなどというたわけたことさえ考えていた
あの時代の、「あそこ」にいたおれ。
情報により呪縛、時間による束縛、空間による圧迫、そんなものとは縁がなく、
軽やかに泥水はねとばし、すがすがしく煤煙(ばいえん)を呼吸し、
馬鹿空と腐れ大地の間を飛翔していたあの時代の、「あそこ」にいたおれは
いったいどこへ行ってしまったのだろうか。
もはやいくら考えても問題の解決にはならない。
問題の解決とは、むろんこの世界とあの世界の相違点を見出すことではなく
おれがこの世界から脱出して、あの世界へ戻ることだったではないか。
おれには行動しか残されていない。
そうだ。行動だ。さっそく行動にとりかかろう。脱走してやるぞ!
第1章 情報
その情報に何ら本質的なものがなく、単に末端的な、しかも見せかけだけは
いかにも本質的くさい情報であった場合は、そして、すべての情報が
そんな情報ばかりであった場合は、それはおれの行動の自由だけでなく、
精神の自由さえ奪ってしまうのだ。このにせものの世界のにせものの情報を、
はっきりにせものであると証明した時、おれは呪縛から解放されるに違いない。
「この証書が一枚ありさえすれば、
どんな事態に陥ってもあわてることはありません。
そう。これはザパタ失業保険の保険証書なのです」
(略)情報社会を代表するものが何かは、おれもつきとめたわけじゃないが、
もしかしたらコンピューターじゃないかと思うよ。
だって、テレビ局ってのは、つまりわれわれみたいな人間が
いるだけなんだからね。ただそれだけなんだからね」
テレビの時代と情報社会
虚構としてのドラマからイベントへ どっきりカメラ
「水曜日のダウンタウン」
「露出症文明」(1967) 顔テレでみんなが通信 自分を見せようとしてエスカレート
「映え」の世界 「23時ショー」初代の火曜日の司会が筒井先生 かなりの私小説
でっち上げられた情報だろうが、操作された情報だろうが、
情報となった以上その情報はでっち上げた人、操作した人の手をはなれ、
独立して、あるがままの情報になるのよ (略)情報の質なんて、ないのと同じよ。
情報内容だって、ないのと同じよ
情報は増えれば増えるほど知識のあり方を揺るがす
情報の過剰によって何もわからない状況になる
「この原子時計が、時間的に正確であるなどということを、いつわたしが言いましたか」
タイムトラベル 自分は一体何なんだ 宇宙の中でひとりぼっち 恐怖
宇宙的孤独 実存的孤独
おれにぴったりした空間はやはりどこかにある筈である。
ではそれはどんな空間かといえば、それはおれの内面的世界の問題になってくる。
おれにぴったりした空間とは、おれの内的世界にぴったりの空間である筈で、
問題はその世界を志すあれの精神がどのような空間を
求めようとする精神であるかということになる。
すべての空間あるいは空間的なものは、
ぜんぶ精神や意識に包含されてしまう筈だといえなくもない。
「わたしは、逃げ出そうとすることはもうやめました」
「(略)わたしの精神力によって、この世界を改造するのです。
この世界と、わたしの内的世界をぴったり同じ状態にしてしまうのです。
換言すればこの世界を、私の精神で包みこんでしまうのです」
内宇宙 内宇宙でマルチバースを支配する!
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(2022)
精神分析 無意識 夢
「パプリカ」(1993)「インセプション」(2011)内宇宙での争い
日本は時間SFが優位 内面に潜っていくことで突破する
「虚人たち」(1981) 「馬鹿空と腐れ大地の軽やかに飛翔していた」
脱走した先? 筒井流「アリス・イン・ワンダーランド」
「俗物図鑑」(1972) 松尾スズキ
赤塚不二夫のドタバタギャグ漫画に近いものを感じた
筒井康隆は直木賞に三度落選 松尾スズキは「大いなる助走」が好き
筒井康隆は「大いなる助走」で選考委員を皆殺しにした
芥川賞候補作「クワイエットルームへようこそ」(2005)
「老人賭博」(2009)「もう『はい』としかいえない」(2018)
第2章 心の内を読む
論者 池澤春奈
七瀬シリーズ「家族八景」(1972) 「七瀬ふたたび」(1975) 「エディプスの恋人」(1977)
火田七瀬
七瀬シリーズ「家族八景」(1972)
読心ができるため、自分は得をしているとも思わなかったし、
損をしているとも思わなかった。聴覚や視覚の一種であると考えていた。
他の感覚と少し違うところは、感知するために多少の努力を要することだった。
七瀬はそれを「掛け金をはずす」ということばで他の精神作業と区別していた。
テレビのホーム・ドラマを見て身につけた巧みなポーズをとっていた。
「あら。もっと小さなウイスキーグラスがなかったかしら。
それ、シャンパングラスよ」(白痴。田舎者)
他のすべての女性に対して、叡子の心は冷ややかな悪意を向ける。
「いいんだ。でかい方がいい。それで飲むから」と、潤一がいった。
(きいた風なことをいうな。おせっかいの馬鹿女め)
叡子はにやりと笑った。(ふん。いい格好してさ。アル中)
久国も、にやりとした。「いやに、ナナちゃんにやさしいじゃないか」
(どうして、そういうことだけにぴんぴんくるんだよ。このエロ爺)
人の心が読めてしまうヒロイン
トルストイ「アンナ・カレーニナ」
「幸福な家庭はどれも似たようなものだが不幸な家庭はそれぞれ違う」
七瀬が行く先々で化学変化が起こってしまう
さすらいのサークルクラッシャーみたい 家庭クラッシャー
ミソジニー 女性嫌悪
エンターテイメントとしてのドライブ感が凄い
私たちがそうなんです
読書=窃視者(せっししゃ)の快感 女性が共感!ヒロイン七瀬
感情移入?しているのでは? 女性はスカットする 半沢直樹みたい
よその家庭を壊すことに罪悪感を持たない ピカレスク 悪のヒーロー
七瀬は弱者 女性 若い 被雇用者 が一矢を報いるという構造
少女漫画
「七瀬ふたたび」(1975)
西尾が拳銃を出した。だがその拳銃は西尾の手から離れて宙をとんだ。
「殺して。早く」ヘンリーの意識を通じて、どうせ西尾の死にざまを
感じずにはいられないことを知りながら、七瀬は眼を強く閉じてそう叫んだ。
「返してやる」ヘンリーが言った。いったんカーペットの上に落ちた
拳銃が、ふたたび宙をとんで西尾の手の中に納まった。
サイキックSFバトル!「七瀬ふたたび」 冒険小説 スピーディー 友情
疑似家族 ジャンヌ・ダルク サイボーグ009 七人の侍 魔女狩り
サイキック「黒革の手帖」 異能バトル 七瀬は万能者ではない
全滅するのがお約束 不幸の積み増し
「エディプスの恋人」(1977)
「彼」の心には選ばれたものとしての自覚があった。
「彼」が超能力者でないことは確かであった。
では「彼」のその選良意識の強固さは何によるものだろう。
恋愛感情を抱くようになる 宇宙意志が働いていた
七瀬恋に落ちる! 神(筒井作品のテーマが書かれる)
七瀬の自由意志がなくなる 恋に落ちる=自由意志が奪われる
他にないラスト 裏切られた感が否めない
(トモフロガ)(タイケンスル)(ハジメテノ)(オンナノ)(ヤクワリヲ)(ワタシト)(カワッテクダサイ)
「彼女」の意図を一瞬にして悟り、悲鳴まじりに「いや」と叫ぼうとした時、
それはすでに起こっていた。
息子の初体験が欲しい!神の深き欲望
人形の家に人形として置かれた七瀬 最高の不幸が来た
演劇 シェークスピア
「すべてこの世は1つの舞台 男も女も役者に過ぎない」「お気に召すまま」
「人生は哀れな役者だ 出番が終われば消えてしまう」「マクベス」
神が操る世界で生きる=人間の普遍的な条件
1968年筒井康隆 長男誕生
1970~71年「家族八景」連載
第2章 筒井文学の転換期
論者 菊池成孔
「エロチック街道」(1981)
「バブリング創世記」(1978)「ウィークエンド・シャッフル」(1974)
「ベトナム観光公社」(1967)短編集として個性が際立っている
「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」
名曲も入っているけど音響実験 前衛とポップが一緒に入っている
中隊長
自分はいつも馬に乗る時さかさにまたがってしまう。
鐙(あぶみ)にどちらの足を踏みかえればよいか直前のためらいがあり、
そのためらいのために尚さらわからなくなり結局は逆の足を踏みかけてしまう。
自分が他の中隊長ほどには武骨な言動もとらず粗野でもなく
顔立ちも端正なので比較的教養があり話のわかる
人間だと思われている傾向があるのではないだろうか。
自分は馬上で自慰をする。もし隣国と戦争になり、現代でも白兵戦というのは
充分あり得るわけで自分と彼がそのような場所で出会った時
おそらく自分は気合い負けをしてたちまち彼に斬り殺されてしまうか
射殺されるかするだろうという気がする。
彼が油断していた場合は別出であってその場合自分はためらいなく
彼を射殺できるだろうと思う。
遠い座敷
兵一の家は奥へ向かって廊下がどこまでも続き
その廊下に沿って両側に座敷がいくつもあり
山腹の斜面の勾配に応じて座敷と座視の間は
奥の座敷がそれぞれ五寸から一尺低くなっていて
次第に降下していくその座敷の連なりはどこまで
続いているかわからぬほどだったからである。
その座敷は茶室風の六畳で正面の床の間には
煤(すす)けた雪景山水の掛軸がかかり片側の地袋の上では
土人形の女達磨が笑っていた。左側にある床の間の
牡丹を描いた掛軸の下には木彫りの福禄寿が置かれていた。
うっすらとかかった白い埃や電灯の光の陰影によって
より怪奇に感じられる笑みをたたえたその福禄寿を見て
宗貞はこれらの座敷の連なりにも夜の山道のそれとはまた
種類の異なった恐ろしさがあちこちに散りばめられていることを悟った。
動き出さぬ筈の置物ではあったが夜のそれもほの暗い電灯の下に
置かれているが為にそれらは今にも声を出して笑うのではないかと
思えるほどの実在感を持っていたのだ。
不気味さに宗貞はその座敷の中央を駆け抜けた。
「夢の小説化」に取り組んだ作品群
読む人をフィルタリング 戦死の恐怖 獣欲的な性欲
ゾルゲル状 夢を見ている気分
「着想の技術」(1983) 夢は素材になりやすい
夢を素材化して加工して小説化する
シュルレアリスム 20世紀初頭フランスで生まれた芸術運動
夢や無意識の表現による人間精神の回復を目指した
言語で現実を幻想的なものに変える実験
編集者 塙(はにわ)嘉彦(1935~1980) 筒井康隆氏を変えた人
文芸雑誌「海」塙氏は三代目の編集長
1978年2月11日 塙氏が神戸の筒井宅を訪問
この日から2年で亡くなっている 7月に「中隊長」を書いている
筒井康隆氏のグールー師 中年米の文学 「海」が紹介
ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」(1967)
マジックリアリズム 日常的なものと魔術的なものが融合した
中南米の小説や美術に見られる表現技法 代表的作家
ガルシア=マルケス バルガス・リョサ フリオ・コルタサルなど
天井桟敷をやっていた寺山修司 土俗性があって近代的意識も通過している
リアリズムを持っていながら魔法がかかっている
「さらば箱舟」(1982)寺山修司がガルシア=マルケス「百年の孤独」を映画化した遺作
つげ義春「ねじ式」(1968)
中南米文学を塙さんから知ることで解放された?
グールーと高弟
傾斜
夕食の最中、突然七歳の長男が、茶碗と箸を手にしたまま
「わー」と叫んで立ちあがり、次の間へ駈けこんでいく。
「なあに。あれ」と、長女が言いながら次の間を覗きこむ。
「奥の間まで走っていったみたいよ」
「行儀の悪い子だ」と、どてら姿の夫が言う。
突然、長女が茶碗と箸を持ったまま「わー」といって立ちあがり、
茶の間から走り出て次の間を駆け抜け、奥の間へ去ってしまう。
夫と妻はあきれて長女を見送る。
「まあ。なんてことでしょ。
年ごろの娘が、はしたない」しばらくして妻がそう言う。
言い終わるなり彼女も「わー」と言って立ちあがり、
茶碗と箸を手にしたまま次の間を走り抜けて奥の間へ駈けこむ。
「なあんだ。あいつらは」夫は憮然とする。
気をとりなおし、夕食を続けようとするが、
やがて茶碗と箸をそれぞれの手に持ったままで立ちあがる。
「わー」彼は走り出す。次の間を抜けて奥の間へ走りこむ。
八畳の奥の間はいちの間にかたいへん広くなっている。
八畳の中ほどから座敷全体が約四十五度の角度に下の方へ
向かって折れ曲がり、その急勾配には畳が敷きつめられたまま、
はるかなる地底、彼方の眼下に果てしなく続いていて、
行きどまりがどのあたりなのか眼で確かめることすらできない。
その畳敷きの傾斜を駈けおりて行く家族たちの姿が、
すでに豆粒のようになって小さく見えている。
夫も茶碗と箸を手に、「わー」と叫びながらその傾斜を駈け下って行く。
「下に降りていく」筒井作品
「驚愕の曠野(こうや)」 心の中(無意識)に降りていく
読み方によっては前半はコント 後半は映画
「エロチック街道」
お客さんはこの里は初めてでは。
ではどうして温泉にお乗りにならんのですか。
あれに乗ればバスでまわるよりもずっと早く根岸舞子に行けますし
ここに初めて来た人はたいていあれにお乗りなのです。名物ですもんね。
あらためて驚かされるほどに色が白い。初めてなんですか。うん。
じゃ、こちらへどうぞ。ご案内しますから。
夏目漱石「夢十夜」内田百閒(けん)「冥途(めいど)」
島尾敏雄「夢の中での日常」以来である。夢四天王に入った
つげ義春の感じが出ている 体内回帰 転換期
ザ・ビートルズは絶頂期にインド哲学に救いを求めている
筒井氏は文学の人に路線転換できた ビートルズはアイドルからアーティストへ
ル・クレジオ「巨人たち」
「虚人たち」(1981)登場人物が自分を小説内の虚構の存在だと知っている
「超虚構」実験小説 「海」だけにBL漫画化
超虚構はボキャブラリーの1個に降格
「ロートレック荘事件」(1990)
第3章 戦争 歴史 純文学
論者 大森望
「虚構船団」(1984) 爆笑の純文学
毀誉褒貶が著しい作品 話題作
第一章 文房具
まずコンパスが登場する。彼は気がくるっていた。
針のつけ根がゆるんでいたので完全な円は描けなかったが
自分ではそれを完全な円だと信じこんでいた。
誰かれなしに喧嘩を吹っかけた。蒼ざめて怒りに身を震わせた末
その場で数回きりきり舞いをしてぶっ倒れ意識を失った。
文房具だけが乗っている宇宙船 小説だから可能
執拗さ 存在しないことを書き連ねられていることはつらかった
プルースト「失われた時を求めて」
ポール・ヴァレリー「プルーストの作品の興味は一つ一つの
断片の中に存する。その本のどこを開くも自由である。」
「頌(プルースト)」生島遼一訳
全部が筒井さんの分身❓
機能を果せない=異常
現代人のメタファー
現代の阿呆船 24億のイタチを全員殺せ
第二章 鼬(ゆう)族十種
グリソンたちは殺戮を好み空腹でなくても他の種族を殺した。
顔が黒く頭髪が白いので全員が白い帽子をかぶっているようにも見え、
「白冠(はっかん)の殺戮者」などとも呼ばれていた。
戦争 宗教対立 虐殺 絶対王政 市民革命
クズレオン・ポナクズリ エコノスという島国
九二三年、ヘド幕府に傭(やと)われた殺戮集団マコトが尊王国粋党の
集(たか)るレストラン・イダヤケに斬りこんだことがあった。
志士七十八名が惨殺された。
イイヅナのヒドラはその時の生き残りである。彼の出生や前歴は
全く不明であるが一説には浮世絵師の見習いであったという。
国民の信頼は次第に、激烈な優生学的民族主義者のヒドラに集った。
ヒドラははじめて実際の戦況を報告した。五年も前から敗戦が決定的で
ありながらその事実を王にも国民にも隠していたヒドラに対し
アラマヒトは約二時間半にわたって大声で罵倒し、最後には
ヒドラの顔を押さえつけその鼻さきを自分の肛門に押し込んで
肛門腺分泌物を噴射した。
ヒドラは胸を掻きむしりながら弱よわしく「大君の屁にこそ死なめ」
と呟いて息絶えた。
イタチ族の歴史をどう読むか
異化作用
今、世界史を書いている。
歴史小説ではなく、歴史を書いているのである。
世界史のパロディーではなく、世界史なのである。
少なくとも書く方ではそのつもりで書いている。
さて、その三百枚のうちの二百枚を
書き上げた今、読み返してみると、
それはたまたま世界史を残虐性の側面から
眺めてというていのものになっている。
「プライベート世界史」より
「幻想の未来」(1968)
宗教対立と戦争と虐殺 人類史=戦争史 虐殺史 混血史
ノーマン・メイラー「裸者と死者」(1948)
太平洋戦争中 日本軍が支配する南太平洋の孤島に
上陸した米兵たちの姿を描いた群像劇
第一章 戦争に行く人の心の中
第二章 侵略される側の歴史
第三章 戦争そのもの
戦争のすべてを入れた
第二章 神話
「先生あの『カンチョレ族の繁栄』っていうの、学生アルバイトにでも
代筆させたんじゃないの」深夜スナックのマスター。
「面白くありませんでした。はい。面白くありませんでしたから」
『三月ウサギ』公演終了後のロビーにて学生風の二人づれ。
「あの『虚人たち』って言うの、酔っぱらって書かれたんですか」
バーにいた唐辛子のような赤い小さい娘。な・ぜ・だ。
傑作だと思っているものばかりではないか。
まあまあまあそういう連中っていうのはひと前で
作家に無礼なことを言ってそれをあとで自慢したいのですよ。
いやそればかりではあるまいね。あの前後もわきまえぬ
ある種の真剣さは彼らが本気で、心の底から
そう思いたがっていることを示していたのです。
この小説を読んで怒る人も、やっぱりいるのであろうなあ。いやだなあ。
突然登場!作者自身の意識
小説の中には何でも書ける 30:33
話芸の伝統 チョンガレ節 祭文語り
ボブ・ホープ(1903~2003)
アメリカの喜劇俳優 楽屋落ちギャグで人気を博した
分らなくても気にしなくていい
分らないのが気持ちいい
性暴力の描写 戦争の本質
ラストは読み飛ばさないで欲しい
「敵」(1998) 吉田大八映画監督の言葉
不条理な物語として楽しんだ
2020年 コロナの時 読み直したのがこの「敵」だった
30歳代で始めて読んだ時とは全く違ったものだった。
誰にもこの作品は渡したくないと思い映画化した。
「敵」監督 吉田大八 1月17日(金)より全国公開
老境を迎えた元大学教授の日常 そこにある日 不穏なメールが届く
「老い」を描く筒井文学
理性を保ったまま老いと向き合う 困難さえも楽しむ
お勧めしたい筒井作品は❓
「薬菜飯店」(1988) イチゴの日
「残像に口紅を」(0989)
「ダンシング・ヴァニティ」(2008)
「問題外科」(1979)「魚籃(ぎょらん)観音記」(2000)
くだら野や神は自然と共にあり
冬の雨独りの時間暖かく
窮地をも機知と遭遇冬日かな
■100分de名著 100分de筒井康隆
カズレーサー 中条省平 大森望 菊池成孔 池澤春奈 阿部みちこ
第1章 この世界からの脱走
中条省平選「脱走と追跡のサンバ」(1971)37歳
カスタネットによるプロローグ
疲れている。一晩中 自分のいびきで眠れなかった。
自由でないのは金だけで、他はすべて自由だった あの時代の「あそこ」にいたおれ。
他はすべて自由だっても、金だけは不自由だったために、金の自由のためには
他の自由を犠牲にしてもいいなどというたわけたことさえ考えていた
あの時代の、「あそこ」にいたおれ。
情報により呪縛、時間による束縛、空間による圧迫、そんなものとは縁がなく、
軽やかに泥水はねとばし、すがすがしく煤煙(ばいえん)を呼吸し、
馬鹿空と腐れ大地の間を飛翔していたあの時代の、「あそこ」にいたおれは
いったいどこへ行ってしまったのだろうか。
もはやいくら考えても問題の解決にはならない。
問題の解決とは、むろんこの世界とあの世界の相違点を見出すことではなく
おれがこの世界から脱出して、あの世界へ戻ることだったではないか。
おれには行動しか残されていない。
そうだ。行動だ。さっそく行動にとりかかろう。脱走してやるぞ!
第1章 情報
その情報に何ら本質的なものがなく、単に末端的な、しかも見せかけだけは
いかにも本質的くさい情報であった場合は、そして、すべての情報が
そんな情報ばかりであった場合は、それはおれの行動の自由だけでなく、
精神の自由さえ奪ってしまうのだ。このにせものの世界のにせものの情報を、
はっきりにせものであると証明した時、おれは呪縛から解放されるに違いない。
「この証書が一枚ありさえすれば、
どんな事態に陥ってもあわてることはありません。
そう。これはザパタ失業保険の保険証書なのです」
(略)情報社会を代表するものが何かは、おれもつきとめたわけじゃないが、
もしかしたらコンピューターじゃないかと思うよ。
だって、テレビ局ってのは、つまりわれわれみたいな人間が
いるだけなんだからね。ただそれだけなんだからね」
テレビの時代と情報社会
虚構としてのドラマからイベントへ どっきりカメラ
「水曜日のダウンタウン」
「露出症文明」(1967) 顔テレでみんなが通信 自分を見せようとしてエスカレート
「映え」の世界 「23時ショー」初代の火曜日の司会が筒井先生 かなりの私小説
でっち上げられた情報だろうが、操作された情報だろうが、
情報となった以上その情報はでっち上げた人、操作した人の手をはなれ、
独立して、あるがままの情報になるのよ (略)情報の質なんて、ないのと同じよ。
情報内容だって、ないのと同じよ
情報は増えれば増えるほど知識のあり方を揺るがす
情報の過剰によって何もわからない状況になる
「この原子時計が、時間的に正確であるなどということを、いつわたしが言いましたか」
タイムトラベル 自分は一体何なんだ 宇宙の中でひとりぼっち 恐怖
宇宙的孤独 実存的孤独
おれにぴったりした空間はやはりどこかにある筈である。
ではそれはどんな空間かといえば、それはおれの内面的世界の問題になってくる。
おれにぴったりした空間とは、おれの内的世界にぴったりの空間である筈で、
問題はその世界を志すあれの精神がどのような空間を
求めようとする精神であるかということになる。
すべての空間あるいは空間的なものは、
ぜんぶ精神や意識に包含されてしまう筈だといえなくもない。
「わたしは、逃げ出そうとすることはもうやめました」
「(略)わたしの精神力によって、この世界を改造するのです。
この世界と、わたしの内的世界をぴったり同じ状態にしてしまうのです。
換言すればこの世界を、私の精神で包みこんでしまうのです」
内宇宙 内宇宙でマルチバースを支配する!
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(2022)
精神分析 無意識 夢
「パプリカ」(1993)「インセプション」(2011)内宇宙での争い
日本は時間SFが優位 内面に潜っていくことで突破する
「虚人たち」(1981) 「馬鹿空と腐れ大地の軽やかに飛翔していた」
脱走した先? 筒井流「アリス・イン・ワンダーランド」
「俗物図鑑」(1972) 松尾スズキ
赤塚不二夫のドタバタギャグ漫画に近いものを感じた
筒井康隆は直木賞に三度落選 松尾スズキは「大いなる助走」が好き
筒井康隆は「大いなる助走」で選考委員を皆殺しにした
芥川賞候補作「クワイエットルームへようこそ」(2005)
「老人賭博」(2009)「もう『はい』としかいえない」(2018)
第2章 心の内を読む
論者 池澤春奈
七瀬シリーズ「家族八景」(1972) 「七瀬ふたたび」(1975) 「エディプスの恋人」(1977)
火田七瀬
七瀬シリーズ「家族八景」(1972)
読心ができるため、自分は得をしているとも思わなかったし、
損をしているとも思わなかった。聴覚や視覚の一種であると考えていた。
他の感覚と少し違うところは、感知するために多少の努力を要することだった。
七瀬はそれを「掛け金をはずす」ということばで他の精神作業と区別していた。
テレビのホーム・ドラマを見て身につけた巧みなポーズをとっていた。
「あら。もっと小さなウイスキーグラスがなかったかしら。
それ、シャンパングラスよ」(白痴。田舎者)
他のすべての女性に対して、叡子の心は冷ややかな悪意を向ける。
「いいんだ。でかい方がいい。それで飲むから」と、潤一がいった。
(きいた風なことをいうな。おせっかいの馬鹿女め)
叡子はにやりと笑った。(ふん。いい格好してさ。アル中)
久国も、にやりとした。「いやに、ナナちゃんにやさしいじゃないか」
(どうして、そういうことだけにぴんぴんくるんだよ。このエロ爺)
人の心が読めてしまうヒロイン
トルストイ「アンナ・カレーニナ」
「幸福な家庭はどれも似たようなものだが不幸な家庭はそれぞれ違う」
七瀬が行く先々で化学変化が起こってしまう
さすらいのサークルクラッシャーみたい 家庭クラッシャー
ミソジニー 女性嫌悪
エンターテイメントとしてのドライブ感が凄い
私たちがそうなんです
読書=窃視者(せっししゃ)の快感 女性が共感!ヒロイン七瀬
感情移入?しているのでは? 女性はスカットする 半沢直樹みたい
よその家庭を壊すことに罪悪感を持たない ピカレスク 悪のヒーロー
七瀬は弱者 女性 若い 被雇用者 が一矢を報いるという構造
少女漫画
「七瀬ふたたび」(1975)
西尾が拳銃を出した。だがその拳銃は西尾の手から離れて宙をとんだ。
「殺して。早く」ヘンリーの意識を通じて、どうせ西尾の死にざまを
感じずにはいられないことを知りながら、七瀬は眼を強く閉じてそう叫んだ。
「返してやる」ヘンリーが言った。いったんカーペットの上に落ちた
拳銃が、ふたたび宙をとんで西尾の手の中に納まった。
サイキックSFバトル!「七瀬ふたたび」 冒険小説 スピーディー 友情
疑似家族 ジャンヌ・ダルク サイボーグ009 七人の侍 魔女狩り
サイキック「黒革の手帖」 異能バトル 七瀬は万能者ではない
全滅するのがお約束 不幸の積み増し
「エディプスの恋人」(1977)
「彼」の心には選ばれたものとしての自覚があった。
「彼」が超能力者でないことは確かであった。
では「彼」のその選良意識の強固さは何によるものだろう。
恋愛感情を抱くようになる 宇宙意志が働いていた
七瀬恋に落ちる! 神(筒井作品のテーマが書かれる)
七瀬の自由意志がなくなる 恋に落ちる=自由意志が奪われる
他にないラスト 裏切られた感が否めない
(トモフロガ)(タイケンスル)(ハジメテノ)(オンナノ)(ヤクワリヲ)(ワタシト)(カワッテクダサイ)
「彼女」の意図を一瞬にして悟り、悲鳴まじりに「いや」と叫ぼうとした時、
それはすでに起こっていた。
息子の初体験が欲しい!神の深き欲望
人形の家に人形として置かれた七瀬 最高の不幸が来た
演劇 シェークスピア
「すべてこの世は1つの舞台 男も女も役者に過ぎない」「お気に召すまま」
「人生は哀れな役者だ 出番が終われば消えてしまう」「マクベス」
神が操る世界で生きる=人間の普遍的な条件
1968年筒井康隆 長男誕生
1970~71年「家族八景」連載
第2章 筒井文学の転換期
論者 菊池成孔
「エロチック街道」(1981)
「バブリング創世記」(1978)「ウィークエンド・シャッフル」(1974)
「ベトナム観光公社」(1967)短編集として個性が際立っている
「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」
名曲も入っているけど音響実験 前衛とポップが一緒に入っている
中隊長
自分はいつも馬に乗る時さかさにまたがってしまう。
鐙(あぶみ)にどちらの足を踏みかえればよいか直前のためらいがあり、
そのためらいのために尚さらわからなくなり結局は逆の足を踏みかけてしまう。
自分が他の中隊長ほどには武骨な言動もとらず粗野でもなく
顔立ちも端正なので比較的教養があり話のわかる
人間だと思われている傾向があるのではないだろうか。
自分は馬上で自慰をする。もし隣国と戦争になり、現代でも白兵戦というのは
充分あり得るわけで自分と彼がそのような場所で出会った時
おそらく自分は気合い負けをしてたちまち彼に斬り殺されてしまうか
射殺されるかするだろうという気がする。
彼が油断していた場合は別出であってその場合自分はためらいなく
彼を射殺できるだろうと思う。
遠い座敷
兵一の家は奥へ向かって廊下がどこまでも続き
その廊下に沿って両側に座敷がいくつもあり
山腹の斜面の勾配に応じて座敷と座視の間は
奥の座敷がそれぞれ五寸から一尺低くなっていて
次第に降下していくその座敷の連なりはどこまで
続いているかわからぬほどだったからである。
その座敷は茶室風の六畳で正面の床の間には
煤(すす)けた雪景山水の掛軸がかかり片側の地袋の上では
土人形の女達磨が笑っていた。左側にある床の間の
牡丹を描いた掛軸の下には木彫りの福禄寿が置かれていた。
うっすらとかかった白い埃や電灯の光の陰影によって
より怪奇に感じられる笑みをたたえたその福禄寿を見て
宗貞はこれらの座敷の連なりにも夜の山道のそれとはまた
種類の異なった恐ろしさがあちこちに散りばめられていることを悟った。
動き出さぬ筈の置物ではあったが夜のそれもほの暗い電灯の下に
置かれているが為にそれらは今にも声を出して笑うのではないかと
思えるほどの実在感を持っていたのだ。
不気味さに宗貞はその座敷の中央を駆け抜けた。
「夢の小説化」に取り組んだ作品群
読む人をフィルタリング 戦死の恐怖 獣欲的な性欲
ゾルゲル状 夢を見ている気分
「着想の技術」(1983) 夢は素材になりやすい
夢を素材化して加工して小説化する
シュルレアリスム 20世紀初頭フランスで生まれた芸術運動
夢や無意識の表現による人間精神の回復を目指した
言語で現実を幻想的なものに変える実験
編集者 塙(はにわ)嘉彦(1935~1980) 筒井康隆氏を変えた人
文芸雑誌「海」塙氏は三代目の編集長
1978年2月11日 塙氏が神戸の筒井宅を訪問
この日から2年で亡くなっている 7月に「中隊長」を書いている
筒井康隆氏のグールー師 中年米の文学 「海」が紹介
ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」(1967)
マジックリアリズム 日常的なものと魔術的なものが融合した
中南米の小説や美術に見られる表現技法 代表的作家
ガルシア=マルケス バルガス・リョサ フリオ・コルタサルなど
天井桟敷をやっていた寺山修司 土俗性があって近代的意識も通過している
リアリズムを持っていながら魔法がかかっている
「さらば箱舟」(1982)寺山修司がガルシア=マルケス「百年の孤独」を映画化した遺作
つげ義春「ねじ式」(1968)
中南米文学を塙さんから知ることで解放された?
グールーと高弟
傾斜
夕食の最中、突然七歳の長男が、茶碗と箸を手にしたまま
「わー」と叫んで立ちあがり、次の間へ駈けこんでいく。
「なあに。あれ」と、長女が言いながら次の間を覗きこむ。
「奥の間まで走っていったみたいよ」
「行儀の悪い子だ」と、どてら姿の夫が言う。
突然、長女が茶碗と箸を持ったまま「わー」といって立ちあがり、
茶の間から走り出て次の間を駆け抜け、奥の間へ去ってしまう。
夫と妻はあきれて長女を見送る。
「まあ。なんてことでしょ。
年ごろの娘が、はしたない」しばらくして妻がそう言う。
言い終わるなり彼女も「わー」と言って立ちあがり、
茶碗と箸を手にしたまま次の間を走り抜けて奥の間へ駈けこむ。
「なあんだ。あいつらは」夫は憮然とする。
気をとりなおし、夕食を続けようとするが、
やがて茶碗と箸をそれぞれの手に持ったままで立ちあがる。
「わー」彼は走り出す。次の間を抜けて奥の間へ走りこむ。
八畳の奥の間はいちの間にかたいへん広くなっている。
八畳の中ほどから座敷全体が約四十五度の角度に下の方へ
向かって折れ曲がり、その急勾配には畳が敷きつめられたまま、
はるかなる地底、彼方の眼下に果てしなく続いていて、
行きどまりがどのあたりなのか眼で確かめることすらできない。
その畳敷きの傾斜を駈けおりて行く家族たちの姿が、
すでに豆粒のようになって小さく見えている。
夫も茶碗と箸を手に、「わー」と叫びながらその傾斜を駈け下って行く。
「下に降りていく」筒井作品
「驚愕の曠野(こうや)」 心の中(無意識)に降りていく
読み方によっては前半はコント 後半は映画
「エロチック街道」
お客さんはこの里は初めてでは。
ではどうして温泉にお乗りにならんのですか。
あれに乗ればバスでまわるよりもずっと早く根岸舞子に行けますし
ここに初めて来た人はたいていあれにお乗りなのです。名物ですもんね。
あらためて驚かされるほどに色が白い。初めてなんですか。うん。
じゃ、こちらへどうぞ。ご案内しますから。
夏目漱石「夢十夜」内田百閒(けん)「冥途(めいど)」
島尾敏雄「夢の中での日常」以来である。夢四天王に入った
つげ義春の感じが出ている 体内回帰 転換期
ザ・ビートルズは絶頂期にインド哲学に救いを求めている
筒井氏は文学の人に路線転換できた ビートルズはアイドルからアーティストへ
ル・クレジオ「巨人たち」
「虚人たち」(1981)登場人物が自分を小説内の虚構の存在だと知っている
「超虚構」実験小説 「海」だけにBL漫画化
超虚構はボキャブラリーの1個に降格
「ロートレック荘事件」(1990)
第3章 戦争 歴史 純文学
論者 大森望
「虚構船団」(1984) 爆笑の純文学
毀誉褒貶が著しい作品 話題作
第一章 文房具
まずコンパスが登場する。彼は気がくるっていた。
針のつけ根がゆるんでいたので完全な円は描けなかったが
自分ではそれを完全な円だと信じこんでいた。
誰かれなしに喧嘩を吹っかけた。蒼ざめて怒りに身を震わせた末
その場で数回きりきり舞いをしてぶっ倒れ意識を失った。
文房具だけが乗っている宇宙船 小説だから可能
執拗さ 存在しないことを書き連ねられていることはつらかった
プルースト「失われた時を求めて」
ポール・ヴァレリー「プルーストの作品の興味は一つ一つの
断片の中に存する。その本のどこを開くも自由である。」
「頌(プルースト)」生島遼一訳
全部が筒井さんの分身❓
機能を果せない=異常
現代人のメタファー
現代の阿呆船 24億のイタチを全員殺せ
第二章 鼬(ゆう)族十種
グリソンたちは殺戮を好み空腹でなくても他の種族を殺した。
顔が黒く頭髪が白いので全員が白い帽子をかぶっているようにも見え、
「白冠(はっかん)の殺戮者」などとも呼ばれていた。
戦争 宗教対立 虐殺 絶対王政 市民革命
クズレオン・ポナクズリ エコノスという島国
九二三年、ヘド幕府に傭(やと)われた殺戮集団マコトが尊王国粋党の
集(たか)るレストラン・イダヤケに斬りこんだことがあった。
志士七十八名が惨殺された。
イイヅナのヒドラはその時の生き残りである。彼の出生や前歴は
全く不明であるが一説には浮世絵師の見習いであったという。
国民の信頼は次第に、激烈な優生学的民族主義者のヒドラに集った。
ヒドラははじめて実際の戦況を報告した。五年も前から敗戦が決定的で
ありながらその事実を王にも国民にも隠していたヒドラに対し
アラマヒトは約二時間半にわたって大声で罵倒し、最後には
ヒドラの顔を押さえつけその鼻さきを自分の肛門に押し込んで
肛門腺分泌物を噴射した。
ヒドラは胸を掻きむしりながら弱よわしく「大君の屁にこそ死なめ」
と呟いて息絶えた。
イタチ族の歴史をどう読むか
異化作用
今、世界史を書いている。
歴史小説ではなく、歴史を書いているのである。
世界史のパロディーではなく、世界史なのである。
少なくとも書く方ではそのつもりで書いている。
さて、その三百枚のうちの二百枚を
書き上げた今、読み返してみると、
それはたまたま世界史を残虐性の側面から
眺めてというていのものになっている。
「プライベート世界史」より
「幻想の未来」(1968)
宗教対立と戦争と虐殺 人類史=戦争史 虐殺史 混血史
ノーマン・メイラー「裸者と死者」(1948)
太平洋戦争中 日本軍が支配する南太平洋の孤島に
上陸した米兵たちの姿を描いた群像劇
第一章 戦争に行く人の心の中
第二章 侵略される側の歴史
第三章 戦争そのもの
戦争のすべてを入れた
第二章 神話
「先生あの『カンチョレ族の繁栄』っていうの、学生アルバイトにでも
代筆させたんじゃないの」深夜スナックのマスター。
「面白くありませんでした。はい。面白くありませんでしたから」
『三月ウサギ』公演終了後のロビーにて学生風の二人づれ。
「あの『虚人たち』って言うの、酔っぱらって書かれたんですか」
バーにいた唐辛子のような赤い小さい娘。な・ぜ・だ。
傑作だと思っているものばかりではないか。
まあまあまあそういう連中っていうのはひと前で
作家に無礼なことを言ってそれをあとで自慢したいのですよ。
いやそればかりではあるまいね。あの前後もわきまえぬ
ある種の真剣さは彼らが本気で、心の底から
そう思いたがっていることを示していたのです。
この小説を読んで怒る人も、やっぱりいるのであろうなあ。いやだなあ。
突然登場!作者自身の意識
小説の中には何でも書ける 30:33
話芸の伝統 チョンガレ節 祭文語り
ボブ・ホープ(1903~2003)
アメリカの喜劇俳優 楽屋落ちギャグで人気を博した
分らなくても気にしなくていい
分らないのが気持ちいい
性暴力の描写 戦争の本質
ラストは読み飛ばさないで欲しい
「敵」(1998) 吉田大八映画監督の言葉
不条理な物語として楽しんだ
2020年 コロナの時 読み直したのがこの「敵」だった
30歳代で始めて読んだ時とは全く違ったものだった。
誰にもこの作品は渡したくないと思い映画化した。
「敵」監督 吉田大八 1月17日(金)より全国公開
老境を迎えた元大学教授の日常 そこにある日 不穏なメールが届く
「老い」を描く筒井文学
理性を保ったまま老いと向き合う 困難さえも楽しむ
お勧めしたい筒井作品は❓
「薬菜飯店」(1988) イチゴの日
「残像に口紅を」(0989)
「ダンシング・ヴァニティ」(2008)
「問題外科」(1979)「魚籃(ぎょらん)観音記」(2000)
2025年1月13日月曜日
兼題「初鏡」&テーマ「日記」
楽天の熱きサービス去年今年
冬陽射し夢の世界へ誘わん
冬の街黄色き車また見っけ
日陰の主役ズームイン
背を丸め狭き足幅冬を舞う
■NHK俳句 兼題「初鏡」
選者 西山睦 ゲスト 新橋小雪(新橋芸者) 司会 柴田英嗣
年間テーマは「やさしい手」
白足袋の鞐(こはぜ)を外し素顔なる 西山睦
「白足袋」は防寒という意味で冬の季語になる
地方(じかた) 毎晩宴席で三味線を披露
俳句歴19年 芸者になってからも19年
忍び駒かけて爪弾く霜夜かな 小雪
俳句×歴史100年の芸
明治8年創業の料亭 日本三大料亭のひとつ
伊藤博文、佐藤榮作、高浜虚子が訪れていた
俳句は芸と共通する点も多く芸の幅を広げたり深めたりする理由で始めた
・小雪さんの「やさしい手」 俳句三選
三味線
初春の音締(ねじめ)はかろき三下り 小雪
「三下り」は三味線の調弦法のひとつ
正月の華やかな浮いた感じを出したくて「かろき」を使った
本調子 「初春」は正月のおめでたい席で踊る曲
お座式の設えによって曲は変わる
忍び駒とは音を小さくするもの
東をどり
帯解けば東をどりの余韻かな 小雪
着物
逝く秋や実花俳妓(じっかはいぎ)の縞小紋(しまこもん) 小雪
実花とは下田実花(しもだじつか) 山口誓子の妹で高浜虚子門の俳人
新橋芸者としても昭和に活躍
・俳句と芸の共通点や違いは❓
「決まりごとの中で自分を表現する」
俳句も「五・七・五」という方はあるように芸にも型があり
お稽古でも型から教えていただくが決まった型の中で自分を表現していく
10年やれば体で覚える
積極的に学ぶことと体で覚えることは覚悟した方がいい
・今週の兼題 今週のテーマ「初鏡」
芸者の初鏡は置屋での初座敷の支度をする光景
必ず合わせ鏡で後ろ姿を確認する
特選六句発表!
ためらはぬ母の手際や初鏡 植野史理(ふみとし)
初鏡棒のやうなる娘(こ)の着付け 古川晴野
娘(こ)は出かけシトラスの香の初鏡 堀部一良
ゆるやかに割烹着ぬぎ初鏡 山本和惠
病床の顔は上向き初鏡 吉野敬子
往来に朗らかな声初鏡 村上修
特選三席発表!
一席 背には吾子膝にも吾子の初鏡 富樫(とがし)望
二席 初鏡昨夜活けたる花香る 山中昌子
三席 牛小屋に赤いヤッケの初鏡 星節子
・柴田の歩み
俳句も進行も10年
■NHK短歌 テーマ「日記」
選者 俵万智 ゲスト 信川清順 司会 ヒコロヒー
年間テーマは「光る愛の歌」
・入選九首 テーマ「日記」
プラごみは毎日毎日かさを増す立体的な日記のように
公木正(こうきせい)
三席 おとついのページのうらのボコボコを今日の私がやさしくなでる
川田ゆかる
何かから私を守るためだろう、罫線(けいせん)に針葉樹繫りぬ
深川泳
日記には「アホ」の一言しかなくて七年前のこの怒り何
藤森円
ごめん、って日記に何度書いたって伝わらないって知ってて、ごめん
遠藤健人
一席 私 読み返すたび思い出す日記には残さなかったことの数々
富尾大地
二席 私 日記買う来年もまた愛(かな)しみを預けて下ろす通帳のごと
大野康子
昼にもう日記を書いた日があって読み返すたび新鮮な昼
佐藤研哉
私 わたくしの日記は生け簀(す)とりあえず浮気している夫(つま)を泳がす
菊池康子
・「光る君へ」で短歌を10倍楽しもう!
現代の日記と「光る君へ」の時代の日記の違いは?
現代の日記は自分のために書く
当時の日記はもっと公のものだった
藤原行成「権記」藤原道長「御堂関白記」藤原実資「小右記」
実際あったことが入ってくるとフィクション部分もすごく説得力を持つ
現代短歌を作るときもすごく役立つテクニック
実際あったことをちょっと混ぜながらフィクションを書く
短歌づくりのポイント
リアルを生かせばフィクションにも説得力が生まれる
俵万智女史は行成派
露の身の風の宿りに君を置きて塵を出でぬることぞ悲しき
万智訳
露としてあなたはそばにいてくれた置いていかねばならぬ悲しさ
「露」は定子のことを言っているのではないか
定子はお産で亡くなったお産で亡くなった人は成仏できないと言われていた
彰子の手をつかみながらこの歌を詠む行成…。
当時の日記は生きた人間のドラマの日々の中で
文字として書かれてきたと実感できる
書くことで歴史を作る 現代の「社会詠」に近い
私たちがどんな風に感じたか時代の空気として次の時代に伝えていく
短歌づくりのポイント
世の中の出来事や時代の空気を自分がどうとらえたかを詠み込む
「社会詠」にも挑戦しよう
言葉でギャップを感じることもある 万智女史
ギャップを楽しめるのがすごくいい ヒコロヒー
続かなかったことも含めて日記
日記をつけるほど自分と向き合う必要のない期間
・言葉のバトン
鵜のいろの空に朝日をのぼらせる
谷口菜月 フリーアナウンサー
⇩
生きる輝き背中を押され
松田茂 コピーライター
「最高の初体験」「飛び越えろ、自分を。」
「想像すること、とめられない。」
冬の街黄色き車また見っけ
日陰の主役ズームイン
背を丸め狭き足幅冬を舞う
■NHK俳句 兼題「初鏡」
選者 西山睦 ゲスト 新橋小雪(新橋芸者) 司会 柴田英嗣
年間テーマは「やさしい手」
白足袋の鞐(こはぜ)を外し素顔なる 西山睦
「白足袋」は防寒という意味で冬の季語になる
地方(じかた) 毎晩宴席で三味線を披露
俳句歴19年 芸者になってからも19年
忍び駒かけて爪弾く霜夜かな 小雪
俳句×歴史100年の芸
明治8年創業の料亭 日本三大料亭のひとつ
伊藤博文、佐藤榮作、高浜虚子が訪れていた
俳句は芸と共通する点も多く芸の幅を広げたり深めたりする理由で始めた
・小雪さんの「やさしい手」 俳句三選
三味線
初春の音締(ねじめ)はかろき三下り 小雪
「三下り」は三味線の調弦法のひとつ
正月の華やかな浮いた感じを出したくて「かろき」を使った
本調子 「初春」は正月のおめでたい席で踊る曲
お座式の設えによって曲は変わる
忍び駒とは音を小さくするもの
東をどり
帯解けば東をどりの余韻かな 小雪
着物
逝く秋や実花俳妓(じっかはいぎ)の縞小紋(しまこもん) 小雪
実花とは下田実花(しもだじつか) 山口誓子の妹で高浜虚子門の俳人
新橋芸者としても昭和に活躍
・俳句と芸の共通点や違いは❓
「決まりごとの中で自分を表現する」
俳句も「五・七・五」という方はあるように芸にも型があり
お稽古でも型から教えていただくが決まった型の中で自分を表現していく
10年やれば体で覚える
積極的に学ぶことと体で覚えることは覚悟した方がいい
・今週の兼題 今週のテーマ「初鏡」
芸者の初鏡は置屋での初座敷の支度をする光景
必ず合わせ鏡で後ろ姿を確認する
特選六句発表!
ためらはぬ母の手際や初鏡 植野史理(ふみとし)
初鏡棒のやうなる娘(こ)の着付け 古川晴野
娘(こ)は出かけシトラスの香の初鏡 堀部一良
ゆるやかに割烹着ぬぎ初鏡 山本和惠
病床の顔は上向き初鏡 吉野敬子
往来に朗らかな声初鏡 村上修
特選三席発表!
一席 背には吾子膝にも吾子の初鏡 富樫(とがし)望
二席 初鏡昨夜活けたる花香る 山中昌子
三席 牛小屋に赤いヤッケの初鏡 星節子
・柴田の歩み
俳句も進行も10年
■NHK短歌 テーマ「日記」
選者 俵万智 ゲスト 信川清順 司会 ヒコロヒー
年間テーマは「光る愛の歌」
・入選九首 テーマ「日記」
プラごみは毎日毎日かさを増す立体的な日記のように
公木正(こうきせい)
三席 おとついのページのうらのボコボコを今日の私がやさしくなでる
川田ゆかる
何かから私を守るためだろう、罫線(けいせん)に針葉樹繫りぬ
深川泳
日記には「アホ」の一言しかなくて七年前のこの怒り何
藤森円
ごめん、って日記に何度書いたって伝わらないって知ってて、ごめん
遠藤健人
一席 私 読み返すたび思い出す日記には残さなかったことの数々
富尾大地
二席 私 日記買う来年もまた愛(かな)しみを預けて下ろす通帳のごと
大野康子
昼にもう日記を書いた日があって読み返すたび新鮮な昼
佐藤研哉
私 わたくしの日記は生け簀(す)とりあえず浮気している夫(つま)を泳がす
菊池康子
・「光る君へ」で短歌を10倍楽しもう!
現代の日記と「光る君へ」の時代の日記の違いは?
現代の日記は自分のために書く
当時の日記はもっと公のものだった
藤原行成「権記」藤原道長「御堂関白記」藤原実資「小右記」
実際あったことが入ってくるとフィクション部分もすごく説得力を持つ
現代短歌を作るときもすごく役立つテクニック
実際あったことをちょっと混ぜながらフィクションを書く
短歌づくりのポイント
リアルを生かせばフィクションにも説得力が生まれる
俵万智女史は行成派
露の身の風の宿りに君を置きて塵を出でぬることぞ悲しき
万智訳
露としてあなたはそばにいてくれた置いていかねばならぬ悲しさ
「露」は定子のことを言っているのではないか
定子はお産で亡くなったお産で亡くなった人は成仏できないと言われていた
彰子の手をつかみながらこの歌を詠む行成…。
当時の日記は生きた人間のドラマの日々の中で
文字として書かれてきたと実感できる
書くことで歴史を作る 現代の「社会詠」に近い
私たちがどんな風に感じたか時代の空気として次の時代に伝えていく
短歌づくりのポイント
世の中の出来事や時代の空気を自分がどうとらえたかを詠み込む
「社会詠」にも挑戦しよう
言葉でギャップを感じることもある 万智女史
ギャップを楽しめるのがすごくいい ヒコロヒー
続かなかったことも含めて日記
日記をつけるほど自分と向き合う必要のない期間
・言葉のバトン
鵜のいろの空に朝日をのぼらせる
谷口菜月 フリーアナウンサー
⇩
生きる輝き背中を押され
松田茂 コピーライター
「最高の初体験」「飛び越えろ、自分を。」
「想像すること、とめられない。」
2025年1月12日日曜日
エディット・ピアフ
最後にかけた言の葉ずしりしづり
日常を残し残され冬銀河
冬の鳥自分の意志で残りけり
冬の水忘れられない思い出が
冬景色ラップ縦ノリ頭振り
■エディット・ピアフ 愛の賛歌
ラストシーンより☆「水に流して」
https://www.youtube.com/watch?v=YtpcKgacdf8
Non, Rien de rien
本当に何もない
Non, Je ne regrette rien
私は全く後悔していない
Ni le bien qu’on m’a fait Ni le mal
良いことも悪いことも
tout ça m’est bien égal!
全て私にとってはどうでも良い
Non, Rien de rien
本当に何もない
Non, Je ne regrette rien
私は全く後悔していない
C’est payé, balayé, oublié
償い、精算し、忘れ去った
Je me fous du passé!
過去は私にとってどうでも良い
Avec mes souvenirs
私の思い出と共に
J’ai allumé le feu
火を灯した
Mes chagrins, mes plaisirs
私の悲しみ、私の喜び
Je n’ai plus besoin d’eux!
もう私には何も要らない
Balayées les amours
愛は捨てた
Avec leurs trémolos
その震えと共に
Balayés pour toujours
全て捨てた
Je repars à zéro
私はゼロからやり直す
Non! Rien de rien
本当に何もない
Non, Je ne regrette rien
私は全く後悔していない
Ni le bien, qu’on m’a fait Ni le mal
私の良い行いも悪い行いも
tout ça m’est bien égal!
全て私にとってはどうでも良い
Non! Rien de rien
本当に何もない
Non! Je ne regrette rien
私は全く後悔していない
Car ma vie, car mes joies
私の人生、私の喜びなのだから
Aujourd’hui, ça commence avec toi!
今日、君と共に始まる!
Edith Piaf - Non, Je ne regrette rien
https://www.youtube.com/watch?v=Q3Kvu6Kgp88
【フランス語】パダン・パダン (Padam, Padam) (日本語字幕)
https://www.youtube.com/watch?v=hiBkjVJCbUk
■Padam...padam... パダム・パダム
Édith Piaf エディット・ピアフ
Cet air qui m’obsède jour et nuit
Cet air n’est pas né d’aujourd’hui
Il vient d’aussi loin que je viens
Traîné par cent mille musiciens
Un jour cet air me rendra folle
Cent fois j’ai voulu dire pourquoi
Mais il m’a coupé la parole
Il parle toujours avant moi
Et sa voix couvre ma voix
昼も夜も私につきまとうこの旋律
この旋律はきょうに始まったものじゃない
それは私が生まれたのと同じくらい昔から
数多くのミュージシャンに引きずられて来た
いつかこの旋律が私を狂わせるだろう
なぜなのと言いたいと何度も思った
だけどそれは私の言葉をさえぎって
私に先んじてしゃべり
その声は私の声を覆い隠してしまう
Padam...padam...padam... 注1
Il arrive en courant derrière moi
Padam...padam...padam...
Il me fait le coup du souviens-toi 注2
Padam...padam...padam...
C’est un air qui me montre du doigt 注3
Et je traîne après moi comme un drôle d’erreur
Cet air qui sait tout par cœur
パダム…パダム…パダム…
それは私の背後から走り寄ってくる
パダム…パダム…パダム…
忘れるなよと私をつつく
パダム…パダム…パダム…
それは私をあざける旋律
そして私はおかしな失敗みたいに引きずってしまう
すべてを見通しているこの旋律を
Il dit:“Rappelle-toi tes amours 注4
Rappelle-toi puisque c’est ton tour
’y a pas d’raison pour qu’tu n’pleures pas
Avec tes souvenirs sur les bras...”
Et moi je revois ceux qui restent
Mes vingt ans font battre tambour
Je vois s’entrebattre des geste
Toute la comédie des amours
Sur cet air qui va toujours
それは言う「お前のいくつもの恋を思い出せ
おまえの番なんだから思い出せ
おまえが泣かないなんて理由はないぜ
思い出をいっぱい抱えてるくせして…」
そこで私は自分に残っているものを振り返る
私の二十歳の青春が太鼓を打つ
私は殴り合っているしぐさを見る
いつも鳴り響くこの旋律に乗った
すべての恋の喜劇を見る
Padam...padam...padam...
Des “je t’aime” de quatorze-juillet
Padam...padam...padam...
Des “toujours” qu’on achète au rabais 注5
Padam...padam...padam...
Des “veux-tu” en voilà par paquets 注6
Et tout ça pour tomber juste au coin d’la rue
Sur l’air qui m’a reconnue
パダム…パダム…パダム…
巴里祭のいくつもの「ジュテーム」
パダム…パダム…パダム…
楽々手に入れる「いつまでも」
パダム…パダム…パダム…
「欲しいだけ」どっさりまとめて
そしてそれらはぜんぶ街角で降ってくる
私の馴染みの旋律に乗って
Écoutez le chahut qu’il me fait
それが私に対して起こす騒ぎを聞いてごらんよ
…
Comme si tout mon passé défilait 注7
まるで私の過去が次々に浮かんでくるようだ
…
Faut garder du chagrin pour après
J’en ai tout un solfège sur cet air qui bat... 注8
Qui bat comme un cœur de bois...
後々のために悲しみは取っておくべきね
木の心臓のような音をたてる
この旋律の音階が私にはぜんぶ分かっている
[注]
1 原題のPadamは擬音語で、パダンと訳されている場合が多いが、ピアフの歌を聴き動画の口の動きを見て、amの音はフランス語特有の鼻母音ではなく、madam「マダム」と同様にパダムと書いたほうが正確であろうと判断した。
2 le coup du souviens-toi つついて「思い出せ」あるいは「覚えておけ」と注意を喚起すること。
3 montre du doigt「指さす、あざける」
4 amourには「恋」と「恋人」の両義がある。ここではどちらともとれるが。
5 au rabais「安売りの、値引きして」
6 en veux-tu en voilà「あり余るほどの、たっぷり」から理解していいだろう。par paquets「いくつかずつまとめて」。
7 défilerには「(糸でつないだものを)ばらばらにする」と「列を作って進む、次々に現れる」の2つの意味があり、ここでは後者であろう。
8 solfègeは、歌詞を用いずドレミファを用いておこなう歌唱訓練。
参照:http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-384.html
私感
Édith Piaf女史の歌と始めて向き合いました。
あまりの巧さに圧倒されています。
物凄い前評判を聞き、期待に胸を膨らませ聞いた人に
裏切られたことがあったので期待していませんでした。
映画を拝見しても、好きにはなれませんでした。
なのに、YouTubeを聞き、すっかり魅了されてしまいました。
今は四六時中、流しています。出会えて良かった…。
日常を残し残され冬銀河
冬の鳥自分の意志で残りけり
冬の水忘れられない思い出が
冬景色ラップ縦ノリ頭振り
■エディット・ピアフ 愛の賛歌
ラストシーンより☆「水に流して」
https://www.youtube.com/watch?v=YtpcKgacdf8
Non, Rien de rien
本当に何もない
Non, Je ne regrette rien
私は全く後悔していない
Ni le bien qu’on m’a fait Ni le mal
良いことも悪いことも
tout ça m’est bien égal!
全て私にとってはどうでも良い
Non, Rien de rien
本当に何もない
Non, Je ne regrette rien
私は全く後悔していない
C’est payé, balayé, oublié
償い、精算し、忘れ去った
Je me fous du passé!
過去は私にとってどうでも良い
Avec mes souvenirs
私の思い出と共に
J’ai allumé le feu
火を灯した
Mes chagrins, mes plaisirs
私の悲しみ、私の喜び
Je n’ai plus besoin d’eux!
もう私には何も要らない
Balayées les amours
愛は捨てた
Avec leurs trémolos
その震えと共に
Balayés pour toujours
全て捨てた
Je repars à zéro
私はゼロからやり直す
Non! Rien de rien
本当に何もない
Non, Je ne regrette rien
私は全く後悔していない
Ni le bien, qu’on m’a fait Ni le mal
私の良い行いも悪い行いも
tout ça m’est bien égal!
全て私にとってはどうでも良い
Non! Rien de rien
本当に何もない
Non! Je ne regrette rien
私は全く後悔していない
Car ma vie, car mes joies
私の人生、私の喜びなのだから
Aujourd’hui, ça commence avec toi!
今日、君と共に始まる!
Edith Piaf - Non, Je ne regrette rien
https://www.youtube.com/watch?v=Q3Kvu6Kgp88
【フランス語】パダン・パダン (Padam, Padam) (日本語字幕)
https://www.youtube.com/watch?v=hiBkjVJCbUk
■Padam...padam... パダム・パダム
Édith Piaf エディット・ピアフ
Cet air qui m’obsède jour et nuit
Cet air n’est pas né d’aujourd’hui
Il vient d’aussi loin que je viens
Traîné par cent mille musiciens
Un jour cet air me rendra folle
Cent fois j’ai voulu dire pourquoi
Mais il m’a coupé la parole
Il parle toujours avant moi
Et sa voix couvre ma voix
昼も夜も私につきまとうこの旋律
この旋律はきょうに始まったものじゃない
それは私が生まれたのと同じくらい昔から
数多くのミュージシャンに引きずられて来た
いつかこの旋律が私を狂わせるだろう
なぜなのと言いたいと何度も思った
だけどそれは私の言葉をさえぎって
私に先んじてしゃべり
その声は私の声を覆い隠してしまう
Padam...padam...padam... 注1
Il arrive en courant derrière moi
Padam...padam...padam...
Il me fait le coup du souviens-toi 注2
Padam...padam...padam...
C’est un air qui me montre du doigt 注3
Et je traîne après moi comme un drôle d’erreur
Cet air qui sait tout par cœur
パダム…パダム…パダム…
それは私の背後から走り寄ってくる
パダム…パダム…パダム…
忘れるなよと私をつつく
パダム…パダム…パダム…
それは私をあざける旋律
そして私はおかしな失敗みたいに引きずってしまう
すべてを見通しているこの旋律を
Il dit:“Rappelle-toi tes amours 注4
Rappelle-toi puisque c’est ton tour
’y a pas d’raison pour qu’tu n’pleures pas
Avec tes souvenirs sur les bras...”
Et moi je revois ceux qui restent
Mes vingt ans font battre tambour
Je vois s’entrebattre des geste
Toute la comédie des amours
Sur cet air qui va toujours
それは言う「お前のいくつもの恋を思い出せ
おまえの番なんだから思い出せ
おまえが泣かないなんて理由はないぜ
思い出をいっぱい抱えてるくせして…」
そこで私は自分に残っているものを振り返る
私の二十歳の青春が太鼓を打つ
私は殴り合っているしぐさを見る
いつも鳴り響くこの旋律に乗った
すべての恋の喜劇を見る
Padam...padam...padam...
Des “je t’aime” de quatorze-juillet
Padam...padam...padam...
Des “toujours” qu’on achète au rabais 注5
Padam...padam...padam...
Des “veux-tu” en voilà par paquets 注6
Et tout ça pour tomber juste au coin d’la rue
Sur l’air qui m’a reconnue
パダム…パダム…パダム…
巴里祭のいくつもの「ジュテーム」
パダム…パダム…パダム…
楽々手に入れる「いつまでも」
パダム…パダム…パダム…
「欲しいだけ」どっさりまとめて
そしてそれらはぜんぶ街角で降ってくる
私の馴染みの旋律に乗って
Écoutez le chahut qu’il me fait
それが私に対して起こす騒ぎを聞いてごらんよ
…
Comme si tout mon passé défilait 注7
まるで私の過去が次々に浮かんでくるようだ
…
Faut garder du chagrin pour après
J’en ai tout un solfège sur cet air qui bat... 注8
Qui bat comme un cœur de bois...
後々のために悲しみは取っておくべきね
木の心臓のような音をたてる
この旋律の音階が私にはぜんぶ分かっている
[注]
1 原題のPadamは擬音語で、パダンと訳されている場合が多いが、ピアフの歌を聴き動画の口の動きを見て、amの音はフランス語特有の鼻母音ではなく、madam「マダム」と同様にパダムと書いたほうが正確であろうと判断した。
2 le coup du souviens-toi つついて「思い出せ」あるいは「覚えておけ」と注意を喚起すること。
3 montre du doigt「指さす、あざける」
4 amourには「恋」と「恋人」の両義がある。ここではどちらともとれるが。
5 au rabais「安売りの、値引きして」
6 en veux-tu en voilà「あり余るほどの、たっぷり」から理解していいだろう。par paquets「いくつかずつまとめて」。
7 défilerには「(糸でつないだものを)ばらばらにする」と「列を作って進む、次々に現れる」の2つの意味があり、ここでは後者であろう。
8 solfègeは、歌詞を用いずドレミファを用いておこなう歌唱訓練。
参照:http://chantefable2.blog.fc2.com/blog-entry-384.html
私感
Édith Piaf女史の歌と始めて向き合いました。
あまりの巧さに圧倒されています。
物凄い前評判を聞き、期待に胸を膨らませ聞いた人に
裏切られたことがあったので期待していませんでした。
映画を拝見しても、好きにはなれませんでした。
なのに、YouTubeを聞き、すっかり魅了されてしまいました。
今は四六時中、流しています。出会えて良かった…。
2025年1月11日土曜日
実録・蔦屋重三郎&よみ旅!In輪島&森下洋子女史の言葉
北吹くや性格滲む俳句あり
寒潮やリズム味方につけて詠む
煌めいた瞬間捉え冬を詠む
水のごと言葉紡ぎて冬の歌
稚拙でも心を込めて冬の月
■英雄たちの選択 大江戸エンタメ革命 ~実録・蔦屋重三郎~
写楽について書き記している
「あまりに真をかかんとて あらぬさまにかきなせしかば 長く世に行はれず」
大田南畝「浮世絵類考」より
写楽はわずか十カ月で姿を消した
しかし、それから百年以上経過した20世紀の初め
ドイツの浮世絵研究家が写楽の画集を出版
ユリウス・クルト「SHARAKU」(1910)
これをきっかけに唯一無二の肖像画として世界で脚光を浴びることとなった
精神的にも肉体的にも弱っていた重三郎に寄り添ったのは歌麿だった
最後まで二人は支え合った
重三郎最後の言葉
「私は今日の昼時には死ぬよ」昼になると…。
「もう幕が下りて拍子木が鳴ってもいいのにずいぶん遅いな」と云って笑った。
その夕刻 寛政9年(1797)5月6日 蔦屋重三郎 死去 享年48
田中優子女史
江戸文化は日本文化の伝統を受け止めていた 受け止めた上で逸脱する
現代の日本は昔の文化を無視している これはもったいない
物凄く沢山の物があって新しいサブカルチャーを生み出せる
鹿島茂氏
ハイカルチャーではなくサブカルローカルの方から
これだけの創造性を持つものが出てきた それを一人の編集者がやった
これがすごいところだと思いますね
ヤマザキマリ女史
いったん立ち止まって蔦屋重三郎のような精神性を
漫画家も編集者も振り返ってみたらおもしろいかもしれない
磯田道史氏
僕らは江戸文化という本歌を持っている 道楽は無償の遊戯性
アマチュア マニア オタク こういう人たちが本歌を踏まえつつ
無償の遊戯性を発揮して幸福な時間を持てたのが道楽の正体
自身を持って本歌取りと道楽を突き詰めていけば
未来に明るい光りが見えるのではないか
蔦屋重三郎の元から羽ばたいた、葛飾北斎、
十返舎一九(じっぺんしゃいっく)、曲亭馬琴(きょくていばきん)。
松平定信はひそかに小説を書いていた。題名は「大名形気」。
蔦屋重三郎が切り拓いた日本のポップカルチャーのその魅力は
21世紀の今、連綿と受け継がれている。
■夏井いつきのよみ旅!in輪島【特別編】
凍えた日家で待っとるダダメ鍋 南谷美有(被災前)
受け継いだ鰯重ねて突き進む 南谷美有(被災後)
東へ進め ROLAND
明けない夜はないという言葉があるじゃないですか
僕はあまり好きではなくて明るい空を目指して東へ走って欲しい
桃すもも咲けよ明るき明日よ来よ 夏井いつき
七五三つまみ細工で花そえて 北濱葉子(被災前)
運動会走る我が子に笑みこぼれ 北濱葉子(被災後)
過去の意味を変える ROLAND
震災があったという過去は変わらないけれど
離れ離れになった過去もまた変えられない事実ですけれど
離れたからこそ気付けた大切さもあると思う
今後も例えばケンカした時もこのケンカがあったから
「言いたいことが言い合えるようになったよね」ってなったら素敵ですよね
新しき家に初雪くる頃か 夏井いつき
輪島 冬の季語 日本海冬の味覚 ズワイガニ
被災した輪島港で約10か月ぶりの本格的な水揚げ
青いタグは”おいしさの証し“漁師自慢のズワイガニ
8000歩小春日和の軽やかに 中里重友(被災前)
出直しを綴り新たな冬の朝 中里重友(被災後)
春待つや二十三年目のペンと 夏井いつき
息白し白息来るのも遅くなり 今瀬風韻(かざね)(被災前)
紡がれる技を磨いて春を待つ 今瀬風韻(かざね)(被災後)
1人のスター ROLAND
誰もが憧れる1人のスターがいることで業界は絶対活性化する
スターであり続けてください
百年を見つむ冬木の芽の緋色 夏井いつき
輪島に古くから伝わる丸柚餅子(まるゆべし) 冬の季語
被災した老舗菓子店では11月に仮設工房で仕込むが始まった
餅だねを詰めて蒸し自然乾燥 年に一度の輪島の光景が戻った
吹きすさぶ雪の切れ間にアマメハギ 小谷紘樹(被災前)
人集い景色変われどアマメハギ 小谷紘樹(被災後)
アマメハギとは新年に地域の家々を訪ねる厄除け神事
子どもには脅かしながら戒める ユネスコ無形文化遺産に認定
地域の青年会が中心となりアマメハギの伝統を守る
みな戻り来よ初春の波頭 夏井いつき
鴛鴦(おしどり)の黒留袖でうふふふふ 木下京子(被災前)
息切れの苔の石段耐冬花(たいとうか) 木下京子(被災後)
耐冬花=椿の別名 頑張って生きていた被災者の人たちと重なった
ここに座っている間は自分と向き合える ひとりになれる時間
町の中の景色は変わりましたけど海の青さだったり空の青さだったりは
以前のままだからね この景色があって良かった 被災して思うんだけど
ちゃんと悲しむ 怒る 笑うってすごく大事だなって海で1人でいる時は
ちゃんと悲しもうって
雲の上に ROLAND
海を見る時間と椿待つこころ 夏井いつき
能登よいま春のひかりのある方へ 夏井いつき
煌めいた瞬間捉え冬を詠む
水のごと言葉紡ぎて冬の歌
稚拙でも心を込めて冬の月
■英雄たちの選択 大江戸エンタメ革命 ~実録・蔦屋重三郎~
写楽について書き記している
「あまりに真をかかんとて あらぬさまにかきなせしかば 長く世に行はれず」
大田南畝「浮世絵類考」より
写楽はわずか十カ月で姿を消した
しかし、それから百年以上経過した20世紀の初め
ドイツの浮世絵研究家が写楽の画集を出版
ユリウス・クルト「SHARAKU」(1910)
これをきっかけに唯一無二の肖像画として世界で脚光を浴びることとなった
精神的にも肉体的にも弱っていた重三郎に寄り添ったのは歌麿だった
最後まで二人は支え合った
重三郎最後の言葉
「私は今日の昼時には死ぬよ」昼になると…。
「もう幕が下りて拍子木が鳴ってもいいのにずいぶん遅いな」と云って笑った。
その夕刻 寛政9年(1797)5月6日 蔦屋重三郎 死去 享年48
田中優子女史
江戸文化は日本文化の伝統を受け止めていた 受け止めた上で逸脱する
現代の日本は昔の文化を無視している これはもったいない
物凄く沢山の物があって新しいサブカルチャーを生み出せる
鹿島茂氏
ハイカルチャーではなくサブカルローカルの方から
これだけの創造性を持つものが出てきた それを一人の編集者がやった
これがすごいところだと思いますね
ヤマザキマリ女史
いったん立ち止まって蔦屋重三郎のような精神性を
漫画家も編集者も振り返ってみたらおもしろいかもしれない
磯田道史氏
僕らは江戸文化という本歌を持っている 道楽は無償の遊戯性
アマチュア マニア オタク こういう人たちが本歌を踏まえつつ
無償の遊戯性を発揮して幸福な時間を持てたのが道楽の正体
自身を持って本歌取りと道楽を突き詰めていけば
未来に明るい光りが見えるのではないか
蔦屋重三郎の元から羽ばたいた、葛飾北斎、
十返舎一九(じっぺんしゃいっく)、曲亭馬琴(きょくていばきん)。
松平定信はひそかに小説を書いていた。題名は「大名形気」。
蔦屋重三郎が切り拓いた日本のポップカルチャーのその魅力は
21世紀の今、連綿と受け継がれている。
■夏井いつきのよみ旅!in輪島【特別編】
凍えた日家で待っとるダダメ鍋 南谷美有(被災前)
受け継いだ鰯重ねて突き進む 南谷美有(被災後)
東へ進め ROLAND
明けない夜はないという言葉があるじゃないですか
僕はあまり好きではなくて明るい空を目指して東へ走って欲しい
桃すもも咲けよ明るき明日よ来よ 夏井いつき
七五三つまみ細工で花そえて 北濱葉子(被災前)
運動会走る我が子に笑みこぼれ 北濱葉子(被災後)
過去の意味を変える ROLAND
震災があったという過去は変わらないけれど
離れ離れになった過去もまた変えられない事実ですけれど
離れたからこそ気付けた大切さもあると思う
今後も例えばケンカした時もこのケンカがあったから
「言いたいことが言い合えるようになったよね」ってなったら素敵ですよね
新しき家に初雪くる頃か 夏井いつき
輪島 冬の季語 日本海冬の味覚 ズワイガニ
被災した輪島港で約10か月ぶりの本格的な水揚げ
青いタグは”おいしさの証し“漁師自慢のズワイガニ
8000歩小春日和の軽やかに 中里重友(被災前)
出直しを綴り新たな冬の朝 中里重友(被災後)
春待つや二十三年目のペンと 夏井いつき
息白し白息来るのも遅くなり 今瀬風韻(かざね)(被災前)
紡がれる技を磨いて春を待つ 今瀬風韻(かざね)(被災後)
1人のスター ROLAND
誰もが憧れる1人のスターがいることで業界は絶対活性化する
スターであり続けてください
百年を見つむ冬木の芽の緋色 夏井いつき
輪島に古くから伝わる丸柚餅子(まるゆべし) 冬の季語
被災した老舗菓子店では11月に仮設工房で仕込むが始まった
餅だねを詰めて蒸し自然乾燥 年に一度の輪島の光景が戻った
吹きすさぶ雪の切れ間にアマメハギ 小谷紘樹(被災前)
人集い景色変われどアマメハギ 小谷紘樹(被災後)
アマメハギとは新年に地域の家々を訪ねる厄除け神事
子どもには脅かしながら戒める ユネスコ無形文化遺産に認定
地域の青年会が中心となりアマメハギの伝統を守る
みな戻り来よ初春の波頭 夏井いつき
鴛鴦(おしどり)の黒留袖でうふふふふ 木下京子(被災前)
息切れの苔の石段耐冬花(たいとうか) 木下京子(被災後)
耐冬花=椿の別名 頑張って生きていた被災者の人たちと重なった
ここに座っている間は自分と向き合える ひとりになれる時間
町の中の景色は変わりましたけど海の青さだったり空の青さだったりは
以前のままだからね この景色があって良かった 被災して思うんだけど
ちゃんと悲しむ 怒る 笑うってすごく大事だなって海で1人でいる時は
ちゃんと悲しもうって
雲の上に ROLAND
海を見る時間と椿待つこころ 夏井いつき
能登よいま春のひかりのある方へ 夏井いつき
■紅白歌合戦 森下洋子ちゃんの言葉
私、広島の人間として玉置浩二さんが
こうやって歌って下さるという事に胸がいっぱいです。
苦しんでいる方をたくさん見てきているので
そういう風に歌って頂けること本当に感謝しております。
私、広島の人間として玉置浩二さんが
こうやって歌って下さるという事に胸がいっぱいです。
苦しんでいる方をたくさん見てきているので
そういう風に歌って頂けること本当に感謝しております。
2025年1月10日金曜日
おみくじで一句&餅
歩き方育ち違えば冬の山
永世名人のお手本 梅沢富美男
枝数多吉凶咲くや初みくじ
添削(よくある光景をよくある言葉で書いた普通の句
白いおみくじの花の向うに美しい新年の青空が広がってくる)
吉凶を咲かせ初みくじの御空(みそら)
特待生昇格試験 森迫永依
冬晴れや吉凶よりも腹の虫
添削(よりもは散文的私的な情景に乏しい
わらふだとあなたの意図に寄ってくる)
冬晴れや吉凶わらふ腹の虫
1位 髙地優吾
初蹴りはハットトリック初雀
(初雀が季語 自分の体験 年明けの最初はまずお参り
そこに連想が繋がった 専門用語を入れることで初蹴りが
空手でもなくサッカーだとわかる 季語が明るくて軽やかなリズム
頭の韻を丁寧に踏んでいる これは偶然だったかな)
2位 金ちゃん
船出かなより良い明日へ冬の朝
添削(船出が比喩であることがわかるように書く)
初みくじ船出のごとき朝の風
3位 伊原六花
迎え春日当たる場所へ25の壁
添削(思いが多すぎて言葉がひしめき合っている 2つに分けると良い)
おみくじを結ぶ春日の当たる場所
春の日や二十五歳の壁に立つ
4位 大友康平
初神籤花びら見据え徒手空挙(としゅくうけん)
添削(言いたいことを詰め込み過ぎたタイプ 初神籤と花で季重なり
花びらが比喩だとわかるように「ごとく」を入れる)
徒手空拳花のごとくに初神籤
5位 みりちゃむ
寒空にせ~ので見るよ恋模様
添削(俳句は書かれた17音が全て字面で同意味をとるか?)
それぞれの恋のぞき込む初みくじ
次回は3時間スペシャル
■漢字ふむふむ やっちまった~!?餅
餅の原料は日本では米、中国では小麦
「倭名類聚抄」に餅は毛知比(モチヒ)と記されている
しかし、中国へ遣唐使が行っているので
麦粉で作る物も入ってきたのではないか
両方の可能性がある
麦は庶民の食べ物 米は上等品
米の餅は神へのお供え物
白鳥伝説 餅は稲の精霊
文字が使える人は教養の高い貴族など
酔って米の餅は残り麦の餅は消えて行った
枯芝を立派な腿と胸ずしり
ボテ入る十九歳の冬の柴
ふくよかな身体駆使せり冬の山
冬芝へうなじの色香ふりまかん
■プレバト纏め 2025年1月9日
おみくじで一句
ボテ入る十九歳の冬の柴
ふくよかな身体駆使せり冬の山
冬芝へうなじの色香ふりまかん
■プレバト纏め 2025年1月9日
おみくじで一句
永世名人のお手本 梅沢富美男
枝数多吉凶咲くや初みくじ
添削(よくある光景をよくある言葉で書いた普通の句
白いおみくじの花の向うに美しい新年の青空が広がってくる)
吉凶を咲かせ初みくじの御空(みそら)
特待生昇格試験 森迫永依
冬晴れや吉凶よりも腹の虫
添削(よりもは散文的私的な情景に乏しい
わらふだとあなたの意図に寄ってくる)
冬晴れや吉凶わらふ腹の虫
1位 髙地優吾
初蹴りはハットトリック初雀
(初雀が季語 自分の体験 年明けの最初はまずお参り
そこに連想が繋がった 専門用語を入れることで初蹴りが
空手でもなくサッカーだとわかる 季語が明るくて軽やかなリズム
頭の韻を丁寧に踏んでいる これは偶然だったかな)
2位 金ちゃん
船出かなより良い明日へ冬の朝
添削(船出が比喩であることがわかるように書く)
初みくじ船出のごとき朝の風
3位 伊原六花
迎え春日当たる場所へ25の壁
添削(思いが多すぎて言葉がひしめき合っている 2つに分けると良い)
おみくじを結ぶ春日の当たる場所
春の日や二十五歳の壁に立つ
4位 大友康平
初神籤花びら見据え徒手空挙(としゅくうけん)
添削(言いたいことを詰め込み過ぎたタイプ 初神籤と花で季重なり
花びらが比喩だとわかるように「ごとく」を入れる)
徒手空拳花のごとくに初神籤
5位 みりちゃむ
寒空にせ~ので見るよ恋模様
添削(俳句は書かれた17音が全て字面で同意味をとるか?)
それぞれの恋のぞき込む初みくじ
次回は3時間スペシャル
■漢字ふむふむ やっちまった~!?餅
餅の原料は日本では米、中国では小麦
「倭名類聚抄」に餅は毛知比(モチヒ)と記されている
しかし、中国へ遣唐使が行っているので
麦粉で作る物も入ってきたのではないか
両方の可能性がある
麦は庶民の食べ物 米は上等品
米の餅は神へのお供え物
白鳥伝説 餅は稲の精霊
文字が使える人は教養の高い貴族など
酔って米の餅は残り麦の餅は消えて行った
2025年1月9日木曜日
渥美清&お賽銭&「名残の空」&「闇汁」&井伊直政&上村松園
寒きびし心を込めた殴り書き
引き算はすべてに通ず明日の春
寒日和手紙の如き俳句かな
冬銀河短歌とラップ飛び跳ねん
大切に生きてきました冬の月
■渥美清に会いたい 山田洋二×黒柳徹子
1995年(67歳)
どんな所で生まれて何をしてきて
どういう風になったのか 分からない方がいい
だけど現実にその人が舞台に出たり
現実にその人が出てくると 魅入られてしまう
そういうものに俺たちは引き込まれる
スーパーマンの撮影を見ていた子どもが
「飛べ飛べ早く飛べ」って言ったて言うけれども
スーパーマンは2本の足で地面に立っていちゃいけないんだね
だから寅さんも黙っていちゃいけないんでしょう
24時間手をふっていなきゃ
渥美清さんが残したもの 身障者のファンの人へ送ったテープ
僕は寅さんの映画に出ているおじさんです
名前は渥美清と言います
僕は今こうやって元気そうに見えますけど
生まれた時はね1900gぐらいしかなかった
お父さんの片っぽの手のひらの上にちょこんと乗っかったくらいに
それは小さな赤ん坊でした
あまり体が丈夫でなくて小学校も休む日の方が多くて
全部を通して4年ぐらいしか行っておりません
色んな病気をしました
25歳の時は死ぬか生きるかの大きな手術をして
10日間ぐらいは「もう助からない」と言われるくらいに危篤でした
でも体を大切にして一生懸命生きています
僕の体のことだけを家族の人は心配してくれました
僕が自分の体を大切にするということは
家族を大切にすることだと思っています
よしお君も辛いことやじれったいことや
悲しいことがたくさんあるでしょう
でももっと辛い人がいっぱいいます
お家の人の言うことをよく聞いてね
そして楽しく元気に毎日を過ごしてください
それではさようなら
山田洋二監督の感想
芯の方にしみとおる寂しさ
■漢字ふむふむ 再選を競い合う!?
賽は中国では競う勝負を争うという意味
元々賽は神仏に報いるという意味だったが中国では競うに変わった
きっかけは唐の時代 三蔵法師がインドから
持って帰ってきた経典の中に「波羅賽戯」という遊戯があった
6世紀中国では「波羅賽戯」が大ブームになり
かの楊貴妃も皇帝と戯れたといわれている
ゲームが広がり「賽」の「競い合う」という意味が定着していった
一方日本では「賽」の元々の意味が使われ続けられている
中国人は生きた化石だと思っているとか…。
■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「名残の空」
字の時点で名残という部分に情緒感がたっぷりな季語ですね
元々は和歌の世界 しかも古い時代の和歌に
詠まれた言葉だそうです 恋や離別 別れの感情を抱いて眺める
そういう空の意味だったんですけれども 現在ではゆく年を
惜しむ名残のつきない空という意味でこの歳時記には
収録されております 傍題として「年の空」という言い方も
あるのですが どちらも年末暮れてゆく年のことを思いながら
より情緒的に使いたい場合はこの「名残の空」と
いう言い方をすると そんな使い分けになるのかもしれないですねぇ
皆様はこの年末いかがお過ごしでしょうか
■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「闇汁」
闇鍋という言い方の方が耳馴染があるかもしれないですねぇ
よく複数人が集まった時にそれぞれ食材を持ち寄って
真っ暗な中で皆んなが一度に鍋に入れる何が入っているか
分からないものを皆んなで掴んで取り出して食べると
そんな冬の遊びとして愛されている季語ですね
この遊び心というのでしょうか 妙に俳人心をくすぐる
いたずら心をくすぐる季語でもあります
暗黙の了解としてちゃんと食べられる物を入れようね
というのが良識なのかもしれませんが 中にはとんでもない人も
いるんでしょうね 靴が入っていたとか そんな話を
色々耳にしたりもしますけど 昔娯楽の少ない時代には
こうやって冬を過ごしていたわけです
■偉人・敗北からの教訓 第74回「シリーズ東軍・西軍それぞれの関ケ原①井伊直政」
井伊直政 敗北の伏線
大胆な行動力が魅力だが長所が短所になることも
井伊直政 敗北の瞬間
失敗を恐れない行動力が裏目に出てしまった
井伊直政の敗北から学ぶ教訓
大成功を収めた時こそ欲をかいた深追いは禁物
■日曜美術館SPハッピーニューアーツ!
上村松園の言葉 「序の舞」1936年(昭和11年)について
この絵は私の理想の女性の最高のものと言っていい
自分でも気に入っている「女性の姿」であります
引き算はすべてに通ず明日の春
寒日和手紙の如き俳句かな
冬銀河短歌とラップ飛び跳ねん
大切に生きてきました冬の月
■渥美清に会いたい 山田洋二×黒柳徹子
1995年(67歳)
どんな所で生まれて何をしてきて
どういう風になったのか 分からない方がいい
だけど現実にその人が舞台に出たり
現実にその人が出てくると 魅入られてしまう
そういうものに俺たちは引き込まれる
スーパーマンの撮影を見ていた子どもが
「飛べ飛べ早く飛べ」って言ったて言うけれども
スーパーマンは2本の足で地面に立っていちゃいけないんだね
だから寅さんも黙っていちゃいけないんでしょう
24時間手をふっていなきゃ
渥美清さんが残したもの 身障者のファンの人へ送ったテープ
僕は寅さんの映画に出ているおじさんです
名前は渥美清と言います
僕は今こうやって元気そうに見えますけど
生まれた時はね1900gぐらいしかなかった
お父さんの片っぽの手のひらの上にちょこんと乗っかったくらいに
それは小さな赤ん坊でした
あまり体が丈夫でなくて小学校も休む日の方が多くて
全部を通して4年ぐらいしか行っておりません
色んな病気をしました
25歳の時は死ぬか生きるかの大きな手術をして
10日間ぐらいは「もう助からない」と言われるくらいに危篤でした
でも体を大切にして一生懸命生きています
僕の体のことだけを家族の人は心配してくれました
僕が自分の体を大切にするということは
家族を大切にすることだと思っています
よしお君も辛いことやじれったいことや
悲しいことがたくさんあるでしょう
でももっと辛い人がいっぱいいます
お家の人の言うことをよく聞いてね
そして楽しく元気に毎日を過ごしてください
それではさようなら
山田洋二監督の感想
芯の方にしみとおる寂しさ
■漢字ふむふむ 再選を競い合う!?
賽は中国では競う勝負を争うという意味
元々賽は神仏に報いるという意味だったが中国では競うに変わった
きっかけは唐の時代 三蔵法師がインドから
持って帰ってきた経典の中に「波羅賽戯」という遊戯があった
6世紀中国では「波羅賽戯」が大ブームになり
かの楊貴妃も皇帝と戯れたといわれている
ゲームが広がり「賽」の「競い合う」という意味が定着していった
一方日本では「賽」の元々の意味が使われ続けられている
中国人は生きた化石だと思っているとか…。
■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「名残の空」
字の時点で名残という部分に情緒感がたっぷりな季語ですね
元々は和歌の世界 しかも古い時代の和歌に
詠まれた言葉だそうです 恋や離別 別れの感情を抱いて眺める
そういう空の意味だったんですけれども 現在ではゆく年を
惜しむ名残のつきない空という意味でこの歳時記には
収録されております 傍題として「年の空」という言い方も
あるのですが どちらも年末暮れてゆく年のことを思いながら
より情緒的に使いたい場合はこの「名残の空」と
いう言い方をすると そんな使い分けになるのかもしれないですねぇ
皆様はこの年末いかがお過ごしでしょうか
■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「闇汁」
闇鍋という言い方の方が耳馴染があるかもしれないですねぇ
よく複数人が集まった時にそれぞれ食材を持ち寄って
真っ暗な中で皆んなが一度に鍋に入れる何が入っているか
分からないものを皆んなで掴んで取り出して食べると
そんな冬の遊びとして愛されている季語ですね
この遊び心というのでしょうか 妙に俳人心をくすぐる
いたずら心をくすぐる季語でもあります
暗黙の了解としてちゃんと食べられる物を入れようね
というのが良識なのかもしれませんが 中にはとんでもない人も
いるんでしょうね 靴が入っていたとか そんな話を
色々耳にしたりもしますけど 昔娯楽の少ない時代には
こうやって冬を過ごしていたわけです
■偉人・敗北からの教訓 第74回「シリーズ東軍・西軍それぞれの関ケ原①井伊直政」
井伊直政 敗北の伏線
大胆な行動力が魅力だが長所が短所になることも
井伊直政 敗北の瞬間
失敗を恐れない行動力が裏目に出てしまった
井伊直政の敗北から学ぶ教訓
大成功を収めた時こそ欲をかいた深追いは禁物
■日曜美術館SPハッピーニューアーツ!
上村松園の言葉 「序の舞」1936年(昭和11年)について
この絵は私の理想の女性の最高のものと言っていい
自分でも気に入っている「女性の姿」であります
2025年1月8日水曜日
故事成語「守株」&言語文学 柳あをめる(短歌)&言語文学 雪の深さを(俳句)
冬の夜を突如煌めく言の葉よ
短景やシンプルだけど重たくて
SNSは嫉妬製造機しまき
冬の暮嫉妬せずにはいられない
取っつき難き人に取っつくおこり炭
■NHK高校講座 言語文化 故事成語「守株」
学習のポイント
一 「故事」・「故事成語」とは何か
二 本分を声に出して読む
三 「守株」の現代語訳と話の背景、故事成語としての意味を考える
・「故事」…昔から伝わっている出来事や話
・「故事成語」…故事がもとになって生まれた言葉
例:これを完璧に仕上げようね 文章を推敲しよう
完璧と推敲は中国生まれ
原文
「韓非子(かんぴし)」
宋人有耕田者。
田中有株。兔走触株、折頸而死 。
因釈其耒而守株、冀復得兔。
兔不可復得、而身為宋国笑。
書き下ろし文
宋人に田を耕す者有り。
田中に株(くいぜ)有り。兔走りて株に触れ、頸を折りて死す。
因(よ)りて其の耒(すき)を釈(す)てて株を守り、復(ま)た兔を得んことを冀(こひねが)ふ。
兔復た得(う)べからずして、身は宋国の笑ひと為る。
口語訳(現代語訳)
宋の国の人で、田んぼを耕している者がいました。
ある日、畑の中にあった切り株にウサギが走ってぶつかり、
首を折って死んでしまいました。
これを見たその人は持っていたすきを捨てて(農作業を辞めて)、
毎日切り株をチェックし、また切り株にウサギが飛び込み、
楽をしてウサギが手に入らないかと願っていました。
(もちろん)ウサギを得ることはできずに、
その人は宋の国の笑い者となったということです。
「待ちぼうけ」は「守株」からできた童謡
韓非(学者)
成功した昔のやり方で、今の民を治めようとする者は、
ちょうどこの農夫が切り株をじっと見守っているようなものだ。
童謡「待ちぼうけ」作詞:北原白秋 作曲:山田耕筰
待ちぼうけ、待ちぼうけ
ある日せっせと、野良稼ぎ
そこに兔がとんで出て
ころりころげた 木の根っこ
2.
待ちぼうけ、待ちぼうけ
しめた。これから寝て待とうか
待てば獲物が驅けてくる
兔ぶつかれ、木のねっこ
3.
待ちぼうけ、待ちぼうけ
昨日鍬取り、畑仕事
今日は頬づゑ、日向ぼこ
うまい切り株、木のねっこ
4.
待ちぼうけ、待ちぼうけ
今日は今日はで待ちぼうけ
明日は明日はで森のそと
兔待ち待ち、木のねっこ
5.
待ちぼうけ、待ちぼうけ
もとは涼しい黍畑
いまは荒野(あれの)の箒草(はうきぐさ)
寒い北風木のねっこ
■NHK高校講座 言語文学 柳あをめる(短歌)
学習のポイント
一 リズムを感じながら味わう
二 感情に寄り添う
三 情景を思い浮かべる
一
やはらかに柳あをめる北上の岸辺目に見ゆ泣けとごとくに
石川啄木
短歌が難しいと感じた時は… 短歌はリズムのある韻文
まずは声に出してよんでみよう!
岡に来て両腕(もろうで)に白い帆を張れば風はさかんな海賊のうた
斎藤史(五八五七七 字余り)
二
なぜ短歌を詠むのか?
我が母よ死にたまひゆく我が母よ我を生まし乳足(ちた)らひし母よ
斎藤茂吉
(私をお生みになった十分な乳を与えてくださった)
五七五五(字足らず)八(字余り)心の声がリズムとなっている
短歌は心の動きを文字とリズムに託して表現
三
昼ながら幽(かす)かに光る蛍一つ孟宗(まうそう)の藪(やぶ)を出(い)でて消えたり
北原白秋
清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき
与謝野晶子
■NHK高校講座 言語文学 雪の深さを(俳句)
短歌は奈良時代の万葉集 俳句は一般的には江戸時代、戦国時代「俳諧連歌」
学習ポイント
一 リズムを感じながら味わう
二 自然を感じる
三 音を想像する
一
五七五は日本人が慣れ親しんできたもの
金亀子(こがねむし) 擲(なげう)つ闇の深さかな 高浜虚子
俳句が難しと感じたときは…
まずは声に出してよんでみよう!
芋の露連山影を正しうす 飯田蛇笏
二
俳句にえがかれた自然の様子に注目
来(こ)しかたや馬酔木(あしび)咲く野の日のひかり 水原秋桜子
切れ字…強く言いきることで間を持たせたり余韻を生んだりする
(ここまで歩いてきた方向 そこに切れ字 作者は立ち止まって振返っている
馬酔木は春の季語 季語は読者に季節感をうまく伝えることができる
外(と)にも出よ触(ふ)るるばかりに春の月 中村汀女
三
海に出て木枯帰るところなし 山口誓子(せいし)
木枯:冬の季語 木枯を音で表すと?ビュービュー
冬の水一枝(いっし)の影も欺(あざむ)かず 中村草田男
高校講座ホームページ https://www.nhk.or.jp/kokokoza/gengobunka/
SNSは嫉妬製造機しまき
冬の暮嫉妬せずにはいられない
取っつき難き人に取っつくおこり炭
■NHK高校講座 言語文化 故事成語「守株」
学習のポイント
一 「故事」・「故事成語」とは何か
二 本分を声に出して読む
三 「守株」の現代語訳と話の背景、故事成語としての意味を考える
・「故事」…昔から伝わっている出来事や話
・「故事成語」…故事がもとになって生まれた言葉
例:これを完璧に仕上げようね 文章を推敲しよう
完璧と推敲は中国生まれ
原文
「韓非子(かんぴし)」
宋人有耕田者。
田中有株。兔走触株、折頸而死 。
因釈其耒而守株、冀復得兔。
兔不可復得、而身為宋国笑。
書き下ろし文
宋人に田を耕す者有り。
田中に株(くいぜ)有り。兔走りて株に触れ、頸を折りて死す。
因(よ)りて其の耒(すき)を釈(す)てて株を守り、復(ま)た兔を得んことを冀(こひねが)ふ。
兔復た得(う)べからずして、身は宋国の笑ひと為る。
口語訳(現代語訳)
宋の国の人で、田んぼを耕している者がいました。
ある日、畑の中にあった切り株にウサギが走ってぶつかり、
首を折って死んでしまいました。
これを見たその人は持っていたすきを捨てて(農作業を辞めて)、
毎日切り株をチェックし、また切り株にウサギが飛び込み、
楽をしてウサギが手に入らないかと願っていました。
(もちろん)ウサギを得ることはできずに、
その人は宋の国の笑い者となったということです。
「待ちぼうけ」は「守株」からできた童謡
韓非(学者)
成功した昔のやり方で、今の民を治めようとする者は、
ちょうどこの農夫が切り株をじっと見守っているようなものだ。
童謡「待ちぼうけ」作詞:北原白秋 作曲:山田耕筰
待ちぼうけ、待ちぼうけ
ある日せっせと、野良稼ぎ
そこに兔がとんで出て
ころりころげた 木の根っこ
2.
待ちぼうけ、待ちぼうけ
しめた。これから寝て待とうか
待てば獲物が驅けてくる
兔ぶつかれ、木のねっこ
3.
待ちぼうけ、待ちぼうけ
昨日鍬取り、畑仕事
今日は頬づゑ、日向ぼこ
うまい切り株、木のねっこ
4.
待ちぼうけ、待ちぼうけ
今日は今日はで待ちぼうけ
明日は明日はで森のそと
兔待ち待ち、木のねっこ
5.
待ちぼうけ、待ちぼうけ
もとは涼しい黍畑
いまは荒野(あれの)の箒草(はうきぐさ)
寒い北風木のねっこ
■NHK高校講座 言語文学 柳あをめる(短歌)
学習のポイント
一 リズムを感じながら味わう
二 感情に寄り添う
三 情景を思い浮かべる
一
やはらかに柳あをめる北上の岸辺目に見ゆ泣けとごとくに
石川啄木
短歌が難しいと感じた時は… 短歌はリズムのある韻文
まずは声に出してよんでみよう!
岡に来て両腕(もろうで)に白い帆を張れば風はさかんな海賊のうた
斎藤史(五八五七七 字余り)
二
なぜ短歌を詠むのか?
我が母よ死にたまひゆく我が母よ我を生まし乳足(ちた)らひし母よ
斎藤茂吉
(私をお生みになった十分な乳を与えてくださった)
五七五五(字足らず)八(字余り)心の声がリズムとなっている
短歌は心の動きを文字とリズムに託して表現
三
昼ながら幽(かす)かに光る蛍一つ孟宗(まうそう)の藪(やぶ)を出(い)でて消えたり
北原白秋
清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき
与謝野晶子
■NHK高校講座 言語文学 雪の深さを(俳句)
短歌は奈良時代の万葉集 俳句は一般的には江戸時代、戦国時代「俳諧連歌」
学習ポイント
一 リズムを感じながら味わう
二 自然を感じる
三 音を想像する
一
五七五は日本人が慣れ親しんできたもの
金亀子(こがねむし) 擲(なげう)つ闇の深さかな 高浜虚子
俳句が難しと感じたときは…
まずは声に出してよんでみよう!
芋の露連山影を正しうす 飯田蛇笏
二
俳句にえがかれた自然の様子に注目
来(こ)しかたや馬酔木(あしび)咲く野の日のひかり 水原秋桜子
切れ字…強く言いきることで間を持たせたり余韻を生んだりする
(ここまで歩いてきた方向 そこに切れ字 作者は立ち止まって振返っている
馬酔木は春の季語 季語は読者に季節感をうまく伝えることができる
外(と)にも出よ触(ふ)るるばかりに春の月 中村汀女
三
海に出て木枯帰るところなし 山口誓子(せいし)
木枯:冬の季語 木枯を音で表すと?ビュービュー
冬の水一枝(いっし)の影も欺(あざむ)かず 中村草田男
高校講座ホームページ https://www.nhk.or.jp/kokokoza/gengobunka/
2025年1月7日火曜日
あの本、読みました?国定栄太&偉人・敗北からの教訓 武田信虎&元気の時間
レガッタを漕ぐざわめきや冬の空
冬の霧老いて居場所をなくす人
冬の潮才能持って生まれても
くだら野や猪被害拡大中
目耳駆使素早き動き冬の猿
■あの本、読みました?好評アンコール
本と受験 中学入試を見れば今がわかる
鈴木保奈美 角谷暁子 おおたとしまさ 国定栄太
中学受験で注目されるジェンダー
「きみの話を聞かせてくれよ」の一文
村上雅郁著 カシワイ絵/フレーベル館
祇園寺羽紗。新船中学校生徒会長兼剣道部副部長。
有名人だ。ボーイッシュな雰囲気と整った容姿から、
学校中の女子たちのあこがれの的となっているカリスマ。
通称「ウサギ王子」
(中略)
「六年生のころ、友だちになった女の子がいたの。
世間一般に言われている意味で、つまりはそれも偏見だけど、
女の子らしい女の子だった。フリフリしたかわいい服を着て、
絵を描くことと、お菓子作りが好きで、
その子が私にタルトタタンの味を教えてくれた」
そう言って、祇園寺先輩は、ぎゅっと眉間にしわをよせる。
「その子の家で、その子が作ってくれたタルトタタンを食べたとき。
こんなにおいしいものがあるのかって、そう思った。
だから、そう伝えた。そしたら、あの子、ほっとしたように笑って、
言ったんだ」
―私さ、羽紗ちゃんのこと、ちょっとこわいって思っていたけど、気のせいだった。
―なあんだ。やっぱり羽紗ちゃんも女の子なんだ。
「その声はひどく弾んでいて。だけど私はぶんなぐられたようなショックを受けた」
今の中学入試で求められる生徒
入試回答
友だちの女の子に作ってくれたケーキが美味しいと伝えただけで、
今の自分のありように関わらず、やはり女の子だと
当たり前のように決めつけられて待ったから ショックを受けた
重松清の作品が出題される理由
青山美智子の作品が出題される理由
おおたとしまさの鈴木保奈美におすすめの一冊
夏草冬濤(なつくさふゆなみ) 井上靖著/新潮文庫
国定栄太の鈴木保奈美におすすめの一冊
Blue 川野芽生著/集英社
■偉人・敗北からの教訓 第73回「武田信虎 息子・信玄に追放された名将」
武田信虎 敗北の伏線
組織のリーダーには実力とカリスマ性が必要
強引過ぎるワンマンには注意を
武田信虎 敗北の瞬間
本当の見方を見極める
常に自らの足元に気を配る
武田信虎の敗北から学ぶ教訓
周りの人とのコンセンサス(合意)を大切にする
■健康カプセル!ゲンキの時間
笑うことがAGEsを減少させる 2021年に世界で初めて明らかにした
笑顔の頻度 毎日笑う人のAGEsの蓄積が最も少なかった
笑うと白血球数やNK細胞活性が有意に増加し免疫機能が改善するとのデータがある
腎臓の寿命を延ばさなくてはならない 腎臓の機能が劣ってくると
心筋梗塞や脳卒中など心血管病が起こる危険性が高まる
認知症発症にも関係してくる 減塩 有酸素運動 栄養 定期検診
治療が難しい認知症
アルツハイマー型認知症 脳内にアミロイド-βなどの蛋白質が溜まり
脳の神経細胞がダメージを受け脳の中でも記憶を司る海馬などが
委縮することで発症する
その薬として2023年12月発売 レカネマブ
レカネマブ アルツハイマー型認知症の原因物質に直接働きかけ進行を抑える
2024年11月26日国内2例目の新薬「ドナネマブ」が発売された
胃がんの発生を抑える食べ物
胃がんの原因がピロリ菌だけではなかった 非ピロリ菌
胃がん ピロリ菌以外の口腔内細菌が原因になる
口腔内細菌を抑える食べ物 納豆
少なくとも一日一回は食べなくてはいけない
冬の潮才能持って生まれても
くだら野や猪被害拡大中
目耳駆使素早き動き冬の猿
■あの本、読みました?好評アンコール
本と受験 中学入試を見れば今がわかる
鈴木保奈美 角谷暁子 おおたとしまさ 国定栄太
中学受験で注目されるジェンダー
「きみの話を聞かせてくれよ」の一文
村上雅郁著 カシワイ絵/フレーベル館
祇園寺羽紗。新船中学校生徒会長兼剣道部副部長。
有名人だ。ボーイッシュな雰囲気と整った容姿から、
学校中の女子たちのあこがれの的となっているカリスマ。
通称「ウサギ王子」
(中略)
「六年生のころ、友だちになった女の子がいたの。
世間一般に言われている意味で、つまりはそれも偏見だけど、
女の子らしい女の子だった。フリフリしたかわいい服を着て、
絵を描くことと、お菓子作りが好きで、
その子が私にタルトタタンの味を教えてくれた」
そう言って、祇園寺先輩は、ぎゅっと眉間にしわをよせる。
「その子の家で、その子が作ってくれたタルトタタンを食べたとき。
こんなにおいしいものがあるのかって、そう思った。
だから、そう伝えた。そしたら、あの子、ほっとしたように笑って、
言ったんだ」
―私さ、羽紗ちゃんのこと、ちょっとこわいって思っていたけど、気のせいだった。
―なあんだ。やっぱり羽紗ちゃんも女の子なんだ。
「その声はひどく弾んでいて。だけど私はぶんなぐられたようなショックを受けた」
今の中学入試で求められる生徒
入試回答
友だちの女の子に作ってくれたケーキが美味しいと伝えただけで、
今の自分のありように関わらず、やはり女の子だと
当たり前のように決めつけられて待ったから ショックを受けた
重松清の作品が出題される理由
青山美智子の作品が出題される理由
おおたとしまさの鈴木保奈美におすすめの一冊
夏草冬濤(なつくさふゆなみ) 井上靖著/新潮文庫
国定栄太の鈴木保奈美におすすめの一冊
Blue 川野芽生著/集英社
■偉人・敗北からの教訓 第73回「武田信虎 息子・信玄に追放された名将」
武田信虎 敗北の伏線
組織のリーダーには実力とカリスマ性が必要
強引過ぎるワンマンには注意を
武田信虎 敗北の瞬間
本当の見方を見極める
常に自らの足元に気を配る
武田信虎の敗北から学ぶ教訓
周りの人とのコンセンサス(合意)を大切にする
■健康カプセル!ゲンキの時間
笑うことがAGEsを減少させる 2021年に世界で初めて明らかにした
笑顔の頻度 毎日笑う人のAGEsの蓄積が最も少なかった
笑うと白血球数やNK細胞活性が有意に増加し免疫機能が改善するとのデータがある
腎臓の寿命を延ばさなくてはならない 腎臓の機能が劣ってくると
心筋梗塞や脳卒中など心血管病が起こる危険性が高まる
認知症発症にも関係してくる 減塩 有酸素運動 栄養 定期検診
治療が難しい認知症
アルツハイマー型認知症 脳内にアミロイド-βなどの蛋白質が溜まり
脳の神経細胞がダメージを受け脳の中でも記憶を司る海馬などが
委縮することで発症する
その薬として2023年12月発売 レカネマブ
レカネマブ アルツハイマー型認知症の原因物質に直接働きかけ進行を抑える
2024年11月26日国内2例目の新薬「ドナネマブ」が発売された
胃がんの発生を抑える食べ物
胃がんの原因がピロリ菌だけではなかった 非ピロリ菌
胃がん ピロリ菌以外の口腔内細菌が原因になる
口腔内細菌を抑える食べ物 納豆
少なくとも一日一回は食べなくてはいけない
2025年1月6日月曜日
兼題「双六・絵双六」&題「カレンダー」
寒き朝萎れたキャベツぬか床へ
颯爽と歩き煙草や冬の路
目を伏せん眩しき陽射し日向ぼこ
瞬きもせず煙くゆらせ落葉焚
冬銀河最後の頼りIFA(資産アドバイザー)
■NHK俳句 兼題「双六・絵双六」
年間テーマ 「俳句の凝りをほぐします」今週のテーマ「切れ」
選者 堀田季何 レギュラー 庄司浩平 司会 柴田英嗣
切字の代表「や」の効果を徹底分析。季何流切字「や」の使い方とは❓
切字 かな けり ぞ し せ もがな か よ じ や らむ つ
今回は「や」の効果
① 韻律を引き締める
古池や蛙飛び込む水の音 松尾芭蕉
にがやに変わるだけで韻律が引き締まる効果がある
② 残像
死や霜の六尺の土あれば足る 加藤楸邨
残像+詠嘆・感動
長き夜の苦しみを解き給ひしや 稲畑汀子
「解き給ひし」が残像の効果としてこの句の全体のイメージを支配している
更に病の苦しみから解放してくださったという作者の感動が強く込められている
「や」は動詞にも付けられる
「や」はほぼなんにでも付けられる 形容詞につく時もある
・実践
像を感じさせる句を作る!
「描写つきの名詞」描写+名詞
曲がった道 壊れたテレビ 新しいタブレット
「具体的な七・五」に整える
冬晴れやモネは曲がった道が好き 堀田季何
冬晴れや給料分のタブレット 堀田季何
冬晴や穴ぼこだらけの滑り台 柴田英嗣
冬晴れや父のおさがりのネクタイ 柴田英嗣
冬晴れや踵潰れたスニーカー 庄司浩平
冬晴れや首元黄ばみし白いシャツ 庄司浩平
・今週の兼題「双六・絵双六」
盤双六 飛鳥時代から流行っていた。度々禁止令が出ていた。
絵双六 もう少し後から出たもの
正月に遊ばれることが多いので正月の季語になっている
連想ワード 家族で真剣勝負 転生 人生みたい 誰かが加わる
笑う 泣く 思い出 出生 汚れ 世界/宇宙旅行
特選六句発表!
双六や時折めくる単語帳 毬雨水佳(まりあめすいか)
双六を止めて黙祷空青し 樹海ソース
双六のたかが六つの未来かな 来地宇須(らいちうす)
双六に飽き折紙の山と谷 髙田祥聖(しょうせい)
私 双六や総て正しい道である 岡一夏
私 双六や未来が平らだつたころ 玉木たまね
・柴田の歩み 良いパターン知れた
庄司の歩み い“や~“切れ字、便利。
■NHK短歌 題「カレンダー」
年間テーマ 「“私”に出会おう~2年目の飛躍~」今回のテーマは「よく見て発見しよう」
選者 川野里子 レギュラー 内藤秀一郎 深尾あむ 司会 ヒコロヒー
・飛躍の扉 よく見て発見しよう!
傾けると水は尖ることがある 川野里子
無機物で静物でも意志ありげにゆらゆら ヒコロヒー
上から見ると丸くなっていてうしろの背景もあって小さな地球儀みたい 内藤秀一郎
50円分残ってるな 深尾あむ
飲みかけのペットボトルは置かれありとてもちいさい水面もちて
小島なお
小さな発見が大きな世界への扉を開く
学校はこんなに窓があるところ雪が降ったら「雪だね」を言ふ
目黒哲朗
当たり前のことに新鮮な気付きがある=詩歌の役割のひとつ
晝(ひる)しづかケーキの上の粉ざたう見えざるほどに吹かれつつをり
葛原妙子「朱霊」
普通にいる世界を別世界に変える力がある
・入選六首 題「カレンダー」
私 百均の猫カレンダーの十二月ふわふわ猫のいやあな目つき
平田敬子
カレンダーひとり残さずこの惑星(ほし)のすべての誕生日ひしめいて
日高ひろみ
私 カレンダー二人の文字が踊ってる誕生日かつ燃えるゴミの日
今井遼
一席 私 ばあちゃんは私はヘルパーさんと呼ぶ「にんげんだもの」とあるカレンダー
桃園ユキチ
理解者はたった一人のカレンダー固定している画鋲のように
伽戸(かど)ミナ
セザンヌの描きし山をセザンヌとなりて眺める壁のカレンダー
片井俊二
・秀一郎 あむの飛躍のカギ
カレンダー忘れもしない大事な日僕を見る目がなんだか熱い
内藤秀一郎 添削
カレンダー忘れもしない大事な○僕を見る目がなんだか熱い
めくるたび季節が移るカレンダー過去も未来もこの指の中
深尾あむ 添削
めくるたび季節が踊るカレンダー過去も未来もこの指の中
・言葉のバトン
燃える夕日に連なるカワウ
田向(たむかい)健一 獣医師
⇩
鵜のいろの空に朝日をのぼらせる
谷口菜月 フリーアナウンサー
エノコログサの種ほろほろとこぼれ落つ優しく接したつもりだったのに
颯爽と歩き煙草や冬の路
目を伏せん眩しき陽射し日向ぼこ
瞬きもせず煙くゆらせ落葉焚
冬銀河最後の頼りIFA(資産アドバイザー)
■NHK俳句 兼題「双六・絵双六」
年間テーマ 「俳句の凝りをほぐします」今週のテーマ「切れ」
選者 堀田季何 レギュラー 庄司浩平 司会 柴田英嗣
切字の代表「や」の効果を徹底分析。季何流切字「や」の使い方とは❓
切字 かな けり ぞ し せ もがな か よ じ や らむ つ
今回は「や」の効果
① 韻律を引き締める
古池や蛙飛び込む水の音 松尾芭蕉
にがやに変わるだけで韻律が引き締まる効果がある
② 残像
死や霜の六尺の土あれば足る 加藤楸邨
残像+詠嘆・感動
長き夜の苦しみを解き給ひしや 稲畑汀子
「解き給ひし」が残像の効果としてこの句の全体のイメージを支配している
更に病の苦しみから解放してくださったという作者の感動が強く込められている
「や」は動詞にも付けられる
「や」はほぼなんにでも付けられる 形容詞につく時もある
・実践
像を感じさせる句を作る!
「描写つきの名詞」描写+名詞
曲がった道 壊れたテレビ 新しいタブレット
「具体的な七・五」に整える
冬晴れやモネは曲がった道が好き 堀田季何
冬晴れや給料分のタブレット 堀田季何
冬晴や穴ぼこだらけの滑り台 柴田英嗣
冬晴れや父のおさがりのネクタイ 柴田英嗣
冬晴れや踵潰れたスニーカー 庄司浩平
冬晴れや首元黄ばみし白いシャツ 庄司浩平
・今週の兼題「双六・絵双六」
盤双六 飛鳥時代から流行っていた。度々禁止令が出ていた。
絵双六 もう少し後から出たもの
正月に遊ばれることが多いので正月の季語になっている
連想ワード 家族で真剣勝負 転生 人生みたい 誰かが加わる
笑う 泣く 思い出 出生 汚れ 世界/宇宙旅行
特選六句発表!
双六や時折めくる単語帳 毬雨水佳(まりあめすいか)
双六を止めて黙祷空青し 樹海ソース
双六のたかが六つの未来かな 来地宇須(らいちうす)
双六に飽き折紙の山と谷 髙田祥聖(しょうせい)
私 双六や総て正しい道である 岡一夏
私 双六や未来が平らだつたころ 玉木たまね
・柴田の歩み 良いパターン知れた
庄司の歩み い“や~“切れ字、便利。
■NHK短歌 題「カレンダー」
年間テーマ 「“私”に出会おう~2年目の飛躍~」今回のテーマは「よく見て発見しよう」
選者 川野里子 レギュラー 内藤秀一郎 深尾あむ 司会 ヒコロヒー
・飛躍の扉 よく見て発見しよう!
傾けると水は尖ることがある 川野里子
無機物で静物でも意志ありげにゆらゆら ヒコロヒー
上から見ると丸くなっていてうしろの背景もあって小さな地球儀みたい 内藤秀一郎
50円分残ってるな 深尾あむ
飲みかけのペットボトルは置かれありとてもちいさい水面もちて
小島なお
小さな発見が大きな世界への扉を開く
学校はこんなに窓があるところ雪が降ったら「雪だね」を言ふ
目黒哲朗
当たり前のことに新鮮な気付きがある=詩歌の役割のひとつ
晝(ひる)しづかケーキの上の粉ざたう見えざるほどに吹かれつつをり
葛原妙子「朱霊」
普通にいる世界を別世界に変える力がある
・入選六首 題「カレンダー」
私 百均の猫カレンダーの十二月ふわふわ猫のいやあな目つき
平田敬子
カレンダーひとり残さずこの惑星(ほし)のすべての誕生日ひしめいて
日高ひろみ
私 カレンダー二人の文字が踊ってる誕生日かつ燃えるゴミの日
今井遼
一席 私 ばあちゃんは私はヘルパーさんと呼ぶ「にんげんだもの」とあるカレンダー
桃園ユキチ
理解者はたった一人のカレンダー固定している画鋲のように
伽戸(かど)ミナ
セザンヌの描きし山をセザンヌとなりて眺める壁のカレンダー
片井俊二
・秀一郎 あむの飛躍のカギ
カレンダー忘れもしない大事な日僕を見る目がなんだか熱い
内藤秀一郎 添削
カレンダー忘れもしない大事な○僕を見る目がなんだか熱い
めくるたび季節が移るカレンダー過去も未来もこの指の中
深尾あむ 添削
めくるたび季節が踊るカレンダー過去も未来もこの指の中
・言葉のバトン
燃える夕日に連なるカワウ
田向(たむかい)健一 獣医師
⇩
鵜のいろの空に朝日をのぼらせる
谷口菜月 フリーアナウンサー
エノコログサの種ほろほろとこぼれ落つ優しく接したつもりだったのに
2025年1月5日日曜日
木村多江の、いまさらですが… ベートーヴェン
鳥に見立てた壷の命や冬ぬくし
おこり炭一から百を創造す
冬薔薇(そうび)墨絵のごとく楚々として
冬薔薇土手をひっそり色づけて
風と戯れ弄ばれて落葉時
■木村多江の、いまさらですが…
「人生100年時代。大人になっても学びたい!」
「第九」歓喜の歌〜ベートーヴェンとシラーが込めた思い〜
1789年、ベートーヴェンはボン大学に入学し、哲学や文学を学びます。
その年に勃発のフランス革命の理念「自由・平等・友愛」に触れ、深く共感していきました。
そして「第九」の詩の元になった作家シラーの「歓喜に寄せて」に出会います。
初演から200年ベートーヴェンの「第九」
ユネスコの「世界記憶遺産」EUの「欧州の歌」にも引用されています
「なると第九」板東俘虜収容所で日本で初めて演奏された
松江豊寿所長が情けを重んじる人だったため捕虜たちは人道的に扱われた
収容所には自由な雰囲気があり地域住民とは文化交流が行われていた
1918年に平和を願って演奏された
最近の研究でベートーヴェンは明るいひとだった
多感様式と呼ばれた感情表現を重んじる音楽を教えます
1786年Friedrich Schiller「歓喜に寄せて」が発表される
1787年16歳宮廷学士としてウイーンに派遣される
目的のひとつはモーツアルトに会うためだった
1789年ボン大学に聴講生として入学 哲学・文学・芸術史を学ぶ
フランス革命の理念 自由・平等・友愛に深く共感していく
読書協会にも参加 「歓喜に寄せて」を作りたいと友人に話している
1792年 ボン ハイドンにカンタータの譜面を見せ才能を認められる
ウイーンへ留学 マリー・アントワネットの弟がべートーヴェンの支援をしていた
新時代の音楽家 シラーの詩と出会う
「歓喜に寄せて」はみんなで楽しむために書かれた
「第九」が作られるまでに40曲以上が作られていた
初版は王制批判があった フランス革命の暴走に加担することを危惧した
「歓喜に寄せて」初版 短縮版 訳:矢羽ゝ崇
喜びよ 美しい神々の火花よ 楽園のエリュジウムの娘よ
私たちは炎に酔って 天なるものよ そなたの聖所に入る
そなたの力は再び結び合わせる 世の習いという剣が分け隔てたものを
物乞いも王侯の同胞となる そなたのその柔らかな翼が憩うところ
抱き合え 幾百万の人々よ この口づけを世界中の人へ
同胞たちよ 星の天幕のかなたには 一人の愛しい父が住んでいるにちがいない
暴君のくびきから救いを 悪漢であっても寛大さを
死の床にあっても希望を 審判の時に恩寵を
死者もまた生きよ 同胞たちよ 飲もう そして声を合わそう
全ての罪人は許されてあれ 地獄がなくなるように
(青文字は初版のみの表現)
1794年マリー・アントワネットが暗殺されフランス革命が激化
1795年ピアノ三重奏曲を作曲 Op.1として出版
楽譜の出版 演奏会 ピアノ教師 が主な収入源となって行く
1802年月光ソナタを出版 教えていたGiuliettaに捧げられたものでした
この頃より難聴に悩み始めていた
1803年交響曲第3番 英雄を作曲
元々この曲はナポレオンを讃えた曲でしたが
翌年ナポレオンが皇帝と名乗ったことに幻滅し
ボナパルトと書かれた楽譜を一部破り捨てた
1808年交響曲第5番運命と交響曲6番田園を自らの指揮で初演
難聴の為、指揮も十分に振れず疑心暗鬼に陥る
1809年ウイーンはナポレオンに占領され財政破綻状態となる
弟の下で宮廷学士になるためウイーンを離れようとするが
音楽愛好貴族が年金を支払うことでそれを阻止された
傑作の森
小山実稚恵さん曰く
ベートーヴェンは革新的な未来に向かって歩く作曲家
ハイドンヤモーッツァルトから学んだことを自己流に変化させた
多感様式 「人間」というものを打ち出した作曲家
「第九」は交響曲に初めて歌を差し込んだ作品
既成概念に拘らない大きな想像力の持ち主
1812年ロシア遠征で大敗を記したナポレオン
1813年戦争交響曲 ウェリントンの勝利
難聴の進行 リウマチに苦しみ 弟カールの死去 甥の親権を実母と争う
経済的にも借金 追い込まれていった
1822年 交響曲の作曲依頼
1824年交響曲第9番が完成 5月7日ついに第九を指揮 初演似て大喝采
1827年初演から3年後 享年56でベートーヴェンは生涯を閉じる
死の直前、ベートーヴェンが口にした言葉
Plaudite amici commedia finite est!
喝采せよ、友よ、喜劇は終わった!
ベートーヴェンはシラーの詩を減らし 自分の詩を足した
物乞いも王侯も同胞となる ではなく 全ての人間は同胞となる
を選択した 誰にでもどの時代にも伝わる構成にした
シラーが求めていたことは政治体制の変革ではなく
人間個々の内面が美的に変化してゆくこと
「第九」はオーケストラの技術不足もありすぐには広がらなかった
「第九」はベートーヴェンに影響を受けた者たちが広めた
メンデルスゾーン、リスト、マーラーなどが広めた
ベートーヴェンは音楽家だけではなく美術家にも影響を与えた
グスタフ・クリムトは「ベートーヴェン・フリーズ」を描いた
1901年ウイーンで描かれた。タテ2m×ヨコ34m 壁画
左の壁には幸福への憧れ 中央には敵対する力 右の壁には芸術 歓喜 接吻
全ての人間は同胞となる 歓喜の大合唱が描かれている
ワーグナーの総合芸術の理念に基づいているとも言われている
熱狂的なベートーヴェンファンと言えばワーグナー!
ワーグナーが「第九」を演奏した時は300人もの大合唱団を編成して
歓喜の歌を演奏し観客を興奮のるつぼにへと引き込んだ
ワーグナーはこの時自分で解説書を書いて
印刷して配るほど「第九」に入れ込んでいた
1870年普仏戦争 プロイセンを中心とするドイツ諸邦とフランスとの間に
起こった戦争 この戦争の勝利によりドイツ統一が達成された
ベートーヴェン生誕100年が祝われていた
この時ワーグナーは プロイセンの勝利は「ドイツ精神」の勝利
=ベートーヴェンの勝利だ
ドイツは偉大なるベートーヴェン 偉大なるワーグナーを生んだ国
だからドイツは偉大なのだと国民のナショナリズムを書き立て
「第九」もプロパガンダに利用された ヒトラーの「第九」は有名
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886~1954)
ベルリンフィルハーモニー管弦楽団の指揮者を長期にわたって務めた
ベートーヴェン ワーグナー ブラームスなどのドイツの作曲家を得意とした
ユダヤ人音楽家を擁護
1942年 国民を鼓舞するためにフルトヴェングラーを囲い込み
ヒトラーの誕生祝賀演奏会にで「第九」を演奏させた
ナチスのニュース映像に使われてしまった
1989年12月今度は喜びを分かち合うために「第九」が演奏された
それは、ベルリンの壁崩壊を祝した演奏だった
11月に壁が崩壊し その年のクリスマスに壁のなくなったベルリンで演奏された
指揮はユダヤ系アメリカ人でウエストサイドストーリーの作曲家としても知られる
レナード・バーンスタイン(1918~1990
交響曲第3番カディッシュ平和運動にも熱心だった)
歓喜の歌詞のFreude(喜び)をFreiheit(自由)に変更し演奏した
オーケストラは東ドイツ 西ドイツ フランス アメリカ イギリス ソ連
の音楽家で構成されていた
「第九」は人類すべてのもの 音楽は国境を超えるを体現している
喜びよ 美し神々の火花よ 楽園エリュジウムの娘よ
私たちは炎に酔って 天井なるものよ そなたの聖所に入る
そなたの力は再び結び合わせる 世の習いが厳しく隔てたものを
全ての人間が同胞となる そなたの柔らかな翼の憩うところ
そなたの力は再び結ぶ合わせる 世の習いが厳しく隔てたものを
全ての人間が同胞となる そなたの柔らかな翼の憩うところ
おこり炭一から百を創造す
冬薔薇(そうび)墨絵のごとく楚々として
冬薔薇土手をひっそり色づけて
風と戯れ弄ばれて落葉時
■木村多江の、いまさらですが…
「人生100年時代。大人になっても学びたい!」
「第九」歓喜の歌〜ベートーヴェンとシラーが込めた思い〜
1789年、ベートーヴェンはボン大学に入学し、哲学や文学を学びます。
その年に勃発のフランス革命の理念「自由・平等・友愛」に触れ、深く共感していきました。
そして「第九」の詩の元になった作家シラーの「歓喜に寄せて」に出会います。
初演から200年ベートーヴェンの「第九」
ユネスコの「世界記憶遺産」EUの「欧州の歌」にも引用されています
「なると第九」板東俘虜収容所で日本で初めて演奏された
松江豊寿所長が情けを重んじる人だったため捕虜たちは人道的に扱われた
収容所には自由な雰囲気があり地域住民とは文化交流が行われていた
1918年に平和を願って演奏された
最近の研究でベートーヴェンは明るいひとだった
多感様式と呼ばれた感情表現を重んじる音楽を教えます
1786年Friedrich Schiller「歓喜に寄せて」が発表される
1787年16歳宮廷学士としてウイーンに派遣される
目的のひとつはモーツアルトに会うためだった
1789年ボン大学に聴講生として入学 哲学・文学・芸術史を学ぶ
フランス革命の理念 自由・平等・友愛に深く共感していく
読書協会にも参加 「歓喜に寄せて」を作りたいと友人に話している
1792年 ボン ハイドンにカンタータの譜面を見せ才能を認められる
ウイーンへ留学 マリー・アントワネットの弟がべートーヴェンの支援をしていた
新時代の音楽家 シラーの詩と出会う
「歓喜に寄せて」はみんなで楽しむために書かれた
「第九」が作られるまでに40曲以上が作られていた
初版は王制批判があった フランス革命の暴走に加担することを危惧した
「歓喜に寄せて」初版 短縮版 訳:矢羽ゝ崇
喜びよ 美しい神々の火花よ 楽園のエリュジウムの娘よ
私たちは炎に酔って 天なるものよ そなたの聖所に入る
そなたの力は再び結び合わせる 世の習いという剣が分け隔てたものを
物乞いも王侯の同胞となる そなたのその柔らかな翼が憩うところ
抱き合え 幾百万の人々よ この口づけを世界中の人へ
同胞たちよ 星の天幕のかなたには 一人の愛しい父が住んでいるにちがいない
暴君のくびきから救いを 悪漢であっても寛大さを
死の床にあっても希望を 審判の時に恩寵を
死者もまた生きよ 同胞たちよ 飲もう そして声を合わそう
全ての罪人は許されてあれ 地獄がなくなるように
(青文字は初版のみの表現)
1794年マリー・アントワネットが暗殺されフランス革命が激化
1795年ピアノ三重奏曲を作曲 Op.1として出版
楽譜の出版 演奏会 ピアノ教師 が主な収入源となって行く
1802年月光ソナタを出版 教えていたGiuliettaに捧げられたものでした
この頃より難聴に悩み始めていた
1803年交響曲第3番 英雄を作曲
元々この曲はナポレオンを讃えた曲でしたが
翌年ナポレオンが皇帝と名乗ったことに幻滅し
ボナパルトと書かれた楽譜を一部破り捨てた
1808年交響曲第5番運命と交響曲6番田園を自らの指揮で初演
難聴の為、指揮も十分に振れず疑心暗鬼に陥る
1809年ウイーンはナポレオンに占領され財政破綻状態となる
弟の下で宮廷学士になるためウイーンを離れようとするが
音楽愛好貴族が年金を支払うことでそれを阻止された
傑作の森
小山実稚恵さん曰く
ベートーヴェンは革新的な未来に向かって歩く作曲家
ハイドンヤモーッツァルトから学んだことを自己流に変化させた
多感様式 「人間」というものを打ち出した作曲家
「第九」は交響曲に初めて歌を差し込んだ作品
既成概念に拘らない大きな想像力の持ち主
1812年ロシア遠征で大敗を記したナポレオン
1813年戦争交響曲 ウェリントンの勝利
難聴の進行 リウマチに苦しみ 弟カールの死去 甥の親権を実母と争う
経済的にも借金 追い込まれていった
1822年 交響曲の作曲依頼
1824年交響曲第9番が完成 5月7日ついに第九を指揮 初演似て大喝采
1827年初演から3年後 享年56でベートーヴェンは生涯を閉じる
死の直前、ベートーヴェンが口にした言葉
Plaudite amici commedia finite est!
喝采せよ、友よ、喜劇は終わった!
ベートーヴェンはシラーの詩を減らし 自分の詩を足した
物乞いも王侯も同胞となる ではなく 全ての人間は同胞となる
を選択した 誰にでもどの時代にも伝わる構成にした
シラーが求めていたことは政治体制の変革ではなく
人間個々の内面が美的に変化してゆくこと
「第九」はオーケストラの技術不足もありすぐには広がらなかった
「第九」はベートーヴェンに影響を受けた者たちが広めた
メンデルスゾーン、リスト、マーラーなどが広めた
ベートーヴェンは音楽家だけではなく美術家にも影響を与えた
グスタフ・クリムトは「ベートーヴェン・フリーズ」を描いた
1901年ウイーンで描かれた。タテ2m×ヨコ34m 壁画
左の壁には幸福への憧れ 中央には敵対する力 右の壁には芸術 歓喜 接吻
全ての人間は同胞となる 歓喜の大合唱が描かれている
ワーグナーの総合芸術の理念に基づいているとも言われている
熱狂的なベートーヴェンファンと言えばワーグナー!
ワーグナーが「第九」を演奏した時は300人もの大合唱団を編成して
歓喜の歌を演奏し観客を興奮のるつぼにへと引き込んだ
ワーグナーはこの時自分で解説書を書いて
印刷して配るほど「第九」に入れ込んでいた
1870年普仏戦争 プロイセンを中心とするドイツ諸邦とフランスとの間に
起こった戦争 この戦争の勝利によりドイツ統一が達成された
ベートーヴェン生誕100年が祝われていた
この時ワーグナーは プロイセンの勝利は「ドイツ精神」の勝利
=ベートーヴェンの勝利だ
ドイツは偉大なるベートーヴェン 偉大なるワーグナーを生んだ国
だからドイツは偉大なのだと国民のナショナリズムを書き立て
「第九」もプロパガンダに利用された ヒトラーの「第九」は有名
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886~1954)
ベルリンフィルハーモニー管弦楽団の指揮者を長期にわたって務めた
ベートーヴェン ワーグナー ブラームスなどのドイツの作曲家を得意とした
ユダヤ人音楽家を擁護
1942年 国民を鼓舞するためにフルトヴェングラーを囲い込み
ヒトラーの誕生祝賀演奏会にで「第九」を演奏させた
ナチスのニュース映像に使われてしまった
1989年12月今度は喜びを分かち合うために「第九」が演奏された
それは、ベルリンの壁崩壊を祝した演奏だった
11月に壁が崩壊し その年のクリスマスに壁のなくなったベルリンで演奏された
指揮はユダヤ系アメリカ人でウエストサイドストーリーの作曲家としても知られる
レナード・バーンスタイン(1918~1990
交響曲第3番カディッシュ平和運動にも熱心だった)
歓喜の歌詞のFreude(喜び)をFreiheit(自由)に変更し演奏した
オーケストラは東ドイツ 西ドイツ フランス アメリカ イギリス ソ連
の音楽家で構成されていた
「第九」は人類すべてのもの 音楽は国境を超えるを体現している
喜びよ 美し神々の火花よ 楽園エリュジウムの娘よ
私たちは炎に酔って 天井なるものよ そなたの聖所に入る
そなたの力は再び結び合わせる 世の習いが厳しく隔てたものを
全ての人間が同胞となる そなたの柔らかな翼の憩うところ
そなたの力は再び結ぶ合わせる 世の習いが厳しく隔てたものを
全ての人間が同胞となる そなたの柔らかな翼の憩うところ
2025年1月4日土曜日
知恵泉 高峰譲吉
ローランサンのピンクとグレー冬の夜
しなやかな手に抱かれたかじけ猫
湯ざめした夢二好みの痩せた女
冬の暮見立て例への文化あり
色つけてあたたかくせり雪の原
■先人たちの底力 知恵泉 高峰譲吉~明治のベンチャー起業家~
ゲスト 堀江愛利 篠原かをり(人の目に見えぬ蛍もそこにいる) 上山明博
発明家 高峰譲吉(1854~1922)
胃腸薬 タカジアスターゼ
止血剤 アドレナリン
巨万の富を得る エリート役人から肥料会社の開発部長からウイスキー製造の研究者
からの工場火災 シリアル・アントレプレナー 連続起業家
高峰譲吉の最大の特徴は明治時代に
発明の特許性の重要性を誰よりも早く知っていた
特許庁 日本の十大発明家である GAFAに匹敵する存在
舎密(せいみ)
イギリス留学 アメリカへの長期出張 発明家人生の始まり
知恵その一 人のやっていないことをやり続けろ!
1884年ニューオーリンズ万国工業博覧会 日本館担当
リン鉱石から化学肥料が閃いた 肥料産業
10トンものリン鉱石を自費で買う 渋沢栄一にそのことを話した
科学の力で人造肥料の会社を作る まさにベンチャービジネスだった
明治21年農総務省を退官
東京人造肥料会社釜谷堀工場で日本の農業の発展を目指した
その2年後 麹を元にしたウイスキーを米で作りたいと渋沢に言い出す
私は人のやっていないことをやりたいのが性分
「口演 高峰譲吉博士発明苦心談」より
ピオリアのウイスキー工場
日本酒 米 麹で糖化 グルコース(ぶどう糖) 日本酒
ウイスキー トウモロコシ・大麦 麦芽で糖化 グルコース(ぶどう糖) ウイスキー
自分ではやり遂げないといけないものがある
文明開化をするためにはまず国民の食を確保しなければいけない
国民の健康を守らないといけないので肥料、食品の増産をしようと思った
これは自分のオリジナリティーではないから物足りなかった
以降、発明起業家を目指した
シリコンバレーではできるかできないかっていう問いかけより
やりたいかっていう自分の意志をすごく大切にする
いかにスピードを持ってやるかっていうことを常に追求している
自分ではないとダメあるいは自分はそこにチャレンジするんだ
私が世界を変えて行く
I’m going to change the world.
知恵その二 発想の置き換え 桶が駄目なら胃袋へ!
ウイスキーから胃薬へ
強力消化酵素 タカジアスターゼ
パーク・デイビス社との契約書
夏目漱石「吾輩は猫である」にも登場
次に挑んだのは止血剤 アドレナリン 上中啓三を助手に迎える
二つ目の発明となった
生涯をアメリカで過ごすこととなる
巨万の富を使い日米の懸け橋となる
北里柴三郎をパーク・デービス社の研究顧問として紹介した
首都ワシントンにあるポトマック川の川べりに植える桜の寄贈にも協力
これは高峰譲吉最後の仕事でした。
競合するけれど協力
Competition but Collaboration
アイデアにほれ込むな
目的 Purpose
何かを成し遂げるためにひたすら走ろうひたすら続けようというふうに
思ってたんじゃないかなというのは凄いと思います
何もないところ道のないところに道をつくる
あるいは道じゃなくて宇宙かもしれないしっていう
あらゆる方法で可能性を見出すっていうことだと思うんですよね
信じて諦めない追求し続けるというところが やはり
コア(核)なんじゃないかなというふうに思いますね
ダンゴ虫には交替制転向反応がある 進み続けることが大切
しなやかな手に抱かれたかじけ猫
湯ざめした夢二好みの痩せた女
冬の暮見立て例への文化あり
色つけてあたたかくせり雪の原
■先人たちの底力 知恵泉 高峰譲吉~明治のベンチャー起業家~
ゲスト 堀江愛利 篠原かをり(人の目に見えぬ蛍もそこにいる) 上山明博
発明家 高峰譲吉(1854~1922)
胃腸薬 タカジアスターゼ
止血剤 アドレナリン
巨万の富を得る エリート役人から肥料会社の開発部長からウイスキー製造の研究者
からの工場火災 シリアル・アントレプレナー 連続起業家
高峰譲吉の最大の特徴は明治時代に
発明の特許性の重要性を誰よりも早く知っていた
特許庁 日本の十大発明家である GAFAに匹敵する存在
舎密(せいみ)
イギリス留学 アメリカへの長期出張 発明家人生の始まり
知恵その一 人のやっていないことをやり続けろ!
1884年ニューオーリンズ万国工業博覧会 日本館担当
リン鉱石から化学肥料が閃いた 肥料産業
10トンものリン鉱石を自費で買う 渋沢栄一にそのことを話した
科学の力で人造肥料の会社を作る まさにベンチャービジネスだった
明治21年農総務省を退官
東京人造肥料会社釜谷堀工場で日本の農業の発展を目指した
その2年後 麹を元にしたウイスキーを米で作りたいと渋沢に言い出す
私は人のやっていないことをやりたいのが性分
「口演 高峰譲吉博士発明苦心談」より
ピオリアのウイスキー工場
日本酒 米 麹で糖化 グルコース(ぶどう糖) 日本酒
ウイスキー トウモロコシ・大麦 麦芽で糖化 グルコース(ぶどう糖) ウイスキー
自分ではやり遂げないといけないものがある
文明開化をするためにはまず国民の食を確保しなければいけない
国民の健康を守らないといけないので肥料、食品の増産をしようと思った
これは自分のオリジナリティーではないから物足りなかった
以降、発明起業家を目指した
シリコンバレーではできるかできないかっていう問いかけより
やりたいかっていう自分の意志をすごく大切にする
いかにスピードを持ってやるかっていうことを常に追求している
自分ではないとダメあるいは自分はそこにチャレンジするんだ
私が世界を変えて行く
I’m going to change the world.
知恵その二 発想の置き換え 桶が駄目なら胃袋へ!
ウイスキーから胃薬へ
強力消化酵素 タカジアスターゼ
パーク・デイビス社との契約書
夏目漱石「吾輩は猫である」にも登場
次に挑んだのは止血剤 アドレナリン 上中啓三を助手に迎える
二つ目の発明となった
生涯をアメリカで過ごすこととなる
巨万の富を使い日米の懸け橋となる
北里柴三郎をパーク・デービス社の研究顧問として紹介した
首都ワシントンにあるポトマック川の川べりに植える桜の寄贈にも協力
これは高峰譲吉最後の仕事でした。
競合するけれど協力
Competition but Collaboration
アイデアにほれ込むな
目的 Purpose
何かを成し遂げるためにひたすら走ろうひたすら続けようというふうに
思ってたんじゃないかなというのは凄いと思います
何もないところ道のないところに道をつくる
あるいは道じゃなくて宇宙かもしれないしっていう
あらゆる方法で可能性を見出すっていうことだと思うんですよね
信じて諦めない追求し続けるというところが やはり
コア(核)なんじゃないかなというふうに思いますね
ダンゴ虫には交替制転向反応がある 進み続けることが大切
2025年1月3日金曜日
万葉集&日記&「猪」&「一陽来復」
凍てついた山肌さらし山眠る
極寒の山々目がけ冬の風
冬色の絵本の世界無表情
(カナレット)ヴェネツィアの冬の運河やゴンドラと
冬の運河を揺蕩(たゆた)う雲に誘(いざな)われ
■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「一陽来復」
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが
もう一つの言い方をすると「あぁ分かるわ」となる人多いと思います
この「一陽来復」とは「冬至」のことなんです
二十四節気の一つが「冬至」なわけですけれども
だいたい立冬から45日後
現在の陽暦でいうところの12月22日頃にあたります
一年で最も日の短い日なわけです
この「一陽来復」一番その日が遠ざかっていたところから
また近づいてくるということから
この言葉になっているそうでございます
実際の気温としてはこの頃から一段とさらに寒さが
厳しくなってくる頃でもあります
皆さん体調にはお気をつけてお過ごしください
■10min.ボックス古文・漢文 万葉集
春過ぎて夏来るらし白たへの衣干したり天の香久山
持統天皇
銀も金も玉もなにせむに優れる宝子に及かめやも
山上憶良
国づくりと歌 宮廷歌人
東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ
柿本人麻呂
塾田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな
額田王
万葉仮名
庶民の歌 東歌
多摩川にさらす手作りさらさらになにそこの児のここだかなしき
東歌
信濃道は今の墾り道刈りばねに足踏ましむな沓履け我が背
東歌
父母が頭かき撫で幸くあれて言ひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつる
防人の歌
韓衣(からころも)裾に取り付き泣く子らを置きてそ来ぬや母なしにして
防人の歌
■10min.ボックス現代文 日記
岸田劉生の日記(一八九一~一九二九)
自分の虚栄心は他人に対して、自分は偉い人間だぞと云ひたがつている、
それから、自分は世間的に名のひろまつた、
つまり有名な人間だぞと曰(い)ひたがつている。
自分は、自信を失ふ事が多いのである。自分はよく、
こんな事では駄目だ、すつかり、改めて、一切はぢめからやりなほして、
まつ向からわきめもふらずに突き進まなきや駄目だぞと思ふ。
醒めよ、吾が冷き理性、醒めよ、吾が、強き意力、
常に爾(なんじ)を欺きて、眠らせんとする、卑屈なる吾を鞭打て、
吾は弱し、されど、吾は、吾自から進まざる可らず醒めよ!常に醒めよ!
石川啄木の日記(一八八六~一九一二)
はたらけどはたらけど猶(なお)我が生活(くらし)楽にならざりぢつと手を見る
「一握りの砂」より
二十六日夜
せつ子よ、予は御身を思ひ、過ぎ来し方を思ふて、今夜只一人、
閴(げき)たる雪の夜の燈火の下、目が痛む程泣いた。
せつ子よ、実に御身が恋しい。
せつ子よ、御身から生まれる我が子は果たして男であらうか。
男なら「行雄」と名付けよう。若し女だつたら、嘗(かつ)て
御身の云ひ出した「京子」といふのが、当然その子の名となるのだのに。
三十日 朝電報来る イマブジオモナヲウム(廿九日午后三時四十分発)
予はこの電報を握って臥床(がしょう)の中より踊り起きぬ。
あゝ盛岡なるせつ子、こひしきせつ子が、無事女の児―可愛き京子を
生み落としたるなり。予が「若きお父さん」となりたるなり。
天地に充つるは愛なり。
予は此日の心地を、いかなる語を以ても表はす事能(あた)はず。
樋口一葉の日記(一八七二~一八九六)
「たけくらべ」22歳の時発表
二子(にし)来訪。
「今宵は君がもてなしをうけばやとてまうで來つる也。」
たゞ女子なりといふを喜びて、もの珍しさに集ふ成りけり。
たゞうまし、上手なりといふ計(ばかり)。その外にはいふ詞(ことば)なきか、
いふべき疵(きず)を見出さぬか。いとあやしき事ども也。
■漢字ふむふむ 干支の謎 なぜ豚が消えて猪に!?
中国では「猪」と書いて「ぶた」と読みます。
干支は4千年前
殷王朝(紀元前17世紀頃~紀元前11世紀頃)の時代に作られた
1年間を12カ月で区切るため
飛鳥時代日本へ伝わった 日本書紀 巻19 に記されている
豚と猪は生物学的にはあまり変わらない
猪を家畜化したものが豚なんです
日本は家畜化に成功しなかったんで(猪をブタと読まずに)イノシシと読んだ
世界の干支 ベトナムでは水牛 タイではりゅう やぎ カザフスタンでは ヒョウ
イランでは辰が?
極寒の山々目がけ冬の風
冬色の絵本の世界無表情
(カナレット)ヴェネツィアの冬の運河やゴンドラと
冬の運河を揺蕩(たゆた)う雲に誘(いざな)われ
■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「一陽来復」
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが
もう一つの言い方をすると「あぁ分かるわ」となる人多いと思います
この「一陽来復」とは「冬至」のことなんです
二十四節気の一つが「冬至」なわけですけれども
だいたい立冬から45日後
現在の陽暦でいうところの12月22日頃にあたります
一年で最も日の短い日なわけです
この「一陽来復」一番その日が遠ざかっていたところから
また近づいてくるということから
この言葉になっているそうでございます
実際の気温としてはこの頃から一段とさらに寒さが
厳しくなってくる頃でもあります
皆さん体調にはお気をつけてお過ごしください
■10min.ボックス古文・漢文 万葉集
春過ぎて夏来るらし白たへの衣干したり天の香久山
持統天皇
銀も金も玉もなにせむに優れる宝子に及かめやも
山上憶良
国づくりと歌 宮廷歌人
東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ
柿本人麻呂
塾田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな
額田王
万葉仮名
庶民の歌 東歌
多摩川にさらす手作りさらさらになにそこの児のここだかなしき
東歌
信濃道は今の墾り道刈りばねに足踏ましむな沓履け我が背
東歌
父母が頭かき撫で幸くあれて言ひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつる
防人の歌
韓衣(からころも)裾に取り付き泣く子らを置きてそ来ぬや母なしにして
防人の歌
■10min.ボックス現代文 日記
岸田劉生の日記(一八九一~一九二九)
自分の虚栄心は他人に対して、自分は偉い人間だぞと云ひたがつている、
それから、自分は世間的に名のひろまつた、
つまり有名な人間だぞと曰(い)ひたがつている。
自分は、自信を失ふ事が多いのである。自分はよく、
こんな事では駄目だ、すつかり、改めて、一切はぢめからやりなほして、
まつ向からわきめもふらずに突き進まなきや駄目だぞと思ふ。
醒めよ、吾が冷き理性、醒めよ、吾が、強き意力、
常に爾(なんじ)を欺きて、眠らせんとする、卑屈なる吾を鞭打て、
吾は弱し、されど、吾は、吾自から進まざる可らず醒めよ!常に醒めよ!
石川啄木の日記(一八八六~一九一二)
はたらけどはたらけど猶(なお)我が生活(くらし)楽にならざりぢつと手を見る
「一握りの砂」より
二十六日夜
せつ子よ、予は御身を思ひ、過ぎ来し方を思ふて、今夜只一人、
閴(げき)たる雪の夜の燈火の下、目が痛む程泣いた。
せつ子よ、実に御身が恋しい。
せつ子よ、御身から生まれる我が子は果たして男であらうか。
男なら「行雄」と名付けよう。若し女だつたら、嘗(かつ)て
御身の云ひ出した「京子」といふのが、当然その子の名となるのだのに。
三十日 朝電報来る イマブジオモナヲウム(廿九日午后三時四十分発)
予はこの電報を握って臥床(がしょう)の中より踊り起きぬ。
あゝ盛岡なるせつ子、こひしきせつ子が、無事女の児―可愛き京子を
生み落としたるなり。予が「若きお父さん」となりたるなり。
天地に充つるは愛なり。
予は此日の心地を、いかなる語を以ても表はす事能(あた)はず。
樋口一葉の日記(一八七二~一八九六)
「たけくらべ」22歳の時発表
二子(にし)来訪。
「今宵は君がもてなしをうけばやとてまうで來つる也。」
たゞ女子なりといふを喜びて、もの珍しさに集ふ成りけり。
たゞうまし、上手なりといふ計(ばかり)。その外にはいふ詞(ことば)なきか、
いふべき疵(きず)を見出さぬか。いとあやしき事ども也。
■漢字ふむふむ 干支の謎 なぜ豚が消えて猪に!?
中国では「猪」と書いて「ぶた」と読みます。
干支は4千年前
殷王朝(紀元前17世紀頃~紀元前11世紀頃)の時代に作られた
1年間を12カ月で区切るため
飛鳥時代日本へ伝わった 日本書紀 巻19 に記されている
豚と猪は生物学的にはあまり変わらない
猪を家畜化したものが豚なんです
日本は家畜化に成功しなかったんで(猪をブタと読まずに)イノシシと読んだ
世界の干支 ベトナムでは水牛 タイではりゅう やぎ カザフスタンでは ヒョウ
イランでは辰が?
2025年1月2日木曜日
100分de名著 有吉佐和子スペシャル(4)
広葉樹針葉樹あり山眠る
凛とした竹林闊歩冬の風
朝倉(文夫氏)は大の猫好き冬陽射し
冬の夜自由気ままな猫が好き
落葉樹照らす灯りや冬の風
■100分de名著 有吉佐和子スペシャル(4) 人生の皮肉を斜めから見つめる
ソコロワ山下聖美 原田ひ香 伊集院光 阿部みちこ
「青い壷」昭和51年から雑誌に連載された連作短編集
壷が映し出す13の人間模様 壷が巡り物語が結びつく
幸福が描かれている心に響く物語
第1話 牧田省造(40代半ば) 父の跡を継いだ陶芸家
京都の自宅で地道に創作活動(デパートから受注)
焼き物に「古色」をつける仕事も請け負う
(新しい器にヴィンテージ加工を施し年代物のような外見にする
ちょっとグレーかもしれない仕事)
久々に丹精を込めて制作した壷の1つが見事な出来栄えだった
そこから物語が動き出す
そっと襖をあけて、治子が背後から入ってきた。
「お父ちゃん、その壷やったら、花挿さんかて良えんと違(ちゃ)う
落ち着いているし、気品があるやないの」「お前も生意気言うやないか」
「せやし、良えもんは誰が見たかて良えんやと思うし、うちは」
子供用の駄菓子を盆にのせて、明るい日射しを浴びた縁側で、
夫婦は緑茶を啜(すす)った。
「ええ茶ァやな」「その筈やし、玉露やもん」
「おいおい、玉露をふだんに使うてるんか」
「吝(けち)なこと言いな、お父ちゃん。あんな上等の壷が上がったときぐらい、
贅沢なお茶飲みましょうな」「そらそうやな」
道具屋 安原 省造
「これであんた焼酎につけて 床下へ入れとけば、
半年で江戸初期というて通りまんねんで」
「どこから見ても唐物やなあ。日本人のものには見えんがな」
「この壷な、牧田さん、古色つけといてんか」
安原の持ってきた茶碗を誰が作ったとも思い悩まず、
フッ化水素酸で洗っていた罰かと思う。
どの茶碗でも、一つ一つ手造りで高台(こうだい)がこしらえてあった。
どの茶碗にも作者がいたのだ。
「デパートは古色つけなせんで、お父ちゃん。
東京の美術コーナーやって、お父ちゃん。
デパートのケースに入ったとこ見物に行きたいわ。
今日はきっと良えことあると思うてたんよ、うち」
治子の声は弾みながら向うへ行ってしまった。
壷の旅立ちと「普通の幸せ」
省造の妻・治子の機転によって古色付けを免れて長い旅へと出立(いでたち)
累計部数50万部以上
原田さんの推薦文が載った帯がついた2022年以降に18万部以上が売れた
2024年11月時点
原田ひ香「財布は踊る」1つの財布が様々な人間の手に渡る物語
「青い壷」の時代と戦争
私たちが生まれた時 大人は20~30年前に戦争を体験
その時代の大人たちが何を考えていたか見えるのがこの作品
話数 主要人物
① 牧田修三 葵壷をつくった陶芸家
② 山田千枝 定年退職したサラリーマン寅蔵の妻
③ 原芳江 お見合いの仲人をする副社長の妻
④ 芳江と雅子 遺産相続について話し合う母と娘
⑤ 千代子とキヨ 東京で働くキャリアウーマンと目に障害のある母
⑥ 梶谷洋子 夫と小さなバーを営む初老の「ママ」
⑦ 石田春恵 戦時中の思い出を語る外交官の妻だった老女
⑧ 石田厚子 夫とレストランでディナーを楽しむ女性
⑨ 弓香 女学校の同窓会に参加する70代女性
⑩ 悠子 ミッションスクールで給食栄養士として働く20代女性
⑪ 悠子とシスター・マグダレナ 悠子を小学校のころから知るスペイン人修道女
⑫ 森シメ 還暦を過ぎた病院の掃除婦
⑬ ?
良い大喜利の題
⑤千代子は東京に住むキャリアウーマン
久しぶりに実家に戻ると母のキヨが緑内障のために目が見えなくなっていた
「じゃあ私が面倒を見る」という
「いい匂いだねぇ。その匂いを嗅ぐと、東京の朝だという気がするよ。」
千代子は土曜日の稽古事はやめて、会社が退(ひ)けると買物をしてさっさと家に帰る。
前には面倒くさくてならなかった食事の支度も、この頃は苦にならず、
野菜の煮つけなどは張切って味をつけ、
キヨがおいしいと褒めてくれるのを待ってみたりする。
耳にはラジオの音楽とニュース、舌には季節の味をと千代子は
キヨを慰めながら、ある日、ふと気がついて花を買って活けたら、
キヨは大層喜んで花の名まで言い当てた。
医者は千代子の顔を見て、明るく言った。
「左は緑内障ですが、右は白内障です。
他に御持病がないようですから手術しましょう」
「千代子、あれは花活けだね。テレビの横に、いつも置いてあった。
匂いのする花を活けてくれたのは分っていたけど、あれは、
まるで青空のような色に見えるけどねえ」
「青磁の壷なんですよ」「綺麗な色だねえ。
そう、青磁だったの。つるつるしているのは分っていたんだけど」
女ふたり暮らしの幸せ
65歳以上の東京居住者は保険で手術費も入院費も
タダになると伝えられたキヨが怒り出す
千代子は例の青い壷を(医者に)届けることを提案
女の人が一人で家を買う時代
時代が進んできたことへの率直な賛歌
⑨弓香(70代) 裕福な「大奥さま」(長男は会社社長)
半世紀前に女学校を卒業
同窓会は三泊四日の京都旅行
その旅のために、弓香は半年も前から準備していた。
三泊四日の旅に、どうしてティッシュペーパーが一箱も必要なのか。
老眼鏡の予備を二つも入れるのか。
総入れ歯なのに草加煎餅を一鑵(かん)持っていくのは何故か。
嫁の明子には分からないことだらけだが、こういう場合は
一切口を挟まない方が得策だと心得て見ないふりをしている。
小遣いは現金30万円
膳の上の料理は、およそ御馳走と呼べるようなものはでなかった。
茄子を煮たのが半切れ、その横に赤ン坊の拳より小さいがんもどきが一つ。
これが楽しみにしていた京料理だなんて。
三十万円も持ってきているのに
「奥さん。さすがに目ェが高いなあ。上等でっせ、これは。唐物ですさかいな」
「お高いでしょ」
「三千円で、どないです」
古新聞でくるまれた壷の箱を抱いて歩きながら、弓香はしばらく黙って歩いた。
何十軒もの店を過ぎてから、やっと心が落ち着いて、律子の耳許に囁いた。
「私、この旅行に三十万円用意してきたのよ、律ちゃん」
「私もなのよ、弓香ちゃん」
二人は安い買い物を抱えて、元気のない笑い声を立てた。
入れ歯洗浄剤やコルセットの話
「青い壷」は月刊誌「文藝春秋」で連載
⑫森シメ 大病院の掃除婦
息子夫婦と2人の幼い孫と同居
患者から貰った生花で花びら入りの枕を作るのが趣味(最も好きな花はバラ)
眠れない夜にシメのことを考えるとなぜかよく眠れる ソコロワ山下聖美
「婆ちゃんがスパゲッティをおかずにしている」
と言って、孫たちが笑い出した。
「なに、昔はかけそばをおかずにして飯食ったもんだぞ。あれは、うめえから」
シメは機嫌よく「うめえな、このマカロニは」
と言って、また孫たちに笑われた。
孫を先に出し、自分はゆっくり湯に浸かってから、シメは自分の部屋に戻ると、
悠々と、布団を敷き、先刻作った枕をのせ、そこに頭を当てて寝た。
耳の下で、花びらの割れる薄い音がして、
甘い花の香りが、わっとシメの顔におそいかかった。
「極楽だな」シメは呟き、間もなく健康な寝息を立てていた。
シメは寝入りばなに鼾(いびき)をかく。
幸せの価値を問い直す
ウェルビーイング(well-being)
身体的・精神的・社会的に良好な状態
いかに生きるか❓幸せとは何か❓探していかなくてはならない時代に
この作品はヒントを与えてくれている
⑬ はさらっとすっきりするような最終章となっている
青い壷は有吉さん自身 何の先入観もなく色々な人物を眺める
青い壷は有吉さんの象徴ではなかったのだろうか❓
1973年放送ラジオ「文学と私」より 有吉佐和子女史の声
一つ書き終えるごとに もっといいものを書きたいっていう
気持ちがいつも強いですね 私はやっぱり死ぬまでに
何とか一つぐらいはいいものを書きたいっていう気持ちを
一生捨てたくないと思っています
凛とした竹林闊歩冬の風
朝倉(文夫氏)は大の猫好き冬陽射し
冬の夜自由気ままな猫が好き
落葉樹照らす灯りや冬の風
■100分de名著 有吉佐和子スペシャル(4) 人生の皮肉を斜めから見つめる
ソコロワ山下聖美 原田ひ香 伊集院光 阿部みちこ
「青い壷」昭和51年から雑誌に連載された連作短編集
壷が映し出す13の人間模様 壷が巡り物語が結びつく
幸福が描かれている心に響く物語
第1話 牧田省造(40代半ば) 父の跡を継いだ陶芸家
京都の自宅で地道に創作活動(デパートから受注)
焼き物に「古色」をつける仕事も請け負う
(新しい器にヴィンテージ加工を施し年代物のような外見にする
ちょっとグレーかもしれない仕事)
久々に丹精を込めて制作した壷の1つが見事な出来栄えだった
そこから物語が動き出す
そっと襖をあけて、治子が背後から入ってきた。
「お父ちゃん、その壷やったら、花挿さんかて良えんと違(ちゃ)う
落ち着いているし、気品があるやないの」「お前も生意気言うやないか」
「せやし、良えもんは誰が見たかて良えんやと思うし、うちは」
子供用の駄菓子を盆にのせて、明るい日射しを浴びた縁側で、
夫婦は緑茶を啜(すす)った。
「ええ茶ァやな」「その筈やし、玉露やもん」
「おいおい、玉露をふだんに使うてるんか」
「吝(けち)なこと言いな、お父ちゃん。あんな上等の壷が上がったときぐらい、
贅沢なお茶飲みましょうな」「そらそうやな」
道具屋 安原 省造
「これであんた焼酎につけて 床下へ入れとけば、
半年で江戸初期というて通りまんねんで」
「どこから見ても唐物やなあ。日本人のものには見えんがな」
「この壷な、牧田さん、古色つけといてんか」
安原の持ってきた茶碗を誰が作ったとも思い悩まず、
フッ化水素酸で洗っていた罰かと思う。
どの茶碗でも、一つ一つ手造りで高台(こうだい)がこしらえてあった。
どの茶碗にも作者がいたのだ。
「デパートは古色つけなせんで、お父ちゃん。
東京の美術コーナーやって、お父ちゃん。
デパートのケースに入ったとこ見物に行きたいわ。
今日はきっと良えことあると思うてたんよ、うち」
治子の声は弾みながら向うへ行ってしまった。
壷の旅立ちと「普通の幸せ」
省造の妻・治子の機転によって古色付けを免れて長い旅へと出立(いでたち)
累計部数50万部以上
原田さんの推薦文が載った帯がついた2022年以降に18万部以上が売れた
2024年11月時点
原田ひ香「財布は踊る」1つの財布が様々な人間の手に渡る物語
「青い壷」の時代と戦争
私たちが生まれた時 大人は20~30年前に戦争を体験
その時代の大人たちが何を考えていたか見えるのがこの作品
話数 主要人物
① 牧田修三 葵壷をつくった陶芸家
② 山田千枝 定年退職したサラリーマン寅蔵の妻
③ 原芳江 お見合いの仲人をする副社長の妻
④ 芳江と雅子 遺産相続について話し合う母と娘
⑤ 千代子とキヨ 東京で働くキャリアウーマンと目に障害のある母
⑥ 梶谷洋子 夫と小さなバーを営む初老の「ママ」
⑦ 石田春恵 戦時中の思い出を語る外交官の妻だった老女
⑧ 石田厚子 夫とレストランでディナーを楽しむ女性
⑨ 弓香 女学校の同窓会に参加する70代女性
⑩ 悠子 ミッションスクールで給食栄養士として働く20代女性
⑪ 悠子とシスター・マグダレナ 悠子を小学校のころから知るスペイン人修道女
⑫ 森シメ 還暦を過ぎた病院の掃除婦
⑬ ?
良い大喜利の題
⑤千代子は東京に住むキャリアウーマン
久しぶりに実家に戻ると母のキヨが緑内障のために目が見えなくなっていた
「じゃあ私が面倒を見る」という
「いい匂いだねぇ。その匂いを嗅ぐと、東京の朝だという気がするよ。」
千代子は土曜日の稽古事はやめて、会社が退(ひ)けると買物をしてさっさと家に帰る。
前には面倒くさくてならなかった食事の支度も、この頃は苦にならず、
野菜の煮つけなどは張切って味をつけ、
キヨがおいしいと褒めてくれるのを待ってみたりする。
耳にはラジオの音楽とニュース、舌には季節の味をと千代子は
キヨを慰めながら、ある日、ふと気がついて花を買って活けたら、
キヨは大層喜んで花の名まで言い当てた。
医者は千代子の顔を見て、明るく言った。
「左は緑内障ですが、右は白内障です。
他に御持病がないようですから手術しましょう」
「千代子、あれは花活けだね。テレビの横に、いつも置いてあった。
匂いのする花を活けてくれたのは分っていたけど、あれは、
まるで青空のような色に見えるけどねえ」
「青磁の壷なんですよ」「綺麗な色だねえ。
そう、青磁だったの。つるつるしているのは分っていたんだけど」
女ふたり暮らしの幸せ
65歳以上の東京居住者は保険で手術費も入院費も
タダになると伝えられたキヨが怒り出す
千代子は例の青い壷を(医者に)届けることを提案
女の人が一人で家を買う時代
時代が進んできたことへの率直な賛歌
⑨弓香(70代) 裕福な「大奥さま」(長男は会社社長)
半世紀前に女学校を卒業
同窓会は三泊四日の京都旅行
その旅のために、弓香は半年も前から準備していた。
三泊四日の旅に、どうしてティッシュペーパーが一箱も必要なのか。
老眼鏡の予備を二つも入れるのか。
総入れ歯なのに草加煎餅を一鑵(かん)持っていくのは何故か。
嫁の明子には分からないことだらけだが、こういう場合は
一切口を挟まない方が得策だと心得て見ないふりをしている。
小遣いは現金30万円
膳の上の料理は、およそ御馳走と呼べるようなものはでなかった。
茄子を煮たのが半切れ、その横に赤ン坊の拳より小さいがんもどきが一つ。
これが楽しみにしていた京料理だなんて。
三十万円も持ってきているのに
「奥さん。さすがに目ェが高いなあ。上等でっせ、これは。唐物ですさかいな」
「お高いでしょ」
「三千円で、どないです」
古新聞でくるまれた壷の箱を抱いて歩きながら、弓香はしばらく黙って歩いた。
何十軒もの店を過ぎてから、やっと心が落ち着いて、律子の耳許に囁いた。
「私、この旅行に三十万円用意してきたのよ、律ちゃん」
「私もなのよ、弓香ちゃん」
二人は安い買い物を抱えて、元気のない笑い声を立てた。
入れ歯洗浄剤やコルセットの話
「青い壷」は月刊誌「文藝春秋」で連載
⑫森シメ 大病院の掃除婦
息子夫婦と2人の幼い孫と同居
患者から貰った生花で花びら入りの枕を作るのが趣味(最も好きな花はバラ)
眠れない夜にシメのことを考えるとなぜかよく眠れる ソコロワ山下聖美
「婆ちゃんがスパゲッティをおかずにしている」
と言って、孫たちが笑い出した。
「なに、昔はかけそばをおかずにして飯食ったもんだぞ。あれは、うめえから」
シメは機嫌よく「うめえな、このマカロニは」
と言って、また孫たちに笑われた。
孫を先に出し、自分はゆっくり湯に浸かってから、シメは自分の部屋に戻ると、
悠々と、布団を敷き、先刻作った枕をのせ、そこに頭を当てて寝た。
耳の下で、花びらの割れる薄い音がして、
甘い花の香りが、わっとシメの顔におそいかかった。
「極楽だな」シメは呟き、間もなく健康な寝息を立てていた。
シメは寝入りばなに鼾(いびき)をかく。
幸せの価値を問い直す
ウェルビーイング(well-being)
身体的・精神的・社会的に良好な状態
いかに生きるか❓幸せとは何か❓探していかなくてはならない時代に
この作品はヒントを与えてくれている
⑬ はさらっとすっきりするような最終章となっている
青い壷は有吉さん自身 何の先入観もなく色々な人物を眺める
青い壷は有吉さんの象徴ではなかったのだろうか❓
1973年放送ラジオ「文学と私」より 有吉佐和子女史の声
一つ書き終えるごとに もっといいものを書きたいっていう
気持ちがいつも強いですね 私はやっぱり死ぬまでに
何とか一つぐらいはいいものを書きたいっていう気持ちを
一生捨てたくないと思っています
2025年1月1日水曜日
令和七年年賀状 能登半島地震&紅白歌合戦を詠む
謹んで初春のお慶びを申し上げます
笑顔にあふれ幸多き年でありますよう心からお祈りしておりますお体を大切にお過ごしください
本年も宜しくお願い申し上げます
令和七年元旦 覆燈火 乙巳
能登半島地震の一年後を詠みました。
家傾きて眩暈と頭痛初陽
初明りどこもかしこも地割れかな
住居下亀裂横断去年今年
土砂崩れ未だ手付かず初茜
春永や未だ届かぬ支援金
初声や年金だけの復興は
村を断絶斜面崩壊若日
一日も早く復旧がなされますよう祈念申し上げております。
登録:
投稿 (Atom)