2024年1月9日火曜日

題「光」

冬の月帯さらに締め総織部
歌舞伎者ひょうげものをり里楽宿
冬ぬくし飽くなく形探求へ
冬陽射しあえて型打ちさまざまに
冬落暉(らっき)多様のための型を打つ

■NHK短歌 題「光」
選者 川野里子 ゲスト 深尾あむ 内藤秀一郎 司会 ヒコロヒー
年間テーマ「“私”に出会おう」

▪三十一音の物語 破調はOK?
サンクトペテルブルグ、ベネチア、近江も水辺なり沼にて夢を見るなり人は
川野里子「歓待」

読者が読んで説得力があると思った時はOKなんです
作者の思いがそこにあるか否かが問題
きちんと五七五七七を守るこれが原則

字余り
あきらめきれずあきらめきれずとうたひたる人のごとくに膨るるさくら
米川千嘉子「あやはべる」
溢れ出る思いが詠まれている

定型があるからあふれる技法が際立ってくる

字足らず
アナ・タガ・スキ・ダ アナ・タガ・スキ・ダ ムネ・サケ・ル夏のロビンソン
東直子「青卵」
二七音の歌 いざ出そうとすると出ないほど緊張している
物凄く言いたいのに絶対言ってはいけない
とてもつらい状況を詠んでいる

五七五七七という順調な表現に載せたら
ペラペラしゃべっているみたいになっちゃう
結果字足らずになってしまった

これは究極の技法です
字足らずは相当な自覚がないと詠めません

▪入選六首 題「光」
子育てはSFドラマ吾子たちが放つナントカ光線を受く
杜野詩季(もりのしき)
ゲーセンの蛍光灯に照らされてUFO追ってるみんな迷子で
新井将(まさし)
「そこのビル、その暗い部屋でパソコンに向かっているひと、光ってますよ」
ゆき
一席 百メートル向こうの窓に反射して元旦の光七時に居間へ
吉田和子
窓の下「きゃっ」という声少女らは冬の光に躓いたのか
井上武明
真夜中の月に輝く背びれみせそれきり静かになった岬は
樋口淳一郎

▪秀一郎 あむのココカラ短歌
光る月スポットライト僕に向けきょうも僕が主人公
内藤秀一郎 
トイレにこもり
「僕が主人公」が自分に言い聞かせている
短歌に奥行きが感じられます
トイレの窓から月を見ている感じね

泣き顔を見せたくなくて向けられたレンズをかわして逆光に立つ
深尾あむ
深尾あむさんという女優さんの根性を感じる
倒置法を使う ことばをひっくり返すことによって
強調したりリズムが生まれてきたりする
泣き顔を見せたくなくて向けられたレンズをかわして立つ逆光に
強弱が生まれしらべ…音楽が誕生する

▪言葉のバトン
⑩分前にここに来てくれ
日本放送アナウンサー 吉田尚記

幕上がりセンスを置けば別世界
落後家 桂蝶の治

0 件のコメント:

コメントを投稿