2024年1月20日土曜日

穂村弘 短歌という魔法(前編&後編)

コンコルド効果ずるずる北颪(きたおろし)
冬の月四萬円を予想せり
楠に羽を休めん冬の鳥
冬の空仲間追いかけ追いつかん
残り鷺人のことなど知らぬふり

■NHKアカデミア 穂村弘 短歌という魔法(前編)
サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい
終バスにふたりは眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて

1990年のデビュー以来現代短歌をけん引してきた
ポップな表現でいま鋭く切り取る
「ゆひら」は雪だ だと濁点があったりするんですけど
雪がひらひら降ってくるようなね ひらひらみたいな
穂村の感じる短歌の力とは
裏目をもう一度裏目にすることができる魔法のジャンル
現代を代表する歌人の世界に講義参加者が迫る!

短歌という魔法
ペガサスは私にはきっと優しくてあなたのことは殺してくれる
冬野きりん

馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで人戀はば人あやむるこころ
塚本邦雄

わかりやすい言葉で日常を鋭く切り取る穂村の短歌
記号や擬音語を多く用いた短歌はニューウェーブと呼ばれ
短歌界に大きな影響を与えた
現代短歌史は穂村以前と穂村以降で区切られるほどの人気ぶり
自ら選んだ作品からポップで鮮やかな世界に迫る

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ
「シンジケート」より

目覚めたら息まっしろで、これはもう、ほんかくてきよ、ほんかくてき
「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」より

終バスにふたりは眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて
「シンジケート」より

今でこそ圧倒的人気を誇る穂村弘だが
短歌を始める前まではパッとしない人生だった
いかにして彼は短歌に出会ったのか?
1962年北海道生まれ 本名 辻一朗

校庭の地ならし用のローラーに座れば世界中が夕焼け
承認欲求 あの時の言葉では自己実現 何者かになりたいと思っていた

ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は

お替わりの水をグラスに注ぎつつ、あなたはほむらひろしになる、と

ゆめのなかの母は若くてわたくしは炬燵のなかの火星探検
「水中翼船炎上中」より
大切な人が亡くなった時は人は挽歌を創る
だからせめて母が死んだ一連が「火星探検かよ」みたいに
(現実に対して)一夜報いたいみたいな気持ちがありましたね

誤植あり。中野駅徒歩十二年。それでいいかもしれないけれど
大松達知
短歌に宿る不思議な力

■NHKアカデミア 穂村弘 短歌という魔法(後編)
呼吸する色の不思議を見ていたら「火よ」と貴方は教えてくれる

終バスにふたりは眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて

傑作がある だから僕は短歌マニア
穂村の考える傑作へのヒントとは❓
穂村弘の創作の源に迫る

穂村弘選・傑作短歌
誤植あり。中野駅徒歩十二年。それでいいかもしれないけれど
大松達知
本当はメロンが何かわからないけどパンなりにやったんだよね
砂崎柊
もう君の夢をみないと約束をさせられた日にみた君の夢
古賀たかえ
雨だから迎えに来てって言ったのに傘もささず裸足で来やがって
盛田志保子
看板の表が何か確かめることなく顔を嵌められる姉
前川泰信

上記の短歌の共通点は間違ったことで新しい世界が生まれている
大きな世界へ連れて行ってくれている

失敗にこそ人の輝きが宿る-みんなで味わう飛び切りの失敗談-
死ぬ時に思い出の多い人が幸せな人生では❓
失敗には魂の色が宿る
業績は本人が言わない限り表には出ない

やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君
与謝野晶子

馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで人戀はばあやむるこころ
塚本邦雄

最後のテロップ
このごろあなたのゆめばかりみる   穂村弘

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