2023年8月28日月曜日

テーマ「ライブ」

秋懐や人それぞれの当たり前
秋高し非常識とは紙一重
読み切れぬ消ゆるテロップ長き夜
秋さびし無神経なボディーブロー
秋の蝉わずかな命鳴き続け

■NHK短歌 テーマ「ライブ」
選者 岡野大嗣 ゲスト 宮永愛子 司会 尾崎世界観
年間テーマは「グッとくる瞬間」今月は「ライブ」
そもそも生きていることがライブ!

二回目で気づく仕草のある映画みたいに一回目を生きたいよ
岡野大嗣

一回しか生きられないので
そのことを強く認識する瞬間は「ライブ」を感じるとき
「一回きり」を強く感じるとき「ライブ」が立ち上がる
気配の痕跡に気づけるように生きられたら

▪入選九首 テーマ「ライブ」
「さいたま」とボーカルが天を指さしてあたし何度もさいたまになる
中村美夏
一席 延長コードを繋げて繋げてステージに変える真夏の視聴覚室
吉村おもち
生配信終えて画面に映り込む私は私を𠮟りたそうに
野点(のだて)さわ
いい席が取れた基準はステージのあなたの白目見えるかどうか
原田智美
商談はない日なんだね?ワイシャツの下に透けてるバンドの名前
藤本真夢(まむ)
体を揺らす裏の拍に合わせて俺だけ世界が違ってみえる
素潜り旬(しゅん)
三席 薄っぺらい君んちの毛布いつだってライブハウスの匂いの毛布
大野恭敬(やすたか)
ほんとうに初めてライブへ行く母の背中のチャックをそっと押し上ぐ
髙原希美
二席 私 キャパ2500の箱の片隅でひとりの部屋とおんなじに泣く
若杉有紀

ライブは独りでいることを確認する場所   尾崎世界観

▪表現者の原点 宮永愛子(ナフタリンで彫刻)
自分で自然に時間をかけて変わっていくっていうものは
ほかの人はやってないんじゃないか
消える彫刻というのが私が素材にハマったきっかけ
丸い型みたいなのが残っているのに中はない
新しい自分の形が作れたら
消えてなくなる形が作れるのではないか
というのが始まり
消える彫刻を作っていると思っていたけど
消えてなかったんだ
変成して結晶になる
結晶がどんどん増えて最初の形は失われていく
質量保存の法則 全体としては変わらない
時計を見るのか❓俯瞰した全体で見るのか❓で
全然違うふうに見える
これは世界のあり方と同じ
変わりながらあり続けている
大事にしていることは展覧会に行った
3日後くらいに洗濯物を干しながら
思い出すような作品がいいなと思っている

民藝みたいに暮らしの中で折に触れて思い出す
生活に根付いたものを作りたい
岡野大嗣

▪宮永愛子さん 創作の裏側
何もしてないときが一番考えているとき
なるべく遠くに石を投げる

真剣に遊んでますね 真剣にぼーっとする 
尾崎世界観

▪それぞれの「ライブ」それぞれの表現
ガラス玉呼気をおさめて留め石に隔てるでなし境界に立つ
宮永愛子

宮永愛子さんの「短歌のたね」
「留め石」普通は石に縄を巻いたもので
これ以上は入れないところなどにおき境界を分けるもの結界
私はガラス玉に呼気を入れて「留め石」という作品を作った
境界を分けるものという留め石に
自分の呼気を入れることで
自分が境界の上に立つことをしたかった
境界とはなんだろう
あるようでないもの
その場所にたつあなた自身の気持ちが
いつも問われているのだとおもう

世界は分かれてないじゃないですか 本当は
そういうことを改めて考える機会になったらいい

息を吹き込めたガラスを留め石にわたしは何を隔てるだろう
岡野大嗣

▪ことばのバトン
触角で穴をあければ雷雨   涌田悠(ダンサー振付家)

闇のなかただとんでみるとんでみる
初瀬勇輔(視覚障害柔道家)
暗闇で掴むぶ厚い奥襟の小さな揺れがお前の心

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