2022年7月26日火曜日

題「虫」

色付いた蕃茄(ばんか)頬張る夏の井戸
萍(うきくさ)や自由気ままに生きる日々
忖度もせず思いのままに夏を生く
夏空へ棚に整列かぼちゃの実
次々と大輪咲かす遠花火

NHK短歌 題「虫」
選者 佐佐木定綱 ゲスト 手塚マキ  
レギュラー カン・ハンナ 司会 星野真里

冒頭の短歌
親鳥の不在のあいだに辞書の切れ端から虫の名を覚えだす
佐佐木定綱

この屑は五秒前まで偉そうにパン・ド・カンパーニュと呼ばれてたっけ
手塚マキ(6月12日放送のNHK短歌で一席に選ばれていました。)

■入選九句 題「虫」
描きかけの天気図に乗るチョウバエは風力6の町でも生きる
阿部蓮南
草色のシャツに精霊蝗虫(しょうりょうばった)きてわたしは広い草原となる
加藤マスミ
蟷螂(とうろう)に堂の座布団ゆずられてほんのしばらく風に吹かるる
富田清人
夜中じゅう電気は消せぬ守衛室朝掃き捨てる窓際の虫
斉藤繁志
巡業のようにミツバチつれてゆくリンゴ畑へ80万匹
まつむらりつこ
夏、蟻が死んだやもりを精巧な切り絵に変えてゆく三日間
睦月雪花
ゆっくりと脚を開いて死んでゆく蠅(はえ)を挟んで進む昼食(ちゅうじき)
有村鹿乃子
夏の日の蟻のゆく手に飴を置き蟻が絡まるまでのしずけさ
西藤智
暁に蛍石のごと眠りおり子はわずかなる亀裂をかかえ
水鳥

■佐佐木先生の短歌というドラマ
歌に秘められたドラマをひも解き深く味わう

もの思えば沢のほたるもわが身よりあくがれ出づるたまかとぞ見る
和泉式部「後拾遺和歌集」

詞書(ことばがき)
「男に忘れられ貴船神社の御手洗川(みたらしがわ)の蛍を見て詠んだ」
と言うことで情念がにじみ出ている歌と、佐佐木定綱先生
手塚マキ氏はCoolに恋を楽しんでいるのではないかと鑑賞しておられました。

蛍のごと君がひっそり光るなら小瓶に詰めて持ち帰るのに
手塚マキ

■佐佐木定綱先生からの宿題
題「虫」で「恋い焦がれる歌」を詠んでください

もののふの八十黒蝶(やそくろちょう)ら羽を閉じネオンは朝に吞み込まれゆく
手塚マキ

小さな他者として「虫」を見たとき
歌を詠む人がどういう反応を示しているのか
表現の仕方によって時代性・社会性が見えてくる
佐佐木定綱

今回の歌を深く味わうためのポイント
短歌に詠まれた「虫」は時代の鏡である

手塚マキ氏!最高のゲストでした。
選者にして欲しいと真剣に思いました。
あの人生経験、短歌のセンス!申し分ございません。
あのように素晴らしい人財は希少ではないでしょうか?
次回のご出演が楽しみでなりません。

□手塚マキ氏からTwitterへコメントを賜りました。
手塚マキ@smappatekka
返信先: @Firosofiaさん, @nhkpb_tankaさん
「ありがとうございます!!
タレントさんがゲストの時との違いを意識して真剣に短歌と虫に向き合いました!!笑いはない回ですが、自分なりに頑張りました!」

■短歌武者修行 元髙克樹 矢花黎 カン・ハンナ
「本物の海でいつかは泳ぐんだ」天井にらむマゼランペンギン
矢花黎 添削
「本物の海でいつかは泳ぐんだ」天井の下マゼランペンギン

ミズクラゲ胃袋四つ蓄えて「はち切れるまで食べさせてくれ」
元髙克樹 添削
ミズクラゲ胃袋四つじゃまだ足りぬ「はち切れるまで食べさせてくれ」

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