2026年6月17日水曜日

こころの時代 星の王子さま 若松英輔

夏の朝引越し急ぐ花蜂よ

夏の陽や昏き(くらき)眉山へ降り注ぐ

木漏れ日や濃き緑の葉より強く

眩しき陽木下闇(このしたやみ)でひと休み

闇拒む昏き山々夏の朝

 

■こころの時代 ファンタジーに秘められた宗教①「星の王子さま」

中村圭志(宗教研究家・翻訳家) 若松英輔(批評家)

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900-1944)

 

「星の王子さま」内藤濯訳

「ね…ヒツジの絵をかいて…」「え?」「ヒツジの絵をかいて…」

ぼくは、びっくりぎょうてんして、飛び上がりました。

すると、とても様子のかわったぼっちゃんが、まじめくさって、

ぼくをじろじろ見ているのです。

「だめ!このヒツジったら、病気で、今にも死にそうじゃないか。

描き直しておくれよ」ぼくは描き直しました。

「そうだな…これ、当たり前のヒツジじゃなくって、

ツノが生えてるもの…」そこで、ぼくは、また描き直しました。

「これ、ヨボヨボじゃないか。ぼく、長生きするヒツジがほしいんだよ」

ぼくは、もうがまんしきれなくなってきました。

「こうつぁ箱だよ。あんたのほしいヒツジ、その中にいるよ」

ぶっきらぼうにそう言いましたが、見ると、ぼっちゃんの顔が、

ぱっと明るくなったので、ぼくは、ひどくめんくらいました。

 

新約聖書「マタイによる福音書」1914

子どもたちを来させなさい 天の国はこのような者たちのものである

 

「星の王子さま」

「ヒツジが小さい木をたべるって、ほんとだね?」「うん、ほんとだ」

「なら、バオバブも食べるんだね?」「そのとおりだ。でも、なぜ、

小さいバオバブなんか食べさせたいの、ヒツジに?」

「わからないかなあ、そのわけ!」と王子さまは、

さもわかりきったことのように、言いました。

朝のお化粧がすんだら、念入りに、星のお化粧しなくちゃいけない。

バオバブの小さいのは、一つ残さず、ひっこ抜かなけりゃいけない。

とてもめんどくさい仕事だけど、なに、造作もないよ

ああ、まだねむいわ…。あら、ごめんなさい。

あたくし、まだ髪をといていませんから…

王子さまは、そう言われても、

〈ああ、美しい花だ〉と思わずにはいられませんでした。

「いま、朝のお食事の時刻ですわね。

あたくしにも、なにか、いただかせてくださいませんの…」

王子さまは、どぎまぎしましたが、汲みたての水の入ったジョロを

とりにいって、花に、朝の食事をさせてやりました。

「夕方になったら、覆いガラスをかけてくださいね。ここ、とても寒いわ。」

 

ライト兄弟の初飛行 1903

 

「サン=テグジュペリ」「人間の土地」「夜間飛行」

 

「戦う操縦士」鈴木雅生訳

いま私が見下ろしている黒点、あれはおそらく一軒の人家だろう。

私はそこからなにも感じ取れない。しかしもしかすると、あれは大きな

田舎の館で、一人の子どもの頭の中に、果てしない大海原と同じくらい

途方のないものをゆつくりと築いているところなのかもしれない。

 

「星の王子さま」

おとなというものは、数字が好きです。

新しくできた友だちの話をするとき、おとなの人は、

肝心要のことはききません。〈どんな声の人?〉とか、

〈どんな遊びがすき?〉とかいうようなことは、てんで聞かずに、

〈その人、いくつ?〉〈兄弟は何人いますか〉とか、

〈お父さんは、どのくらいお金をとっていますか〉

というようなことを、聞くのです。

そして、やっと、どんな人か、わかったつもりになるのです。

 

「五億一百六十二万二千七百三十一。

おれは大事な仕事をしているんだからね」

「でも、星を持ってて、いったい、なんの役に立つの?」

「金持ちになるのに役だつよ」「でも、その星、どうしようっていうの?」

「管理するのさ。いくつあるのか、勘定するんだ。むずかしい仕事だが、

おれは、ちゃんとした男だからな」

おとなって、まったく変わってるな、と王子さまは、旅を続けながら、

無邪気に考えていました。

 

地球は、そうやたらにある星とはちがいます。そこには百十一人の王さま、

九十万人の実業屋と、七百五十万人の呑んだくれと、三億一千一百萬人の

うぬぼれ、つまり、かれこれ二十億人のおとながすんでいるわけです。

 

「ぼくは、この世に、たった一つという、めずらしい花を持っている

つもりだった。ところが、じつは、あたりまえのバラの花を、一つ

持ってるきりだった。」王子さまは、草の上につっぷして泣きました。

 

「ぼくとあそばないかい?ぼく、ほんとにかなしいんだから…」

と、王子さまはキツネに言いました。

「おれ、あんたと遊べないよ。飼いならされちゃいないんだから」

と、キツネがいいました。

「〈飼いならす〉って、それ、なんのことだい?」

「よく忘れられてることだがね、〈絆を結ぶ〉っていうことさ」

「絆を結ぶ?」

もう一度、バラの花を見にいってごらんよ。あんたの花が、

世の中に一つしかないことがわかるんだから。

 

自他不二

 

心で見なくちゃものごとは見えないってことさ。

肝心なことは目に見えないんだよ

「肝心なことは、目に見えない」と、

王子さまは、忘れないように繰り返しました。

あんたが、あんたのバラの花をとても大切に思ってるのはね、

そのバラの花のために、ひまつぶししたからだよ。人間って

いうものは、この大切なことを忘れているんだよ。

あんたは、このことを忘れちゃいけない。

面倒みた相手には、いつまでも責任があるんだ。

 

一遍1239-1289 時宗の宗祖 全国を遊行し「踊り念仏」を広めた

 

「星の王子さま」

「きみ、いい毒、持ってるね。きっと、ぼく、長いこと苦しまなくて

いいんだね?」王子さまは、ぼくに、こう言いました。

機械のいけないとこが見つかってよかったね。これで、きみは、うちへ

帰っていけるんだ… ぼくも、きょう、うちに帰るよ…

大切なことはね、目に見えないんだよ…

夜になったら、星をながめておくれよ。ぼくんちは、とてもちっぽけだから、

どこにぼくの星があるのか、きみに見せるわけにはいかないんだ。

だけど、そのほうがいいよ。きみは、ぼくの星を、星のうちの、

どれか一つだと思ってながめるからね。すると、きみは、どの星も、

ながめるのが好きになるよ。星がみんな、きみの友だちになるわけさ。

 

五眼 仏教における心理を見る眼〈肉眼・天眼・慧眼・法眼・仏眼〉

 

霊性

 

「城砦」山崎庸一郎訳

死は確かにつらく、悲しい。しかし、死者たちは、この世で

それを見送る者たちが、もしほんとうに魂を賭けて、戻れと

願うならば、ほんとうに戻ってくるだろう。

戻ってきて、彼らが在りし日より、もっと確かな方法で

再会できるであろう。

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