暑き日よ時の記憶が蘇り
塞がれて生まれくる夏の空間
足元を垂直に掘り夏に合う
夏の空どの絵もみんな堀文子
縦列の旋律放つ夏の夜
■あの本、読みました?
世界を旅した気分に浸れる本~NY・パリ・スイス~原田マハ
原田マハ 鈴木保奈美 山本倖千恵
「本日は、お日柄もよく」原田マハ著/徳間文庫
OL二ノ宮こと葉が、伝説のスピーチライター
久遠久美の祝辞に感動し弟子入りする物語。
旅行中の保奈美にオススメした本 ボストンからニューヨーク
「The Modern モダン」原田マハ著/文春文庫
本を読んで旅に深みが 保奈美
森川麻美の出勤を通して描かれたニューヨークの朝の風景
鈴木保奈美の新作エッセイ「中途半端な旅人は語る」
マハはニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art、通称MoMA)に勤務
森美術館からの派遣で半年間だった
「The Modern モダン」の一文 原田マハ著/文春文庫
地下鉄Eラインに乗り、「五番街/五十三丁目」駅で降りる。
地上に出てすぐ目の前にあるドーナツスタンドで、
紙カップ入りの珈琲とドーナツを買う。
ドーナツをかじりながら、コーヒーで流し込んで、MoMAへと向かう。
スタッフ用入り口は六番街寄りにあるのだが、そこに到着するまでに
ドーナツとコーヒーの朝食は終わらせる。
スタッフ用入り口に設置してある大きなゴミ箱に、空になった紙カップを
投げこんで、エレベーターに乗り込む。
それが麻美のニューヨークでの朝食の「儀式」だった。
ニューヨーカーは、それが特権だとばかりに、朝、マンハッタンの
ストリートを早足で歩きながら紙カップのコーヒーを飲むのだ。
麻美も、意気揚々と真似をした。ドーナツスタンドやデリで売られている
コーヒーは、いったい誰がデザインしたものなのか、
皆同じ紙カップに入っていた。青地に白いギリシャの唐草模様と、
茶色の文字―We Are Happy To Serve You.
喜んであなたにサービスいたします、と書かれたコーヒーカップで、
ミルクと砂糖のたっぷり入ったコーヒーを飲むのがニューヨーカーの
証しのように思われた。
ニューヨーク以外では見たことのない、決してうまいデザインとは
いえないこの紙カップが、麻美は好きだった。
最初は捨てるのに抵抗を感じたくらい、気に入っていた。
ニューヨークの朝のコーヒー
描写はリアル それをカッコ好いと思わせるニューヨーカー
「楽園のカンヴァス」の一文 原田マハ著/新潮文庫
車はやがてバーゼル市内に入った。バーゼルの市街地では
歴史的建造物が維持され、古いものは十四世紀から
そこにあるままだという。堅牢な石造りの建物の数々は、
町の風情を一層豊かなものにしている。
(中略)
夏の夕刻、バーゼル市街はまだ十分に明るい。徐々にオレンジ色が
増す空を映して、ライン川は滔々と流れている。
川岸にデッキチェアを出して、ワインを飲んで歓談する市民の
姿もちらほら見える。ティムと織絵を乗せたキャデラックが、
ライン川のほとりにたたずむ最高級ホテル「三人の王」の
正面入り口で停まった。ドアマンが後部座席のドアを開け、
ベルボーイがふたり、すっ飛んできた。入り口ではホテルの支配人、
ヨーゼフ・リヒャルがふたりを出迎えた。
(中略)
「夕食のご手配はいかがいたしましょう。当ホテルのレストランか、
あるいは市内のスイス料理店などのご予約も承りますが」
「私は何もいりません。今日はもう、休みたいので」
織絵が弱々しく笑って言った。
「私も…いや、私は、そうだな、橋の近く、ライン川沿いに魚料理の
店がありましたね。あそこで軽く食べようかな。
毎年、アートフェアの時期に立ち寄るんだ。
(中略)
「ああ『トロイメライ』ですね、あそこのフォレレ・ブラウは絶品ですよ。
お時間はいかがいたしましょう」「では八時に」
アートの街・バーゼル
最高級ホテルで破産宣告!?
絶品フォレレ・ブラウ
「ジヴェルニーの食卓」原田マハ著/集英社文庫
モネ・マティス・ドガ・セザンヌ。4人の印象派の巨匠たちの、
創作の秘密と人生を鮮やかに切り取った短編集。
ジヴェルニーに移り住み、青空の下で庭の風景を描き続けた
クロード・モネ。その傍には義理の娘、ブランシュがいた。
制作を続けた彼の眼には何が映っていたのか。
「ジヴェルニーの食卓」の一文 原田マハ著/集英社文庫
高さ五メートルほどの天井にはめこまれたガラスの窓からは
早春の淡い陽光が降り注ぎ、室内を白々と照らしている。
アトリエの壁三面には横三、四メートルもあるカンヴァスを
複数枚連ねて描かれた作品が二点、設置されていた。
いま、まさにモネが描き進めている「装飾壁画」、
睡蓮の池を描いた連作である。ひとつの作品は、真昼の池。
鏡のように青く澄み渡り、さかさまの白い雲を映して静まり返る水面。
ところどころにぽつぽつと浮かぶ水連は、空のただなかに花開き、
かすかに呼吸しているかのようだ。もうひとつは、二本のしだれ柳が
並ぶ池のほとり。ごくささやかな風が、長く伸びた柳の枝葉を
揺らして、いましも通り過ぎていくようだ。睡蓮の花々も、
微風を受けようと可憐な白い顔を上げている。
湿気を帯びたやわらかな空気と水のにおい。
漣の上でぴちぴちとはねる光。遠く草原を渡って、
たったいまこの池にたどりついた六月の風。
クロード・モネは父親? ファンからの反響 情景描写で意識している事
メモは書き留めない
アコヤ貝の外套膜と貝殻を丸く削って作った「核」を
アコヤ貝の体内に移植する作業
「全てが円くなるように」の一文 原田マハ著/幻冬舎
リタと私は海咲さんの肩越しに、その神秘的な作業をじっくりと見た。
作業台の上にあるスタンドにアコヤ貝が固定されている。
少し広げられた口に編針のようなスティックで慎重にピースを載せた
核を入れる。
(中略)
核入れを完了した貝は湾に戻され、それから二年ほどかけて貝の内部で
真珠が作られる。―ということだった。
作業の様子は「移植手術」そのもので手先の勘も重要なのだろうとわかった。
(中略)
しかしながら海の中で育てられ、貝自体が自発的に真珠を作るのだから、
養殖ではあっても天然の真珠と科学的には変わりはない。
ここへ来るまでに、リタも私も関連書類やネットで調べて、
真珠の形成についてはひと通り頭に入れてきたつもりだったが、
実際に養殖の現場に立ち会ってみると、何か神聖な場面を
目撃したような心持ちになった。
パソコンもスマホもいかなる電子機器もこの場所にはなかった。
青い海と小高い丘と清々しい青空を背景に、素朴な学び舎の
ごとき建屋で、職人たちがひとつひとつていねいに貝を取り上げ、
黙々と手を動かしている。自然の営みと人の手仕事がひとつになって、
あの美しい真珠をこの世にもたらしているのだ。
神秘の作業 真珠養殖
作中に海女さんが登場
「全てが円くなるように」の一文 原田マハ著/幻冬舎
海の申し子のごとき女性たちと、思いがけずににぎやかな女子会となった。
波留子さんはアワビや岩牡蠣、市場で予約して買ってきたという
伊勢海老までをクーラーボックスから取り出して、私たちの歓声を誘った。
渚さんと海咲さんがそちらを炭火コンロで焼いて、忙しくビールを注いだり
日本酒を開栓したり、精一杯私たちをもてなしてくれた。
パチパチはぜる炭火の上で、アワビと牡蠣がジュージューと音を立てる。
香ばしい磯の香りが部屋いっぱいに漂う。
リタは牡蠣の殻に溜まった焼き汁を吸い上げて、「ほんっとに、最高!」
と何度も口にした。「わたしはなあ、アワビでも牡蠣でもアコヤ貝でも、
貝がかわゆうてかわゆうて。貝はなあ、海からの贈りものなんよ」
ほんのり酔いの回った目をして、波留子さんが言った。
「貝は、私らの人生の一部なんや」「もう。お母さん、大げさやで」
渚さんが笑った。それから、言い添えた。
「人生の一部とちゃうやん。人生の全部やに」
タイトルに込めた思い
原作・脚本・監督 映画を作った
「無用の人」
50歳の美術館学芸員・聡美の物語。
亡き父から誕生日に届いた荷物をきっかけに父の晩年の姿や
自身への深い愛情を知る。
「キネマの神様」原田マハ著/文春文庫
お蔵入りになっていた脚本の発見をきっかけに、ギャンブル漬けの
ダメ親父が映画への情熱を取り戻し、家族と共に再生していく物語。
映画の原体験は「男はつらいよ」
文章と映像の違い 原田マハさんは展開型