2023年2月28日火曜日

題「火」

春の雲三本松を照らす月
黄昏て寺を目指さん遍路傘
凛とした静寂まとい遍路杖
雪囲とるほのかに聞こゆ土の香(こう)
春空を河鵜軍団旋回中

■NHK短歌 題「火」
選者 佐佐木定綱 ゲスト きじまりゅうた 司会 星野真里
レギュラー 本髙克樹 矢花黎 カン・ハンナ

▪冒頭の短歌
梅の火を抱えた女が乗り込んで四角い春となる路線バス
佐佐木定綱

短歌と料理は似ている。
できなくても生きていけるけどできると幸せの種が増える。

▪入選九首 題「火」
別にしか言わない子供を座らせて生木に火を点けようとしている
前川泰信
きじま 線香もあたりめも同じライターの火でゆらゆらと炙(あぶ)る夜のこと
アカマツヒトコト
星野 鍋底をはみ出る強火火加減のわからないまま続く子育て
小林礼歩
九十の舅(ちち)がドラム缶で燃やしてた日記と手紙半日かけて
岡本和子
カン 💮 山盛りのポテトは崩れ女らの焚火の跡を残すファミレス
北谷雪
尖底(せんてい)の縄文土器に煤(すす)見えて夕餉(ゆうげ)の支度に談笑聞こゆ
高橋富久美
ぬばたまの夜が孤独を飼わぬよう真っ赤な金魚の火をともす部屋
雨雨雨汰(あまさめうた)
玄関を出てセッターに火をつけて祖父は夜空を見る日が増えた
ナカムラロボ(セッターとはセブンスターのこと)
やわらかな薪の火を見て語り合う時間はゆっくり膝をかかえる
嶋洋子

▪佐佐木先生の短歌というドラマ
歌に秘められたドラマをひも解き深く味わう
ああ皐月(さつき)仏蘭西(フランス)の野は火の色す君も雛罌粟(コクリコ)われも雛罌粟
与謝野晶子「夏より秋へ」

与謝野晶子のイメージ
肉体的 立体的な恋愛 すべてを歌っている

雛罌粟とはひなげしのフランス語読み
ひなげしではなく「雛罌粟」と詠んだ所に歌の面白さがある
ひなげしではなく「雛罌粟」だと硬質な音 軽やかになる
意識的に漢字を使っている
字面と音のイメージで読む人のスピードをコントロールしている
夫・鉄幹が仏に渡った、半年後晶子も仏へ
ずっと会いたかった夫に会う
子どもが7人いる
自分の世界に相手を入れてしまっている 巻き込んでいる

今回の歌を深く味わうためのポイント
言葉の「見た目」や「音の響き」にも注意することで
詠み手の心情をより深く想像できる

▪宿題
昼ながく祖母の煮しめに思いを馳すとろ火のゆらぎが急くなと制す
きじまりゅうた
「馳す」「制す」⇨「す」で韻
「急く」「制す」⇨「せ」で韻
「とろ火のゆらぎ」がとんでもなく巧い

▪短歌侍武者修行!
今回の課題 スポーツを詠む
台の端大きく跳ねたワンスター「負けるものか」と右手を伸ばす
矢花黎

カンさんの空振りをした白球をコンマ1秒バックハンドで
元髙克樹

0 件のコメント:

コメントを投稿