秋の朝荒れた踵に塗り薬
秋日和勝ちをめぐりて声荒げ
足るを知る向上心は秋の空
陽の明けぬ朝を彷徨う渡り鳥
下腹を覘き触りて秋渇き
究極の短歌・俳句100選ベストセレクション
時代と戦争
短歌
熟田津(にきたつ)に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな
額田王・飛鳥時代
楽浪(ささなみ)の志賀の唐崎幸(さき)くあれど大宮人(ひと)の船待ちかねつ
柿本人麻呂・飛鳥
濁流だ濁流だと叫び流れゆく末は泥土(でいど)か夜明けか知らぬ
齋藤史・昭和戦前
軍衣袴(ぐんいこ)も銃(つつ)も剣も差上げて暁捗る河の名を知らず
宮柊二・昭和戦前
人に語ることならねども混葬の火中にひらきゆきしてのひら
たけやまひろし・昭和戦後
催涙ガス避けんと秘かに持ち来たるレモンが胸で不意に匂いえり
道浦母都子(みちうらもとこ)・昭和戦後
昭和天皇雨師(うし)としはふりひえびえとわがうちの天皇制ほろびたり
山中智恵子・平成
俳句
降る雪や明治は遠くなりにけり
中村草田男・昭和戦前
獺祭忌明治は遠くなりにけり
志賀芥子(草田男より早くに詠んでいた。)
戦争が廊下の奥に立ってゐた
渡邊白泉・昭和戦前
すべなし地に置けば子に群がる蠅(はえ)
松尾あつゆき・昭和戦後
湾曲(わんきょく)し火傷(かしょう)し爆心地のマラソン
金子兜太・昭和戦後
茅野の推し俳句
によつぽりと秋の空なる不尽(ふじ)の山
上島鬼貫・江戸
紅い椿白い椿と落ちにけり
川東碧梧桐・明治
木にのぼりあざやかあざやかアフリカなど
阿部完市・昭和戦後
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