2022年6月20日月曜日

兼題「万緑」

「遊びましょ」梅雨の晴れ間へ声響く
目で聞かん濤声(とうせい)遙か夏の風
したたかに老い弄ぶ夏の蝶
黒揚羽自ら網へ入りけり
茅花流し(つばなながし)よ作為なき景観よ

NHK俳句
選者 星野高士 ゲスト 松本梨香 司会 武井壮
兼題「万緑」

冒頭の俳句
萬緑の中や吾子の歯生え初(そ)むる   中村草田男

■会いたい俳人、12人
中村草田男(純白の俳人)

降る雪や明治は遠くなりにけり   中村草田男
(どんどんどんどん雪が降っていますと
いつの間にか時間の観念が消えて
そうして今が昔か昔が今か
分からないような気持になります
しかしそういう時にまた反対にはっきりと
明治という自分が少年時代、幼年時代を暮らした
時代はもうとっくに過ぎ去ってしまったのだ
自分だけではない、日本人にとって意味のあった
あのなつかしい明治時代は
もう遠く過ぎ去ってしまったのだ、という気持ちが
はっきりと意識されたという句であります)音声

妻二タ夜あらずフタ夜の天の川   中村草田男
(何か用事がありまして、妻が出かけて行って
その晩は帰ってきませんでした。
そういう時、てもちぶさたなままに
縁側に出てみますと
頭上を天の川がぼうぼうと渡っておるのであります。
そういうことは、その翌晩もまた続いたのでありまして
そういう新生活の、独特の気持ちというようなもの
それがうたわれているのであります)音声

萬緑の中や吾子の歯生え初むる   中村草田男
(いろいろ様々な木がいろいろ様々な緑を茂らせておる時
ふと見ると自分の幼い子どもの下歯茎から
やはり大きな自然の力の恵みで
真っ白な歯がふたつ、わずかに生え初めていた
それが親の目としては、いかにも大きな
力の動きのように、喜ばしかったのであります)音声

■入選九句 兼題「万緑」
万緑や途方に暮るる烏(からす)二羽   竹田仁美
無限とはこの万緑のあふれやう   桜井教人
万緑や鳥も獣も声豊か   小板卓史
万緑や隠沼(こもりぬ)に魚跳ねる音   末永拓男
万緑や言葉少なき人と会う   櫱(ひこばえ)
万緑の中へ傘寿のどんこ舟   峰松朱実
万緑に誘はるるまま奥の院   山口勝
万緑の底に名水掬ひけり   竹内白熊
万緑や五右衛門風呂の煙立つ   笹谷雅子

0 件のコメント:

コメントを投稿