2022年4月26日火曜日

題「空」

白牡丹素朴を今を咲ききらん
蜃気楼イワンキエフの絵画燃ゆ
ミケランジェロのピエタよ韻文の詩(無季句)
ピンゼルのピエタよ春を散文詩
散文で心揺さぶるピンゼルよ(無季句)

HHK短歌 題「空」
選者 佐佐木定綱 ゲスト 山崎樹範 司会 星野真里

冒頭の短歌
部屋隅にエアープランツ吊り下げる日に何度かは空を見るため
佐佐木定綱

■入選九首
まっすぐにした側転の爪先は私の思う空を転がる
愛媛県今治市 阿部蓮南

右の手を空に掲げるポーズして子は羊水の中にて眠る
徳島県徳島市 中村春奈
(佐佐木定綱先生は北斗の拳のラオウの最期の言葉
「我が生涯に一片の悔いなし!」を思い出されたとか…。笑)

この空の蒼さは何と言えばいいライトフライの落下待ちつつ
徳島県吉野川市 喜島成幸

目の前に母だけがゐて真空の午前三時の体位変換
奈良県奈良市 和田康

加工する前のレンズは空ばかり映したろうか眼鏡拭き置く
奈良県大和郡山市 大津瑞貴

空き瓶を捨てられぬふたり春なればともに暮らさむ花瓶にかえて
石川県金沢市 藤室育美

浮上する海面もとめ見あげれば空へ落ちゆくバンドウイルカ
神奈川県横浜市 小鷹佳

解体をされたる生家の正門は空の入り口みたいに佇む
東京都練馬区 仲原佳

空色の色鉛筆を画用紙へすべらせてゆく明日から五歳
山形県南陽市 西鎮

■佐佐木先生の短歌というドラマ
石川啄木の15歳の時の短歌
□15歳の時の空
不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて空に吸はれし十五の心
(啄木「一握の砂」より 「空に吸はれし」は秀逸な表現)

題「空」で「十五歳」を詠む
帰り道話した事もない女子の洗濯物を染める秋空
山崎樹範
幾度も空を抜け出し君に落ちいつしか乾く雨粒だった
星野真里(雨粒と恋と涙とが巧く響き合っている。)

□24歳の時の空
病(やまひ)のごと思郷(しきやう)のこころ湧く日なり目にあをぞらの煙かなしも
(啄木「一握の砂」より)

山崎樹範さんの感想
十五の時は盛岡の空を見て東京を思い、
二十四の時は東京の空を見て盛岡を思った。

佐佐木定綱先生の感想
啄木は二年後、借金まみれとなり結核で亡くなりました。
啄木にとって空は自分の心を映し出す鏡のようだったのかもしれません。

星野真里さんの司会も短歌も大好き。
今年の「NHK短歌」が楽しみでなりません。

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