勘三郎を詠む
味噌搗ついて心宿して役となる
凍てつかん吾の背見澄ます子の視線
習ったことをそのまま伝授面見世(つらみせ)
伝統へ流行り盛り込み足揃(あしぞろえ)
顔見世や勘三郎を今一度
■あの人に会いたい 瀬戸内寂聴
作家・僧侶 瀬戸内寂聴 2021(令和3)年 99歳没
愛するというのは喜びと同時に 苦しみが始まるものだと思うんですよ
でも それでもですね やっぱり人間は愛した方がいいと思う
愛するためにわれわれは生きているというふうに
文学というのはそれを描くものじゃないでしょうか
みんないつか死ぬんですからね いつかは死ぬからね
今日に1日が大切なんですね 明日はあるかどうかわからない
ですから今日1日を切に一生懸命に生きましょう
大正11年仏具商を営む両親のもとに生まれました
私の文学の源泉と言えば人形まわしなんです
なんかこの世の中にね 人生というものはね
楽しいだけじゃなくてね
苦しいことがあるんだなとかね 悲しいことがあるんだなとかね
それから人を好きになる そういう男女の間に引き合うね
愛があるんだなってね そういうことをね
覚えたのは人形からです 私は
結婚は見合いでしたからね だから初めて恋愛して
恋愛っていうのはね ちょうどね 雷が落ちてくるみたいなもんでね
もう防ぎようがないんですよ 気が付いたらもう打たれているんですよね
家を出る名目としてね どうして出るのかって言われたときに
「男にほれて出ます」ってみっともないからね
「小説を書きたい」って言っちゃったんですよ
女子大生・曲愛玲(チィアイリン) 認められたのは35歳の時
昭和32年 新潮社同人雑誌賞受賞 文壇デビューを果たした
私がとにかく作家にならなければですね
もうこれはマイナスのままだと思います
しかし私がね もし自分の志を貫いてですね
とにかく作家になれればですね 彼らも
許してくれるというふうに思っていました
続けて発表した「花芯」では大胆な性描写が批判にさらされます
5年間完全に干されました 筆を折ろうとは思わないですよ
このわからず屋と思っていましたから 今に見ろと思っていた
昭和38年「夏の終り」で女流文学賞受賞
われわれの働く女たちの道をね 切り開いてくれて人たち
まだ非常に世の中の因習的な壁の厚い時代にね
自分のはだしの足に血を流してね 爪から血を流して
その道を切り開いてくれた そういう女性たちに憧れますね
1962年には言い知れぬ不安から自殺も考えたとか…。
やっぱり自分の書いた小説がね 世界的名作のレベルに
達しないと嫌だと思っていた そりゃ自分の書いたもの見たらわかりますよ
もうそんな 何十年も書いていたら ああ この程度かと思ってね
口もきけない子供を捨てたしね ええ 悪くもない夫を裏切ったりですね
そういうことをしてまで小説を書いた それで手に入ったものが
「あっなんだ こんなもんか」っていうのでね 非常に空しかったです
昭和48年 得度 岩手県の中尊寺にて
出家は生きながら死ぬこと
そのときはもうこれで 猛(作家としての)幕が引かれると思っていましたよ
だからどこも書かせてくれない それでもいいかって いうことを
自分にずいぶん問い詰めました だけどふたを開けてみたらね
何か よけい仕事が来るようになって いろんな…もっと仕事がね
発展しましたね だからやっぱりね 自分でね 途中で命を絶つとかね
何か自分を投げ出すということはね やはり傲慢なんですよ
やっぱりね 与えられた命はね もう死ななきゃならないときが
くるまでですね やっぱり精いっぱいに生きることがね
これが人間の務めだと思いますね
70歳から6年がかりで書いた「源氏物語」現代語訳
女性に焦点を当てた 新しい視点と読みやすい表現で200万部を超える
ベストセラーとなりました
世界中が認めている「源氏物語」をですね
日本人は殆ど読んでいないんですよ こんな素晴らしい文化
千年前にあったんだよと 日本はこんなに素晴らしい国だよっていうね
誇りを持ってもらいたかった
天台寺(岩手)毎月開催された青空法話
みなさんですね この中にたくさんね
愛する人に死に別れた方が今日いらっしゃいます
それはですね 亡くなった魂はですね その人を守るためですね
必ずその魂はですね この世に帰ってきてね 愛する人たちの…
一緒にいるんですよね
しかし88歳の時 腰椎を骨折 一時は歩けませんでした
平成23年 東日本大震災 東北に励ましに出かけて行った
見て木 木がほら
もうね 泣きたいときはね 泣いた方がいいのよ 泣くのが当たり前
どんなにつらいことでもですね それをばねにして 生きるね
そういう力がね 人間にはあるんですね
平成27年 安全保障法制に抗議するデモに参加
このままでは駄目だよ 日本は本当に怖いことになっているぞ
ということを申し上げて死にたいと思いました
いい戦争というのは絶対にありません
「いのち」を執筆 最後まで作家であり続けました
生きているってことは情熱を燃え立たせてなければ
つまらないですね なまぬるい生き方をしたくない
書き尽くしていないですね やっぱり1つのものが
仕上がったらそのあとに何かまた湧いてきます
ペンを握って死にたいです
愛と自由を求める女性の魂を描き続けた瀬戸内寂聴
自分の足で立ち 常に前に進む姿勢を貫いた99年の生涯でした
思い煩うな くよくよするな
過去のこともくよくよするな
未来のこともくよくよするな
今を切に生きてください
今を切に生きる
作家・僧侶 瀬戸内寂聴 1922-2021
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