2025年12月18日木曜日

100分de名著 「死の瞬間」②

篠田桃紅を詠む

冬陽射しカーテン閉ざし灯をともし

なぞらない他人の人生冬の月

寒菊や凛として立つ佇まい

息白し主を纏う着物かな

冬座敷主役の主包み込む

 

100de名著 キューブラー・ロス「死の瞬間」

死にゆく人の否認と怒り

島薗進 伊集院光 阿部みちこ

 

死の受容過程の5段階

①否認 怒り 取り引き 抑鬱 受容

 

どう向き合ったらよいか 手がかりになる

 

ほとんどの人は不治の病であることを知ったとき、

はじめは「いや、私のことじゃない。

そんなことがあるはずがない」と思ったという。

誰にでも最初の訪れるのがこの否認である。

鈴木晶・訳

 

信仰治療 病院の指示に従わない 

 

彼女は横に座っていた私の手を握り、「あなたはこんなに

温かい手をしているのね。私がだんだん冷たくなって

いくときにはいっしょにいてね」と言った。

そして何かがわかったように微笑んだ。

彼女も私も、この瞬間に彼女が否認をやめたことがわかった。

 

1段階「否認」

自分を守るための心の動き

認められないということは生きたいということ

厚化粧をして容貌を若く見せて自分も錯覚する

孤立・孤独がこの本の隠れたテーマ

孤独から助けたということで死の否認が克服できた

死を迎えていくことを受け入れた

否認していたら絶対でない言葉

 

2段階「怒り」

1段階の否認を維持することができなくなると、

怒り、激情、妬み、憤慨といった感情がそれにとって代わる。(中略)

私たちの患者の一人、G博士はこう語っている。

「私と同じ立場にいる人のほとんどは他人を見て

『どうしてあの人じゃなかったのか』と言うでしょう。

 私の心にも何度かこの言葉がよぎりりました。

 あるとき、子どもの頃から知っている

 老人が道を歩いているのが見えました。八十二歳です。

 どう考えても、世の中の役に立っている人間とは思えません。(中略)

 そのとき、頭がつんとなぐられたように、その考えが浮かびましたー

 どうして私ではなくあのジョーンズじいさんではいけないのか…」

 

このような状況に置かれたときにいちばん惨めなのは、金持ち、

成功をおさめた人、支配欲のつよいVIPだろう。

自分の人生を快適にしてくれていたものを失ってしまったからだ。

私たちは死ぬときにはみな同じなのだが、O氏のような人は

それを認めることができない。最後までそれと戦い、死を人生の

最終結果として謙虚に受け止めるチャンスを逃してしまう。

彼らは拒絶と怒りを爆発させるが、それによってだれよりも

絶望的になってしまうのだ。

 

悪循環

死が近いとそういう顧慮(こりょ)が失われてしまう

 

患者は自分が忘れられていないことを確かめようとする。

声を上げて叫ぶ。要求する。不平を言い、注目を引こうとする。

おそらく究極の叫びはこうだ。

「私は生きている、そのことを忘れないでくれ。

 私の声が聞こえるはずだ。まだ死んでいないのだ」

 

私は孤独のまま世間からいないも同然にされていく 伊集院

注目を引こうとする放っておかないでくれ 忘れないでくれ 

死が近づくと途端にどっと落ちた「あなたは大事な一人の人なんですよ」

そういうメッセージを伝える 島薗

 

患者

「君は嘘をついた」(中略)

「もし私が手すりを下ろしたままにしていたら、

あなたはベッドから落ちて頭が割れていたんですよ」

 

ナースが患者に対して断固とした態度をとるのは

死に対する心の準備がスタッフの側に足りない

死に対する恐れが無意識のうちに出たしまう

ケアする側も自分を振り返る必要がある

自分の中の不安や弱さを自覚しておく 島薗

 

自分の心の奥にある恐怖や不安も直視して向け合わなければならない 阿部

 

シスターI

激痛に襲われてナースコールを押したのですが、

誰も来てくれなくて…。もし、何かがあっても、

これでは間に合わないと思ったら、とても不安になりました。

私への対応がそうなら、他の患者さんにだって同じだろうと思いまして、

それでこの何年か、ここで患者さんを見回っているんです。

孤独感

患者 話し相手は、私が見回っている患者さんやその家族の方たちだけです。

そのお陰で、かなり精神的に支えて貰っています。

気分が落ち込んでいる時や泣きたい時、私は自分の問題に

かまけるのをやめて、少しでも他のことを考えるようにします。(中略)

医師 もし、それができなくなったらどうしますか。

患者 そうしたら、だれか手を貸してくれる人が必要になります。

でも、だれも助けてくれないでしょうね…。(中略)

医師 そんなことはありません。

そういうときこそ、私たちが力になります。

患者 ええ、でも、これまでだれかに助けてもらったことなんて

ありませんでした。(泣く)

医師 これからは大丈夫です。それもこの面談の意義なんですから。

 

シスターIの怒りの原因は死の恐怖ではない。 阿部

怒りの原因になるのものは生涯の中にあった 島薗

対話で解きほぐしていくことが死を受け入れていく準備になる 島薗

信頼感 

 

WHOによる緩和ケアの定義(2002)

緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者と

その家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・

スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、

苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。

 

スピリチュアルとは魂の次元の痛み

スピリチュアルペイン:

生きがいや生きる意味であったものをすべてを失うという痛み

どうやってスピリチュアルペインをなくしていくことができるか

答えは簡単に出てくるものではない ケアする側も

そういう問いがあることを分かっていることが大事

「その人の心の大事な部分に自分は向き合っているんだ」

こういう意識を持つことを示唆する本 島薗

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