2025年12月22日月曜日

兼題「枯野」&テーマ「かたち」

(出アフリカ)

数千から八十億へ冬銀河

北颪(おろし)恐怖の記憶残す人

星冴ゆる不安感じぬ人のをり

危険予知備える人の鰤起し(ぶりおこし)

寒し夜や火星で住む日あと少し

 

NHK俳句 兼題「枯野」

選者:和田華凛 ゲスト:志村昌司(しょうじ) 司会 中川緑

年間テーマ「季語からみるDNA」

 

志村昌司氏は志村ふくみ(人間国宝 紬織)の孫

草木染をして手機(てばた)で織っているので

着物の風景からイメージしたタイトルをつける

色の和名を使って俳句を読むことが好き

格調高くなったり 名前からのイメージが膨らむ

 

兼題「枯野」は草の枯れ果てた野原 冬の季語

枯野の季語としての重要さは色を失った後の静けさ 寂しさ

公園の片隅の枯れ草は枯野とは言いません

広くてあまり人工物がないイメージ

 

枯野色 色のイメージが強い 茶系やグレー

植物の最後の色が枯野色のイメージ 志村

いろんな植物から茶やグレーは染まる

団栗(どんぐり) 夜叉五倍子(やしゃぶし) 冬青(そよご) 

百日紅(さるすべり) 白樫(しらがし)で染める

日本の伝統で「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)

という色がある 草木染をやっていると色は二度と出ない

同じ色は出ない 無限のグラデーションができる

團十郎茶 路考茶(ろごうちゃ) 銀鼠(ぎんねず) 深川鼠 志村

 

日本人は粋 四季があるから草木が枯れたり緑になったり

それで日本人の色に関する感性が敏感 和田

 

出ない色は植物に無いですけど 最後に行き着く色は「色なき色」

般若心経に中に「色即是空」命の移ろい 種から植物が育ってきて

青年期を過ぎて壮年になって晩年になって枯野に最後になっていく

色でもいろんな色が出てくるけど 最後 色なき色に戻ってくる

それが色即是空(に通じる) 祖母が100歳になって

色なき色の世界に気持ちがいっている 無常観 人生の本質にたどり着いた

枯野って命が尽きて 全てが無くなった死の世界ってイメージ

冬は春に向けての予兆の季節 次の命が胎動している というイメージも

枯野の中にある 必ずしも寂しいイメージだけではない

地面の上は枯野ですけど 地面の下は根があったり次の種があったり

次の生命を宿している そういう生命の循環を感じる意味では

冬は寂しいけれども 次の新しい季節にもなっている 繋がりがある

それが死と再生の循環 自然の摂理 志村

 

流転 和田

 

枯野の色も枯れて終わっていくとか 

寂しい色じゃないように見えてくる 中川

 

次の世代 次の命にどうバトンタッチするかが大事

枯野の時代に 次の春にどうバトンを渡すかが大事 志村

 

・名句鑑賞

度に病で夢は枯野をかけ廻る   松尾芭蕉辞世の句

 

夢と枯野の対比が凄く印象的 ただ野をかけ巡るだと印象が違う 志村

芭蕉にとって旅は自己の人生を深めるためのもの

感動を得ることで人生を豊かにしていく 今は病で旅に出られないけど

エネルギッシュな魂のまま今もかけ廻っている

病を治して旅に出ていこうという未来への希望 ふたつの意味に取れる 

野ではなく枯野というところに深いものを感じる 

詫び寂びの心が感じられる 和田

 

・特選三席 兼題「枯野」

一席 枯野より声なき声のにぎやかに   松山真弓

二席 書き足してみたき枯野の地図記号   工藤陽子

三席 枯野宿イートハーブを探す旅   貞森修(しゅう)

 

・特選句 兼題「枯野」

土偶まだ目覚めぬままの枯野かな   川口泰英

飛行機の巨大な腹の行く枯野   鈴木正也

縄電車枯野につくる無人駅   齋藤満月

太陽も印象派めく大枯野   矢作輝(あきら)

一対の星の真中の枯野かな   桑澤柊(しゅう)

みのりからいのりの色へ大枯野   山地千晶

(草木染は実り染めとも呼ばれている)

 

・志村昌司の一句

草木(そうぼく)の色を脱ぎ捨て枯野かな   志村昌司

草木というのは自然の摂理に従っている生き物

冬になると潔く色を脱ぎ捨てる 

自然の摂理に従って潔く生きている草木たち 志村

草木が主語になっている 擬人化して色を自ら脱ぎ捨てる

「色を」というのが説明的 草木の色を脱ぎ捨てるということが

この句の一番の主張 枯野の本位に近い 添削なし 和田

五・七・五で十七音しかないので いかに削ぎ落して説明的にならない

考えてるうちに分からなくなってきた 志村

 

自然との対話 心象風景を自然の色を通して表現する

自然と自分が一体となる 俳句も自然と人間が一体となったときに

出てきた言葉 志村

 

・はみだで!教室俳句

愛媛県宇和島市立明倫小学校 芳谷あゆみ先生

 

修学旅行での移動の様子

行き 秋高しスーツケースの音軽し

帰り バス窓に映る街灯(がいとう)流れ星 (金賞)

 

(俳句対決は)ものを見る力 鑑賞する力になると思う

 

俳句で輝く

~どの子も光原石だから

 

NHK短歌 テーマ「かたち」

選者:永田紅 ゲスト:佐藤卓 司会:尾崎世界観

年間テーマ「“理科のことば”で羽ばたく」

 

塚本邦雄

1950年代に前衛短歌運動を牽引 伝統的な五・七・五の枠を

意図的に崩したリズムや暗喩で思想を表現する革新的な作風を打ち出した

 

ルールを守りながら新しいルールを発見して遊んでいく

デザインの仕事と完全に重なる 直接に影響を受けた 佐藤貞子

 

まだ名前がない形を発掘して歌に詠むと 新しい感覚を得ることができる

「かたち」が詠み込まれた歌

数か月ピペットマンを持たぬ掌()にときどき握る形をさせぬ

永田紅

 

出産後に育児休暇中で実験ができない時に作った歌

 

・入選九首 テーマ「かたち」

自転車で日本一周したけれど分からなかった日本のかたちは

川村空也(ひろなり)

三席 私 努力って泡になったり結晶になったりもして近寄りがたい

髙山准

「以下同文」にされてしまった光たち筒のかたちで引き出しにある

里見脩一(しゅういち)

黄金比見た正しい上カルビ縮めるために網に乗せてく

さとうきいろ

ロマネスコ食べてるみたいにフラクタル知れば知るほどあなたに出会う

佐分利碧晴(へきせい)

一席 真四角のハンカチの角のクローバー刺繍のとこだけ涙を吸わない

全美

三角のてっぺんだけを詰め合わせ入院先の母へスイカを

水の眠り

二席 水通しした産着は風にふくらんでこれがまだ見ぬあなたのかたち

神守彩枝(さえ)

是非もなく取られた飛車の五角形その切っ先を突きつけらるる

原拓(たく)

 

・“理科のことば”ピックアップ

同年代結構増えて通過したM字型就業図のへこみ 熊谷香織

 

漢字がいっぱいある中にアルファベットが一つは言っているのが面白い 佐藤

 

・私の“理科のことば”

可塑性(かそせい) 外部から力が加わった時に元に戻らないという性格

クリエーターにとっては大切な性格 自分を持つ事にもなる

世の中のいろいろな課題を「間」を繋ぐことによって

スムーズにしたり解決していく 「間」に合わせて自分がどんどん

変わっていくべきものではないか 個性ともつながる

何かに没頭することで個性は自然に出てくる 佐藤

 

創作活動していると 人と違った目新しい表現しなきゃという

強迫観念が常にみんなを縛っちゃう 永田

 

デザインを目立たせようとすることが世の中では多い 実は奥にあるものと

繋いでいるわけなんですよね だからうまくつながると途中が見えなくなる 佐藤

 

レトリックにばかりこだわってそこに腐心すると やっぱり奥に届かない

作為が見え過ぎちゃう 永田

 

富山県美術館 屋上庭園「オノマトペの屋上」

「ふわふわドーム」遊具を作ってからオノマトペを付けるのではなく

遊具になりそうなオノマトペから遊具を考えるというアプローチを思いついた

「ひそひそ」「うとうと」「ぐるぐる」など…。 佐藤

 

感覚的に響き合うような素材になりますよね 佐藤

 

試験管のアルミの蓋をぶちまけてじゃん・ばるじゃんと洗う週末

永田紅

ジャン・バルジャンは「あゝ無常」「レ・ミゼラブル」の主人公の名前

 

・ことばのバトン

甘く焦げてく凍ったはずの血

ハイパーミサヲ(プロレスラー)

そっくりな猫と出会ってしまった日

仁尾智(さとる)(歌人)

 

猫が来るほめてほめてという顔で何か不穏なものを加えて

猫であく穴は猫でも埋まらないけど猫だけが入れるかたち

幸せは前借りでありその猫を看取ってやっと返済できる

 

短歌として生まれてきてくれるもの自体が

僕を楽にしてるイメージがありますね

 

その人は終生飼育がちゃんとできる しかも死んでしまって悲しめる

あなたすごくいい飼い主さんなんだから 

また猫と暮らしてみませんかっていう意図でつくった

誰かが猫を飼い始めるとその人とその猫が幸せになる 

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