2023年1月31日火曜日

題「折」

渡り鳥遅れて冬をせかせかと
徒党組み夜明けまぢかを冬の雁
電線のラッシュアワーや冬の鳥
春近し作法としてのおもてなし
あの世とこの世九相図に見る冬の径(みち)

■NHK短歌 題「折」
選者 佐佐木定綱 ゲスト 湯山玲子 司会 星野真里
レギュラー カン・ハンナ 本髙克樹 矢花黎

▪冒頭の短歌
直角に茎折れてゆく枯れ切った花束をゴミ箱に入れれば
佐佐木定綱

湯山玲子さんの短歌との接点
売りにゆく柱時計がふいに鳴る横抱きにして枯野ゆくとき
寺山修司

▪入選九首 題 折
湯山玲子 寂しげに見えたのだろうこの先を右折したら海だよ、と教わる
川下知世(ちせ)
この部屋を折り紙とすれば両翼となるべき場所で二人は眠る
大津穂波
向日葵は首折れたまま立ち尽くす夏の終わりの廃線の駅
濱岡学
②カン・ハンナ だんだんと折りたたみ式になる母を広げに今日は田舎へ帰る
海瀬(かいせ)安紀子
しんとした朝の空気を折り込んだクロワッサンの並ぶ店先
仲原佳
まようたび折り目のついた本めくり一歩先だけ照らしてもらう
五味集(しゅう)
星野真里 仕立て屋のような手つきで折り上げたブックカバーを撫でる書店員
星野珠青(たまお)
便箋の折り目を戻す指先できみの時間の川面に触れる
鳥原さみ
💮君からの葉書を日々の枝折(しおり)とす僕は一冊の淋しき詩集
可笑式(おかしき)
食物のイメージが入っている。森閑とした森閑の中の歌。

▪佐佐木先生の短歌というドラマ
歌に秘められたドラマをひも解き深く味わう
をり鶴のうなじこきりと折り曲げて風すきとほる窓辺にとばす
栗木京子「中庭(パティオ)」
「こ」「き」「り」硬質で切れのある音
「こきり」という一つの単語で人物像まで表現している
読み手に気持ちを思い出させる引き出しのトリガーが強い
今回の歌を深く味わうためにポイント
場面のみを‟きりとり“あえて‟言わない”ことで
読み手は想像の幅を広げられる

湯山玲子氏の言葉に対しての向き合い方
フレーズ師と呼ばれていた
目で見た時の「カタカナ」「漢字」「ひらがな」の組み合わせ
一発に来ることにエネルギーを費やした
小さい言葉で大きいパワーを与えていく

▪佐佐木先生からの宿題
題「折」で歌を詠んでください
腰折れて病院坂の足取りに不意に飛び込む恋人の嬌声(きょうせい)
湯山玲子
寺山修司「原風景」の人なのでびっくりする言葉を入れたかった

別案
ヘッドライトの悪
夏草のスメル
アスファルトの極熱

■短歌侍 武者修行!
今回の課題 歌の飛躍 
泣いていた幼い記憶のカラを割る赤い金魚は僕の手の中
矢花黎
底なしの沼へ僕らを誘い込む悪鬼(あっき)のごとく見上げる真鯉
元髙克樹 添削
底なしの沼へ僕らを誘い込む悪鬼のごとく真鯉が笑う

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