2026年8月17日月曜日

兼題「父」&テーマ「亡」

問題が押し寄せて来し残る蠅

送り盆我の心はいつ晴れん

秋の蚊や命守って疎まれて

スーパーの開店待ちの残暑かな

秋の陽や無風の空を見上げけり

 

NHK俳句 兼題「父」

選者:小川軽舟 ゲスト:浅田政志 司会:柴田英嗣

年間テーマ「暮らしを思い出す」

 

母と子の関係は絶対的 父は違う どうやって父のしての

存在を確立するか

 

・兼題「父」名句鑑賞

もの言はず墓参の父にライター貸す   大塚凱(がい)

父と息子は2人でいても気まずい話も弾まなくて寡黙

ライターを通して父と息子の間に情が通う

父と息子の情景をうまく描けている

 

ぶらんこを押してぼんやり父である   髙柳克弘

ぶらんこ:春の季語

 

母のもの捨つる終活父の汗   小川軽舟

 

・暮らしの中に俳句のタネを見つけよう!

鳥焼のトング構えて生ビール   小川軽舟

場所の雰囲気に読者をイメージさせる小道具を見つけるのが大事

トングと言われると焼肉をイメージ 右手にトング 左手に生ビール

焼けるのを待っている ウーロン茶より生ビールの方が読者の気をそそる

 

・特選六句 兼題「父」
湯上りの父を待ちをり冷ややっこ   二階堂慧(さとし)

笹担ぐ父が先頭星祭   赤井正子

娘には甘い父なり衣被(きぬかつぎ)   村瀬佐智子

宵闇(よいやみ)や無言の父と船を出す   坪田恭壱

(宵闇:月が出る前の暗さ)

健脚の父の徘徊夏あざみ   牧野紫陽花

橋ひとつ渡りて父と氷店   梶原マサ子

 

・特選三席 兼題「父」

一席 虹消えて父の大きな手が肩に   小澤光世

二席 新(にい)盆の父の机を拭きにけり   森野哲州(てっしゅう)

三席 杖の父戸口に待てる帰省かな   富島(とみしま)和子

 

・はみだせ!教室俳句

千葉大学教育学部付属中学校 大澤由紀先生

実体験を取り混ぜて俳句を作る ということをやってきました

句会 テーマ:中学生になった実感

中学生を実感できる俳句になっているか❓

季語の取り合わせは大丈夫か❓

ポイント 選んだ理由を言葉にする

 

教科書の重さを知りぬ夏の日に   杉山美月

花は葉に先輩の名を呼ぶ慣れて   氏家美宙

 

・写真家 浅田政志の一句

不器用にカメラもつ父もう師走   浅田政志

イメージが浮かぶ 読者のほうで物語にしてくれる季語が必要 小川

添削

不器用にカメラ持つ父夏休

夏休みにすることでいろんな物語が動き出す 

父親の気持ちは読者に伝わる 小川

多くの方の想像が膨らむ目からウロコでした 浅田

 

次回の兼題「今朝の秋」

選者:高野ムツオ ゲスト:原雅子 小坂大魔王 関取花 司会:柴田英嗣

 

NHK短歌 テーマ「亡」

選者:大辻隆宏 ゲスト:渡辺祐真(すけざね) 司会:尾崎世界観

年間テーマ「伝統的なことばを生かして」

 

渡辺祐真

高校生の時 国語の先生が桑原正紀という歌人だった

授業の一環で宮柊二記念館全国短歌大会にみんなで出そうと

小島ゆかりさんの選者賞で選んでいただいた

大辻隆宏

1首でも自分が作った事があるという体験は凄く大きい

 

今月のポイント「動詞~連体形の重々しさ~」

口語と文語では活用の仕方が違う

口語 過ぎる

文語 過ぐ 

「過ぐ」の活用 過ぎず 過ぎて 過ぐ 過ぐるとき 過ぐれども 過ぎよ

連体形 名詞などの体言につながる活用のかたち

「過ぎる(口語)」と「過ぐる(文語)」ではニュアンスが違う

「ぐる」というと言葉がくぐもっている感じ 重々しいニュアンスがこもる

 

新しき国興るさまをラヂオ伝ふ亡ぶるよりもあはれなるかな

土屋文明「山谷集」

昭和7年中国東北部に満州国が建国された

今は日本から傀儡(かいらい)とした国だといわれている

満州国の建国を祝う声がラジオから聞こえてくる

1つの国が滅んでいくよりもあわれな感じがすると思ったという歌

亡ぶる:連帯形 「こと」「とき」が省略されている

「亡びる」より「亡ぶる」のほうが重々しい

もやもやした土屋文明の重々しい暗鬱な気持ちが伝わってくる

 

・入選九首 題「亡」

二席 生活からの逃亡布を買う自由を奪わないようにする

栗原梨乃

亡き母の握るおにぎり手を離れ一瞬宙に静止していた

小谷貞代

一席 車椅子の父と枇杷の実眺めおり互いに母を亡くせしふたり

星田美紀

三席 亡くなってしまったほうの感性が影をつくっている、火のように

下谷育正(いくまさ)

1dayのレンズしずかに埋めおり今日のわたしの亡骸(なきがら)として

神守彩枝(かみもりさえ)

わかりそうだった話を聞いていると両手が机で亡くなっている

富樫直之

空港の片隅に散る亡命のかけらのようなさくらはなびら

yohei

君の知らぬ力士が賜杯(しはい)抱く春は君亡き世界のほんとのはじまり

さいとうすみこ

 腹水を抜いてあげればよかったとずしりとおもい亡骸を抱く

北乃銀猫

 

・短歌魔改造ラボ

古卓にロシアの文字のキズありて亡命者のひとり顕()ちてくるかな

橋本美知子

1917年にロシア革命が起こってソビエト連邦が成立して

ロシアに住んでいた方がたくさん日本に亡命してきた

歴史的な認識が深い歌 文語を一生懸命使いこなそうとして作られた歌

添削

卓にロシアの文字のキズありて亡命したるひとり顕()ちくる

 

亡命者の集団があってその中の一人 One of them

「亡命したるひとり」というと焦点が1人に当たる

その1人の人となりや 人生が浮かんでくる感じがする

この作者は1人の人間の来歴や苦悩にまで

想像が及んでいると感じられる 大辻

 

名詞から動詞になるというところが大きい

名詞は動作の方向や動きが出にくい品詞

「亡命したる」だと亡命をしてきたという動きがよく伝わってくる 渡辺

 

・渡辺祐真さんならではの短歌の読み方は?

短歌と向き合うレベル・単位がある 今、目の前に短歌が一首ある

一首だけで味わう 歌集全体の中でこの歌がどういう位置にあるか

歌集の単位で読む この歌人の全体のキャリアの中でこの一首は

どうなのか 3層で読むことをよくやる 

大辻

SNSで短歌が流れるようになって短歌の読み方がすごく変わった

1つの連作の中で1人の人物を読み解いていく そういう読み方が

主流だった SNS1首単位 背後に作者の像を置くという読み方が

期限切れになっている 音楽もそうかもしれない 

尾崎

サブスクは広まって アルバム単位では聞かれなくなっている

渡辺

最近はプレイリストという形で自分の好きな順番で聞ける

短歌もアンソロジーなどあるテーマで横串を刺す

歌の前後関係が見えなくなってしまう

大辻

自分のプレイリストみたいに短歌が鑑賞される

そういう読み方になってしまうかもしれない

尾崎

そういう中で作品を評論していく立場としては大変ですよね

渡辺

一首で言えることと作者全体で見たら言えないことが

ぶつかり合うことがある 「1首・1冊・1人」の読みの自由度を

比べたときに 1首のほうが自由そうに思われるかもしれないが

僕は逆だと思う 大きく読んでいった方がいろんな手がかりがある

その結果自由に読めて評論することのベースになる

 

・いちご摘み

手のひらの朽ちたるごときのあとを泰山木の樹下に踏みゆく

小原奈美(好きな歌人 葛原妙子)

うまれかわってなお揺りもどる藤の咲き揃(そろ)うことのない追想へ

湯島はじめ(好きな歌人 杉﨑恒夫)

第八回笹井宏之賞 山田航賞 を受賞

明けがたのサファイアノイズたったひとりに謝れるならいつのあなたへ

 

書いているうえでは どこにでも行けるし 何にでもなれる

子どもの母とかそういうものから ふっと離れて 

自分だけの時間っていう すごく大切な時間だと思います

うまれかわりっていうのがあったとして うまれかわったとして

そういうときにふって 前の記憶を思い出したりして そのとき

思い出すのは 満開の花じゃなくて なんとなく咲きそろわないとか

咲いていたり 今から咲くのもあったり 散ってしまったものがあったり

花も満開でめちゃめちゃ楽しかった ギラギラした1日よりも

花が咲きそろわないし 会話も盛り上がらなかったみたいな

 

摘んだのは「花」知らないけれどなつかしい

  

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