若布採る右へ左へしなりをり
建設と破壊を重ね風光る
上へ上へと延びる木蓮香を残し
深き愛?高き技術か?いとあおさ
■あの本、読みました?
ノーベル文学賞ハン・ガン&韓国女性作家の魅力を徹底解剖
鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔
宇垣美里 高山羽根子 古川綾子 いとうせいこう
ハン・ガンにハマった作家&翻訳家がその魅力を語りつくす
ノーベル文学賞 選考理由
歴史的なトラウマと対峙し人間の生命の儚さを露呈させた
迫力ある詩的な散文に対して
最初に読むべき本
すべての、白いものたちの ノーベル文学賞受賞
(エッセイなのか詩なのか連作なのか読み手が想像しながら味わえる作品
ハン・ガンさんの世界観が伝わってくる)
「白いもの」を目録に書きとめ紡がれた65の物語
生後すぐに亡くなった姉をめぐり
ワルシャワの街と朝鮮半島の記憶が交差
個人の痛みのむこう側に横たわる痛みを
詩的に凝縮された言葉で描いた傑作
「すべての、白いものたちの」の一文
ハン・ガン著 斎藤真理子訳/河出文庫
すべてのことは過ぎ去ると胸に刻んで歩むとき、
ようやく握りしめてきたすべてのものもついには
消えると知りつつ歩むとき、みぞれが空から落ちてくる。
雨でもなく雪でもない、氷でもなく水でもない。
ハン・ガンの独特の表現「みぞれ」
移ろい・無常をイメージするときに儚さはみぞれだった
「別れを告げない」の一文
ハン・ガン著 斎藤真理子訳/白水社
話もせず、顔を見合わせもせずに私たちは座っていた。
やかんの底からお湯が沸く音が聞こえてきたとき、
インソンが沈黙を破ってようやく尋ねた。
別れの挨拶をしないだけ?本当に別れないという意味?
まだやかんの注ぎ口から湯気が上がってはいなかった。
沸騰させるには、もう少し待たなくてはならない。
完成しないということなのかな、別れが?
白い糸のような蒸気がやかんの注ぎ口から漏れ出してきた。
ぴったり噛み合っていたふたがカタカタと音を立て、
半分くらい開いては閉まることをくり返した。
先送りにするということ?別れを?無期限に?
この部分はサービスショット いとうせいこう氏
ハン・ガンの作品に対する原動力とは❓
「別れを告げない」の一文
ハン・ガン著 斎藤真理子訳/白水社
私がけがをしたことはとくに知っていたって、そのとき母さんが言ったの。
病院から連絡が来る前にもうわかってたって。
私が盛り土から落ちたその晩に夢を見たと言ってた。
五歳くらいの私が雪野原に座っていて、
私の頬っぺたに雪が載っているのに、
不思議なことにそれが溶けないんだってよ。
夢の中でもぶるぶる震えてしまうほど怖かったんだって。
温かい子供の顔に降った雪がなぜ溶けずにそのままなのか、って。
「そっと静かに」ハン・ガン著 古川綾子訳/クオン
この作品は既に絶版になっていて日本語以外では訳されていないため
現在、読めるのは日本語訳のみとなっている
「そっと静かに」の一文
ハン・ガン著 古川綾子訳/クオン
中学二年の秋ぐらいから、家計は少しずつ上向いてきたようだった。
(中略)
中学三年に上がる直前の春休みが始まると、
両親が自分たちの部屋に来るようにと私を呼んだ。
おずおずと座る私に向かって父が言った。ピアノを習えと。
(中略)
もういいのだと私は言った。別に習いたくないと。
時間もないだろうしと。そのとき母が泣き出した。
私がじりじりと焼けつくような日差しの中、しゃがみこんで
母の顔だけを見つめていたときはあれほど冷淡に
口を閉ざしていた母が。父が言った。おまえが習いたくなくても、
母さんと父さんのために一年だけ通ってくれ。
そうじゃないと恨(ハン)になる。
(恨 韓国語では怒りの先の感情 心残り、後悔、無念を指している)
宇垣美里女史が最初に読むとよい本とは?
「菜食主義者」ハン・ガン著/きむふな訳/クオン
痛みへフォーカスした作品
「菜食主義者」の一文 ハン・ガン著/きむふな訳/クオン
「わたしは、お肉を食べないの」絶望した義母が箸を下ろした。
老いた彼女の顔は今にも泣きだしそうだった。
嵐の前の静けさのような静寂が流れた。義父が箸を取った。
酢豚をひとつ取ってテーブルを回り、妻の前に立った。
長年の労働で鍛えられた丈夫な、しかしながらどうしようもなく
腰の曲がった後ろ姿で、義父は酢豚を妻の顔に押し付けた。
「食べろ。おれの言うことを聞くんだ。みんなおまえのためなんだ。
それで病気にでもなったら、どうするつもりだ」
胸に染みる父親の愛情に、思わず目頭が熱くなった。
多分、その場にいた皆がそう感じていただろう。
しかし、目の前で静かに震えている義父の箸を妻は片手で押さえた。
「お父さん、わたしはお肉を食べないの」
瞬間、義父のごつい手のひらが宙を切り裂いた。
妻が両手で顔を覆った。
韓国女性作家の活躍の背景
「あなたのことが知りたくて」日韓作家12人のアンソロジー/河出文庫
テーマは「韓国・フェミニズム・日本」
羽田空港 蔦屋書店 総合売り上げTOP10 第一位
「移動する人はうまくいく新版・移動力」の一文 長倉顕太著/すばる舎
問題を引き起こす最大の原因は、「定住」ではないかと私は思っている。
(中略)
農耕が始まり、定住したことにより、権力が生まれた。
定住したから、領土という概念が生まれたし、
農耕により余剰の食べ物が生まれ、納税という概念もできた。
その段階でヒエラルキーが生まれたとも言える。
(中略)
ここでは腕力ではなく駆け引きがうまい人が上に行く。
まさに、人を蹴落としていけるような人たちがうまくいく。
デュマの書いた小説「モンテ・クリスト伯」の前半のように
うまく立ち回った人たちが権力を持つようになっていくわけだ。
「82年生まれ、キム、ジョン」
チョ・ナムジュ著 斎藤真理子訳/ちくま文庫
「アーモンド」ソン・ウォンビョン著/矢島暁子訳/祥伝社文庫
2020年本屋大賞 翻訳小説部門第1位
「フィフティ・ピープル新版」
チョン・セラン著 斎藤真理子訳/亜紀書房
痛くておかしくて悲しくて愛しい
50人のドラマがあやとりのように絡まり合う物語
韓国文学の底辺には社会意識が存在している
建設と破壊を重ね風光る
上へ上へと延びる木蓮香を残し
深き愛?高き技術か?いとあおさ
■あの本、読みました?
ノーベル文学賞ハン・ガン&韓国女性作家の魅力を徹底解剖
鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔
宇垣美里 高山羽根子 古川綾子 いとうせいこう
ハン・ガンにハマった作家&翻訳家がその魅力を語りつくす
ノーベル文学賞 選考理由
歴史的なトラウマと対峙し人間の生命の儚さを露呈させた
迫力ある詩的な散文に対して
最初に読むべき本
すべての、白いものたちの ノーベル文学賞受賞
(エッセイなのか詩なのか連作なのか読み手が想像しながら味わえる作品
ハン・ガンさんの世界観が伝わってくる)
「白いもの」を目録に書きとめ紡がれた65の物語
生後すぐに亡くなった姉をめぐり
ワルシャワの街と朝鮮半島の記憶が交差
個人の痛みのむこう側に横たわる痛みを
詩的に凝縮された言葉で描いた傑作
「すべての、白いものたちの」の一文
ハン・ガン著 斎藤真理子訳/河出文庫
すべてのことは過ぎ去ると胸に刻んで歩むとき、
ようやく握りしめてきたすべてのものもついには
消えると知りつつ歩むとき、みぞれが空から落ちてくる。
雨でもなく雪でもない、氷でもなく水でもない。
ハン・ガンの独特の表現「みぞれ」
移ろい・無常をイメージするときに儚さはみぞれだった
「別れを告げない」の一文
ハン・ガン著 斎藤真理子訳/白水社
話もせず、顔を見合わせもせずに私たちは座っていた。
やかんの底からお湯が沸く音が聞こえてきたとき、
インソンが沈黙を破ってようやく尋ねた。
別れの挨拶をしないだけ?本当に別れないという意味?
まだやかんの注ぎ口から湯気が上がってはいなかった。
沸騰させるには、もう少し待たなくてはならない。
完成しないということなのかな、別れが?
白い糸のような蒸気がやかんの注ぎ口から漏れ出してきた。
ぴったり噛み合っていたふたがカタカタと音を立て、
半分くらい開いては閉まることをくり返した。
先送りにするということ?別れを?無期限に?
この部分はサービスショット いとうせいこう氏
ハン・ガンの作品に対する原動力とは❓
「別れを告げない」の一文
ハン・ガン著 斎藤真理子訳/白水社
私がけがをしたことはとくに知っていたって、そのとき母さんが言ったの。
病院から連絡が来る前にもうわかってたって。
私が盛り土から落ちたその晩に夢を見たと言ってた。
五歳くらいの私が雪野原に座っていて、
私の頬っぺたに雪が載っているのに、
不思議なことにそれが溶けないんだってよ。
夢の中でもぶるぶる震えてしまうほど怖かったんだって。
温かい子供の顔に降った雪がなぜ溶けずにそのままなのか、って。
「そっと静かに」ハン・ガン著 古川綾子訳/クオン
この作品は既に絶版になっていて日本語以外では訳されていないため
現在、読めるのは日本語訳のみとなっている
「そっと静かに」の一文
ハン・ガン著 古川綾子訳/クオン
中学二年の秋ぐらいから、家計は少しずつ上向いてきたようだった。
(中略)
中学三年に上がる直前の春休みが始まると、
両親が自分たちの部屋に来るようにと私を呼んだ。
おずおずと座る私に向かって父が言った。ピアノを習えと。
(中略)
もういいのだと私は言った。別に習いたくないと。
時間もないだろうしと。そのとき母が泣き出した。
私がじりじりと焼けつくような日差しの中、しゃがみこんで
母の顔だけを見つめていたときはあれほど冷淡に
口を閉ざしていた母が。父が言った。おまえが習いたくなくても、
母さんと父さんのために一年だけ通ってくれ。
そうじゃないと恨(ハン)になる。
(恨 韓国語では怒りの先の感情 心残り、後悔、無念を指している)
宇垣美里女史が最初に読むとよい本とは?
「菜食主義者」ハン・ガン著/きむふな訳/クオン
痛みへフォーカスした作品
「菜食主義者」の一文 ハン・ガン著/きむふな訳/クオン
「わたしは、お肉を食べないの」絶望した義母が箸を下ろした。
老いた彼女の顔は今にも泣きだしそうだった。
嵐の前の静けさのような静寂が流れた。義父が箸を取った。
酢豚をひとつ取ってテーブルを回り、妻の前に立った。
長年の労働で鍛えられた丈夫な、しかしながらどうしようもなく
腰の曲がった後ろ姿で、義父は酢豚を妻の顔に押し付けた。
「食べろ。おれの言うことを聞くんだ。みんなおまえのためなんだ。
それで病気にでもなったら、どうするつもりだ」
胸に染みる父親の愛情に、思わず目頭が熱くなった。
多分、その場にいた皆がそう感じていただろう。
しかし、目の前で静かに震えている義父の箸を妻は片手で押さえた。
「お父さん、わたしはお肉を食べないの」
瞬間、義父のごつい手のひらが宙を切り裂いた。
妻が両手で顔を覆った。
韓国女性作家の活躍の背景
「あなたのことが知りたくて」日韓作家12人のアンソロジー/河出文庫
テーマは「韓国・フェミニズム・日本」
羽田空港 蔦屋書店 総合売り上げTOP10 第一位
「移動する人はうまくいく新版・移動力」の一文 長倉顕太著/すばる舎
問題を引き起こす最大の原因は、「定住」ではないかと私は思っている。
(中略)
農耕が始まり、定住したことにより、権力が生まれた。
定住したから、領土という概念が生まれたし、
農耕により余剰の食べ物が生まれ、納税という概念もできた。
その段階でヒエラルキーが生まれたとも言える。
(中略)
ここでは腕力ではなく駆け引きがうまい人が上に行く。
まさに、人を蹴落としていけるような人たちがうまくいく。
デュマの書いた小説「モンテ・クリスト伯」の前半のように
うまく立ち回った人たちが権力を持つようになっていくわけだ。
「82年生まれ、キム、ジョン」
チョ・ナムジュ著 斎藤真理子訳/ちくま文庫
「アーモンド」ソン・ウォンビョン著/矢島暁子訳/祥伝社文庫
2020年本屋大賞 翻訳小説部門第1位
「フィフティ・ピープル新版」
チョン・セラン著 斎藤真理子訳/亜紀書房
痛くておかしくて悲しくて愛しい
50人のドラマがあやとりのように絡まり合う物語
韓国文学の底辺には社会意識が存在している
0 件のコメント:
コメントを投稿