2025年2月23日日曜日

あの本、読みました? 三宅香帆 川添愛 ふかわりょう

姫すみれ眉山の日陰ひとりぼち
今年こそ友の風船盛大に
春菊の高き香りの亡き母の
掛け合わされた春の蜜柑や届きけり
古草や恵みの雨に葉を打たれ

■あの本、読みました?
「好きを言語化する技術」三宅香帆…今ブーム!言語の本特集
三宅香帆 川添愛 ふかわりょう 鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔P

チンパンジーと人間の違いは❓
「言語の本質 言葉はどう生まれ、進化したか」の一文
今井むつみ 秋田喜美著/中公新書
アイは訓練を受けて、異なる色の積み木にそれぞれ対応する記号(絵文字)を
選ぶことができる。黄色の積み木なら△、赤の積み木なら◇、
黒の積み木なら○を選ぶという具合である。
(中略)
だがアイは、訓練された方向での対応づけなら難なく正解できるのに、
逆方向の対応づけ、つまり異なる記号にそれぞれ対応する積み木の色を
選ぶことが、まったくできなかったのである。
*「アイ」は実験に参加したチンパンジー
(中略)
だが、よくよく考えてみると、この一般化は論理的には正しくない。
「AならばX」は、「XはならばA」と同じではない。
このことは、「ペンギンならば鳥である」が正しくても、
「鳥ならばペンギンである」は正しくならないことからすぐわかることだ。
アイが「黄色い積み木は△、赤い積み木は◇」と学習しても、
「△は黄色い積み木、◇は赤い積み木」と選べないのは、
論理的にはまったく正しいのである。

人間は非論理的だから言語を習得
執筆のきっかけは❓三宅香帆

『「好きを言語化する技術」
推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』の一文
三宅香帆著/ディスカヴァー携書
「クリシェ」という言葉を聞いたことがありますか❓
ある言葉がいろいろな場面で乱用されたことで、
その言葉の本当の意味や新しさが失われてしまったことを指す用語です。
ありきたりなシチュエーション。ありきたりな台詞。
ありきたりな言葉。それらをフランス語で「クリシェ」と呼びます。
日本語には、残念ながらクリシェにあたる用語はありません。
あえて挙げるなら「常套句」でしょうか?
もしくは「ありきたり」という言葉が一番近いかもしれません。
このクリシェは感想を話したり文章を書いたりするにあたって、
最も警戒すべき敵です。クリシェこそが、あなたの感想を奪うんです!

言語化の敵は「クリシェ」
推しを言語化する「細分化」解像度を細かく上げていく
「言語」の本が流行っている理由 テキストコミュニケーションへの憧れ
言葉への不安と期待が高まっている 言葉は「ファッション」
言語化は価値観・生き方をまとうこと

「日本語界隈」の一文 川添愛 ふかわりょう著/ポプラ社
ふかわ:心配していることがあるんですけど。
    今ね、忖度が悲嘆にくれているんですよ。
    何度か彼と飲みに行ったことがあるんですけど、
    やっぱり思い悩んでいて…。
川添:忖度さんがですか?(笑)
ふかわ:ええ。皆の自分を見る目が変わってしまった。
    昔はこんなふうに冷たい目を向けられていなかったと
    悩みを吐露していたので、どうしたものかと。

言葉の意味の変化「忖度」
言葉の意味の変化「貴様」「お前」
最近気になる「~感」 「予算感」「ギャラ感」の使い方 「テンション感」
「SVO」と「SOV」

「日本語界隈」の一文 川添愛 ふかわりょう著/ポプラ社
ふかわ:断定を避ける曖昧な表現も否定か肯定かも最後まで
    聞かないとわからない文法も、日本人はそういうスタイルを
    選んで、今日に至るわけですよね。
川添:そうですね。ただ、世界の言語で言うと、日本語と同じく、
   最後まで聞かないと結論がわからないSOV型、つまり
   「主語-目的語-述語」型の言語の割合は
   約四十パーセントだそうです。意外に多いんですよ。
ふかわ:え!それは初めて聞きました。
川添:ちなみに英語、中国語、フランス語のようなSVO型、
つまり「主語-述語-目的語」という語順を持つ言語は
   三十五パーセントほど。韓国語、トルコ語も日本語型。

とにかく明るい安村 「はいてますよ」を言語で考案
言葉の置き換え

「日本語界隈」の一文 川添愛 ふかわりょう著/ポプラ社
ふかわ:荷物で思い出したのですが、「魔女の宅急便」の原作者の
    角野栄子さんは最初、「宅急便」がヤマト運輸の登録商標だと
    いうことを知らずにタイトルをつけたらしいですね。
    でも、それでよかった。
    「魔女の宅急便」だとピンときませんよね(笑)。

ふかわ:「深まる」のは秋だけですよね。「冬が深まる」
    「夏が深まる」は言わないように、こういうところに
    「日本語は繊細だけど頑固だな」と感じているんです。

感覚としてのフィット感 夜が更ける
言語の共通認識を壊した「枕草子」当時は革命的だった
三島由紀夫 驚きの「言語」
「潮騒」の一文 三島由紀夫著/新潮文庫
「あたしの顔、そんなに醜い?」千代子は暁闇が自分の顔を護って、
ほんの少しでも美しく見えることをねがった。
しかし海の東のほうは、心なしかすでに白んでいた。
新治の返答は即座であった。彼は急いでいたので、
おそすぎる返事が少女の心を傷つける事態から免かれた。
「なあに、美しいがな」と彼は片手を艫(とろ)にかけ、片足ははや
躍動して、舟に跳び移ろうとしながら云った。「美しいがな!」
新治がお世辞を云えない男だということは誰しも知っている。
ただ彼は急場の質問に、急場の適切な返事で答えたのである。
舟がうごきだした。彼は遠ざかる舟から快活に手を振った。
そうして岸には幸福な少女が残った。

言語学者・川添愛 オススメの本は?
「真剣師 小池重明」/団鬼六著/幻冬舎アウトロー文庫
プロ騎士を次々となぎ倒し❝新宿の殺し屋❞と呼ばれた
伝説の将棋ギャンブラーの破滅の軌跡を描く傑作長編

●「音のない言語」を考える小説
一色さゆり
「音のない理髪店」一色さゆり著/講談社
実話を元にしたフィクション エンターテイメント小説

「音のない理髪店」の一文 一色さゆり著/講談社
「ろう者には日本語に自信のない人が多いんです。
だから学校や職場でつらい目に遭うそうです。
ろう者といえば、筆談すればいいんだろうと
勘違いされる分、つらいんでしょうね」
(中略)
「聴者はイメージがしづらいんですが、じつは生まれてから
ずっと日常会話を聞いているから日本語を意識せずに使えるんですよね。
赤ちゃんは言語獲得期と呼ばれるあいだに、およそ一万五千時間も
自然に日本語が耳に入るとされます」「一万五千時間も」と、私は呟く。
「はい。けれど、ろう者は違います。聞いたこともない言語を、
正しく理解しているのかもわからないまま、目で追っていくしかない。
たとえば、「あ」という音がどんな音かもわからずただ記号として
暗記するしかないんです。だから聞こえる人の何倍もの
努力が必要になるし、苦手意識を持つのはごく当たり前のことです」

文字だけでは伝わらない 伝えられない苦しさ

「音のない理髪店」の一文 一色さゆり著/講談社
「どうでしたか、初回は?」訊ねながら、校長はお茶をすする。
「前途多難です。そもそも理髪とはなんなのかをわかって
もらうことさえできませんでした」
「なるほど。どうして生徒たちは、
理髪のことを理解できなかったのだと思いますか?」
栄次郎は「それは」と返答に詰まる。
「訊き方を変えましょう。
なぜそのやり方では、彼らには難しいのでしょうか」
「共通認識が少ないのかもしれません。彼らは理髪店で髪を切ったことも
顔剃りをしてもらったこともないので想像ができないのかと」
背いたあと、秋本校長はほほ笑んだ。
「たしかに人は言語を手に入れると、世界をより具体的に、
正確に捉えられるようになります。しかし感覚や経験よりも、
言語が先にあってはならないのです。教育においてそのことが
いかに重要か、私は身をもって学んできました」
つねに感覚の方を、言語よりも優先させるー。
その瞬間、手探りだった栄次郎の脳裏に、一筋の光が射した。

聴覚障害は「人と人を隔てる障害」
コーダ:ろう者の親のもとで育つ聞こえる子どものこと
コーダの本音「不便でも不幸でなかった」

一色さゆりのオススメの本
「プルーストとイカ」読者は脳をどのように変えるのか?
メアリアン・ウルフ著小松敦子訳/インターシフト
読字に関する最良図書として「マーゴット・マレク賞」を受賞した
言語好きには堪らない1冊

ディスレクシア
文字を読むことに困難がある障害を指す通称
難読症 識字障害 読字障害のこと
レオナルド・ダ・ビンチ アインシュタイン トム・クルーズが
これらの障害を持っていたことはよく知られている…。

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