2025年2月28日金曜日

バターで一句&尻文字三角パス②&源頼朝

暮れかぬる生きる知恵は副産物
春の闇自分らしさを教えられ
春の香己の武器は快不快
アンテナ張りて気づく違和感春陽
山笑う10年経てば皆無なり

■プレバト纏め 2025年2月27日
バターで一句
・特別永世名人 締めのお手本 梅沢富美男
蓋かぶせアサリバターを黙らせる
添削(あとちょっと臨場感が欲しい 蓋はかぶせるもの)
ここで蓋アサリバターを黙らせ

・永世名人 俳句史に残る句集作り 千原ジュニア
笊(ざる)に土筆手鍋耀(かがよ)うバターの香
(耀うの位置が良い 耀う:きらきら光って揺れる
 金色に溶けてきらきら バターの香りが揺れるように
 立ちあがってくる バターの香りの描写として機能している
 材料は多いけれどよくここまでまとめた)

一位 三宅香帆
春宵(しゅんしょう)や初稿とエシレバター缶
(エシレバター:フランスのエシレ村で生産された高級バター
 初稿を頑張った自分のためのご褒美 とっておきの物
 俳句の骨法・メカニズムを理解している)

二位 西村真二
2番線春風運ぶバターの香
添削(逆から行く方法もある 
   先に香りを濃厚に見せて春風が気持ち良く吹く空間)
バターの香はこぶ春風2番線

三位 安藤和津
大蒜(にんにく)のたっぷりバターは罪作り
添削(語順が散文的 詩情に乏しい)
罪作りバターに焦がす大蒜

四位 トラウデン直美
はるかより愛の菓子待つ陽春や
添削(愛の日:春の季語 バレンタインデーのこと)  
陽春やドイツの祖母の愛の菓子

五位 小山慶一郎
春隣姉と甥とバター待つ
添削(全く関係のない字面)
春隣バターの溶けてゆく時間

■夏井いつき俳句チャンネル
【第10回尻二字三角パス②】いよいよ作句編スタート!【「かな」】

かなんなあもひとつバナナ付けたるわ   みづちみわ
ルワンダの国旗のやうな冬あをし   ローゼン千津
鴛鴦のみづこそ清し雲はやし   夏井いつき
香具師のきて米菓子と桃買ひにけり   家藤正人
けりつけて飛び出す町や霰ふる   ローゼン千津

■偉人・敗北からの教訓 
第81回「源頼朝・源氏将軍家滅亡を招いた鎌倉殿」

源頼朝 敗北の伏線
過度の威圧感は人を委縮させてしまい
組織全体が疑心暗鬼に陥りかねません

源頼朝 敗北の瞬間
一旦手に入れた権力はどんな手を使っても守り抜く
利己的な考えは周囲の反発を招いてしまいます

源頼朝の敗北から学ぶ教訓
過剰な猜疑心は自らの墓穴を掘ることに!

2025年2月27日木曜日

100分de名著 デュルケーム❝社会分業論❞(3)(4)

陽炎よ幸せだけを思い出せ
あくまでも仮設は仮設暮れぬかる
帆を上げて風受け進め春の潮
生きてゆくことの苦しみ姫すみれ
集まると悪は正義へ春の泥

■100分de名著 デュルケーム
❝社会分業論❞(3)「連帯」とそれをはばむもの
芦田徹郎 伊集院光 阿部みちこ

分業は対立させると同時に結合させる。
それは、みずからが分化させた諸活動を収斂させ
ひき離したものを接近させる。
個人は、みずからを他者から区別する個性的な相貌と
活動力とを持っていて、その区別されるかぎりにおいて
他者に依存し、したがってまた、そうした結合から
生じた社会に依存するから社会化されるのである。
訳 田原音和「社会分業論」

諸個人は分業によってこそ相互に結びあっているのであって、
それがなければ孤立するばかりである。
彼らは、てんでに発達する代わりに自分たちの努力をもちよる。
彼らは連帯的である。

上記を「有機的連帯」と名付けました。
依存という言葉でも表現している。
有機的連帯は依存関係である
「分業」の3形態 協同 交換(売買) 競争

アダム・スミス(1723~1790)
分業は経済効率を高める

より多くの❝絆❞と考えた

分業は経済の領域にのみ特有のものではない。
社会の種々さまざまな領域にもその影響が
ますます増してゆくのがみられる。
すなわち、政治、行政、司法の諸機能は、いよいよ専門分化
してきているし、芸術、科学の諸機能についても同様である。

「分業」は❝絆❞を作るもの
「分業」が人々の対立をうむ 3つのケース
アノミー 無規制的分業
この例外的形態の第一の例をあげれば、商工業の恐慌がそれであり、
有機的連帯の部分的崩壊ともいうべき倒産がそれである。
もっと人目をひく例は、労働と資本の対立である。
産業的諸機能がさらに、専門化するにつれて、
連帯が増すどころか、両者の闘争はより激烈になる。

拘束的分業
しかしながら、準則があるというだけでは十分でない。ときには
これらの準則自体が悪の原因であることがあるからである。
階級やカーストの制度はなるほど分業の一組織を構成する。
しかもその組織はきっちりと規制されている。
だが、しばしばこの組織は紛争の根源である。

その他の異常形態
分業の異常形態 客観的な連帯≠連帯感

現代の「分業」問題を考える
① 分業の巨大化・グローバル化
② 分業の細分化
③ 分業の流動化

■100分de名著 デュルケーム
❝社会分業論❞(4)「個人の自立」と「連帯」の両立―依存の復権に向けて
芦田徹郎 伊集院光 阿部みちこ

❝人々の連帯❞❝人と人がつながる❞ヒント
我々の存在は依存がまずある
絆 同じ人間である 

それは利己主義を原動力としているのではなく、
人間的なものすべてへの共感、人間のあらゆる苦悩、
あらゆる悲惨に対する、より大きな憐憫(れんびん)、
そして、それらと戦い、それらを軽減することへの、
より熱心な欲求、また正義へのさらに大きな渇望を原動力としている。
「社会科学と行動」訳 佐々木交賢 中嶋明勲 

❝同じ価値観❞を持つ集団

集団というものは、その成員の生活を牛耳る
道徳的権威だけではないのである。
その生活そのものの源泉なのである。
人びとの心を熱くし、いきいきとさせ、共感の気持をいだかせ、
利己的な気持をやわらげるあの温情は、集団からでてくるのである。
「社会分業論」訳 田原音数

「新しい中間集団」は在ったのか?
社縁 依存する場所が必要 

ひとはその劣っていると あなどる当のものたちの
共感、尊敬、称賛を欲する。
そのためには孤立することをやめなければならない。
彼の背後にいる大衆の方へ顔を向けなければならない。
「偉人の社会的役割」訳 浜口晴彦

人間の活動が、いっさいの拘束から自由になることができると
考えるのはまちがっている。
そんな特権を享受できる者はだれもいない。
それは、すべての存在がこの宇宙の一部分をなし、
その他の部分と一定の関係を持っている以上、必然のことである。
したがって、存在の本質やそれがしめす存在様式は、
それ自身にもとづいているばかりではなく、それを抑制し、
規制している他の存在にも依存している。
「自殺論」訳 宮島喬

「依存」本質的なつながり
あらゆるものは相互に「依存」する
「自律」の前提として「依存」がある
一方的にもたれかかるのは癒着・従属である
「依存」と「自律」の関係とは?

自律的経済人としてロビンソン・クルーソーがあげられる
ロビンソン・クルーソーは島で一人で生活できたのは
それまでに生活の知識・信仰・規律を学んだいたから
物理的には一人で生活はしていたが
精神的には社会の依存し繋がっていた
社会に依存していたからこそ自立することができた

社会はわれわれ自身の実在の一部をなしており、
ある意味では、我々自身のもっともよき部分であるがゆえに、
社会と我々とはもっと緊密でもっとも強靭な
絆によってむすばれているのである。
「道徳教育論」訳 麻生誠 山村健

「社会的強者」は❝社会❞に依存できた人
「社会的弱者」は❝社会❞に依存できなかった人
自律⇔依存
当事者研究 自立とは依存先を増やすこと
自律している状況は何ものにも依存しないのではなく
かと言って少数のものに依存するのも違っていて
なぜなら少数のものから裏切られたらひとたまりもないから
それは自立とはいえない そうではなくひとつのものから
裏切られても大丈夫なほどにたくさんのものに依存している状況
これがおびえずに しかし頼りながら自立するために
とても重要な状況だ というのがこれまで発信してきたこと
多様な依存先が薄く広く数多くあること

小さな依存がつながってひとつの社会が出来ていく

2025年2月26日水曜日

令和相聞歌&「バレンタインデー」&尻文字三角パス①&「猫の眼草」&徒然草&俳句

曖昧な記憶辿りてしみ返る
記憶違いか?薄れる記憶春の霜
それぞれの三十年や春の風
陽炎(かげろう)や悲喜交々の三十年
被災地の希望ではなく吾の春

■ギュッと四国!
今年の「令和相聞歌」
最優秀賞
 助手席の位置を戻して夏終わる   高須賀眞美子

第6回(令和6年度)結果発表⇩
https://www.reiwasoumonka.com/result_smp.asp?ContestYY=2024

▪家藤正人の俳句道場
兼題「バレンタインデー」(春の季語)
季語としては「バレンタインデー」「バレンタインの日」。
傍題には「愛の日」に加え、「バレンタイン」も今回は許容して選句。

・ギュッと!特選
心臓にN゚5(5番)を聖バレンタイン   かいみきまる

・放送された俳句
佳作 道具箱下駄箱バレンタインデー   うどん道
初恋やママ手助けのチョコ贈る   近藤きてね
「居ない歴」更新のバレンタインデー   瀬戸姫
佳作 慣れつこやバレンタインの日の蹉跌   満月
(「蹉跌(さてつ)」とは物事がうまく進まず、しくじること。
バレンタイン父には失敗作のチョコ   ごまき
秀作 愛の日の引き返せないキャラメリゼ   七瀬ゆきこ
(キャラメリゼとは、砂糖などを火で炙ってカラメル状にすること。)
まずカカオ育てよバレンタインデー   藤井春
佳作 売場白しきのふはバレンタインデー   らん丸
DMとカミングアウトバレンタインデー   まっちゃこ良々
(DMとは、「糖尿病(diabetes mellitus)の略称のこと。」
佳作 づかづかと来て友達にバレンタイン   高橋寅次
秀作 バレンタインデーファラオに偉大なる虫歯   長谷川水素
(一説によれば古代エジプトを治めたファラオは虫歯だった可能性があることから…。)
秀作 プロミスの綴り調べるバレンタイン   菜々乃あや

・正人のもったいない
(ポイント)語順を大切に
バレンタインデー妻からはボンボン   よっちゃん
添削
妻からはボンボンバレンタインデー

電柱の影から突撃愛の日よ   うにか
添削
電柱の影いま愛の日突撃す

次回は「萵苣(ちしゃ)」春の季語
食べ物はおいしそうに詠むのが基本

参照:https://www.nhk.jp/p/gyuttoshikoku/ts/7MXVZZ52K3/blog/bl/pKyjJXApJB/

■夏井いつき俳句チャンネル
【第10回尻二字三角パス①】次のお題になるのはどの句?【「かな」】
四天王寺に吾子を抱く春着かな   ローゼン千津
金網の冷たし練習機轟々   北里有季
哀しみの穀として畳む紙風船   広島じょーかーず
仮名草子春は安易な恋もしき   夜汽車
かなんなあもひとつバナナ付けたるわ   みづちみわ
金盥(たらい)がごんままこのしりぬぐい   川越羽流
かなかなに母は睡りて子は覚めて   BABA
カナリアのような伯母なり春日傘   春海凌
かな書きの祖母の日記や万年青の実   アロイジオ
かなしいのはあなたのほうよさくらんぼ   銀紙
金沢の酒はうまいと相撲取   Q&A
かなしみを吸うては吐くに息白し   桂子

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「猫の眼草」

名前の時点で猫好きの人にとっては 
何それ、好き!ってなる人もいるかもしれないですね 
「猫の眼草」というのはユキノシタ科の仲間ぬなるそうです
水が少し流れているようなちょっと湿った所に
群れを作って生えるそうです 「猫の眼草」という
名前からして可愛らしいのかなと思うんですけれど
いざ画像を調べてみると結構地味なお花のようです
薄黄色の花ではあるのですがかなり緑に近いような
色合いになっています 実がなったときにその実の所に
縫い合わせたような線が入っておりまして
それが熟してくるとパカっと裂けてその裂けた状態が
猫の眼のように見えることから「猫の眼草」という名前が
ついたそうです 実際にどんな所に生えているのか
山を歩いて探してみたいところです

■10min.ボックス古文・漢文 徒然草(兼好法師)
つれづれなるままに、日くらし硯にむかひて、
心にうつりゆくよしなし事を、
そこはかとなく書きつくれば、
あやしうこそ ものぐるほしけれ。

よき友三つあり。一つには、物くるる友。
二つには、医師(くすし)。三つには、智恵ある友。

手のわろき人の、はばからず 文書きちらすはよし。
みぐるしとて、人に書かすは うるさし。

「徒然草」が生まれるまで
「人は何として仏には成り候ふやらん」

蟻のごとく集まりて、東西に急ぎ南北に走る。
高きあり、賤しきあり。老いたるあり若きあり。
営む所何事ぞや。生を貪り利を求めてやむ時なし。

孤独と自由が生んだ思索 お気に入り
つれづれわぶる人は、いかなる心ならん。
まぎるるかたなく、ただひとりあるのみこそよけれ。

花はさかりに、月はくまなきをのみ 見るものかは。

咲ぬべきほどの梢、散りしをれたる 庭なぞこそ 見所多けれ。

虚空よく物をいる。
吾等が心に念々の ほしきままに来り浮ぶも、
心といふものの なきにやあらん。

心に主あらましかば、胸のうちに、
若干(そこばく)のことは 入り来らざらまし

つれづれなるままに、日くらし硯にむかひて、
心にうつりゆくよしなし事を、
そこはかとなく書きつくれば、
あやしうこそ ものぐるほしけれ。

■10min.ボックス現代文 俳句
柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺   正岡子規
いくたびも雪の深さを尋ねけり   正岡子規

近代俳句の父 文学と位置付けた 正岡子規(1876-1902)
芸術の域に広めたのが松尾芭蕉

古池や蛙飛び込む水のおと   松尾芭蕉

卯の花の散るまで鳴くか子規   正岡子規

あと9年と死期を悟った子規 「俳句分類集」
写生 絵画に持ち入れられていた手法を俳句に取り入れた
見たまま感じたままを言葉にした 新しい表現を生み出そうとした

赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり   正岡子規
若鮎の二手になりて上りけり   正岡子規

「ホトトギス」(東京版)第1号
夏目漱石 も文学者として育った

菫ほどな小さき人に生れたし   夏目漱石

糸瓜咲(さい)て痰のつまりし仏かな   正岡子規

子規からつながる人々
高浜虚子 「ホトトギス」を受け継ぐ 季語と定型 花鳥風月を詠んだ
春風や闘志いだきて丘に立つ

川東碧梧桐 新聞の俳句欄を引き継ぐ 定型から次第に離れていく
赤い椿白い椿と落ちにけり   川東碧梧桐
谺(こだま)して山時鳥ほしいまま   杉田久女
分け入っても分け入っても青い山   種田山頭火

2025年2月25日火曜日

兼題「春泥」&テーマ「ありがとう/うれしいです」

電線にしがみつきたる春の鳥
閉じた目や鳥を直撃春の風
鳥の恋気配感じて距離保ち
好き勝手生きる人生石鹸玉
無駄遣いさせる人をり春の暮

■NHK俳句 兼題「春泥」
選者:高野ムツオ ゲスト サンキュータツオ 浅川芳直 角谷昌子
レギュラー:中西アルノ 司会:柴田英嗣
年間テーマ「語ろう!俳句」

春泥:田んぼや山の泥より町や都会の泥といったイメージ
比較的新しく使われた季語 いろんな場面・シチュエーションで
春の雪解けの泥なので今まで凍っていたところがゆったりと
軟らかくなったというイメージで詠むと良い

① 春泥をミッキーマウス歩きにて   高野ムツオ
② 春泥の祝福受けてボンネット   サンキュータツオ
③ 春泥の湖国(ここく)に訪(と)へり観世音   角谷昌子
④ 春泥の行手(ゆくて)かがやく人も木も   浅川芳直
⑤ 春泥や荼毘(だび)の煙も雲になり   中西アルノ

・特選三席発表 兼題「春泥」
一席 春泥を見合い話のやって来し   冨田裕明(ひろあき)
二席 会葬のみな春泥の人となる   原田香伯(こうはく)
三席 春泥に逢う東京のど真ん中   荒木信夫

特選 
春泥や嘶く長き睫毛にも   松﨑映子
春泥に刺さる新聞紙のつるぎ   葉村直
泥や二人ではこぶベビーカー   木原真一郎
国生みの名残のごとく春の泥   川嶋克弘
引越しの荷に春泥の指の跡   阿部勉
春泥をひらり出生届手に   仮名鶫
参照:https://www.nhk.jp/p/ts/6Q6J1ZGX37/blog/bl/pLvva3ZRZL/bp/pXr090lNaR/

■NHK短歌 テーマ「ありがとう/うれしいです」
選者:枡野浩一 ゲスト:大島育宙(やすおき)  東京大学出身 
寺井舘哉氏(NHK短歌の選者)は双子の兄 司会:尾崎世界観
年間テーマ「あなたへの手紙 かなたへの手紙」

Positiveな肯定的な言葉を短歌に入れ込む試み

誕生日ありがとうまた再会のように初めて会えますように
枡野浩一

大島育宙氏の感想
枡野さんの短歌には発明とか工夫が具体的に入っている
鑑賞はできるけどまねはできない もどかしさを感じる

・31音の手紙 入選九首 テーマ「ありがとう/うれしいです」
二席 連絡をとってよかった友達のとまらぬ話をほくほくと聞く
葉月ままこ
うれしいを連呼してます坂道をでんぐり返りする勢いで
常田瑛子
昨日から私彼女になったからございますって付けなくて済む
仲川暁実
バスを降りる誰もが「ありがとう」を言うこういう町に暮らしてみたい
中村聡
三席 ありがとうミスやピンチで現れてヒントをくれた小太りの人
高垣満枝(みつえ)
食卓に夫(つま)が胡桃を割りはじめ子栗鼠の気分でまてる私
鈴木綾子
喜びが収まりきれずはみ出してしまったようなたい焼きの餡
富尾智佐
ありがとういいねを押してくれた他人午前三時にも世界はあるのね
さとうきいろ
一席 私 母さんはここに写ってないけれど居るってわかるみんなの顔で
葉山あも

・改悪添削
頭髪の奇抜な人にありがとう地球(地獄)に彩(さい)を与えてくれて
藤木真紀
頭髪の奇抜な人にありがとう地元に彩(さい)を与えてくれて
いろんな規模で考えていくのが大事
自分と違う価値観の人に届くかどうか気にして欲しい
当たり前のように良いことだと思ってしまっていると
そう思っていない人たちを説得できない
この言葉で人の気持ちを変えることができるかを意識する

大島育宙氏の短歌
手震わせ光の中で囁いた君の5文字は僕の5文字だ
大島育宙
踏ん切りをつけることが苦手
いくつかの候補からどのように決断するのか❓
日常会話に求められている厳密性とは違う世界

枡野浩一
人生につまづいて挽回しようとするときに表現が生まれる
短歌はたくさん作って良いものだけが残っていく

尾崎世界観
出てこなくなるまでやる

・言葉のバトン
志望校僕だけ落ちて歯を見せる
麻布競馬場(小説家)

あらたな道へ心機一転
八木冨美子(江北氷川神社名誉宮司)
奉排
焦らずと心にきざみ慌てずに諦めることなく侮らず
汝こそ数多の苦難ふみこえて輝いてみよや人の世の道
人はみな歩む早さはちがっても人それぞれにそうた早さで
足立区 江北氷川神社名誉宮司 八木冨美子
(浮かんだ言葉を)書いていたら短歌になったって感じでしょうかね

私感
大島育宙氏の大ファンになってしまいました。
素晴らしい解釈に聞きほれてしまいました。
また、大島育宙氏の歌われた短歌には感動。
またのご出演を楽しみにしています。

2025年2月24日月曜日

あの人に会いたい 松岡正剛

享受した命受け取り春の潮
春望や記憶束ねて増す強度
静けさと抒情讃えん春月夜
春光や草間彌生の海の底
春サシバ奄美で翼伸び伸びと

■あの人に会いたい 松岡正剛(著述家)
1944-2024(令和6)年 80歳没

編集工学という考え方を提唱 稀代の読書家
「千夜千冊」20年以上連載

アスリートのようなものだと僕は読者を思っているんですね
だからその日のコンディションによって打てる球も打てなかったり
そういう日々のコンディションと書物というのが
いろんなドラマや格闘技を生むんだろうと
それからまた食事のようにですね 今日こそカレーだと思っていたら
いまいちそのカレーがうまくなかったりして書物ってそういう裏切りも
起こしてくれる そういうのを含めて読書というのが
あるんだろうと思います 

昭和19年 京都市生まれ
歌舞伎や落語に親しんだ

京都の呉服屋だったんですが東京にちょっと来て人形町の
末廣亭っていう まだこう 桟敷のね ところへ通わされて
おやじに もう大好きなんですよ タニマチ(後援者)
みたいなことをしていました 何人か 桂三木助さんのね
先代の タニマチっぽいことをやっていましたけれども
そうするとね 子どもながら「おい はっつぁん」とかって
こうやっていると子どもはこうやって聞いていて向こうを
こうやって見たりするのね そのぐらい空間を感じていました

1963年 早稲田大学へ進学

学生の頃ですけども電車に乗ると電車の中でワーっと車窓の中に
風景が映りますよね 見ていると全部みえるわけさ
あんな広告があるなとか ああいうビルあるなと
こんな所にジムがあるなとかってブワーって言ってみると
自分の有声言語と脳の意識がもっているスピードがこんなに
ずれている いくらやっても追いつかない それをエディット
(編集)しようというふうに思い始めたんです 

私が20代でね「遊」っていうこの1字の漢字だけで雑誌を
作ってみたいということで僕のそういう意味では出発点でもあるし

編集工学の方法論を確立

私が感じている編集というのは新しい組み合わせを作り出すと
いうようなことで それは歴史に対してもそれから音楽と
美術に対しても何か組み合わせを自分で作りだしたい
というようなことだろうと思いますね だから常に古いものも
新しいものもその所属の場所を離れて何かこう翼を持って
出逢えるようなものをね どこかに作っていきたいなと

1987(昭和62)年 編集工学研究所 設立
「情報の歴史」を発表

今風の言葉で言うと縦割りは嫌いだとやっぱり横につなげたい
例えば日本人は織田信長というのはよく大好きですが織田信長が
エリザベス女王と同じ時代だとかっていうことはあまりピンとこない
それからその織田信長 エリザベス女王の時代にスペインでは
イスパニアではフェリペ2世がやはりいたと みんな信長のような
人何ですが 例えばそういうことというのは歴史の教科書にも
書いていないし普通の年表を見てもどうしてもわからない
この「情報の歴史」ではそのリンキングですね 関係が
どのように出現してくるか ということを見せているわけです

日本というあるいは日本語とか日本人というのは最初からデュアル
(2つの)じゃないか 相反したものを受け入れていたんじゃないか
天皇と幕府が両方いる 公家と武家がいる そういうふうに
2つ2つというものをね 順守してきたんではないか 神仏は
本当はグジャグジャなのよ こういうと神様こっちは仏様
明治でね 神仏分離しちゃうとか 廃仏毀釈するとかね
日本人が作り上げるメソッド(方法)とか芸能とか哲学というのは
もっと ラディカル(革新的)に進んだ方が今の日本にはいい

「たけくらべ」を読んで
「葛藤」と「邪険」という二つの言葉だけを引き出した

いかにその人と共同編集するかというか共感を描くか
つまり読者というのは著者が書いているものをトレース(なぞる)も
しますけど頭の吹き出しの中にはもっといろんなものが
思い浮かんでいる読み終わっちゃうとですね 
ここがなくなっちゃうんですよ (本は)僕にとってはノートでも
あるんですね すでに書いてくれているノート そのノートに
またこう自分で書き加えていこうというかですね 
これは丸山眞男さんの本ですけれど 例えばこれは
チャプタータートルですね そういうものを自分の中に
区切っておこうとか その言葉がどういうふうに何回出てきたか
というのを読むスピードの中でそのスピードに合わせて
自分の吹き出しと著者との間のインターフェース(接点)に
傷をつけるというかひっかき傷をつけるというか そういうことを
やっておくわけです それを使って再生していくわけですね

近畿大学アカデミックシアター ビブリオシアター

(頭に)インプットする状態のいろんな情報とか知識だとか出来事と
それを語ったり再生したりするのは変わる 
それが編集だと僕は思っています クリエーションとか創造と
いうけれどもそういう言い方をしてもいいけれども
ほとんどそういうものはエディット編集ではないか

千夜千冊⇨https://1000ya.isis.ne.jp/

私感
私がパソコンを手にした時よりず~っと、毎日拝見していました。
私をここまで誘って下さりありがとうございました。

2025年2月23日日曜日

あの本、読みました? 三宅香帆 川添愛 ふかわりょう

姫すみれ眉山の日陰ひとりぼち
今年こそ友の風船盛大に
春菊の高き香りの亡き母の
掛け合わされた春の蜜柑や届きけり
古草や恵みの雨に葉を打たれ

■あの本、読みました?
「好きを言語化する技術」三宅香帆…今ブーム!言語の本特集
三宅香帆 川添愛 ふかわりょう 鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔P

チンパンジーと人間の違いは❓
「言語の本質 言葉はどう生まれ、進化したか」の一文
今井むつみ 秋田喜美著/中公新書
アイは訓練を受けて、異なる色の積み木にそれぞれ対応する記号(絵文字)を
選ぶことができる。黄色の積み木なら△、赤の積み木なら◇、
黒の積み木なら○を選ぶという具合である。
(中略)
だがアイは、訓練された方向での対応づけなら難なく正解できるのに、
逆方向の対応づけ、つまり異なる記号にそれぞれ対応する積み木の色を
選ぶことが、まったくできなかったのである。
*「アイ」は実験に参加したチンパンジー
(中略)
だが、よくよく考えてみると、この一般化は論理的には正しくない。
「AならばX」は、「XはならばA」と同じではない。
このことは、「ペンギンならば鳥である」が正しくても、
「鳥ならばペンギンである」は正しくならないことからすぐわかることだ。
アイが「黄色い積み木は△、赤い積み木は◇」と学習しても、
「△は黄色い積み木、◇は赤い積み木」と選べないのは、
論理的にはまったく正しいのである。

人間は非論理的だから言語を習得
執筆のきっかけは❓三宅香帆

『「好きを言語化する技術」
推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』の一文
三宅香帆著/ディスカヴァー携書
「クリシェ」という言葉を聞いたことがありますか❓
ある言葉がいろいろな場面で乱用されたことで、
その言葉の本当の意味や新しさが失われてしまったことを指す用語です。
ありきたりなシチュエーション。ありきたりな台詞。
ありきたりな言葉。それらをフランス語で「クリシェ」と呼びます。
日本語には、残念ながらクリシェにあたる用語はありません。
あえて挙げるなら「常套句」でしょうか?
もしくは「ありきたり」という言葉が一番近いかもしれません。
このクリシェは感想を話したり文章を書いたりするにあたって、
最も警戒すべき敵です。クリシェこそが、あなたの感想を奪うんです!

言語化の敵は「クリシェ」
推しを言語化する「細分化」解像度を細かく上げていく
「言語」の本が流行っている理由 テキストコミュニケーションへの憧れ
言葉への不安と期待が高まっている 言葉は「ファッション」
言語化は価値観・生き方をまとうこと

「日本語界隈」の一文 川添愛 ふかわりょう著/ポプラ社
ふかわ:心配していることがあるんですけど。
    今ね、忖度が悲嘆にくれているんですよ。
    何度か彼と飲みに行ったことがあるんですけど、
    やっぱり思い悩んでいて…。
川添:忖度さんがですか?(笑)
ふかわ:ええ。皆の自分を見る目が変わってしまった。
    昔はこんなふうに冷たい目を向けられていなかったと
    悩みを吐露していたので、どうしたものかと。

言葉の意味の変化「忖度」
言葉の意味の変化「貴様」「お前」
最近気になる「~感」 「予算感」「ギャラ感」の使い方 「テンション感」
「SVO」と「SOV」

「日本語界隈」の一文 川添愛 ふかわりょう著/ポプラ社
ふかわ:断定を避ける曖昧な表現も否定か肯定かも最後まで
    聞かないとわからない文法も、日本人はそういうスタイルを
    選んで、今日に至るわけですよね。
川添:そうですね。ただ、世界の言語で言うと、日本語と同じく、
   最後まで聞かないと結論がわからないSOV型、つまり
   「主語-目的語-述語」型の言語の割合は
   約四十パーセントだそうです。意外に多いんですよ。
ふかわ:え!それは初めて聞きました。
川添:ちなみに英語、中国語、フランス語のようなSVO型、
つまり「主語-述語-目的語」という語順を持つ言語は
   三十五パーセントほど。韓国語、トルコ語も日本語型。

とにかく明るい安村 「はいてますよ」を言語で考案
言葉の置き換え

「日本語界隈」の一文 川添愛 ふかわりょう著/ポプラ社
ふかわ:荷物で思い出したのですが、「魔女の宅急便」の原作者の
    角野栄子さんは最初、「宅急便」がヤマト運輸の登録商標だと
    いうことを知らずにタイトルをつけたらしいですね。
    でも、それでよかった。
    「魔女の宅急便」だとピンときませんよね(笑)。

ふかわ:「深まる」のは秋だけですよね。「冬が深まる」
    「夏が深まる」は言わないように、こういうところに
    「日本語は繊細だけど頑固だな」と感じているんです。

感覚としてのフィット感 夜が更ける
言語の共通認識を壊した「枕草子」当時は革命的だった
三島由紀夫 驚きの「言語」
「潮騒」の一文 三島由紀夫著/新潮文庫
「あたしの顔、そんなに醜い?」千代子は暁闇が自分の顔を護って、
ほんの少しでも美しく見えることをねがった。
しかし海の東のほうは、心なしかすでに白んでいた。
新治の返答は即座であった。彼は急いでいたので、
おそすぎる返事が少女の心を傷つける事態から免かれた。
「なあに、美しいがな」と彼は片手を艫(とろ)にかけ、片足ははや
躍動して、舟に跳び移ろうとしながら云った。「美しいがな!」
新治がお世辞を云えない男だということは誰しも知っている。
ただ彼は急場の質問に、急場の適切な返事で答えたのである。
舟がうごきだした。彼は遠ざかる舟から快活に手を振った。
そうして岸には幸福な少女が残った。

言語学者・川添愛 オススメの本は?
「真剣師 小池重明」/団鬼六著/幻冬舎アウトロー文庫
プロ騎士を次々となぎ倒し❝新宿の殺し屋❞と呼ばれた
伝説の将棋ギャンブラーの破滅の軌跡を描く傑作長編

●「音のない言語」を考える小説
一色さゆり
「音のない理髪店」一色さゆり著/講談社
実話を元にしたフィクション エンターテイメント小説

「音のない理髪店」の一文 一色さゆり著/講談社
「ろう者には日本語に自信のない人が多いんです。
だから学校や職場でつらい目に遭うそうです。
ろう者といえば、筆談すればいいんだろうと
勘違いされる分、つらいんでしょうね」
(中略)
「聴者はイメージがしづらいんですが、じつは生まれてから
ずっと日常会話を聞いているから日本語を意識せずに使えるんですよね。
赤ちゃんは言語獲得期と呼ばれるあいだに、およそ一万五千時間も
自然に日本語が耳に入るとされます」「一万五千時間も」と、私は呟く。
「はい。けれど、ろう者は違います。聞いたこともない言語を、
正しく理解しているのかもわからないまま、目で追っていくしかない。
たとえば、「あ」という音がどんな音かもわからずただ記号として
暗記するしかないんです。だから聞こえる人の何倍もの
努力が必要になるし、苦手意識を持つのはごく当たり前のことです」

文字だけでは伝わらない 伝えられない苦しさ

「音のない理髪店」の一文 一色さゆり著/講談社
「どうでしたか、初回は?」訊ねながら、校長はお茶をすする。
「前途多難です。そもそも理髪とはなんなのかをわかって
もらうことさえできませんでした」
「なるほど。どうして生徒たちは、
理髪のことを理解できなかったのだと思いますか?」
栄次郎は「それは」と返答に詰まる。
「訊き方を変えましょう。
なぜそのやり方では、彼らには難しいのでしょうか」
「共通認識が少ないのかもしれません。彼らは理髪店で髪を切ったことも
顔剃りをしてもらったこともないので想像ができないのかと」
背いたあと、秋本校長はほほ笑んだ。
「たしかに人は言語を手に入れると、世界をより具体的に、
正確に捉えられるようになります。しかし感覚や経験よりも、
言語が先にあってはならないのです。教育においてそのことが
いかに重要か、私は身をもって学んできました」
つねに感覚の方を、言語よりも優先させるー。
その瞬間、手探りだった栄次郎の脳裏に、一筋の光が射した。

聴覚障害は「人と人を隔てる障害」
コーダ:ろう者の親のもとで育つ聞こえる子どものこと
コーダの本音「不便でも不幸でなかった」

一色さゆりのオススメの本
「プルーストとイカ」読者は脳をどのように変えるのか?
メアリアン・ウルフ著小松敦子訳/インターシフト
読字に関する最良図書として「マーゴット・マレク賞」を受賞した
言語好きには堪らない1冊

ディスレクシア
文字を読むことに困難がある障害を指す通称
難読症 識字障害 読字障害のこと
レオナルド・ダ・ビンチ アインシュタイン トム・クルーズが
これらの障害を持っていたことはよく知られている…。

2025年2月22日土曜日

太原雪斎&安国寺恵瓊&平清盛&黒田辰秋&吉田茂

春の闇思いと技術同期せず
連鎖する優しさあらん風光る
春寒し低温火傷したミュール
一分の予約録画や風光る
岩海苔を届けてくれる人がをり

■偉人・敗北からの教訓 
第78回「太原雪斎・今川家の繁栄を維持できなかった軍師」

・太原雪斎 敗北の伏線
師弟関係にあった義元が家督を相続
雪斎は最高顧問として重責を担うが…

・太原雪斎 敗北の瞬間
義元を支えられる人材が雪斎以外にいなかった
今川家を自分なしでは成り立たない組織にしてしまった

・太原雪斎の敗北から学ぶ教訓
すべて自分がやってしまうのはダメ

■偉人・敗北からの教訓 
第79回「安国寺恵瓊・関ヶ原の責任を負わされた外交僧」

・安国寺恵瓊 敗北の伏線
交渉においては相手が置かれた状況も考慮する

・安国寺恵瓊 敗北の瞬間
敵の動きだけでなく味方の行動にも注意する

・安国寺恵瓊 敗北から学ぶ教訓
自分の専門外で大きな勝負を挑んではならない

■偉人・敗北からの教訓 
第80回「平清盛・波間に消えた福原遷都の夢」

平家にあらずんばひとにあらず   義弟・平時忠

「十訓抄」鎌倉時代中期の教訓説話集
冬の寒いときは年の若い従者たちを温かい自分の側で寝かせ
朝早く彼らが寝ていたならばそっと抜け出し思う存分に寝かせた
低い身分のものでも彼の身内の前では一人前として丁重に扱った

・平清盛 敗北の伏線
波に乗っている時こそ自分の感情や欲をコントロールすることが重要

・平清盛 敗北の瞬間
自分が正しいと思う道でも周囲の理解を得ることが大切

・平清盛の敗北から学ぶ教訓
勝ちすぎは破滅のリスクをはらむ

■日曜美術館 黒田辰秋 ものづくり問答 森と海と人をめぐって

黒田辰秋の言葉
「思うようにならないのは こっちが間違っている
木と仲間になれたらええ方」

「木が何になりたいか きにたずねる」

「最も美しい線は1度しか訪れない 
削りたりなくてもだめ 削り過ぎてもだめ」

「新しいものなんてない 昔からあるものを使っているだけ」

「運(うん)鈍(どん)根(こん)」
運はその人の運命どうしようもないもの
鈍はおっとりでもゆっくりでも良い
根は根気良く仕事をすること

「いいものを見つけた 何回も通わなければならない 深く広く。」

「貝は生命を持っている あたたかさがある
人への働きかけ方が宝石と違って寒くない」

「自分の作品は地球と代えられる価値を持っているか」

今からおよそ百年前近所の学生たちがここで日々
学ぶことができるように黒田が製作したテーブルセット
二百年は持つから存分に使って欲しい そう語ったという黒田

時に委ね使う人に委ねることで自然に生まれる美しさ
その美はこれからも益々深まっていきます
芸術家は人類を導き人類の末までをも
心配するだけの心でなくてはならぬ
それを痛感せねば芸術家にはなれない

■偉人の年収How much? 政治家 吉田茂

義母 士子(ことこ)の言葉
あなたはちょっと偉そうに見える わがままかもしれない
でも それでいいんです 自信を持ちなさい 自分を貫きなさい

Go Home Quickly の略 GHQ

日本国民よ自信を持て
茂「回想十年」より

2025年2月21日金曜日

においで一句&漢文 源氏物語&現代文 短歌

獲物持ち告るヤマセミ春の川 
武相荘蝋梅の待つレストラン
あちこちに頼りなさげに節分草
小さき花散らばり咲かん節分草
不知火(しらぬひ)や甘閉じ込めてへそを天

■プレバト纏め 2025年2月20日
においで一句
永世名人傑作50選 藤本敏史
パエリヤへ搾るライムや春の月
(料理の美味しそうな匂いが想像できる ライムの香りを重ねる
 2つの香りをちゃんと書けている 
 手の感触も含めて匂いに持ってきている)

名人10段永世名人への道 中田喜子
殻はぜて沸騰点の焼栄螺(さざえ)
添削(潮の香りが沸騰することで匂いの方に軸足がくる)
焼栄螺いま潮の香の沸騰

特待生昇格試験 勝村政信
逃げ水でながらスマホで通り過ぎ
添削(季語は逃げ水 
   季語・逃水【晩春】路上や草原で遠くにあるように見える水に
   近づくとまた遠ざかって見える現象 蜃気楼=逃水 
   逃げ水の空気感をパッキング 俳句は筋トレ 休んではいけません)
逃げ水や草の匂いの強くなる
草の香の強し逃げ水走り出す

■10min.ボックス古文・漢文 源氏物語(紫式部)
いづれの御時か、女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に
いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。
桐壺の更衣と帝との間に生まれたのが光源氏
前の夜にも御契りや深かりけむ、世になくきよらなる
玉の男御子さへ生まれたまひぬ。

帝 
中宮 女御 更衣

許されない恋
藤壺の宮

母御息所も、影だにおぼえたまはぬを、「いとよう似たまへり」
と典侍(ないしんのすけ)の聞こえけるを、若き御心地に
いとあわれと思ひきこえたまひて、常に参らまほしく、
なづさひ見たてまつらばやとおぼえたまふ。

紫式部
紫の上 女三の宮

白き衣(きぬ)、山吹などの萎えたる着て走り来たる女子(おむなご)、
あたま見えつる子どもに似るべうもあらず、
いみじく生(お)ひ先見えてうつくしげなる容貌(かたち)なり。
髪は扇を広げたるやうにゆらゆらとして、顔はいと赤く
すりなして立てり。「雀の子を犬君(いぬき)が逃がしつる、
伏籠(ふせご)の中(うち)籠めたりつるものを」

風うち吹きたる夜のけはひ冷やかにて、ふとも寝入られたまはぬを、
近くさぶらふ人々あやしとや聞かむと、うちも身じろぎたまはぬも、
なほいと苦しげなり。夜深き鶏の声の聞こえたるもののあはれなり。

故院の上も、かく、御心には知ろしめしてや、
知らず顔をつくらせたまひけむ、思へば、この世のことこそは、
いと恐ろしくあるまじき過ちなりけれ、と近き例を思すにぞ、
恋の山路はえもどくまじき御心まじりける。

■10min.ボックス現代文 短歌
月見ればちぢに物こそかなしけれわが身ひとつの秋にはあらねど
大江千里
つれづれのながめにまさる涙川袖のみ濡れて逢ふよしもなし
藤原敏行

新しい短歌の幕開け
歌集「みだれ髪」 鳳晶子 著
その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな
春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳(ち)を手にさぐらせぬ
与謝野晶子(一八七八―一九四二)
やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君

日常を詠む
はたらけどはたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざりぢつと手を見る
石川啄木
ただひとつ惜しみて置きし白桃のゆたけきを吾(われ)は食ひをはりけり
斎藤茂吉
あの光るのは千曲川ですと、指差した、山高帽の野菜くさい手。
北原白秋
自由律短歌
自然がずんずん体のなかを通過するー山、山、山
前田夕暮
若者たちと短歌
本当の自分の心見つけたい仮面ばかりでうんざりだから
しゅわしゅわととけるブルーのシャーベットそういうふうにあなたは消えた
あの上できみが待ってることにして上着を脱いでペダルを踏むよ

31音に込められた伝えたい思いそれが短歌です

2025年2月20日木曜日

100分de名著 デュルケーム❝社会分業論❞(1) (2)

春光や音をみつづけ時きざむ
黒北風(くろきた)や磯釣り渡船廃業へ
春空へノスリ余裕の大あくび
密厳寺独りゆらゆら藁ぼっち
研究者としての目線春の夢

■100分de名著
デュルケーム❝社会分業論❞(1)個人化/孤立化の時代に向き合う
芦田徹郎 伊集院光 阿部みちこ

❝分断社会❞❝個人と社会の繋がり方❞を130年前に考えたのが
社会学者 エミール・デュルケーム

本書をあらわす機縁となった問題は、
個人的人格と社会的連帯との関係の問題である。

諸個人が結合すると、一人ひとりの個人とも個人の
寄せ集めとも異なる、社会という一種独特の実在が形成される。
エミール・デュルケーム

社会的事実とは、その固定制に関わりなく個人に
外的拘束を及ぼしうる、あらゆる行為様式のことである。
さらに言えば、それは、その個人的な表現から独立した
それ自身の存在性をもつ、所与の社会に一般的に広まっている
あらゆる行為様式である。
訳 菊谷和宏「社会学的方法の基準」

社会的事実 個人の“外側”から訴えかけるもの 
別の社会的事実 目に見えない社会的事実を考える
目に見えない社会的関係

ともあれ、社会現象は物であり、物のように取り扱われねばならない。
(中略)
実際、物とは観察に与えられるものすべて、観察に供される、
というよりむしろ観察に強制されるものすべてである。
現象を物のように取り扱うこと、それは科学の出発点をなす
史料(deta)としてそれらを取り扱うことにほかならない。
「社会学的方法の基準」

ダーウィン 1809~1882 進化論
コッホ 1843~1910 結核菌 コレラ菌
レントゲン キューリー夫人

社会現象はそれらを表象する意識主体から切り離して、
それ自体として考察されねばならない。
すなわち、外存する物として、外部から研究されねばならない。
「社会学的方法の基準」

社会を“物”として見る

本書をあらわす機縁となった問題は、
個人的人格と社会的連帯との関係の問題である。
というのは、この二つの動きは矛盾しているようにみえて、
実は並行してあいついでいるからである。
これがわれわれのみずからに提起した問題である。
訳 田原音和「社会分業論」

近代化 個人化/独立化
 
■100分de名著 
デュルケーム❝社会分業論❞(2)自律的個人はこうして生まれた
芦田徹郎 伊集院光 阿部みちこ

抑止的法律 刑法 古い社会
復原的法律 民法 新しい社会

集合意識 個人の誕生

パリの人口 1800年 50万人 1880年 220万人

社会生活のたえざる膨張と、その反響としての個人意識の膨張とを
思うならば、この共同意識はことのほか微々たるものにすぎない。
なぜなら、個人意識の数はいよいよ多く、知性はますます豊かに、
その活動はいよいよ多様となる
われわれの社会は、歴史上かつて先例をみない速さと
広がりとをもって、環節的累計から解放されてきている。
訳 田原音和「社会分業論」

環節的累計=古い社会
自律的個人 自由になってしまった

それは、この人格が人為的に抑圧されたり、
押し込められたりしたからではない。
歴史のこの段階では、こうした個人的人格が存在しなかった
からという、まことに単純な理由に基づくのである。

自由とは共同体からの❝追放❞である

われわれは社会が個人に義務として尊敬せしめる自由をこそ、
正しい自由と理解する。
「社会分業論」

義務としての「自由」
❝価値の基準❞は個人が考え判断する

個人的反省が目覚めてくれば、きっと不一致が起きてくる。
個人的反省というものは人ごとにその質も量も違うものであるから、
この反省が生みだす結果もすべて人ごとに違うからである。

自由を上手くつかえない人はエゴイズム・アノミー状態に陥る
エゴイズム スタートが切れない
アノミー どこまでやっていいのか最後が見えない

■先人たちの底力 知恵泉
~近代文学・演劇を作ったおっちょこちょい~坪内逍遥

「タバコを吸う時などは片膝を立てて長キセルを持った手を
膝にのせる癖があったそれが昔の戯作者の格好そっくりだった」
長谷川如是閑「ある心の自叙伝」より
坪内逍遥が否定したのが読本にみられる作中人物の作り方
「南総里見八犬伝」仁義礼智忠信孝悌
マンガやアニメーションのキャラクター的な表現を否定
現実に生きている人間に置き換える 私たちが目の前にしている
現実を小説にして社会にどういう効果があるか 
ということを考えていた
「くだらない」「西洋の小説でも訳した方がいい」と酷評が続いた
小説がそれまでの文体の形では書ききれない
文章の書き方の発想そのものを転換する必要があった
「僕の著述は浅薄なもの故二度三度と突込まれると奥行きがない
はじめて自分の考へ浅いのを知った」
坪内逍遥「二葉亭四迷」より

「君は円朝の落語を知っていよう 
あの円朝の落語通りに書いてみたら何だ」
「余が言文一致の由来」より

千早振る神無月(かみなづき)も最早跡(もはやあと)二日の
余波と(なごり)となッた 二十八日の午後三時頃に神田見附の内より
うようよぞよぞよ沸出でて来るのは まず髭から書立てれば
口髭 頬髯 顎の鬚 狆(ちん)の口めいたの比斯馬克髭(びすまるくひげ)

篤と目を通して居られたが忽(たちまち)礑(はたと)膝を打ってこれでいい
そのままでいい とかう仰有る 少し気味悪かったが
いいと云ふのを怒る訳にもいかず 兎に角円朝ばりであるから
無論言文一致体にはなつている 自分は不服の点もないではなかったが
先生の仰有ることではあり兎も角もやて見た
「余が言文一致の由来」より

世に在る世に在らぬそれが疑問ぢゃ 御前御記念の賜り物をば
とうからお返し申そうと存じておりました お受け取り下されませ
いやわしは知らぬ 予は何も興(や)った覚えは無い 

三百年前の詩的なシェークスピアの言葉は一種独特で日本人に
理解し難い 吾を忘れて面白く見物したかと聞かれたら
左様と断絃(だんげん)し得るものは 恐らく一人もいなかっただろう
夏目漱石 談

須磨子が演じるノラは抱月が乗り移ったかのようだ
明治44年(1911)5月「人形の家」上演(島村抱月 翻訳・演出)

早稲田大学 坪内博士記念演劇博物館 寄付

見たことのないものを演出するのは無
メンツがブロッカーになることが多い
己を捨てて若手の育成を選んだ
おっちょこちょいがいてくれないと物事は先に進まない
パイオニアだったけどパイオニア過ぎた

2025年2月19日水曜日

あの本、読みました?平野啓一郎

坂本龍一氏へ
太陽と月のリズムや春の宵
調律の狂ったピアノ風光る
ノイズある深きサウンド土恋し
あるがままの音を集めて春を視る
時間とは何かを求め春に死す

■あの本、読みました?
AIが登場するヒット小説「本心」平野啓一郎が語る創作の未来

2024年ノーベル化学賞&物理学賞はどちらもAI分野の研究者が受賞
今回のゲストは今井翔太・平野啓一郎
鈴木保奈美・角谷暁子・林祐輔プロデューサー

人間にとって簡単なことはAIには難しい
人間が難しいことはAIには簡単 今井
AIを小説のアイデア出しに使ったことはない 
文学は言語化できてないことをうまく表現するのが醍醐味 平野

AIにより小説はどう変わるのか❓
今回のテーマは「AIと小説」

「統治される大学 知の囲い込みと民主主義の解体」の一文 駒込武著/地平社
二〇一五年の夏、様々な大学で「有志」が安全保障関連法案反対の旗を
掲げはじめたさなか、私の職場である京都大学でも「自由と平和のための
京大有志の会」を立ち上げることになった。
藤原辰史さん(京都大学人文科学研究所)が中心となって「戦争は、
防衛を名目に始まる」というフレーズで始まる「声明書」を起草、
その最後は次のようになっている。
学問は戦争の武器ではない 
学問は、商売の道具ではない
学問は、権力の下僕ではない。
生きる場所と考える自由を守り、創るために、私たちはまず、
思い上がった権力にくさびを打ち込まなくてはならない。

AIが変える創作の未来
生成AIの「生成」って何?
大規模なデータから学習して、新しいコンテンツやアイデアを生み出す人工知能(AI)
人間的魅力のある職業はなくならない
小説家はAIの影響を受ける?これは難しい
AIの著作権問題がありプロデューサーも難しい
知らないうちに盗作になる可能性がある
AIは小説に影響を与えている?
AIを使った小説は賞の対象になる?
AIに仕事は奪われない?

「すべての、白いものたちの」の一文
ハン・ガン著 斎藤真理子訳/河出文庫
ひたぶるに雪片は舞い散る。
街灯の明かりがもう届かない、真っ暗な虚空に。
語ることを持たない黒い木の枝の上に。
うつむいて歩く人々の髪に。

《AIと小説》平野啓一郎
死んだ母をAIで蘇らせる「本心」
執筆のきっかけ
AIと人間の違いは感情が入るか入らないか?

「本心」の一文 平野啓一郎著/文春文庫
「石川さん、違和感がある時は、
『お母さん、そんなこと、言わなかったよ。』と
注意してください。『前はこう言ってたよ。』
訂正してあげれば、それで、学習します。
そのきっかけの文言も、仮にこちらで、
設定したものですので、ご自由に変更できます。
一度、試してみてください。」
僕は、言われた通りに注意して、
「前は、『大丈夫?』って言ってたよ。」と
語りかけた。〈母〉は少し考えるような表情をして、
「そうだったわね。」と微笑した。
そこまでありとりしたところで、僕は、助けを求めて野崎を探した。
「画面の右上に触れてください。特に何も印はありませんが、
そこに腕を伸ばしてもらええば、終了になります。」
言われた通りにすると、視界が閉ざされ、
やはり少ししてから最初の画面に戻った。

AIと違って人間は「変化」するから面白い
亡くなった人をAIで蘇らせる技術あなたは使う?使わない?

「本心」の一文 平野啓一郎著/文春文庫
「何が出来るの、じゃあ、わたしたちに?選挙?行ってるよ、毎回。
―どうにか生きていくためには、自分を変えるしかないけど、
…それだって、結局うまくいかないのよ。
私の人生、全然、よくならないまま、余命ばかり減っていってる。
スタート地点が、違い過ぎるもの、お金持ちの人たちと。
それは、酷い境遇から成功した人も
いるだろうけど、桁外れの努力か、運か。
わたしたちに、それを求められてもね。…仮想空間の方が楽しい。
フィジカルな世界を生きるべきだって、言う人もいるけど、
いつだってあるのよ、そういうの。都会で生活してる人に、
自然豊かな田舎暮らしの素晴らしさを説くとか。違う?
余計なお世話でしょう?」

「本心」の一文 平野啓一郎著/文春文庫
そういう日になるとは、まったく思っていなかったので、
僕は母が亡くなってから初めて幸福感を覚えた。

恋愛はどれだけ「五感」が満たされるか

10年ぶりの短編集「富士山」平野啓一郎著/新潮社
相性をAIで判断したほうが正しい?

「富士山」『息吹』読者が自由に想像できる結末
「富士山」『息吹』の一文 平野啓一郎著/新潮社
ヒップホップ系の大きなTシャツを着た隣の若者二人が、
各々片手にビッグマックを持って、椅子の背もたれに
体を預け、足を組んで話し込んでいる。
彼の席にまで漂ってくる、その匂いを嗅ぎながら、
息吹は少し胸やけを感じた。
(中略)
それでも、この時、息吹を見舞った郷愁には、
記憶システムに障害でも発生したかのような、
戸惑うほどの目まぐるしさがあった。
大学時代に一人暮らしの学生マンションで、
床に広げてビッグマック・セットを食べていた光景から、
後輩のバイト先の店をからかい半分に訪ねた時の光景、
(中略)
…どれも、この十五年間、ただの一度も思い出されることがなく、
それもそのはずで、今では何の役にも立たない記憶ばかりだった。

「息吹」プルースト効果を書いた理由
人生はどうでもいいことが大切

「富士山」『鏡と自画像』の一文 平野啓一郎著/新潮社
それにしても、死刑になるためには、どうすればいいのか?
新宿区役所に行って、受付で相談することを考えた。
あそこは、立地もさることながら中も本当にカオスで、
色んな人が色んな悩みを打ち明けに来ている。
「―ご用件は?」「死刑になりたいんですが、…」
「死刑ですと、どなたか三名、殺していただかないと
申請を受け付けられません。」「三名ですか?」
「三名以上です。失礼しました。担当者にもよりますが
二名だと申請が通らないことが多いですので、三名以上が確実です。」
「そうですか。…誰を殺すべきでしょうか?
それによって、人数に違いがありますか?」
「誰でもいいです。死刑の場合、人数が重要ですので。
申請の受付は、その後になります。」想像の中の
新宿区役所職員は、てきぱきとそう答えた。
女性で、とても仕事ができる感じだったので、
中田さんという名前にしておいた。

「鏡と自画像」人間がAIに近づいている?

保奈美におすすめ平野啓一郎AIの一冊
「ロボット(R.U.R)」カレル・チャペック著/岩波文庫
工場で人間の労働を肩代わりしていたロボットたちが反乱を起こし
人類抹殺を開始 機械文明の発達が人間に幸福をもたらすのか

保奈美におすすめ今井翔太AIの一冊
「LIFE 3.0―人工知能時代に人間であるということ
マックス・テグマーク著 水谷淳訳/紀伊国屋書店
労働法律軍事倫理から生命と宇宙機械の意識超知能AIが
出題したら何が起こるかなどの問題を論じた一冊

2025年2月18日火曜日

英雄たちの選択 平賀源内&「放心」

ぬけぬけと的を射抜かれ春寒し
ちゃっかりと漁夫の利取得春動く
しっかりと吾と向き合わん春早し
気持ちよき違和感の中風光る
うららけし本物超えるリアリティ

■英雄たちの選択 江戸を駆けたマルチクリエーター 平賀源内

湯上りや世界の夏の先走り   平賀源内

私儀 甚だ多用にて扨ゝゝ埒明き申さず 
宝暦9年源内「田村淸助宛書簡」

物産やら医書やら取乱し候て一向学問埒明き申さず
宝暦9年頃12月2日平賀源内「田村淸助宛書簡」

新しいか自分にとって楽しいか誰を幸せにするのか
源内は世の中の役に立つかどうかを意識していたんじゃないか

本草学と文学の間に垣根のない時代を彼らは生きていた

御慈悲を以て御暇頂戴仕り候様 仰付け為され下され候はゞ
千万有難き仕合せと存じ奉り候
「禄仕拝辞願」

但し他え仕官の儀は御構遊ばされ候 仕官御構

我が日本は神の国というべき山川は秀麗で
資源は外国と比べても恵まれている
日本は国産の資源を使わず
中国などからの舶来品を当てにしている
日本にはまだ埋もれている産物が多い
それを発見できれば舶来品を持つ必要もなくなるだろう
ぜひとも全国の同志同好諸君の所蔵品を送ってほしい
「東都薬品会引礼」

優秀なプロデューサーは何が優れているかというと
この指止まれのみんなが止まりたくなる指を作るのがうまい

尤も御屋敷へ立入り候儀は只今迄之通り相心得られる可く候

効くか効かぬかの程 私は夢中にて一向存じ申さず候へども
たかが歯を磨くが肝心にて
其の外の効能は効かずとも外にもならず
「飛花落葉」

浪人の心易さは知行(恩給)といふ飯粒が
足の裏にひつ付ず行度所を駆めぐり
一生我体を自由にするがもうけなり

安永8年(1779)11月 源内 投獄される
自分が人を殺傷して最終的に投獄されることは
彼自身も夢にも思っていなかったんじゃないか
ひょっとしたら焦り本当に夢を達成できるのか
色んな意味での焦りがあったんじゃないか
安永8年(1779)12月 平賀源内 死去 52歳だった

杉田玄白は墓に言葉を刻んだ
「ああ、非常の人、非常のことを好み、
行いはこれ非常、何ぞ非常に死するや」

セレンディピティ 思いがけない偶然がもたらす幸運

参照ブログ
気ままに江戸♪ 散歩・味・読書の記録
https://wheatbaku.exblog.jp/30989932/
1・2・3 素晴らしくまとめられていました。

活才 社会が才能を死なさない 活才社会に乾杯! 磯田道史氏

■漢字ふむふむ 「放心」
孟子の言葉
仁とは人のあるべき心
義とは人の道である
ところが今の人々は
道や心から迷子になっている
自分の良心が迷子になっても
探そうともしない

ここで使われている放心とは外物に迷って良心を失ってしまった心

四書とは論語・大学・中庸・孟子
五経とは易経・書経・詩経・礼記・春秋

中国での「放心」を王維は
放心望乾坤。心を放ちて乾坤(けんこん)を望むと記した。

中国に仏教が伝わってきて唐の時代から「禅」が盛んになった
「放心」が解き放たれたあるがままの心「心に心配も何もない」
それが現代中国語の仏教的ないいイメージ

中国では解釈が変化していったが
日本では孟子の考えが言い伝えられた

2025年2月17日月曜日

兼題「梅」&テーマ「雪」(麻布競馬場)

迫り来る凍てつく飛沫黒滝よ
青白き輝き放つ春の(黒)滝
春光や日除け直撃きらっきら
新調の遠近眼鏡朧めく
春動く吾の細胞もぼちぼちと

■NHK俳句 兼題「梅」
選者:木暮陶句郎 ゲスト:野崎海芋(かいう) 司会:柴田英嗣
年間テーマ:季語を器に盛る

木暮陶句郎先生は高校時代、落語研究会に所属しておられたとか…。
「二代目 不二家見留木」と呼ばれていたそうです

梅は日本人に古くから親しまれてきた
桜よりも先に咲く「花の兄」とも呼ばれる
春を告げる花なので今回の兼題に選んだ と木暮陶句郎先生

・梅の名句
梅一輪山を圧して咲けりけり   山口青邨
この山のエネルギーが一輪の梅に集約されている
一番最初の一輪が咲いた瞬間を山口青邨は見て
山がすーっと向うへ行ってしまうようすを詠んだ
奥深い句であり梅に対する最高の讃美

・特選六句発表 兼題「梅」
梅真白誓ひしことをまた誓ふ   浜口芙蓉
盆梅の兜太と汀子日に並べ   野々宮哲也
夜の梅ベテルギウスは消えるのね   平岡卯訪(うみ)
梅固し風のヒルズの碧き玻璃(はり)   小西謙作
梅日和けふは喧嘩をせぬと決め   古口(こぐち)栄子
梅ふふむデブリそのまま十四年   黒澤正行

・特選三席
一席 梅が香や夢の欠片(かけら)のふと疼(うず)く   田中和行
二席 子が触れる幼き我を知る梅に   辻佐和子
三席 五分咲きの梅を残して引越せり   横堀正雄

・俳句やろうぜ
若手俳人探査隊長 黒岩徳将

俳句歴4年2024年第12回俳句四季新人賞
史上最年少19歳の若さで受賞の関灯之介(19)さん

影響を受けた俳句
春や有為(うい)の奥山越えてダンスダンス   柿本多映
この歌は 
いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ 
うゐおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす
(人生の険しい山を越えて) 今春の中で踊っている
「俳句の音」の感じ 句のリズム 韻律(音声の高さ・強さ・長さ・
似た音のくりかえしで作られる言葉のリズム) 口に出して楽しい句
音楽で言うとラップ

秋草に犬や水飲み水散らす   関灯之介
胎児を大樹と言へば晩夏の光のなか   関灯之介
「韻律」で一句
ふゆばれの中ひびわれの救命具   黒岩徳将
千代に八千代に橋は潮を響かしむ   関灯之介

良い俳句は韻律が良い

・ゲストの一句
陶句郎さんへの挨拶句
梅一輪伊香保焼の鉢に活けんかな   野崎海芋
陶句郎さんへの返句 往復存問(そんもん) 挨拶
料理とは心のかたち梅香る   木暮陶句郎

海芋さんの心が料理に表れて私の心が器に表れている

・柴田の歩み
俳句でお返事

■NHK短歌 テーマ「雪」
選者:大森静佳 ゲスト:梶よう子 司会:尾崎世界観
年間テーマ「❝ものがたり❞の深みへ」
雪は人間の命とイメージがつながりやすい

・歌に❝ものがたり❞あり
入選九首 テーマ「雪」
方舟からあぶれし人がぱらぱらと座って雪の終電しずか
田中雉鳩(きじばと)
南国に生まれ育って雪を踏む気球に乗るより地球が遠い
中矢尚(たかし)
一席 撮っても撮っても足りなかったね初雪が未来のようにまぶしい浜で
石村まい
 天使って輪っかに雪積もるんすかね、てかこのリフト、遅くないすか
右手のハンマー
三席 人間の赤ちゃんが見るペンギンの赤ちゃん人口の雪が舞う
古橋紗弓
人と人と人と人と人と人が円陣を組む雪の結晶
榎本(えのもと)ハナ
二席 人類の滅びたあとの地球にも雪合戦は残って欲しい
富尾大地
マンモスの親子が確かに通り過ぐ吹雪のなかで雪かきすれば
松木乃り
 真っ直ぐなキリトリ線が雪道にきっと真面目なイヌなのだろう
絹真結子(まゆこ)

・❝ものがたり❞あり
東海道五拾参次之内 蒲原 夜之雪
静岡県の蒲原宿を舞台にした夜の夜景
広重の創作した心象風景とも言われている

梶よう子著「広重ぶるう」
広重はつまらない人間 人間臭い部分
北斎のようには生きられないけど
広重のように生きられる人はたくさんいたかもしれない

「おれはな、おれの見た眼で画を描いているからさ。
人の目で見える景色だからだよ、わかるかい?
おれが見ている風景を、そのまま画にする。
けれど、それだけではない。雨、雪、風、霧、花、
そして流れる時を その風景に載せて描き出す。例えば、蒲原宿だ」
(中略)
「雪が降らない蒲原だからこそ、逆手に取った。
雪のない場所が白一色に染まる景色は誰も眼にしたことがない。
それを表してみたいと、思ったのさ」
「広重ぶるう」

天候 雨、雪、風、霧
四季 春、夏、秋、冬
時間 朝、昼、夜

画力に加え 情緒、抒情、既視感を広重は持っていた
既視感とは驚きと懐かしさ
史実と史実の間を埋めていき1本のストーリーにする

・心象風景で一句
あおむけのこころでひとを思うから夜のバスタブに雪降りつづく
大森静佳
仰向けの心とうつ伏せの心
雪が降りつづけるような終わらない思いや寂しさをイメージした短歌
客観的には見えるはずのないものが心の中にある方の目では見える瞬間
短歌は幻想や心象風景を受け入れてくれる形

・言葉のバトン
八ッのフモトでげん氣売るかナ
絵本作家 まつむらまさこ

志望校僕だけ落ちて歯を見せる
麻布競馬場(小説家)

いい会社に就職して30歳くらいで結婚して
ペアローンでタワマン買って子どもが生まれたら
学習塾に入れてエリートサラリーマンを
再生産するみたいな同じようなコースを
走らされ競わされ消耗させられているなと思った時に
東京って大きい競馬場みたいだなと思った

間違いと別の間違いとの間終電はいつも乗り換えばかり
麻布競馬場
(短歌は)お互いに余白を注ぎ合ったりすくい合ったりする
短歌の詠み手も受け取り手も余白を尊重し真摯に向き合っている
短歌始めてから小説の中でも勇気を持って
余白を作れるようになった気がします

2025年2月16日日曜日

枕草子(清少納言)&山月記(中島敦)

春の朝飛び立つ前のプリエかな
春あした深き眠りに誘われて
独り寝の朝寝夢見るお年頃
春怨や空から涙あふれ出ん
この我慢後々役に?冴返る

■10min.ボックス古文・漢文 枕草子(清少納言)
春はあけぼの。
やうやうしろくなりゆく
山ぎは、すこしあかりて、
紫だちたる雲の
ほそくたなびきたる。

天皇の妻 女房=高貴な人に使える女性

夏は夜 秋は夕暮 冬はつとめて(早朝)

冬はつとめて。
雪の降りたるは
言ふべきにもあらず、
霜のいと白きも
またさらでもいと寒きに、
火などいそぎおこして、
炭持てわたるも、
いとつきづきし。

貴族社会で花開いた才能
天皇の妻 中宮定子の宮遣いをしたことが始まりでした

雪のいと高う降りたるを、
例ならず御格子まゐりて、
炭櫃(びつ)に火おこして、
物語などして
あつまりさぶらふに、
「少納言よ。香炉峰の雪 いかならむ」
と仰せらるれば、御格子上げさせて、
御簾(みす)を高く上げたれば、笑はせたまふ。

香炉峰の雪はすだれをかかげてみる

するどい観察眼 ものづくし 
「うつくしきもの」⇨かわいらしいもの
うつくしきもの瓜にかきたるちごの顔。
雀の子のねず鳴きするにをどり来る。
二つ三つばかりなるちごの、いそぎて這ひ来る道に、
いち小さき塵のありけるを、目ざとに見つけて、
いとおかしげなる指にとらへて、
大人ごとに見せたる、いとうつくし。

「ありがたきもの」⇨めったにないもの
ありがたきもの。舅にほめらるる婿。
また、姑に思はるる嫁の君。
男女をばいはじ、契り深くて語らふ人の、
末までなかよき人かたし。

■10min.ボックス現代文 山月記(中島敦)(一九〇九-一九四二)
隴西(ろうさい)の李徴(りちょう)は博学才穎(さいえい)、天宝の末年、
若くして名を虎榜(こぼう)に連ね、ついで江南尉(こうなんい)に
補せられたが、性、狷介(けんかい)、自みずから恃たのむところ
頗(すこぶる)厚く、賤吏(せんり)に甘んずるを潔(いさぎよ)しとしなかった。

このころからその容貌も峭刻(しょうこく)となり、肉落ち骨秀(ひい)で、
眼光のみいたずらに炯々(けいけい)として、曾(かつて)進士に
登第(とうだい)した頃の豊頬(ほうきょう)の美少年の
俤(おもかげ)は、何処(いずこ)に求めようもない。

中島敦32歳の時に発表したデビュー作です

虎は、あわや袁 (えんさん)に躍りかかるかと見えたが、
たちまち身を翻して、もとの草むらに隠れた。
草むらの中から人間の声で「危ないところだった。」
と繰り返しつぶやくのが聞こえた。
その声に袁 は聞き覚えがあった。驚懼(きょうく)のうちにも、
彼はとっさに思い当って、叫んだ。
「その声は、我が友、李微子(りちょうし)ではないか?」

名声への執着

なぜこんなことになったのだろう。わからぬ。
全く何事も我々にはわからぬ。
理由もわからずに押しつけられたものを
おとなしく受け取って、理由もわからずに
生きてゆくのが我々生き物のさだめだ。

産(さん)を破り心を狂わせてまで自分が生涯それに
執着したところのものを、一部なりとも後代に
伝えないでは、死んでも死にきれないのだ。
こんなあさましい身となり果てた今でも、
おれは、おれの詩集が長安風流人士の机の上に
置かれているさまを、夢に見ることがあるのだ。

李徴が虎になったわけ
山月記は「人虎傳」が元となっています。

かつて郷党の鬼才と言われた自分に、自尊心がなかったとは言わない。
しかし、それは臆病な自尊心とでも言うべきものであった。
おれは死によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、
求めて詩友と交わって切磋琢磨に勤めたりすることをしなかった。
ともに、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心とのせいである。
これがおれを損ない、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、おれの
外形をかくのごとく、内心にふさわしいものに変えてしまったのだ。

一行が丘の上に着いたとき、彼らは、言われたとおりに振返って、
先ほどの林間の草地を眺めた。たちまち、一匹の虎が草の茂みから
道の上に躍り出たのを彼らは見た。虎は、すでに白く光を
失った月を仰いで、二声三声咆哮したかと思うと、また、もとの
草むらに躍り入って、再びその姿を見なかった。

2025年2月15日土曜日

夏井いつきのよみ旅!in東京 前編・後編

一世一代バレンタインデーに賭けるチョコ
(バレンタインデー)Darlingへ忖度なしのチョコ送る(無季句)
バレンタインデー愛なきチョコを頬張らん
バレンタインデー感謝のチョコへ舌鼓
バレンタインデー悲喜交々の愛あらん

■夏井いつきのよみ旅!in東京 前編
東京タワーMEMO
平成25年地上デジタル放送7局の送信所が東京スカイツリーに移転
高さ250mの展望室がリニューアル 事前予約が必要

酉の市異国の長(おさ)の変はるらし   あろえあろ
酉の市:冬の季語 関東ならではの季語 例年11月関東各地で開催
「学歴の暴力」という名のアイドルグループのメンバー
メンバー全員が旧帝国大学を卒業した社会人

小春日のスマホ忘れに地雷踏む   吉田実優
小春日:冬の季語
感性を磨くという意味では俳句は重要な位置を占めている
俳句と今の小学校の国語教育を見直したい思いがある
ハイレベルなコミュニケーションがとれる子供が増えて欲しい

上腕の切断記録かんつばき   山根裕基
冬に凛と咲いている姿が印象的で
残された人生を凛と生きて欲しいという思いから響き合わせた
のんべえの医者とえびすの夜の便器
ベーターナフチルアミン 石綿 ビスエーテル 4~ ベンゼン 黄燐

冬の季語MEMO 鷹・鷹匠・鷹狩
諏訪流第十八代宗家鷹匠 大塚紀子

鷹匠MEMO 鷹狩に従事する役人の職名 鷹を操る技術を持つ

諏訪流放鷹(ほうよう)術保存回MEMO 
毎年1月鷹匠による技を披露するイベントを開く

浜離宮恩賜(おんし)庭園MEMO
徳川家斉の時代 鷹狩が盛んに行われた狩場

俳句ひとくちMEMO
鷹狩・鷹匠は冬の季語 鷹狩は水鳥がやってくる冬の時期に行われた

百代の想い放つやぬくめ鷹   大塚紀子
暖(ぬくめ)鳥…冬の季語
鷹が捕らえた鳥で足を温めその鳥を逃がしてあげる言い伝え
鷹は恩義を知る動物であるという話
人鷹一体(じんよういったい)鷹と呼吸を合わせて狩りをする
その一瞬の境地を目指すこと

鷹の眼の澄み百代の志   夏井いつき

春遠からじ予定日は子どもの日   山本巧(通称 山本先生)
春遠からじ:冬の季語
慈しむ心がないと良い俳句にならないから写真撮った数だけ
俳句を作ってやってといつき先生

子を訪ねナイルで乾杯冬の月   齋藤あさ子

いつきセレクト 集まった俳句からさらに3句紹介します!
テーブルに冷たき拳骨(げんこつ)の窪(くぼ)み   高橋寅次
凍空や書けぬ校則意見文   日原千智
CTに影なき六年目の椿   草(?)深みずほ

■夏井いつきのよみ旅!in東京 後編

飴細工師 手塚新理

「しのようじん」八十路の江戸弁ここにあり   徳田秋沙
悉皆(しっかい)屋MEMO
きものの丸洗・染み抜き 染め替えなどを行う店
住吉神社の例祭MEMO
3年周期で8月に催される

寒昴夫は逝っても我は生く   大友美幸

画像から癌の消えゆく春隣   星野沙奈
(春隣:冬の季語)
星野さんMEMO
去年9月から治療コーディネーターに
新薬開発へ医療機関・製薬会社・患者の間でサポート

隅田川といえば屋形船
屋形船船頭 安田千夏

祖父の背を親子で追って春の道   安田千夏

父の浪めざし吾の波はるの波   夏井いつき

七福神みんなで巡り我布袋(ほてい)   馬場和子
七福神:冬の季語
七福神詣(まいり)MEMO
開運を祈り七福神を巡礼 正月行事 関東ならではの季語

目の前にある物探す神の留守   早坂ひとみ
神の留守:冬の季語

いつきセレクト
参道を閉ざす鎖や山眠る   市村英子
冷たき右耳舌打ちの残響   大岩真理
小春日や駆け寄る客を待つ都バス   坂田康文

2025年2月14日金曜日

デパ地下で一句&【第13回おしゃべり俳句】【後編】

冴返る忘れないと生きられない
春愁やなぜ生きないといけないの
すべきこともうありません春火鉢
亀鳴くや一人生まれて一人死す
裏切られ傷つけられて半仙戯(はんせんぎ)

■プレバト纏め 2025年2月13日
デパ地下で一句

永世名人村上健志の傑作50選 村上健志
長い名前のサラダを買うや春動く
(果敢な挑戦 日常の何気ない所を引っ張り出してきた
 ポンチ節久しぶり)

名人10段への試験 森口瑤子
行く春や閉店セールの百貨店
添削(季語が近い 行く春は映像を持っていない時候の季語
   鳥雲は春に帰る鳥たちを入れると色や奥行きが出る)
パンジーや閉店セールの百貨店
鳥雲に閉店セールの百貨店

1位 谷まりあ
五限後のデパ地下うららルビーチョコ
(うららが春の季語 ルビーチョコとは
 ルビーカカオ豆を原料とするピンク色のチョコレート
 言葉の力を発揮させている 物の名前の力を十二分に発揮)

2位 大久保佳代子
伊予柑のゼリー見惚れし母傘寿
添削(伊予柑は春の季語 ゼリーは夏の季語 
   時間の表現ができる 余韻が生まれる)
伊予柑のゼリーに見惚れゐて

3位 松下由樹
長蛇列バレンタインデー無縁なる
添削(語順 俳句の音数に合わせた散文)
無縁なりバレンタインデー長蛇

4位 南果歩
春遠し義理チョコ買わずぼっち飯
添削(春遠しは冬の季語 詰め込み過ぎ)
義理チョコ買わないはまだ

5位 田辺智加
てんてこ舞いピンクに染める新入社員
添削(新入社員が春の季語) 
売り出しやてんてこ舞い新社員
棚卸てんてこ舞い新社員

次回のお題は「におい」

■夏井いつき俳句チャンネル
【第13回おしゃべり俳句】優秀句、4句の発表です!【後編】

あしおとをたてずにひとりで月をみた   ぶるぅみゅうすかい5歳
白鳥は水をこすって止まるからね   大史華家7歳
のっふんのふんのっふんのふん電車大好き春の雲   茶影
空あるくみんなさか立ち春の芝   琥鉄

2025年2月13日木曜日

「凍裂」&おしゃべり俳句前編&「雪竿」&「余寒」&コシノジュンコ

しなやかに揺れて菜の花吉野川
夕暮れを群れて旋回春の鳥
花菫ささくれ立った神経よ
春の風形なきものへ固執せり
山笑う人の心や予測不可

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「凍裂」

凍って裂けると書いて「凍裂」
何が裂けるのかというと木材に起きる現象なんです
いま木材と言ってしまいましたが正確には木
生えている状態の木に発生するものになてきます
水分を多く含んでいる木が中の木が
気温の急激な変化によってぎゅっと凍ってしまう
その事によって木がバキっと裂けるこれが「凍裂」なんです
この時には結構激しい音がするようで この「凍裂」の
音について描いた先行句というのも数多くあります
この「凍裂」は林業の世界においても かなり
問題視されているようで せっかく育てている木
何年もかけて育てているのに この「凍裂」が
発生してしまうことによって 木材としての価値が
著しく下がってしまう ということで この「凍裂」対策も
長年研究されているようです 北国での木材の問題
中々長年恐ろしいものなのかもしれないですね

■夏井いつき俳句チャンネル
【第13回おしゃべり俳句】こども達の言葉が俳句の種に!【前編】
ワンピースにしたらいいのにむくの群れ   けんけん3歳
かなえごとねがえてくれた星祭   りん3歳
孫歌う「給食のアイドル」星涼し   まるにの子の孫3歳
花畑所楽しと咲くお花   風の木原
ろくおんき中でうたう人にミカン   S君5歳
地蔵盆悪いのみんな置いてくね   地区地蔵盆にきた小一の男の子

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「雪竿」

北国にお住まいの方は慣れ親しんだものかもしれないですね
路肩などに立っている雪の深さを測るための棒を指します
大体色付きのポールで3m位の高さのものがあるようです
雪が深くなってくるとその「雪竿」がスッポリ埋まってしまった
そんな句も先行句としてあります
野菜などを雪の中に埋めている その目印として立てておく
物のことも「雪竿」と呼んだりするそうです
句の他の言葉によって どちらの意味で使っている
「雪竿」なのか読み分ける必要もあるかもしれません

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「余寒」

余る寒さと書いて余寒(よかん)というわけです
「残る寒さ」という傍題もあります
初春の季語でありましてまだ冬の寒さが残っている
その余った寒さと そういう時候の季語になってきます
同じ春のこの寒さをいう季語として「春寒し」という
言い方もありますが春という一字が少し暖かさの要素が強い
それに対して「余寒」の方がより冷たさに軸足の乗った
季語になっています
また秋の季語には「夜寒」は「よさむ」と読みます
余寒余る寒さで「よさむ」ではないことに注意です 
余る寒さは「余寒(よかん)」です

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん #33
【コシノジュンコ「カーネーション」モデル母と三姉妹】

「今が大切 コシノジュンコ」

MCのお二人もコシノジュンコさんデザインのお洋服で登場。
ザ・タイガースの衣装作りのきっかけは布施明さん。
安井かずみ女史、加賀まりこ女史、ダイアナ・ロス、
ミック・ジャガーとのエピソードには耳がダンボ。
また、山本寛斎氏は弟子入りされていたとか…。
最高のシンデレラストーリーをお聞かせくださいました。



2025年2月12日水曜日

井上八千代&杉本博司&須田悦弘&坂本龍一(福岡伸一&高屋史郎&浅田彰)

ルリビタキヒッヒッと鳴きて降りて来し
シロハラや声高らかに隠れをり
目線下げチッと一音アオジ跳ぶ
モヒカンのミヤマホオジロすまし顔
西空へ花鶏(あとり)群れなし移動せり

■芸能きわみ堂 京都にいきづく源氏物語の世界・後編
京舞井上流五世家元 井上八千代
京舞で私が大切にしていることは自然体でありたい
女性が女性を舞う場合に特に
日常の動作が基本であるということと 
素直でありたい 作り込まない 
ということを大切にしたいなあと思っております

Q:末摘花と光源氏はどのように舞い分けるのですか?
静かめにしておいた方が末摘花が(光源氏)男になったとき
同じなりですから分かるかなと 源氏になったとたんに
足を強く踏みながら出てくるちょっとした音ですけど
そこで変化がつく

■新美の巨人たち【見過ごさないで!超絶技巧の「雑草彫刻」×山本美月】
杉本博司氏 曰く
「リアリティー 本物とは何かってことがテーマになってるんですよ」

須田悦弘さんの作品もすべて本物と見紛うばかりの精巧さ
それを思いがけない所に置くことで全体が本物以上の
リアリティーを発揮する 野に咲く雑草よりもフェイクの雑草が
置かれた光景に出会うとき より強い生命力を感じることもあります

■日曜美術館 音を視る 時を聴く 坂本龍一×アート
人生は短くて芸術は長い

紙一枚へだてていることによって「外にいるときよりも外を感じた」

起承転結というふうに見せると直線的にずっと見なきゃいけない
そういうふうに押し付けたくない 
それぞれ好きな方向から楽しんでもらえらばいい

「坂本隆一らしい音楽」に多少飽きてたりとか 
「仕方ないよね」って思いながらでも新しいことに挑戦していきたい
自分の殻をこわしたい思いはだんだんと強くなっていった

もの派 あるがままを展示するという思想 
Technologyへのアンチテーゼでもある

石は音が知覚的には聞こえないんですが 彼は聞こえる見える
というふうに考えるんです 宇宙には無数に知覚できない音や
様々なものが満ちあふれている それがどれだけ豊かな世界か
そこに未来の音楽みたいなものがあるはずだと

宮城県農業高校 宮城県名取市
(鍵盤が)沈んで戻ってこない でも意外と丈夫なんだなあ
しかし保ってるもんだよなあ 普通で言うと廃棄処分なんですよ
だけど坂本さんにとってはとても美しい音に聞こえた
ちゃんと調律されたピアノは人間がものすごい科学技術の力で
何トンもの力で木をたわめ コード(弦)をたわめている
自然がそれをもう一回元の状態に戻した 
自然によって調律され直したピアノ 
あるがまま調律の狂ったピアノ いい音だなあ きれい

今すぐに必要なヘルプをしつつも破壊されたものに対して
価値を見出したり命を吹き込むようなことを一緒にやっていた

純粋な音を出す❝もの❞
サウンドとノイズが混然一体となった世界

霧と光と音が一体となり自然への敬愛や畏怖の念を想起させる
映し出されるのはNYの自宅とスタジオ 
本人の不在がより存在を感じさせる
身の回りを飛び交う電磁波を可視化・可聴化する

人間はどうして芸術を作るんだろう

人は自分の死を予知できず人生を尽きぬ泉だと思う
だがすべて物事は数回起こるか起こらないか
自分の人生を左右したと思えるほど大切な子どもの頃の思い出も
あと何回心に浮かべるか4~5回思い出すのがせいぜいだ
あと何回満月を眺めるかせいぜい20回だが人は無限の機会があると思う
「シェルタリング・スカイ」より著・朗読 ポール・ボウルズ

坂本は日常のありふれた音に耳を澄ませた
今どきは下校の時間だから子どもたちがたくさんいるかなと思って
子どもがいるところはだいたい面白い音が
async=ズレること
あるがままの世界を表現したい それが坂本が求めていた音

福岡伸一氏
世界の見方生命の見方を設計論的に見過ぎている
世界のみずみずしさやダイナミズムが見失われてしまう
設計的に見るのではなく発生的に見る 雑音 自然音 
採集してきた音を使って最後に何らかのハーモニーを見出す
耳をすませるとか目をこらすことによって音楽を
自然の中生命の中から見つけてくる 生命人間にとって
音楽の自然な形 

「邯鄲」より(現代語訳 原瑠璃彦)
栄華の五十年は粟の飯をひと炊きする時間に過ぎなかった
何事も一炊の間の夢 邯鄲(かんたん)の枕の夢
この世のすべては夢のようにはかないものなのだと悟りを得
望みを叶えた虚生は故郷に帰ってゆく

高谷史郎氏
時間は存在しない
時間を見たこともないのに信じきっている

13の場面がランダムに現れては消える
始まりも終わりもないインスタレーション
無限の時間の中で《TIME》というパフォーマンスが繰返される

「邯鄲」より
虚生は輿に乗って極楽浄土のように壮麗で広大な宮殿に
王として迎え入れられる 

浅田彰氏
夏目漱石「夢十夜」で始まる
「ArsLonga,vita brevis 」芸術は長く人生は短い

百年はもう来ていたんだな
2023年3月28日 逝去 享年71

展示の最後を締めくくる作品
The Sheltering Sky 作曲・演奏 坂本龍一

遺された演奏データから坂本の指のタッチまで忠実に再現
一炊の夢

2025年2月11日火曜日

伊勢物語

春の雨降る❓降らないの❓じれったい
花曇生きる経験今日もまた
春の朝台所と共に生きる
春時雨心の傷を耕さん
春の風覆らせる過去もなく

■10min.ボックス古文・漢文 伊勢物語
むかし、男ありけり。
純愛 許されない愛 親子の愛 様々な愛が描かれている

男はこの女をこそ得(え)めと思ふ、
女はこの男をと思ひつつ、
親のあはすれども聞かでなむありける。
つひに本意(ほい)のごとくあひにけり。

夜もふけにければ、鬼ある所ともしらで、
神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、
あばらなる倉に、女をば奥におし入れて、
はや夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、
鬼はや一口に食ひてけり。「あなや」といひけれど、
神鳴るさわぎに、え聞かざりけり。

老いむればさらぬ別れのありといへばいよいよ見まくほしき君かな
世の中にさらぬ別れのなくもがな千代もといのる人の子のため

愛に生きる「男」在原業平
月やあらぬはるやむかしの春ならぬわが身ひとつはもとの身にして

むかし、東の五条に、
大后(おほきさい)の宮おはしましける
西の対にすむ人ありけり

それを本意(ほい)にはあらで、
心ざしふかかりける人、
ゆきとぶらひけるを、
正月(むつき)の十日ばかりのほどに、
ほかにかくれにけり。

かきつばたが咲き誇って咲いているのを見て…。
それを見て、ある人のいはく、
「かきつばた、といふ五(いつ)文字を句の上にすゑて、旅の心をよめ」
といひければ、よめる。
から衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬるたびぞしぞ思ふ

■10min.ボックス現代文 オツベルと象(宮沢賢治)
これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや
鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。
ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようで
しかたないということを、わたくしはそのとおり書いたまでです。
なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、
そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
「注文の多い料理店」序より

オツベルときたらたいしたもんだ。稲こき機械の六台も据えつきて、
のんのんのんのんのんのんと、おおそろしない音をたててやってくる。
十六人の百姓どもが、顔をまるっきり真っ赤にして足で踏んで
機械を回し、小山のように積まれた稲をかたっぱしからこいていく。
そのうす暗い仕事場を、オツベルは、大きな琥珀のパイプをくわえ、
ふきがらをわらに落とさないよう、目を細くして気をつけながら、
両手を背中に組み合わせて、ぶらぶら行ったり来たりする。

「すまないが税金も高いから、今日はすこうし、川から水を
くんでくれ。」オツベルは両手を後ろでくんで、顔をしかめて
象に言う。
「ああ、ぼく水をくんでこよう。もう何杯でもくんでやるよ。」
象は目を細くして喜んで、その昼過ぎに五十だけ、
川から水をくんできた。そして菜っ葉の畑にかけた。

オノマトペの面白さ

なにせ新式稲こき機械が、六台もそろって回ってるから、
のんのんのんのんふるうのだ。

さあ、オツベルはうちだした。六連発のピストルさ。
ドーン、グララアガア、ドーン、グララアガア、
ドーン、グララアガア。ところが弾は通らない。

賢治の心象風景

ある晩、象は象小屋で、ふらふら倒れて地べたに座り、わらも
食べずに十一日の月を見て、「もう、さようなら、サンタマリア」
と、こう言った。「おや、なんだって?さよならだ?」
月がにわかに象にきく。「ええ、さよならです。サンタマリア。」
「なんだい、なりばかり大きくて、からっきし意気地のないやつだなあ。
仲間へ手紙を書いたらいいや。」月が笑ってこう言った。
「お筆も、紙もありませんよう。」象はほそういきれいな声で、
しくしくしくしく泣き出した。

まもなく地面はぐらぐらとゆられ、そこらはばしゃばしゃ暗くなり、
象はやしきを取り巻いた。グララアガア、グララアガア、
そのおそろしい騒ぎの中から「今助けるから安心しろよ。」
優しい声も聞こえてくる。
そのうち、象の片足が、へいからこっちへはみ出した。
それからも一つはみ出した。五ひきの象がいっぺんに、
へいからどっと落ちてきた。
オツベルはケースをにぎったまま、もうくしゃくしゃにつぶれていた。
「ああ、ありがとう。ほんとにぼくは助かったよ。」
白象はさびしく笑ってそう言った。

2025年2月10日月曜日

兼題「春セーター」&テーマ「春」

春かなし心の叫び閉じ込めん
花菫忘れし事の大かりき
社会的事実持たずも春の海
目に見えぬ道徳あらん春疾風(はやて)
春陰や陽射しを避けて吹き荒れん

■NHK俳句 兼題「春セーター」
選者:西山睦 ゲスト:三石知左子 司会:柴田英嗣
年間テーマ「やさしい手」

春風に白衣の翼広がりぬ   西山睦

風光る新病院の大玻璃戸(おおはりど) 三石知左子
春の雲霊安室は最上階   三石知左子
日脚伸ぶ保育器の児(こ)も足伸ばし   三石知左子

三石知左子さんの優しい手 俳句三選 救 女 母
母 桜草十代の母健気なる   三石知左子
女 三椏(みつまた)の花よ女よ俯(うつむ)くな   三石知左子
救 阿蘇緑雨赤き救護の合羽着て   三石知左子

・今週の兼題「春セーター」
春セーターそのものを詠むのと春セーターを着ている人を詠む
・特選六句
ドアノブはいまだ冷たし春セーター   尾﨑光洋
春セーター腕を組んでもいいですか   ふくいよしこ
海に行くはずだつた日の春セーター   須坂大寒
病室を菜の花色に春セーター   神尾(かんのお)孝
春セーター育休明けの初仕事   平井明
「東京の空はせまい」と春セーター   建部芋水(たてべうすい)

・特選3句
一席 合掌のブレス春セーターの胸   鈴木仁(ひとし)
二席 柔らかき頬(ほほ)ねむる胸春セーター   米内(よない)君子
三席 先生を青年にして春セーター   千葉水路(すいろ)

・俳句やろうぜ 
俳人 若手俳人探査隊長 黒岩徳将
俳句歴4年 2024年 第12回俳句四季新人賞
史上最年少19歳の若さで受賞 関灯之介(とものすけ)

2022年第24回俳句甲子園 個人優秀賞
個人優秀賞の句
潺々(せんせん)と清水に浸(ひた)る鹿の骨   関灯之介
(潺々:さらさら水が流れること 
湧き出る夏の清水に鹿の骨がポツンと浸っている)
「生」「死」澄み切った世界観
俳句四季新人賞とかにも投稿している

クロイワ推しの一句
はつふゆの海に挿し消す花火かな   関灯之介
関灯之介さんがよく使うモチーフ 海 漁船 汐 河 蛸壺
水をテーマにした俳句が多い
心の中に水のある風景が句になっている
関灯之介談⇩
大きさ スピード 形を変えて存在する
心(気持ち)=水の感じ 自分の心にある水は枯れないような気がする
その枯れない水をずっと見続けなければと思っている
心を見つめて詠む

・柴田の歩み
俳句は自分自身を見つめ直す良い機会

■NHK短歌 テーマ「春」
選者:俵万智 ゲスト:安田登 司会:ヒコロヒー
年間テーマ「光る愛の歌」

盲目の猫轢殺(れきさつ)の如弾劾(がい)せよ
顎(くび)掠(かす)めつつ飛ぶ繊月(つき)の匕口首(あいくち)   安田登
(知らないうちに誰かに自分の罪を暴いて欲しい)

「恋」と並んで「季節」を詠むのは大きなテーマ
能は全ての演目が何の季節なのか決まっている
自分と風景が溶け込んで初めて能ができる

・入選九首 テーマ「春」
雪国は逃げてはじめてふるさとになるちぎり絵のようなぼた雪
毛糸
一席 飛び石の最後であなたが待っていて抱きとめられに行くよ三月
青木菓子(かこ)
春の日を蹴散らしてくる流鏑馬(やぶさめ)のように迷いのない恋だった
前川泰信
この春に時給が上がるときいて今からだのなかに温泉がある
高原すいか
菜の花はお金で買える春だから出会えば迷わずカートに乗せる
久家(くげ)雅子
あたらしい街で自転車買ってから坂の名前を覚え始める
久藤さえ
二席 春先まで着られる服を買ってみる先があるのは春だけだから
大岩真理
三席  春になる少し手前に年をとる母は百年くり返してる
村田英俊
私 自転車で桜吹雪へ斬り込めばリップグロスにひとひら留まる
麻倉遥(リズムと映像の切り替えが素晴らしい)

安田 和歌と漢詩の関係の重要性を言っている 
「そんなこと考えているんですか?」という
和泉式部とまひろとの対比が面白い

一はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける
紀貫之
【万智訳】
人間の心はどうか知らないがふるさとの花の香り変わらず
花は変わらないけれどあなたの心はどうでしたか?
「人はいさ」というのんびりした感じ
「花」「にほひける」というきっぱりした感じ
人のぼんやりした感じと自然のきっちりした感じ
リズムの上でも対比になっている
前半 さ行「い」強い音 後半 あ段 広い音
前半のぼんやりした中に強い音
後半の強い中に明るい音を入れている

年年歳歳花相似 歳歳年年人不同
人生の無常を歌っている詩から
まひろは人の心の無常を引き出している

光る君から学べる短歌づくりのポイントは?
古典を栄養にする
古典の表現を踏まえて詠むことで歌に奥行きが生まれる

安田登氏 「サラダ記念日」で心に残った二首
ゆく河の流れを何にたとえてもたとえきれない水底(みなそこ)の石
「方丈記」をたとえながら最後に現代的なものを入れていく

あいみてののちの心の夕まぐれ君だけがいる風景である
「あひみてののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり」
という和歌がベース
古典があるからこそ現代語が効いてくる

短歌を作る方も味わうほうも古典を間に置くことで世界が豊かに広がる

安田 読む本の90%は古典 能は会話が古典 世界が詩になる
明治以降の現代文は世界を散文化する 
古語は現代生きている同じ言葉でも古語だと全く違う意味になる
「かなしい」古語の「かなし」=「かわいい」
「かなし」は全員で共有できる感覚だった
集合的な存在に自分が入っていくのが古語の世界

俵 近代以降は己に捉われての表現
自分を広げて世界との境を無くすような言葉づかいが大事

安田 日本の最古の古典が「古事記」「笑う」の語源は「割る」
閉塞状態を割ることができるのは「笑い」だけ

・言葉のバトン
見た目より脱ぐとすごいぜメンチカツ
スーパーマーケット社長 那波秀和

八ッのフモトでげん氣売るかナ
絵本作家 まつむらまさこ

2025年2月9日日曜日

100分de名著 安克昌④

風光る鉄とガラスに見る呼応
春の空線に想いを込めて弾く
春の香色を載せたる音符かな
木の芽時悲しみさえも維持しつつ
春かなし煙草をパンに変えて生く

■100分de名著 安克昌❝心の傷を癒すということ❞(4)心の傷を耕す
宮地尚子 伊集院光 阿部みちこ

震災復興事業の一つとして、五年間の限定事業であるが、
「こころのケアセンター」が六月に設立された。(中略)
「こころのケアセンター」の活動は、(中略)おもに被災地と
その周辺が対象なのだが、もし近い将来、他府県で大規模な
災害があったときには出動が期待されるだろう。
「こころのケアセンター」に期待されている事業は
被災地のケアだけではない。次に災害が起きたときに、
経験をどう生かすかという課題もある。

日本トラウマティック・ストレス学会
心のケアについての専門家の養成
ボランティアの経験と知識が蓄積されてきた
1995年は「ボランティア元年」
バトンが繋がれている

心理的な居場所
心理的な居場所とは、他者から受け入れられ、
しかも他者から侵害されず、そこにいることが
安全に感じられるような環境である。
安全な対人関係があって、ある集団や地域社会(コミュニティ)の中で
自分の位置が確保されているということである。(中略)
だが、そのコミュニティを離れて、仮設住宅や
県外へ移転しなくてはならない人たちも多かった。
移転先の土地に心理的な居場所はなかった。

心理的な居場所の重要性
復興住宅に行っても建物は安全に見えるが
孤立しやすくドアを閉じたら他の人と繋がれない
物理的に場所があればそれは居場所だというのは違うような気がして
自分の役割がない 何か些細なことでも
コミュニティの中で自分がすることがあったら
それだけで自分の存在も感じられるし他の人と繋がる機会にもなる
やりがいや役割を持つというのはとても大事
住民が一緒に花や木を植えることが本当に些細に見えるけれども
その人にとってコミュニティを感じる契機になる

安克昌氏の言葉
心のケアを最大限に拡張すれば、それは住民が尊重される
社会を作ることになるのではないか。
それは社会の「品格」にかかわる問題だと私は思った。

Decent:まともな、きちんとした、道義にかなったなど
弱い人はその人が弱いからではない
社会の中で隅に追いやられているから弱い状況にあるんだ
その人たちを敬意を持ってサポートする
謙虚さ・優しさ・敬意という言葉を「品格」で表している

1960年 安克昌 誕生(在日コリアンとして)
居場所を探して居場所がなくてという小さい頃のちょっとした寂しさ
弟 談
だからそういうような居場所がなくてぽつんとしている人に対して
敏感に分かるんでしょうね 「こんなやつもう見捨ててしまえ」
みたいな感じのとことにあっても「それは色々理由があるから
聞かなあかんで」と言って聞くところはずっとあったんですね
だから誰も見放さないんです 

安克昌氏
一般の人たちがどこまでハンディを持った人に対して経済的・
身体的・色々な心の傷も含めてそういうハンディを持った人たちに
どこまで歩み寄れるかというところがひとつのコミュニティの
質ではないかと思うんですね いざという時に立場・制度・人種など
そういうものをこえて助けることができるかどうか?
すごく大きな課題ではないかと思うんです

この本の最後を締めくくった言葉
今後、日本の社会はこの人間の傷つきやすさを
どう受け入れていくのだろうか。
傷ついた人が心を癒すことのできる社会を選ぶのか、それとも
傷ついた人を切り捨てていく厳しい社会を選ぶのか…。(中略)
世界は心的外傷に満ちている。“心の傷を癒すということ”は、
精神医学や心理学に任せてすむことではない。
それは社会のあり方として、今を生きる私たち全員に
問われていることなのである。

安のマイノリティ性
マジョリティの人にとっては当たり前に享受できていることが
自分にはできない そういう人たちの事にとても敏感
精神科の患者さんも同じように自分の心の中の世界と
外側の世界にギャップがあっても理解してもらえない
その患者さんにとっては世界が全然違って見える
それぞれの人がそれぞれの世界を生きているということを捉えて
周囲がその人の世界を理解することの大切さを安さんは感じていた

安さんからいただいた喪の作業
「多重人格者に心の内側の世界」バリー・M・コーエンほか編著
安克昌訳者代表 中井久夫序文
安さんを亡くしたその悲しみを別のよいかたちで繋げていく
心の傷を耕す
精神科医・星野弘の著書「分裂病を耕す」などを参考にした言葉

受け取った人たちが少しでもいいから耕して実らせてという
繰り返しができる世の中

土曜ドラマ「心の傷を癒すということ」2020年放送

被災者の言葉
私が心がけているのは「何も言わない」
これって安先生から学んだことだなあって

この本があるということを知っているだけてもよい

2025年2月8日土曜日

与謝野晶子の歌&竹久夢二&織田信雄・楽山園

いつのまに頬打つ風やのどやかに
ピアノ弾く背を暖めん春陽かな
縁側で爪を切る背へ風光る
義母の庭待ちくたびれたいぬふぐり
春の夜うなじ襲わる寒気せり

■与謝野晶子は佐渡を訪れた時に詠んだ歌
世に一つ黄金を欠くは苦しきか山掘る難に値ひすべきか

■ひそかに春をまつ心 竹久夢二の油絵
夢二の文章より (「夢二画作・夏の巻」1910・明治43年)
自分の繪は、人の世の旅路に、たとえば、胸に挿(はさ)むだ
心の花から花瓣(はなびら)を一つ一つ路に捨ててはゆく
その花瓣(はなびら)だ。繪は、僕の命だもの。

夢二の日記より
形と色の奥に秘められた何者かを掴みたい。
人の心のうちに自分の影を映したい
カミイルの花を煎じてのむ夕べひそかに春をまつ心かも
1934年(昭和9)年9月1日 竹久夢二結核のため逝去

■先人たちの底力 知恵泉 
悪評なんかぶっ飛ばせ❝自分流❞を見つけ出せ織田信雄
神田泊山 アンミカ 清水克行

「不覚人」といえば、旧織田家臣団の中での
信雄の異称のようなものであった。
司馬遼太郎著「覇王の家」(下)新潮文庫

臆病なくせに欲だけは人なみ以上にあるため、
見えすいた餌でも飛びつくところがある。
司馬遼太郎著「覇王の家」(下)新潮文庫

不肖の子とは、信雄のことだ。あれはお人よしを通り越して、
馬鹿じゃよ。稀代(きたい)の馬鹿者じゃよ。
吉川英治著「新書太閤記」

信長の子・御本所(信雄)はふつうより知恵が劣っていたので
なんらの理由もなく、彼に邸(やしき)と城を焼き払うよう命ずることを
嘉(よみ)し給うた。城の上部がすべて炎で包まれると、彼は
市(まち)にも放火したのでその大部分は焼失してしまった。
宣教師ルイス・フロイス著 松田穀一・川崎桃太訳
「完訳フロイス日本史③」

酷い言われようです。この信雄、持っていないんですよね…。
事実は城下町から燃え移ったのでした最後に安土城にいたのは信雄。

アンミカさんはSNSを見に行かない。自分のInstagramに
来るコメントは見ますけれど自分の評価を一切気にしない
見に行かない 面と向かって言ってくれる人を大事にしています
3割善玉 好きでいてくれる人 3割日和見どっちにも時代に動く人
3
割が悪玉菌で嫌いっていう人と思っている
その意見も尊重しなきゃいけない
アンミカさんの知恵 SNSでは批判は尊重しつつ気にし過ぎない

最後は自分らしく生きられた人 人生振り返った時に
いろいろな経験を学びにして最後自分の人生を自分らしく全うできた
逆に幸せな人だったのかな アンミカさんのまとめ

豊臣家はこのあと滅びましたが、
織田家は4男五男がしっかりと明治まで引き継ぎました。

楽山園(らくさんえん)は、群馬県甘楽郡甘楽町小幡にある大名庭園。
築庭は織田信長の次男である織田信雄。
名の由来は『論語』の「智者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ」の
一文から採ったものである。
国の名勝に指定されており、群馬県では初の名勝指定庭園である。

神田泊山さんの知恵
長生きこそ悪口を言われないコツ

2025年2月7日金曜日

雪の銀座で一句&石坂浩二のお言葉

埼玉道路陥没事故(1月28日)
春近し押しつぶされて土砂の中
応答を今か今かと春を待つ
事故現場ますます悪化節替り
春の泥時間だけが過ぎゆかん
名も知らぬ人へ合掌春の雪

■プレバト纏め 2025年2月6日
雪の銀座で一句
三大季語 雪(冬) 月(秋) 花(春) 
今の時期の雪なら 春雪(春) 名残の雪(春)が使える

・特別永世名人富美男の締めのお手本 梅沢富美男
湯の里の小さき銀座に春の雪
(町の様子が伝わる語順 田舎の遠景 湯気も上がっている
「に」の効果 今雪が降り出しましたよ ニュアンスを表現)

・名人昇格試験 立川志らく
粉雪に恋する銀座資生堂
(銀座は森鴎外・太宰治が愛した場所 おしゃれの象徴
 粉雪に恋と同じように銀座資生堂がわくわくする存在)

1位 新山さや香
余寒なおネオンに浮かぶ獅子の影
添削(余寒:春の季語 寒明けになってもまだ残る寒さの事 
   語順も良かった 「に」は助詞として意味を持っている
   「浮かぶ」は要らない 著しははっきりとしているの意)
余寒なおネオンに獅子の影著し(しるし)

2位 渡辺満里奈
かりんとの小枝にふわり粉雪よ
添削(「に」は勿体ない 非現実的な気分になる
   「よ」にすると最後の「よ」と響き合う
   かりんとと粉雪の色の対比 街と小枝の大きさの対比
   小さなところを詰めると才能ありになる可能性がある)
かりんとの小枝よ街の粉雪よ

3位 鈴木玲央
冬の音輝くネオン銀座色
添削(ネオンは輝いているもの輝くは要らない 
   詠嘆すれば十二分に輝いている)
銀座色ネオン冬の音を聴く

4位 新浜レオン
冴返る末席汚す祝賀会
添削(冴返る:春の季語 春先に冬の寒さが戻って来ること
   常套句をそのまんま中七 常識しかない人 致命的
   春の憂鬱を表す季語:春愁を入れる 春の鬱屈した思いを表現)
末席にゐて春愁の祝賀会

5位 小手伸也
帰らなきゃ帰したくない雪催
添削(雪催:冬の季語 今にも雪が降りそうな冬の空模様)
帰したくなくて雪催のホーム

次回のお題「デパ地下」

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん #32
【石坂浩二登場!美空ひばりとのデートエピソード!?】
昭和の大先輩 石坂浩二の言葉
「夢は多い程いい!   石坂浩二」

あまりの若々しさに驚きました。
だって昔のまんまでいらっしゃったんですもの。
喋り方も仕草も容姿も…。頭の回転も極めて速かった…。



2025年2月6日木曜日

偉人・敗北からの教訓 第77回 喜多川歌麿

春光や出過ぎた杭となりませう
弱点を強き武器へと春の夢
感動の塊抱き春を生く
市場価値の高き人へ春北斗
大寒のアトラス彗星捉えけり

■偉人・敗北からの教訓 
第77回「喜多川歌麿・江戸幕府の怒りを買った浮世絵師」

錦絵:江戸時代中期に確立された多色刷りの浮世絵版画
歌麿と蔦重が仕事を共にした期間 1783~1793のおよそ10年間
喜多川歌麿 1753年頃誕生

歌麿は幼いころ物事に細かかった   師匠 鳥山石燕の評
トンボやコオロギを手にのせて遊びに熱中していた   師匠 鳥山石燕の評

歌麿は30代近くまで代表作がなかった
人生を変える人との出会い それが蔦屋重三郎
吉原から新しい文化を生み出し出版界の風雲児
歌麿を重三郎は自宅に住まわせる
喜多川という姓は蔦屋重三郎の養子に入った家の姓
歌麿の才能を早くから評価していた
狂歌合わせに歌麿が絵を描く 狂歌絵本「画本虫撰」
彫りと刷りの技術を駆使した豪華本
自成一家 自ら一家をなす 絵師として独自の世界を築いた
老中 松平定信 寛政の改革 吉原は賑わいを失う
武士出身の狂歌師たちは引退 蔦重にも統制が及ぶ 財産半分を没収
歌麿空白の時 巴波川(うずまがわ)栃木県栃木市に過ごしていた(推定)
巴波川は江戸との水運で栄えていた
再びタッグを組む
美人大首絵は歌麿が初めてで 町娘を描いた
線のニュアンスだけで個性を描き出す 新しい美人画
自分自身の姿を入れた 得意の絶頂 人気に影を落とす出来事
町娘の名前を書く事を禁止
歌麿の美人画をこのまま売り続けることはできないかもしれない…
新たな才能との出会い 東洲斎写楽 役者の真実に迫る
しかし 10か月の活躍の後 写楽は消息を絶つ
歌麿は別の版元から絵を出すようになる これは歌麿の嫉妬
最下級の遊女たちの姿を描いた

喜多川歌麿 敗北の伏線
抜きん出た才能と自信を持っていた
優秀なパートナーが自身を支えていた

字が駄目ならと判じ絵を入れた 反骨の絵師 
人まね嫌い引き写しなし 誠に美人画は歌麿が最高でございます
私の活きた筆にかかればなんとなく描いても最高の美人になる
従って私の筆料は鼻のように高い
判じ絵も禁止されると女性が働く日常を描く
衝撃的な知らせ 蔦屋重三郎48歳で死去
歌麿が蔦重から離れて3年目のことだった 盟友の死
歌麿の筆はそれでも鈍ることはなかった
ヌード同様の海女の絵を出版 版元の印がない
生涯最大の苦境 手錠50日 歌麿は気力を著しく失った
歌麿「わたしが自白したため『太閤記』が絶版になり
   版元には気の毒なことをした」
もし蔦重が生きていたら…。蔦重あっての歌麿だった

伊藤潤の見解ポイント
歌麿は❝醍醐の花見❞という題材に魅せられた
明暦の大火 明暦3年(1673)江戸の大半を焼いた大火災

喜多川歌麿 敗北の瞬間
自分の力を過信して社会情勢を甘く見積もっていた
状況を無視して自分がやりたいことを押し通した

敗北がもたらしたもの~最晩年の意地~
手錠50日の二年後 喜多川歌麿享年54 この世を去ります
近年 歌麿は最晩年にも絵を描いていたが判明
栃木で描いたという説も 
栃木市立美術館に3つの肉筆画大作「雪月花」が…。
「品川の月」(高精細複製画)「吉原の花」(高精細複製画)
「深川の雪」(高精細複製画)

栃木市立美術館 学芸員 形井杏奈
2012年に再発行された❝最晩年の作❞
歌麿の人生やいろいろな思いまで感じ取ることができる
細かい部分を描き込んでいたりとか手を抜かない
その人の一生懸命さが私は感じられる

絵師としてのプライドを捨てなかった
明治時代歌麿作品は欧米に持ち出された
ジャポニズムとして一大ブームを起こした

喜多川歌麿の敗北から学ぶ教訓
世事に疎いと墓穴を掘る

2025年2月5日水曜日

あの本、読みました?ノーベル文学賞ハン・ガン

為さぬこと為すべきことや春の空
若布採る右へ左へしなりをり
建設と破壊を重ね風光る
上へ上へと延びる木蓮香を残し
深き愛?高き技術か?いとあおさ

■あの本、読みました?
ノーベル文学賞ハン・ガン&韓国女性作家の魅力を徹底解剖
鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔
宇垣美里 高山羽根子 古川綾子 いとうせいこう
ハン・ガンにハマった作家&翻訳家がその魅力を語りつくす

ノーベル文学賞 選考理由
歴史的なトラウマと対峙し人間の生命の儚さを露呈させた
迫力ある詩的な散文に対して

最初に読むべき本
すべての、白いものたちの ノーベル文学賞受賞
(エッセイなのか詩なのか連作なのか読み手が想像しながら味わえる作品
ハン・ガンさんの世界観が伝わってくる)
「白いもの」を目録に書きとめ紡がれた65の物語
生後すぐに亡くなった姉をめぐり 
ワルシャワの街と朝鮮半島の記憶が交差
個人の痛みのむこう側に横たわる痛みを
詩的に凝縮された言葉で描いた傑作

「すべての、白いものたちの」の一文 
ハン・ガン著 斎藤真理子訳/河出文庫

すべてのことは過ぎ去ると胸に刻んで歩むとき、
ようやく握りしめてきたすべてのものもついには
消えると知りつつ歩むとき、みぞれが空から落ちてくる。
雨でもなく雪でもない、氷でもなく水でもない。

ハン・ガンの独特の表現「みぞれ」
移ろい・無常をイメージするときに儚さはみぞれだった

「別れを告げない」の一文
ハン・ガン著 斎藤真理子訳/白水社

話もせず、顔を見合わせもせずに私たちは座っていた。
やかんの底からお湯が沸く音が聞こえてきたとき、
インソンが沈黙を破ってようやく尋ねた。
別れの挨拶をしないだけ?本当に別れないという意味?
まだやかんの注ぎ口から湯気が上がってはいなかった。
沸騰させるには、もう少し待たなくてはならない。
完成しないということなのかな、別れが?
白い糸のような蒸気がやかんの注ぎ口から漏れ出してきた。
ぴったり噛み合っていたふたがカタカタと音を立て、
半分くらい開いては閉まることをくり返した。
先送りにするということ?別れを?無期限に?

この部分はサービスショット いとうせいこう氏
ハン・ガンの作品に対する原動力とは❓

「別れを告げない」の一文
ハン・ガン著 斎藤真理子訳/白水社

私がけがをしたことはとくに知っていたって、そのとき母さんが言ったの。
病院から連絡が来る前にもうわかってたって。
私が盛り土から落ちたその晩に夢を見たと言ってた。
五歳くらいの私が雪野原に座っていて、
私の頬っぺたに雪が載っているのに、
不思議なことにそれが溶けないんだってよ。
夢の中でもぶるぶる震えてしまうほど怖かったんだって。
温かい子供の顔に降った雪がなぜ溶けずにそのままなのか、って。

「そっと静かに」ハン・ガン著 古川綾子訳/クオン
この作品は既に絶版になっていて日本語以外では訳されていないため
現在、読めるのは日本語訳のみとなっている

「そっと静かに」の一文
ハン・ガン著 古川綾子訳/クオン

中学二年の秋ぐらいから、家計は少しずつ上向いてきたようだった。
(中略)
中学三年に上がる直前の春休みが始まると、
両親が自分たちの部屋に来るようにと私を呼んだ。
おずおずと座る私に向かって父が言った。ピアノを習えと。
(中略)
もういいのだと私は言った。別に習いたくないと。
時間もないだろうしと。そのとき母が泣き出した。
私がじりじりと焼けつくような日差しの中、しゃがみこんで
母の顔だけを見つめていたときはあれほど冷淡に
口を閉ざしていた母が。父が言った。おまえが習いたくなくても、
母さんと父さんのために一年だけ通ってくれ。
そうじゃないと恨(ハン)になる。
(恨 韓国語では怒りの先の感情 心残り、後悔、無念を指している)

宇垣美里女史が最初に読むとよい本とは?
「菜食主義者」ハン・ガン著/きむふな訳/クオン
痛みへフォーカスした作品

「菜食主義者」の一文 ハン・ガン著/きむふな訳/クオン

「わたしは、お肉を食べないの」絶望した義母が箸を下ろした。
老いた彼女の顔は今にも泣きだしそうだった。
嵐の前の静けさのような静寂が流れた。義父が箸を取った。
酢豚をひとつ取ってテーブルを回り、妻の前に立った。
長年の労働で鍛えられた丈夫な、しかしながらどうしようもなく
腰の曲がった後ろ姿で、義父は酢豚を妻の顔に押し付けた。
「食べろ。おれの言うことを聞くんだ。みんなおまえのためなんだ。
それで病気にでもなったら、どうするつもりだ」
胸に染みる父親の愛情に、思わず目頭が熱くなった。
多分、その場にいた皆がそう感じていただろう。
しかし、目の前で静かに震えている義父の箸を妻は片手で押さえた。
「お父さん、わたしはお肉を食べないの」
瞬間、義父のごつい手のひらが宙を切り裂いた。
妻が両手で顔を覆った。

韓国女性作家の活躍の背景

「あなたのことが知りたくて」日韓作家12人のアンソロジー/河出文庫
テーマは「韓国・フェミニズム・日本」

羽田空港 蔦屋書店 総合売り上げTOP10 第一位
「移動する人はうまくいく新版・移動力」の一文 長倉顕太著/すばる舎

問題を引き起こす最大の原因は、「定住」ではないかと私は思っている。
(中略)
農耕が始まり、定住したことにより、権力が生まれた。
定住したから、領土という概念が生まれたし、
農耕により余剰の食べ物が生まれ、納税という概念もできた。
その段階でヒエラルキーが生まれたとも言える。
(中略)
ここでは腕力ではなく駆け引きがうまい人が上に行く。
まさに、人を蹴落としていけるような人たちがうまくいく。
デュマの書いた小説「モンテ・クリスト伯」の前半のように
うまく立ち回った人たちが権力を持つようになっていくわけだ。

「82年生まれ、キム、ジョン」
チョ・ナムジュ著 斎藤真理子訳/ちくま文庫

「アーモンド」ソン・ウォンビョン著/矢島暁子訳/祥伝社文庫
2020年本屋大賞 翻訳小説部門第1位

「フィフティ・ピープル新版」
チョン・セラン著 斎藤真理子訳/亜紀書房
痛くておかしくて悲しくて愛しい 
50人のドラマがあやとりのように絡まり合う物語

韓国文学の底辺には社会意識が存在している

2025年2月4日火曜日

竹取物語&羅生門&細川幽斎

春光や池川海へ広がらん
罠にかかった鹿襲う熊春の闇
春の山動けぬ鹿を食らう熊
過疎の春猿の襲撃後絶たず
春の山猿抱きつくや噛みつくや

■10min.ボックス古文・漢文 竹取物語
江戸時代に描かれた絵巻
いまはむかし、たけとりの翁といふものありけり。
野山にまじりて竹をとりつつ、よろづのことにつかひけり。
名をば、さぬきのみやつことなむいひける。
その竹の中に、もと光る竹なむ一すぢありける。
あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。
それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。

かぐや姫の謎
この児、やしなふほどに、すくすくと大きになるまさる。
黄金のある竹を見つくることかさなりぬ。
かくて、翁やうやうゆたかになりゆく。
屋の内は暗き所なく光満ちたり。翁、心地悪しく苦しき時も
この子を見れば苦しきこともやみぬ。
かぐや姫の時代
「ゆるさじとす」とて、率ておはしまさむとするに、かぐや姫答へて奏す。
「おのが身は、この国に生れてはべらばこそ、使ひたまはめ、
いと率ておはしましがたくやはべらむ」と奏す。
帝「などかさあらむ。なほ率ておはしまさむ」御輿を寄せたまふに、
このかぐや姫、きと影になりぬ。
このかぐや姫、きと影になりぬ。

立て籠めたる所の戸、すなはちただあきにあきぬ。
格子どもも、人はなくしてあきぬ。嫗(おうな)抱きてゐたるかぐや姫、
外にいでぬ。えとどむもじければ、たださし仰ぎて泣きをり。

そのよしうけたまはりて、士(つわもの)どもあまた具して
山へのぼりけるよりなむ、その山を「ふじの山」とは名づける。
その煙、いまだ雲の中へ立ちのぼるとぞ、いひ伝へたる。

■10min.ボックス現代文 羅生門(芥川龍之介)
芥川龍之介(一九八二―一九二七)
ある日の暮方のことである。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。
広い門の下には、この男のほかにだれもいない。
ただ、所々丹塗(にぬ)りのはげた、
大きな円(まる)柱に、きりぎりすが一匹とまっている。
羅生門が、朱雀大路(すざくおおじ)にある以上は、この男のほかにも、
雨やみをする市女笠(いちめがさ)や揉鳥帽子(もみえぼし)が、もうニ、三人は
ありそうなものである。それが、この男のほかにはだれもいない。

雨は、羅生門を包んで、遠くから、ざあっという音を集めてくる。
どうにもならないことを、どうにかするためには、手段を選んでいるいとまはない。
選んでいれば、築地(ついじ)の下か、道端の土の上で、飢え死にをするばかりである。
そうして、この門の上へ持ってきて、犬のように捨てられてしまうばかりである。
選ばないとすればー下人の考えは、何度も同じ道を低回したあげくに、
やつとこの局所へ逢着した。

朱雀大路の南端に建つ二階建ての建物が「羅生門」(現在は羅城門と呼ばれている)

その髪の毛が一本ずつ抜けるのに従って、
下人の心からは、恐怖が少しずつ消えて行った。
そうして、それと同時に、
この老婆に対する激しい憎悪が、少しずつ動いてきた。
―いや、この老婆に対すると言っては、語弊があるかもしれない。
むしろ、あらゆる悪に対する反感が、一分ごとに強さを増してきたのである。

語り手と下人の距離

下人にとっては、この雨の夜に、
この羅生門の上で、死人の髪を抜くということが、
それだけですでに許すべからざる悪であった。
もちろん、下人は、さっきまで、自分が盗人になる気でいたこと
なぞは、とうに忘れているのである。
今日の空模様も少なからず、この平安朝の下人の
(サンチマンタリスム)Sentimentalismeに影響した。

しばらく、死んだように倒れていた老婆が、死骸の中から、
その裸の体を起こしたのは、それから間もなくのことである。
老婆は、つぶやくような、うめくような声をたてながら、
まだ燃えている火の光を頼りに、はしごの口まで、はっていった。
そうして、そこから、短い白髪を逆さまにして、門の下をのぞき込んだ。
外には、ただ、黒洞々(こくとうとう)たる夜があるばかりである。
下人は、既に、雨を冒して、京都の町へ強盗を働きに急ぎつつあった。

三年後芥川は最後の部分を全面的に書き直しました。
「下人の行方は、誰も知らない。」と…。

■先人たちの底力 知恵泉 細川幽斎 
ピンチ連続の人生!その回避法とは?
森保一 加来耕三 三村里江
細川幽斎(藤孝)は足利義輝 足利義昭 織田信長 豊臣秀吉 徳川家康に就いた

知恵その一 危機に遭ったらよく考えて第三の道を探せ
足利義輝が殺された時、新しい将軍を立てて幕府を再興
15代将軍に足利義昭を立てることに成功
今は信長の後ろ盾あっての幕府ゆえ 細川の名前を捨てる
長岡姓に変える 将軍の命は助けて欲しいと懇願
改めて信長に仕えた 信長がまたまた暗殺される
明智光秀への手紙
「私は出家して信長様を弔(とむら)うことにしたので戦には協力できない」
中立 羽柴秀吉が向かっていることを把握
秀吉から領国安堵された
日本の歴史の進む方向性を全部言い当てている
冷静に客観的に自分を外して大局を考えられる余裕

知恵その二 本業以外の人脈を広げろ!いざというときの武器となる!
島津義久とは和歌の師弟関係で繋がっていた 幽斎が師匠
反抗的な歳久を消させた
和歌、連歌、茶の湯、囲碁、猿楽、料理に精通していた
朝廷公家社会に浸透していた 

幽斎は古今伝授だった
古今和歌集の和歌の解釈の体系というのは天皇を中心とした
宮廷文化や王朝国家の秩序 これを象徴する体系を持っている
天皇制的な統合の体系 権力の体系と一体不可分の解釈の体系を持っている

よって和睦するよう御陽成天皇が動いた
なのに幽斎は拒否 幽斎の愛弟子である3人の公卿が到着して 応じた
幽斎は塚原卜伝、上泉伊勢守に剣術を学んだ
あえて正反対の「文」をやった よって朝廷の保護者となった

幽斎は人が好き 別な世界の人間と接する 視野が広がる
上手な生き方をしている 
ニュートラル感 バランス感覚 
知恵は伝承できる
大局を見て決断していく 大義を常に考えながら決断していく大切さ

2025年2月3日月曜日

兼題「薄雷」&題「鍵」

今一度節分草を亡き母と
足許の節分草へ独り言
明日の春猪肉の恵方巻き
黒大豆豆撒前に頬張らん
もう少し頑張ろうかな豆を撒く

■NHK俳句 兼題「薄雷(うすらい)」
年間テーマ「俳句の凝りをほぐします」
選者 堀田季何 レギュラー 庄司浩平 司会 柴田英嗣

今週のテーマ切れ字「かな」
直前の言葉を輝かせる 輝かせ方が違う
前の言葉が余韻としてずっと広がる 句を読んだあとでも心に残る
最初に気をつけて欲しいこと

ツボポイント①
切字とそれ以外の「かな」の違いを認識する

ツボポイント②
「かな」は句末に置く
さま〲の事おもひ出す桜かな   松尾芭蕉

ツボポイント③
助詞や連体形を使って中七から下五を繋げる
牡丹雪その夜の妻のにほふかな   石田波郷
「の」を「や」にすると余韻を残すところが解からない
手をつけて海のつめたき桜かな   岸本尚毅
「き」は連体形「し」は終止形
句中で切れていない=繋げる

「かな」を効果的に使った句を作る!
朧+かな
朧(春の季語) 春に大気中の景色や物がかすんで見える夜の現象
① 「朧」のことを忘れる ②季語を入れない
② 「名詞」+「動詞/形容詞」の短いフレーズ

キャラ弁の鼻から食べる朧かな   庄司浩平
煙突に二人で登る朧かな   柴田英嗣

切字の「かな」 句末の置く 上から「朧」に繋がる
余韻を響かせ味わい深い句を作ろう!

■今週の兼題「薄雷(うすらい・うすごおり)」
薄雷:春の季語 春になってもまだ解けずに薄く残っている氷
または寒さが戻り新しく薄く張った氷のことをいう

特選六句
 薄雷のどこを踏んでも罪になり   錆田水遊(さびたみずあそび)
(いろんな読み方があって広がりがある)
いくたびも薄氷になりみづになり   立川茜
薄雷に突っ込み落とす釜の泥   高梨圭司
(ためらいのなさと日常の生活)
薄氷(はくひょう)を避ける子のあと避け行く子   日下隆博
(Kの音で合わせたのかも)
薄雷や鳥の糞(まり)までうつくしく   伊藤映雪(えいせつ)
薄氷の岸やあなたを許す旅   西鎮(しゃあちん)

私感
今回の俳句は好きな句ばかりでした。
兼題によってこんなに違うとは…。

・柴田の歩み 「切れ」について 1から見直してみよう
 庄司の歩み 薄雷の上を渡るように慎重な判断をしたい…かな?

■NHK短歌 題「鍵」
年間テーマ“私”に出会おう 〜2年目の飛躍〜
選者 川野里子 レギュラー 内藤秀一郎 深尾あむ 司会 ヒコロヒー

・飛躍の扉 詩になる瞬間
悪友がくれたオレンジ色のガム一生分噛みホームで捨てる
榊原紘「悪友」
普段は決して悪友に表現しない心がここで表現できる
詩とはー言葉でしか表現できない真実

繁殖期のごときひかりよ窓際に解体された扇風機の羽根
竹内優子「輪をつくる」
命のないものにふっと命が宿ってしまうそれによって詩になる
(それを擬人化というんではなかろうか❓
俳句では陳腐になると忌み嫌われているが…)

対岸の陽の射すところ神坐(ま)してひかりが野球少年となる
楠誓英(せいえい)「薄明穹」
日常見逃してきたものや見慣れたものが特別な価値を持つ

■入選六首 題「鍵」
望月の照らす鍵穴そっと差す寝床のうなぎ起こさぬように
森田徹
一席 早朝パートの母が置いてく合鍵を僕は戦士のように握った
今西富幸
鍵付きの個室に向かうとき少し白衣の天使の翼が竦(すく)む
ヤマメ
家政婦の合鍵摩滅して光る鞄の底の遺志としてなほ
村松正敏
カードキーしっかり握り部屋を出るトルクメニスタン白い街なり
山上ふみ子
銀河系のどこかに鍵をなくす人きょうあまたおり初花ひらく
斎藤秀雄

・秀一郎あむの飛躍のカギ
君と僕喧嘩もないし平和だね少しは鍵を開けてみようか
内藤秀一郎
次の鍵を開けてみようか君と僕喧嘩もないし平和だけれど

次のドア開ければ何が待ってるの?こっちを覗く光る鍵穴
深尾あむ
こっちを覗く光る鍵穴このドア開ければ未来の私が待つの

・言葉のバトン
プライド脱ぐから置いてかないで
律月(りつき)ひかる(いぎなり東北産)うさぎ天使魔法少女

見た目より脱ぐとすごいぜメンチカツ
那波秀和 スーパーマーケット社長

2025年2月2日日曜日

100分de名著 安克昌③

見能林ブロンズ鴇が飛来せり
田に一羽ブロンズ鴇がゆうゆうと
軒下を烏のデゴイと干し柿と
陽射し浴ぶ仲睦まじく吊るし柿
腹の虫所かまわず春を鳴く

■100分de 名著 安克昌
❝心の傷を癒すということ❞(3)心のケアが目指すもの
宮地尚子 伊集院光 阿部みちこ

トラウマ・心の傷・心のケアという言葉が新聞に載るようになったのが
阪神・淡路大震災がきっかけ 
1995年3月 地下鉄サリン事件
1995年8月 終戦から50年

診察室でも病棟でもないところで、突然、人々に話しかけるのは
とても勇気がいることだった。
カウンセリングの“訪問販売“を、私は初めて経験した。
いきなり「悩みはありませんか」などと聞いても、
だれも答えてくれないだろう。
私たちは健康状態から話をはじめた。「眠れてますか?食欲はありますか?」
と問いかけ、話してくれそうな人としばらく会話をした。(中略)
ある年老いた女性は、私が精神科の医者であるとわかると
「いらいらするけど、医者にかかるほどではないんですわ」と言った。
表情は相当にこわばっていた。(中略)
安易に”押し売り”しても、被災者の救護にならないと私は思った。

被災者に対するケアと同じくらい、救援者に対するケアも重要である。
「傷ついた被災者と疲れたボランティア」(ロモ)では、十分なケアはできない。

安先生は本当に静かに座っていて一人ひとり自分の思いを話していくんですけれども
その話を静かに頷いて聞いてくれるそういう感じでした
でも安先生は誰かが話したあとに何か話すことはなかったと思います
ただ安先生がそこにいるだけで安心できるような「この場で本当に何をいいんだよ」
という表情をしていたような ただただ私たちの心の中の叫びのようなものを
聞いてくれる (その会の)象徴だったような感じがします

あくまでその人の自発性というものを損なわないようにするのです。
これはどういう意味があるかというと、外傷体験を受けること自体が
非常に受け身的な体験ですよね。
自分の運命をコントロールできない、できなかったという体験です。
ですから、自分のコントロール感を取り戻してもらう、
自分にできることがまだたくさんあると気づいてもらうことがとても大事です。
そのように力づけることがエンパワメント(empowerment)ということです。
(中略)外傷体験を乗り越えるのではなく、
抱える強さを取り戻してもらうということであります。
結局、治療でできることは、その人が「癒される方向に自分を持っていく」か、
あるいは「癒されなくてもいい」と気持ちを固めるのかを、
自分で考えるようになれるまでの部分です。(中略)
そんなことから、わたしは心的外傷の治療を「癒し」とまで
言ってしまうのは何か非常におこがましい気がしています。
癒しを必要としている人にとって、大切なことは、
本人に前向きの意思を持ってもらうためのケアなんです。

もう二度と、心的外傷を受ける前のもとの自分に戻ることはできない。
心的外傷から回復するために、自分は変わらざるを得ない。
社会に復帰する前に、そういう新しい自分との折り合いを
つけはじめて、社会への復帰が可能になるのである。
心的外傷から回復した人に、私は一種崇高な何かを感じる。
外傷体験によって失ったものはあまりに大きく、
それを取り戻すことはできない。
だが、それを乗り越えてさらに多くのものを成長させていく姿に
接した時、私は人間に対する感動と敬意の念を新たにする。
そして、回復に向けて懸命に生きる人を、敬意を持って受け入れる
社会を作ることも〈心のケア〉の重大な意義ではないかと私は思う。

その人の回復力がついていく中でふっと言葉が入っていくという
そういうタイミングを待つ
傷ついたり挫折したり喪失することでその人が成長していく
ポスト・トラウマティック・グロウス(心的外傷後成長)
挫折したり傷ついたからこそ人間の優しさに気付いたり
深みに気付いたりして成長していける

回復に向かってもがく人たちを敬意を持って見守るのが心のケア

2025年2月1日土曜日

575でカガク!未踏の地下世界&「投扇興」

蝋梅を愛した人よ青き空
陽だまりよ甘き香りよ蝋梅よ
(史跡公園)蝋梅の充ちたる香り犬の影
冬の空他者を愛する勇気持て
共同体感覚保ち寒日和

■サイエンスZERO 特別編 
575でカガク!未踏の地下世界 マントル&コア

くらくらと煮えマントルも闇汁も   そまり
オーロラや地球は回るコア回る   森きやつか 

鬼灯(ほおずき)もゆる水素は水になったとさ   満嶋ハト
❝D層のDは努力のDどてら 古賀
マグマ吹き上がる蜜柑の皮を剥く   仁和田永
炎帝の恋大陸を裂くマントル   獏哲郎
火の玉へ千年の雨漆草   岡本麻美

カンラン石:8月の誕生石であるペリドットの原石
宝石の上に住んでいる 火山噴火に巻き込まれ地上に運ばれた
石の結晶構造 高圧力で石の結晶構造が組変わる 相転移 

地球てふ詩の流体や玉葱剥く   稲畑とりこ

ご挨拶句 相手にささげる句
冬うらら教授の割りしゆで卵   多数野麻仁男
マントルとコアとはドリアンの匂いひ   椋本望生(無季句)
コアは硫黄が入っている❝温泉の匂い❞硫化水素の匂いがするかもしれない
ダイヤモンド・アンビル・セル

ポスペロを一度はこの目で見てみたい   地球の神様(10歳)
マントルも猫もゼリーも皆液体   西町花冠(季語夏 ゼリー)
(何も関係ないものを関係づける所に詩が発生する
みんな(固体だけど)液体という愛でるべきもの
温度を上げるとどんどん柔らかくなる
マントルの温度は約1300~2500℃)
コアは鉄で出来ている 水くらいサラサラの鉄
コアは大部分が液体の鉄
初期の地球には大量の水があったはず 
その水を金属の鉄が吸い込んでコアに持って行った
「鉄」が水を構成する「水素」を引き連れコアになった
海水の50倍に相当する量の水素がある
結果的に海水の量を決めている
地球は奇跡の星
奇蹟の1つにコアが含まれている)

内核はワルツ渦潮は転調   むげつ空(季語春 渦潮)
(内核は地面よりちょっと早く動いている)
銀花降りゆく深淵へずわんずわん   乃咲カヌレ(冬季語 銀花 雪)
(マグマオーシャン内で鉄がズワンと沈んでいく)

ZEROの特選句
星々のコア白桃の種ひとつ   曾根新五郎
ある夜の胡桃のなかに醒めゐたり   綾竹あんどれ
扇葡萄のすうぷの眠るごと混ぜて   せり坊
マントルの底に触れたか柘榴(ざくろ)の実   マレット
CMBポストペロブスカイト衣替え   KH(廣瀬研究所のみなさん)
手懐けたあとの狐火(きつねび)がまるい   銀紙
猟犬が駈け出すマントルが動く   そら
マントルの動きの止まる夏の恋   沙那夏
葛湯溶くとろとろ星のなかの海   長谷川水素
名月や灼熱のコア水惑星   田原和之(97歳)

億年のしずけさに鉄冷えてゆく   夏井いつき

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「投扇興」

読んで字の如く扇を投げて興じる
そういう遊び お正月の遊戯だったんですね
なかなか雅なかな解説が歳時記を見ると載っています
台のような木の枕の上に銅銭12個を金銀の紙と
水引を使って蝶の形にした的を作ります
その的に向かって開いた扇を手で持って投げる
そしてその的に当てるという遊びなのだそうです
的にどういう形で扇が当たるかだとか
当たった的がどんな風に落ちるかといった事によって
この得点、配分が変わってくるのだそうです
意外とルールが複雑という事を考えると
ある意味 投扇興ゲームマスターと言いますか
審判のような人もいたのでしょうか
現在では京都の芸妓さん舞妓さんのお座敷芸としても
復活しているようです