2020年12月7日月曜日

栗木京子先生の短歌

コロナより他人の視線鎌鼬
空風やあなただけとは怪しけり
じゃぶじゃぶの金融市場すきま風
三安の国を目指して北颪
(コロナ感染者数)水涸るやAI予測上回る

栗木京子先生の短歌

代表歌
観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ)

人にまぎれ回転扉押すやうに幸せにふと入りゆけぬか
かがみ込む数式を解く君が背の縫ひ目ほうれて見てをり我は

歌集「夏のうしろ」より
~自選15首~

大雨の一夜は明けて試し刷りせしごと青き空ひろがりぬ

風景に横縞あはく引かれゐるごときすずしさ 秋がもう来る

死真似をして返事せぬ雪の午後 生真似をするわれかもしれず

雨降りの仔犬のやうな人が好き、なのに男はなぜ勝ちたがる

書き終へて手紙となりしいちまいのこころに朝の日は照り翳る

さびしさに北限ありや六月のゆふべ歩けど歩けど暮れず

竜胆の咲く朝の道この道を歩みつづける復員兵あり

九月来て昼の畳に寝ころべばわがふとももの息づきはじむ

反則で少し使ふ手にんげんの手は罪深くうるはしきかな

ふうはりと身の九割を風にして蝶飛びゆけり春の岬を

この寺を出ようとおもふ 黄昏の京を訪へば彌勒ささやく

国家といふ壁の中へとめり込みし釘の痛みぞ拉致被害者還る

音出さぬときレコードは垂直に立てられて夜の風を聴きをり

チンパンジーがバナナをもらふうれしさよ戦闘開始をキャスターは告ぐ

夏のうしろ、夕日のうしろ、悲しみのうしろにきつと天使ゐるらむ

素晴らし過ぎる…。

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