コロナより他人の視線鎌鼬
空風やあなただけとは怪しけり
じゃぶじゃぶの金融市場すきま風
三安の国を目指して北颪
(コロナ感染者数)水涸るやAI予測上回る
栗木京子先生の短歌
代表歌
観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ)
人にまぎれ回転扉押すやうに幸せにふと入りゆけぬか
かがみ込む数式を解く君が背の縫ひ目ほうれて見てをり我は
歌集「夏のうしろ」より
~自選15首~
大雨の一夜は明けて試し刷りせしごと青き空ひろがりぬ
風景に横縞あはく引かれゐるごときすずしさ 秋がもう来る
死真似をして返事せぬ雪の午後 生真似をするわれかもしれず
雨降りの仔犬のやうな人が好き、なのに男はなぜ勝ちたがる
書き終へて手紙となりしいちまいのこころに朝の日は照り翳る
さびしさに北限ありや六月のゆふべ歩けど歩けど暮れず
竜胆の咲く朝の道この道を歩みつづける復員兵あり
九月来て昼の畳に寝ころべばわがふとももの息づきはじむ
反則で少し使ふ手にんげんの手は罪深くうるはしきかな
ふうはりと身の九割を風にして蝶飛びゆけり春の岬を
この寺を出ようとおもふ 黄昏の京を訪へば彌勒ささやく
国家といふ壁の中へとめり込みし釘の痛みぞ拉致被害者還る
音出さぬときレコードは垂直に立てられて夜の風を聴きをり
チンパンジーがバナナをもらふうれしさよ戦闘開始をキャスターは告ぐ
夏のうしろ、夕日のうしろ、悲しみのうしろにきつと天使ゐるらむ
素晴らし過ぎる…。
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