2019年10月29日火曜日

詩を見つける「上田五千石」

主おらず たわわに実る 柚子重し
食欲や ますます増して 怖し柚子
秋微雨(あきついり) 打たれる花や 首垂れて
白驟雨(はくしゅうう) 幹まで冷えて 書けぬ文字
匂いまで 煮る大根の 柔らかき

俳句さく咲く! 名句ミュージアム
上田五千石 テーマ「詩を見つける」

渡り鳥 みるみるわれの 小さくなり 上田五千石

通常、空を行く渡り鳥を人間が眺めている訳ですから
みるみる鳥の小さくなりが、一般的な捉え方です。
しかし、この句は渡り鳥が作者を見ている視点に
切り替えて我が小さくなって行くと表現しています。
作者はこの句について、このように述べています。

「渡り鳥」が「みるみる」うちに「小さくな」って
秋空のかなたへ遠ざかって行ったのが事実であります。
しかし、それをみつめて立っている自分が
「みるみる小さく」って行くように
感じられたのは真実であります。

作者は、この句において事実より自分の直感で
感じ取った詩の真実を生かして句を詠んだのです。
このように出会った出来事や風景に詩を見つけて、
それを詠み手の感性に訴える表現にすると俳句は輝くのです。

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