2022年9月7日水曜日

言葉にできない、そんな夜。

根元から伐採されし百日紅
キャッシュレス毎度どきどき秋初め
蚯蚓(みみず)鳴く他人変えるよりまず自分
尊敬を知らない人よ秋湿り
付きまとう羽音元気な秋の蠅

言葉にできない、そんな夜。
木村カエラ・板垣李光人(りひと)・佐久間由衣・金原ひとみ・小沢一敬

テーマ 推しに会えた瞬間の気持ち

もうね、行って良かった
じゃないですよ。
生きてて良かったですよ。
生まれてきて良かったですよ。
私を形作った精子と卵子に
ひれ伏したいですよ。
金原ひとみ「ミーツ・ザ・ワールド」

結論から言うと、
命の危険を感じた。
それぐらい
輝きがすごかった。
一年分の許容量を
大幅に超えるきらめきが
短時間に押し寄せたため、
我が体内の
「きらめき貯蔵袋」は破裂した。
三浦しをん「のっけから失礼します」

実力以上に
自分を見せようとするので
結局は手足を
一糧(せんち)動かすにもおどつき、
ひとこと喋るにも
びくついてしまうのである。
井上ひさし「吉里吉里人」

テーマ 実家のにおいをかいだときの気持ち
その匂は私に取って
依然として
懐かしいものでありました。
一学年の単調を
破る変化としても
有難いものに
違いなかったのです。
夏目漱石「こころ」

何よりも便所へ這入(はい)って
昔嗅ぎ慣れた
匂いを嗅ぐときに、
幼児の記憶が
交々(こもごも)よみがえって来て、
ほんとうに
「我が家へ戻ってきたなあ」
という親しみが湧く。
谷崎潤一郎「陰翳礼讃」

実家の匂いに胸が苦しい、
でもなぜだろう
今日こそは
仲直りができる気がする、
今日だけは
くつろげる気がする
綿矢りさ 書き下ろし

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