2022年9月27日火曜日

題「降」

仲秋や利他の心を今日もとて
雨冷えや他力の力追い風に
人生は愛と誠実秋麗
老ひてなお抗ふ体星月夜
感情を石と共有秋景色

NHK短歌 題「降」
選者 佐佐木定綱 ゲスト 坂本美雨 
レギュラー 元髙克樹 矢花黎

■冒頭の短歌
「三本足の鴉」と書かれ仕方なく三本脚の鴉降り立つ
佐佐木定綱

■入選九句 題「降」
金魚鉢に緋鮒(ひぶな)の消ゆる角度あり光の粒子降り注ぐ時
富田清人
💮ぼろぼろの付箋の梯子を登っては降りる弟もうすぐ試験
髙原希美(のぞみ)
木炭の粒子かすかに降らせつつ黒き林檎を描く少女ら
鏡綾子
どしゃ降りに走り戻りし子らの目は魚のごとくに飛び跳ねており
島半蔵
クレープをフライパンから移したら砂糖を降らせつくる雪原
音羽凜
蘭を持つ我も一つの蘭である雨降る中を凛と立ちおり
仲原佳
ゆるキャラが段差を降りる三秒をリピートすればほぐされる夜
鳥原さみ
降段の時のみ膝が痛む母よただひたすらに登って生きよ
木村佑
くすり指で降車ボタンを押す朝のまだぎこちない指輪の重さ
笠原明子(めいこ)

■佐佐木先生の短歌というドラマ
歌に秘めたドラマをひも解き深く味わう
終バスに二人は眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて
穂村弘「シンジケート」
降車ランプを降りますランプと言ったところがポイント
〈降りますランプ〉という造語の力が独創的な世界を浮かびあがらせる

歌づくりにおける「言葉」の使い方意識を坂本美雨さんに聞きました。
坂本美雨さん
直接的には言わずまわりから攻めていって浮き上がらせるのが美しいと思う。
時代との向き合い方は歌は「時代」を表現するのに世界に必要なことだと、
思う一方で普遍的なことを歌いたいという気持ちもあって
私は普遍的なものを自分の作品では目指している。
直接的に「時代」が反映される名詞は使わないようにしている。
そうすることで五年後十年後に聞いた時、今共感するということよりは
懐かしさに引っ張られてしまう気がします。
アーティストによって表現の役割が違うと思います。
佐佐木定綱さん
現代を詠むときに今の言葉を入れるか入れないかは大きな問題です。
今の言葉を入れるにしても10年後に残っている言葉を選べるのか
という部分に感覚を研ぎ澄ませていけるのか❓だと思います

■佐佐木定綱さんからの宿題
題「降」で歌を詠んでください
降り注ぐ光を肌で弾き駆け出すサンダルの音遠のいていく
坂本美雨

■短歌侍の武者修行 元髙克樹 矢花黎
音を詠む
三味線の擦れる音が「ヒヒヒヒヒ」矢花の音にそっと忍ばせ
元髙克樹
爪を立て撥(ばち)で弾いて生まれくる三味線の音初秋を揺らす
矢花黎

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