2022年9月30日金曜日

プレミアムカフェ 文豪の食卓 草枕

稲光ブラックマンデー到来か
原油ガスユーロとポンド安の秋
いなつるびトリプル安(株・通貨・債権)に襲われん
スイスではビッグマックは流れ星
インフレの抑制効かず秋黴雨(あきついり)

プレミアムカフェ (1)文豪の食卓(1999年)(2)草枕(2001年) より

河豚汁や死んだ夢見る夜もある   夏目漱石

新しい短歌づくりを目指して集まるようになった。
メンバーは与謝野寛、与謝野晶子、北原白秋、石川啄木…。
これが観潮楼歌会(かんちょうろうかかい)
観潮楼は鴎外邸の名称。
1907年(明治40)3月から10年4月までの間に開催記録26回。
毎月、第1土曜日の夕方から行われ、歌会の形式は、
初期のころは参加者各自の持ち寄り歌の相互批評を、
漸次兼題詠の互選と批評が行われた。

これやこの石の油を焚きし世にもてはやされしランプてふもの
鴎外
カンテラのいぶる煙に隣りたるランプの如し愁あかるし


木曜会(もくようかい)は、夏目漱石宅で、
漱石の教員時代の教え子や漱石を慕う若手文学者が集まり、
さまざまな議論をした会合のこと。
森田草平、鈴木三重吉、芥川龍之介、高浜虚子、内田百閒(ひゃっけん)ら
大正期の文学を担っていく若い作家たちや、
小宮豊隆、寺田寅彦、野上豊一郎ら、創作家にはならずエッセイ、
評論の世界で活躍することになる青年たちが集っていた。

晩年の鴎外が好んで食べたのは「まんじゅう茶漬け」
よく火の通った潔癖症の鴎外ならではの「茶漬け」です。

腸(はらわた)春滴るや粥の味   漱石

漱石の危篤から目覚めて言った言葉は
「何か食ひたい」
漱石に与えられたのはひと匙の葡萄酒でした。
「うまい」と言って息を引き取られたとか…。

森鴎外家系図 https://4travel.jp/travelogue/10938126

夏目漱石家系図 https://star-children.com/iiiuminate/natsumehimika

2022年9月29日木曜日

言葉にできない、そんな夜。

朝冷えやら抜きの短歌三席に
吾亦紅帰らぬ主人待ちわびて
南京の天ぷらの香立ち込めん
米株や秋の嵐となりにけり
円安の問題意識秋簾(すだれ)

言葉にできない、そんな夜。
ゲスト 葵わかな 川谷絵音 井之脇海 村田紗耶香
司会 小沢一敬

■テーマ 不安を抱き別れを迎えたときの気持ち
君の口びるが
「さようなら」と動くことが
こわくて 下を向いてた
かぐや姫「名残り雪」

(雨の中、よりを戻したくて
ホテルに誘う彼に対し
主人公が言った言葉)

「この雨の中が、これから私が
生きていく世界なのよ」
その言葉で、ハヤトは、私がもう
彼と生きていく気がないことを
悟ったらしかった。
村田紗耶香「生存」

世界=前後の文章によって意味を変える言葉

(同居していた異母兄弟が
別れて暮らすことに
なった時の気持ち)

どうでもいい言葉ばかりが
口をついた。
もうすぐ離れていく私たちは
ありきたりな会話しか
できなかった。
瀬尾まいこ「7,s blood」

(主人公が幼少の頃から
家に使える女性と
駅で別れる場面)

もう大丈夫だろうと思って、
窓から首を出して、振り向いたら、
やっぱり立っていた。
なんだか大変小さく見えた。
夏目漱石「坊っちゃん」

■楽しみにしていたイベントが終わった時
体中かけめぐっていた電流が
むずむずする、ただの
静電気になってしまった。
葵わかな

幸せが逃げる前に
全部抱きしめて、
自分だけの星座に追加しないと
井之脇海

非日常が死んだ。
日常はまだ死んでいる。
村田紗耶香

脂が乗った瞬間に、溶けていく何かを
見つめることしかできない
自分がもどかしい。
川谷絵音

花は散った後、種を残す
心の庭にまかれた種に
栄養を与えないとね
小沢一敬

■締め切り直前の気持ち
緊張の凪が訪れて、耐え難い静寂にペンを打つ。
そうでもしないと目も心も閉じていく。
「考えろ」そんな言葉も波を立てれず、
私は黒に沈んでいく。
川谷絵音

一億の懸賞金をかけられ、
数多の殺し屋が解き放たれた真っ暗な森で、
ゴールも解らず彷徨い続けるかのごとき、
ブルーライトを浴び続け、
祈りのように雨を噛み砕く孤立無援の夜。
金原ひとみ

しめきりはふみきりよりやかましい
つめきりはきれるけど
しめきりはのばせる
くずきりはあまいのに
しめきりはそんなにあまくなかった
こうしてきょうもひがくれる
金子茂樹

こういうギリギリの瀬戸際に
半ば破壊的な気持ちで怠けるのは、
得もいわれぬ快楽なのだ
五木寛之「古新聞の片隅から」

2022年9月28日水曜日

お役立ち哲学と名言

重点的投資スルー散る柳
(コロナ禍)村祭中止決定時宜を得る
激増空き家地方創生空高し
運動会異臭漂う洗濯機
無駄な競争能力の無駄遣い(無季句) 

■ロッチと子羊 
お役立ち哲学 より

九鬼周造 曰く
「いい関係を続けるには一心同体を
 目指す必要はありません。
 絆を深めるには❝いき❞が大切なのです。」

■名言
フリードリヒ・ニーチェ 曰く
「自分で立っている所を深く掘れ。
 そこからきっと泉が湧き出る。」

エイブラハム・リンカーン 曰く
「人間は四十を超すと、
 誰でも自分の顔に
 責任を持たねばならぬ。」

J・P・モルガン 曰く
「どこかにたどり着きたいなら、
 今いるところには留まらないことを
 決心しなければならない。」

2022年9月27日火曜日

題「降」

仲秋や利他の心を今日もとて
雨冷えや他力の力追い風に
人生は愛と誠実秋麗
老ひてなお抗ふ体星月夜
感情を石と共有秋景色

NHK短歌 題「降」
選者 佐佐木定綱 ゲスト 坂本美雨 
レギュラー 元髙克樹 矢花黎

■冒頭の短歌
「三本足の鴉」と書かれ仕方なく三本脚の鴉降り立つ
佐佐木定綱

■入選九句 題「降」
金魚鉢に緋鮒(ひぶな)の消ゆる角度あり光の粒子降り注ぐ時
富田清人
💮ぼろぼろの付箋の梯子を登っては降りる弟もうすぐ試験
髙原希美(のぞみ)
木炭の粒子かすかに降らせつつ黒き林檎を描く少女ら
鏡綾子
どしゃ降りに走り戻りし子らの目は魚のごとくに飛び跳ねており
島半蔵
クレープをフライパンから移したら砂糖を降らせつくる雪原
音羽凜
蘭を持つ我も一つの蘭である雨降る中を凛と立ちおり
仲原佳
ゆるキャラが段差を降りる三秒をリピートすればほぐされる夜
鳥原さみ
降段の時のみ膝が痛む母よただひたすらに登って生きよ
木村佑
くすり指で降車ボタンを押す朝のまだぎこちない指輪の重さ
笠原明子(めいこ)

■佐佐木先生の短歌というドラマ
歌に秘めたドラマをひも解き深く味わう
終バスに二人は眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて
穂村弘「シンジケート」
降車ランプを降りますランプと言ったところがポイント
〈降りますランプ〉という造語の力が独創的な世界を浮かびあがらせる

歌づくりにおける「言葉」の使い方意識を坂本美雨さんに聞きました。
坂本美雨さん
直接的には言わずまわりから攻めていって浮き上がらせるのが美しいと思う。
時代との向き合い方は歌は「時代」を表現するのに世界に必要なことだと、
思う一方で普遍的なことを歌いたいという気持ちもあって
私は普遍的なものを自分の作品では目指している。
直接的に「時代」が反映される名詞は使わないようにしている。
そうすることで五年後十年後に聞いた時、今共感するということよりは
懐かしさに引っ張られてしまう気がします。
アーティストによって表現の役割が違うと思います。
佐佐木定綱さん
現代を詠むときに今の言葉を入れるか入れないかは大きな問題です。
今の言葉を入れるにしても10年後に残っている言葉を選べるのか
という部分に感覚を研ぎ澄ませていけるのか❓だと思います

■佐佐木定綱さんからの宿題
題「降」で歌を詠んでください
降り注ぐ光を肌で弾き駆け出すサンダルの音遠のいていく
坂本美雨

■短歌侍の武者修行 元髙克樹 矢花黎
音を詠む
三味線の擦れる音が「ヒヒヒヒヒ」矢花の音にそっと忍ばせ
元髙克樹
爪を立て撥(ばち)で弾いて生まれくる三味線の音初秋を揺らす
矢花黎

2022年9月26日月曜日

題「旅」

(ゲルハルト・リヒター氏へ)
月光や東と西を生きた人
秋の空対立の中横断す
新月や反発するも潰されん
他府県のプレート増えて彼岸かな
南洲忌生きた証を残しけり

NHK俳句 題「旅」
選者 堀本裕樹 ゲスト 角幡唯介(かくはたゆうすけ) 司会 武井壮

冒頭の俳句
人はみな旅せむ心鳥渡る   石田波郷

極夜 一日中太陽が出てこない日

■あなたのエピソード俳句にします テーマ「旅」
殿となる後楽園の紅葉かな   蔵本英喜
ポイント 動きを出す 添削(紅葉狩 秋の季語)
殿となり後楽園の紅葉狩

昔日の残り香訪ね旅支度   西原悦郎
ポイント 哀悼の気持ちをこめる 添削
亡き妻の残り香訪ね旅支度
ポイント 気持ちをこめる言葉を推敲する 
添削 古後求(と)む 秋を入れ無季句でなくした
亡き妻の残り香求(と)めて秋の旅

新涼やフリー切符の記者の旅   塩野慎吾
ポイント 感動した一場面だけを取り出す
コスモスに囲まれにゆく切符かな

■入選六句 テーマ「旅」
長き夜(よ)の廊下深海めくホテル   近藤ひろこ
季語 長き夜 夜長の傍題
ふたり来し旅路をひとりたどる秋   前畠一博
季語 秋
角幡唯介選 急カーブ紅葉の火の輪くぐるごと   甘夏せと香
季語 紅葉
全身で手を振る女将秋の山   須坂大寒
季語 秋の山
乗り換へるたびに秋風濃くなりぬ   三玉(みたま)一郎
季語 秋風
💮法隆寺相輪(そうりん)に秋立ちにけり   新井高四郎
季語 秋立つ

ゲストのエピソード、俳句にします テーマ「旅」
鹿鳴くは霧の向かうや大河原   堀本祐樹

2022年9月25日日曜日

葉月と尻文字三角パス

秋澄むや陶磁器撫でて茶の景色
秋の朝茶の湯に映る月と山
秋の晴茶の湯楽しむ独りとて
秋彼岸意識改革整いて
曼殊沙華律する規範凛と咲く

■一分季語ウンチク 葉月
陰暦8月の別称になります。
陽暦、現在の暦でいうと9月から10月初めに
重なるという時期です。
1月の睦月2月の如月といったように
それぞれの月に別称があるわけですが
この陰暦8月の別称「葉月」
さらにこの「葉月」の傍題として
別の呼び方というのが大量に
歳時記には収録されています。
中には「月見月」なんてお月見をするような月
そういう理解しやすそうなものから
「紅染月」「紅の染める月」とか
「中の商い」と書いて「中商」
なんていう言い方もするそうです。
一体どうしてそんな名前が生まれてきたのか
歳時記をめくると知的好奇心の
底が尽きないというところです。

■夏井いつき俳句チャンネル
【第5回尻二字三角パス③】『が●』から始まる俳句をお寄せください

二重ボディチェックの果ての麦茶かよ   家藤正人
火曜日は日本語喋る夜学かな   ローゼン千津
カナリアはわがままイタリアの日傘   夏井いつき

2022年9月24日土曜日

47都道府県ふるさと戦

藍白の見返り美人江戸の秋
スカイツリー朝顔市を見守らん
空高し都電と夕日隅田川
江戸の秋十間橋から電波塔
雨月(うげつ)とて日々色変えて見守りて

プレバト纏め 2022年9月22日
47都道府県ふるさと戦

■茨木県 霞ケ浦の鉄道
1位 村上健志
秋夕焼へ音失っていく列車
(「へ」が見事 静けさも表現している)

2位 梅沢富美男
車窓より鹿島祭りの灯のはるか
添削(鹿島祭りが季語 茨木県の鹿島神宮で9月に開催される祭)
車窓いま鹿島祭りの灯のはるか

3位 的場浩司
秋暁や湖(うみ)に童話の一頁
添削(にが散文的 詩的な情景に乏しい)
秋暁童話一頁
鏡の国へと秋暁一頁

4位 中田喜子
星合や長き鉄橋ひた走る
添削(星合とは七夕伝説を意味する季語)
ひた走る長き鉄橋星祭

5位 石田たくみ
水澄むや湖上の列車とシャッター音
添削(ポスターの説明だけの句)
湖を超ゆる鉄橋水澄めり

■福岡県 中洲の屋台
1位 篠田麻里子
中洲の満月ホークスの白星
添削(語順)
ホークスは白星中洲には満月

2位 立川志らく
冷酒に心の月を入れて呑む

3位 武田鉄矢
大将とこほろぎさがす屋台かな

4位 千原ジュニア
常連に席譲られし秋の夜

5位 横尾渉
豚骨の湯切り良夜のご報告
添削
豚骨のスープ良夜のご報告
豚骨の香り良夜のご報告

■大阪府 道頓堀
1位 ゆうちゃみ
街は秋写ルンですを巻く五秒
(写真との取り合わせが非常に軽やか)

2位 藤本敏史
コイン洗車抜けて秋気の御堂筋

3位 立川志らく
月夜の酔っ払い嗚呼かに道楽
添削
かに道楽見上げ月夜の酔っ払い

4位 森口瑤子
ツッコミは愛なんだって啄木鳥(けらつつき)
添削(啄木鳥は三秋の季語。目に付く色彩と、餌を採るときに木を叩く音が印象的)
ツッコミは愛か真昼のおけら鳴く

5位 松岡充
かすうどんバッテラなんぼ?浮寝鳥
添削(冬になると、雁や鴨が水面に浮かんだまま眠っている姿を見かけますが、
水鳥のこうした習性を「浮寝鳥」、「浮寝の鳥」といい、冬の季語)
浮寝鳥ふえてバッテラかすうどん

6位 犬山紙子
お釣り百万円龍淵に潜む
添削(春分の頃の「龍天に昇る」に対応するが、同様に秋分の頃の想像上の季語)
たけなわの秋やお釣りは「百万円!」

■福島県 磐梯吾妻レークライン
1位 千賀健永
ラジオからソウル会津は初紅葉

2位 中田喜子
秋燕レークラインの影ゆらら
添削(秋になって、南国へ渡って行く燕)
湖へ秋の燕の影走る

3位 梅沢富美男
赤べこの背なに揺られて山装ふ
添削
赤べこの背なに揺らるるごとく秋

4位 勝村政信
山粧ひ一目惚れした吾も粧ひ
添削
へる磐梯山に一目惚れ

5位 犬山紙子
秋色や窓ガラスから宇宙から
添削
宇宙から紅葉見えるといふ話

2022年9月23日金曜日

月の歳時記と尻文字三角パス

秋雨に竹林揺れてしなだれて
金色の煌めく月と見つめ合い
雨上がり霧立ち込めん朦朧と
幼子で描く無我あり秋の色
山粧ふ(よそおう)塗り固めたる横顔

■夏井いつき俳句チャンネル
【月の歳時記③】月見の認識あっていますか?

盆の月 陰暦7月15日 秋に入って初めての満月🌕
中秋の名月が陰暦の8月 ひとつ前の満月を指す

二十六夜待 
二十六夜祭(陰暦正月と7月26日に月の出を待って拝むこと
俳句では7月26日のことを指します。)

陰暦8月15日(中秋の名月)
月見 観月 このイベントで供えるのが 月見酒 月見団子 秋の初物

陰暦9月15日 後(のち)の月 十三夜
中秋の名月の一か月後の満月を指す
豆名月(枝豆) 栗名月

二夜(ふたよ)の月 片見月(かたみづき)
陰暦8月15日(中国から習った)
と9月15日(日本独特の行事)の両方見なくてはいけない。

■夏井いつき俳句チャンネル
【第5回尻二字三角パス①】実の妹のローゼン千津さんが今回もゲスト
野平家の丸と四角の雑煮餅   千暁
持ち出しは闇にバイトの消え朧   家藤正人
ボロンとチエロ響く水無月の曙   ローゼン千津
「ぼ」のやうな男とあんみつを食べる   夏井いつき
ベルガモの開いて天は秋の色   家藤正人
色無き風奥田暎二は犬を撫で   ローゼン千津

■【第5回尻二字三角パス②】実の息子がアシスタントになったワケ
名で決まる売れ行き要するにステテコ   夏井いつき
手込んでんねんと虹色のサイダー   家藤正人
ダースヴェーダーのマスクに泣く夜市   ローゼン千津
一列になって配給待てば虹   夏井いつき

2022年9月22日木曜日

究極の短歌・俳句100選ベストセレクション「家族と故郷」

秋の声丸と四角の眼鏡かけ
電線にしがみつきます四十雀
秋空へ槙と桧の重ならん
(2022年)仲秋や地球の鼓動聞こえくる
薄紅葉静寂(しじま)ほころぶ羽音かな

究極の短歌・俳句100選ベストセレクション(6)「家族と故郷」

短歌
霞立つながき春日を子どもらと手まりつきつつこの日暮らしつ
良寛・江戸
たのしみはまれに魚烹(うおに)て児等皆がうましうましといひて食ふ時
橘曙覧(たちばなのあけみ)
春がすみいよよ濃くなる真昼間のなにも見えねば大和と思へ
前川佐美雄・昭和戦前
マッチ擦るつかのま海に身捨つるほどの祖国はありや
寺山修司・昭和戦後
夕闇にまぎれて村に近づけば盗賊のごときわれは華やぐ
前登志夫・昭和戦後
上り坂のペダル踏みつつ子は叫ぶ「まっすぐ?」、そうだ、どんどんのぼれ
佐佐木幸綱・昭和戦後

俳句
竹の子や児(ちご)の歯ぐきの美しき
服部嵐雪(らんせつ)・江戸
雪とけて村一ぱいの子ども哉
小林一茶・江戸
算術の少年忍び泣けり夏
西東三鬼・昭和戦前
苺ジャム男子はこれを食ふ可(べか)らず
竹下しずの女(じょ)・昭和戦前
石段のはじめは地べた秋祭
三橋敏雄・平成

今日の推し俳句
我が寝たを首あげて見る寒さかな
小西来山・江戸
金剛の露ひとつぶや石の上
川端茅舎(ぼうしゃ)・昭和戦前

推し短歌
白き霧ながるる夜の草の園に自転車はほそきつばさ濡れたり
高野公彦・昭和戦後
ひまはりのアンダルシアはとほけれどとほけれどアンダルシアのひまはり
永井陽子・平成

2022年9月21日水曜日

言葉にできない、そんな夜。

空想を重ね重ねん夜長かな
水差しに映った心風の色
セラミック愛したピカソ風爽か
草の花誰に見られることもなく
秋彼岸暑熱順化の続く日々

言葉にできない、そんな夜。
ゲスト 葵わかな 川谷絵音 井之脇海 村田紗耶香
司会 小沢一敬

■テーマ 昔の恋人を思い出したとき
交差点 旅先の店 向いのホーム 
路地裏の窓 桜木町 新聞の先まで探しています
山崎まさよし「One more tima,One more chance」より

なつかしい痛みだわ
ずっと前に忘れていた
でもあなたを見たとき
時間だけ後戻りしたの
松田聖子/作詞 松本隆「SWEET MEMORIES」

懐かしさの一歩手前で
こみあげる 苦い思い出に
言葉がとても見つからないわ
竹内まりや「駅」

そうだ、君は
諦(ひずめ)みたいに揺るぎなかった。
夜中に君に現れて
心の表面を踏みしめた。
痛みと記憶が混ざって忙しい。
川谷絵音

■応援していた人が突然売れた!
がんばれ!おめでとう、
前だけ見てて、私が覚えているから 
葵わかな
「そうだよね!」と心の中で
勝ち誇って、手を握りしめようとしたけど、
上手く動かすことができなかった。
井之脇海
恥だった単語を今はみんなが吐いている。
村田紗耶香
嫌いな私が顔を出した。
そんな私も呆れる私も
また私。
川谷絵音
にわか雨はとおり雨
小沢一敬

■テーマ 仕事で疲れ果てたとき
家に帰ると自分が
ボロ布みたいに疲れて
くすんでいるのが
はっきり感じられる。
桐野夏生「OUT」

体のどこかに隠れていた疲労が
汚染された血液のように
体中に巡ってくるのを覚えた。
加賀乙彦「宣告(上)」

くたくたに疲れて、
空気を抜かれたような軀(からだ)を、
ぶらぶらと無意識に駅へ運んでいる。
林芙美子「浮雲」

もうだめです。わたしの果て。
頭のなかは砂漠で、誰の言葉も届かない。
でも、これはまたなんて広々とした砂漠。
わたしのほかに誰もいない。
大の字になって横たわれば、
濡れて凍ったような星が一つ、
空に光っている。
江國香織

2022年9月20日火曜日

題「遠距離恋愛」

まだ生きている恋とは地獄秋湿り
秋耕や心の中を叫ぶギャル
地虫鳴く心と体融合す
秋北斗これは恋練深呼吸
恋展示ないものねだり星月夜

NHK短歌 題「遠距離恋愛」
選者 江戸雪 ゲスト 丸山桂里奈 司会 星野真里
レギュラー出演 カン・ハンナ 元髙克樹 矢花黎

■冒頭の短歌
稲の穂の黄金色(おうごんいろ)はざわめけり君を追いかけつづける車窓(まど)に
江戸雪

■恋のフレーズ短歌
せつなさが羽田空港についてくる会うと照れちゃうどんな顔かな
     カン・ハンナ    星野真里    丸山桂里奈

■入選九首 題「遠距離恋愛」
空を見て祈ることしかできなかったあれを恋だともう呼んでいい
佐々木泰三
そのむかし一日おきに届いてたかなくぎ文字の君のはがきは
伯野(はくの)洋子
💮白き夜に睡(ねむ)らんとするひと思う七時間先を目覚めてわれは
永田聖子(きよこ)
気まぐれなマルハナバチを仲立ちにシロツメクサの遠距離恋愛
前川泰信
5割ほど残ったままの向日葵のパズルを君に任せて北へ
竹内一二(かずじ)
東京にはもう慣れましたか?ゴジラから逃げられる場所はありそうですか?
桜井あらん
最終の新幹線を見送れば恋に疲れたひとも残れり
関根一雄
ぼくが今蛇口を閉める瞬間にきみも蛇口を閉めてるはずだ
戸塚興
十キロの夜道歩いてきた君の思いに応えられないままに
柏瀬(かしわせ)豊

■恋バナ短歌 ゲスト 丸山桂里奈
青空は繋がるけれど目の前の曇天こそが私の今日で
カン・ハンナ 添削
繋がっている青空よ目の前の曇天こそが私の今日で

海を越えられると思っていた恋が今でも話しかけてくる「もし…」
星野真里 添削
大海(おおうみ)を超えきらめいていた恋が今でも話しかけてくる「もし…」

あんなにも楽しいくしゃみはもうないな夜道にはロング(Sad)バケーション
江戸雪

短歌侍武者修行! 元髙克樹 矢花黎
三味線を体験
過大「音を詠む」

元髙克樹 オノマトぺ(擬音語や擬態語のこと)を入れる
(演奏した時の焦りなど心情を表すオノマトペを作る 独創的なオノマトペ)
矢花黎 三味線の音を例える
(三味線を弾く動作を細かく描写する)

三味線講師 藤原英則さん
三味線の音は常に揺らいでいる

2022年9月19日月曜日

兼題「天高し」

歴史の闇に消えた宗達秋彼岸
秋の夜椅子におかれたジラソーレ
勘違いまた勘違い夕月夜
冷めぬ熱無駄な競争月渡る
澄む秋や箱なき老後趣味の日々

■NHK俳句 兼題「天高し」
選者 星野高士 ゲスト 黄皓(こうこう) 司会 武井壮

□冒頭の俳句
いづこにも龍ゐる国の天高し   有馬朗人(あきと)

□会いたい俳人、12人 有馬朗人
天が三物を与えた俳人と星野高士先生はご紹介くださいました。
平成30年蛇笏賞を受賞

孑孑(ぼうふら)のふらふら沈む力かな   有馬朗人
(孑孑とは蚊の幼虫 夏の季語)

□入選九句 兼題「天高し」
秋高し改札出れば旅の顔   中村良一
天高し百歳生くる世となりぬ   櫻木秀夫
②十方(じっぽう)へひびく梵鐘(ぼんしょう)天高し   永井栄子
体調に合(あ)はする歩巾空高し   山田ウメ子
天高しビルの谷間にビルが建つ   佐藤ひろみ
③天高し跳ね橋見ゆるところまで   深沢愛子
落葉松(からまつ)の梢(こずえ)に風や天高し   中尾公一
💮角のなき石に座りて天高し   渡部和秋
灯台のためだけの島天高し   村上修

□ゲストの俳句
うねうねと龍の近づく天高し   黄皓

2022年9月18日日曜日

サル痘とお役立ち哲学

群れ離れ秋のフランス肩並べ
よそゆきで態度を変える秋の街 
着るものが言葉態度のしむ身かな
秋気澄む奴隷としての覚悟せり
秋の駅リュック背中に弾くピアノ

■天然痘が日本で最初に流行したのは奈良時代
(天平の疫病大流行)735年から738年にかけて
九州で発生し全国にかけて流行した。
豌豆瘡(わんずかさ/えんどうそう)と称され
平城京では政権を担当していた藤原四兄弟が相次いで死去した。
737年(天平9年)には奈良の都で大流行した。
藤原武智麻呂(たけちまろ)藤原房前(ふささき)
藤原宇合(うまかい)藤原麻呂(まろ)
平城京で政権を担当していた藤原四兄弟も天然痘で死去した。
公式令(くしきりょう 律令法)があり
続日本紀という公式の記録に天然痘で何人死んだとか
どういう感染経路だったと書いてある。
当時の日本の人口400万人ぐらいのうち
およそ100万人が天然痘由来で亡くなった!

世界的に感染が広がる「サル痘」の特徴は?
ワクチンはある?気になる点を専門医に質問(前編)
【峰宗太郎×堀江貴文】
https://www.youtube.com/watch?v=6vOdznpftNA

■ロッチと子羊
今日のお役立ち哲学

ドゥルーズ 曰く
「自分を固定してはいけません
 固定化しないためには
 逃げるが勝ちなのです」

三木清 曰く
「個性とは
 例外になることなのです」
「個性とは却って
 無限な存在である」人生論ノートより

レヴィナス 曰く
「恋愛とは自分のものにならない
 他者にひかれることなのです」

カネッティ 曰く
「普通を求めるのは人間の本能です
 でも 自由を得るためには
 みんなの普通を疑い自分の普通を受け入れる
 必要があるのです」

2022年9月17日土曜日

食欲の秋で一句

16歳の老害となるホリえもん(無季句)
新米や寝さし味噌さえあればよし
苦しみがまた苦しみが秋あわれ
秋の蝶ピンが外れて飛び立たん
秋の声(横山)大観の描(えが)く無我

プレバト纏め 2022年9月15日
金秋戦予選Cブロック
食欲の秋で一句

1位 千原ジュニア
豚饅の油染むべい独楽の紐
(肉饅は冬の季語として載せ始める歳時記もある。
 独楽は新年の季語だが「べい独楽」は日常の遊びです。
 独楽の原型である「海螺(ばい)廻し」は秋の季語。
 海螺廻しは海螺貝の殻に粘土を詰めて駒とした遊び。)

2位 横尾渉
丸善の古書フェア檸檬ケーキの香
(「檸檬」は梶井基次郎の丸善京都本店が舞台の小説。
 「檸檬ケーキ」としたことで季語の力が弱まった。)

3位 皆藤愛子
梨噛んで潤う両耳の鼓膜
(後半の展開は評価が真っ二つに分かれる。
 みずみずしいと捉えるか?大袈裟と見るか?
 作者の表現意図は言葉の過不足なく表現されている。
 独自の感覚。)

4位 千賀健永
梨の滴り大地は幾度雨季を経て
添削(「大地」に比べたら季語「梨」が弱い。)
みずみずしき果汁よ梨よ雨季幾度

5位 的場浩司
銀杏を拾いし背でまあだだよ
添削(背中に背負った子の台詞に誤読される。
   「し」は連体形で「背」に続く
   「もっと銀杏獲れ」と言われているように詠める。)

敗者復活戦で選ばれた4名は
横尾渉、春風亭昇吉、松岡充、皆藤愛子に決定!
約1名私なら選ばない人が…。
視聴率を気にしておられるのかしら…?

2022年9月16日金曜日

ギュッと!四国 兼題「芋煮会」

運を使いこなす能力秋澄む
他人の目は気にならないの風爽か
空澄むやネオ江戸時代へ突入す
秋の声珍味醗酵目指すべき
日々届く硬き酢橘(すだち)の高き香

■ギュッと!四国 兼題「芋煮会」(秋の季語)
愛媛では「いもたき」として定着しているとか…。

ギュッと!特選
百個剥(む)き交代芋煮会前夜   あずお玲子
(選句ポイントは「時間軸を動かす発想」)

放送された俳句
調べども味は未知なり芋煮会   智空谷川
芋煮会?芋は炊くもの伊予大洲(おおず)   三有
大洲川妻も我が子も芋煮会   酔鯨 
(大洲川を肱川やにしても良かった。)
佳作 どこにおるん篝火(かがりび)のとこよ芋煮会   森静香
(どこおるん篝火のとこ芋煮会 と調整できる。)
佳作 里山で大学生と芋煮会   水佳
(では散文的なので里山やとしてもよい。
大学生らと里山の芋煮会 と添削。)
五色浜揺れる提灯芋煮会   うだつ幸子
(風も表現できている。)
佳作 風も止みて座ろうか芋煮会   トーマス阿波
秀作 かろがろと昼の月出(い)で芋煮会   矢野いろは
佳作 腕伸ばし豌をうけとる芋煮会   浜松ヘイタママ
(本年も中止川辺の芋煮会 本年も中止河原の芋煮会にするとよい。) 
川縁の今年も中止芋煮会   政子
秀作 故郷(ふるさと)の鉱山見遣(や)る芋煮会   星月さやか
秀作 ふるさとの川蟹(かわがに)の入(い)る芋煮会   瞳子

秀作への道 入選するための具体策
入選ポイント 書かなくても想像できることを削る
芋煮会皆(みんな)と会える楽しみぞや   小松カヅ子
(楽しみぞは不要。)
佳作 ガレージに親戚呼んで芋煮会   瑠璃星
(具体的な関係や映像が表現できている。)
ポイント 少しだけ詳しく書く!
佳作 芋煮会外(と)つ国の友加はりぬ  岡山小鞠
(具体的な人物と芋煮会を囲む雰囲気が表現できている。)
秀作 院生の李さん誘う芋煮会   みづちみわ
(留学生と解る表現がなされている。)

2022年9月15日木曜日

言葉にできない、そんな夜。

口をつくみつをの言葉秋の朝
秋の京煌めく歴史動き出す
欲のまま生きて疎まれ秋の蜂
百均で価格の二度見秋雲(あきぐもり)
秋めくや良くも悪くも鈍感に

言葉にできない、そんな夜。より
ゲスト 葵わかな 川谷絵音 井之脇海 村田紗耶香
進行 小沢一敬

□今夜のテーマ 
苦しくなるほど好きすぎてたまらない気持ち

人生狂わすタイプ
ここが地獄でも天国
バカになるほど 君に夢中
宇多田ヒカル「君に夢中」

私の心臓はあの時一部分
はっきり死んだと思う。
さびしさのあまりねじ切れて。
江國香織「号泣する準備はできていた」

私たちの髪の毛も、皮膚も、
あまりにも同質で、
触れ合うと同時に
液体同士のように溶解し、
境界線が見えなくなる。
完璧に溶け合った自分たちの
髪の毛の渦を見ると、彼女を
喪失している気持ちになった。
村田紗耶香

恋とは
一緒に生活できない人や
亡くなった人に強くひかれて
切なく思うこと。
広辞苑 第七版

初めてバーに行った時の気持ち
大人の階段(バー)は
急すぎて手すりが
ないと転げ落ちそう
小沢一敬

□今夜のテーマ 
失恋して悲しい以上の悲しみを感じたときの気持ち

私の半分はあなたで
そしてあなたの半分は 私でできていたのね
それならこんなに痛いのも 涙が出るのも
仕方ないことだね
back number「思い出せなくなるその日まで」

かつての同棲相手が
別の女性と新しい生活を始める
と知ったときの気持ち

わたしは奥歯で強く噛んで
涙をこらえた。
口の中いっぱいに拡がる漆黒の闇を
噛みしめているような気がした。
今後、耐えていかねばならない
野呂の不在は、わたしにとって、
無限の闇、無限の空洞だった。
小池真理子「愛するということ」

悲しくなる前に あなたを忘れちゃわないと
無理なのわかってるの と夜更けに向かって走った
涙が枯れたらさ またあなたを思い出すの
触れるか触れないかで 心臓が揺れるよ
indigo la End「悲しくなる前に」

2022年9月14日水曜日

究極の短歌・俳句100選ベストセレクション 旅と自然 &円楽師匠復帰

秋高し円楽師匠涙の復帰
想い万感円楽師匠秋の声
秋の虹中座努めん感無量
(円楽師匠)圓生の襲名意欲意気盛ん(無季句)
(円楽師匠)枯れて行く生き様見せん秋日和

【篠原解説】円楽さん涙の復帰・・・目指す「永久欠番」 落語界統一への思いも(2022年9月8日)
https://www.youtube.com/watch?v=6HiutpQLF4Q

■究極の短歌・俳句100選ベストセレクション(5)「旅と自然」

古池や蛙(かはず)飛(とび)こむ水のをと   
松尾芭蕉・江戸
閑(しずか)さや岩にしみ入蝉の声
松尾芭蕉・江戸
(山寺や石にしみつく蝉の声 推敲前の句)
柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺
正岡子規・明治
なが〱(なが)と川一筋(ひとすぢ)や雪の原
野沢凡兆(ぼんちょう)・江戸
雪解川(ゆきげがわ)名山けづる響きかな
前田普羅
一月の川一月の谷の中
飯田龍太・昭和戦後
滝の上に水現れて落ちにけり
後藤夜半・昭和戦前
滝落ちて群青世界とどろけり
水原秋櫻子・昭和戦後
遠山に日の当りたる枯野かな
高浜虚子・明治
たてよこに富士伸びてゐる夏野かな
桂信子・平成
春の海終日(ひねもす)のたりのたりかな
与謝蕪村・江戸
木がらしや目刺(めざし)にのこる海の色
芥川龍之介・大正

今日の推し俳句
水ゆれて鳳凰堂へ蛇の首
阿波野青畝(せいほ)・昭和戦後
蠅とんでくるや箪笥の角よけて
京極杞陽(きよう)・昭和戦後

2022年9月13日火曜日

題「魚料理」

秋半ば祭り騒ぎを生き行かん
穴惑ひ知らぬふりして生き行かん
人として生み出したくて草の花
何一つ残すものなし星月夜
波の音波の香りよ秋の浜

NHK短歌 題「魚料理」
選者 笹公人 ゲスト 井森美幸 司会 星野真里
レギュラー 本髙克樹 矢花黎

冒頭の短歌
竜宮城の夢から醒めれば舌の上に鯛の刺身のかけら残らぬ
笹公人

グルメの画像で一首
海岸に寝そべるマッチョの肌のごと油の滲むブリの照り焼き
笹公人
□の中に入る言葉は❓
我の心臓 カン・ハンナ
おじさんの腹 井森美幸
陸(おか)サーファー 星野真里

□入選九首 テーマ「魚料理」
唐揚げしか見たことがなくメヒカリの光る瞳が分からずにいる
川下知世(ちせ)
思いがけぬところに飛んで光ってる鯛一匹をさばいた夜に
栗本悦子
朝食の小鉢のじゃこに眠ってる一ミリの蛸あれば吉日
今西富幸
売れ残りだったエビ天チンしたらカラッとならず衣がとれた
原田来美
横文字の料理に飽きた旅先で二十五ドルの秋刀魚を食べる
檜澤さくら
カラフルな魚の並ぶ沖縄の市場は食べれる水族館
岡田淳一
魚籠(びく)を持つ父の姿が見えたのを合図に始める夕餉(ゆうげ)の支度
遠藤立子
💮舟盛りを両手に抱えひと時の海となりたる若き店員
夏野あゆね
煮たぎった鍋にやっぱりロブスター入れられなくて水槽のなか
椎名ろざな

□選者のお話「歌人のグルメ」
死にかけの鯵と目があう鯵はいまおぼえただろうわたしの顔を
東直子

□短歌ボナペティ ゲスト井森美幸
キーワード 海

鮭と海苔出汁の波打つ茶碗からつながる海はいまも青くて
カン・ハンナ
焼き鮭と昆布にこいめのお茶をつぐ海風を乞う出身群馬
星野真里
お茶漬けに鮭を浮かべて海を嗅ぐ美幸のひとりの夜をおもえり
笹公人

□短歌武者修行 本髙克樹 矢花黎
三味線を体験して短歌を詠む
栗木京子先生からの武者修行ミッションは「音を詠む」
音色を擬音・オノマトペで表したり
何かに例えてもよい
音の表現が一番印象に残るように

2022年9月12日月曜日

兼題「花野」

実力を超えた期待を葉月かな
妄想という究極の娯楽あり(無季語)
根拠なき自信を持ちて菊日和
感性が豊かにならん二日月
秋日照スタグフレーション打つ手なし

NHK俳句 兼題「花野」
選者 井上弘美 ゲスト 桃沢健輔 司会 武井壮

冒頭の俳句
サハリンの尖(さき)見えてゐる夕花野   井上弘美

俳句ナビ 花野
花園 花畑 花園との違い。
数種類の花が咲いてゐるか❓
人工的に作られたものか❓で区別する。

入選九句 兼題「花野」
💮カルデラの湖を一周花野道   田中耕泉
花野ゆく名もなき人になりにゆく   小林麻子
花野よりドローン飛ばす測量士   榧野(かやの)実
百坊の跡は花野となりにけり   中島正則
湖を抱き湖よりしづかなる花野   円堂実花(みか)
行くほどに花の繰り出す花野かな   村田一広
花野原振る手のあれば振り返し   古川稚佳子
大花野むかし遊覧飛行場   杉山満
トンネルの貨車の残響大花野   齊藤千哲(せんてつ)

俳句ナビ 添削コーナー
ナビゲーションポイント 
無駄な名詞を省いてスッキリ詠む

花野行き鈍行列車吾ひとり
添削(説明をなくす。)
花野へと向かふ鈍行吾ひとり

エールフランス花野の端(は)より飛び立ちぬ
添削(動詞を使って動きを出す。的確な言葉を選択。)
エールフランス花野をかすめ飛び立ちぬ

この恋を埋(う)める地としてこの花野
添削(主語を際立たせる。説明を省く。)
この恋をうづめむとしてこの花野

大花野水のたまりに吾(あ)と雲と
添削(着地を決める。)
大花野吾(われ)と雲ゐるにはたづみ(潦にわたずみ)

花野風揺れるも留まるリフトかな   桃沢健輔

2022年9月11日日曜日

月の歳時記

老人の集団自決秋望む
秋晴る広く深きへ好奇心
秋の声無感覚感学ぶべし
天高し積極的不登校
全て運大事にすべし蚯蚓(みみず)鳴く

■夏井いつき俳句チャンネル
【月の歳時記①】『秋の月』で百句チャレンジしてみませんか?

『夏井いつきの「月」の歳時記 見て感じて愉しむ秋の季語』
「月百句」というトレーニング
月齢に関する季語を紹介します
初月 初月夜(月が出ていない真っ暗な状態)
二日月 繊(せん)月(ほんの少し顔を出した状態)
三日月 新月(もう少し出た状態)🌒
上り月 上弦の月(だいぶ膨らんできた状態)弓張月 上(かみ)の弓張(ゆみはり)
半月 片割月(半分に割れた状態)月の弓 月の舟🌓
十日月(とうかづき)(かなり膨らんだ状態)
待宵(まつよい) 小望月(小望月)(満月の一日前の状態)
十四夜月(じゅうしやづき) 待宵の月(まちよいのつき)
名月(めいげつ)(名は讃える気持ちがはいっている) 満月🌕
十五夜 望月 良夜 良宵(しょう)

十三夜 中秋の名月の二日前ではなく一か月あとの月無月 
雨月(月の見えない状態)

■夏井いつき俳句チャンネル
【月の歳時記②】違いが分かりますか?2つの三日月、同じではありません

満月🌕
十六夜 十六夜(いざよい)の月 右側から黒い部分が増えてくる
立待月 十七夜
居待(いまち)月 十八夜月🌖
臥待(ふしまち)月 寝待(ねまち)月
更待(ふけまち)月 二十日月
降り(くだり)月 下弦の月 弓張り(ゆみはり)月 下の弓張
半月 片割月🌗
月の弓 月の舟
真夜中の月 二十三夜月
有明月 朝月夜 明けの月 残る月 残月
(新月に向かっている。暗くなっていく。)🌑

https://www.japandix.jp/topics/koyomi/004/

2022年9月10日土曜日

行楽の秋で一句

書道家も石へ収斂秋気澄む
雨降れど気温下がらず夜長かな
秋の虹アノマリーに踊らされ
人生の跡片付けや望(もち)くだり
囚われず伸び伸び生きる秋気澄む

プレバト纏め 2022年9月8日
金秋戦 予選B ブロック
行楽の秋で一句

1位 森口瑤子
秋晴や「アリクイさんぽ三時より」
(季語を詠嘆して措辞を置く単純な作り。
 季語を主役に立てた肩の力を抜いた句。)

2位 ミッツ・マングローブ
解熱剤効き秋晴の午後を知る
(「効き」「知る」の叙述が丁寧に書かれている。)

3位 中田喜子
数取器始動出水(いずみ)に鶴来る
添削(地名「出水」と夏の季語「出水(でみず)」は解り辛い。
   語順に問題がある。)
鶴来る出水よカウンター始動

4位 篠田麻里子
山粧ふ三年タグ付き登山靴
添削(夏の季語と秋の季語を入れた季重なりに挑戦した句。
   三年を三たびとし季語の描写とする。)
三たび山粧ふタグ付き登山靴

5位 北山宏光
紅葉且つ散る袖高欄の一樹
添削(難しい季語に挑戦!実力以上のことをしようとした。
   袖高欄とは橋や階段などの端に設けられた手すりのこと。
   表現したい事と会話するとよい。)
紅葉且つ散る遅速のありにけり
紅葉且つ散るに遅速の空青し

次週は予選Cブロック お題は食欲の秋

2022年9月9日金曜日

不知火とお役立ち哲学と和歌

民が後押しトリプル安へ秋意かな
秋の狩場自国通貨を売却す
日本人自国貶め秋黴雨(ついり)
ドル高アルゼンチン高円安へ(無季句)
秋の夢愛国心は今いずこ

■一分季語ウンチク 不知火(しらぬい)
怪しい字面にも魅了されて
思わず俳人の心を捉えてしまうそんな季語です。
この「不知火」というものは
陰暦8月1日前後の午前2時頃
まさにあやしいものが起きそうな時間帯です。
不知火海に走るように明滅する怪火(あやしび)
神秘な火であると歳時記には解説されています。
かつて天皇の九州巡行の際に現れた
という伝説もあったりします。
こういう少し神秘めいた季語に対して
俳人は色んな試みをしてみたい
あるいはその不知火を見てみたいという
空想などから俳句を作ることも多くあります。
実際にその不知火を見た人が世の中に
どれだけいるかは分からないけど
そういったものを夢想して楽しめるのも
また俳人そして歳時記の楽しみなのかもしれません。

■ロッチと子羊
お役立ち哲学

レーヴィット哲学の要約
無理にモチベーションを上げようとする
必要はありません
人は本来ひとつなのですから

アラン哲学の要約
先のことを心配する必要はありません
なぜなら音楽とは叙事詩のように
人生を表現するものなのですから

■和歌
住は又
すまれこそせめ
山里の
かけひの水乃
あるにまかせて
小堀遠州
瀬戸渋紙手茶入 銘 筧(かけひ)

2022年9月8日木曜日

名言と尻文字三角パス

秋の朝頬の寝あとはつけたまま
秋霞自分勝手な願い事
グリーンを挙動不審の赤とんぼ
秋の夜全ては神の思し召し
星月夜小さき家より犬の声

■名言
ジュリア・モーガン 曰く
「取るに足らないと思っても、
 仕事をむげに断ってはいけない。
 その仕事が何をもたらすか、
 やってみなければわからないのだから。」

ショウペンハウエル 曰く
「誰かが嘘をついていると思うなら、
 信じたふりをするとよい。
 そうすると彼は大胆になり、
 もっとひどい嘘をついて正体を暴露する。」

レッシング 曰く
「『いちばん性の悪い動物の名は?』と、
 王が賢者に尋ねたら、賢者曰く
 『荒っぽい奴では暴君、おとなしい奴ではおべっか使い。』」

■夏井いつき俳句チャンネル
【尻二字三角パス】「のひ」で始める優秀句

ぐりぐらもう一回読んで端午の日   ローゼン千津

野平家の丸と四角の雑煮餅   千暁
野平も二人いるのか入学式   松虫姫の村人
のひら質店猫の子にも質札   夏雨ちや
の一つと括れぬ夕焼の海は   小豆白虎
の比じゃないほどに分厚い花筏   いさな歌鈴
「の秘密シリーズ」見つけた夏休み   狩谷和寓
「の干物」の前をカマスに書き替える   アントニオ
「の~ひ」は第五巻良夜の調べもの   風早みつほ

努力賞
野光りて初仔駆け出し山笑う   天上たこ
野ひやゝかロザリオ爪繰りて行けば   アロイジオ
野、日毎に春を生みおとす懐   岬ぷるうと
野羊の14キロの毛を刈れり   川越羽流

【尻二字三角パス】は何が面白いのか?私には意味不明!

2022年9月7日水曜日

言葉にできない、そんな夜。

根元から伐採されし百日紅
キャッシュレス毎度どきどき秋初め
蚯蚓(みみず)鳴く他人変えるよりまず自分
尊敬を知らない人よ秋湿り
付きまとう羽音元気な秋の蠅

言葉にできない、そんな夜。
木村カエラ・板垣李光人(りひと)・佐久間由衣・金原ひとみ・小沢一敬

テーマ 推しに会えた瞬間の気持ち

もうね、行って良かった
じゃないですよ。
生きてて良かったですよ。
生まれてきて良かったですよ。
私を形作った精子と卵子に
ひれ伏したいですよ。
金原ひとみ「ミーツ・ザ・ワールド」

結論から言うと、
命の危険を感じた。
それぐらい
輝きがすごかった。
一年分の許容量を
大幅に超えるきらめきが
短時間に押し寄せたため、
我が体内の
「きらめき貯蔵袋」は破裂した。
三浦しをん「のっけから失礼します」

実力以上に
自分を見せようとするので
結局は手足を
一糧(せんち)動かすにもおどつき、
ひとこと喋るにも
びくついてしまうのである。
井上ひさし「吉里吉里人」

テーマ 実家のにおいをかいだときの気持ち
その匂は私に取って
依然として
懐かしいものでありました。
一学年の単調を
破る変化としても
有難いものに
違いなかったのです。
夏目漱石「こころ」

何よりも便所へ這入(はい)って
昔嗅ぎ慣れた
匂いを嗅ぐときに、
幼児の記憶が
交々(こもごも)よみがえって来て、
ほんとうに
「我が家へ戻ってきたなあ」
という親しみが湧く。
谷崎潤一郎「陰翳礼讃」

実家の匂いに胸が苦しい、
でもなぜだろう
今日こそは
仲直りができる気がする、
今日だけは
くつろげる気がする
綿矢りさ 書き下ろし

2022年9月6日火曜日

テーマ「カラオケ」

秋の夜タオルケットを抱きしめて
雲光る双雲と悠輔出会う
うまくいかない時こそチャンス秋意かな
蚯蚓鳴く存在価値我にあるや
石よりも強きもの無し秋の空

□NHK短歌 テーマ「カラオケ」
選者 栗木京子 レギュラー 元髙克樹 矢花黎 司会 小沢一敬

■冒頭の短歌
水底(みなそこ)の魚になりつつ唄ひをり真夏の午後のカラオケボックス
栗木京子

■短歌侍への道
歌の中に2人以上の登場人物を入れてほしい
関係性が滲み出ると歌に奥行きが生まれる
短歌は1人称の文芸
相手のことを詠めば自分と相手がいることになる
相手のことは直接言う必要はない
気配や描写で登場人物が複数いることを伝える

■例歌
カラオケの前奏のとき少しだけした雑談も覚えていよう
榊原紘

■Lesson1
歌の中に2人以上の登場人物を入れる

■Lesson2
視聴者のエピソードを短歌に
実践
視聴者のエピソードを元に短歌を作る。

カラオケでいつもの曲を大合唱失恋忘れ帰路に鼻歌
本髙克樹

励まされ気分が晴れた店先で夜風に揺れるカラオケの旗
矢花黎 添削
励まされエコーを浴びた店先で夜風に揺れるカラオケの旗

こんな日に集まってくれてありがとうこの歌聴いたら元気出すから
小沢一敬 添削
灰色の日に来てくれてありがとうこの歌聴いたら元気出すから

■入選歌紹介 テーマ カラオケ
カラオケで曲を入れないあの人はマイクを持ってハモリ続ける
愛知県犬山市 紅紫あやめ
わたしからわたしを放つ二時間のトリップとしてひとりカラオケ
石川県金沢市 塩本抄
先方へ謝罪に向かう社用車で課長が始めたカラオケ大会
千葉県我孫子市 森屋たもん
サビだけを歌いこの曲さがしてと懐メロ知らぬ孫を困らす
東京都練馬区 粕谷由美子
カラオケにギター持参し歌わずに間奏を弾く息子の奥さん
埼玉県鴻巣市 三浦忠裕
💮聞いてない歌にもヤンヤと拍手する大人のルール学ぶカラオケ
京都府京都市 稲田新吾

■Lesson3
出演者のエピソードを短歌に
ふたりの関係性が伝わるように

昔から憧れていた歌声に少しは今夜追いつけたのかな
小沢一敬 添削
五歳から憧れていた歌声に二十歳の今夜追いつけたのかな

二十年近くで聴いた歌声に誉めてもらえた記念日は今日
矢花黎 添削
二十年そばで聴いてた歌声に誉めてもらえた記念日は今日

久々のカラオケで得た採点は「昔と今じゃ別人」だった
本髙克樹 添削
カラオケで得た達人の採点は「昔と今じゃ別人」だった

■短歌対決!
高校生最後の夜にカラオケで円陣を組みヘッドバンギング
本髙克樹 添削
高校生最後の夜カラオケ円陣を組みヘッドバンギング
(ヘッドバンギング (英: head-banging) とは主にロック、
 ヘヴィメタル、ハードコアなどのギグ、ライヴコンサートで
 見られる共鳴的動作の一つ。
 リズムに合わせて、頭を激しく上下に振る動作である。
 しばしば略してヘドバンとも呼ばれる。)

ライブ前横の楽屋から響いてる緑の彼の一人カラオケ
矢花黎 添削
ライブ前横の部屋から忍びこむ緑の彼の一人カラオケ

サビ前で視線を外し声を下げエリーを別の名前で歌う
小沢一敬

■復習侍
今回の学び 細やかな描写

2022年9月5日月曜日

兼題「啄木鳥」

陽光へパンパスグラス伸び伸びと
秋の蠅恋に悩みて手を合わせ
秋の夜グローバル化か分断か
ディスられてまたディスられて秋麗
予報とは当たらぬものと秋の雲

NHK俳句 題「啄木鳥(きつつき)」
選者 髙柳克弘 ゲスト レイザーラモンRG 司会 武井壮

■冒頭の俳句
みな覗く指入れる啄木鳥の穴   髙柳克弘

■俳句と映像
啄木鳥の傍題
木突 けらつつき けら 番匠鳥(たくみどり)
赤げら 青げら 小げら 山げら 熊げら
三趾(みゆび)げら 蟻吹(ありすい) 木たたき

啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々   水原秋櫻子
啄木鳥は秋の季語 落葉は冬の季語 季重なり
昔は季節の移ろいを季重なりで表現していた。

啄木鳥に応援されて天城越え   レイザーラモンRG

■入選九句 兼題「啄木鳥」
啄木鳥や駅長室の双眼鏡   西田美佐緒
ザック生乾きの朝や啄木鳥   松田蕾子
啄木鳥やチタンカップのみづ清(きよ)ら   姫川ひすい
啄木鳥が汽笛が風がテレワーク   山本勝由
💮啄木鳥やつつき散らしてつんと立つ   佐藤マサ子
ふくらはぎのきゅっと山の子けらつつき   高木比美樹
啄木鳥に叩かれどんと大樹かな   樋口範子
啄木鳥の昨日励まし今日祝ひ   石井美髯
森ゆれる啄木鳥みなで森ゆらす   笑姫天臼

■お題動画で一句
電信柱をつつく啄木鳥で一句
啄木鳥の嘴(はし)の奏づる沈黙(しじま)あり   武井壮
嗤(わら)へるか電柱を打つ啄木鳥を   髙柳克弘

2022年9月4日日曜日

究極の短歌・俳句100選ベストセレクション 女性とは

秋陰や顔面骨折後遺症 
撮れました捕ったことなき秋茜
一斉に最敬礼の稲穂かな
青き空巨大な西瓜裂果せり
ずっしりと畝に埋もれた胡瓜かな

究極の短歌・俳句100選ベストセレクション(4)「女性とは」

短歌
黒髪の乱れも知らずうち臥せばまづかきやりし人ぞ恋しき
和泉式部・平安
春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳(ち)を手にさぐらせぬ
与謝野晶子・明治
後世は猶今生(こんじやう)だにも願はざるわがふところにさくら来てちる
山川登美子・明治
早春のレモンに深くナイフ立つるをとめよ素晴らしき人生を得よ
葛原妙子・昭和戦後
灼きつくす口づけさへも目をあけてうけたる我をかなしみ給へ
中城ふみ子・昭和戦後
かたはらにおく幻の椅子一つあくがれて待つ夜もなし今は
大西民子・昭和戦後
たとへばガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか
河野裕子・昭和戦後

俳句
おほた子に髪なぶらるゝ暑さ哉
斯波園女(しばそのじょ)・江戸
咳の子のなぞなぞあそびきりもなや
中村汀女・昭和戦前
囀(さえずり)をこぼさじと抱く大樹かな
星野立子・昭和戦前
足袋つぐやノラともならず教師妻
杉田久女・大正
夏痩せて嫌(きら)ひなものは嫌ひなり
三橋鷹女・昭和戦前

今日の推し短歌
花の上にしばしうつろふ夕づく日入るともなしに影きえにけり
永福門院・鎌倉
夜半さめて見れば夜半さえしらじらと桜散りおりとどまらざらん
馬場あき子・昭和戦後

2022年9月3日土曜日

ファッションの秋で一句

秋北斗朝刊配るバイク音
菊芋や上へ上へと伸び行かん
生かされて生きてきました星月夜
踏むリスク逃がすリスクよ長き夜よ
秋の宵独りで生きる自信なし

プレバト纏め 2022年9月1日
金秋戦 予選Aブロック
ファッションの秋で一句

1位 藤本敏史
マネキンの坐骨デニムに入るる秋
(「入るる」は文語。 
 観察したことを言葉で表現できている。)

2位 春風亭昇吉
錦秋のショーウィンドーに映る黙
(「錦秋」は錦の織物のように彩られた秋の光景。虚構の季語。
 この措辞が虚構の季語の立ち位置を与えた.
 映らない沈黙を見事に表現。「映る」がキーワード。)

3位 松岡充
星月夜ファーストピアスの重力
(初めて穴を開けたピアスの微かな重さ、存在感。
 表現意図を尊重すべき。質量。)

4位 馬場典子
闊歩するトレンチコート風爽か
添削
闊歩するトレンチ風は爽かなり

5位 犬山紙子
稲妻やタートルネック子に着せる
添削
稲妻の夜(よ)や一枚を子に着せて

春風亭昇吉さんと松岡充さんの作品に魅了されました。
惜しみない拍手を送ります。

次週は予選Bブロック
お題は「行楽の秋」

2022年9月2日金曜日

名言と一色正春氏Twitter

傷ついた人の心や秋起し
甘き香の秋果並ばん千疋屋
姫茜ゴルフバックにしがみつき
秋茜帰路のドライブふたり連れ
螻蛄(けら)鳴くやら抜き言葉の丁寧語

■Twitter より
一色正春@nipponichi8
昨今の「社会全体で一つの敵を攻撃しなければいけない」
「一緒に攻撃しない奴は敵だ」という風潮を見ていると、
戦前の我が国は、こうやってメディアに
扇動され戦争に突入したのだろうと思う
時代は変われど躍らせる阿呆と踊る阿呆は変わらない

命が大事という人ほど他人の命は軽視する
平和が大事という人ほど争いを好み
暴力は許さないという人ほど暴力的
多様性が大事という人ほど排他的
話し合いが大事という人ほど話し合わない
差別をするなという人ほど他人を差別する
他者に厳格性を求める人ほど自分に甘い

ご指摘の通りだと思いました。

■名言
野口英世 曰く
「人寸陰を惜しまんば
 我分陰を惜しまん。」

新庄剛志 曰く
「一寸先は闇じゃない。一寸先は光。」

田坂広志 曰く
「決断とは『決める』『断つ』。
 そして『断つ』には2つある。
 ひとつは迷いを断つ。
 二つは退路を断つ。」

2022年9月1日木曜日

名言と「霧」

グリーンの蜻蛉めがけて振り抜かん
直島の時代とコラボ秋麗
音違え土に還らん秋時雨
秋風に束ねられずに乱れ髪
優しさと優柔不断秋の声

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク 霧

気象としての「霧」です。
空気中の水蒸気の気温が下がって凝固し
白く「霧」が出てきます。
この2音の季語というもの
使いにくかったりしますよね。
そういう場合に備えて「霧」は
いろんな言い方のVariationがあります。
傍題です。
「朝霧」や「夕霧」「夜霧」みたいな
時間の情報を入れ込むこともあったり
その「霧」の濃く立ち込めてくる様子
なにかを言ったりもします。
例えば「霧襖(ふすま)」とか「霧時雨」
何て言う言い方もあります。
この色んな表情のある「霧」ですが
それぞれ実際に危険じゃない範囲で
体感して句を作ってみたいものです。

■名言
ジャッキー・ロビンソン 曰く
「『不可能』の反対語は『可能』ではない。
 『挑戦』だ。

ジョセフ・マーフィー 曰く
「あなたが困った状態にあるとき、
 もっと困った状態にある人のために祈りなさい。
 そうすると、あなたは突如として
 自分自身の問題が解決していることに気づくでしょう。」

バートランド・ラッセル 曰く
「賢人は、
 避けられる不幸を座視しないし、
 避けられない不幸に
 時間と感情を浪費することもない。」