サーディンランや産卵のため群れる冬
北上すサーディンランを探す冬
暗闇のサーディンランの冬来る
隼(ハヤブサ)の声聞きながら眠る山
低く飛び獲物狙わんのすりかな
■NHK俳句 兼題「帰り花」
選者:高野ムツオ ゲスト:細谷喨々(りょうりょう) 瀬戸優理子
小坂大魔王 関取花 司会:柴田英嗣
年間テーマ「語ろう!俳句」
帰り花は初冬の季語 基本的には木の花のこと 桜とか躑躅とか
冬になって眠りに入る木 日差しで勘違いして花開いた
①
丸顔に赤い口紅帰り花 関取花
②
帰り花夫婦はゆるやかな掟 瀬戸優理子
③
先生の手植ゑにふたつ帰り花 細谷喨々
④
帰りばな繋ぎし手離れもう一度と 小坂大魔王
⑤
帰り花また止まりしは幻影か 高野ムツオ
・特選三席発表
一席 此(こ)の木いま夢をみてゐる帰り花 山地千晶
二席 返り花一つと寄らば二つ三つ 田上(たがみ)邦雄
三席 帰り花とは山祇(やまつみ)のひとりごと 葉村直
特選
変はる町変はらぬ生家帰り花 西鯖男
今日からは一人の散歩返り花 とひの歌穂
ひとはまだ還れぬ町に帰り花 今西富幸
幼名は呼ばれしやうな帰り花 東かつじ
落し物拾ひに戻り帰り花 平本雅子
点滴を押して近寄る帰り花 井上勝弘
■NHK短歌 テーマ「初恋」
選者:木下龍也 ゲスト:西炯子(けいこ) 司会:尾崎世界観
年間テーマ「“伝える”短歌 “伝わる”短歌」
30代のころ やっかいな恋愛をしていたときに
短歌なら文字数を食わなくていいので
相手とパソコンで短歌のやり取りをしていた
という黒歴史があります 西
「初恋」にしておけば 遠い記憶から引き出してくれると思った
遠い記憶であればあるほど短歌として引き寄せた時に
物凄いポエジーが生まれたりする場合が多い 木下
・入選九首 テーマ「初恋」
二席 私から一歩も外へ出なかった静かな静かな三月の恋
坂本真衣子
初恋の飛行機を待つあのビルは赤い光を点滅させて
大岩真理
私 放課後にリップクリーム塗りあってそういうことになりそうな冬
山口正剛(せいごう)(キスがまだ主体的にとらえられていない年代の表現
相手を肉体の欲求ととらえた瞬間の句 恋の本質ここにあり!
恋が芽生えたとき 肉感を伴って恋の本質を歌っている 触りたくなる)
先輩の生まれた町では探せないように眼鏡を外して歩く
河原こいし
一席 コンビニで高いサラダを選ぶときふと湧き上がる大好きってゆって
谷祐里奈
これまでの僕じゃなかったでも何に変えられたのかわからなかった
雑賀一樹(内なるためらいが巧く詠み込められている)
言わなければ遠く遠くへ行けるのに眠るきみに次だよと教える
長尾桃子(この構図は西先生が好きな光景だとか)
何事もぶっ通そうとしてしまう冬の初めの枯葉を踏んで
樋口淳一郎
三席 告白が初めての君にアドバイス 室外機の風当たってまーす
吉品えーゆ(恋ってこういうモノかな❓が詰まっている歌)
・“伝える”短歌 “伝わる”短歌 木下流短歌の育て方
西炯子「初恋」小学3年生のとき同級生の
とても頭の良い美しい男の子M君がいました。
遠くから見ているしかありませんでした。
仕方ないので授業中M君の絵を描いていました。
M君とは話すこともできませんでしたが、
絵に描いたM君は私だけのものでした。
真正面から見ることはできないので、横顔ばかり描いていました。
我ながら美しく描けていたのです。その出来にうっとりしていました。
男子に選ばれない女子にできる精一杯の想いの寄せ方でした。
たくさんの書くに紛れて描きながら恋をノートに打ち明けていた
⇩
横顔に恋をしていたころのキスは絵にした頬にするものだった
⇩この愛情表現保存にしたことは紙一枚挟んでそのページを保存した 西
鼻筋をおりて上唇へゆくふるえるなふるえるな先端
唇のあたりを描く時は触れられるわけでもないのに「今私のもの」
みたいに ここをうまく描ければ私のものになるみたいな
そんなイメージを持っていたかもしれません 西
子どもの頃は線に描いて手元に置いてしまえば
これが私のものになるとイメージしていた 西
人の顔を描く時もできるだけ似せる すごく似るとそれはもう満足
実物のことはどうでもよくなる 西
文章を書く時もそう 線というのは まだない気持ち
よくわからない気持ちを線にして 何となくそこに触れたような
気がする時はうれしい
・ことばのバトン
散歩道言の葉の塔ゆれてゆれて
竹田信弥 書店主
⇩
渡せなかった手紙を燃やす
谷口泰星 コピーライター
選ばなかったものも弔(とむら)いたい気持ちがあったかもしれない
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