(越智晃氏) ファツィオリが調律任せた冬来る
ファツィオリとヤマハとカワイ競う冬
孤のための孤軍奮闘越智(晃氏)の冬
壮大なエリック・ルーの冬の音
ファツィオリが五年後光る冬を勝つ
■あの本、読みました?
昭和を描いた小説「国宝」「宝島」未解決事件&オリンピック
真藤順丈(じゅんじょう) 木内昇 池谷真吾 塩田武士 小川哲 伊藤蓮矢
鈴木保奈美 山本倖千恵 林祐輔P
昭和を描いた小説 汗と涙と情熱と…。
さまざまな顔を持つ昭和を描いた小説
昭和を描いた小説 戦後編
・「青い壷」有吉佐和子著/文春文庫
・「デモクラシーのいろは」森絵都著/KADOKAWA
・「オリンピックの身代金(上)(下)」奥田英朗著/講談社文庫
・「罪の声」塩田武士著/講談社文庫
・「国宝 上 青春篇」吉田修一著/朝日文庫
池谷真吾 変わらない不変の心
「国宝 下 花道篇」の一文 吉田修一著/朝日文庫
「…なんや、あんたのこと気に入ったわ。
あんたの忠義心か親心か知らんけど、それに免じて、
あの娘のことは諦めたる。指つめて帰ったらええ」
組長の口からさらっと出た言葉にざわついたのは組員たちのほうで、
当の徳次はといえば、「子故に捨つる親心」と口にしながら、
すでに覚悟ができていたような心持ち。もしかすると、
事務所に連れていってくれ、と頼んだときから、いや、
ヤクザと関わりのある暴走族から綾乃を連れ戻すと決めたときすでに
その覚悟はできていたのかもしれません。
その後、徳次のまえに用意されましたのは、白木のまな板と
よく磨かれたの鑿(のみ)ございます。袖をまくり、酒を口に含み、
淡々と準備を進める徳次に、「あんた、役者の付き人にしとくの惜しいわ」
とは組長で「兄弟の盃交わしたんが、あいにくの色男。しゃーないですわ」
答えながら、小指の関節に鋭い鑿(のみ)を置きました徳次は、
その小さな鑿(のみ)の上に自分の体を乗せたのでございます。
・「宝島(上)(下)」真藤順丈/講談社文庫
第160回直木賞受賞作
戦後の沖縄を描いた理由
オンちゃんのモデル(シンボルティックな英雄 孤児)
戦果アギヤー:米軍基地から物資を盗み出して人々に分け与える若者のこと。
物語でオンちゃん、グスク、レイは戦果アギヤーとして登場。
昭和100年の今年にスポットを当てる理由
刑務所でのレイとグスクの会話
レイは仲間と脱走するため暴動を企んでいる
「宝島(上)(下)」の一文 真藤順丈/講談社文庫
「おまえは来ないのか、相棒(グー)。ここには兄貴(ヤッチー)はいないぞ」
「玉砕はしない。死んだらオンちゃんも捜せなくなる」
「だろうな、おまえは来ない。おれは来ない。おれは行くからさ」
「待たんね、おまえは自分の言葉(ドゥー・ヌ・クトゥバ)を見つけたのかよ」
「ああ、なんだって?」
「おまえが言ったことやさ、どんなやつが英雄なのかって」
「ああそれな、そうだねえ」レイはすこし間を置いて、
「虐げられた人たちを解放できるのが英雄さぁね。
そのために戦える力をそなえるのが英雄さぁね。
おれたちが追いかけてきたのはそういう男だったさ、おまえも知ってるよな」
ああ、そうだな。コザでいちばんの戦果アギヤーはそういう男だった。
だけどおれはこう思う。
グスクはようやく見つけた自分の言葉(ワー・ヌ・クトゥバ)を口にしたのさ。
「この世界には、いったん転がりはじめたら止められないものがあるさ。
貧乏とか病気とか、暴動とか戦争とかさ。そういうだれにも
止めらえないものに、待ったをかけるのが英雄よ。
この世の法則にあらがえるのが英雄よ」
“英雄の不在”があぶり出すもの 戦後のありよう
沖縄の方言をたようした意図
真藤順丈の描くもの 心情よりも人物の骨格・臭い・温度・湿度・逞しさ
最新作 「英雄の輪」真藤順丈著/講談社
・「地図と拳(上)(下)」の一文 小川哲著/集英社文庫 直木賞受賞作
石本とは東横線の代官山駅で待ち合わせた。
(中略)
四辺を坂道で区切られた区画のちょうど中心に目的のアパートがあった。
同潤会が設計したという重ね建て四戸は、鉄筋コンクリート造りで、
下階は東西が出入り口となったおり、上階には北側の階段から
上がるようである。大震災の後に建てられたことは間違いないようだが、
モダンというよりは紋切り型の建築だった。
二階の手前が中川の部屋だった
(中略)
明男は慌てて立ちあがった。尻の下にはフランス語の論文が置かれていた。
「ル・コルビュジェ」石本がそう口にした。
中川が「知ってるのか?」と聞き返した。
・「かたばみ」木内昇著/KADOKAWA
執筆のきっかけ
ステップファミリー:血縁のない家族関係を描きたいと思った
野球好きで戦死した球児たちを描きたかった
神代神:出征した早稲田大学野球部のエース神代清一のニックネーム
執筆するうえで気をつけたこと
「かたばみ」の一文 木内昇著/KADOKAWA
「この校庭のどこでもいいですから、
みなさん好きな場所に寝っ転がってください。
そうして、よくよく空を見てください」
雲間から太陽が少し覗いている。
わたる風が頬や首筋を励ますようにさすっていく。
生徒たちは、悌子の言葉に顔を見合わせている。
「さ、早く寝転んで。しばらく空を眺めたら、
ご自身が戦争が終わったあとにやりたいことを大きな声で
言ってみましょう。寝転んだままでいいですからね」
(中略)
ことに今は戦時下で、子供たちは我慢を強いられている。
思考まで統制されている。思ったことを思ったままに
口にすることさえ、慣れていないのだ。
(中略)
しばらく静かな時が流れた。やがて、最初に寝転がった幸子が、
「髪飾りをつけて、赤いスカートをはいて、
銀座の街にお買い物に行きたい」と、小さな声で発した。そこから、
「父さんと海釣りに出かけたい」「とびきり甘い飴を三十個なめる」
控えめな言葉が連なっていく。
「もっと大きな声で。空に届きませんよ」
悌子は明るくうながした。「父さんと母さんとまた一緒に住む」
「兄ちゃんと腹一杯文字焼きを食べる」
大声で叫ぶうちおかしくなってきたのか、
生徒たちは空を向いたままケラケラ笑いはじめた。
時代の空気感を描くために参考にしたもの
権蔵:悌子の下宿先の家主の義兄 六助:権蔵の仕事仲間
「かたばみ」の一文 木内昇著/KADOKAWA
「六さんは、生きてて楽しいですか?」思わず訊くと、急になんだね、
と六助は眉をひそめたが、やがて揚々と答えた。
「楽しいもなにも、生まれえきたんだから生きるんだよ。
それが生命ってもんだよ。あのね、よくあるだろ、
『人は、なぜ生きるのか』ってな問答が。不毛だよー、ありゃ。
ごちゃごちゃ考えてねぇで、どんどん生きりゃいいんだよ。
七面倒くせぇ」
描きたかった”日常“
戦争の中に人生があるのではなく 人生の中に戦争があった
・「普天を我が手に 第一部」
「普天を我が手に 第二部」奥田英朗著/講談社
伊藤蓮矢
奥田英朗がこだわった点
いろんな生き様があったんだよ
竹田耕三:日米開戦に反対する陸軍の少佐
紡績工場で起こったストライキ。矢野一家の親分
矢野辰一がストライキをたき付けた男女を換金する。
「普天を我が手に 第一部」奥田英朗著/講談社
「誰だ、貴様たちは!大方湯川紡績に金で雇われたやくざだろう!
早く解放しろ!自分のやっていることがわかってるのか!」
男は大声で言い返した。ただし膝が震えているので虚勢だろう。
「女はどや。二度とせんと言うなら、勘弁したってもええけどな」
「誰が勘弁してくれって言った。わたしは最後まで闘うぞ!」
女も降参しなかった。
辰一はいくつか組合つぶしをするうちに、彼らの扱いがわかってきた。
みなが揃って同じような決め口上を言うのは、
何かに洗脳されているからである。従って手打ちはない。
「そうか。ほなら覚悟せえ」辰一はそう言うと、貞夫から日本刀を
受け取り、抜いた。顎で子分たちに指示を出す。
子分たちは男の縄をほどき、左腕を真横に伸ばした。
二の腕にさらしを巻いてきつく縛り、二人がかりで抑え込んだ。
「な、何をするか」男が動揺した声を発する。
「おのれ、右利きか」「そうだ」「ならええ」
次の瞬間、辰一は日本刀を力一杯振り下ろした。
男の左腕が、肘から切断された。ポトリと土間に落ちる。
「うわーっ!うわーっ!」男は数回絶叫したのち、気を失った。
昭和初期の空気感
福澤徹三:ホラー
怪談実話 クライムノベル 警察小説など
幅広いジャンルの作品を手掛ける小説家
今回取り上げた作品を読むと…
竹田志郎:軍人・竹田耕三の息子 アメリカで捕虜となり
帰国後は日本の捕虜収容所の通訳に
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