2025年11月18日火曜日

知恵泉 曲亭馬琴

香り聞く風呂に浮かべた木頭柚子

木頭柚子熱き紅茶へ折り曲げん

今もなお官尊民卑冴ゆる夜(さゆるよ)

冬の空赤く色づくナナカマド

人参やビニール被りほっこりと

 

■知恵泉 曲亭馬琴

曲亭馬琴は蔦屋重三郎に見いだされた江戸後期のベストセラー作家

代表作は「南総里見八犬伝」28106冊 空前の大作

ゲスト:祖父江慎 品川祐 板坂則子

 

本名 滝沢興国 武家の出身 文学的才能の片りん

自分探しをしているうちに 寛政2(1790)24

黄表紙の大ブーム 6歳年上の山東京伝は「才気」を見ていた

馬琴は浄瑠璃 兵書 漢籍 軍紀 古典 などの知識を持っていた

蔦屋重三郎に紹介 蔦屋で住み込みで働くことに 

寛政3(1791) 初黄表紙発売 「廿日余り四両尽用而二分狂言」

(はつかあまりにしじゅうろうりょうつかいくしてにぶのきょうげん)

売れ行きさっぱり 致命的欠陥 都会的おもしろさがなかった

 

知恵その一 不得意を克服せず 得意技で勝負しろ!

寛政3年夏 寛政の改革 黄表紙は政治を批判 風紀を乱す

京伝が逮捕される 硬派な文学の時代が来ると馬琴

中国の古典 儒教 日本の歴史 戦の知識 

「椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)(文化4)

源為朝が主人公 馬琴によるうんちく解説 

ファンタジー長編 読本(よみほん)

挿絵を担当したのは葛飾北斎(富岳三十六景で有名)

壮大な構想があって歴史の空白域をフィクションで

埋めていくというような作り方 歴史ロマンになっている

 

文筆業は副業にしかならないという常識を覆した

筆一本で食べていかれる作家の誕生

京伝は戯作者として文才があっただけでなく一流の浮世絵師でもあった

馬琴は京伝から絵の力を学んだ

絵の大切さに気づいた馬琴は葛飾北斎と組む

最初の頃は北斎も二流 馬琴も二流 10年後見事に華が開く

馬琴も北斎も超一流になった 

「椿説弓張月」は文章と絵 両方が一流

2人は10年間一緒に仕事をして成功を収めたが

以後2度と協力し合うことはなかった

 

祖父江慎

不得意なものに対して得意になるのは無理 

苦手なまま突き進めば 苦手な人の賛同が得られる

時代は動くから追いつくのか追いつかないかは

たまたま乗るか分からない いいとされているものに

“乗っかる”のはよくない

 

馬琴は読本にたどりつくまでが大事だった

自分の得意技が何なのかを見つけるのは難しい 板坂則子

 

馬琴は自分が読みたいものを書きそれが時代に刺さったのでは 品川

 

発見が次の発見を生む そのものと向き合ったとき

今まで思ってなかった大切なことが見える 祖父江

 

文化11(1814)48

スター作家になっていた 満を持して取り掛かったのが

「南総里見八犬伝」水滸伝からアイデアを貰いながら

日本の歴史や伝承 一大ファンタジー 一大エンターテインメント

この作品には馬琴の理想が込められている

仁義礼智忠信孝悌 人間が守るべき理想を表現

 

知恵その二 妥協せず 理想を追えば大業につながる!

武士から町人に変わった 町人の家に婿入り

武士の身分を捨てたことを後悔していた

武士の理想に共鳴していた 名誉 勇気 忠義 道徳 正義 社会の手本

武士の身分に戻ることが目的となっていた

息子の宗伯に期待 医師として松前藩から扶持(ふち) 若くして病死

孫を武士にする策を探す

御家人株 生活に困った御家人が身分や役職を株化して売れるようにした

資金集めのため 馬琴は書画会でサイン入り扇を売ることに

八犬伝の世界の中に理想を映し出そうとしていく

 

天保11(1840)74歳 目が見えなくなる

最初はアルバイトを雇って口述筆記をさせたが…すぐに辞められてしまう

困り果てた馬琴の前に現れたのは息子宗伯の妻「お路」

天保13(1842)完成

 

南総里見八犬伝の魅力 祖父江慎

話の作り方の上手さ 書きっぷり 原文は怖い 

 

馬琴もすごいけどお路も普通ではない 板坂

 

宗伯とお路は仲は良くなかった 宗伯はDVの酷い人だった

お路がお路らしく生きだしたのは夫が死んだあと

生きていく目的を見出した

江戸中が次どうなるんだろうと思って待っていた

戯作(げさく)の地位が上がっていく 明治になり

鴎外や漱石のような立派な地位の人が

小説を書いても恥ずかしくなくなっていた

自分の本が世の中を変えていく 人間を高みに連れて行く 板坂

 

馬琴は七つのルールがあると説いている

稗史七則 馬琴がまとめた小説の創作技法

六つまでは中国に伝わるものそのままだが 七つ目は馬琴の作ったもの

隠微(いんび):作者が書いた文章に隠されている本当に伝えたいメッセージ

百年後に読まれ続け その時代の読者にも 自分の真意を届けたい

自分が死んだ未来もこの本を読む人がいて自分の真意を分かってくれる

その為に自分は書く 板坂

 

ほどほどの妥協は必要 妥協しつつもそれに伴う

残念と向き合い続ける 祖父江慎

 

馬琴の一生は挫折の連続 本当に自分がダメになってしまいそうな

挫折があった時にどうやって自分を信じるか 自分の力を信じて立ち上がる

板坂

 

思った通りのものが出てくると楽しくない 祖父江慎

0 件のコメント:

コメントを投稿