夕顔がふたつ開かん武相荘
陶板の備前焼置く武相荘
広重の世界広がる武相荘
広重が描いた芝浦海辺かな
武相荘朱色鮮やか野ばらの実
■NHK俳句 兼題「時雨」
年間テーマ「季語からみるDNA」
選者:和田華凜 ゲスト:千宗屋(武者小路千家 家元後嗣) 司会:柴田英嗣
家本後嗣(こうし)とは「後を嗣ぐ」で家元の後継ぎ 次代の家元
茶道関係の季語がたくさんある
風炉(ふろ)手前 夏の季語
風炉の名残 秋の季語
風炉とはお湯を沸かすための窯を乗せる置き火鉢
この装置が風炉と言う道具 それを使うのは夏の季節
5月から10月いっぱいがお茶の世界では風炉の季節
11月から4月いっぱいまでは「炉」の季節 五徳の上に釜が乗っている
お茶の世界では11月は「炉開き」と言って炉を開く季節
「口切り」茶壷、その年の5月に収穫した新茶が半年間寝かされて
茶壷に蓄えて少し味を落ち着かせておく
11月になって初めて茶壷の封印を切って 中の茶葉を取り出し
ひきたてのお抹茶を味わう これが口切りの茶事
「炉開き」「口切り」2つの初めてが重なる
茶の湯の世界では11月を茶の湯の正月という
ここからお茶の暦では一年が始まる
お茶の世界は結構めでたい 2回正月がある
・兼題「時雨」時雨は冬の初めに降る通り雨
定めなき世や人生の無常の象徴として
平安時代から歌人たちに歌の素材として愛されてきた
茶杓の銘とかお茶碗にも時雨の銘が付いたものがある
今の季節には好んで用いる お茶の世界は水を大切にする
水はお茶にとって根底を成す大事なもの
潤すことをお茶の世界では大切にする
花を一番美しく見せるために花を生け終わった後に水を打つ
土物の器を事前にたっぷり濡らしてみずみずしい土の肌の
美しい状態にして 茶室に飾って自然に乾いていく様を眺める
時間の変遷を楽しむ いわば瞬間の美を楽しむ 一番美しい状態を
お客様に手間をかけてお見せすることが何よりのごちそうと考えている
京都には打ち水という習慣がある お茶の世界では打ち水は
夏だけでなく年中 お客様をお迎えする準備をした 最後に水を打つ
茶事に招かれて定刻より早く着いた時 お迎えの準備が整ったか
見分けるサインは家の門の前が濡れているかどうか 打ち水がされて
清められている それがウェルカムのサイン
まだ打ち水がしてないともう一周まわる その間に水が打たれたら
すっと入っていく 亭主とお客はお互いがもてなし もてなされている
利休の孫で千宗旦という茶人 宗旦の息子たちから表千家 裏千家
武者小路千家の3つに分かれた 千家にとってはゴッドファーザー的な人
「口切りや水打つほどのひと時雨 元伯」
掃除も済んで打ち水をしようと庭に出たら時雨が降って庭を潤してくれて
打ち水の必要がない すぐお客様をお迎えできる喜び
まるで天も味方してくれた という趣のある句をご紹介くださいました
口切りという茶事の大事な行事の時に打ち水ほどの時雨が降ったのは
一会の奇跡ではないかと感じた 俳句も言葉との一期一会の奇跡 和田
茶の湯においても一瞬の美 瞬間を楽しむことが大事 千
茶の湯の始まりは800年ぐらい前 中国の宋の時代に抹茶を飲む習慣が
仏教の禅宗とともに伝わった 日本の中で浸透していくうちに
季節や時を楽しむ形に変化 一回の茶会のために作り上げた場所で
特別な道具を使って その時期にしかできないおもてなしをする
お茶会を楽しみ形が生まれてきた おいしいお茶を飲むことは
目的でもあるけれど同時にそれは文化的なサロンに集って
知的な会話をしたり美しいものを見たり そしてお茶を飲む
お茶を飲むことは目的でもあるけど手段でもある
生まれも育ちも考えも違う人が1つの場に集って 美しいものを見て
おいしいものを飲んで一体化する 一体感を楽しむ
それは句会とも通じるところがある 和田
そういう過程でお互いの心も読み解ける 一種の人心掌握
相手の懐に飛び込んだり 人間的な駆け引きの場にも応用
信長や秀吉は腹の読めない相手をお茶室に呼んで しかも
刀を外して丸腰になる そこでお互いに腹を割って話をして
信用できる相手かどうか判断した
武将たちは優れた教養人であったが 最終的野望は京都に上がって
天下統一 その時天皇や公家たち旧勢力 日本の古来の文化の担い手
そういう人たちと一対一でやり取りをするとき 武力一辺倒では
相手にされない 教養とかで人間性を見られる時に 武将たちは
下手すると文字も読めない人もいた 茶の湯で相手を迎えれば
自分の土俵に相手を迎えたうえで 床の間にかけられた掛け軸や
茶碗の銘が和歌に由来していることを説明すれば
インスタントな教養人のふりができた そういう時千利休みたいな人が
ブレインを控えて「上様 今はこうですよ」と言えば
「源氏物語」54帖を全部読んでいなくても 源氏の一説が
書かれたお軸を説明すれば こいつ意外と話が分かる奴だと
同じ土俵に立てた 文化人として認められた 飲食を伴っている点で
誰にでも共感できるポイント 茶の湯という文化が戦国武将に
受け入れられた
・特選句 兼題「時雨」
マネキンを横抱き銀座しぐれかな 高松周璻(しゅうすい)
覗きみる天橋立片時雨 髙瀬チエ子
しぐるるやスーツのパパの抱っこひも 今井赫(かく)
時雨来て鬼だけ濡れる隠れん坊 田崎森太(しんた)
時雨虹喫茶ソワレの窓辺より 上田一樹(かずき)
辻々(つじつじ)に時雨傘置く伊賀路かな 廣田祝世(ときよ)
(伊賀は芭蕉の生誕地)
・特選句 兼題「時雨」
一席 千体の千手観音時雨かな 森山恵子
(京都 三十三間堂 120mの本道 無限の慈悲の心
荘厳に並んでいる 京都の時雨の美の極みを感じる)
二席 人々が散らかつてくる時雨かな いその松茸
三席 また一人同行二人(ににん)時雨宿 鈴木朗
・茶人 千宗屋の一句
「時雨のち光さしたる一翁忌 千宗屋(そうおく)」
一翁忌というのは武者小路千家の4代目の一翁宗守(利休のひ孫)
先日没後350年忌を迎えお茶会と法要を行った
3歳の長男が初めてお茶を供える
雨も降ったけど光が差してきて感慨深く
お題をずっと悩んでいたが
その光景を見たら自然に言葉が出てきた
宗旦に通じるような一会の奇跡の瞬間
100年も200年も続いていくのだろう「光さしたる」に感じた 和田
・はみだせ!教室俳句
山口県聖光高校 吉田稔先生
喜怒哀楽俳句
決着のスリーポイント夏を呼ぶ
星涼し彼女の声に疲れ飛ぶ
星月夜確かに君が好きだった
進路決定俳句
新天地兵庫に決めた夏の星 松本拓翔
言葉の化学反応
彼らにとって見たら等身大の自分たちだと思う
青春のカケラ語らふ子らの秋 吉田稔
あの子たちが俳句を作っている様子は
青春時代のかけらを見つけに行っているんだろうな
・柴田の気づき
茶の湯は思いやりの会
■NHK短歌 テーマ「人体」
年間テーマ「“理科のことば”で羽ばたく」
選者:永田紅 ゲスト:山中伸弥 司会:尾崎世界観
うしろより呼びかけ自転車がすり抜ける山中伸弥けふも元気で
永田和宏(永田紅女史の御父上 山中伸弥教授の隣の研究室におられたとか)
人体って一番身近だけども普段は無頓着に過ごしがち
「人体」が詠み込まれた歌
親指と人差し指のあいだにて「いま二センチ」の空気を挟む
永田紅
無いものも想像ができるんだな 表現できるんだなと思って作った
・入選九首 テーマ「人体」
一席 もう閉じた大泉門のあるあたり つ、と撫でてからベッドへ運ぶ
西鎮(しゃぁちん)
ご機嫌な鳩が棲みつく時計みたい鳩尾(みぞおち)を深く意識するとき
水鳥
三席 山中 医学書を売る仕事をしていた頃は「膵臓」という漢字が書けた
佐藤綾子
二席 私 記憶野(や)が消してしまった番号を人差し指は記憶していた
石川真琴
泣いている人も抱き締められなくてなんのための鎖骨なんだか
鮨田わさび
新しき本の真中に栞ひもは丸くねむれり胎児のごとく
咲山らか
葉桜になった海馬でまだ祖母が抱きしめている幼いわたし
睦月雪花
抱きしめるたびに数える君の骨たしかあと182本
立田渓(けい) 成人の骨は206本
私「いま押さえてるとこ、キーゼルバッハ部位っていうらしいよ」「いいからティッシュ」
野分のわ 鼻の中の骨
・”理科のことば“ピックアップ
君の手に触れ確かめたしその浅き解剖学的嗅ぎタバコ入れ
杉本智子
17世紀ごろのヨーロッパで嗅ぎタバコを嗅ぐのが流行した
(親指の付け根にできるくぼみ)
この歌は恋の唄 あなたの手が触りたい
・私の”理科のことば“
山中伸弥氏が選んだ言葉は「未知」。
私たちの人体に関する知識量は増えている
人体のことをわかっているかと言うと実は未知のことが多い
未知に気づくということも大事 永田
山中教授はまだまだ知らないことがあるという自戒を込めて選択されたとか…。
iPS細胞(人口多能性幹細胞) induced
pluripotent stem cell
真似するのも大切 山中
半年後、ハーバード大学がiPSを使ってくれた
研究者は結果を世の中に伝えることが大切 と同時に名称決定も…。
論文のタイトルも 言い過ぎても正確なことも きわめて難しい
・ことばのバトン
秋には冷めた恋心その他
殿内佳丸
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散歩道言の葉の塔ゆれてゆれて
竹田信弥 書店主
百年残る本と本屋
出版することで読者の手元にお店が届く
冷めたものをどう回復するか
冷めた恋の中で出会った言葉たちが思い出されるような形で
重なっていくというのが風にゆれて
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