2025年6月12日木曜日

あの本、読みました?山口未桜&朝比奈秋

夏の朝虫図の走る演技かな

夏の空されてもしてはなりませぬ

梅雨寒し英知追い出す米の策

栴檀(せんだん)や庭の隅っこ楝(おうち)

五月雨や独り楽しむ時間なし

 

■あの本、読みました?

本屋大賞で注目!医師が書いた医療ミステリー&芥川賞作家

山口未桜 朝比奈秋 鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔P

 

話題の医療小説

「白い巨塔一」山崎豊子著/新潮文庫

「新装版 チーム・バチスタの栄光」海堂尊著/宝島社

「神様のカルテ」夏川草介著/小学館文庫

 

著者は現役の医師

2025年本屋大賞4位「禁忌の子」山口未桜著/東京創元社

2024年芥川賞受賞作「サンショウウオの四十九日」朝比奈秋著/新潮社

「受け手のいない祈り」朝比奈秋著/新潮社 実体験に基づくリアルな世界

当直純文学の傑作だと私は思っている 山口

 

現役医師で話題作を生む作家に注目

著者は現役医師 話題の医療小説の裏側

医業の専門は二人とも消化器内科

救急外来

謎めく探偵医師 城崎響介の人物像

 

「禁忌の子」の一文 山口未桜著/東京創元社

「感情がないんか」

「違うよ。僕だって、悲しくなるし、怒ったりもする。

面白いマンガを読んだら、楽しい気分になる水島さんが

死んだって聞いて、もちろんすごく悲しかったよ。

だけど、僕の感情の動きは一瞬なんだ。

一瞬だけ動いて、すぐに消えてしまう。永遠の凪みたいに」

「すぐ忘れる、ちゅうんか」

「忘れる、というか、掻き消える。だから、僕には感情に

振り回される意義がわからない。だって、どれだけ悲しもうが

水島さんが帰ってくるわけじゃない。トラックの運転手に

怒っても無意味だ。だから、明日以降どうするか、彼女の死を受けて

今後どうするかのほうがよっぽど大事だと僕は思う。」

 

アイデアの着想は一歳になるお嬢さんの夜泣き

格差に対する人間賛歌 わずかに見える光を書きたい

小説を描いたきっかけは?

 

朝比奈 月34回 病棟管理・人間ドックなどの内視鏡検査

病院勤務を続ける理由 

当直純文学の傑作 リアルな医療の現場

 

「受け手のいない祈り」の一文 朝比奈秋著/新潮社

「おはようございます」外来看護師の高井が挨拶してきた。

私は会釈で挨拶をかわすとそのままイスに腰かける。

(中略)

人は眠ることで一日一日を区切っているらしい。

朝が来て、世間では今日という 新しい日が始まっていたが、

仮眠すら取れなかった私には 昨日と今日が地続きで続いている。

途切れることなく続く意識ではカレンダーのように昨日と今日を

二つに分けられない。このキャスター付きのイスも、

昨日座ったイスではなく十二時間前に座ったイスだ。

二日目の朝はひどく陰鬱だった。陽の昇りは昨日の爽やかな

朝の情景と重なって厚かましかった。二回目の太陽には新鮮さがない。

 

悲しく悟るなかで、一つの疑問が浮かんでくる。

それは疲弊しきった時に浮かんでくるもので、

今回も私を強く揺さぶった。命は本当に

一番大事なのだろうかー自分の命一つでより多くの命が

助かるから寝ずに働けている。しかし、千の命よりも大切な、

私の何かが踏みにじられている。そう感じてしまうとき、

この疑問が湧き出てしまうのだった。

 

コロナ禍・医療崩壊…描かれた究極の現場

 

医療小説の魅力は死を描く身近な人間ドラマ

 

思考と人格の境界線

「サンショウウオの四十九日」の一文 朝比奈秋著/新潮社

透明のネイルチップが桜色に塗り潰されていく。私は

ネイルチップスタンドを押さえながら、そっと空腹感に

意識を集中して、それを瞬にこっそり押しつけた。すると、

徐々に空腹感がおさまっていく。これは時おり使う技術で

中学時代に偶発的に編みだされたものだった。

(中略)

こういった体であることや見た目などを同級生たちに一番激しく揶揄された

時期でもあった。瞬と違って私は反発したが、どうしようもない時には、

瞬がいじめられているとか、瞬が生理で痛がっている、ということにして

全てをあの子に押しつけてみた。ときどきうまくいくことがあって、

そんな時は一時的に真ん中が抜け落ちて、辛さや痛さが輪郭だけになった。

 

山口未桜 影響を受けたオススメ小説

銀河英雄伝説〈1〉 黎明篇 - 田中芳樹著/創元SF文庫

悠久の戦乱に終止符を打つべく現れた二人の英雄の運命を描くSF物語

双頭の悪魔 有栖川有栖著/創元推理文庫

「学生アリスシリーズ」の長編3作目 有栖川有栖を代表する推理小説

 

朝比奈秋 影響を受けたオススメ小説

「夜と霧の隅で」北杜夫著/新潮文庫

ナチスの指令に抵抗する精神科医たちの苦闘を描いた物語 芥川賞受賞作

 

山口未桜の最新作 探偵医師が挑むミステリー「白魔の檻」

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