2025年6月8日日曜日

100分de名著❝侍女の物語❞❝誓願❞①

新緑のイロハモミジの赤き実よ

隙間に自生三百株のなでしこよ

なでしこや風にも負けず芽吹きおり

ブルースト効果描いた息吹かな(無季句)

夏手前座して飲みたき時もある

 

100de名著侍女の物語❞❝誓願すぐそこにあるディストピア

鴻巣友季子 伊集院光 阿部みちこ

 

マーガレット・アトウッド(1939) カナダ・オタワ出身

独裁国家 近未来アメリカ ディストピア

ひとが慣れ親しんだものが 日常になるんですよ とリディア小母は言った

色んなところにディストピアの芽がある

ディストピア:抑圧的で非常な全体主義社会を指す

ユーモアの人 ジョークを言う アトウッド

予言する作家というニックネームがついている

 

洪水の年(2009)

新型ウイルスによるパンデミックで

人類がほとんど死に絶えた世界を描いた近未来小説

新型コロナウイルス

201912月初めて発見される その後世界で大流行

自分は現実を題材にして書いていたらそれが予言のようになってしまう

時空をずらして書くことで本質を顕在化するのが自分の文学

弱者の視点が必ず入っているのが特徴

 

196070年代 ウーマン・リブ運動(女性解放運動)

1980年代 アメリカで女性の権利拡大に反発する

バックラッシュ(反動)が起きる

女性の社会進出 避妊・中絶の権利 

子どもを持たないという選択 が批判にさらされた

プロライフ(pro-life) 母体より胎児の生命を尊重し

中絶を殺人とみなす考え方(キリスト教の考え方)

 

1985年「侍女物語」刊行

侍女の物語❞❝誓願の舞台

ギレアデ共和国 The Republic of Gilead

成立 少子化に苦しむ近未来のアメリカがクーデターにより倒され築かれた神政国家

政治形態 キリスト教原理主義政党による一党独裁

政党名 ヤコブの息子たち党(聖書に由来)

 

少子化から生まれた独裁国家

政治と宗教が完全に合体 所謂 恐怖政治

 

洪水、森林火災、トルネード、ハリケーン、旱魃(かんばつ)

水不足、地震…。これが多すぎ、あれが少なすぎる。

インフラの老朽化ー どうして手遅れになる前に、ああいう原子炉を

だれか廃炉にしておかなかったんだ?悪化する一方の経済、失業問題

下がり続ける出生率。

「誓願」より

 

社会が手詰まりになると極端なことを言うリーダーが支持を集める

 

人々は不安になっていた。そのうち怒りだした。

希望のある救済策は出てこない。責める相手を探せ。

それでも、なぜわたしは平常運転のまま行けると

思ってしまったのだろう?

そんなことは長年聞き飽きていたからではないか。

人は空が落ちると言われても信じないものだ。

実際に、その欠片(かけら)が降ってくるまでは。

 

ギレアデ共和国が誕生 female 小母 妻 マーサ(女中) 

侍女(オブフレッド フレッドのもの)

 

だからなんだと言うんだろう。わたしは自分に言い聞かせる。

名前なんて電話番号みたいなものじゃないか、他人が使うだけのものだと。

でも、いくら言い聞かせたところで、そうじゃない、名前は重要なんだ。

わたしはこの名前を忘れないし、どこかに隠した、いつの日か

堀り起こしに戻ってくる宝物みたいにずっと覚えている。

そう、この名前を埋蔵品みたいに考えているのだ。

 

他人事ではないディストピアの入り口

スティーブン・グリーンブラット「暴君シェイクスピアの政治学」(2020)

暴君は決して一人で誕生するものではない そこに必ず支援者がいる

暴君誕生の「支援者」

疑うことをしない人 すぐに忘れてしまう人

このままで大丈夫だと思い込む人 面倒を避けたい人

 

侍女の一人称で書かれた意図 暗い坑道を手探りで進むような読み心地

アトウッドが意図したあえて「見せない」物語

そこにある危険が見えていないスリル

続編「誓願」は「見えてくる」物語

 

ディストピア小説の歴史とリバイバル

ロシアの作家ザミャーチン(18841937)

192021年執筆「われら」

フランスの作家 ジュール・ヴェルヌ(18281905)

186063年執筆「ニ十世紀のパリ」

2010年代 フランスやドイツなどで右派勢力が台頭

世界各国で政治の右傾化が進む

CIA元職員 エドワード・スノーデン

2013年アメリカのNSA(国家安全保障局)による

国民の個人情報収集が暴露される

2010年代にリバイバルヒット

ジョージ・オーウェル「一九八四年」レイ・ブラッドベリ「華氏451度」

2017年 第一次トランプ政権発足

侍女の物語も大きなブームとなっていた 

侍女の衣装で中絶の権利を訴えるアメリカの女性

ファンタジーからディストピア小説へ

世界の右傾化を受けて読者の読み方が変わった

アトウッドとしても世界としてもおとぎ話で終わった方が良かった

 

ディストピアとユートピアの関係

ユートピアはディストピアにひっくり返る 表裏一体の現象

「隣のディストピア」

色んなところにディストピアの芽はある

 

人はつねに選びながら生きる。その選択ごとになにかの可能性を狭め、

なにかの可能性を新たにひらく。その繰り返しです。ですから文学は、

かもしれない maybe ありうる could be ひょっとしたら possibly

たぶん perhaps という事を書くものなのです。

プロパガンダはどちらの極に振れるか決まっていますが、

文学というのはその間にあるものを書くのです。プロパガンダと違って。

 

プロパガンダと文学の違い

揺れを書くのが文学 

 

ディストピア洗脳3原則

①国民の婚姻・生殖・子育てへの介入と管理

②知と言語(リテラシー)の抑制

③文化・芸術・学術への弾圧

 

小母以外の女性は読み書きが禁止されている

洗脳状態に落とし込んでものを考えずに支配者の言う事を聞いて欲しい

 

ひとが慣れ親しんだものが 日常になるんですよ、とリディア小母は言った。

あなた方にはまだ、これが普通の生活だと思えないかもしれませんが

しばらくすればそうなります。これが日常になるのです。

 

痛みは初めのうちだけ慣れてしまえば大丈夫

そんな事言えるアナタはヒットラーにもなれるだろう

THE BLUE HEARS「ロクデナシ」より

0 件のコメント:

コメントを投稿