樫原の棚田を揺らぐ夏の空
鮎遡上今年は期待できませぬ
夏空やアメゴ捕まえ大はしゃぎ
楽校(がっこう)のしゃぶしゃぶ池や雲の峰
夏の日を美馬の楽校子らの笑み
■100分de名著 アトウッド❝侍女の物語❞❝誓願❞②性搾取の管理社会
鴻巣友季子 伊集院光 阿部みちこ
侍女という代理母
では選択肢を与えよう とあいつらに言われたんだ
この将校クラブで働くか 〈コリニー〉へ行くか
ルールメーカーが選択肢も逆らえないのがディストピア
ディストピア洗脳3原則
①
国民の婚姻・生殖・子育てへの介入と管理
②
知と言語(リテラシー)の抑制
③
文化・芸術・学術への弾圧
主人公 オブフレッドOffred
司令官 フレッド(Fred)の侍女
ギレアデ以前は図書館勤務のワーキング・マザー(家族は夫と娘)
クーデター後のアメリカから国外脱出に失敗し侍女となる
赤いセンター 小母たちが侍女を監視・管理する施設
軍隊生活をするとお考えなさい、とリディア小母は言った。
ベッドが一台。シングルサイズでマットレスはまあまあの固さ、
そこに白い綿ぶとんが掛かっている。
ベッドですることと言えば睡眠だけ。
でも、ここには少なくとも椅子が一脚ある。
日射しと花がある。こういうものを侮ってはいけない。
わたしがいまいる場所は刑務所ではなく、一つの特権なのだ。
二者択一の大好きなリディア小母に言わせれば。
彼らは体の前で両手を縛られ、白い袋を被せられた頭は
横向きにぐったりと倒れていた。
人間の胎児の絵が描かれている。ということは、彼らは以前は
医者だったのだろう。そういうことが合法だった時代に。
これは何かのテストで わたしがどうするか見ているのか。
ひょっとすると 彼は<目(アイズ)>のメンバーなのかもしれない。
わたしは両腕を上げた格好で、その手を彼女が左右の手で握っている。
この体制は、わたしたちふたりは一体であり、一つであることを表している。
ということになっているが、実のところ、儀式の進行と、その成果物の
支配権を握っているのは妻の彼女である、という意味なのだ。
私の赤いスカートは腰までまくりあげられている。それ以上はまくらない。
そのスカートの中で司令官がファックしている。
マーガレット・アトウッド「侍女の物語」
保護者 ニック
アイズ 目
産む性として搾取される侍女
「産む性」としか侍女は見られていない
3人の司令官に仕えても子どもが出いない場合
侍女は「不完全女性(アンウーマン)」として「コロニー」に送られる
コロニー:放射線物質に汚染された廃棄物の処理場
不完全女性 Unwoman
不完全児 Unbaby
Un「~できない」「~でない」を表す接頭辞
優生学 アンフィット(unfit)
環境に適応できないから排除されて当然だということを表す優生学用語
イギリス文学者 加藤めぐみ
論考「社会生物学者リンプキンの謀略」
「マーガレット・アトウッド『侍女の物語』を読む」所収
侍女という強制的代理母制度を正当化するために
無理やりエセ科学を引っ張ってきた
わたしたちは二足歩行する子宮にすぎないのだ。
神に捧げる器、精を注ぐ歩く聖杯。
これはバックラッシュが生んだ侍女の言葉
プロライフ(pro-life)母体より胎児の生命を尊重し中絶を殺人とみなす考え方
「私たちは単なる孵卵器(ふらんき)なのか」
村田沙耶香 2016年「コンビニ人間」で芥川賞受賞
「殺人出産」「世界99」など生殖をテーマにした著書多数
両作とも後世の歴史家たちが行った
「ギレアデ研究シンポジウム」の議事録が巻末にある
アトウッドの辛辣なユーモアが炸裂
「侍女の物語」の歴史的背景に関する注釈
みなさんご存じのように、この政権下での、数々の珍妙なならわしに
科学的根拠をあたえるために、一夫多妻制度は自然な営為だとする
社会生理学のセオリーが利用されたわけです。
ダーウィニズムがさらに昔のさまざまなイデオロギーに利用されたように。
生物学者 エドワード・O・ウィルソン(1929~2021)
1975年出版「社会生物学」
社会生物学者 ウィルフレッド・リンプキン
更に宗教とも結びつけた
「侍女の物語」巻頭に揚げられた「旧約聖書」の文章
ラケルはヤコブとのあいだになかなか子どもができないので、
姉のレアを妬むようになった。そしてヤコブに言った。
わたしに子どもを与えてください。さもなければ、わたしは死にます。
わたしの仕え女のビルハがいるではありませんか。
この女の中にお入りください。さすれば、わたしの膝の上に
実りがもたらされるでしょう。
彼女によってわたしも子どもを持てるのです。
「創世記」第30章1-3節
聖書を歪曲し侍女を正当化
主がこう言われた。汝の産みの苦しみを倍増させよう。
汝は苦しんで子を産むのだ。
「旧約聖書」「創世記」第3章16節
帝王切開や無痛分娩も禁止
政教分離されていない国
つまり、自由は一種類ではないということです、とリディア小母は言った。
なにかを実現する自由と、なにかを避ける自由の二つがある。
無秩序だった時代には、なにかを実現する自由しかなかった。
いまあなたがたに与えられているのは、なにかを避ける自由なんです。
これを過小評価してはいけません。
最も重要なポイント⇧
2つの自由 ①Free to ~への自由 ②free from ~からの自由
将校クラブ オブフレッドの親友モイラ
では選択肢を与えよう、とあいつらに言われたんだ。
この将校クラブで働くか、〈コロニー〉に行くか。
フンッ、尼さんでもないかぎり、だれが〈コロニー〉なんか選ぶか。
清い殉職者じゃあるまいし。とっくに卵管を結んでおけば、
いまごろ不妊手術も必要なかったのにさ。
というわけで、わたしはここにいる。ここならフェイスクリームも
支給される。あんたもどうにかして滑り込む手段をみつけなよ。
アソコが擦り切れて墓場送りになるまでに、三年か四年は
結構楽しめるから。食べ物はわるくないし、欲しければ酒も
クスリも手に入る。しかも仕事は夜だけだし。
モイラが選んだ「自由」は…
まさに消極的自由の選択 freefrom
ルールメーカーが出した選択肢に逆らえないのがディストピア
地下組織 メーデー オブグレン 保護者ニック
「大丈夫。〈メーデー〉だ。彼らについて行け」
ヴァンは敷地の私道で待っている。両開きのドアを開けたまま。
男ふたりは両脇にやってきて、車に乗りこむわたしをささえようと
肘に手をかける。これがわたしの末期になるのか、
新たな始まりになるのか、知るすべはない。
すでにわが身は見知らぬ人びとの手にゆだねられたのだ。
ほかに道はない。そうしてわたしは車に足をかけ、入っていく。
暗闇のなかへ、それとも光のなかへ。
結末は暗闇?光?
議事録まで読むと答えは絞られてくる
ユートピアとディストピア化する理由
寡頭(かとう)政治が危ういところ
自己修正のメカニズムが働かない
イデオロギーが右か左かよりシステムの構築がうまくいくか
リテラシーを奪われている
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