2025年6月2日月曜日

第26回NHK全国俳句・短歌大会①

埋め尽くす海一面を海菖蒲

海草(海菖蒲)や青海亀に食べられて

水田へ足踏みいれた青鷺よ

青鷺や集中力を高めけり

青鷺やここぞとばかり餌捕う

 

NHK俳句 第26NHK全国俳句大会①

ゲスト:西村和子 星野高士 堀田季何 レギュラー:庄司浩平 司会:中川緑

 

特選

寝返ればそこは戦場生身魂

蜂蜜の能登の光をむさぼりぬ

寒九の水心臓わきを今通過

光にも羽生え初むる五月かな

 

特選 自由題

堀田季何選

光にも羽(はね)()え初()むる五月かな   大堀柔(じゅう)

光に羽を持たせている取り合わせ 光を見て羽を幻視した

擬人化を通り越している アニミズム(自然界のあらゆる自物に

霊視や精神が宿っているという考え方)のよう

本意本情(そのものに本来そなわっている性質ふさわしい在り方) 堀田

見えるものが何もない 対象物がないその感じがすごく面白い 

「光」「羽」「五月」ちょっとセットみたいな感じもする 星野

とてもRomantic 若い感受性を感じた 西村

「にも」に注目した この人結構見ているんじゃないかな 

音が良い ハ行 h音 堀田

 

小澤實選

寒九の水心臓わきを今通過   斑目幸子

寒九の水:寒の入りから9日目(寒九)にくむ水のこと

「寒九の水」を飲むと体によいと昔から言われていた 体感を詠んだ 西村

同時に緊張が走る 冷たい水が心臓の横を通過する

瞬間のテンションを感じた 堀田

ぶつ切れに見えたけど 星野

私は逆に臨場感が出ている 堀田

「寒の水」でも季語になる 堀田

それはつまらない 「寒九の水」が良い 星野

しかも字余り k音がこの句と合っている 堀田

俳句は目で味わうことが多いが必ず声に出して読んでみることが大事 西村

俳句は音韻 韻律が大事? 中川 大事です 西村 堀田

狙いが見えちゃうと良くない 狙って作る人が多い 星野

 

神野紗希選

蜂蜜の能登の光をむさぼりぬ   河野(こうの)裕美子

この句は今年の句だからひかれる 生命力旺盛な情景を詠んでいる

「能登」という言葉は今年だから余計強く訴えてきた 西村

能登へのアピール 挨拶句 作って励ます 俳句で後押しする 

「光」という言葉の危うさ 俳句で「光」を使うと収まってしまう 星野

「輝く」「光る」を安直に使う人が多い いい感じになっちゃう

光をむさぼる=生命力の強さ 蜜蜂に仮託して詠んでいる 堀田

 

西山睦選

寝返ればそこは戦場生身魂(いきみたま)   新垣富子

生身魂:お盆の季語 生きている目上の人(特に親や祖父母)のこと

生身魂は生魂と書くこともある 元気な年寄り 西村

「生身魂」の年齢のラインはある? 庄司

生身魂であることに切実なものに感じる 字の使い方に工夫がある 西村

時事性 社会性のある句はどう読む? 中川

時事性 社会性のある句を詠むポイント

ニュースの見出しにはしてはいけない

 誰でも知っている道徳は避ける

 賞味期限が残りにくい

今生きているうちに詠まないと誰が詠むのか 西村

社会性 時事の句はインパクトが強いから季語が後付けになってしまう 星野

無季と相性が良いのは確か 時代、その時の記録になる 堀田


NHK短歌 第26NHK全国短歌大会①

ゲスト:俵万智 黒瀬珂瀾 大森静佳 MC:芳賀健太郎

 

特選

茎のにおいするとき茎はちぎれていてこれはだれかの心のにおい

瀬生ゆう子

「今日は夢やってなかった」と吾子の言う月の放送局は気まぐれ

山本里枝

すきとほる葛餅のやうふるふると母立ちあがる早春(はる)の椅子から

吉田能明

十歳の秋のわたしに会いにゆく五匹の子猫を捨てたわたしに

貝澤圭子

一瞬にワンタイムパスコード消え我は地球より蹴落とされたり

澁川寿美子

 

特選 自由題

佐伯裕子選

一瞬にワンタイムパスコード消え我は地球より蹴落とされたり

澁川寿美子

日常で取材しながら下の句で大きな視点が出てきて

「蹴落とされた」という表現がおもしろい

(地球を)丸いと知らなかった時代の人と

年配の人の疎外感がうまく重なっている 俵

地球が人類の変化や社会の変化の比喩に見えてくる 黒瀬

 

永田和宏選

十歳の秋のわたしに会いにゆく五匹の子猫を捨てたわたしに

貝澤圭子

誰しも何かしら大切なものを手放した記憶がある

わたしの中の大切な心の何かのかけらも捨ててしまった 黒瀬

記憶の中の物語として述べているところがある 大森

「十」と「五」の数字も効いている 俵

 

大森静佳選

すきとほる葛餅のやうふるふると母立ちあがる早春(はる)の椅子から

吉田能明(よしあき)

震える体 老いて透き通っていく存在感 

内部に透けて見えるお母さんの歳月

ふるふると 母 早春(はる) 音の重なっていく感じも魅力的 大森

動き季節と動かない季節の論議

葛餅と取り合わせた季節なのでこの季節以外はない 俵

音数でいえば「春夏秋冬」全部二文字なので文章としては成り立つ

歌として考えた時動かないかどれかを選ぶことを私たちは心がける 俵

歌を作るとき ❝動く❞❝動かない❞どう考えればよい? 芳賀

歌の修辞を重んじて他の季節を入れるか 作者だけの現実に準じるか 

作者は自分の歌には自分でわがままに作って良い 黒瀬

現実のリアリティーより詩としてのリアリティーを求めたい 俵

短歌より先んじる何かが動いているのではないか 大森

 

川野里子選

茎のにおいするとき茎はちぎれていてこれはだれかの心のにおい

瀬生ゆう子

不思議の感じのする歌 上からゆっくり言葉が繰り出されている

世の中で常にだれかの心が傷ついているという

前提があるからこその表現 大森

3句の「ちぎれていて」の字余りは結構珍しい

はっきり字余りにすると もたつく感じがする この歌には合っている

 

黒瀬珂瀾選

「今日は夢やってなかった」と吾子の言う月の放送局は気まぐれ

山本里枝

幼子の感性・言葉は本当に不思議 

親子の対話のようにもみえてくる 黒瀬

子どもの言葉は刺身で出せる 俵

 

生きる道具として短歌が生きていた「光る君へ」の時代は 俵

 

■ことばのバトン

夏をみつける潰すイチゴに 

二方久文(大学受験講師)

先割れのスプーンで刺せばキュンと鳴る

八塚慎一郎 詩人

 

ライトハイクは1フレーズに1フレーズを結ぶ二行詩

上の句と下の句の文字数を合わせる

道に迷ったら

123456

そこが始まり

ライトハイクは詩の入り口になりたい

 

日曜日の夕方   運動会の本番

時間よ止まれ   1人だけ逆。

誰かの言葉に自分の言葉を結んで素敵なものをつくる

この授業には林家たい平師匠が来られていました。

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