2025年6月23日月曜日

第26回NHK全国俳句・短歌大会④

朝陽浴び襟を正して夏手前

侮るなかれアナフィラキシー雹(ひょう)の音

星涼し誰にも認められずとも

夏の風夫(つま)の存在確かめん

夏の月亡母の言葉いつまでも

 

NHK俳句 第26NHK全国俳句大会④ 

選者:西村和子 星野高士 堀田季何 司会:中川緑 取材:庄司浩平

題「出」

 

特選

木暮陶句郎選

百歳の口出し手出し盆用意   田代キミ子

生身魂(いきみたま)お盆の季語 生きている目上の人(特に親や祖父母)の事

 

神野紗希選

留学生星を見てをりテント出て   高橋まさお

天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも   安倍仲麻呂

 

高野ムツオ選

入口を出口と思ふほど暑し   北口直敬(なおたか)

高野 季語を超えるような暑さがこの句の根底には語られている

 

西山睦選

出逢ひまで頁(ページ)をもどす春の風   菫久(きんきゅう)

 

龍太賞 飯田龍太(1920~2007)

選者 井上康明 岩岡中正 宇多喜代子 片山由美子

 

「空の匂ひ」森瑞穂

歩道橋塗りかへられて鳥雲に

○三月や借りるなら海見ゆる部屋

初夏のブックカバーは海の色

刺股が職員室に夏の雨

肩紐の日焼の跡を見られたる

西日さす動物園に空の檻

○立秋や風の匂ひの入れ替はり

秋晴の背伸びして干すシーツかな

ゐのこづち服は袖口から古び

羽ペンに空の匂ひや秋澄めり

上巻の欠けし本棚火恋し

空港に雨振つてゐる夜寒かな

○フラスコに滾(たぎ)る液体冬隣

山茶花や人影のなき旧校舎

○雪催ひインターチェンジ降りたれば

 

どうやって連作を作っていく?

テーマがあった方が良い 西村

1つの読み物として連作を考えた場合損です 堀田

前の句との関連性をどこで断ち切るか 星野

立句(たてく)を全部並べるのが理想 星野

通奏低音 立っていて前後の句に通じ合っているのが理想

一物の句が少ない 堀田

 

大会大賞

留学生星を見てをりテント出て   高橋まさお

パンチみな躱(かわ)されてゐる汗みどろ   西川棗

鍬置けば己小さし秋の空   平林弥(わたる)

 

次回の題「口」

 

NHK短歌 第26NHK全国短歌大会④

選者:俵万智 黒瀬珂瀾 大森静佳 MC:芳賀健太郎

題詠「出」 近藤芳美賞

 

特選

大森静佳選

ポロシャツの裾を出すとか出さぬとかミサイルがくるアラームの中

矢野和枝

 

川野里子選

地球館を出れば互いにちいさくて今なら言えるひとことがある

夏山栞

 

永田和宏選

ガザを出る姉妹が開けた鳥籠を思う土曜のペット売り場に

今西富幸(社会詠)

(俵 ガザを出る姉妹 鳥籠から出て行った鳥 ペット売り場の動物たち

 自由と安全が三者三様 単純な対比ではない 幸せについて投げかけた短歌)

 

黒瀬珂瀾選

避難所に炊き出しカー来て焼豚(チャーシュー)がぎょうさん入ったラーメン頂く

室木正武(社会詠)

 

社会詠はどう詠めば良い?

俵 短歌は時代を映す鏡 当事者であるかが問題になる 当事者でない場合

  どういう距離感で歌うか難しい でも当事者でないから

歌ってはいけないことはない 当事者でない人が詠んでくれることは

励ましになると思う

大森 自分との接点を詠んでいくしかないと思う 普段から関心がある事

   自分とクロスする所を深く読んでいく

俵 セウォル号沈没事件

2014年4月16日に起った韓国史上最悪の海難事故 

亡くなった乗客の大半が修学旅行中の高校生だった

その情報に対して切実な接点を持てるかどうか

黒瀬 歌は最終的には「私」を詠む 私がいろいろな事象とどう向き合ったか

 

近藤芳美(1913~2006)

近藤芳美賞 151組での作品として審査

選者 大辻隆弘 栗木京子 坂井修一

 

「震災」北野みや子

笑点の今し始まる元日を地震アラームのスマホ鳴り合ふ

冷蔵庫ゆ吐瀉物(としゃぶつ)がごとお節散る床を拭くにも水道は出ず

(かし)ぎても裂けても家を捨てられずブルーシートの内に灯ともす

ただならぬ草の勢ひ解体の更地ばかりの村のゆくすゑ

俵 人間の暮らしは中々復興できないが自然の強い生命力で着地している

  連作の着地としてうまくいっている

黒瀬 土地と人間の関係性 過疎の問題 多面的な一連だなと思った

 

連作の作り方 

大森 始まり方と終わり方をどうするか 結論めいて終わらない

   「いかにも始まる」「いかにも終わる」をどう避けるか並べ方として一番難しい

俵 後ろから2種目は特等席 わかりやすいストーリーにすると

  ストーリーのための歌みたいに見えて勿体ない

  詞(ことば)書的な歌はだめ それをできる限りなくすのが一番大事

 

大会大賞

わたしだけ死ななかったらどうしよう渋谷 こんなに光りだらけで

芋高舞

茎のにおいするとき茎はちぎれていてこれはだれかの心のにおい

瀬生ゆう子

ガザを出る姉妹が開けた鳥籠を思う土曜のペット売り場に

今西富幸

 

俵 自分がいいと思った歌を他の人がどう評するかを聞く事はすごく勉強になる

いろいろな鑑賞を参考にしながら作る上でも役立ててほしい

黒瀬 年の空気感や精神性みたいなものが出てくる それはその時間を

   生きている人の声みたいなもの 大事に短歌を作っていきましょう

 

・ことばのバトン

2時間は飲み放題で泣き放題

三田三郎(歌人)

何度も再生するラストラン

宇佐美綾香(日本大学芸術学部文芸学科 日芸短歌会 会長)

 

半分は観戦のためもう半分は祈りのために競技場まで

走るために産まれて生きるために走る彼らのゆくさきとしあわせは

厩務員(きゅうむいん)になって彼らのしあわせな記憶を増やしたい ひとつでも

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