2025年6月22日日曜日

100分de 名著❝侍女の物語❞❝誓願❞③

夏の夜ZAL(ジャル)を秘めたるショパンかな

演奏やZAL汲み取りた夏の月

凛として未婚の母となりにけり(上村松園女史)

風呂上り簾伺う蛍かな

夏の夜や崇高なる美内に秘め

 

100de名著 アトウッド❝侍女の物語❞❝誓願❞③言葉を奪われた女たち

鴻巣友季子 伊集院光 阿部みちこ

 

もし女性だけの分離社会になるのだとしたら完全に分離すべきです

 

誓願(2019) 原題 The Testaments(単数形)証言・誓約

舞台「侍女の物語」から15年後のギレアデ共和国

語り手 3人の女性①リディア小母

 

The Testaments(複数形)

「旧約聖書」The Old Testament 「新約聖書」The New Testament

 

絶対権力者 リディア小母の戦略 

幼子ニコール 逃亡した侍女がカナダに連れ出した娘

無垢のシンボルとして利用し外国へのヘイトをたきつける戦略

その裏に新たな物語が展開

コテンパンにされていた女性たちが躍動するストーリーが始まる

 

この手記を読む人よ、あなたにどんなふうに思われるかは

よくわかっている。そう、わたしの“名声”が先々まで残っていて、

わたしが何者か、何者であったかをあなたがすでに

読み解いているならば。私が権力で膨れあがってきたのはたしかだが、

権力により雲のように掴みどころのない存在にもなっているー

無定形で、つねに形(なり)を変えて。わたしは至るところに

いると同時に、どこにも存在しない。司令官たちの心にさえ

動揺の影を投げかける。

この手記は、監視カメラを避けて、隠し場所にしまっておこう。

監視カメラはこの私が設置したのだから、どこにあるか

全部把握している。これだけ用心しても自分のこの行動が

どんなリスクを伴うかは承知のうえだ。

言葉を書き残すというのはそれぐらいに危険なことなのだ。

 

語り手①リディア小母 語り手②アグネス・ジェマイマ 語り手③デイジー

 

リディア小母はいつから…❓

実はリディア小母は司令官たちに服従しきっているわけではなかった

過酷な状況を生き抜くために小母になった その中で転覆の機会をうかがっていた

 

この架空の神政国家ギレアデでは、十七世紀の新大陸ニューイングランドと同様、

女性はほとんど権利というものを持たない。ギレアデでは、聖書の果実を

都合よ引いてきて、その果実を字句どおりに解釈する。

 

直訳 サクランボを摘む 自分の都合の良い所を都合よく使うという慣用句

チェリーピック(cherry-pick)

自分に都合の良いところを都合よく使うという慣用句

書いていないことも「超訳」 悪徳通訳

 

良き妻となるための学校 ヴィダラ・スクール

聖書の逸話 十二片に切り分けられた側目(そばめ)

 

ある男性の側目がー側目というのは、〈侍女〉のようなものですー

その所有者のもとから逃げだして、父親の住む家に帰りました。

じつに反抗的なことです。男性は彼女を迎えにいきました。

途中で暗くなってきたので、知り合いがだれもいない町で

一夜の宿りをすることにしました。気前のいいひとりの町民が、

うちにきてお泊りなさい、と申し出ました。ところが、

罪深い欲望に駆られたほかの町民が幾人かその家にやってきた、

旅人を差し出せと迫りました。よそ者の男性に破廉恥なことを

しようとしていたのです。みだらで罪深いことですが、

男性同士で行うとなると、ことさら邪(よこしま)な行為です。

ですから、気前のいい男と旅人は側目を家の前にさしだしました。

みなさん、この女はバチが当たったと思いませんか?

そもそも逃げ出してはいけなかったのです。

この側目が他の人たちにどれだけ苦しみをあたえることになったか!

アグネスの親友 ベッカ

「どうやって?」ベッカが蚊の鳴くような声で質問した。

大勢の男性がいっぺんにみだらなことをしたので、

「娘は死んでしまったのです」ヴィダラ小母は答えた。

「この聖書のお話は、わたしたちは自分の運命に甘んじ、

それらに逆らってはいけないということを、神様ならではの方法で

お教えくださっています」女性というのは、所有主の男性の名誉と

なるべきものである、と。さもないと、こういう結末が待っている。

 

曲解された聖書の逸話

聖書に無理やりギレアデの道徳感を当てはめているだけ

(原点)を読んでみたら教訓を読み取る物語ではなかった

信仰への疑いが芽生える

アグネスとベッカはその後 小母見習いになり読み書きを学ぶ

 

どちらか選ぶ自信がないと、私は言った。

内心、どちらも信じられない気がして不安だった。それでも信じたい。

というより、信じることに焦がれた。

結局のところ、信心というのは何割ぐらいが憧憬で出来ているのだろう?

 

違うんじゃないかと思っても信じたいという気持ちにすがりつく

ブレとか揺れを自分の中に許容することがある意味健全

 

読み方の稽古には、聖書の文章を使った。

わたしはそれまで耳で聞いたことしかなかった

聖書の教えをこの目で読むことができるようになった。

単語を一字ずつ、やっとの思いで読んだ。言葉は本のページに

書かれると、違ったふうに感じられた。わたしが心で諳(そら)んじるときは、

流れるように朗々と響きわたるのに、もっと平べったく、

乾いた感じがした。ベッカは、文字を一つずつ読むのと、

本当に読むのは別物だよ、と言った。その言葉が歌みたいに聞こえてきたら

“読めた”ってこと。

 

文字を「聞く」から「読む」へ 本当に原点(テクスト)だけが見えてくる

本当に読みことができると声に戻る 言葉が血肉を持つプロセスが描かれている

 

小母にだけ読み書きを許した理由

近親婚が起きる可能性がある 家系図を読み書きする必要がある

分断統治 分断してそれぞれを便利に使い謀反を起こさせないようにする

ドライバー 奴隷制下のアメリカ南部のプランテーションで

労働と生活の監督をリーダー格の奴隷

 

「おめでとう」、みんな、テスト合格だ。

あなたたちはいわゆる”火中からとりだされた燃えさし“である」

 

司令官シャド

 

「よろしい。ここに集まってもらった四人は知的女性ばかりだ。

あなたたちは役に立つのだ。この”役”につけば、ある種の特権が与えられる。

女性たちの精神的指導者であり良き師となってもらいたい。いわば、

女性の領域におけるリーダーだね。コーヒーのおかわりを?」

彼はコーヒーを注ぎ、わたしたちはもぞもぞし、コーヒーを一口飲み、

つぎの言葉を待ちかまえた。

「われわれはあなたたちに、個別の領域―女性だけの世界を組織する

手伝いをしてほしいのだ。社会的および家庭的な最善の範囲での

調和をたもち、最前の数の子孫をつくることを目指して」

「もし女性だけの分離社会になるのだとしたら、完全に分離すべきです。

その社会内では、女性が指揮をとらねばなりません。よほど差し迫った

事態をのぞき、男性は女性に割り当てられた敷地内には立ち入り禁止とし、

わたしたちのメソッドには意義をはさまない。成果のみでご評価いただきます」

 

リディア小母というキャラクター

「侍女の物語」主人公 オブフレッド

女の領域について ジャドと話し合う場面が定期的に登場

心理戦でスリリング

アルドゥア・ホール 男子禁制の小母の養育期間

          建物内には図書館もある

言葉を奪った国家への復讐が図書館の片隅から始まる

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